JP5246174B2 - 流路形成部材、露光装置及びデバイス製造方法 - Google Patents

流路形成部材、露光装置及びデバイス製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学部材と物体との間の露光光の光路が液体で満たされるように液浸領域を形成する流路形成部材、投影光学系と液体とを介して基板上に露光光を照射して基板を露光する露光装置及びデバイス製造方法に関するものである。
半導体デバイスや液晶表示デバイスは、マスク上に形成されたパターンを感光性の基板上に転写する、いわゆるフォトリソグラフィの手法により製造される。このフォトリソグラフィ工程で使用される露光装置は、マスクを支持するマスクステージと基板を支持する基板ステージとを有し、マスクステージ及び基板ステージを逐次移動しながらマスクのパターンを投影光学系を介して基板に転写するものである。近年、デバイスパターンのより一層の高集積化に対応するために投影光学系の更なる高解像度化が望まれている。投影光学系の解像度は、使用する露光波長が短いほど、また投影光学系の開口数が大きいほど高くなる。そのため、露光装置で使用される露光波長は年々短波長化しており、投影光学系の開口数も増大している。そして、現在主流の露光波長はKrFエキシマレーザの248nmであるが、更に短波長のArFエキシマレーザの193nmも実用化されつつある。また、露光を行う際には、解像度と同様に焦点深度(DOF)も重要となる。解像度R、及び焦点深度δはそれぞれ以下の式で表される。
R=k・λ/NA … (1)
δ=±k・λ/NA … (2)
ここで、λは露光波長、NAは投影光学系の開口数、k、kはプロセス係数である。(1)式、(2)式より、解像度Rを高めるために、露光波長λを短くして、開口数NAを大きくすると、焦点深度δが狭くなることが分かる。
焦点深度δが狭くなり過ぎると、投影光学系の像面に対して基板表面を合致させることが困難となり、露光動作時のフォーカスマージンが不足するおそれがある。そこで、実質的に露光波長を短くして、且つ焦点深度を広くする方法として、例えば下記特許文献1に開示されている液浸法が提案されている。この液浸法は、投影光学系の下面と基板表面との間を水や有機溶媒等の液体で満たして液浸領域を形成し、液体中での露光光の波長が空気中の1/n(nは液体の屈折率で通常1.2〜1.6程度)になることを利用して解像度を向上するとともに、焦点深度を約n倍に拡大するというものである。
国際公開第99/49504号パンフレット
ところで、上記従来技術は、基板上に液体の液浸領域を局所的に形成する局所液浸方式であるが、局所液浸方式においては基板上の液浸領域の大きさを維持することが重要である。例えば、液浸領域が大きくなって液浸領域の液体が基板の外側に流出すると、基板を保持する基板ステージ周辺の機械部品に錆びを生じさせる等の不都合が発生する。また、流出した液体により基板の置かれている環境(湿度、温度など)が変動し、例えば基板ステージの位置情報を計測する干渉計の計測光の光路上の屈折率の変化を引き起こす等、露光精度に影響を及ぼす可能性もある。一方、露光光の照射中に投影光学系の投影領域より液浸領域が小さくなったり、基板上の液体が枯渇するなどして液浸領域が所望状態に形成されないと、液体を介さないで露光光が基板に照射され、露光精度の劣化を招く。
また、基板上の液体を液体回収口から吸引回収する構成の場合、基板上の液浸領域の大きさが変動し、液浸領域の端部が移動すると、回収口が液体で覆われたり完全に覆われない状況が発生する。例えば回収口が液体で覆われない場合、回収口からは液体と一緒にその周囲の気体も噛み込むようにして回収されるため、回収された液体は分断されて液滴状態となって回収口からその回収口に接続する回収管などに流入する。この場合、その液滴状態の液体が回収管に当たって音や振動を発生する可能性が高くなり、発生した振動によって露光精度が劣化する。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、液浸領域の大きさを維持して高い露光精度を得ることができる流路形成部材、露光装置、及びこの露光装置を用いるデバイス製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は実施の形態に示す図1〜図7に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の露光装置(EX)は、投影光学系(PL)と液体(LQ)とを介して基板(P)上に露光光(EL)を照射して基板(P)を露光する露光装置において、液体(LQ)を供給する供給口(13、14)と、投影光学系(PL)の投影領域(AR1)に対して供給口(13、14)より外側に設けられた第1吸引口(25)と、第1吸引口(25)より外側に設けられた第2吸引口(26)と、第1吸引口(25)に設けられ、第1の流れの抵抗を有する第1部材(27)と、第2吸引口(26)に設けられ、第1の流れの抵抗とは異なる第2の流れの抵抗を有する第2部材(28)とを備え、第2吸引口(26)に、液体(LQ)によって投影光学系(PL)の像面側に形成される液浸領域(AR2)の端部(EG)が配置されることを特徴とする。
また本発明のデバイス製造方法は、上記記載の露光装置(EX)を用いることを特徴とする。
本発明によれば、第2吸引口に液浸領域の端部を配置することで、第1吸引口は液体で完全に覆われ、その第1吸引口を介して液体回収を良好に行いつつ、液浸領域の端部の位置を制御してその端部の移動を抑えることができる。したがって、液浸領域の大きさを維持でき、液体の流出又は枯渇、あるいは振動の発生を防止して高い露光精度を得ることができる。
本発明によれば、基板上の液浸領域の大きさを維持でき、高い露光精度を得ることができるため、所望の性能を有するデバイスを製造することができる。
本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。 液体供給口及び吸引口を有する流路形成部材近傍の拡大断面図である。 液体供給口及び吸引口を有する流路形成部材を下方から見た図である。 流路形成部材を一部破断した斜視図である。 液浸領域の端部の位置を制御している状態を説明するための模式図である。 液体供給口及び吸引口を有する流路形成部材の別の実施例を示す図である。 半導体デバイスの製造工程の一例を示すフローチャート図である。
