JP4973434B2 - 発泡樹脂成形品部材の製造方法 - Google Patents

発泡樹脂成形品部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、発泡樹脂成形品部材の製造方法に関し、樹脂成形の技術分野に属する。
従来、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂やPP(ポリプロピレン)樹脂等を材料にして射出成形等により製造された樹脂成形品が自動車部品等に採用されている。その場合、断熱性、軽量性、衝撃吸収性等の観点から、樹脂成形品を、例えば二酸化炭素や窒素等の物理発泡剤あるいは炭酸水素ナトリウム等の化学発泡剤を用いて樹脂中に気泡を生成させた多孔質構造の発泡樹脂成形品とすることがある。このような発泡樹脂成形品は、例えば特許文献1に記載されるように、溶融状態の発泡性樹脂(未発泡の発泡剤を含有した発泡前の樹脂)を成形型のキャビティ内に充填した後、キャビティの容積が拡大する方向に成形型をコアバックすることにより製造される。
ところで、このような発泡樹脂成形品を他の樹脂部材や金属部材に取り付けることがあり、その場合に、次のような不具合が生じることがある。
図9(a)に示すように、取り付ける側の発泡樹脂成形品Xは、その大部分が、発泡セルが成長して空隙率が相対的に大きい成形品本体部Xaでなり、部分的に、発泡セルの成長が抑制されて空隙率が相対的に小さい発泡抑制樹脂部でなる取付部Xbが前記成形品本体部Xaから一体的に突設されている。そして、発泡樹脂成形品Xは、この取付部Xbにおいて、取り付けられる側の相手部材Y(図9(b)参照)に取り付けられるのである。これにより、成形品本体部Xaよりも樹脂密度が高く、強度が大きい発泡抑制樹脂部でなる取付部Xbを介して発泡樹脂成形品Xと相手部材Yとが結合するので、その結合の安定性が増すという利点がある。
その場合の取り付け方としては、図9(b)に示すように、前記取付部Xbを相手部材Yの表面に当接し、この状態で成形品本体部Xaの反対側の面から前記取付部Xbを相手部材Yの側に加圧する。そして、この状態で発泡樹脂成形品Xを横方向に振動させることにより、取付部Xbの先端部が摩擦により溶融して、図9(c)に示すように、取付部Xbが相手部材Yの表面に溶着することとなる(符号ア:振動溶着部)。
ところが、図10(a)に例示するように、前記加圧時に、取付部Xbよりも樹脂密度が低く、強度が小さい成形品本体部Xaが加圧により潰れ、取付部Xbが成形品本体部Xaに没入して取付部Xbに加圧が伝わらず、溶着不良が発生する可能性がある。
この問題に対しては、特許文献2に記載されるような、ソリッド部分付き発泡成形品を用いることが考えられる。このソリッド部分付き発泡成形品は、図10(b)に例示するように、発泡樹脂成形品Xを相手部材Yに取り付けるために成形品本体部Xaから突出した取付部Xbだけでなく、成形品本体部Xaの内部まで発泡セルの成長が抑制された発泡抑制樹脂部で構成した構造である。これによれば、成形品本体部Xaの反対側の面から取付部Xbを相手部材Yの側に加圧した場合に、成形品本体部Xaが加圧により潰れることが低減され、また取付部Xbに加圧が良好に伝わって、取付部Xbの溶着が確実となる。
特開平11−156881(段落0031) 特開2002−067111(段落0016)
ところが、図10(b)に示したように、もともと発泡セルが成長した成形品本体部Xaであった部分を発泡セルの成長が抑制された発泡抑制樹脂部に置き換えると、強度の点では有利であるが、発泡樹脂成形品Xの特徴の1つである軽量化が損なわれてしまう。
本発明は、発泡樹脂成形品の軽量化を減損することなく、加圧時に取付部が成形品本体部に没入することを回避して、発泡樹脂成形品が相手部材に良好に取り付けられた発泡樹脂成形品部材を確実に製造することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明では次のような手段を用いる。
