以下、本発明の露光装置について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、露光装置EXは、マスクMを支持して移動可能なマスクステージMSTと、基板Pを保持する基板ホルダPHを有し、基板ホルダPHに基板Pを保持して移動可能な基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、基板P上に液体LQを供給する液体供給機構10と、基板P上の液体LQを回収する液体回収機構20とを備えている。本実施形態において、液体LQには純水が用いられる。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間、液体供給機構10から供給した液体LQにより投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の少なくとも一部に、投影領域AR1よりも大きく且つ基板Pよりも小さい液浸領域AR2を局所的に形成する。具体的には、露光装置EXは、液体供給機構10により、投影光学系PLの像面側先端部の光学素子2とその光学素子2に対向する基板P表面(露光面)との間の空間に液体LQを供給する。そして、露光装置EXは、前記空間のうち少なくとも露光光ELの光路を含む空間に液体LQを満たした状態で、投影光学系PL及び前記空間の液体LQを介してマスクMのパターン像を基板P上に投影することによって、基板Pを露光する。
ここで、本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向(所定方向)における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、水平面内においてマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向、所定方向)をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向(非走査方向)、X軸及びY軸方向に垂直で投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ上にレジストを塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
照明光学系ILは、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態では、ArFエキシマレーザ光が用いられる。上述したように、本実施形態における液体LQは純水であって、露光光ELがArFエキシマレーザ光であっても透過可能である。また、純水は紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能であって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。マスクステージMSTはリニアモータ等のマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上には移動鏡40が設けられている。また、移動鏡40に対向する位置にはレーザ干渉計41が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計41によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計41の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、基板P側の先端部に設けられた光学素子(レンズ)2を含む複数の光学素子で構成されており、これら光学素子は鏡筒PKで支持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、本実施形態の投影光学系PLの先端部の光学素子2は鏡筒PKに対して着脱(交換)可能に設けられている。また、先端部の光学素子2は鏡筒PKより露出しており、液浸領域AR2の液体LQは光学素子2に接触する。これにより、金属からなる鏡筒PKの腐蝕等が防止されている。
基板ステージPSTは、基板Pを基板ホルダPHを介して保持するZステージ52と、Zステージ52を支持するXYステージ53とを備えている。XYステージ53はベース54上に支持されている。基板ステージPSTはリニアモータ等の基板ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。基板ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。Zステージ52は基板ホルダPHに保持されている基板PをZ軸方向、及びθX、θY方向(傾斜方向)に移動可能である。XYステージ53は基板ホルダPHに保持されている基板PをZステージ52を介してXY方向(投影光学系PLの像面と実質的に平行な方向)、及びθZ方向に移動可能である。なお、ZステージとXYステージとを一体的に設けてよいことは言うまでもない。
基板ステージPST上には凹部55が設けられており、基板ホルダPHは凹部55に配置されている。そして、基板ステージPSTのうち凹部55以外の上面51は、基板ホルダPHに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)になるような平坦面(平坦部)となっている。すなわち、基板ステージPSTは、保持した基板Pの周囲に、その基板Pの表面とほぼ面一の平坦面51を有した構成となっている。
基板ステージPST(Zステージ52)上には移動鏡42が設けられている。また、移動鏡42に対向する位置にはレーザ干渉計43が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計43によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計43の計測結果に基づいて、レーザ干渉計43で規定される2次元座標系内で基板ステージ駆動装置PSTDを介してXYステージ53を駆動することで基板ステージPSTに支持されている基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。
また、露光装置EXは、基板P表面の面位置情報を検出するフォーカス検出系30を有している。フォーカス検出系30は、投射部30Aと受光部30Bとを有し、投射部30Aから液体LQを介して基板P表面(露光面)に斜め方向から検出光Laを投射するとともに、その基板Pからの反射光を液体LQを介して受光部30Bで受光することによって、基板P表面の面位置情報を検出する。制御装置CONTは、フォーカス検出系30の動作を制御するとともに、受光部30Bの受光結果に基づいて、所定基準面(像面)に対する基板P表面のZ軸方向における位置(フォーカス位置)を検出する。また、基板P表面における複数の各点での各フォーカス位置を求めることにより、フォーカス検出系30は基板Pの傾斜方向の姿勢を求めることもできる。なお、フォーカス検出系30の構成としては、例えば特開平8−37149号公報に開示されているものを用いることができる。
制御装置CONTは基板ステージ駆動装置PSTDを介して基板ステージPSTのZステージ52を駆動することにより、Zステージ52に保持されている基板PのZ軸方向における位置(フォーカス位置)、及びθX、θY方向における位置を制御する。すなわち、Zステージ52は、フォーカス検出系30の検出結果に基づく制御装置CONTからの指令に基づいて動作し、基板Pのフォーカス位置(Z位置)及び傾斜角を制御して基板Pの表面(露光面)を投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面に合わせ込む。
