JP4972054B2 - リターン装置およびロックボルト - Google Patents
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Description
図10は従来のパッカー付き後注入式ロックボルトの構成図であり、(A)は全体図、(B)は口元拡大図である。パッカー付き後注入式ロックボルトは、地山に開けた孔(ボアホール)HL内に設置される中空ボルト11と、中空ボルト11の口元に取り付けられ、孔を塞ぐためのパッカー12と、パッカー12を加圧注入して径方向に拡大させるためのパッカー用注入ホース13と、モルタル、セメントミルクなどの定着材を孔内に注入するための定着材用注入ホース14と、中空ボルト11の口元(リターン口)に開放閉塞自在に接続されたバルブ15と、ロックボルトを地山に押し付けて固定するためのワッシャー16やナット(図示せず)を有している。中空ボルト11は、例えば外側に特殊なネジが形成された中空の異型ネジ節中空鉄筋である。
以上より、本発明の目的は、材料圧送ポンプにかかる負荷を極力軽減しながら、適正な品質の材料を充填できるようにしたリターン装置と、該リターン装置を使用したロックボルトを提供することである。
本発明の目的は、流体の濃度と該流体への加圧状況の両方の確認が可能であり、これら両特性の確認を必要とする作業に利用して好適なリターン装置を提供することである。
・リターン装置
本発明のリターン装置は、開放閉塞自在な第1のバルブと、所定の流体圧力で開放する第2のバルブと、第1、第2のバルブの各々に接続し、流体をこれらバルブに導く分岐管とを備えている。前記第2バルブは、一端に入口通路が、中間に出口通路が設けられたシリンダー部と、該シリンダー部の内部に前記入口通路と反対側に配設されるスプリングと、通常は該スプリングのバネ力により入口通路と出口通路間の流路を塞ぎ、前記所定の流体圧力でバネを押し込んで入口通路と出口通路間の流路を開通するピストンロッドとを備えている。また、前記ピストンロッドの流体当接部を球状に形成している。
本発明のロックボルトは、孔内に設置される中空状本体と、前記本体の口元に取り付けられ、前記孔を塞ぐパッカーと、前記孔内に定着材を注入するための注入部と、前記パッカーにより仕切られる前記孔内に連通する形で前記中空状本体に接続されるリターン装置とを備え、前記リターン装置は、開放閉塞自在な第1のバルブと、所定の注入圧力で開放する第2のバルブと、前記中空状本体に接続され、該中空状本体より流入するリターン材を第1、第2のバルブのそれぞれに導く分岐管を備えている。
また、本発明のリターン装置によれば、流路が詰まったら、第1のバルブを手動で開閉してポンピングすることにより詰まりを除去でき、材料圧送ポンプにかかる負荷を軽減することができる。
さらに、本発明によれば、ピストンロッドの流体当接面を丸くすることにより、入口通路部と出口通路部間が一気に開かず、リターン材が少しづつリターンされるため、注入圧力が急激に降下せず、注入圧力を設定圧力P2に略維持したままリターン材の排出を検出して注入を完了することができ、定着効果を高めることができる。
図1はロックボルト施工に本発明のリターン装置を適用した場合のロックボルト施工装置の全体構成図であり、既に地山21に形成した削孔(ボアホール)22にパッカー付き後注入式のロックボルト23が設置されている状態が示されている。
パッカー付き後注入式のロックボルト23は、削孔(ボアホール)22内に設置される中空ボルト23aと、中空ボルト23aの口元に取り付けられ、孔を塞ぐための透水性の布袋状のパッカー23bと、パッカー23bを加圧注入して径方向に拡大させるためのパッカー用注入ホース23cと、グラウト材などの定着材を孔内に注入するための定着材用注入ホース23dを備えている。
パッカー23bには、セメント系グラウト材が注入される。セメント系グラウト材が注入されると透水性のパッカー23bは内部の水分のみが滲み出し、これにより、パッカー内は硬練状態となって充填されてゆき、膨張したパッカーがボアホールの孔壁に密着して一時的にボアホールを封水する。
リターンバルブ41の出口はリターン材のリターン口となっており、該リターン口にはリターン材の濃度を測定する濃度測定部33が設けられている。リターン材の濃度測定には周知のPロート測定を採用することが出来る。リリースバルブ42にはリリース口への流路を開放閉塞する切換バルブ34が接続されている。この切換バルブ34はネジ螺合によりリリースバルブ42へ着脱可能である。
以上のように、ロックボルト23の定着材用注入ホース23dには、圧力センサー37を介してミキシング圧送ポンプ36が接続され、また、ロックボルトの排気・リターン側にはリターン装置32、切換バルブ34が接続されてリターン口、リリース口で開口している。
