図1に本発明の参考技術に係る車々間通信システムの構成を示す。車々間通信システムは、アドレスサーバ10、路側無線機12、車両14C、および車載通信装置14を備えて構成される。路側無線機12は複数設けられる。路側無線機12はアドレスサーバ10に有線接続され、道路16に沿って所定の間隔を以て配置される。路側無線機12は、車載通信装置14が通信のために使用するアドレスを含む情報をアドレスサーバ10から取得し送信する。車載通信装置14は車両14Cに搭載され、路側無線機12から取得したアドレスを用いてパケット情報の送受信を行う。
アドレスサーバ10は、受信部18、送信部20、管理アドレス記憶部22、およびサーバ側アドレス管理部24を備えて構成される。
アドレスサーバ10は、車載通信装置14に割り当てるためのアドレスとして複数の管理アドレスを管理する。アドレスサーバ10は、管理アドレスを含む情報を路側無線機12を介して車載通信装置14に送信し、管理アドレスを車々間通信システムで識別されるための自己アドレスとして使用させる。
管理アドレスが使用されているか否かを示す情報は、管理アドレス記憶部22が記憶する管理テーブルに登録される。図2に管理テーブルの構成を示す。管理テーブルでは、管理アドレスに、「貸与中」または「不使用」のうちのいずれかの識別子が対応付けられる。さらに、使用状態情報として「貸与中」の識別子が対応付けられている管理アドレスについては、当該管理アドレスが車載通信装置14によって使用される期限を示す貸与期限情報が対応付けられる。図2の例では、管理アドレス「5R4X」および「AQR2」に対して「貸与中」の識別子が対応付けられ、管理アドレス「L87U」、「H6HD」および「RDV3」に対して「不使用」の識別子が対応付けられている。また、管理アドレス「5R4X」および「AQR2」に対しては、貸与期限情報としてそれぞれ「2007年9月15日10時00分」および「2007年9月15日10時23分」が対応付けられている。管理テーブルには、車々間通信システムを構成する車載通信装置14にアドレスを使用させるために十分な数の管理アドレスに係る情報が登録される。
アドレスサーバ10が、管理アドレスを貸与アドレスとして車載通信装置14に送信するアドレス貸与処理について説明する。図3に、アドレス貸与処理のフローチャートを示す。
アドレス貸与処理は、車々間通信システムを構成する車載通信装置14から送信されたアドレス要求情報を取得すると共に開始される。アドレス要求情報は、アドレスの貸与を要求する旨を示す情報、当該アドレス要求情報を送信した車載通信装置14を識別するための自己アドレス、貸与することを要求するアドレスの数を示す要求アドレス数、および貸与アドレスを割り当てる期限として車載通信装置14によって決定された要求貸与期限を示す情報を含む。
路側無線機12は、車載通信装置14からアドレス要求情報を受信し、アドレスサーバ10に送信する。受信部18は、アドレス要求情報を受信しサーバ側アドレス管理部24に出力する。サーバ側アドレス管理部24はアドレス要求情報を取得すると、管理テーブルを参照する(S101)。
サーバ側アドレス管理部24は、「貸与中」の識別子が対応付けられている管理アドレスについて貸与期限が経過しているときは、「貸与中」の識別子を「不使用」の識別子に変更する(S102)。
サーバ側アドレス管理部24は、管理テーブルに登録されている管理アドレスのうち、使用状態情報として「不使用」の識別子が対応付けられているものが登録されているか否かを判定する(S103)。そして、「不使用」の識別子が対応付けられている管理アドレスが登録されていないときは、アドレス貸与処理を終了する。
一方、使用状態情報として「不使用」の識別子が対応付けられている管理アドレスが登録されているときは、「不使用」の識別子が対応付けられている管理アドレスを貸与アドレスとして選択する(S104)。ここで、選択する貸与アドレスの数は要求アドレス数とする。「不使用」の識別子が対応付けられている管理アドレスの数が要求アドレス数に満たないときは、「不使用」の識別子が対応付けられているすべての管理アドレスを貸与アドレスとして選択する。
サーバ側アドレス管理部24は貸与期限を決定し、貸与期限を示す貸与期限情報を生成する(S105)。貸与期限は、取得したアドレス要求情報に含まれる要求貸与期限を示す情報に基づいて、要求貸与期限と同一の期限として決定することができる。