投影光学系PLの先端近傍には、基板P上のアライメントマーク1あるいはZステージ52上に設けられた基準部材300上の基板側基準マークPFMを検出する基板アライメント系350が設けられている。なお本実施形態の基板アライメント系350では、例えば特開平4−65603号公報に開示されているような、基板ステージPSTを静止させてマーク上にハロゲンランプからの白色光等の照明光を照射して、得られたマークの画像を撮像素子により所定の撮像視野内で撮像し、画像処理によってマークの位置を計測するFIA(フィールド・イメージ・アライメント)方式が採用されている。
また、マスクステージMSTの近傍には、マスクMと投影光学系PLとを介してZステージ52上に設けられた基準部材300上のマスク側基準マークMFMを検出するマスクアライメント系360が設けられている。なお本実施形態のマスクアライメント系360では、例えば特開平7−176468号公報に開示されているような、マークに対して光を照射し、CCDカメラ等で撮像したマークの画像データを画像処理してマーク位置を検出するVRA(ビジュアル・レチクル・アライメント)方式が採用されている。
液体供給機構10は、液体LQを投影光学系PLの像面側先端部と基板Pとの間の空間に供給するためのものであって、液体LQを送出可能な液体供給部11と、液体供給部11にその一端部を接続し、他端部を後述するノズル部材70の供給口12(12A、12B)に接続した供給管13(13A、13B)とを備えている。供給管13は液体LQを流すための流路を有している。液体供給部11は、液体LQを収容するタンク、加圧ポンプ、及びフィルタユニット等を備えている。液体供給部11に配置されているフィルタユニットは、液体LQ中に含まれる泡(bubble)や異物(particle)を取り除くもので、液体供給部11から供給される液体LQ中に含まれる0.1μmより大きな泡(bubble)や異物(particle)は常時0.3個/cm3以下となり、平均的にも0.03個/cm3以下となっている。液体供給部11の液体供給動作は制御装置CONTにより制御される。基板P上に液浸領域AR2を形成する際、液体供給機構10は液体LQを基板P上に供給する。
供給管13A、13Bの途中には、供給管13A、13Bの流路の開閉を行うためのバルブ15A、15Bがそれぞれ設けられている。バルブ15(15A、15B)の開閉動作は制御装置CONTにより制御されるようになっている。
液体回収機構20は、投影光学系PLの像面側の液体LQを回収するためのものであって、液体LQを回収可能な液体回収部21と、液体回収部21にその一端部を接続し、他端部を後述するノズル部材70の回収口22(22A、22B)に接続した回収管23(23A、23B)とを備えている。液体回収部21は例えば真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、回収された液体LQと気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。なお真空系として、露光装置EXに真空ポンプを設けずに、露光装置EXが配置される工場の真空系を用いるようにしてもよい。液体回収部21の液体回収動作は制御装置CONTにより制御される。基板P上に液浸領域AR2を形成するために、液体回収機構20は液体供給機構10より供給された基板P上の液体LQを所定量回収する。
投影光学系PLを構成する複数の光学素子のうち、液体LQに接する光学素子2の近傍にはノズル部材70が配置されている。ノズル部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方において、光学素子2の側面を囲むように設けられた環状部材である。ノズル部材70と光学素子2との間には隙間が設けられているが、その隙間には液体LQが浸入しないように、且つその隙間から液体LQ中に気泡が混入しないように構成されている。本実施形態において、ノズル部材70は、液体供給機構10及び液体回収機構20それぞれの一部を構成している。
ノズル部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方に設けられ、その基板P表面に対向するように配置された液体供給口12(12A、12B)を備えている。本実施形態において、ノズル部材70は2つの液体供給口12A、12Bを有している。液体供給口12A、12Bはノズル部材70の下面70Aに設けられている。
また、ノズル部材70は、その内部に液体供給口12A、12Bに対応した供給流路を有している。また、液体供給口12A、12B及び供給流路に対応するように複数(2つ)の供給管13A、13Bが設けられている。そして、供給流路の一端部は供給管13A、13Bを介して液体供給部11にそれぞれ接続され、他端部は液体供給口12A、12Bにそれぞれ接続されている。
また、2つの供給管13A、13Bのそれぞれの途中には、液体供給部11から送出され、液体供給口12A、12Bのそれぞれに対する単位時間あたりの液体供給量を制御するマスフローコントローラと呼ばれる流量制御器16(16A、16B)が設けられている。流量制御器による液体供給量の制御は制御装置CONTの指令信号の下で行われる。
更に、ノズル部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方に設けられ、その基板P表面に対向するように配置された液体回収口22(22A、22B)を備えている。本実施形態において、ノズル部材70は2つの液体回収口22A、22Bを有している。液体回収口22A、22Bはノズル部材70の下面70Aに設けられている。
また、ノズル部材70は、その内部に液体回収口22A、22Bに対応した回収流路を有している。また、液体回収口22A、22B及び回収流路に対応するように複数(2つ)の回収管23A、23Bが設けられている。そして、回収流路の一端部は回収管23A、23Bを介して液体回収部21にそれぞれ接続され、他端部は液体回収口22A、22Bにそれぞれ接続されている。
図2はノズル部材70を下面70A側から見た図である。液体供給機構10を構成する液体供給口12A、12Bは、投影光学系PLの投影領域AR1を挟んだX軸方向両側のそれぞれの位置に設けられている。本実施形態において、液体供給口12A、12Bのそれぞれは、Y軸方向を長手方向とし、そのY軸方向両端部を内側に曲げたスリット状に形成されており、投影領域AR1を囲むように設けられている。また、液体回収機構20を構成する液体回収口22A、22Bは、投影光学系PLの投影領域AR1に対して液体供給機構10の液体供給口12A、12Bの外側に設けられている。液体回収口22A、22Bは、液体供給口12A、12Bの外側において、Y軸方向を長手方向し、そのY軸方向両端部を内側に曲げたスリット状に形成されており、液体供給口12A、12B、及び投影光学系PLの投影領域AR1を囲むように設けられている。なお、図2においては、液体回収口22A、22Bは不連続に形成されているが、液体回収をより確実に行うためには、液体回収口22A、22Bを連続的に環状に形成するのが望ましい。また、本実施形態における投影光学系PLの投影領域AR1は、Y軸方向を長手方向とし、X軸方向を短手方向とした平面視矩形状に設定されている。
