JP4974422B2 - 多層基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子等が搭載されるセラミック多層基板等から成る多層基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、セラミック多層基板から成る多層基板は、セラミックグリーンシートに配線導体や貫通導体となる導体ペーストを印刷塗布し、複数枚のセラミックグリーンシートを積層し焼成することによって作製される。例えば、アルミナ(Al23)セラミックスから成る多層基板の場合、配線導体や貫通導体となる導体ペーストとして、タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn)等の高融点金属を主成分として含む導体ペーストを用い、これをセラミックグリーンシートの所定の部位に印刷塗布し、次にセラミックグリーンシートを複数枚積層し、1600℃程度の還元雰囲気中で焼成することによって作製される。
【0003】
また、ガラスセラミックスから成る多層基板の場合、配線導体や貫通導体となる導体ペーストとして、銀(Ag)や銅(Cu)を主成分とする導体ペーストを用い、これをガラスセラミックスのグリーンシートの所定の部位に印刷塗布し、次にこのグリーンシートを複数枚積層し、800〜1000℃程度の還元雰囲気中で焼成することによって作製される。
【0004】
このような多層基板において、アルミナセラミックスから成るものの場合、配線導体や貫通導体の材料であるW,Moの電気抵抗率はそれぞれ5.5μΩ・cm,5.7μΩ・cmであり、Agの1.6μΩ・cm、Cuの1.67μΩ・cmに比較して数倍以上の大きさである。従って、配線を細線化して高密度配線を行なうもの、また信号の高速伝送化が進んでいるIC,LSI等の半導体素子を搭載するものに対しては、W,Moの電気抵抗率が大きいため、W,Moから成る配線導体は高密度配線や高速伝送には不向きである。
【0005】
また、ガラスセラミックスから成る多層基板の場合、Ag,Cu等の抵抗の小さい配線導体を形成できるが、高速伝送化が進んでいるコンピュータ等の分野では不十分な配線抵抗である。
【0006】
このような問題を解消するものとして、図2に示すように、複数の絶縁層1a,1b,1cが積層されて成る多層基板1において、上下に重なり合う絶縁層1a,1b,1cの各々に開口の一部分が互いにオーバーラップするように設けられてなる貫通孔2,3,4が設けられ、これらの貫通孔2,3,4に配線材料が充填されてなることにより、配線抵抗値を低減化するものが提案されている(特開平10−4266号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来においては、配線抵抗値を小さくしようとして貫通孔2,3,4のオーバーラップ(重ね合わせ)の度合いを大きくすると、電流の通路面積が大きくなって配線抵抗値は小さくなるが、同じ絶縁層1a,1b,1cにある貫通孔2,3,4間の間隔が小さくなり、絶縁層1a,1b,1cおよび多層基板1の強度が低下するという問題があった。従って、徒に貫通孔2,3,4のオーバーラップの度合いを大きくすることはできず、配線抵抗値の低下には限度があった。
【0008】
従って、本発明は上記事情に鑑みて完成されたものであり、その目的は、多層基板の内部に形成され上下で重ね合わされた貫通導体による内部配線導体の配線抵抗値を十分に低下させ得るとともに、多層基板の強度の低下を防ぐことができるものとすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層基板は、複数の絶縁層が積層され、上下に重なり合う2層の前記絶縁層の各々に、前記絶縁層に形成した貫通孔に導体が充填されて成る貫通導体がそれぞれ複数個、端面をその一部分が互いに重なるようにして順次対向させて設けられて成る多層基板において、前記端面は略長方形状または略長円形状であり、その長手方向で一部分が互いに重なっており、かつ重なっている側の前記端面の面積が反対側の端面の面積よりも大きく、互いに隣り合う前記端面の重なり部分は、該重なり部分に位置する上下の前記貫通孔の内面の傾斜方向が同じであることを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記の構成により、多層配線基板の内部に形成され上下で重ね合わされた貫通導体によって構成された内部配線導体の配線抵抗値を十分に低下させることができる。