サーバ側アドレス管理部24は、貸与アドレスとした管理アドレスに、「貸与中」の識別子およびステップS105で生成した貸与期限情報を対応付け、管理テーブルに登録する(S106)。複数の管理アドレスが貸与アドレスとして選択される場合には、各管理アドレスに共通の貸与期限情報を対応付ける。
サーバ側アドレス管理部24は、宛先アドレスとしてアドレス要求情報に含まれていたアドレスを含み、貸与アドレスおよび貸与期限情報を含むアドレス貸与情報を生成し送信部20に出力する(S107)。送信部20は、アドレス要求情報の送信元の路側無線機12にアドレス貸与情報を送信する。当該路側無線機12はアドレスサーバ10から取得したアドレス貸与情報を送信する。
このような処理によれば、不使用の状態の管理アドレスが管理テーブルに登録されているときは、そのような管理アドレスの数が要求アドレス数以上であるときは要求アドレス数の管理アドレスが、そのような管理アドレスの数が要求アドレス数未満であるときは不使用の状態の管理アドレスのすべてが、アドレス要求元の車載通信装置14に対する貸与アドレスとして選択される。そして、選択された貸与アドレスに対して貸与期限が決定される。貸与アドレスおよび貸与期限情報を含むアドレス貸与情報を送信することで、アドレス貸与情報を取得した車載通信装置14に貸与アドレスを取得させ使用させることができる。また、ステップS106によって貸与期限情報は管理テーブルに登録される。そのため、アドレス貸与情報を取得した車載通信装置14が貸与期限内で貸与アドレスの使用を終了するという条件の下、貸与期限を経過したときに当該車載通信装置14との間で貸与期限が経過した旨を確認するための通信を行うことなく、貸与中の状態を解除することができる。
なお、ここでは、アドレス要求情報として要求貸与期限を示す情報を含むものを取得した場合について説明した。アドレス貸与処理は、要求貸与期限を示す情報を含まないアドレス要求情報を取得した場合にも実行することができる。
この場合、サーバ側アドレス管理部24は、ステップS105において、現在の時刻から貸与期限の経過時刻に至るまでの時間が、アドレス要求元の車載通信装置14がパケット情報の送受信を行うために必要な程度の十分な長さを有し、かつ、アドレス要求元の車載通信装置14の移動経路を追跡することが困難となる程度の短い時間となるよう貸与期限を決定する。
また、貸与期限が経過するまでの時間は、車載通信装置14に管理アドレスを割り当てる頻度が高い程短くすることが好ましい。例えば、管理テーブルにおいて、「貸与中」の識別子が対応付けられている管理アドレスの数が多い程、貸与期限が経過するまでの時間が短くなるよう貸与期限を決定する。また、要求アドレス数が多い程、貸与期限が経過するまでの時間が短くなるよう貸与期限を決定してもよいし、アドレス要求情報が取得された頻度を測定し、当該頻度が高い程、貸与期限が経過するまでの時間が短くなるよう貸与期限を決定してもよい。さらに、アドレス要求情報の送信元の路側無線機12から所定距離内に存在する車両の数を測定する装置を当該路側無線機12に搭載し、測定された車両の数が多い程、貸与期限が経過するまでの時間が短くなるよう貸与期限を決定してもよい。このように貸与期限を決定することで、一定時間内に多くの管理アドレスを割り当てることができる。
さらに、このように貸与期限を決定する他、車両が運転される時間、すなわち、イグニッションキーがオンとされてからオフとされるまでの時間の、複数回の運転にわたる平均値を、一般の車両について統計に基づいて調査しておき、その平均値に基づいて貸与期限を予め決定しておくこととしてもよい。
また、ステップS104においては、「不使用」の識別子が対応付けられている管理アドレスの数が要求アドレス数を超えるときに、不使用の状態とされている時間が長い管理アドレスを優先的に貸与アドレスとして選択する処理を実行してもよい。この場合、管理テーブルにおいて、「不使用」の識別子が対応付けられている管理アドレスに、「不使用」の識別子が対応付けられた時から経過した時間を対応付け、アドレス貸与処理を実行するごとに管理テーブルにその時間を登録する処理を実行する。また、ステップS104において、「不使用」の識別子が対応付けられている管理アドレスの数が要求アドレス数を超えるときに、貸与中とされた回数が少ない管理アドレスを優先的に選択する処理を実行してもよい。この場合、管理テーブルにおいて、各管理アドレスに、「貸与中」の識別子が対応付けられた回数を対応付け、ステップS104を実行するごとにその回数を更新する処理を実行する。このような処理によれば、管理テーブルに登録されている各管理アドレスが均等に車載通信装置14に割り当てられ、一定時間内に車々間通信システムで使用されるアドレスの種類を多くすることができる。これによって、車載通信装置14の追跡をより困難にすることができる。