また、ノズル部材70の下面70Aには、液体供給口12とは別の第2供給口90A、90Bが設けられている。第2供給口90A、90Bは、下面70Aにおいて投影光学系PLの投影領域AR1を挟んだY軸方向両側のそれぞれの位置に設けられている。本実施形態において、第2供給口90A、90Bは略円形状に形成されている。制御装置CONTは、液体供給口12及び液体回収口22を使った液体LQの供給及び回収により形成された液浸領域AR2に対して、第2供給口90A、90Bを介して液体LQを追加可能であるとともに、第2供給口90A、90Bを介して液浸領域AR2の液体LQの一部を回収可能である。制御装置CONTは、第2供給口90A、90Bを使って液体LQの追加及び一部回収を行うことにより、液浸領域AR2の液体LQの圧力を調整することができる。そして、制御装置CONTは、液浸領域AR2の液体LQの圧力を調整することで、その液浸領域AR2の液体LQが基板Pや基板ステージPST、あるいは投影光学系PLの光学素子2に及ぼす力を調整することができる。
液体供給部11及び前記流量制御器の動作は制御装置CONTにより制御される。基板P上に液体LQを供給する際、制御装置CONTは、液体供給部11より液体LQを送出し、供給管13A、13B、及び供給流路を介して、基板Pの上方に設けられている液体供給口12A、12Bより基板P上に液体LQを供給する。このとき、液体供給口12A、12Bは投影光学系PLの投影領域AR1を挟んだ両側のそれぞれに配置されており、その液体供給口12A、12Bを介して、投影領域AR1の両側から液体LQを供給可能である。また、液体供給口12A、12Bのそれぞれから基板P上に供給される液体LQの単位時間あたりの量は、供給管13A、13Bのそれぞれに設けられた流量制御器16A、16Bにより個別に制御可能である。
液体回収部21の液体回収動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTは液体回収部21による単位時間あたりの液体回収量を制御可能である。基板Pの上方に設けられた液体回収口22A、22Bから回収された基板P上の液体LQは、ノズル部材70の回収流路、及び回収管23A、23Bを介して液体回収部21に回収される。
なお、本実施形態において、供給管13A、13Bは1つの液体供給部11に接続されているが、供給管の数に対応した液体供給部11を複数(ここでは2つ)設け、供給管13A、13Bのそれぞれを前記複数の液体供給部11のそれぞれに接続するようにしてもよい。また、回収管23A、23Bは、1つの液体回収部21に接続されているが、回収管の数に対応した液体回収部21を複数(ここでは2つ)設け、回収管23A、23Bのそれぞれを前記複数の液体回収部21のそれぞれに接続するようにしてもよい。
本実施形態において、基板Pを液浸露光するときは、制御装置CONTは、液体供給機構10による基板P上に対する液体LQの供給と並行して、液体回収機構20による基板P上の液体LQの回収を行いつつ、基板Pを支持する基板ステージPSTをX軸方向(走査方向)に移動しながら、マスクMのパターン像を投影光学系PLと基板Pとの間の液体LQ及び投影光学系PLを介して基板P上に投影露光する。
液浸領域AR2を形成するために液体供給機構10の液体供給部11から供給された液体LQは、供給管13A、13Bを流通した後、ノズル部材70内部に形成された供給流路を介して液体供給口12A、12Bより基板P上に供給される。液体供給口12A、12Bから基板P上に供給された液体LQは、投影光学系PLの先端部(光学素子2)の下端面と基板Pとの間に濡れ拡がるように供給され、投影領域AR1を含む基板P上の一部に、基板Pよりも小さく且つ投影領域AR1よりも大きい液浸領域AR2を局所的に形成する。このとき、制御装置CONTは、液体供給機構10のうち投影領域AR1のX軸方向(走査方向)両側に配置された液体供給口12A、12Bのそれぞれより、走査方向に関して投影領域AR1の両側から基板P上への液体LQの供給を同時に行う。これにより、液浸領域AR2は均一且つ良好に形成されている。
本実施形態における露光装置EXは、マスクMと基板PとをX軸方向(走査方向)に移動しながらマスクMのパターン像を基板Pに投影露光するものであって、走査露光時には、液浸領域AR2の液体LQ及び投影光学系PLを介してマスクMの一部のパターン像が投影領域AR1内に投影され、マスクMが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、基板Pが投影領域AR1に対して+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。基板P上には複数のショット領域S1〜S24(図5参照)が設定されており、1つのショット領域への露光終了後に、基板Pのステッピング移動によって次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下、ステップ・アンド・スキャン方式で基板Pを移動しながら各ショット領域S1〜S24に対する走査露光処理が順次行われる。
図3は基板ステージPST上に保持された基板P及びノズル部材70近傍を示す拡大図である。本実施形態においては、光学素子2の液体接触面(下端面)2Aは平坦面となっており、ノズル部材70の液体接触面(下端面)70Aもほぼ平坦面となっている。そして、ノズル部材70の下端面70Aと光学素子2の下端面2Aとはほぼ面一となっている。これにより、ノズル部材70の下端面70A及び光学素子2の下端面2Aと、基板P(基板ステージPST)との間に液浸領域AR2を良好に形成することができる。なお、液浸領域AR2が良好に形成できれば、ノズル部材70の下端面70Aに段差が存在してもよいし、ノズル部材70の下端面70Aと光学素子2の下端面2Aとの間に段差が存在してもよい。
投影光学系PLの光学素子2の液体接触面2Aは親液性である。本実施形態において、液体供給機構10から供給される液体LQは純水であり、光学素子2は、純水との親和性が高い蛍石で形成されている。光学素子2の液体接触面2Aを親液性とすることで、その液体接触面(端面)2Aのほぼ全面に液体LQを密着させることができる。そして、液体供給機構10は、光学素子2の液体接触面2Aとの親和性が高い液体(純水)LQを供給しているので、光学素子2の液体接触面2Aと液体LQとの密着性を高めることができる。なお、光学素子2は水との親和性が高い石英であってもよい。また光学素子2の液体接触面2Aに親水化(親液化)処理を施して、液体LQとの親和性をより高めるようにしてもよい。本実施形態における液体LQは極性の大きい水であるため、親液化処理として例えばアルコールなど極性の大きい分子構造の物質で薄膜を形成することで、この光学素子2の液体接触面2Aに親水性を付与する。すなわち、液体LQとして水を用いる場合にはOH基など極性の大きい分子構造を持ったものを液体接触面2Aに設ける処理が望ましい。あるいは、MgF2、Al2O3、SiO2などの親液性材料を液体接触面2Aに設けてもよい。
上記親液性を有する光学素子2の液体接触面2Aの液体LQとの接触角θ2Aは、θ2A≦30°の条件を満足するように設けられ、好ましくはθ2A≦5°の条件を満足するように設けられている。本実施形態においては、液体接触面2Aの液体LQとの接触角θ2Aが上記条件を満足するように、上記親液性材料の選定や親液化処理の処理条件の設定が行われている。