図3はロックボルトの口元部の拡大図であり、図1と同一部分には同一符号を付している。圧力計31の一端が中空ボルト23aの口元側端部に接続され、圧力計31の他端にリターン装置32のT字状の分岐管43の第1端部43aが接続されている。また、分岐管43の第2端部43bにはリターンバルブ41が接続されており、各部間はネジ螺合により互いに接続されている。切換バルブ34が組み付けられたリリースバルブ42は全体的にT字管の形状を備え、流体入口側がレバー式耐圧継手44により分岐管43の第3端部43cに接続され、流体出口側がネジにより切換バルブ34に接続されている。なお、パッカー用注入ホース23cにはグラウト材の通過を制御するバルブ39が設けられている。
図4はリリースバルブの組み付け断面図で、(A)は流路閉状態を示し、(B)は流路開状態を示すもの、図5はリリースバルブの分解図、図6はリリースバルブの動作原理説明図である。
リリースバルブ42は図5に示すようにピストンシリンダー51とスプリング52とスプリング押し付け部材53とピストンロッド54と接続部55を有している。ピストンシリンダー51は内部にネジTH1が切られた円筒の入口通路部51aと、該入口通路部に直線的に連通する円筒シリンダー部51bと、円筒シリンダー部に垂直に連通する出口通路部51cを有している。円筒シリンダー部51bにはスプリング52、スプリング押し付け部材53、Oリング54a付のピストンロッド54がはめ込まれる。また、ピストンシリンダー51の入口通路部51aには、内部に形成したネジTH1とネジ螺合して接続部55が装着され、装着時、該接続部55の一端がピストンロッド54に当接してスプリング52を押し付け、これによりピストンロッド54にスプリングから所定のバネ力が働くようになっている。
通常、図4(A)に示すようにピストンロッド54はスプリング52を押し付けた状態で入口通路部51aと出口通路部51c間を遮断している。しかし、リターン材が図4(B)に示すように到来してスプリングのバネ力に打ち勝つ所定の注入圧力P2が加わるとピストンロッド54はスプリング52を圧縮する方向(右方向)に移動し、これにより入口通路部51aと出口通路部51c間の流路を開通し、リターン材はリリース口方向に移動可能となる。出口通路部51cの先端外周にはネジTH2が形成され、切換バルブ34がネジ螺合により着脱可能になっている。
図6(A)に示すように、通常時、リリースバルブ42のピストンロッド54には、入口通路部51aと出口通路部51c間の流路を遮断する方向(図では左方向)にスプリング52のバネ力F1が働いている。又、ピストンロッド54には、定着材の注入により入口通路部51aと出口通路部51c間の流路を開通する方向(図では右方向)に注入圧力F2が働いている。したがって、ボアホール内への定着材の注入圧力が大きくなって、F2>F1となる注入圧力P2において、図6(B)に示すようにピストンロッド54が右方向に移動し、入口通路部51aと出口通路部51c間の流路が開通し、リターン材がリリース口方向に流動して該リリース口より排出される。
図7はロックボルトの施工フローである。なお、既に、中空ボルト23aの排気・リターン側にはリターン装置32が接続され、又、切換バルブ34もリリースバルブ42に装着されているものとする。
まず、地山21(図1)にボアホール22を削孔し(ステップ100)、そこにパッカー付後注入式のロックボルト23を挿入、セットする(ステップ101)。
ついで、パッカー23bにセメント系グラウト材を挿入して膨らませるために、圧力センサー(図示せず)をパッカーセットに適した圧力P1(湧水圧P1を基準とする)に設定し(ステップ102)、パッカー用注入ホース23cを介して図示しない圧送ポンプよりパッカー注入を行なう(ステップ103)。
セメント系グラウト材を注入すると透水性のパッカー23bは内部の水分のみを滲み出し、これにより、パッカー内は硬練状態となって充填されてゆき、膨張したパッカーがボアホール22の孔壁に密着して一時的にボアホールを封水する。このとき、注入圧力がP1となって圧送ポンプからのセメント系グラウト材の注入が終了する。なお、パッカー用の圧送ポンプ、圧力センサーとして、ミキシング圧送ポンプ36、圧力センサー37を兼用することが出来る。
ついで、パッカーより孔奥側へのグラウト注入を開始する(ステップ105)。注入圧の目標はP1より大きく、P3より小さい所定の圧力P2である。例えば、P2=2MPa(メガパスカル)である。なお、注入初期、リターンバルブ41、切換バルブ34は開放しておく(ステップ106、リターンバルブ開放確認)。
定着材用注入ホース23dからボアホール内にグラウト材が注入されると、それまでボアホール内にあったエアまたは水がロックボルトの先端開口部から中空部を通ってリターン装置32のリターンバルブ41に到り、該リターンバルブから排出される(ステップ107)。