次に、車載通信装置14について説明する。図4に車載通信装置14の構成を示す。車載通信装置14は、アンテナ26、受信部28、送信部30、固有アドレス記憶部32、借用アドレス記憶部34、自己アドレス記憶部36、車載側アドレス管理部38、およびパケット情報処理部40を備えて構成される。各構成部については、車載通信装置14の機能および車載通信装置14が実行する処理と共に説明する。
車載通信装置14には、通信用の固有のアドレスとして固有アドレスが割り当てられる。固有アドレスは固有アドレス記憶部32に記憶される。
車載通信装置14は、アドレスサーバ10から路側無線機12を介して送信された貸与アドレスを借用アドレスとして取得し、車々間通信システムにおいて識別されるための自己アドレスとして適用する。
車載通信装置14が借用アドレスを取得するアドレス借用処理について説明する。図5にアドレス借用処理のフローチャートを示す。アドレス借用処理は、借用アドレス記憶部34に借用アドレスが記憶されていない状態となったときに実行するものとする。その他、所定の時間が経過するごとに、または車載通信装置14を搭載する車両が所定の距離を走行するごとに実行してもよい。
車載側アドレス管理部38は、後述の自己アドレス取得処理によって自己アドレス記憶部36に記憶された自己アドレスを含ませたアドレス要求情報を生成する。車載側アドレス管理部38は、さらに、借用アドレスを使用する期限を要求貸与期限として決定すると共に要求アドレス数を決定する。そして、要求アドレス数および要求貸与期限を示す情報をアドレス要求情報に含ませる。
なお、アドレスサーバ10が、要求貸与期限を示す情報を含まないアドレス要求情報に対してアドレス貸与処理を実行することが可能である場合には、要求貸与期限を示す情報をアドレス要求情報に含ませなくともよい。
要求貸与期限は、現在の時刻から要求貸与期限の経過時刻に至るまでの時間が、車載通信装置14がパケット情報の送受信を行うために必要な程度の十分な長さを有し、かつ、車載通信装置14の移動経路を追跡することが困難となる程度の短い時間となるよう決定する。例えば、車載通信装置14を搭載する車両が運転される時間、すなわち、イグニッションキーがオンとされてからオフとされるまでの時間の、複数回の運転にわたる平均値を車載側アドレス管理部38が予め取得し、当該平均値の程度に決定する。
また、要求貸与期限は、車載通信装置14を搭載する車両の周りに他車両の数が少ない程、当該要求貸与期限が経過するまでの時間が長くなるよう決定することが好ましい。例えば、車載通信装置14を搭載する車両から所定距離内に存在する他車両の数を測定するカーナビゲーション装置等の装置を車載通信装置14に搭載し、測定された他車両の数が少ない程、要求貸与期限が経過するまでの時間が長くなるよう要求貸与期限を決定する。このように要求貸与期限を決定することで、路側無線機12の近傍に現れる車載通信装置14を搭載する車両の数が少ない場合には、要求貸与期限を長くし、借用アドレスを使用することができる期間を長くすることができる。
要求アドレス数は、例えば、要求貸与期限が経過するまでの時間が長い程大きい数とする。また、要求貸与期限と同様、車載通信装置14を搭載する車両の周りの他車両の数が少ない程、大きい数となるよう決定してもよい。このように要求アドレス数を決定することで、近傍に現れる車載通信装置14を搭載する車両の数が少ない場合には、要求アドレス数を大きくし、多くの種類の借用アドレスを取得し使用することができる。
車載側アドレス管理部38は、生成したアドレス要求情報を送信部30に出力する(S201)。送信部30はアドレス要求情報をアンテナ26を介して送信する。
アドレス要求情報を取得しそれに応答したアドレスサーバ10からは、上記アドレス貸与処理により、アドレス貸与情報が送信される。受信部28はアンテナ26を介してアドレス貸与情報を受信し、車載側アドレス管理部38に出力する。