また、ノズル部材70の液体接触面70Aも親液性(親水性)を有している。ノズル部材70の液体接触面70Aも光学素子2の液体接触面2A同様、親液化処理を施されて親液性となっている。すなわち、本実施形態においては、基板ステージPSTに保持された基板Pの被露光面(表面)と対向する部材の表面のうち少なくとも液体接触面は親液性となっている。ノズル部材70の液体接触面70Aに対する親液化処理としては、光学素子2の液体接触面2Aに対する親液化処理と同様、例えばOH基など極性の大きい分子構造を持ったものを液体接触面70Aに設ける処理や、MgF2、Al2O3、SiO2などの親液性材料を液体接触面70Aに設ける処理が挙げられる。そして、ノズル部材70の液体接触面70Aの液体LQに対する親和性と、光学素子2の液体接触面2Aの液体LQに対する親和性とはほぼ同一であることが好ましい。すなわち、ノズル部材70の液体接触面70Aの液体LQとの接触角θ70Aは、θ70A≦30°の条件を満足するように設けられ、θ70A≦5°の条件を満足することが好ましい。
基板Pの表面は、液体LQに対して所定の親和性(接触角)を有している。具体的には、基板Pの表面は、その表面に液体LQが配置されたとき、その表面上の液体LQから基板Pが受ける力が小さくなるような液体LQに対する親和性を有するように設定されている。換言すれば、基板P上の液体LQが基板Pに及ぼす力を小さくするように(低減するように)、基板Pの表面の液体LQに対する親和性が設定されている。
図3に示すように、基板Pは、基材Wと、その基材W上に塗布された感光材Rgとを備えている。基材Wは半導体ウエハを含み、感光材Rgはフォトレジストを含む。更に、本実施形態においては、基板Pは、基材W上に塗布された感光材Rgを覆う膜TCを備えている。膜TCとしては、トップコート層と呼ばれる液体LQから感光材Rgを保護する保護膜や液体LQの回収性を高める膜などが挙げられる。なお、膜TCは無くてもよい。そして、本実施形態においては、膜TC(あるいは感光材Rg)が、基板Pが液体LQから受ける力を小さくなるような液体LQに対する親和性を有している。
そして、基板Pの表面は撥液性を有している。基板Pの表面に所定の撥液性(撥液性レベル)を付与することで、その表面上に配置された液体LQから基板Pが受ける力を小さくすることができる。
本実施形態において、撥液性を有する基板Pの表面(膜TCの表面)の液体LQとの接触角θPは、85°≦θP≦95°の条件を満足するように設けられている。なお、膜TCが無く、基板Pの表面が感光材Rgの表面である場合には、その感光材Rgの表面の液体LQとの接触角(θP)が上記条件を満足するように設定される。本実施形態においては、基板Pの表面の液体LQとの接触角θPが上記条件を満足するように、保護膜TC(あるいは感光材Rg)を形成するための材料の選定や塗布条件などの設定が行われている。
85°≦θP≦95°の条件を満足することにより、基板Pの表面上に配置された液体LQから基板Pが受ける力を小さくすることができる。このことについて、図4を参照しながら説明する。
図4は、光学素子2及びノズル部材70と基板Pとの間に形成された液浸領域AR2の液体(純水)LQが基板Pに及ぼす力の分布を求めたシミュレーション実験結果を示す模式図であって、XY平面と平行な面での力の分布図である。なお図4では、供給口12、回収口22、及び光学素子2などの位置関係と基板Pが液体LQから受ける力の分布との関係を見やすくするために、基板Pが液体LQから受ける力の分布をノズル部材70の下面に対応付けて図示している。
図4(a)は、基板Pの表面の液体LQに対する接触角θPが105°の場合の力の分布図である。同様に、図4(b)、(c)、(d)、(e)のそれぞれは、基板Pの表面の液体LQに対する接触角θPが95°、90°、85°、75°の場合の力の分布図である。ここで、図4には、基板Pを液浸露光しているときと同じ条件でのシミュレーション結果、すなわち投影光学系PL(液浸領域AR2)に対して基板PがX軸方向に移動している状態でのシミュレーション結果が示されている。また、シミュレーションでは、光学素子2の液体接触面2Aの液体LQとの接触角θ2A、及びノズル部材70の液体接触面70Aの液体LQとの接触角θ70Aは、それぞれ5°としている。
図4において、領域H0は、液体LQが基板Pに及ぼす力がほぼ零である領域である。すなわち、液浸領域AR2のうち領域H0においては、基板Pには大気圧に相当する力のみが作用されており、液体LQによる力(液体LQの自重を含む)は作用されていない。換言すれば、基板P上のうち液浸領域AR2以外の非液浸領域AR3(図3参照)において作用されている力と、液浸領域AR2の領域H0において作用されている力とはほぼ同じ(大気圧)である。したがって、液浸領域AR2の全てが領域H0となる場合、液浸領域AR2及び非液浸領域AR3のそれぞれに対応する領域を含む基板Pの表面全域に対してほぼ均一な力(大気圧に相当する力)が作用されていることになる。この場合、基板Pは局所的な力を受けず、変形等を生じない。
また、液浸領域AR2のうち領域H+1は、基板Pに液体LQによる正の力(第1の正力(正圧))が作用されている領域である。領域H+1においては基板Pは液体LQによって第1の正力で下方に押されている。また、領域H+2においては、基板Pは液体LQによって第1の正力よりも大きい第2の正力で下方に押されている。領域H+3においては、基板Pは液体LQによって第2の正力よりも大きい第3の正力で下方に押されている。したがって、領域H+1、領域H+2、領域H+3になるにつれて、液体LQにより基板Pに及ぼされる押圧力は大きくなり、基板Pの変形量も大きくなる。本実施形態において、第1、第2、及び第3の正力は、大気圧を基準(零)として、+20Pa、+40Pa、及び+60Pa程度である。
また、液浸領域AR2のうち領域H−1は、基板Pに液体LQによる負の力(第1の負力(負圧))が作用されている領域である。領域H−1においては、基板Pは液体LQによって第1の負力で上方に(液体LQ側に)引っ張られている。また、領域H−2においては、基板Pは液体LQによって第1の負力よりも大きい第2の負力で上方に引っ張られている。領域H−3においては、基板Pは液体LQによって第2の負力よりも大きい第3の負力で上方に引っ張られている。したがって、領域H−1、領域H−2、領域H−3になるにつれて、液体LQにより基板Pに及ぼされる引っ張り力は大きくなり、基板Pの変形量も大きくなる。本実施形態において、第1、第2、及び第3の負力は、大気圧を基準(零)として、−20Pa、−40Pa、及び−60Pa程度である。
そして、図4に示すように、基板Pの液体LQに対する接触角θPに応じて、その基板P上の液体LQが基板Pに及ぼす力は変化する。図4(c)に示すように、基板Pの液体LQに対する接触角θPが90°であるとき、液浸領域AR2において領域H0が占める割合が最も多くなる。すなわち、接触角θP=90°であるとき、基板P上に形成された液浸領域AR2の液体LQが基板Pに及ぼす力が最も小さくなる。
また、基板Pの液体LQに対する接触角θPが大きくなるにつれて、その基板P上の液体LQが基板Pに及ぼす正力が大きくなる。一方、接触角θPが小さくなるにつれて、その基板P上の液体LQが基板Pに及ぼす負力が大きくなる。具体的には、例えば図4(b)に示すように、基板Pの液体LQに対する接触角θPが95°であるとき、液浸領域AR2において領域H+1が占める割合が最も多くなる。また、図4(a)に示すように、基板Pの液体LQに対する接触角θPが105°であるとき、液浸領域AR2において領域H+2が占める割合が最も多くなる。すなわち、接触角θPが95°、105°と大きくなるにつれて、基板P上に形成された液浸領域AR2の液体LQが基板Pに及ぼす力(正力)も大きくなる。
