JP4963164B2 - 蛍光共鳴エネルギー移動プローブの設計方法 - Google Patents

蛍光共鳴エネルギー移動プローブの設計方法 Download PDF

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本発明は、蛍光共鳴エネルギー移動プローブの設計方法に関する。
蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用して、特定のmRNAが発現している細胞を生きたままの状態で選択的に分離する方法が提案されている(特許文献1)。この方法は、標的mRNAにドナープローブとアクセプタープローブとが近接してハイブリダイズしている場合、ドナープローブに結合しているエネルギードナー蛍光色素の励起波長の光を照射すると、FRETが生じて、アクセプタープローブに結合しているエネルギーアクセプター蛍光色素からの蛍光が生じることを利用している。
ドナープローブとアクセプタープローブとからなるFRETプローブを、標的mRNAのどの領域でハイブリダイズさせるかによって、FRETの効率(エネルギーアクセプター蛍光色素の蛍光強度)は大きく異なる。FRETの効率が低い場合、目的とするmRNAを高感度に検出することができず、そのmRNAを発現した細胞を分離することができない。
特開2001−286285号公報 Zuker M. et al., Algorithms and Thermodynamics for RNA SecondaryStructure Prediction: A Practical Guide in RNA Biochemistry and Biotechnology,J. Barciszewski and B.F.C. Clark, eds., NATO ASI Series, Kluwer AcademicPublishers (1999)
FRET効率の高いFRETプローブを設計する方法(ハイブリダイゼーション領域を設計する方法)は考案されているものの、その予測精度は低く、FRETプローブの候補を複数合成しても、必ずしもすべてのFRETプローブが充分なFRETが生じるとは限らない。
したがって、本発明の目的は、FRET効率の高いFRETプローブを高い精度で予測できる、FRETプローブの設計方法を提供することにある。
本発明者は、RNAの高次構造予測の指標の一つであるSS−count値に着目し、SS−count値の平均が所定の条件を満たす領域をFRETプローブのハイブリダイゼーション領域とすれば、FRET効率の高いFRETプローブを高い精度で設計できることを見出した。
すなわち、本発明は、
ドナープローブとアクセプタープローブとからなるFRETプローブのRNA上のハイブリダイゼーション領域を設定する方法であって、
mfoldにより塩基の長さがnであるRNAの塩基配列のi番目(1≦i≦n)の塩基のSS−count値S(i)を算出する工程と、
蛍光共鳴エネルギー移動プローブの長さL(2L<n)を決める工程と、
1≦i≦n−L+1であるすべてのiについて、i番目の塩基からi+L−1番目の塩基までのSS−count値S(i)の平均値M(i)を算出する工程と、
1≦i≦n−2L+2であるすべてのiについて、F(i)=M(i+L−1)−M(i)を算出する工程と、
c≦i≦c+L−1におけるF(i)の最大値が正かつF(i)の最小値が負であり、かつ、F(c)<F(c+L−1)となるcを算出し、RNAのc番目からc+L−1番目の塩基領域をFRETプローブのハイブリダイゼーション領域と設定する工程と、
を含む方法、を提供する。
ここで、Lは20≦L≦50という条件を満たすことが好ましい。
本発明の方法によれば、FRET効率の高くなるハイブリダイゼーション領域を高い精度で予測することができ、したがって、優れたFRETプローブを設計することができる。
また、本発明の方法によれば、複数のFRETプローブを設計することができ、設計された複数のFRETプローブを組み合わせて同時に用いることにより、単独のFRETプローブを用いるときよりも高感度に標的mRNAを検出することが可能である。
本発明の方法は、以下の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする:
(1)mfoldにより塩基の長さがnであるRNAの塩基配列のi番目(1≦i≦n)の塩基のSS−count値S(i)を算出する工程;
(2)蛍光共鳴エネルギー移動プローブの長さL(2L<n)を決める工程;
(3)1≦i≦n−L+1であるすべてのiについて、i番目の塩基からi+L−1番目の塩基までのSS−count値S(i)の平均値M(i)を算出する工程;