車載側アドレス管理部38は、アドレス貸与情報に含まれる貸与アドレスを借用アドレスとして取得する(S202)。また、アドレス貸与情報に含まれる貸与期限情報を使用期限情報として取得する(S203)。車載側アドレス管理部38は、借用アドレスおよび使用期限情報を借用アドレス記憶部34に記憶させる(S204)。ここで、アドレス貸与情報に複数の貸与アドレスが含まれる場合には、各貸与アドレスを借用アドレスとして取得し、各借用アドレスにその使用期限情報を対応付けて借用アドレス記憶部34に記憶させる。アドレス貸与情報において、複数の貸与アドレスに共通の貸与期限情報が対応付けられている場合には、各借用アドレスは同一の使用期限情報が対応付けられた上で記憶される。車載側アドレス管理部38は、借用アドレス記憶部34に記憶された借用アドレスの使用期限を経過したときは、借用アドレスおよびその使用期限情報を借用アドレス記憶部34から削除する(S205)。
ステップS201〜S204によれば、受信したアドレス貸与情報から借用アドレスおよび使用期限情報が取得され、借用アドレス記憶部34に記憶される。また、ステップS205によれば、使用期限を経過した借用アドレスが車載側アドレス管理部38によって参照されることを回避することができる。
車載側アドレス管理部38が自己アドレスを決定し、自己アドレス記憶部36に記憶させる自己アドレス設定処理について説明する。図6に自己アドレス設定処理のフローチャートを示す。
車載側アドレス管理部38は、自己アドレス記憶部36に記憶されている使用期限情報を参照し、使用期限情報が示す使用期限の経過時刻より所定時間Δ1だけ前となった時に、自己アドレス設定処理を開始する。
車載側アドレス管理部38は、借用アドレス記憶部34に借用アドレスが記憶されているか否かを判定する(S301)。
車載側アドレス管理部38は、複数の借用アドレスが記憶されているときはそのうち1つを自己アドレスとして取得し、1つの借用アドレスが記憶されているときはその借用アドレスを自己アドレスとして取得する(S302)。なお、使用期限が互いに異なる複数の借用アドレスが記憶されているときは、使用期限が経過するまでの時間が短いものを優先的に選択することが好ましい。車載側アドレス管理部38は、さらに、借用アドレス記憶部34に自己アドレスとした借用アドレスと共に記憶されている使用期限情報を取得する(S303)。車載側アドレス管理部38は、自己アドレスおよび使用期限情報を自己アドレス記憶部36に記憶させる(S304)。車載側アドレス管理部38は、自己アドレスとして取得した借用アドレスおよびその使用期限情報を借用アドレス記憶部34から削除する(S305)。
車載側アドレス管理部38は、借用アドレス記憶部34に借用アドレスが記憶されていないときは、固有アドレス記憶部32が記憶する固有アドレスを自己アドレスとして取得する(S306)。
そして、固有アドレスを自己アドレスとして用いる場合の使用期限として予め定められた固有使用期限を示す使用期限情報と共に、自己アドレス記憶部36に記憶させる(S307)。
このような処理によれば、借用アドレス記憶部34に借用アドレスが記憶されているときは、借用アドレスが自己アドレスとして自己アドレス記憶部36に記憶され、借用アドレス記憶部34に借用アドレスが記憶されていないときは、固有アドレスが自己アドレスとして自己アドレス記憶部36に記憶される。
借用アドレスを自己アドレスとして適用する場合には、自己アドレスの使用期限は当該借用アドレスの使用期限となる。そして、借用アドレスの使用期限は、アドレス貸与情報に含まれる貸与期限情報によって規定される。そのため、借用アドレスを自己アドレスとして適用する場合には、自己アドレスの使用期限が経過するまでの時間は、通信を行うのに必要な程度の十分な長さを有し、かつ、車載通信装置14の移動経路を追跡することが困難となる程度の短い時間となる。
また、ステップS302において、使用期限が互いに異なる複数の借用アドレスが記憶されているときに、使用期限が経過するまでの時間が短いものを優先的に選択することにより、一定時間内に自己アドレスとして取得する借用アドレスの数をできるだけ多くすることができる。これによって、一定時間内に自己アドレスを変化させる頻度を高くすることができ、車載通信装置14の追跡を困難とすることができる。