また、図4(d)に示すように、基板Pの液体LQに対する接触角θPが85°であるとき、液浸領域AR2において領域H−1が占める割合が最も多くなる。また、図4(e)に示すように、基板Pの液体LQに対する接触角θPが75°であるとき、液浸領域AR2において領域H−2が占める割合が最も多くなる。すなわち、接触角θPが85°、75°と小さくなるにつれて、基板P上に形成された液浸領域AR2の液体LQが基板Pに及ぼす力(負圧)も大きくなる。
以上説明したように、基板Pの液体LQに対する接触角θPが90°であるとき、基板P上に形成された液浸領域AR2の液体LQが基板Pに及ぼす力が最も小さく、基板Pの変形(歪み)、基板ステージPSTの変形や振動を抑えることができる。したがって、基板Pの液体LQに対する接触角θPは90°近傍であることが好ましい。また、基板ステージPST上の隙間(例えば基板ステージPSTの上面51と基板Pとの間の隙間)などへの液体LQの防止することができる。したがって、上記液体LQが浸入しない条件や、基板Pなどの変形量の許容値などを考慮して、基板Pの液体LQに対する接触角θPは、85°≦θP≦95°の条件を満足することが好ましい。
なお、本実施形態においては、光学素子2の液体接触面2Aやノズル部材70の液体接触面70Aの液体LQに対する接触角θ2A、θ70Aを30°以下(好ましくは5°以下)とし、その場合において、基板Pの表面の液体LQに対する接触角θPを、85°≦θP≦95°の条件を満足するように設定しているが、液浸領域AR2の液体LQが基板Pに及ぼす力は、光学素子2の液体接触面2Aと液体LQとの親和性(接触角)や、ノズル部材70の液体接触面70Aと液体LQとの親和性(接触角)に応じても変化する。そこで、基板Pの表面の液体LQに対する親和性は、液体LQに接触する投影光学系PLの光学素子2の液体接触面2Aと液体LQとの親和性、及びノズル部材70の液体接触面70Aと液体LQとの親和性も考慮して設定することが好ましい。
逆に、基板P上の液体LQが基板Pに及ぼす力を小さくするように、光学素子2の液体接触面2Aの液体LQに対する親和性や、ノズル部材70の液体接触面70Aに対する親和性を設定するようにしてもよい。
一方で、例えばノズル部材70の形状などに応じてノズル部材70の液体接触面70Aが微小となる場合、基板Pが液体LQから受ける力が、液体接触面70Aと液体LQとの親和性の影響を受けない可能性もある。したがって、そのような場合には、液体接触面70Aと液体LQとの親和性を考慮せずに、光学素子2の液体接触面2Aと液体LQとの親和性のみを考慮して、基板Pの表面の液体LQに対する親和性を設定するようにしてもよい。更には、光学素子2の液体接触面2Aが微小である場合などにおいては、基板Pが液体LQから受ける力が、液体接触面2Aと液体LQとの親和性の影響を受けない可能性もある。したがって、そのような場合には、液体接触面2Aと液体LQとの親和性を考慮せずに、基板Pの表面の液体LQに対する親和性を設定するようにしてもよい。
なお、基板Pの表面の液体LQに対する親和性を設定するとき、液浸領域AR2のうち領域H0が占める割合を考慮して設定するようにしてもよいし、基板Pが液浸領域AR2の液体LQから受ける力の総和を考慮して設定するようにしてもよい。
また、液体LQの圧力は、基板P(基板ステージPST)の移動状態によっても変化するので、基板P(基板ステージPST)の液体LQとの接触角は、基板P(基板ステージPST)の移動状態を考慮して設定しておくとよい。例えば、本実施形態においては、基板Pは移動しながら露光されるので、露光中、すなわち移動中の基板Pに液体LQが及ぼす力が小さくなるように、基板Pの液体LQとの接触角を設定するとよいし、露光装置EXが基板Pをほぼ静止した状態で露光する一括型の露光装置の場合には、静止している基板Pに液体LQが及ぼす力が小さくなるように基板Pの液体LQとの接触角を設定すればよい。
図3に戻って、基板ステージPSTは、基板ホルダPHで保持した基板Pの周囲に、その基板Pの表面とほぼ面一の上面51を有している。基板ステージPSTの上面51は平坦面(平坦部)となっている。
基板ステージPSTの上面51は、液体LQに対して所定の親和性(接触角)を有している。具体的には、基板ステージPSTの上面51は、その上面51に液体LQが配置されたとき、上面51が液体LQから受ける力が小さくなるような液体LQに対する親和性を有している。
基板ステージPSTの上面51は撥液化処理されて撥液性を有している。基板ステージPSTの上面51に所定の撥液性(撥液性レベル)を付与することで、その上面51上に配置された液体LQから基板ステージPSTが受ける力を小さくすることができる。
本実施形態においては、上面51に撥液性材料からなる膜51Cを設けることで、上面51に撥液性を付与している。撥液化処理のための撥液性材料としては、例えばフッ素系樹脂材料あるいはアクリル系樹脂材料等が挙げられる。また、膜51Cは前記撥液性材料を上面51に塗布することで形成される。なお、膜51Cを、前記撥液性材料からなる薄膜を貼付することで形成してもよい。撥液性にするための撥液性材料としては液体LQに対して非溶解性の材料が用いられる。なお、上面51を含む基板ステージPST全体又は一部を例えばポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))等のフッ素系樹脂をはじめとする撥液性を有する材料で形成してもよい。
そして、上記撥液性を有する基板ステージPSTの上面51の液体LQとの接触角θ51は、85°≦θ51≦95°の条件を満足するように設けられている。本実施形態においては、上面51の液体LQとの接触角θ51が、上記条件を満足するように、膜51Cを形成するための撥液性材料の選定や撥液化処理の処理条件の設定が行われている。
基板ステージPSTの上面51の液体(純水)LQとの接触角θ51は、85°≦θ51≦95°の条件を満足するように設けられているので、図4を参照して説明したように、その上面51上に配置された液体LQから基板ステージPSTが受ける力を小さくすることができる。
また本実施形態においては、移動鏡42の上面42Aと基板ステージPSTの上面51ともほぼ面一となっている。移動鏡42の上面42Aも撥液化処理されて撥液性を有している。上面42Aの液体LQに対する接触角は、基板ステージPSTの上面51の液体LQに対する接触角とほぼ同一に設定されている。そして、移動鏡42の上面42Aを含む基板ステージPSTの上面は、基板Pを保持した状態でほぼ面一となっている。
基板Pの周囲に基板P表面とほぼ面一の上面51を設けることにより、基板Pのエッジ領域Eを液浸露光するときにおいても、投影光学系PLの像面側に液体LQを保持して液浸領域AR2を良好に形成することができる。また、基板Pのエッジ部とその基板Pの周囲に設けられた平坦面(上面)51との間には0.1〜2mm程度の隙間があるが、液体LQの表面張力によりその隙間に液体LQが流れ込むことはほとんどなく、基板Pの周縁近傍を露光する場合にも、平坦面51により投影光学系PLの下に液体LQを保持することができる。
そして、この場合においても、基板ステージ51の上面51の液体LQに対する親和性は、液体LQに接触する投影光学系PLの光学素子2の液体接触面2Aと液体LQとの親和性、及びノズル部材70の液体接触面70Aと液体LQとの親和性も考慮して設定することが好ましい。
あるいは、基板ステージPSTの上面51上の液体LQが基板ステージPSTに及ぼす力を小さくするように、光学素子2の液体接触面2Aの液体LQに対する親和性や、ノズル部材70の液体接触面70Aに対する親和性を設定するようにしてもよい。
