JP4968102B2 - Icp分析装置 - Google Patents

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本発明は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma=ICP)を利用したICP分光分析装置やICP質量分析装置などのICP分析装置に関する。
ICP分光分析装置では、ICPによるプラズマ炎中に霧化した試料を導入し、試料分子(又は原子)が加熱・励起されて発光した発光光を分光分析することで、試料の定性分析や定量分析が行われる。また、ICP質量分析装置では、ICPによるプラズマ炎中に霧化した試料(主として金属等の無機物)を導入して該試料をイオン化し、生成されたイオンを取り出して質量分析に供することで、試料の定性分析や定量分析が行われる。ここでは、ICP分光分析装置やICP質量分析装置など、ICP発光部を用いた分析装置を合わせてICP分析装置という。
図2は従来知られているICP分析装置におけるICP発光部の概略構成図である。
プラズマトーチ1は石英から成り、内周側から、最内管1a、中間管1b、最外管1cの同軸三重管構造を有している。最外管1cには冷却ガスが供給され、中間管1bにはプラズマガスが供給され、最内管1aには霧化試料を含むキャリアガスが流される。通常、これらガスはいずれもアルゴン(Ar)ガスである。キャリアガスはキャリアガス供給部16からネブライザ11に導入され、試料容器13内に貯留されている試料溶液14を伴ってネブライザ11からチャンバ9内に噴出する。これにより、試料溶液は霧化され、キャリアガスに乗って試料供給管8を経てプラズマトーチ1の最内管1aへ送られる。
プラズマトーチ1へのプラズマガスの導入口近傍には高電圧が印加されたイグニッションコイル(図示せず)が設けられ、このイグニッションコイルをアルゴンガスが通過するとガスは電離する。電離したガスが、誘導コイル3により形成される高周波磁場の近くに達すると、その磁場の作用により電離ガス中に誘導電流が流れプラズマ炎2が生成される。冷却ガス(クーラントガス)は主として高温のプラズマ炎2の周囲を流れ、プラズマトーチ1を冷却するのに寄与する。このプラズマ炎2中に霧化した試料が導入されると、試料分子(又は原子)は加熱・励起されて発光する、又はイオン化される。
こうしたICP発光部では、試料溶媒が有機溶媒である場合、その試料溶媒中の炭素がプラズマトーチ1の上端部に付着して目詰まりや感度低下を引き起こす。また、ICP質量分析装置の場合には、プラズマ炎2の前方にイオンを収集するための略円錐形状のスキマーSが配置されることが多いが、このスキマーS頂部のイオン通過孔が目詰まりし易い。さらに、有機溶媒はそれ以外の溶媒を用いた試料溶液(代表的には水溶液)に比べて室温での蒸気圧が高いため、多量の試料がプラズマ炎2中に導入され易い。そのため、プラズマ炎2を維持するために、誘導コイル3に供給する高周波電流を増加させる必要がある。ところが、ICP分光分析では、誘導コイル3に流す高周波電流を増加させるとアルカリ元素の検出感度が低下してしまう。
上記問題を解決するために、特許文献1には、酸素ガスをチャンバ9内や試料供給管8の途中に供給することで、酸素ガスと霧化試料とを混合してプラズマ炎2中に導入するようにしたICP発光部が開示されている。これにより、試料に含まれる炭素はプラズマ炎2中で燃焼して二酸化炭素や一酸化炭素となって大気中に発散するので、プラズマトーチ1の先端部やスキマーSなどに炭素が析出することを防止することができる。また、プラズマ炎2中で試料中の炭素を励起させるに要するエネルギーを減らせるため、誘導コイル3へ供給する高周波電流も増加させずに済む。
ところが、上記従来のICP発光部において、試料導入系や酸素ガス導入系の制御条件や装置の故障などの原因により、試料と酸素ガスとの混合ガスのプラズマ炎2中への導入速度が燃焼速度を下回ると、最内管1aやチャンバ9内で予混合燃焼(逆火現象)が起こる。そうなると、燃焼で発生した二酸化炭素や一酸化炭素の影響で、最内管1aやチャンバ9内のガス圧が急上昇し、最悪の場合には、最内管1aやチャンバ9が破裂するおそれがある。
特開平10−211182号公報 特開平5−142151号公報