(4)1≦i≦n−2L+2であるすべてのiについて、F(i)=M(i+L−1)−M(i)を算出する工程;及び
(5)c≦i≦c+L−1におけるF(i)の最大値が正かつF(i)の最小値が負であり、かつ、F(c)<F(c+L−1)となるcを算出し、RNAのc番目からc+L−1番目の塩基領域をFRETプローブのハイブリダイゼーション領域と設定する工程。
まず、工程(1)では、FRETプローブで検出したいRNAの塩基配列をmfoldに入力し、RNAの各塩基におけるSS−count値S(i)を算出する。mfoldとは、Zuckerらによって開発されたRNAの二次構造を予測するプログラムであり、ウェブ上で公開されており、RNAの塩基配列を入力することでRNAの二次構造に関する様々なデータを入手することが可能である。SS−count値とは、各塩基における相補鎖を形成しない場合の数を表し、この数値が高い塩基ほど高次構造の中で熱的に不安定である確率が高いといえる。
入力するRNAの塩基配列は、検出したいRNAの完全長の塩基配列であっても、一部の塩基配列であってもよい。入力するRNAの塩基配列の長さnは特に限定されないが、nの数値が小さすぎる場合にはFRETプローブのハイブリダイゼーション領域を適切に設定できない可能性があるため、200以上であることが好ましい。
次に、工程(2)では、FRETプローブの長さL(2L<n)を決定する。FRETプローブはエネルギードナー蛍光色素が結合したドナープローブとエネルギーアクセプター蛍光色素が結合したアクセプタープローブとで構成される。ドナープローブの5’末端付近にエネルギードナー蛍光色素が結合する一方、アクセプタープローブの3’末端付近にはエネルギーアクセプター蛍光色素が結合している。そのため、ドナープローブとアクセプタープローブが近接して標的RNAに結合すると、エネルギードナー蛍光色素とエネルギーアクセプター蛍光色素とが近接し、FRETが生じるようになる。
ここでFRETプローブの長さLとは、通常は、ドナープローブの長さ(塩基数)とアクセプタープローブの長さ(塩基数)の合計である。ただし、ドナープローブの5’末端とアクセプタープローブの3’末端とは、必ずしも隣り合っている必要はなく、1塩基以上離れた状態でドナープローブとアクセプタープローブは標的RNAにハイブリダイズしていてもよい。かかる場合には、ドナープローブの塩基数とアクセプタープローブの塩基数の合計に、両プローブが離れている塩基数を加えたものが、FRETプローブの長さLに相当する。
FRETプローブの長さLは特に限定されるものではないが、プローブ合成の容易さやハイブリダイズ条件の制御、FRET効率などの観点から、20以上50以下であることが好ましく、30以上40以下であることが特に好ましい。ドナープローブの長さとアクセプタープローブの長さは、両プローブのTm値がほぼ等しくなるように調整すればよい。
エネルギードナー蛍光色素とエネルギーアクセプター蛍光色素の距離は、20塩基以内となるように、好ましくは2〜4塩基以内となるように、各プローブにおける各蛍光色素の位置を決めればよい。例えば、エネルギードナー蛍光色素をドナープローブの5’末端に配置し、エネルギーアクセプター蛍光色素をアクセプタープローブの3’末端から4塩基目に配置(両プローブ間が数塩基離れた状態で標的RNAにハイブリダイズする場合には、離れた塩基数だけ3’末端よりに配置)すればよい。
エネルギードナー蛍光色素は、直接又はヘキシルアミノ基などのリンカーを介して、塩基の代わりにヌクレオチドの糖に結合している。エネルギードナー蛍光色素はFRETに通常用いられるエネルギードナー蛍光色素が利用できるが、例えば、以下の蛍光色素が挙げられる:4,4−ジフルオロ−1,3,5,7−テトラメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−8−プロピオン酸(4,4-difluoro-1,3,5,7-tetramethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-8-propionicacid)およびその誘導体(これらはBodipy493/503シリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能);テトラメチルローダミンイソチオシアネート(5−イソチオシアネートおよび6−イソチオシアネートの混合物であってもよい)(tetramethylrhodamine-5-(and-6)-isothiocyanate)およびその誘導体(これらはTRITCシリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能);及び4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸(4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-propionicacid)およびその誘導体(これらはBodipy FLシリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能)等が挙げられる。