また、貫通導体の重なっている側の端面の面積が反対側の端面の面積よりも大きいことにより、電流の通路面積が大きくなって配線抵抗値が小さくなるとともにインダクタンスも低減される。また、上下の貫通導体によって形成される形状が略波形になり、滑らかで短縮化された電流経路となるため、例えば高周波信号等を低損失で伝送するのに適したものとなる。さらに、貫通導体の重なっている側の端面の面積が反対側の端面の面積よりも大きいことにより、貫通導体間の絶縁層の体積が大きくなり絶縁層および多層基板の強度の低下が抑えられる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記端面の重なっている側の面積が反対側よりも面積比で10〜60%大きいことを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記の構成により、上下の貫通導体によって形成される形状が略波形になり、滑らかで短縮化された電流経路となるため、例えば高周波信号等を低損失で伝送するのに適したものとなり、また、貫通導体間の絶縁層の体積が大きくなり絶縁層および多層基板の強度の低下が抑制されるという作用効果がさらに向上したものとなる。
【0013】
また本発明において、好ましくは、前記端面の重なっている部分の長手方向における長さが前記端面の長手方向の長さの5分の2以上4分の3未満であることを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記の構成により、電流の通路面積が大きくなって配線抵抗値が小さくなるとともに、貫通導体間の絶縁層の体積が確保されて絶縁層および多層基板の強度の低下が抑制される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の多層基板について以下に説明する。本発明の多層基板の断面図を図1に示す。同図において、11は、複数の絶縁層が積層され、上下に重なり合う2層の絶縁層の各々に、絶縁層に形成した貫通孔に導体が充填されて成る貫通導体がそれぞれ複数個、端面をその一部分が互いに重なるようにして順次対向させて設けられて成る多層基板である。11a,11bは絶縁層、12は貫通孔、13は貫通孔12に充填された導体である。
【0016】
本発明の絶縁層11a,11bは、アルミナ(Al23)セラミックス,窒化アルミニウム(AlN)セラミックス,ムライト(3Al23・2SiO2)セラミックス,炭化珪素(SiC)セラミックス,ガラスセラミックス,窒化珪素(Si34)セラミックス等のセラミックス材料から成る。
【0017】
絶縁層11a,11bがアルミナセラミックスから成る場合、以下のようにして作製される。まず、例えばAl23,酸化珪素(SiO2),酸化マグネシウム(MgO),酸化カルシウム(CaO)などの原料粉末に適当なバインダー、溶剤等を添加混合してスラリーとなす。このスラリーをドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシートとし、次いでセラミックグリーンシートに貫通孔12を形成するための打ち抜き加工等を施すとともに、導体13となる導体ペーストをスクリーン印刷法や圧入法で貫通孔12内に充填する。このセラミックグリーンシートを複数枚積層し、約1600℃の温度で焼成することによって作製される。
【0018】
貫通孔12内に充填される導体13の導体ペーストは、W,Mo,Mn,Cu,Ag等の粉末に有機溶剤,溶媒を添加混合して得られる。この導体ペーストは、絶縁層11a,11bがセラミックスから成る場合、そのセラミックス成分を所定量(1〜50重量%程度)含有していてもよく、その場合絶縁層11a,11bと導体13との接合性が向上する。
【0019】
貫通孔12に導体13を充填して成る貫通導体の端面は略長方形状または略長円形状であり、その長手方向で一部分が互いに重なっており、かつ重なっている側の端面の面積が反対側の端面の面積よりも大きい。その様子を図1(a)〜(c)に示す。図1(b)は貫通孔12aに導体13を充填して成る貫通導体の端面が略長方形状の場合で重なっている側の端面の平面図である。この場合貫通孔12aは、底面が略長方形状の四角錐台状になる。この場合貫通孔12aの開口は正方形であってもよい。図1(c)は貫通孔12bに導体13を充填して成る貫通導体の端面が略長円状(楕円を含む)の場合で重なっている側の端面の平面図である。この場合貫通孔12bは、底面が略長円状の長円錐台状になる。