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、試料中の炭素を燃焼させるために酸素ガス等の助燃ガスを流してもチャンバや試料供給管などが破裂するおそれがなく、プラズマトーチ等の目詰まりを防止するとともに高感度の測定が行えるICP分析装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、プラズマトーチによりプラズマ炎を形成し、該プラズマ炎中に霧化した試料溶液を導入して、それによる発光光を分光分析する又はそれにより生成されるイオンを質量分析するICP分析装置において、
前記プラズマトーチを同軸の四重管構造とし、その最も内周側に位置する最内管を通して、霧化された試料溶液をプラズマ炎中に供給するとともに、その次に内周側に位置する第1中間管を通して、酸素を含む助燃ガスをプラズマ炎中に供給し、且つ、前記第1中間管の外周側先端部を内方側に向けた傾斜状にしたことを特徴としている。
本発明に係るICP分析装置は、ICP分光分析装置、ICP質量分析装置の両方を含む。
上記助燃ガスは、酸素ガス100%でもよいが、その燃焼速度を調整するために、酸素ガスに適宜のガス(例えばアルゴンガスなど)を混合したものでもよい。
一般的にプラズマトーチは同軸の三重管構造を有し、その最も内周に位置する管路に霧化された試料溶液が導入される。また、助燃ガスを用いる場合には、この管路に霧化試料と助燃ガスとを混合したガスが流されていた。これに対し、本発明に係るICP分析装置では、プラズマトーチを同軸の四重管構造とし、最内管に霧化した試料を、その外側の第1中間管に助燃ガスを流すようにしている
なお、同軸の四重管構造を有するプラズマトーチ自体は、本出願人による特許文献2に開示されているが、本発明はこれを全く異なる目的で使用するものであり、管路に流すガスの種類や作用・効果も全く相違することは明らかである。
本発明に係るICP分析装置では、試料溶液が霧化されるチャンバ内やプラズマ炎まで霧化した試料を導く管路中では、霧化試料と助燃ガスとは混合されない。そして、最内管の先端から吐き出された該試料中の炭素は、第1中間管の先端から吐き出された助燃ガスにより、拡散しつつ燃焼する。その燃焼によって炭素は二酸化炭素や一酸化炭素となり発散するので、炭素がプラズマトーチの先端などに析出することを防止できる。
また、試料を霧化するチャンバ内や霧化試料をプラズマ炎に導く試料供給管中には助燃ガスは存在しないため、仮に逆火が起こる条件が整った場合でも、チャンバ内や試料供給管内では炭素の燃焼が起こらない。そのため、燃焼による二酸化炭素や一酸化炭素の急激な発生は生じず、チャンバや管路の破裂を回避することができる。
また本発明の構成によれば、試料中の炭素は最内管の先端から吐き出された後に速やかに燃焼するので、プラズマ炎中に炭素が多量に導入されることを防止し易くなる。それによって、プラズマ炎中に導入された炭素の影響による誘導コイルへの高周波電流の供給増加を確実に抑制することができる。
本発明の一実施例であるICP分析装置について図面を参照して説明する。図1は本実施例のICP分析装置のICP発光部の概略構成図である。既に説明した図2と同一又は対応する構成要素には同一符号を付してある。
上部にプラズマトーチ1が設けられた有底円筒形状のチャンバ9の開放端は、ネブライザ11が装着された閉塞栓10により、チャンバ9内の気密性が確保されるように閉じられている。チャンバ9の底部に接続された排液管17は、図示されない部分でサイホン状に形成されており、そこに貯留された液体によってチャンバ9内の気密性は維持される。ネブライザ11にはキャリアガス供給管15と試料溶液供給管12とが接続されている。適宜に供給圧(又は流量)が調整されたキャリアガスがキャリアガス供給部16により供給されると、キャリアガス供給管15中を通ってネブライザ11の先端からチャンバ9内にキャリアガスが噴出する。それによりネブライザ11の内部圧力が低下し、その負圧吸引によって試料容器13内の試料溶液14が吸い上げられ、試料溶液供給管12を経てネブライザ11に導入される。そしてネブライザ11よりチャンバ9内へと試料が噴射され、微細液滴となる。