以下、本発明の露光装置について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、露光装置EXは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、基板P上に液体LQを供給する液体供給機構10と、基板P上の液体LQを回収する液体回収機構20とを備えている。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間、液体供給機構10から供給した液体LQにより投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の一部に(局所的に)液浸領域AR2を形成する。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの像面側終端部の光学素子2と、その像面側に配置された基板P表面との間に液体LQを満たす局所液浸方式を採用し、この投影光学系PLと基板Pとの間の液体LQ及び投影光学系PLを介してマスクMを通過した露光光ELを基板Pに照射することによってマスクMのパターンを基板Pに投影露光する。
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向に垂直な方向(非走査方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
照明光学系ILは、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びFレーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
本実施形態において、液体LQには純水が用いられる。純水はArFエキシマレーザ光のみならず、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能であって、例えばマスクMを真空吸着(又は静電吸着)により固定している。マスクステージMSTは、リニアモータ等を含むマスクステージ駆動装置MSTDにより、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微少回転可能である。そして、マスクステージMSTは、X軸方向に指定された走査速度で移動可能となっており、マスクMの全面が少なくとも投影光学系PLの光軸AXを横切ることができるだけのX軸方向の移動ストロークを有している。
マスクステージMST上には移動鏡50が設けられている。また、移動鏡50に対向する位置にはレーザ干渉計51が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及びθZ方向の回転角(場合によってはθX、θY方向の回転角も含む)はレーザ干渉計51によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計51の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置を制御する。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、基板P側の先端部に設けられた光学素子(レンズ)2を含む複数の光学素子で構成されており、これら光学素子2は鏡筒PKで支持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。
本実施形態において、投影光学系PLの先端部の光学素子2は鏡筒PKより露出しており、液浸領域AR2の液体LQが接触する。光学素子2は螢石で形成されている。螢石表面、あるいはMgF、Al、SiO等を付着させた表面は水との親和性が高いので、光学素子2の液体接触面2aのほぼ全面に液体LQを密着させることができる。すなわち、本実施形態においては光学素子2の液体接触面2aとの親和性が高い液体(水)LQを供給するようにしているので、光学素子2の液体接触面2aと液体LQとの密着性が高く、光学素子2と基板Pとの間の光路を液体LQで確実に満たすことができる。なお、光学素子2は、水との親和性が高い石英であってもよい。また、光学素子2の液体接触面2aに親水化(親液化)処理を施して、液体LQとの親和性をより高めるようにしてもよい。
基板ステージPSTは、基板Pを保持して移動可能であって、XYステージ55と、XYステージ55上に搭載されたZチルトステージ54とを含んで構成されている。XYステージ55は、ステージベース56の上面の上方に不図示の非接触ベアリングである気体軸受(エアベアリング)を介して非接触支持されている。XYステージ55(基板ステージPST)はステージベース56の上面に対して非接触支持された状態で、リニアモータ等を含む基板ステージ駆動装置PSTDにより、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。このXYステージ55上にZチルトステージ54が搭載され、Zチルトステージ54上に不図示の基板ホルダを介して基板Pが例えば真空吸着等により保持されている。Zチルトステージ54は、Z軸方向、θX方向、及びθY方向にも移動可能に設けられている。基板ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。
また、基板ステージPSTのZチルトステージ54上には、Zチルトステージ54に保持された基板Pを囲むようにプレート部材57が設けられている。プレート部材57は環状部材であって、基板Pの外側に配置されている。プレート部材57は、基板ステージPSTに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)の平坦面(平坦部)57Aを有している。平坦面57Aは、Zチルトステージ54上の基板ホルダに保持された基板Pの外側の周囲に配置されている。
プレート部材57は、例えばポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))などの撥液性を有する材料によって形成されている。そのため、平坦面57Aは撥液性を有する。なお、例えば所定の金属などでプレート部材57を形成し、その金属製のプレート部材57の少なくとも平坦面57Aに対して撥液処理を施すことで、平坦面57Aを撥液性にしてもよい。プレート部材57(平坦面57A)の撥液処理としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂材料あるいはアクリル系樹脂材料等の撥液性材料を塗布、あるいは前記撥液性材料からなる薄膜を貼付する。撥液性にするための撥液性材料としては液体LQに対して非溶解性の材料が用いられる。また、撥液性材料の塗布領域としては、プレート部材57の表面全域に対して塗布してもよいし、例えば平坦面57Aなど撥液性を必要とする一部の領域のみに対して塗布するようにしてもよい。