あるいは、ノズル部材70の液体接触面70Aや光学素子2の液体接触面2Aが微小である場合、それら液体接触面70Aと液体LQとの親和性、あるいは液体接触面2Aと液体LQとの親和性を考慮せずに、基板Pの表面の液体LQに対する親和性を設定するようにしてもよい。
また、本実施形態では、基板ステージPSTの上面51の液体LQに対する親和性(接触角)と、基板Pの表面の液体LQに対する親和性(接触角)とがほぼ同一となるように、上記材料の選定や処理条件の設定などが行われている。基板ステージPSTの上面51の液体LQに対する親和性(接触角)と、基板Pの表面の液体LQに対する親和性(接触角)とをほぼ同一にすることにより、基板Pのエッジ領域Eなどを液浸露光するときに、基板Pと上面51とを含むように液体LQの液浸領域AR2を形成したり、基板Pと上面51との間で液浸領域AR2を移動する場合においても、液体LQの基板P(基板ステージPST)に及ぼす力の変動(圧力変動)や、その圧力変動などに起因する液体LQが漏出、ひいては露光精度及び計測精度の劣化などの不都合を防止することができる。
以上説明したように、基板P上あるいは基板ステージPSTの上面51上の液体LQが基板Pや基板ステージPSTに及ぼす力を低減するように、基板Pの表面の液体LQに対する親和性、あるいは基板ステージPSTの上面51の液体LQに対する親和性を設定することで、基板Pや基板ステージPST、あるいは投影光学系PLのうち液体LQに接する光学素子2の変形(歪み)等の発生を防止することができる。したがって、基板Pや基板ステージPSTの変形に伴う基板P上でのパターンの重ね合わせ精度の劣化等の不都合を防止し、高い露光精度を得ることができる。
また、例えば特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置に液浸法を適用した場合、例えば計測ステーションにおいて、基板P上に液浸領域AR2を形成しない状態で(液体LQを介さずに)基板Pの表面情報をフォーカス検出系を使って計測してその基板Pの近似平面を予め求めておき、露光ステーションにおいて、基板P上に液体LQの液浸領域AR2を形成し、投影光学系PL及び液体LQを介して形成される像面と基板Pの表面とを合致させるように、前記求めた近似平面に基づいて、基板Pの位置(姿勢)を制御しつつ、基板Pを液浸露光する構成が考えられる。その場合において、基板P上(基板ステージPST上)に形成された液浸領域AR2の液体LQから受ける力によって、基板Pや基板ステージPSTが変形すると、前記計測ステーションで求めた基板Pの近似平面と、露光ステーションにおいて液体LQの液浸領域AR2を形成された基板Pの表面形状との間に誤差が生じ、投影光学系PL及び液体LQを介して形成された像面と基板Pの表面とを合致させることが困難となる。しかしながら、本実施形態のように、基板P上(基板ステージPST上)の液体LQが基板P(基板ステージPST)に及ぼす力を低減するように、基板Pの表面(基板ステージPSTの上面51)の液体LQに対する親和性を設定することで、上記不都合が生じることを防止することができる。
なお、上述した実施形態においては、液体LQから受ける力を低減するように、基板Pの表面の感光材Rgや膜TCの材料の最適化、あるいは基板ステージPSTの上面51に対する撥液化処理のための材料や処理条件の最適化を行うことで、その基板Pの表面や基板ステージPSTの上面51の液体LQに対する親和性を所望の状態にしているが、液体供給機構10から基板Pあるいは基板ステージPST上に供給する液体LQの物性を最適化するようにしてもよい。すなわち、液体供給機構10から供給される液体LQの基板P上あるいは基板ステージPST上での接触角が最適になるように、液体LQを調整するようにしてもよい。液体供給機構10から基板P(あるいは基板ステージPST)上に供給される液体LQは、基板P(基板ステージPST)上で、液体LQから基板P(基板ステージPST)が受ける力が小さい接触角を有しているので、基板P(基板ステージPST)が受ける力を小さくすることができ、基板Pや基板ステージPST、あるいは投影光学系PLのうち液体LQに接する光学素子2の変形(歪み)等の発生を防止することができる。
図5は、基板ステージPST(Zステージ52)を上方から見た平面図である。基板ステージPST上において、基板Pの外側の所定位置には、基準部材300が配置されている。基準部材300には、基板アライメント系350により液体LQを介さずに検出される基準マークPFMと、マスクアライメント系360により液体LQを介して検出される基準マークMFMとが所定の位置関係で設けられている。基準部材300の上面はほぼ平坦面(平坦部)となっており、基板ステージPSTに保持された基板P表面、及び基板ステージPSTの上面51とほぼ同じ高さ(面一)に設けられている。基準部材300の上面は、フォーカス検出系30の基準面としての役割も果たすことができる。また、基板アライメント系350は、基板P上の複数のショット領域S1〜S24に付随して形成されたアライメントマーク1も検出する。
基板Pの液浸露光を開始する前に、制御装置CONTは、基板アライメント系350の検出基準位置とマスクMのパターン像の投影位置との位置関係(ベースライン量)を、基板アライメント系350、マスクアライメント系360、基準部材300等を使って計測する。
マスクアライメント系360によって基準マークMFMを計測するとき、基準部材300の上面上に液浸領域AR2が形成されるが、基板ステージPSTの上面51同様、基準部材300の上面の液体LQに対する親和性を最適に設定することで、液体LQから受ける力を低減することができる。また、本実施形態においては、基準マークPFMは基準部材300上に液浸領域AR2を形成しない状態で(液体LQを介さずに)計測され、基準マークMFMは基準部材300上に液浸領域AR2を形成した状態で(液体LQを介して)計測される構成である。その場合において、基準部材300上に形成された液浸領域AR2の液体LQから受ける力によって、基準部材300や基板ステージPSTが変形すると、上記ベースライン量を精度良く求めることが困難となる。しかしながら、本実施形態のように、基準部材300上(基板ステージPST上)の液体LQが基準部材300に及ぼす力を低減するように、基準部材300の上面を含む基板ステージPSTの上面51の液体LQに対する親和性を設定する、すなわち基準部材300の上面の液体LQとの接触角θFMを、85°≦θFM≦95°とすることで、上記不都合が生じることを防止することができる。
また、基板ステージPST上のうち、基板Pの外側の所定位置には、計測用センサとして例えば特開昭57−117238号公報に開示されているような照度ムラセンサ400が配置されている。照度ムラセンサ400は、基板ステージPSTに保持された基板P表面、及び基板ステージPSTの上面51とほぼ同じ高さ(面一)に設けられた平坦面(平坦部)を有する上板401を有している。また、基板ステージPST内部(上板の下)には照度ムラセンサ400を構成する受光素子(ディテクタ)が埋設されており、前記上板401上に形成された液浸領域の液体LQを介して露光光ELを受光する。
同様に、基板ステージPST上のうち、基板Pの外側の所定位置には、計測用センサとして例えば特開2002−14005号公報に開示されているような空間像計測センサ500が設けられている。空間像計測センサ500も、基板ステージPSTに保持された基板P表面、及び基板ステージPSTの上面51とほぼ同じ高さ(面一)に設けられた平坦面(平坦部)を有する上板501を有している。