【0020】
このような四角錐台状、長円錐台状の貫通孔12a,12bは、前述したセラミックグリーンシートに貫通孔12を形成するための打ち抜き加工を施すときに、貫通孔12の重なる側の大きい開口と反対側の小さい開口側から上金型のパンチで打ち抜くようにする。そして、四角錘台状、長円錘台状の貫通孔12と成すには、上金型のパンチとセラミックグリーンシートを載置した下金型の貫通孔12形成用の穴との隙間(パンチの直径の2〜10%程度)を調整するという方法により形成できる。
【0021】
そして、貫通導体の大きい方の端面を長手方向で一部分が互いに重なるようにして、絶縁層11a,11bを重ね合わせて接合させることによって、多層基板11が作製される。絶縁層11a,11bがセラミックグリーンシートの場合、積層した後約1600℃で焼成することにより焼結接合させる。
【0022】
本発明において、貫通導体の端面の重なっている側の面積が反対側よりも面積比で10〜60%大きいことが好ましい。10%よりも小さいと、電流の通路面積が小さくなり易く、その結果配線抵抗値が大きくなるとともに、電流経路がなめらかな曲線となりにくく電流の流れが悪くなるため、インダクタンスが増加することとなる。また、上下の貫通導体12によって形成される形状が角形のジグザグ状となり、図1(a)のような滑らかで短縮化された電流経路Cとならず、例えば高周波信号等を低損失で伝送するのに不向きなものとなる。さらに、同じ絶縁層11a,11bで、貫通孔12間の絶縁層11a,11bの体積が小さくなり、絶縁層11a,11bおよび多層基板11の強度が低下し易くなる。60%を超えると、貫通孔12の内面の傾斜角が大きくなってしまい、貫通孔12を打ち抜き金型にて加工形成するのが困難になる。
【0023】
また、図1(a)に示すように、貫通導体の端面の重なっている部分の長手方向における長さ(W1−W2)が端面の長手方向の長さW1の5分の2以上4分の3未満であることが好ましい。5分の2未満では、電流の通路面積が小さくなって配線抵抗値が大きくなる傾向にある。4分の3を超えると、同じ絶縁層11a,11bで、貫通孔12間の絶縁層11a,11bの体積が小さくなり、絶縁層11a,11bおよび多層基板11の強度が低下し易くなる。
【0024】
具体的には貫通導体の大きい端面の長手方向の長さW1は0.1〜5mm程度であり、貫通導体の小さい端面の長手方向の長さW2は0.05〜4.5mm程度である。
【0025】
本発明の多層基板は、個々の絶縁層11a,11bを作製した後貼り合せることもできる。その場合、貫通導体の大きい端面の算術平均粗さは3μm以下が好ましく、3μmを超えると、上下の貫通導体の接合面に隙間が多くなり、接合面における電気抵抗が大きくなる。貫通導体の大きい端面を平滑化するために、貫通導体の大きい端面を研磨してもよい。また、その端面を含む絶縁層11a,11bの全面を研磨することもできる。
【0026】
また本発明の構成の貫通導体が形成された絶縁層11a,11bは2層を1組とするものであり、多層基板11は、2層の絶縁層11a,11bから成る構成、3層以上の中に2層の絶縁層11a,11bが挿入された構成、2層で1組の絶縁層11a,11bが複数組存在する構成のいずれであってもよい。
【0027】
絶縁層11aに形成される貫通孔12の形状は、貫通孔12の重なっている側の開口の面積が反対側よりも大きいものであり、具体的には図3に示すような種々の形状とし得る。図3(a)は、貫通孔12の開口面に平行な面の面積が、開口が小さい側から途中まで同じであり、途中から漸次大きくなっている形状である。図3(b)は貫通孔12の側面が外側に凸の曲面になっている形状であり、図3(c)は貫通孔12の側面がくぼんだ曲面になっている形状である。
【0028】