基板Pの周囲に、基板P表面とほぼ面一の平坦面57Aを有するプレート部材57を設けたので、基板Pのエッジ領域Eを液浸露光するときにおいても、投影光学系PLの下に液体LQを保持し、投影光学系PLの像面側に液浸領域AR2を良好に形成することができる。また、平坦面57Aを撥液性にすることにより、液浸露光中における基板P外側(平坦面57A外側)への液体LQの流出を抑え、また液浸露光後においても液体LQを円滑に回収できて、平坦面57A上に液体LQが残留することを防止することができる。
基板ステージPST(Zチルトステージ54)上には移動鏡52が設けられている。また、移動鏡52に対向する位置にはレーザ干渉計53が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計53によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計53の計測結果に基づいてリニアモータ等を含む基板ステージ駆動装置PSTDを駆動することで基板ステージPSTに支持されている基板Pの位置決めを行う。
また、露光装置EXは、基板ステージPSTに支持されている基板Pの表面の位置を検出する不図示のフォーカス検出系を備えている。なお、フォーカス検出系の構成としては、例えば特開平8−37149号公報に開示されているものを用いることができる。フォーカス検出系の受光結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはフォーカス検出系の検出結果に基づいて、基板P表面のZ軸方向の位置情報、及び基板PのθX及びθY方向の傾斜情報を検出することができる。Zチルトステージ54は、基板Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して基板Pの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込み、XYステージ55は基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。なお、ZチルトステージとXYステージとを一体的に設けてよいことは言うまでもない。
液体供給機構10は、所定の液体LQを基板P上に供給するものであって、液体LQを送出可能な第1液体供給部11及び第2液体供給部12と、第1、第2液体供給部11、12のそれぞれにその一端部を接続する第1、第2供給管11A、12Aとを備えている。第1、第2液体供給部11、12のそれぞれは、液体LQを収容するタンク、及び加圧ポンプ等を備えている。
液体回収機構20は、基板P上に供給された液体LQを回収するものであって、液体LQを回収可能な液体回収部21と、液体回収部21にその一端部を接続する回収管22と、真空系23と、真空系23にその一端部を接続する吸引管24とを備えている。液体回収部21は例えば真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、気液分離器、及び回収した液体LQを収容するタンク等を備えている。真空系23は、真空ポンプあるいは工場に設けられている真空系により構成されている。
投影光学系PLの終端部の光学素子2の近傍には流路形成部材30が配置されている。流路形成部材30は、基板P(基板ステージPST)の上方において光学素子2の周りを囲むように設けられた環状部材であって、光学部材2と対向する内周壁30Aを有している。内周壁30Aと光学素子2とは離れており、流路形成部材30と投影光学系PLとは振動的に分離するように、不図示の支持機構に支持されている。流路形成部材30は、液体供給機構10及び液体回収機構20それぞれの一部を構成している。
図2は流路形成部材30近傍の断面図、図3は流路形成部材30を下方から見た図、図4は流路形成部材30を一部破断した斜視図である。
図2及び図3において、流路形成部材30は、基板P(基板ステージPST)の上方に設けられ、その基板P表面に対向するように配置された第1液体供給口13と第2液体供給口14とを備えている。流路形成部材30の下面はほぼ平坦面であり、第1液体供給口13及び第2液体供給口14は流路形成部材30の下面に設けられている。また、流路形成部材30は、その内部に供給流路15、16を有している。供給流路15の一端部は第1液体供給口13に接続され、他端部は第1供給管11Aを介して第1液体供給部11に接続されている。供給流路16の一端部は第2液体供給口14に接続され、他端部は第2供給管12Aを介して第2液体供給部12に接続されている。
第1液体供給部11から送出された液体LQは、供給管11A、及び供給流路15を介して、第1液体供給口13より基板P上に供給される。同様に、第2液体供給部12から送出された液体LQは、供給管12A、及び供給流路16を介して、第2液体供給口14より基板P上に供給される。第1、第2液体供給部11、12の液体供給動作は制御装置CONTにより制御され、制御装置CONTは、第1、第2液体供給部11、12による基板P上に対する単位時間あたりの液体供給量をそれぞれ独立して制御可能である。なお本実施形態では、液体供給部を複数の供給部(第1、第2液体供給部11、12)で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば1つの供給部で構成してもよい。
更に、流路形成部材30は、基板P(基板ステージPST)の上方に設けられ、その基板P表面に対向するように配置された内側吸引口(第1吸引口)25及び外側吸引口(第2吸引口)26を備えている。内側吸引口25及び外側吸引口26は流路形成部材30の下面に設けられている。内側吸引口25及び外側吸引口26は、流路形成部材30内部に形成されている空間部31に接続されている。空間部31には吸引管24の他端部が接続されており、真空系23と空間部31とは吸引管24の流路を介して接続されている。吸引管24を介して空間部31に接続されている真空系23は、吸引管24の流路を介して空間部31内部の気体を吸引可能である。
また、空間部31には回収管22の他端部が接続されており、液体回収部21と空間部31とは回収管22の流路を介して接続されている。回収管22を介して空間部31に接続されている液体回収部21は、回収管22の流路を介して空間部31内部の液体LQを回収可能である。
図3に示すように、第1液体供給口13は投影光学系PLの投影領域AR1に対して−X側に設けられ、第2液体供給口14は投影領域AR1に対して+X側に設けられている。投影光学系PLの投影領域AR1は、Y軸方向を長手方向とし、X軸方向を短手方向とした矩形状に設定されている。第1液体供給口13及び第2液体供給口14のそれぞれは平面視略円弧状のスリット状に形成されており、そのY軸方向の大きさは、少なくとも投影領域AR1より大きくなっている。