エネルギーアクセプター蛍光色素も、直接又はヘキシルアミノ基などのリンカーを介して、塩基の代わりにヌクレオチドの糖に結合している。エネルギーアクセプター蛍光色素はFRETに通常用いられるエネルギーアクセプター蛍光色素が利用できるが、例えば、以下の蛍光色素が挙げられる:1,1’−ビス(ε−カルボキシペンチル)−3,3,3’,3’−テトラメチルインドジカルボシアニン−5,5’−二スルホン酸 カリウム塩(1,1'-bis(ε-carboxypentyl)-3,3,3',3'-tetramethylindodicarbocyanine-5,5'-disulfonatepotassium salt)およびその誘導体(これらはCy5シリーズとしてアマシャムバイオサイエンス社から入手可能);1,1’−ビス(ε−カルボキシペンチル)−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン−5,5’−二スルホン酸 カリウム塩(1,1'-bis(ε-carboxypentyl)-3,3,3',3'-tetramethylindocarbocyanine-5,5'-disulfonatepotassium salt)およびその誘導体(これらはCy3シリーズとしてアマシャムバイオサイエンス社から入手可能);X−ローダミンイソチオシアネート(5−イソチオシアネートおよび6−イソチオシアネートの混合物であってもよい)(X-rhodamine-5-(and-6)-isothiocyanate)およびその誘導体(これらはXRITCシリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能);6−(((4,4−ジフロロ−5−(2−チエニル)−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−イル)スチリロキシ)アセチル)アミノヘキサン酸(6-(((4,4-difluoro-5-(2-thienyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacen-3-yl)styryloxy)acetyl)aminohexanoicacid)およびその誘導体(これらはBodipy630/650シリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能);6−(((4,4−ジフロロ−5−(2−ピローリル)−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−イル)スチリロキシ)アセチル)アミノヘキサン酸(6-(((4,4-difluoro-5-(2-pyrrolyl)-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacen-3-yl)styryloxy)acetyl)aminohexanoicacid)およびその誘導体(これらはBodipy650/665シリーズとしてモレキュラープローブス社から入手可能)等が挙げられる。
エネルギードナー蛍光色素としてはBodipy 493/503を用いることが好ましく、エネルギーアクセプター蛍光色素としてはCy5又はXRITCを用いることが好ましい。
以上説明したFRETプローブを設計するために、FRETプローブの長さLを決定するのが、工程(2)である。
次に、工程(3)では、FRETプローブの長さLにわたるSS−count値の平均値M(i)を算出する。SS−count値は1塩基ごとのデータであるため、それ自体から何ら有効な情報を得ることはできない。例えば図1に示すように、SS−count値は離散的かつ何ら意味をなさない数値を示し、このデータに基づいてFRETプローブのハイブリダイゼーション領域を設定することは不可能である。しかし、FRETプローブの長さLで平均をとることにより、SS−count値をFRETプローブのハイブリダイゼーション領域の設定に有効に利用できることを本発明者らは見出した。例えば、図2に示すように、平均値M(i)ではSS−count値の傾向を把握することが可能となり、ハイブリダイゼーション領域の設定に活用することが可能となる。