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、発泡樹脂成形品が他の部材に取り付けられた構成の発泡樹脂成形品部材を製造する方法であって、溶融状態の発泡性樹脂を成形型内に充填することにより、発泡セルが成長した成形品本体部と、この成形品本体部の表面から突出し、発泡セルの成長が抑制された取付部と、この取付部に対して成形品本体部の反対側の面に取付部に対応して位置し、取付部に近接するように窪む凹部とを含む発泡樹脂成形品を成形する成形工程と、この成形工程で成形した発泡樹脂成形品の前記凹部に支持具を挿入し、この支持具で前記発泡樹脂成形品を支持し、かつ前記支持具で前記取付部を他の部材に加圧することにより、発泡樹脂成形品を前記取付部を介して他の部材に取り付ける取付工程とを有することを特徴とする。
ここで、取付部に関し、「発泡セルの成長が抑制された」とは、発泡がない非発泡の状態、及び、発泡はあるが発泡倍率が低い低発泡倍率の状態の両方を含む概念である。
また、取付工程において、取付部を他の部材に加圧することにより、発泡樹脂成形品を取付部を介して他の部材に取り付ける態様としては、例えば、振動溶着や接着剤等による接合、あるいはクリップ等による嵌合等が挙げられる。
さらに、成形工程において、発泡セルが成長した成形品本体部は、例えば、該成形品本体部を賦形するキャビティ部分の容積を相対的に大きく設定することにより成形することができ、発泡セルの成長が抑制された取付部は、例えば、該取付部を賦形するキャビティ部分の容積を相対的に小さく設定することにより成形することができる。
次に、本願の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、前記凹部は、取付部の基部近傍まで窪んでいることを特徴とする。
次に、本願の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、前記取付部及び前記凹部は、取付工程の加圧の方向に沿って突出し又は窪んでいることを特徴とする。
次に、本願の請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、前記取付工程の加圧は、取付部を他の部材に接合するための加圧であることを特徴とする。
次に、本願の請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、前記接合は、取付部を振動させることによる振動溶着であると共に、前記取付工程では、前記取付部を支持具を介して振動させることを特徴とする。
次に、本願の請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、前記取付部は、成形品本体部の表面上に所定長さ連続して延設され、前記凹部は、成形品本体部の反対側の面で前記取付部に対応する位置において所定間隔で断続的に設けられていることを特徴とする。
次に、本願の請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、前記成形工程では、成形型内への発泡性樹脂の充填後、成形型をコアバックすることにより、発泡セルが成長した成形品本体部を成形することを特徴とする。
次に、本願の請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、前記成形工程では、成形型内への発泡性樹脂の充填後、発泡セルが成長する前に、取付部に賦形される発泡性樹脂の部分を冷却することにより、発泡セルの成長が抑制された取付部を成形することを特徴とする。
ここで、取付部に賦形される発泡性樹脂の部分を冷却する態様としては、成形型の相当部分を発泡性樹脂の充填後に冷却すること、あるいは成形型の相当部分を発泡性樹脂の充填前に予め冷却しておくこと等が挙げられる。その場合、成形型の温度が成形型内へ充填される溶融状態の発泡性樹脂の温度より低ければ、該発泡性樹脂を冷却することになるから、特に水等の冷媒を用いて成形型を積極的に冷却しなくても、充填前の成形型の温度が室温程度であれば足りることになる。
次に、本願の請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、溶融状態の発泡性樹脂は、物理発泡剤を含有していることを特徴とする。