内側吸引口25は、投影光学系PLの投影領域AR1に対して第1、第2液体供給口13、14より外側に設けられており、その投影領域AR1及び第1、第2液体供給口13、14を囲むように複数分割して設けられている。本実施形態において、内側吸引口25は12箇所にほぼ等間隔で設けられている。また、外側吸引口26は、投影光学系PLの投影領域AR1に対して内側吸引口25より更に外側に設けられており、投影領域AR1及び内側吸引口25を囲むように複数分割して設けられている。本実施形態において、外側吸引口26は、内側吸引口25と同じ12箇所にほぼ等間隔で設けられている。
複数の内側吸引口25のそれぞれには、第1の流れの抵抗を有する第1部材27が設けられている。また、複数の外側吸引口26のそれぞれには、第1の流れの抵抗とは異なる第2の流れの抵抗を有する第2部材28が設けられている。第2部材28の流れの抵抗(第2の流れの抵抗)は、第1部材27の流れの抵抗(第1の流れの抵抗)よりも大きい。
第1部材27及び第2部材28のそれぞれは多孔質体により構成されており、例えば多孔質セラミックス等により構成されている。そして、例えば第1部材27を粗な多孔質体によって構成し、第2部材28を密な多孔質体によって構成することにより、第2部材28の流れの抵抗を第1部材27の流れの抵抗より大きくすることができる。
第1部材27としては液体LQを通過可能なものが用いられる。第1部材27より流れの抵抗が大きい第2部材28としては液体LQを殆ど通過させず、主に気体のみを通過可能なものが用いられる。したがって、第1部材27を配置された内側吸引口25は液体LQを通過可能であり、第2部材28を配置された外側吸引口26は液体LQを殆ど通過させず、主に気体を通過させる。
ここで、第2部材28を撥液性にすることにより、第2部材28(外側吸引口26)の液体LQの通過を更に良好に規制(阻止)して、気体のみを通過させることができる。例えば第2部材28をポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))等の撥液性材料からなる多孔質体によって構成することにより、撥液性を有する第2部材28を形成することができる。もちろん、第2部材28をセラミックス等の所定の材料によって形成し、その第2部材28に撥液性材料を塗布する等の撥液処理を施すことによって第2部材28を撥液性としてもよい。
なお、第1部材27及び第2部材28としては、多孔質体に限られず、毛細管など所定の流れの抵抗を有するものであれば任意の部材(材料)を使用することができる。特に第1部材27としては、多孔質体や毛細管の他に、例えばステンレス鋼製の板部材に小さな貫通穴を複数設けた部材、あるいは金属等の網目状の部材によって構成してもよい。また、液体LQが円滑に流通するように、内側吸引口25に配置される第1部材27は親液性であることが好ましい。一方、本実施形態においては、第2部材28は主に気体のみを通過させるようにするため、上述したように、セラミックスやポリ四フッ化エチレン等からなる撥液性を有する多孔質体であることが好ましい。
図4に示すように、内側吸引口25及び外側吸引口26に接続する空間部31は、投影領域AR1を囲むように複数分割されて設けられている。すなわち空間部31は、複数の内側吸引口25及び外側吸引口26に対応するように複数(12個)設けられている。複数の空間部31どうしは仕切壁32によって仕切られており、複数の空間部31に回収管22及び吸引管24がそれぞれ接続されている。吸引管24は、空間部31の上部を覆う天板部30Tに接続され、回収管22は側壁部30Sに接続されている。内側吸引口25及び外側吸引口26は、空間部31の底部30Bに設けられている。そして、真空系23は吸引管24を介して複数の空間部31それぞれの気体を吸引可能である。液体回収部21は回収管22を介して複数の空間部31それぞれの液体LQを回収可能である。
また、図2に示すように、空間部31と真空系23とを接続する複数の吸引管24のそれぞれには、第3の流れの抵抗を有する第3部材29が設けられている。第3部材29も多孔質セラミックス等の多孔質体により構成されている。なお第3部材29はオリフィスにより構成されてもよい。
なお、本実施形態において、複数の回収管22は1つの液体回収部21に接続されているが、回収管22の数に対応した液体回収部21を複数(ここでは12個)設け、複数(12本)の回収管22のそれぞれを前記複数の液体回収部21のそれぞれに接続するようにしてもよい。同様に、本実施形態においては、複数の吸引管24は1つの真空系23に接続されているが、吸引管24の数に対応した真空系23を複数(ここでは12個)設け、複数(12本)の吸引管24のそれぞれを前記複数の真空系23のそれぞれに接続する
ようにしてもよい。
複数の空間部31それぞれの内部には、液体LQと気体とを分離する気液分離部材33が設けられている。気液分離部材33は箱状部材であって、その下部には外側吸引口26に対応する開口部34が設けられている。気液分離部材33は、開口部34と外側吸引口26とを位置合わせした状態で、その外側吸引口26を覆うように設けられている。また、気液分離部材33の上方には突出部35が設けられており、突出部35には、箱状部材である気液分離部材33の内部空間33Kと外部とを連通する穴部36が形成されている。気液分離部材33は、空間部31に配置されている液体LQに対して、外側吸引口26から吸引された気体を分離する。空間部31と回収管22とを接続する接続部(流路)は、穴部36の上端部よりも低い位置に設けられている。
また、複数の空間部31それぞれの内部には、空間部31に配置されている液体LQの液面の高さを調整する液面調整機構40が設けられている。液面調整機構40は、空間部31内部の液体LQの液面の高さを少なくとも気液分離部材33の突出部35の穴部36の上端部よりも低くなるように調整する。液面調整機構40は、液体LQの液面に浮く浮き部材41と、浮き部材41の位置に応じて回収管22と空間部31とを接続する接続部の流路の開閉を行うヒンジ部42Aを有した弁部42とを備えている。液体LQの液面が穴部36の上端部に対して下方に所定距離以上離れた位置にあるときには、その液面の位置に応じて、浮き部材41も穴部36の上端部に対して下方に所定距離以上離れた位置に配置され、その浮き部材41の位置に応じて弁部42が空間部31と回収管22とを接続する接続部(流路)を閉じるようになっている。一方、液体LQが穴部36の上端部に対して所定距離以下に近づいた位置になったとき、浮き部材41も穴部36の上端部に対して所定距離以下に近づいた位置に配置され、その浮き部材41の位置に応じて弁部42が駆動されて空間部31と回収管22とを接続する接続部(流路)を開けるようになっている。
次に、基板P上に液体LQの液浸領域AR2を形成する動作について説明する。