自己アドレス設定処理は、自己アドレス記憶部36に記憶されている自己アドレスに対する使用期限が経過する時刻より所定時間Δ1だけ前の時刻となるごとに実行される。そして、借用アドレス記憶部34に記憶される借用アドレスは、アドレス借用処理が実行されることにより変更される。これによって、自己アドレス記憶部36に記憶されている自己アドレスは、使用期限の経過と共に変更される。
要求アドレス数を2以上とし、アドレス借用処理のステップS202において複数の貸与アドレスがそれぞれ借用アドレスとして取得された場合、ステップS203においては、アドレス貸与情報に含まれる貸与期限情報が、複数の借用アドレスに共通の使用期限情報として取得される。
使用期限が同一である複数の借用アドレスを取得した場合において車載通信装置14が実行する、応用例に係る自己アドレス設定処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。図6のフロ−チャートに示される処理と同一の処理については同一の符号を付してその説明を省略する。
車載側アドレス管理部38は、借用アドレス記憶部34に使用期限が同一の複数の借用アドレスが記憶されているときは、借用アドレス記憶部34に記憶されているそれらに共通の使用期限情報を取得する(SA1)。車載側アドレス管理部38は、使用期限情報を自己アドレス記憶部36に記憶させる(SA2)。
車載側アドレス管理部38は、使用期限が同一である借用アドレス記憶部34に記憶されている複数の借用アドレスのうちの1つを選択し、自己アドレスとして取得する(SA3)。車載側アドレス管理部38は、自己アドレスを自己アドレス記憶部36に記憶させる(SA4)。
車載側アドレス管理部38は、その自己アドレス記憶部36に記憶されている使用期限情報を参照し、使用期限情報が示す使用期限の経過時刻より所定時間Δ2だけ前の時刻を経過したか否かを判定する(SA5)。ここで所定時間Δ2の長さは、上述の所定時間Δ1の長さより長いものとする。
車載側アドレス管理部38は、使用期限情報が示す使用期限の経過時刻より所定時間Δ2だけ前の時刻を経過していないときは、ステップSA3に戻る。一方、使用期限情報が示す使用期限の経過時刻より所定時間Δ2だけ前の時刻を経過したときは、ステップSA3およびSA4において自己アドレスとして取得した借用アドレスおよびそれらの使用期限情報を、借用アドレス記憶部34から削除し(SA6)、自己アドレス設定処理を終了する。
このような処理によれば、自己アドレス設定処理が開始されてから終了されるまでの間、複数の借用アドレスのうち1つが自己アドレスとして選択される処理が複数回にわたり繰り返される。ここで、ステップSA3において、複数の借用アドレスのうちの1つを無作為に選択することとすれば、自己アドレスの不確定性を高めることができ、車載通信装置14の移動経路の追跡を困難なものとすることができる。
ここで、借用アドレスを自己アドレスとして記憶させる時間を、各借用アドレスについて異なる時間とすることにより、車載通信装置14の移動経路の追跡をより困難なものとすることができる。
図8はこのような処理をダイヤグラムを以て示すものである。左端の欄は借用アドレス記憶部34に記憶される借用アドレスを示し横軸は時間を示す。ハッチングは、時刻tA〜tCまでの時間帯では借用アドレス「G75T」および「SFRT」が使用期限が同一の借用アドレスとして借用アドレス記憶部34に記憶され、時刻tB〜時刻tDまでの時間帯では、借用アドレス「9G4Y」、「EC3E」、および「12R5」が使用期限が同一の借用アドレスとして借用アドレス記憶部34に記憶されることを示す。図8の太い実線は、時刻t1〜t2までの時間帯では借用アドレス「G75T」が、時刻t2〜t3までの時間帯では借用アドレス「SFRT」がそれぞれ自己アドレスとして使用されることを示す。そして、時刻t3〜t4までの時間帯では借用アドレス「9G4Y」が、時刻t4〜t5までの時間帯では借用アドレス「EC3E」が、時刻t5〜t6までの時間帯では借用アドレス「12R5」が、時刻t6〜t7までの時間帯では借用アドレス「EC3E」が、それぞれ自己アドレスとして使用されることを示す。
次に、車載通信装置14がパケット情報を送受信する処理について説明する。車載側アドレス管理部38は、自己アドレス記憶部36に記憶されている自己アドレスを取得しパケット情報処理部40に出力する。