かくして、本発明は、貫通導体間の電流の通路面積が大きくなって配線抵抗値が小さくなるとともにインダクタンスも低減される。また、上下の貫通導体によって形成される形状が略波形になり、滑らかで短縮化された電流経路となるため、例えば高周波信号等を低損失で伝送するのに適したものとなる。さらに、貫通導体の重なっている側の端面の面積が反対側の端面の面積よりも大きいことにより、同じ絶縁層で貫通導体間の絶縁層の体積が大きくなり絶縁層および多層基板の強度が保持される。
【0029】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を行なうことは何等差し支えない。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、複数の絶縁層が積層され、上下に重なり合う2層の絶縁層の各々に、絶縁層
に形成した貫通孔に導体が充填されて成る貫通導体がそれぞれ複数個、端面をその一部分が互いに重なるようにして順次対向させて設けられて成る多層基板において、端面は略長方形状または略長円形状であり、その長手方向で一部分が互いに重なっており、かつ重なっている側の端面の面積が反対側の端面の面積よりも大きいことにより、多層配線基板の内部に形成され上下で重ね合わされた貫通導体によって構成された内部配線導体の配線抵抗値を十分に低下させることができる。
【0031】
また、貫通導体の重なっている側の端面の面積が反対側の端面の面積よりも大きいことにより、電流の通路面積が大きくなって配線抵抗値が小さくなるとともにインダクタンスも低減される。また、上下の貫通導体によって形成される形状が略波形になり、滑らかで短縮化された電流経路となるため、例えば高周波信号等を低損失で伝送するのに適したものとなる。さらに、貫通導体の重なっている側の端面の面積が反対側の端面の面積よりも大きいことにより、同じ絶縁層で貫通導体間の絶縁層の体積が大きくなり絶縁層および多層基板の強度が保持される。
【0032】
本発明は、好ましくは端面の重なっている側の面積が反対側よりも面積比で10〜60%大きいことにより、上下の貫通導体によって形成される形状が略波形になり、滑らかで短縮化された電流経路となるため、例えば高周波信号等を低損失で伝送するのに適したものとなり、また、同じ絶縁層で貫通導体間の絶縁層の体積が大きくなり絶縁層および多層基板の強度が保持されるという作用効果がさらに向上したものとなる。
【0033】
また本発明は、好ましくは端面の重なっている部分の長手方向における長さが端面の長手方向の長さの5分の2以上4分の3未満であることにより、電流の通路面積が大きくなって配線抵抗値が小さくなるとともに、同じ絶縁層で貫通導体間の絶縁層の体積が確保されて絶縁層および多層基板の強度の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の多層基板について実施の形態の例を示す断面図、(b)は貫通導体の端面が略長方形状の場合で重なっている側の端面の平面図、(c)は貫通導体の端面が略長円状の場合で重なっている側の端面の平面図である。
【図2】従来の多層基板の例の断面図である。
【図3】本発明の多層基板について実施の形態の他の例を示し、(a)〜(c)は貫通孔の各種形状を示す断面図である。
【符号の説明】
11:多層基板
11a,11b:絶縁層
12:貫通孔
13:導体

Claims (3)

  1. 複数の絶縁層が積層され、上下に重なり合う2層の前記絶縁層の各々に、前記絶縁層に形成した貫通孔に導体が充填されて成る貫通導体がそれぞれ複数個、端面をその一部分が互いに重なるようにして順次対向させて設けられて成る多層基板において、前記端面は略長方形状または略長円形状であり、その長手方向で一部分が互いに重なっており、かつ重なっている側の前記端面の面積が反対側の端面の面積よりも大きく、互いに隣り合う前記端面の重なり部分は、該重なり部分に位置する上下の前記貫通孔の内面の傾斜方向が同じであることを特徴とする多層基板。
  2. 前記端面の重なっている側の面積が反対側よりも面積比で10〜60%大きいことを特徴とする請求項1記載の多層基板。
  3. 前記端面の重なっている部分の長手方向における長さが前記端面の長手方向の長さの5分の2以上4分の3未満であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の多層基板。
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