リターン材が適正濃度になれば、リターンバルブ41を閉じ(ステップ109)、グラウト材の注入を継続する。リターンバルブ41が閉じたため、排気・リターン側の圧力が上昇してグラウト材の加圧注入が行なわれる(ステップ110)。排気・リターン側の注入圧が設定した圧力P2になるとピストンロッド54が右方向に移動し(図4参照)、リターン材がリリースバルブ42、切換バルブ34を介してリリース口より排出される(ステップ111で「YES」)。リターン材がリリース口より排水され、次ステップ112の「グラウト材濃度OK?」で「YES」であれば、切換バルブ34を閉塞する。以後、ミキシング圧送ポンプ36より圧送を継続すると注入側の注入圧力が設定圧力P3以上になり、自動的にミキシング圧送ポンプ36は定着材の圧送を停止する。これにより定着材の注入工程が終了する。しかし、排出されたリターン材濃度が「NO」であれば、ステップ110に戻り、加圧注入を継続し、グラウト材が適正濃度になったことを確認し、切換バルブ34を閉塞し、注入完了に移行する。
なお、リターンバルブ41を閉じているにもかかわらず、リリース口からグラウト材が排出されない場合には(ステップ111で「NO」)、リリースバルブ42が閉じている状態で手動でリターンバルブ41を開閉する動作(ポンピング)を繰り返し行ない(ステップ113,114)、グラウト材が適正濃度になったことを確認した後、リターンバルブ41を閉じ(ステップ109)、リリースバルブ42よりリターン材が排出されるまで加圧注入(ステップ110)を繰り返す。これにより、圧送ポンプに負荷をかけることなく、適正な品質のグラウト注入を行なうことが可能になる。
図8はリリースバルブの別の実施例であり、図4のリリースバルブと同一部分には同一符号を付している。図8のリリースバルブが図4のリリースバルブと異なる点は、ピストンロッド54の端面54bを平面でなく丸く、例えば球面にした点と、接続部55においてピストンロッド54の球面状の端面54bと接する部位が出口通路部51c側において部分的に切り欠かれる一方でその他の部位(図中上側部分)が密着するように形成されている点である。このようにリターン材より圧力を受けるピストンロッド54の面を丸くすることにより、入口通路部51aと出口通路部51c間が一気に開かず、リターン材が少しづつリターンされるため、注入圧力が急激に降下せず、注入圧力を設定圧力P2に略維持したままリターン材の排出を検出して注入を完了することができ、定着効果を高めることができる。また、一方でリターン材が部材間に詰まってピストンロッド54の動作不良となることを極力防止することができるため、リリースバルブが繰り返しの使用に耐えることが可能となり、あるいは、定着材として通常は詰まりやすい材料である砂を用いたモルタルを使用することも可能となる。
以上では、リターン装置をロックボルト施工時におけるリターン材のリターン確認のために用いたが、本発明のリターン装置の適用対象はかかる場合に限らず、所定の圧力と適正濃度の両者の確認を必要とする場合に適宜採用することができる。
22 削孔(ボアホール)
23 パッカー付き後注入式ロックボルト
23a 中空ボルト
23b パッカー
23c パッカー用注入ホース
23d 定着材用注入ホース
32 リターン装置
33 濃度測定部
34 切換バルブ
36 ミキシング圧送ポンプ
37 圧力センサー
41 リターンバルブ
42 リリースバルブ
43 分岐管
Claims (4)
- 開放閉塞自在な第1のバルブと、
所定の流体圧力で開放する第2のバルブと、
第1、第2のバルブの各々に接続し、流体をこれらバルブに導く分岐管、
を備えたことを特徴とするリターン装置。 - 前記第2バルブは、一端に入口通路が、中間に出口通路が設けられたシリンダー部と、
該シリンダー部の内部に前記入口通路と反対側に配設されるスプリングと、
通常は該スプリングのバネ力により入口通路と出口通路間の流路を塞ぎ、前記所定の流体圧力でバネを押し込んで入口通路と出口通路間の流路を開通するピストンロッド、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のリターン装置。 - 前記ピストンロッドの流体当接部を球状に形成した、ことを特徴とする請求項2記載のリターン装置。
- 孔内に設置されて地盤を強化するロックボルトにおいて、
孔内に設置される中空状本体と、
前記本体の口元に取り付けられ、前記孔を塞ぐパッカーと、
前記孔内に定着材を注入するための注入部と、
前記パッカーにより仕切られる前記孔内に連通する形で前記中空状本体に接続されるリターン装置、
を備え、前記リターン装置は、
開放閉塞自在な第1のバルブと、
所定の注入圧力で開放する第2のバルブと、
前記中空状本体に接続され、該中空状本体より流入するリターン材を第1、第2のバルブのそれぞれに導く分岐管、
を備えたことを特徴とするロックボルト。
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