次に、本願の請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、前記物理発泡剤は、超臨界状態の流体であることを特徴とする。
まず、請求項1に記載の発明によれば、発泡樹脂成形品が他の部材(相手部材)に取り付けられた構成の発泡樹脂成形品部材を製造する場合に、発泡樹脂成形品の成形工程において、発泡セルが成長した成形品本体部と、この成形品本体部の表面から突出し、発泡セルの成長が抑制された取付部、すなわち発泡抑制樹脂部でなる取付部とに加えて、前記取付部に対応して位置し、前記取付部に近接するように窪む凹部を、前記取付部に対して成形品本体部の反対側の面に成形し、そして、発泡樹脂成形品の取付工程において、前記凹部に支持具を挿入し、この支持具で発泡樹脂成形品を支持すると共に該支持具で前記取付部を相手部材に加圧するようにしたから、支持具が加圧する部位から取付部までの間隔が凹部がない場合と比べて短くなり、かつ、取付部に対応しない成形品本体部の部分は支持具によって加圧されなくなる。
その結果、支持具が取付部を近接した位置で加圧することとなり、加圧がより直接的に取付部に及び、加圧によって潰れる成形品本体部の容積が相対的に少なくなって、加圧時に取付部が成形品本体部に没入することが回避され、発泡樹脂成形品が相手部材に良好に取り付けられた発泡樹脂成形品部材を確実に製造することができる。そして、その場合に、発泡樹脂成形品の特徴の1つである軽量化が減損されることもない。
次に、請求項2に記載の発明によれば、凹部が取付部の基部近傍まで窪んでいるから、支持具による支持がより安定化すると共に、支持具による加圧部位から取付部までの間隔がより短くなって、加圧がより直接的に取付部に及び、加圧によって潰れる成形品本体部の容積がより少なくなる。
次に、請求項3に記載の発明によれば、取付部及び凹部が加圧の方向に沿って突出し又は窪んでいるから、加圧の際に取付部が圧力で倒壊することが防がれ、また加圧の際の支持具による支持安定性が増すこととなる。
次に、請求項4に記載の発明によれば、取付部を例えば振動溶着や接着剤等による接合によって相手部材に取り付けるようにしたから、例えばクリップ等による嵌合によって取り付ける場合に比べて、発泡樹脂成形品と相手部材とで囲まれた空間の密閉性が高くなる。したがって、発泡樹脂成形品と相手部材とで囲まれた空間をベンチレーションのような流体の通路として利用するような場合に好適である。
次に、請求項5に記載の発明によれば、接合は、取付部を振動させることによる振動溶着である場合に、取付工程では、支持具を介して取付部を振動させるようにしたから、1つの部材を用いて、取付部に加圧力と振動との両方を短い距離で効率よく確実に伝達することが可能となり、両者が相まって良好な取り付けに寄与することとなる。
次に、請求項6に記載の発明によれば、取付部を接合によって相手部材に取り付ける場合に、取付部を、成形品本体部の表面上に所定長さ連続して延設し、一方、凹部を、成形品本体部の反対側の面で取付部に対応する位置において所定間隔で断続的に設けたから、取付部による接合長さが長くなり、取り付けの安定化が図られると共に、凹部形成による発泡樹脂成形品の剛性低下を抑制することが可能となる。
次に、請求項7に記載の発明によれば、発泡セルが成長した成形品本体部の成形を、成形型内に発泡性樹脂を充填したのち成形型をコアバックすることにより行うようにしたから、発泡セル径のばらつきが小さく、物性が均一な成形品本体部が円滑良好に成形されることとなる。
次に、請求項8に記載の発明によれば、発泡セルの成長が抑制された(発泡抑制樹脂部でなる)取付部の成形を、成形型内に発泡性樹脂を充填したのち発泡セルが成長する前に、取付部に賦形される発泡性樹脂の部分を冷却することにより行うようにしたから、発泡セルの成長が抑制された取付部が簡単な方法で円滑良好に成形されることとなる。
次に、請求項9に記載の発明によれば、溶融状態の発泡性樹脂に物理発泡剤を含有させるようにしたから、例えば化学発泡剤等に比べて発泡倍率が高く、したがって、取付工程における加圧時に成形品本体部が潰れて取付部が成形品本体部に没入する問題が起こり易い状況でありながら、その問題の発生が抑制されることとなる。また、例えば化学発泡剤等に比べて、発泡樹脂成形品の内部の発泡セル径を相対的に小さな径に揃えることができ、発泡樹脂成形品の剛性等の物性の向上を図ることが可能となる。