基板Pが基板ステージPSTに搬入された後、制御装置CONTは、基板P上に液体LQの液浸領域AR2を形成するために、液体供給機構10及び液体回収機構20を使って液体LQの供給及び回収を開始する。
制御装置CONTは、第1液体供給部11及び第2液体供給部12を駆動し、供給管11A、12A、及び供給流路15、16を介して、第1液体供給口13及び第2液体供給口14より、単位時間当たり所定量の液体LQを基板P上に供給する。本実施形態において、液体LQは第1液体供給口13及び第2液体供給口14のそれぞれから同時に供給される。供給された液体LQは、基板Pと投影光学系PLの光学素子2との間に拡がり、投影光学系PLの投影領域AR1を覆うように、投影領域AR1よりも大きく且つ基板Pよりも小さい液浸領域AR2を基板P上に局所的に形成する。
また、制御装置CONTは、液体供給機構10の第1、第2液体供給部11、12の駆動の開始と同時に(又はその前に)、液体回収機構20の真空系23を駆動する。真空系23は、吸引管24を介して複数の空間部31それぞれの気体を吸引する。
真空系23は、空間部31の気体を吸引することにより空間部31を負圧にする。これにより、基板P上の液体LQは、空間部31に接続されている内側吸引口25から吸引回収され、空間部31に配置される。投影領域AR1及び第1、第2液体供給口13、14の外側に流出した液体LQは内側吸引口25を介して吸引回収され、空間部31のうち、気液分離部材33の外側の空間(内部空間33Kの外側の空間)に配置される。なおこのとき、液体LQの液面は穴部36の上端部に対して下方に所定距離以上離れた位置にあるので、液面調整機構40の浮き部材41の位置に応じて、弁部42により空間部31と回収管22とを接続する接続部(流路)は閉じられている。
やがて、吸引回収された液体LQの空間部31での量が増し、空間部31において液体LQの液面が上昇する。液体LQの液面の上昇(移動)に伴って、液面調整機構40の浮き部材41も上昇(移動)する。液体LQの液面、ひいては浮き部材41が穴部36の上端部に対して所定距離以下になったとき、弁部42が駆動されて空間部31と回収管22とを接続する接続部(流路)が開けられる。ここで、液体回収部21の吸引装置(真空系)は常時駆動しており、回収管22は常時負圧(例えば、真空系23で設定される圧力より低い圧力に設定される)となっている。そして、空間部31と回収管22とを接続する流路が開けられることにより、液体回収部21は回収管22を介して空間部31の液体LQを回収する。そして、空間部31の液体LQが液体回収部21によって回収され、空間部31内部の液体LQの液面(浮き部材41)が下降すると、空間部31と回収管22とを接続する流路が弁部42によって閉じられる。
一方、外側吸引口26には、液体LQを殆ど通過させず主に気体のみを通過させる第2部材28が設けられているため、空間部31及び空間部31の一部を構成する気液分離部材33の内部空間33Kが負圧にされても、基板P上の液体LQは外側吸引口26を介して回収されない。そして、内部空間33K(空間部31)が負圧になることにより、外側吸引口26から主に気体が吸引される。外側吸引口26から吸引された気体は、内部空間33K、穴部36、空間部31のうち気液分離部材33の外側の空間、及び吸引管24を介して真空系23に吸引される。
ここで、空間部31において、液体LQは気液分離部材33によって内部空間33Kの外側の空間に配置されており、空間部31の液体LQの液面は、液面調整機構40によって、穴部36の上端部より低くなるように調整されているため、空間部31のうち内部空間33Kの外側の空間の液体LQは、穴部36を介して内部空間33Kに流入しない。このように、気液分離部材33によって、外側吸引口26に接続する内部空間33Kには液体LQが流入されず(配置されず)、主に気体のみが満たされることになる。
そして、外側吸引口26の空間部31側に液体LQが配置されないように、液体よけ部材として気液分離部材33を設けたことにより、空間部31に配置されている液体LQに対して外側吸引口26から吸引された気体が分離され、外側吸引口26は円滑に気体を吸引することができる。すなわち、気液分離部材33を設けない構成の場合、第2部材28の上面側(空間部31側)に液体LQが配置されることになり、外側吸引口26(第2部材28)を介して空間部31側に吸引された気体(空気)が空間部31の液体LQ中に流入し、気泡などを発生して振動を発生する可能性が高くなる。振動は露光精度の劣化を招くが、本実施形態のように、気液分離部材33によって、外側吸引口26(第2部材28)の上面側に液体LQを配置させずに気体を配置させることにより、上記気泡の発生を防止し、振動の発生を防止することができる。
図2や図3に示すように、外側吸引口26に、液体LQによって投影光学系PLの像面側に形成される液浸領域AR2の端部EGが配置される。本実施形態では、端部EGが外側吸引口26に配置されるように、内側吸引口25及び外側吸引口26のそれぞれに配置される第1部材27及び第2部材28の大きさ及び流れの抵抗が最適に設定される。そして、真空系23の吸引力を一定、換言すれば吸引管24のうち第3部材29の真空系23側の圧力(負圧)を一定にした状態で、空間部31の圧力が液浸領域AR2の端部EGの位置に応じて変化することで、液浸領域AR2の端部EGが外側吸引口26に配置されるように制御される。ここで、第3部材29は、吸引管24のうち第3部材29に対して真空系23側の圧力Pvと、空間部31側の圧力Pcとの差を維持するために設けられている。
以下、液浸領域AR2の端部EGの位置が制御される原理について説明する。
基板P上の液体LQを吸引回収するに際し、第1部材27が配置された内側吸引口25は常時液体LQに覆われている。内側吸引口25を通過する液体LQの単位時間あたりの流量をMw、大気圧をPa、空間部31内部の圧力をPc、液体(水)LQの粘性係数をμw、液体LQの密度をρw、多孔質体である第1部材27の厚さをta、第1部材27(内側吸引口25)の面積をAa、第1部材27の浸透率(permeability)をKaとしたとき、ダルシーの法則より、
Figure 0005246174
の関係が成り立つ。ここで、Raが第1部材27の流れの抵抗(第1の流れの抵抗)に相当する。第1部材(多孔質体)27が密になるとRaの値は大きくなり、粗になるとRaの値は小さくなる。
また、第2部材28が配置された外側吸引口26からは主に気体(空気)が吸引される。外側吸引口26を通過する気体の単位時間あたりの流量をM1、大気圧をPa、空間部31内部の圧力をPc、気体の粘性係数をμa、気体の密度をρa、多孔質体である第2部材28の厚さをtb、第2部材28(外側吸引口26)の面積をAb、第2部材28の通気率(浸透率)をKb、第2吸引口26(第2部材28)のうち気体に覆われている面積の割合をαとしたとき、