次に、工程(4)では、平均値M(i)をよりハイブリダイゼーション領域の設定に利用し易くするための処理を行う。この処理により、次の工程(5)での判別が容易となる。
最後に、工程(5)では、c≦i≦c+L−1におけるF(i)の最大値が正かつF(i)の最小値が負であり、かつ、F(c)<F(c+L−1)となるcを算出し、RNAのc番目からc+L−1番目の塩基領域をFRETプローブのハイブリダイゼーション領域と設定する。このような条件を満たす領域でFRETプローブをハイブリダイゼーションさせると、FRETの効率が高くなる。
実施例1:ヒトWT1 mRNAに対するFRETプローブ
(mfoldによる計算)
ヒトWT1 mRNA(GenBank受入番号:NM_024426)の塩基配列のうち、開始コドンのアデニン塩基から数えて1350の塩基長の配列データ(配列番号1)をmfoldに入力し、37℃の条件におけるSS−conut値を計算した。得られた結果を図1に示す。図1から分かるように、SS−conut値自体は離散的な数値をとり、このままでは何ら有力な情報を得ることができない。
そこで、FRETプローブの長さを40に設定し、40塩基にわたるSS−count値の平均値M(i)を計算した。さらに、処理をしやすくするため、40塩基離れた位置のSS−count値の平均値との差F(i)を計算した。図2にM(i)とF(i)を示す。
(FRETプローブの合成)
図2から6つの領域を選んで、実際にFRETプローブを合成した。合成したFRETプローブを表1に示す。
Figure 0004963164
表1に記載した配列を有するドナープローブを特許文献1に記載の方法に準じて合成した。より詳細には、以下の通りである。2.5mgのNHSS(N-Hydroxysulfosuccinimidesodium salt)を30μLの滅菌水に溶かした溶液と、5mgのEDAC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)を50μLの滅菌水に溶かした溶液と1mgのBodipy493/503プロピオン酸を50μLのDMFに溶かした溶液を混合し、室温で30分間反応させた。
一方、DNA/RNAシンセサイザー(PerkinElmer社製モデル394又はPerceptive Biosystems社製モデル8909)を用いて、βシアノエチルアミダイト法により、表1に記載の塩基配列のうちxを除いた塩基配列を有するオリゴDNAを合成した。合成したオリゴDNAの5'末端に、6−(トリフルオロアセチルアミノ)ヘキシル−(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)−ホスホロアミダイトを用いてヘキシルアミノ基を導入し、凍結乾燥した。これを200μLの0.5M Na2HCO3/NaH2CO3緩衝液(pH9.3)に溶解した。
これらを混合し、遮光条件下で一晩反応させた。反応液をゲル濾過して未反応の色素を除去した後、CAPCELL PACK18(資生堂社製、カラムサイズは6mm内径×250mm全長)を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(流速:1mL/分、カラム温度:40℃、移動相組成:5mM triethylammonium acetateを含む5%アセトニトリル水溶液(A)及び5mM triethylammonium acetateを含む40%アセトニトリル水溶液(B)、濃度勾配:30-80%B(0-20分))により、260nmと493nmに吸収をもつ画分を分取し、凍結乾燥した。
次に、表1に記載したアクセプタープローブを特許文献1に記載の方法に準じて合成した。より詳細には、以下の通りである。1チューブ分のCy5色素(Amersham社製, Fluorolink Cat. No. PA25001)を100μLの滅菌水に溶解した。
一方、Uni-Link AminoModifier (Clontech社製)を用いて表1に記載の塩基配列中yに相当する部分にヘキシルアミノ基を導入したオリゴDNAを合成し、凍結乾燥した。これを200μLの Na2HCO3/NaH2CO3緩衝液(0.5M、pH9.3)に溶解した。
これらを混合し、遮光条件下で一晩反応させた。反応液をゲル濾過して未反応の色素を除去した後、CAPCELL PACK18を用いた逆相高速液体クロマトグラフィー(流速:1mL/分、カラム温度:40℃、移動相組成:5mM triethylammonium acetateを含む5%アセトニトリル水溶液(A)及び5mM triethylammonium acetateを含む40%アセトニトリル水溶液(B)、濃度勾配:15-60%B(0-20分))により、260nmに吸収をもつ画分を分取した。得られた画分の吸収スペクトルを220-700nmの範囲で測定し、650-700nmにおけるCy5の吸収極大を確認後、得られた画分を凍結乾燥した。