その場合に、請求項10に記載の発明によれば、溶融状態の発泡性樹脂に超臨界状態の流体を含有させるようにしたから、発泡樹脂成形品の内部の発泡セル径をより一層微細な径に揃えることができ、発泡樹脂成形品の剛性等の物性のより一層の向上を図ることが可能となる。以下、発明の最良の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
図1は、本発明の最良の実施形態に係る発泡樹脂成形品の成形装置10の全体構成図であって充填工程を示すもの、及び図2は、コアバック工程を示すものである。この成形装置10は、射出機20と、成形型30とを備えている。この成形装置10が行う成形動作は、特許請求の範囲の「成形工程」を構成する。
射出機20は、型締め状態の成形型30のキャビティ42内に、物理発泡剤を含有させた溶融状態の発泡性樹脂Rを射出するもので、シリンダ内に例えばPP樹脂等の基材樹脂を投入するためのホッパ21と、シリンダ内で混錬された溶融状態の基材樹脂に対して物理発泡剤としての超臨界状態の流体を供給するためのノズル24とを備えている。超臨界状態の流体は、二酸化炭素又は窒素等の不活性ガスのボンベ22から超臨界流体発生装置23を介して生成される。これにより、基材樹脂に物理発泡剤を含有させた溶融状態の発泡性樹脂Rが得られる。この発泡性樹脂Rは、固定型31に形成された供給通路41を経て、型締め状態の成形型30のキャビティ42内に射出される。
ここで、超臨界状態の流体とは、気体と液体とが共存できる限界の温度(臨界温度)及び圧力(臨界圧力)を超えた状態にある流体のことで、前記臨界温度は、例えば二酸化炭素で31℃、窒素でマイナス147℃であり、前記臨界圧力は、例えば二酸化炭素で7.4MPa、窒素で3.4MPaである。超臨界状態にある流体は、密度が液体に近似し、流動性が気体に類似する。その結果、溶融状態の基材樹脂中を活発に移動して、樹脂分子の奥深くまで均一に拡散、浸透し、微細発泡の種ないし核になり得るものである。
成形型30は、相互に型締め及び型開きする固定型31と移動型32,33とで構成されている。移動型は、キャビティ42の容積が拡大する方向にコアバック可能な可動コア32と、不動コア33とを含んでいる。可動コア32は、後述する発泡樹脂成形品X(図3参照)のうち、発泡セルが成長した成形品本体部Xa(図7(a)参照)を形成するためのものである。不動コア33は、成形品本体部Xaの一方の面において、後述する取付部Xb(図7(a)参照)に近接するように窪む凹部Xc(図7(a)参照)を形成するためのものである。
図3は、前記成形装置10で成形された発泡樹脂成形品Xが相手部材Yに取り付けられた構成の発泡樹脂成形品部材Zの断面図である。この発泡樹脂成形品部材Zは自動車部品であって、相手部材であるインスツルメントパネルYの裏面に、発泡樹脂成形品であるベンチレーションダクトXが取り付けられたものである。したがって、ベンチレーションダクトXとインスツルメントパネルYとで囲まれた空間がエアの通路として利用されるので、該空間には高い密閉性が要求される。
図4は、前記成形装置10の成形動作を段階的に示すための成形型30の要部拡大断面図である。
まず、図4(a)に示すように、固定型31と移動型(可動コア32及び不動コア33)とを型締めする。これにより、固定型31と可動コア32と不動コア33とでキャビティ42が形成されている。
その場合に、発泡樹脂成形品Xの凹部Xc(図7(a)参照)を形成するため、不動コア33の先端部33aが可動コア32のキャビティ形成面を超えて突出している。また、発泡樹脂成形品Xの取付部Xb(図7(a)参照)を形成するため、固定型31に凹溝31aが形成されている。そして、前記不動コア33の先端部33aと、前記固定型31の凹溝31aとは、互いに近接して対向する位置にある。
次いで、図4(b)に示すように、前記キャビティ42内に溶融状態の発泡性樹脂Rを射出機20で充填する。