パケット情報処理部40は、送信源アドレスとして自己アドレスを含ませ、車両の位置、移動速度等を示す走行情報を送信対象データとして含ませたパケット情報を生成する。送信対象データとしては、その他、テキスト情報、画像情報、動画像情報、音声情報等、送信先の車載通信装置14を搭載する車両の搭乗者に伝えたい任意の情報を含ませることができる。パケット情報処理部40は、パケット情報を他の特定の車載通信装置14に取得させる場合または中継送信させる場合には、当該他の車載通信装置14を特定するためのアドレスを送信源アドレスとは別にパケット情報に含ませる。パケット情報処理部40は、生成したパケット情報を送信部30に出力する。送信部30はアンテナ26を介してパケット情報を送信する。
受信部28は、アンテナ26を介してパケット情報を受信しパケット情報処理部40に出力する。パケット情報処理部40は、受信部28からパケット情報を取得する。そして、パケット情報から送信源アドレスを抽出し、パケット情報を送信した車載通信装置14を特定する。また、パケット情報から送信対象データを抽出し、パケット情報を送信した車載通信装置14を搭載する車両の走行情報を取得する。パケット情報処理部40は、取得した走行情報に基づいて、パケット情報の送信元の車載通信装置14を搭載する他車両との衝突が回避されるよう車両の走行状態を制御する。また、パケット情報の送信対象データにテキスト情報、画像情報、動画像情報、音声情報等が含まれる場合には、これらの情報を再生する。
上述のように、自己アドレスとして借用アドレスが適用される場合には、自己アドレスの使用期限は、通信を行うのに必要な程度の十分な長さを有し、かつ、車載通信装置14の移動経路を追跡することが困難となる程度の短い時間となる。また、借用アドレス記憶部34に記憶されている借用アドレスが更新されることにより、自己アドレス記憶部36に記憶される自己アドレスは使用期限の経過と共に変更される。
これによって、パケット情報に送信源アドレスとして含ませる自己アドレスを時間の経過と共に変更することができ、車載通信装置14を搭載する車両の走行経路が、長期間にわたって追跡されることを回避することができる。さらに、複数の借用アドレスを取得することによって、自己アドレスの不確定性を高めることができ、車載通信装置14を搭載する車両の走行経路の追跡をより困難とすることができる。
なお、上述の車々間通信システムでは、アドレスサーバ10がアドレス貸与処理を実行し、車載通信装置14がアドレス借用処理を実行する。このようなシステムの他、車載通信装置14に管理アドレス記憶部22を追加して設け、車々間通信システムを構成する各車載通信装置14がアドレス貸与処理およびアドレス借用処理のいずれをも実行する構成とすることができる。この場合、アドレス貸与処理に際しては、車載側アドレス管理部38は、サーバ側アドレス管理部24が実行する処理と同様の処理を実行する。このようなシステムでは、アドレスサーバ10、路側無線機12等を設ける必要がなくなり、インフラストラクチャのコストを低減することができる。
次に、本発明の実施形態に係る車々間通信システムについて説明する。図9は本発明の実施形態に係る車載通信装置42の構成を示す。
車載通信装置42は、アンテナ26、受信部28、送信部30、固有アドレス記憶部32、借用アドレス記憶部34、自己アドレス記憶部36、車載側アドレス管理部38、パケット情報処理部40、および共通アドレス記憶部44を備えて構成される。図4の車載通信装置14と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。車載通信装置42は、図4の車載通信装置14に対して共通アドレス記憶部44を付加したものである。
共通アドレス記憶部44は、車々間通信システムを構成する複数の車載通信装置42に対して共通に割り当てられた共通アドレスと、共通アドレスを使用することが可能な共通アドレス使用時間帯を示す共通アドレス使用時間帯情報とを対応付けて記憶する。
共通アドレス使用時間帯情報は、車載通信装置42を製造する際に記憶させることが好ましい。製造される車載通信装置42は所定の数ごとにグループ分けし、同一のグループに属する複数の車載通信装置42には同一の共通アドレスを割り当てる。