Figure 0005246174
の関係が成り立つ。ここで、Rbが第2部材28の流れの抵抗(第2の流れの抵抗)に相当する。また、液浸領域AR2の端部EGが第2吸引口26に配置されているとき、その端部EGの移動に伴って、第2吸引口26(第2部材28)のうち、液体LQに覆われる面積と気体に覆われる面積との比が変動する。第2吸引口26が全て液体LQに覆われている状態のときα=0であり、第2吸引口26が全て気体に覆われている状態のときα=1である。
また、吸引管24に配置されている第3部材29を通過する気体の単位時間あたりの流量をM2、大気圧をPa、吸引管24のうち第3部材29より真空系23側の圧力をPv、気体の粘性係数をμa、気体の密度をρa、多孔質体である第3部材29の厚さをtc、第3部材29(吸引管24)の面積をAc、第3部材29の通気率(浸透率)をKcとしたとき、
Figure 0005246174
の関係が成り立つ。ここで、Rcが第3部材29の流れの抵抗(第3の流れの抵抗)に相当する。また、上述したように、真空系23の吸引力、すなわち吸引管24のうち第3部材29に対して真空系23側の圧力Pvは一定である。
内側吸引口25は液体LQで全て覆われているため、第2部材28が配置された外側吸引口26を通過する気体の単位時間あたりの流量M1と、吸引管24の第3部材29を通過する気体の単位時間あたりの流量M2とは等しい(M1=M2)。したがって、空間部31内部の圧力Pcは、(2−1)式及び(3−1)式より、
Figure 0005246174
である。(4)式に示すように、空間部31内部の圧力Pcは第2の流れの抵抗Rbの関数、ひいてはαの関数である、したがって、αが変動すると、すなわち液浸領域AR2の端部EGが移動して第2部材28(外側吸引口26)のうち気体に覆われる面積量が変動すると、空間部31内部の圧力Pcが変動する。このように、液浸領域AR2の端部EGの位置に応じて、空間部31内部の圧力Pcが変化するようになっている。
圧力Pcが変動すると、(1−1)式より、第1部材26が配置された内側吸引口25を通過する液体LQの単位時間あたりの流量Mwが変動する。具体的には、図5(a)に示すように、液浸領域AR2の端部EGが内側(投影領域AR1側)に移動して外側吸引口26(第2部材28)のうち気体で覆われる面積の割合αが大きくなると、圧力Pcが上昇し、大気圧Paと圧力Pcとの差が小さくなり、内側吸引口25(第1部材27)を介して液体LQを吸引回収する力が弱くなる。したがって、内側吸引口25を介した液体回収量が少なくなり、液浸領域AR2は大きくなる。つまり、液浸領域AR2の端部EGが外側(投影領域AR1と離れる方向側)に移動する。
一方、図5(b)に示すように、液浸領域AR2の端部EGが外側に移動して外側吸引口26(第2部材28)のうち気体で覆われる面積の割合αが小さくなると、圧力Pcが低下し、大気圧Paと圧力Pcとの差が大きくなり、内側吸引口25(第1部材27)を介して液体LQを吸引回収する力が強くなる。したがって、内側吸引口25を介した液体回収量が多くなり、液浸領域AR2は小さくなる。つまり、液浸領域AR2の端部EGが内側に移動する。
このように、液浸領域AR2の端部EGの位置が制御された状態で、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明することにより、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像が投影光学系PL及び液浸領域AR2の液体LQを介して基板Pに投影される。
以上説明したように、第1部材27及び第2部材28の材料及び寸法を選択し、内側吸引口25の流れの抵抗及び外側吸引口26の流れの抵抗や、各吸引口の大きさや各部材の寸法等を最適化することで、圧力Pvを一定にした状態で液浸領域AR2の端部EGの位置を制御することができる。したがって、液浸領域AR2が大きくなりすぎて液浸領域AR2の液体LQが基板Pの外側に流出して、例えば基板Pの置かれている環境変動を引き起こしたり、逆に液浸領域AR2が小さくなりすぎて液体LQを介さないで露光光ELが基板Pに照射されるといった不都合の発生を防止することができる。
そして、内側吸引口25に液体LQを通過可能な第1部材27を設け、外側吸引口26に主に気体を通過する第2部材28を設けて、液体LQの回収を主に内側吸引口25で行うようにしたので、内側吸引口25を常に液体LQで覆った状態で、液体LQを吸引回収することができる。このように、内側吸引口25と外側吸引口26とで液体LQと気体とを別々に吸引することで、内側吸引口25からは液体LQのみが吸引回収され、液体LQを吸引回収するときに、その液体LQの周囲の気体も一緒に噛み込むようにして回収することに起因する音や振動の発生を防止することができる。また、液浸領域AR2の端部EGの大きな移動は、例えば基板Pを振動をさせるなど、露光精度の劣化を一因になる場合があるが、本実施形態のように、液浸領域AR2の端部EGの位置の変動領域を所定範囲内(外側吸引口26の領域内)におさめることで、液浸領域AR2の端部EGの移動に伴う振動などの発生を防止することができる。
なお、内側吸引口25の大きさが十分に小さい場合には、この内側吸引口25に第1部材27を設けない構成を採用することも可能である。一方で、第2部材28は主に液浸領域AR2の端部EGの位置を制御するために設けられ、第1部材27は主に回収する液体LQの単位時間あたりの流量を制御するために設けられているため、第1部材27を内側吸引口25に設けることにより、液浸領域AR2の端部EGの位置制御が不安定状態になる不都合を防止することができる。つまり、例えば内側吸引口25に第1部材27を設けない場合(内側吸引口27に流れの抵抗を設けない場合)、外側吸引口26(第2部材28)の全てが液体LQで覆われたとき、気体の流入口が無くなった状態となり、流れの抵抗のない内側吸引口25から液体LQが急激に吸引回収される状況が発生し、液浸領域AR2の端部EGが急激に投影領域AR1側に移動することになる。この急激な端部EGの移動は振動発生の原因となるが、内側吸引口25に第1部材27を設けることで、上記不都合を回避することができる。
なお上述した実施形態においては、内側吸引口25と外側吸引口26とは、投影領域AR1(投影光学系PLの光軸AX)を基準として放射方向に関して並んで配置されているが、図6に示すように、ずれて配置されていても構わない。また、上述した実施形態においては、流路形成部材30の下面は平坦面であり、内側吸引口25と外側吸引口26とは基板P表面に対してほぼ同じ高さに設けられているが、例えば流路形成部材30の下面を投影領域AR1に対して外側に向かうにつれて漸次高くなる(基板Pより離れる)ようにテーパ状に形成し、内側吸引口25と外側吸引口26との基板Pに対する高さを互いに異ならせてもよい。