プラズマトーチ1は、内周側から、最内管1a、第1中間管1d、第2中間管1b、及び最外管1cから成る略同軸の四重管構造を有する。従来と同様に、最も外周に位置する最外管1cには冷却ガス供給管4を通して冷却ガスが供給され、その内側の第2中間管(図2における中間管に相当)1cにはプラズマガス供給管5を通してプラズマガスが供給される。これに対し、従来、霧化試料を含むキャリアガス又は霧化試料と助燃ガスとを混合したガスが流されていた最も内側の管路は、最内管1aとその外側の第1中間管1dとの二重管構造とされ、第1中間管1dの外側先端部は内方、つまり最内管1aに向かって傾斜状に形成されている。最内管1aは試料供給管8を経てチャンバ9の上面に接続され、第1中間管1dには助燃ガス供給管6を通して、助燃ガス供給部7で適宜に供給圧(又は流量)が調整された助燃ガスが供給される。助燃ガスは例えば酸素ガスに適宜の不活性ガス(例えばアルゴン)を混ぜたものを用いることができる。
プラズマトーチ1の先端部の外側には誘導コイル3が周設され、図示しない高周波電源から誘導コイル3に高周波電力(例えば、周波数17.12MHz、電力1.8kW)が供給されると、プラズマトーチ1の内側に高周波磁場が形成される。プラズマガス供給管5によるプラズマガス導入口に配設された図示しないイグニションコイルをプラズマガス(アルゴンガス)が通過すると該ガスは電離され、これがプラズマトーチ1内で上記高周波磁場の作用を受けると、電離ガス中に誘導電流が流れてプラズマ炎2が形成される。
上記のように形成されたプラズマ炎2中に最内管1aを経てチャンバ9から霧化した試料が導入されると、該試料の分子(又は原子)は加熱・励起されて、試料特有の波長の光を発する(或いは試料がイオン化される)。試料溶液の溶媒が有機溶媒である場合、霧化した試料中にはその溶媒由来の炭素が多量に存在するから、多量の炭素も最内管1aの先端から吐き出される。一方、助燃ガスは第1中間管1dを通ってその先端部から、上記霧化試料の吹き出しを取り囲むように、プラズマトーチ1の先端に向けて吐き出される。特に、第1中間管1dの外周側縁部が内方に傾斜した形状であることにより、吹き出し部分20付近で、霧化試料と助燃ガスとは混じり易くなっている。その入り混じったガスが、高温のプラズマ炎2に近づくと拡散燃焼し、試料中の炭素は二酸化炭素や一酸化炭素となって大気中に発散する。炭素以外の試料はプラズマ炎2中で励起され、発光したりイオン化されたりして分析に供される。
試料中の炭素は上述のようにしてガス化されて発散するので、炭素がプラズマトーチ1の先端部に析出することを抑止できる。また、プラズマ炎2中に多量の炭素が導入されることも避けられるので、その炭素の励起に大きなエネルギーが浪費されることもなく、それ故に、誘導コイル3に供給する高周波電流の増加を抑制することができる。
霧化試料と助燃ガスとは、完全に分離された流路(最内管1a及び第1中間管1d)を経て独立にプラズマトーチ1先端に導入されるため、霧化試料が通る最内管1aや霧化が行われるチャンバ9内には助燃ガスは存在しない。そのため、例えばプラズマ炎2中での燃焼速度が相対的に速くなる等の逆火が発生し易い条件の下でも、最内管1aやチャンバ9内では燃焼は起こらず、急激な二酸化炭素、一酸化炭素の発生による最内管1aやチャンバ9の破裂を回避することができる。
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜に変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
本発明の一実施例であるICP分析装置のICP発光部の概略構成図。 従来の一般的なICP分析装置のICP発光部の概略構成図。
符号の説明
1…プラズマトーチ
1a…最内管
1b…第2中間管
1c…最外管
1d…第1中間管
2…プラズマ炎
3…誘導コイル
4…冷却ガス供給管
5…プラズマガス供給管
6…助燃ガス供給管
7…助燃ガス供給部
8…試料供給管
9…チャンバ
10…閉塞栓
11…ネブライザ
12…試料溶液供給管
13…試料容器
14…試料溶液
15…キャリアガス供給管
16…キャリアガス供給部
17…排液管
20…霧化試料・助燃ガス吹き出し部
S…スキマー

Claims (1)

  1. プラズマトーチによりプラズマ炎を形成し、該プラズマ炎中に霧化した試料溶液を導入して、それによる発光光を分光分析する又はそれにより生成されるイオンを質量分析するICP分析装置において、
    前記プラズマトーチを同軸の四重管構造とし、その最も内周側に位置する最内管を通して、霧化された試料溶液をプラズマ炎中に供給するとともに、その次に内周側に位置する第1中間管を通して、酸素を含む助燃ガスをプラズマ炎中に供給し、且つ、前記第1中間管の外周側先端部を内方側に向けた傾斜状にしたことを特徴とするICP分析装置。
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