次いで、図4(c)に示すように、発泡性樹脂Rをキャビティ42内に充填した後、キャビティ42の容積が拡大する方向に可動コア32をコアバックし(図中の白矢印参照)、可動コア32を所定量だけコアバックすれば、可動コア32のコアバックを終了する。
なお、図示しないが、可動コア32をコアバックするための例えば油圧装置等が成形装置10に備えられている。
このコアバック工程において、可動コア32がコアバックするにより、キャビティ42内に充填された発泡性樹脂Rのうち可動コア32で賦形される部分は、樹脂Rの圧力が低下し、その結果、発泡性樹脂R中に含有された発泡剤(この場合は超臨界状態の流体)が発泡を開始して発泡セルが成長し、図7(a)に示すように、空隙率が相対的に大きい(換言すれば、樹脂密度が相対的に小さい)成形品本体部Xaとなる。
一方、キャビティ42内に充填された発泡性樹脂Rのうちコアバックしない不動コア33と固定型31の凹溝31aとで挟まれて賦形される部分は、樹脂Rの圧力が低下せず、その結果、発泡剤が発泡を開始せずに発泡セルが成長せず、図7(a)に示すように、空隙率が相対的に小さい(換言すれば、樹脂密度が相対的に大きい)発泡抑制樹脂部からなる取付部Xbとなる。
特に、固定型31の凹溝31a内に存在する発泡性樹脂Rの部分は、容積が相対的に少ないから、温度が室温程度である固定型31で早期に冷却される。その結果、樹脂Rの圧力低下が抑制され、発泡セルの成長が抑制された取付部Xbが形成される。
図5は、前記成形装置10で成形された発泡樹脂成形品Xを相手部材Yに取り付けるために使用可能な振動溶着装置の全体構成図である。この振動溶着装置は、支持具50を備え、発泡樹脂成形品Xを支持する振動溶着装置上部60と、この振動溶着装置上部60に相対向し、相手部材Yを保持する振動溶着装置下部70とを備えている。この振動溶着装置が行う取付動作は、特許請求の範囲の「取付工程」を構成する。
そして、振動溶着装置上部60は、振動溶着装置下部70に対する下方向への加圧と、横方向の振動とが可能に構成されている。
発泡樹脂成形品XがPP樹脂で成形されている場合、加圧力は1〜4MPa、振動数は100〜250Hz、振幅は0.5〜3.0mm、沈み量(加振時間に関連する)は1〜2mm、加振方向は取付部Xbの長さ方向である。
また、振動溶着装置上部60で支持される発泡樹脂成形品Xにおいては、図6に示すように、発泡セルが成長した成形品本体部Xaと、この成形品本体部Xaの表面(図例では下面)から突出し、発泡セルの成長が抑制された取付部Xbと、この取付部Xbに対して成形品本体部Xaの反対側の面(図例では上面)に取付部Xbに対応して位置し、取付部Xbに近接するように窪む凹部Xcとが形成されているが、特に、本実施形態においては、図示したように、前記取付部Xbは、成形品本体部Xaの表面(図例では下面)上に所定長さ連続して延設されているのに対し、前記凹部Xcは、成形品本体部Xaの反対側の面(図例では上面)で前記取付部Xbに対応する位置において所定間隔で断続的に設けられている。
図7は、前記振動溶着装置の取付動作を段階的に示すための要部拡大断面図である。
まず、図7(a)に示すように、発泡樹脂成形品Xは、可動コア32のコアバックにより発泡セルが成長した成形品本体部Xaと、この成形品本体部Xaの表面(図例では下面)から突出し、固定型31による冷却により発泡セルの成長が抑制された取付部Xbと、この取付部Xbに対して成形品本体部Xaの反対側の面(図例では上面)に取付部Xbに対応して位置し、不動コア33により取付部Xbに近接するように窪んで形成された凹部Xcとを有している。
そして、図7(b)に示すように、振動溶着装置上部60の支持具50を発泡樹脂成形品Xの凹部Xcに挿入し、この支持具50で発泡樹脂成形品Xを支持し、かつ該支持具50で発泡樹脂成形品Xの取付部Xbを振動溶着装置下部70に保持されている相手部材Yに加圧する。そして、この状態で発泡樹脂成形品Xを横方向に振動させる(振動溶着)。
この結果、図7(c)に示すように、取付部Xbの先端部が摩擦により溶融して、取付部Xbが相手部材Yの表面に溶着し(符号ア:振動溶着部)、これにより、発泡樹脂成形品Xが前記取付部Xbを介して相手部材Yに取り付けられた構成の発泡樹脂成形品部材Zが製造されることとなる。