(WT1 mRNAの調製)
ヒトWT1のcDNAを含むプラスミドDNA(pUCWT1;理化学研究所バイオリソースセンターから購入)を制限酵素EcoRI及びHincIIで切断し、WT1 cDNA断片を得た。WT1 cDNA断片を、RNA合成用ベクターpBluescriptII KS+のEcoRI/HincIIによる消化部位に、T7プロモーター下流に断片が位置するように、ライゲーションキット(タカラバイオ社製)を用いて結合させた。得られた組換えプラスミドを大腸菌JM109株のコンピテントセル(タカラバイオ社製)に導入し、得られた形質転換体を培養し組換えプラスミドを複製した。
複製したプラスミドをHincIIにより直鎖状にした後、ProteinaseK(タカラバイオ社製)及びフェノール・クロロホルムで処理し、変性、除タンパクを行った。このように精製した遺伝子断片を鋳型として、インビトロ転写キット(Megascript T7 Kits:Ambion社)を用いてRNAを合成した。RNA溶液にDNaseI(タカラバイオ社製)を加えてプラスミドDNAを消化した後、等量の塩化リチウム溶液と2倍量のエタノールを加えてRNAを沈殿させ、70%エタノールで洗浄した後、乾燥した。RNaseを含有しない蒸留水にRNAを溶解させて、以下の実験に用いた。
(蛍光スペクトル変化の測定)
ドナープローブとアクセプタープローブが近接してハイブリダイゼーションすることに伴うFRETによる蛍光スペクトルの変化を測定した。ドナープローブ及びアクセプタープローブを終濃度1μMとなるように150μLの1xSSC(150mM塩化ナトリウム、17mMクエン酸ナトリウム、pH7.0)溶液に加え、室温で15分放置した後、四面透過の石英製のキュベットに注入し、蛍光分光光度計(F4500;日立製作所製)により励起波長488nm、蛍光波長500-750nmの範囲で蛍光スペクトルを測定した。次に、この溶液にWT1 mRNAを200pmol添加し、30分放置した後、室温における蛍光スペクトルを測定して、ハイブリダイゼーションに伴う蛍光スペクトルの変化を観察した。
図3は、FRETプローブ単独存在下及びWT1mRNA(200pmol)との共存下における、515nmの蛍光強度に対する670nmの蛍光強度の比(I670nm/I515nm)を表すグラフである。図3から分かるように、連続する40塩基の領域において、その領域内のF(i)の最大値が正かつF(i)の最小値が負であり、かつ、5’末端のF(i)が3’末端のF(i)よりも小さいという条件を満たしている場合(プローブWT1Ex1、WT1Ex2、WT1Ex5、WT1Ex6及びWT1KTS+)、高い効率のFRETが観測された。一方、上記条件を満たさない場合(プローブWT1Ex1+)、FRETは観測されなかった。
実施例2:ヒトIL2 mRNAに対するFRETプローブ
既に公表した、ヒトIL−2 mRNAのFRETプローブによる検出の実験結果と、本発明の方法により設定されるハイブリダイゼーション領域との比較を試みた。公表した実験結果は、Ishibashi K. et al., Anal. Chem., vol. 75, pp. 2715-2723 (2003) 及びそれに対応する特許出願(特許文献1)を用いた。ヒトIL−2 mRNA検出用の様々なFRETプローブ(エネルギーアクセプター蛍光色素としてXRITCを用いている)を用いたときの蛍光強度比(I606nm/I515nm)を図4に示す。プローブ名は、ヒトIL−2 mRNAのヌクレオチドの位置(開始コドンのアデニンを1とする)に対応している。FRETプローブの長さは30である。
ヒトIL2 mRNAの塩基配列の一部(配列番号2)をmfoldに入力し、37℃の条件におけるSS−conut値を計算した。FRETプローブの長さを30として、30塩基にわたるSS−count値の平均値M(i)を計算し、さらに、30塩基離れた位置のSS−count値の平均値との差F(i)を計算した。図5にM(i)とF(i)を示す。
図4及び図5から分かるように、高いFRET効率を示すプローブ287-316及び342-371は、本発明の方法で規定する条件に合致し、他方、FRETが生じていないプローブ198-227は、本発明の方法で規定する条件を満たしていない。
実施例3:ヒトIL4 mRNAに対するFRETプローブ
ヒトIL−4 mRNAについても、実施例2と同様に、既出の実験結果と、本発明の方法により設定されるハイブリダイゼーション領域との比較を行った。実験結果を引用した文献は、実施例2と同じである。ヒトIL−4 mRNA検出用の様々なFRETプローブを用いたときの蛍光強度比(I670nm/I515nm)を図6に示す。プローブ名は、ヒトIL−4 mRNAのヌクレオチドの位置(開始コドンのアデニンを1とする)に対応している。FRETプローブの長さは30である。