例えば、予め定められた数値範囲内の製造番号が付された車載通信装置42を同一のグループに属する車載通信装置42とし、同一のグループに属する車載通信装置42に対しては、同一の共通アドレスを割り当てる。具体的な例としては、製造番号が100〜199である車載通信装置42の集合をグループG100とし、製造番号が200〜299である車載通信装置42の集合をグループG200とする。グループG100に属する複数の車載通信装置42に対しては、共通アドレス「G100」を割り当て、グループ200に属する車載通信装置42に対しては共通アドレス「G200」を割り当てる。
同一のグループに属する複数の車載通信装置42に対しては、互いに異なる共通アドレス使用時間帯を割り当てる。共通アドレス使用時間帯は、開始時刻および終了時刻を以て表すことができる。共通アドレス使用時間帯は、車載通信装置42がパケット情報の送受信を行うために必要な程度の十分な長さを有し、かつ、車載通信装置42の移動経路を追跡することが困難となる程度の時間となるよう決定する。
例えば、車両が運転される時間の複数回の運転にわたる平均値を、一般の車両について統計に基づいて調査しておき、その平均値に基づいて共通アドレス使用時間帯の時間長を決定する。
図10は、同一のグループに属する車載通信装置42−1〜42−4に対する共通アドレス使用時間帯の割り当てをダイヤグラムを以て示したものである。左端の欄に記載されている符号42−1〜42−4は、それぞれ車載通信装置42−1〜42−4を区別する符号である。横軸は時間を示す。図10の太い実線は、時刻t1〜t2までの時間帯、時刻t2〜t3までの時間帯、時刻t3〜t4までの時間帯・・・・時刻tj〜tj+1までの時間帯・・・において(jは自然数)、それぞれ、車載通信装置42−1、42−2、42−3・・・・42−1・・・が共通アドレスを使用することができることを示す。各車載通信装置には、共通アドレス使用時間帯が繰り返し割り当てられる。各車載通信装置に共通アドレス使用時間帯が割り当てられる時間間隔は均等としてもよいし、ランダムに変化させてもよい。
このように、同一のグループに属する複数の車載通信装置42に対して互いに異なる共通アドレス使用時間帯を割り当てることによって、一つの共通アドレス使用時間帯において共通アドレスを使用することができる車載通信装置42は一つのグループにつき1台のみとする。
次に、車載通信装置42が実行する自己アドレス設定処理について図11のフローチャートを参照しつつ説明する。車載側アドレス管理部38は、自己アドレス記憶部36に記憶されている使用期限情報を参照し、使用期限情報が示す使用期限の経過時刻より所定時間Δ1だけ前となった時に、自己アドレス設定処理を開始する。
車載側アドレス管理部38は、自己アドレス記憶部36を参照し、自己アドレスとして記憶されているアドレスが共通アドレスであるか否かを判定する(S401)。車載側アドレス管理部38は、自己アドレスとして記憶されているアドレスが共通アドレスであるときは、ステップS405に移行する。一方、自己アドレスとして記憶されているアドレスが共通アドレスでないときは、共通アドレス記憶部44に記憶されている共通アドレス使用時間帯情報を参照し、現在の時刻が共通アドレス使用時間帯内であるか否かを判定する(S402)。
車載側アドレス管理部38は、現在の時刻が共通アドレス使用時間帯外であると判定したときは、ステップS405に移行する。一方、現在の時刻が共通アドレス使用時間帯内であると判定したときは、共通アドレス使用時間帯情報に基づいて、共通アドレスを自己アドレスとして使用する使用期限を決定する。そして、その使用期限を示す使用期限情報を生成する(S403)。車載側アドレス管理部38は、共通アドレスを自己アドレスとして自己アドレス記憶部36に記憶させ、その使用期限情報を自己アドレス記憶部36に記憶させる(S404)。
ステップS405において、車載側アドレス管理部38は、固有アドレス記憶部32が記憶する固有アドレスを自己アドレスとして取得する(S405)。そして、固有アドレスを自己アドレスとして用いる場合の使用期限として予め定められた固有使用期限を示す使用期限情報と共に、自己アドレス記憶部36に記憶させる(S406)。