上述したように、本実施形態における液体LQは純水により構成されている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。なお工場等から供給される純水の純度が低い場合には、露光装置が超純水製造器を持つようにしてもよい。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
なお、上述したように液浸法を用いた場合には、投影光学系の開口数NAが0.9〜1.3になることもある。このように投影光学系の開口数NAが大きくなる場合には、従来から露光光として用いられているランダム偏光光では偏光効果によって結像性能が悪化することもあるので、偏光照明を用いるのが望ましい。その場合、マスク(レチクル)のライン・アンド・スペースパターンのラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明を行い、マスク(レチクル)のパターンからは、S偏光成分(TE偏光成分)、すなわちラインパターンの長手方向に沿った偏光方向成分の回折光が多く射出されるようにするとよい。投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が液体で満たされている場合、投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が空気(気体)で満たされている場合に比べて、コントラストの向上に寄与するS偏光成分(TE偏光成分)の回折光のレジスト表面での透過率が高くなるため、投影光学系の開口数NAが1.0を越えるような場合でも高い結像性能を得ることができる。また、位相シフトマスクや特開平6−188169号公報に開示されているようなラインパターンの長手方向に合わせた斜入射照明法(特にダイボール照明法)等を適宜組み合わせると更に効果的である。
また、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、微細なライン・アンド・スペースパターン(例えば25〜50nm程度のライン・アンド・スペース)を基板P上に露光するような場合、マスクMの構造(例えばパターンの微細度やクロムの厚み)によっては、Wave guide効果によりマスクMが偏光板として作用し、コントラストを低下させるP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりS偏光成分(TE偏光成分)の回折光が多くマスクMから射出されるようになるので、上述の直線偏光照明を用いることが望ましい。ただし、ランダム偏光光でマスクMを照明しても、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。また、マスクM上の極微細なライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合、Wire Grid効果によりP偏光成分(TM偏光成分)がS偏光成分(TE偏光成分)よりも大きくなる可能性もある。しかし、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、25nmより大きいライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合には、S偏光成分(TE偏光成分)の回折光がP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりも多くマスクMから射出されるので、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。
更に、マスク(レチクル)のラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明(S偏光照明)だけでなく、特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線(周)方向に直線偏光する偏光照明法と斜入射照明法との組み合わせも効果的である。特に、マスク(レチクル)のパターンが所定の一方向に延びるラインパターンだけでなく、複数の異なる方向に延びるラインパターンが混在する場合には、同じく特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線方向に直線偏光する偏光照明法と輪帯照明法とを併用することによって、投影光学系の開口数NAが大きい場合でも高い結像性能を得ることができる。
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子2が取り付けられており、このレンズにより投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
なお、液体LQの流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
なお、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体LQで満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体LQを満たす構成であってもよい。
なお、本実施形態の液体LQは水であるが、水以外の液体であってもよい、例えば、露光光ELの光源がFレーザである場合、このFレーザ光は水を透過しないので、液体LQとしてはFレーザ光を透過可能な例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)やフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。この場合、液体LQと接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体LQとしては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。この場合も表面処理は用いる液体LQの極性に応じて行われる。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明は基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置にも適用できる。