ヒトIL4 mRNAの塩基配列の一部(配列番号3)をmfoldに入力し、37℃の条件におけるSS−conut値を計算した。FRETプローブの長さを30として、30塩基にわたるSS−count値の平均値M(i)を計算し、さらに、30塩基離れた位置のSS−count値の平均値との差F(i)を計算した。図7にM(i)とF(i)を示す。
図6及び図7から分かるように、高いFRET効率を示すプローブ178-207及び265-294は、本発明の方法で規定する条件に合致し、他方、FRETが生じていないプローブ77-99、119-148及び326-355は、本発明の方法で規定する条件を満たしていない。
実施例4:複数のFRETプローブを使用したヒトWT1 mRNAの検出
WT1Ex1プローブのみを用いた場合と、WT1Ex1プローブ、WT1Ex2プローブ、WT1Ex6プローブ及びWT1KTS+プローブの4種類のプローブの混合物を用いた場合とで、ヒトWT1 mRNAの増加に伴うFRETの蛍光強度変化を比較した。
ドナープローブ及びアクセプタープローブを120pmolずつ含むWT1Ex1プローブ溶液を調製し、各FRETプローブに関してドナープローブ及びアクセプタープローブを30pmolずつ含む混合プローブの溶液を調製した。各溶液に、WT1 mRNAを32pmol添加し、37℃で30分間インキュベーションした後に、蛍光分光光度計により励起波長488nm、蛍光波長500-750nmの範囲で蛍光スペクトルを測定した。さらに32pmolずつ96pmolまでWT1 mRNAを添加していき各添加量における蛍光スペクトルを測定した。
図8は、WT1 mRNAの様々な添加量における、WT1Ex1プローブ及び混合プローブを用いた場合の蛍光強度比(I670nm/I515nm)を表すグラフである。WT1 mRNAの添加量によらず、混合プローブを用いたときの方がWT1Ex1プローブ単独のときに比べて、強いFRETが観測された。特に、WT1 mRNAの添加量が少ないほど、FRETの強度差は顕著であった。
この結果から、本発明のFRETプローブの設計方法により設計される複数のFRETプローブを組み合わせて同時に使用することにより、標的mRNAを高感度に検出できることが明らかとなった。
図1は、ヒトWT1 mRNAの各塩基に対するSS−conut値を表すグラフである。 図2は、ヒトWT1 mRNAのM(i)及びF(i)を表すグラフである。 図3は、ヒトWT1 mRNA検出用の様々なFRETプローブを用いたときの蛍光強度比(I670nm/I515nm)を表すグラフである。 図4は、ヒトIL2 mRNA検出用の様々なFRETプローブを用いたときの蛍光強度比(I606nm/I515nm)を表すグラフである。 図5は、ヒトIL2 mRNAのM(i)及びF(i)を表すグラフである。 図6は、ヒトIL4 mRNA検出用の様々なFRETプローブを用いたときの蛍光強度比(I670nm/I515nm)を表すグラフである。 図7は、ヒトIL4 mRNAのM(i)及びF(i)を表すグラフである。 図8は、ヒトWT1 mRNAの様々な添加量における、WT1Ex1プローブ及び混合プローブを用いた場合の蛍光強度比(I670nm/I515nm)を表すグラフである。

Claims (2)

  1. ドナープローブとアクセプタープローブとからなる蛍光共鳴エネルギー移動プローブのRNA上のハイブリダイゼーション領域を設定する方法であって、
    mfoldにより塩基の長さがn(nは200以上)であるRNAの塩基配列のi番目(1≦i≦n)の塩基のSS−count値S(i)を算出する工程と、
    蛍光共鳴エネルギー移動プローブの長さL(2L<n)を決める工程と、
    1≦i≦n−L+1であるすべてのiについて、i番目の塩基からi+L−1番目の塩基までのSS−count値S(i)の平均値M(i)を算出する工程と、
    1≦i≦n−2L+2であるすべてのiについて、F(i)=M(i+L−1)−M(i)を算出する工程と、
    c≦i≦c+L−1におけるF(i)の最大値が正かつF(i)の最小値が負であり、かつ、F(c)<F(c+L−1)となるcを算出し、RNAのc番目からc+L−1番目の塩基領域を蛍光共鳴エネルギー移動プローブのハイブリダイゼーション領域と設定する工程と、
    を含む方法。
  2. 20≦L≦50である、請求項1に記載の方法。
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