また、基板ステージPST上には、計測用センサとして例えば特開平11−16816号公報に開示されているような照射量センサ(照度センサ)600も設けられており、その照射量センサ600の上板601の上面は基板ステージPSTに保持された基板P表面や基板ステージPSTの上面51とほぼ同じ高さ(面一)に設けられている。
基板Pを液浸露光する前に、制御装置CONTは、基板ステージPSTに搭載されている各種センサ400、500、600による計測を行い、その計測結果に基づいて適宜補正等を処置を施す。
上述した計測用センサ400、500、600は、いずれもその上板の上に形成された液浸領域AR2の液体LQを介して光を受光し、各種の計測を行うものである。そして、前記計測用センサ400、500、600の上板は、液体LQに対する親和性を最適に設定されており、液体LQから受ける力を低減されている。したがって、上板や基板ステージPSTが変形して計測精度が劣化するといった不都合が防止される。
なお、上述の実施形態においては、基板Pや基板ステージPST(各種センサの上板を含む)が液体LQから受ける力が小さくなるように、基板Pや基板ステージPST(各種センサの上板を含む)の液体LQとの接触角を設定するようにしているが、液体LQと接触するノズル部材70や光学素子2が液体LQから受ける力も小さくなるように、ノズル部材70の下端面70Aや光学素子2の下端面2Aの液体LQとの接触角を設定するようにしてもよい。この場合も、基板Pや基板ステージPSTが液体LQから受ける力が小さい方がよいことは言うまでもない。したがって、液体LQが基板P、基板ステージPST、ノズル部材70、及び光学素子2のそれぞれに及ぼす力が極力小さくなるように、あるいは液体LQから受ける力によって生じる不都合の度合いに応じて、それぞれの液体LQとの親和性(接触角)を決めることが望ましい。
つまり、図6の模式図に示すように、基板P表面及び基板ステージPSTの上面51(各種センサの上板を含む)を含む第1面S1と、投影光学系PLの像面側先端面である液体接触面2A及びその周囲に設けられたノズル部材70の液体接触面70Aを含み、第1面S1に対向する第2面S2との間に液体LQを保持する場合において、液体LQが、第1面S1と第2面S2とに及ぼす力が小さくなるように、第1面S1及び第2面S2のそれぞれと液体LQとの親和性を設定することが好ましい。
また、第1面S1及び第2面S2のそれぞれと液体LQとの親和性を設定する場合、図6に示すように、第1面S1とその第1面S1に対向する第2面S2との間に保持した液体LQと、その外側の気体空間との界面LEが、側面視において略直線状となるように、第1面S1及び第2面S2のそれぞれと液体LQとの親和性を設定するとよい。こうすることにより、第1面S1と第2面S2との間に保持された液体LQが、第1面S1及び第2面S2のそれぞれに及ぼす力を低減することができる。
例えば、図7(a)に示すように、液体LQの界面LEが内側に向かって凹むように大きく湾曲している場合においては、第1面S1及び第2面S2のそれぞれにおいて液体LQの表面張力が外側に向かって作用するので(矢印y1参照)、その表面張力により第1面S1と第2面S2との間の液体LQは負圧となり、第1面S1及び第2面S2には、液体LQによる負の力(負力(負圧))が作用される。一方、図7(b)に示すように、液体LQの界面LEが外側に向かって膨らむように大きく湾曲している場合においては、第1面S1及び第2面S2のそれぞれにおいて液体LQの表面張力が内側に向かって作用するので(矢印y2参照)、その表面張力により第1面S1と第2面S2との間の液体LQは正圧となり、第1面S1及び第2面S2には、液体LQによる正の力(正力(正圧))が作用される。ところが、図7(c)に示すように、液体LQの界面LEを側面視において略直線状とすることにより、第1面S1及び第2面S2に作用する液体LQの表面張力を低減することができる。したがって、第1面S1及び第2面S2に対して作用する液体LQによる力(液体LQの自重を含む)を低減することができる。したがって、第1面S1及び第2面S2を形成する基板P、基板ステージPST、光学素子2、ノズル部材70等の変形や振動の発生を防止することができる。
特に本実施形態においては、第1面S1と第2面S2とは略平行であり、第1面S1の液体LQに対する接触角αと、第2面S2の液体LQに対する接触角βとの和が、略180°となるように、第1面S1及び第2面S2のそれぞれと液体LQとの親和性を設定することで、界面LEを略直線状にすることができる。
なお、第1面S1又は第2面S2の液体LQとの接触角がほぼ一定の場合には、一方の面の液体LQとの接触角に合わせて、他方の面の液体LQとの接触角を決めればよい。
一例として、基板P表面の感光材Rgとして液体LQとの接触角αが75°程度のものを用いた場合には、ノズル部材70の液体接触面70Aにポリ四フッ化エチレン等の撥液性材料を塗布して、その液体接触面70Aの液体LQとの接触角を105°程度にすることにより、上記条件(α+β≒180)を満足することができる。あるいは、基板P表面の膜TCとして、液体LQとの接触角αが110°程度のものを用いた場合には、ノズル部材70の液体接触面70Aにアクリル系樹脂等を塗布して、その液体接触面70Aの液体LQとの接触角を70°程度にすることにより、上記条件(α+β≒180)を満足することができる。
また、界面LEを直線状にすることができれば(α+β≒180°の条件を満足できれば)、第1面S1が親液性であって、第2面S2が撥液性であってもよい。例えば上述のように、ノズル部材70の下面70Aにポリ四フッ化エチレン等の撥液性材料を塗布して撥液性にした場合には、基板P表面の感光材Rgや基板ステージPSTの上面51を親液性にすればよい。
また、図8に示すように、第2面S2のうち例えばノズル部材70の液体接触面70Aに傾斜面70Kを設け、その傾斜面70Kでの第2面S2と第1面S1との相対角度γと、第1面S1の液体LQに対する接触角αと、第2面S2の液体LQに対する接触角βとの和が略180°となるように、角度γ及び親和性(接触角α、β)を設定するようにしてもよい。こうすることによっても、界面LEを側面視において直線状にすることができる。そして、このような構成とすることにより、例えばノズル部材70の液体接触面70Aの液体LQとの接触角βを所望値にするために液体接触面70Aに材料を塗布して表面処理する場合において、適切な材料を見出せない状況が生じても、第2面S2に傾斜面70Kを設けて第1面S1との相対角度γを設定することで、界面LEを直線状にすることができる。
あるいは、図9に示すように、第1面S1と第2面S2との相対角度γを調整する調整機構100を設けてもよい。そして、使用する液体LQや、使用する基板P(感光材Rg、TC)などに応じて角度γを調整するようにしてもよい。図9において、調整機構100は、ノズル部材70にその一端部を接続されたシート状部材73と、シート状部材73の他端部を上下方向に移動する昇降装置101とを備えている。シート状部材73は、ノズル部材70の下面70Aに連続する下面70K’を有している。シート状部材73は、例えばポリ四フッ化エチレン製シートにより構成されている。シート状部材73の一端部はノズル部材70の下面70Aに接続されているため、昇降装置(調整機構)100がシート状部材73の他端部を上下方向に移動することで、基板P(基板ステージPSTの上面51)と下面70K’との相対角度γを調整することができる。