また、上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間に局所的に液体を満たす露光装置を採用しているが、本発明は、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる液浸露光装置にも適用可能である。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP5,623,853またはUSP5,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(US S/N 08/416,558)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図7に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
10…液体供給機構、13…第1液体供給口、14…第2液体供給口、20…液体回収機構、21…液体回収部、23…真空系、24…吸引管、25…内側吸引口(第1吸引口)、26…外側吸引口(第2吸引口)、27…第1部材、28…第2部材、29…第3部材、31…空間部、33…気液分離部材(分離器)、AR1…投影領域、AR2…液浸領域、EG…端部、EL…露光光、EX…露光装置、LQ…液体、P…基板、PL…投影光学系

Claims (23)

  1. 光学部材と物体との間の露光光の光路が液体で満たされるように液浸領域を形成する流路形成部材であって、
    前記液体を供給する供給口と、
    前記光路に対して前記供給口の外側に設けられ、前記液体を通過可能な第1吸引口と、
    前記前記光路に対して前記第1吸引口より外側に設けられ、前記液体を通過させず、気体のみを通過可能な第2吸引口と、
    前記第1吸引口及び前記第2吸引口のそれぞれに接続され、前記液体と気体とが流入する空間部と、
    前記空間部の気体を吸引するための吸引管の端部が接続される第1接続部と、
    前記空間部の液体を回収するための回収管の端部が接続される第2接続部と、を備える流路形成部材。
  2. 前記第2接続部は、前記第1接続部より低い位置に配置される請求項1に記載の流路形成部材。
  3. 前記空間部は、前記吸引管を介して真空系に接続され、
    前記空間部の気体は、前記吸引管を介して前記真空系に吸引される請求項1又は2に記載の流路形成部材。
  4. 前記空間部の気体が真空系により吸引されて前記空間部が負圧にされる請求項3に記載の流路形成部材。
  5. 前記空間部は、前記回収管を介して液体回収部に接続され、
    前記空間部の液体は、前記回収管を介して前記液体回収部に回収される請求項1〜4のいずれか一項に記載の流路形成部材。
  6. 前記空間部に設けられ、液体と気体とを分離する分離器を備え、
    前記分離器で分離された気体が前記吸引管から吸引され、前記分離器で分離された液体が前記回収管から回収される請求項1〜5のいずれか一項に記載の流路形成部材。
  7. 前記分離器は、前記第1吸引口から前記空間部に吸引された前記液体と、前記第2吸引口から前記空間部に吸引された前記気体とを分離する請求項6に記載の流路形成部材。
  8. 前記分離器は、前記第2吸引口に位置合わせされる開口部を有し、前記第2吸引口を覆うように設けられる分離部材を含み、
    前記第1吸引口からの液体は、前記空間部のうち前記分離部材の外側の空間に吸引され、
    前記第2吸引口からの気体は、前記開口部を介して前記分離部材の内部空間に吸引される請求項7記載の流路形成部材。
  9. 前記分離部材は、前記分離部材の内部空間と前記外側の空間とを連通する穴部を有し、
    前記第2接続部は、前記穴部の上端部よりも低い位置に設けられる請求項8に記載の流路形成部材。
  10. 前記第1接続部は、前記穴部の上端部よりも高い位置に設けられる請求項9に記載の流路形成部材。
  11. 前記空間部の液体の液面の高さを少なくとも前記穴部の上端部よりも低くなるように調整する液面調整機構を備える請求項9又は10に記載の流路形成部材。
  12. 前記液面調整機構は、前記上端部に対する前記液面の高さに基づいて前記第2接続部の開閉する請求項11に記載の流路形成部材。
  13. 前記液面調整機構は、前記外側の空間の液体が前記穴部を介して前記内部空間に流入しないように、前記空間部の前記液体の液面の高さを調整する請求項11又は12に記載の流路形成部材。
  14. 前記分離部材は、前記第2吸引口の空間部側に液体が配置されないように液体をよける請求項8〜13のいずれか一項に記載の流路形成部材。
  15. 前記物体に対する前記第1吸引口と前記第2吸引口との高さが異なる請求項1〜14のいずれか一項に記載の流路形成部材。
  16. 前記第2吸引口は、前記第1吸引口よりも高い位置に配置される請求項15に記載の流路形成部材。
  17. 前記物体と対向可能な下面を有し、
    前記第1吸引口及び前記第2吸引口は、前記下面に設けられる請求項1〜16のいずれか一項に記載の流路形成部材。
  18. 光学部材と物体との間の露光光の光路が液体で満たされるように液浸領域を形成する流路形成部材であって、
    前記液体を供給する供給口と、
    前記光路に対して前記供給口の外側に設けられ、前記液体を通過可能な第1吸引口と、
    前記光路に対して前記第1吸引口の外側に設けられ、前記液体を通過させず、気体のみを通過可能な第2吸引口と、
    前記第1吸引口及び前記第2吸引口のそれぞれに接続され、前記液体と気体とが流入する空間部と、を備え、
    前記物体に対する前記第1吸引口と前記第2吸引口との高さが異なる流路形成部材。
  19. 前記第2吸引口は、前記第1吸引口よりも高い位置に配置される請求項18に記載の流路形成部材。
  20. 前記物体と対向可能な下面を有し、
    前記第1吸引口及び前記第2吸引口は、前記下面に設けられる請求項18又は19に記載の流路形成部材。
  21. 前記下面は、前記光路に対して外側に向かうにつれて前記物体より離れるように形成される請求項20に記載の流路形成部材。
  22. 液体を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、
    請求項1〜21のいずれか一項記載の流路形成部材を備え
    前記第2吸引口に前記液浸領域の端部が配置された状態で前記基板が露光される露光装置。
  23. 請求項22に記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
    露光された前記基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
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