このような処理によれば、使用期限情報が示す使用期限の経過時刻より所定時間Δ1だけ前までに、共通アドレスが自己アドレスとして自己アドレス記憶部36に記憶されていたときは、固有アドレスが自己アドレスとして自己アドレス記憶部36に記憶され、共通アドレスを自己アドレスとして使用する状態が解除される。また、使用期限情報が示す使用期限の経過時刻より所定時間Δ1だけ前までに、共通アドレスが自己アドレスとして自己アドレス記憶部36に記憶されていなかったときは、現在の時刻が共通アドレス使用時間帯内であるか否かが判定される。そして、現在の時刻が共通アドレス使用時間帯内の時刻であるときは、共通アドレスが自己アドレスとして自己アドレス記憶部36に記憶され、共通アドレスが自己アドレスとして使用される状態となる。一方、現在の時刻が共通アドレス使用時間帯外の時刻であるときは、固有アドレスが自己アドレスとして自己アドレス記憶部36に記憶され、固有アドレスが自己アドレスとして使用される状態が維持される。
これによって、共通アドレス使用時間帯に共通アドレスが自己アドレスとして設定されることとなる。したがって、車載通信装置42の自己アドレスを時間の経過と共に変更することができ、車載通信装置42を搭載する車両の走行経路の追跡を困難とすることができる。
なお、ステップS405およびS406によって固有アドレスを自己アドレスとする処理を実行する代わりに、上述のステップS301〜S307に従う自己アドレス設定処理を実行してもよい。図12にその処理のフローチャートを示す。図6および図11に示す処理と同一の処理については同一の符号を付して説明を省略する。同様に、ステップS405およびS406に基づく処理の代わりに、図7のフローチャートに示される自己アドレス設定処理を実行してもよい。
ステップS301〜S307に従う自己アドレス設定処理または図7のフローチャートに示される自己アドレス設定処理を実行する場合には、車載通信装置42に管理アドレス記憶部22を追加して設け、車々間通信システムを構成する各車載通信装置42がアドレス貸与処理およびアドレス借用処理のいずれをも実行する構成とすることができる点については車載通信装置14と同様である。
管理アドレス記憶部22を付加し、アドレス貸与処理およびアドレス借用処理のいずれをも実行する車載通信装置42(以下、車載通信装置42Aとする。)では、共通アドレスを自己アドレスとして使用しているときに、固有アドレスを貸与アドレスとして他の車載通信装置に使用させることができる。この場合、車載通信装置42Aの管理アドレス記憶部22に記憶される管理テーブルには、固有アドレスに係る情報を登録する。
図13(a)および(b)はそのような場合における管理テーブルを示す。ここでは、車載通信装置42Aの固有アドレスを「42A」とし、固有アドレス42Aに係る情報を管理テーブルの最下欄に設定している。
車載側アドレス管理部38は、車載通信装置42Aが固有アドレスを自己アドレスとして使用しているときには、図13(a)のように固有アドレスに係る情報を管理テーブルに登録する。図13(a)の管理テーブルでは、使用状態情報の欄には「自己使用中」の識別子が設定されている。この識別子は、アドレス貸与処理において「貸与中」の識別子と同一のものとして扱われる。すなわち、「貸与中」の識別子が対応付けられている管理アドレスと同様、「自己使用中」の識別子が対応付けられている自己アドレス42Aは、貸与アドレスを選択する際の選択対象から除外される。また、貸与期限情報の欄には、次に共通アドレス使用時間帯が開始する時刻を示す情報が対応付けられる。ここでは、「2007年9月15日12時00分」が対応付けられている。
車載側アドレス管理部38は、車載通信装置42Aが共通アドレスを自己アドレスとして使用しているときには、図13(a)のように固有アドレスに係る情報を管理テーブルに登録する。図13(b)の管理テーブルでは、使用状態情報の欄には「不使用」の識別子が設定されている。
このように管理テーブルに固有アドレスに係る情報を登録することで、車載通信装置42Aは、共通アドレスを自己アドレスとして使用しているときには、アドレス貸与処理によって、固有アドレスを他の車載通信装置に使用させることができる。
上記では、本発明の実施形態として車々間通信システムおよびそれを構成する車載通信装置について説明した。本発明に係る通信装置は、一般的な移動無線装置、船舶等の移動体に搭載される無線通信装置に適用することが可能である。
10 アドレスサーバ、12 路側無線機、14C 車両、14,42 車載通信装置、18,28 受信部、20,30 送信部、22 管理アドレス記憶部、24 サーバ側アドレス管理部、26 アンテナ、32 固有アドレス記憶部、34 借用アドレス記憶部、36 自己アドレス記憶部、38 車載側アドレス管理部、40 パケット情報処理部、44 共通アドレス記憶部。