なお、図示しないが、振動溶着装置上部60を加圧及び振動させるための適宜手段が振動溶着装置に備えられている。
このように、本実施形態においては、発泡樹脂成形品Xが相手部材Yに取り付けられた構成の発泡樹脂成形品部材Zを製造するにあたり、まず、溶融状態の発泡性樹脂Rを成形装置10の成形型30内に充填することにより、発泡セルが成長した成形品本体部Xaと、この成形品本体部Xaの表面から突出し、発泡セルの成長が抑制された取付部Xbと、この取付部Xbに対して成形品本体部Xaの反対側の面に取付部Xbに対応して位置し、取付部Xbに近接するように窪む凹部Xcとを含む発泡樹脂成形品Xを成形する。
そして、成形した発泡樹脂成形品Xの凹部Xcに振動溶着装置の支持具50を挿入し、この支持具50で発泡樹脂成形品Xを支持し、かつ該支持具50で取付部Xbを相手部材Yに加圧することにより、発泡樹脂成形品Xを取付部Xbを介して相手部材Yに取り付ける。
これにより、支持50が加圧する部位から取付部Xbまでの間隔が、凹部Xcがない場合と比べて短くなり、かつ、取付部Xbに対応しない成形品本体部Xaの部分は支持具50によって加圧されなくなる。その結果、支持具50が取付部Xbを近接した位置で加圧することとなり、加圧がより直接的に取付部Xbに及び、加圧によって潰れる成形品本体部Xaの容積が相対的に少なくなって、加圧時に取付部Xbが成形品本体部Xaに没入することが回避され、発泡樹脂成形品Xが相手部材Yに良好に取り付けられた発泡樹脂成形品部材Zが確実に製造される。そして、その場合に、発泡樹脂成形品Xの特徴の1つである軽量化が減損されることもない。
なお、取付部Xbは、発泡抑制樹脂部でなるが、発泡がない非発泡の状態であっても、また、発泡はあるが発泡倍率が低い低発泡倍率の状態であっても、いずれでも構わない。
また、本実施形態においては、凹部Xcは、取付部Xbの基部近傍まで窪んでいる。
これにより、支持具50による支持がより安定化すると共に、支持具50による加圧部位から取付部Xbまでの間隔がより短くなって、加圧がより直接的に取付部Xbに及び、加圧によって潰れる成形品本体部Xaの容積がより少なくなる。
また、本実施形態においては、取付部Xb及び凹部Xcは、取付工程の加圧の方向に沿って突出し又は窪んでいる。
これにより、加圧の際に取付部Xbが圧力で倒壊することが防がれ、また加圧の際の支持具50による支持安定性が増すこととなる。
また、本実施形態においては、取付工程の加圧は、取付部Xbを相手部材Yに接合するための加圧である。
これにより、取付部Xbを振動溶着による接合によって相手部材Yに取り付けるから、発泡樹脂成形品Xと相手部材Yとで囲まれた空間の密閉性が高くなる。したがって、前記空間をベンチレーションのようなエアの通路として利用する場合に好適である。
また、本実施形態においては、前記接合は、取付部Xbを加圧下で振動させることによる振動溶着であると共に、取付工程では、取付部Xbを支持具50を介して振動させている。
これにより、単一の支持具50を用いて、取付部Xbに加圧力と振動との両方を短い距離で効率よく確実に伝達することが可能となり、両者が相まって良好な取り付けに寄与することとなる。
また、本実施形態においては、取付部Xbは、成形品本体部Xaの表面上に所定長さ連続して延設され、凹部Xcは、成形品本体部Xaの反対側の面で取付部Xbに対応する位置において所定間隔で断続的に設けられている。
これにより、取付部Xbによる接合長さが長くなり、取り付けの安定化が図られると共に、凹部Xcを形成したことによる発泡樹脂成形品Xの剛性低下を抑制することが可能となる。
また、本実施形態においては、発泡セルが成長した成形品本体部Xaの成形を、成形型30内に発泡性樹脂Rを充填したのち成形型30をコアバックすることにより行うようにしたから、発泡セル径のばらつきが小さく、物性が均一な成形品本体部Xaが円滑良好に成形されることとなる。
また、本実施形態においては、発泡セルの成長が抑制された(発泡抑制樹脂部でなる)取付部Xbの成形を、成形型30内に発泡性樹脂Rを充填したのち発泡セルが成長する前に、取付部Xbに賦形される発泡性樹脂Rの部分を冷却することにより行うようにしたから、発泡セルの成長が抑制された取付部Xbが簡単な方法で円滑良好に成形されることとなる。