上述したように、本実施形態における液体LQは純水により構成されている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。なお工場等から供給される純水の純度が低い場合には、露光装置が超純水製造器を持つようにしてもよい。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
なお、上述したように液浸法を用いた場合には、投影光学系の開口数NAが0.9〜1.3になることもある。このように投影光学系の開口数NAが大きくなる場合には、従来から露光光として用いられているランダム偏光光では偏光効果によって結像性能が悪化することもあるので、偏光照明を用いるのが望ましい。その場合、マスク(レチクル)のライン・アンド・スペースパターンのラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明を行い、マスク(レチクル)のパターンからは、S偏光成分(TE偏光成分)、すなわちラインパターンの長手方向に沿った偏光方向成分の回折光が多く射出されるようにするとよい。投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が液体で満たされている場合、投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が空気(気体)で満たされている場合に比べて、コントラストの向上に寄与するS偏光成分(TE偏光成分)の回折光のレジスト表面での透過率が高くなるため、投影光学系の開口数NAが1.0を越えるような場合でも高い結像性能を得ることができる。また、位相シフトマスクや特開平6−188169号公報に開示されているようなラインパターンの長手方向に合わせた斜入射照明法(特にダイボール照明法)等を適宜組み合わせると更に効果的である。特に、直線偏光照明法とダイボール照明法との組み合わせは、ライン・アンド・スペースパターンの周期方向が所定の一方向に限られている場合や、所定の一方向に沿ってホールパターンが密集している場合に有効である。
また、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、微細なライン・アンド・スペースパターン(例えば25〜50nm程度のライン・アンド・スペース)を基板P上に露光するような場合、マスクMの構造(例えばパターンの微細度やクロムの厚み)によっては、Wave guide効果によりマスクMが偏光板として作用し、コントラストを低下させるP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりS偏光成分(TE偏光成分)の回折光が多くマスクMから射出されるようになるので、上述の直線偏光照明を用いることが望ましいが、ランダム偏光光でマスクMを照明しても、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。また、マスクM上の極微細なライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合、Wire Grid効果によりP偏光成分(TM偏光成分)がS偏光成分(TE偏光成分)よりも大きくなる可能性もあるが、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、25nmより大きいライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合には、S偏光成分(TE偏光成分)の回折光がP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりも多くマスクMから射出されるので、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。
更に、マスク(レチクル)のラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明(S偏光照明)だけでなく、特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線(周)方向に直線偏光する偏光照明法と斜入射照明法との組み合わせも効果的である。特に、マスク(レチクル)のパターンが所定の一方向に延びるラインパターンだけでなく、複数の異なる方向に延びるラインパターンが混在(周期方向が異なるライン・アンド・スペースパターンが混在)する場合には、同じく特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線方向に直線偏光する偏光照明法と輪帯照明法とを併用することによって、投影光学系の開口数NAが大きい場合でも高い結像性能を得ることができる。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子2が取り付けられており、このレンズにより投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
なお、液体LQの流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体LQで満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体LQを満たす構成であってもよい。
なお、本実施形態の液体LQは水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはF2レーザ光を透過可能な例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)やフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。この場合、液体LQと接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体LQとしては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。この場合も表面処理は用いる液体LQの極性に応じて行われる。水以外の液体を使う場合であっても、その液体が基板P(基板ステージPST)に及ぼす力が小さくなるように、その液体に対する基板(基板ステージPST)の表面の親和性を最適化すればよい。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。この場合、例えば、倍率1/8の屈折系の投影光学系を備えた投影露光装置(液浸型)とし、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間に局所的に液体を満たす露光装置を採用しているが、本発明は、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置にも適用可能である。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP5,623,853またはUSP5,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(US S/N 08/416,558)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図10に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。