また、本実施形態においては、溶融状態の発泡性樹脂Rに物理発泡剤を含有させるようにしたから、例えば化学発泡剤等に比べて発泡倍率が高く、したがって、取付工程における加圧時に成形品本体部Xaが潰れて取付部Xbが成形品本体Xa部に没入する問題が起こり易い状況でありながら、その問題の発生が抑制されることとなる。また、例えば化学発泡剤等に比べて、発泡樹脂成形品Xの内部の発泡セル径を相対的に小さな径に揃えることができ、発泡樹脂成形品Xの剛性等の物性の向上を図ることが可能となる。
また、本実施形態においては、溶融状態の発泡性樹脂Rに超臨界状態の流体を含有させるようにしたから、発泡樹脂成形品Xの内部の発泡セル径をより一層微細な径に揃えることができ、発泡樹脂成形品Xの剛性等の物性のより一層の向上を図ることが可能となる。
なお、溶融状態の発泡性樹脂Rに、例えばガラスファイバ等の補強繊維をさらに含有させてもよい。発泡樹脂成形品Xの強度等の物性の向上を図ることができると共に、可動コア32をコアバックする際に、補強繊維のスプリングバック現象が起き、これにより、発泡性樹脂Rの発泡ないし膨張がより一層促進されるという利点が得られる。
なお、前記実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、さらに種々の修正や変更を施してよいことはいうまでもない。
例えば、発泡樹脂成形品Xを相手部材Yに取り付ける別の態様として、図8(a)に例示するように、取付部Xbを加圧下で接着剤により相手部材Yの表面に接合してもよい(符号イ:接着部)。また、図8(b)に例示するように、クリップ形状に成形した取付部Xbを加圧下で相手部材Yに形成した開口Oに嵌合してもよい(符号ウ:クリップ嵌合部)。
また、成形型30において、不動コア33を固定型31の側に配置してもよい。
また、発泡樹脂成形品Xの成形工程において、発泡セルの成長が抑制された発泡抑制樹脂部からなる取付部Xbを形成するために、水等の冷媒を用いて成形型30(より具体的には固定型31)を積極的に冷却してもよい。
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、発泡樹脂成形品の軽量化を減損することなく、加圧時に取付部が成形品本体部に没入することを回避して、発泡樹脂成形品が相手部材に良好に取り付けられた発泡樹脂成形品部材を確実に製造することが可能な技術であるから、樹脂成形の技術分野において広範な産業上の利用可能性が期待される。
本発明の最良の実施形態に係る発泡樹脂成形品の成形装置の全体構成図であって、充填工程を示すものである。 同じく、コアバック工程を示すものである。 前記成形装置で成形された発泡樹脂成形品が相手部材に取り付けられた構成の発泡樹脂成形品部材の断面図である。 前記成形装置の成形動作を段階的に示すための成形型の要部拡大断面図であって、(a)は、固定型と移動型とが型締めした状態を示すもの、(b)は、成形型のキャビティ内に溶融状態の発泡性樹脂を充填した状態を示すもの、(c)は、発泡性樹脂の充填後、可動コアのコアバックが終了した状態を示すものである。 前記成形装置で成形された発泡樹脂成形品を相手部材に取り付けるために使用可能な振動溶着装置の全体構成図である。 前記発泡樹脂成形品における成形品本体部と取付部と凹部との位置関係を示す拡大斜視図である。 前記振動溶着装置の取付動作を段階的に示すための要部拡大断面図であって、(a)は、発泡樹脂成形品の構成を示すもの、(b)は、振動溶着を行っている状態を示すもの、(c)は、振動溶着が終了した状態を示すものである。 発泡樹脂成形品を相手部材に取り付ける別の態様を示すための図7(b)に対応する要部拡大断面図であって、(a)は、接着剤による接合によるもの、(b)は、クリップによる嵌合によるものである。 発泡樹脂成形品を相手部材に取り付ける従来の動作を段階的に示すための要部拡大断面図であって、(a)は、図7(a)に対応するもの、(b)は、図7(b)に対応するもの、(c)は、図7(c)に対応するものである。 従来の問題点を示すための要部拡大断面図であって、(a)は、成形品本体部が加圧で潰れる問題を示すもの、(b)は、発泡樹脂成形品の軽量化が損なわれる問題を示すものである。
符号の説明
10 成形装置
30 成形型
31 固定型
32 可動コア(移動型)
33 不動コア(移動型)
42 キャビティ
50 支持具
60 振動溶着装置上部
70 振動溶着装置下部
R 発泡性樹脂
X 発泡樹脂成形品
Xa 成形品本体部
Xb 取付部
Xc 凹部
Y 相手部材(他の部材)
Z 発泡樹脂成形品部材

Claims (10)

  1. 発泡樹脂成形品が他の部材に取り付けられた構成の発泡樹脂成形品部材を製造する方法であって、
    溶融状態の発泡性樹脂を成形型内に充填することにより、発泡セルが成長した成形品本体部と、この成形品本体部の表面から突出し、発泡セルの成長が抑制された取付部と、この取付部に対して成形品本体部の反対側の面に取付部に対応して位置し、取付部に近接するように窪む凹部とを含む発泡樹脂成形品を成形する成形工程と、
    この成形工程で成形した発泡樹脂成形品の前記凹部に支持具を挿入し、この支持具で前記発泡樹脂成形品を支持し、かつ前記支持具で前記取付部を他の部材に加圧することにより、発泡樹脂成形品を前記取付部を介して他の部材に取り付ける取付工程とを有することを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
  2. 請求項1に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、
    前記凹部は、取付部の基部近傍まで窪んでいることを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、
    前記取付部及び前記凹部は、取付工程の加圧の方向に沿って突出し又は窪んでいることを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、
    前記取付工程の加圧は、取付部を他の部材に接合するための加圧であることを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
  5. 請求項4に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、
    前記接合は、取付部を振動させることによる振動溶着であると共に、
    前記取付工程では、前記取付部を支持具を介して振動させることを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
  6. 請求項4又は5に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、
    前記取付部は、成形品本体部の表面上に所定長さ連続して延設され、
    前記凹部は、成形品本体部の反対側の面で前記取付部に対応する位置において所定間隔で断続的に設けられていることを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、
    前記成形工程では、成形型内への発泡性樹脂の充填後、成形型をコアバックすることにより、発泡セルが成長した成形品本体部を成形することを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、
    前記成形工程では、成形型内への発泡性樹脂の充填後、発泡セルが成長する前に、取付部に賦形される発泡性樹脂の部分を冷却することにより、発泡セルの成長が抑制された取付部を成形することを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、
    溶融状態の発泡性樹脂は、物理発泡剤を含有していることを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
  10. 請求項9に記載の発泡樹脂成形品部材の製造方法であって、
    前記物理発泡剤は、超臨界状態の流体であることを特徴とする発泡樹脂成形品部材の製造方法。
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