以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による光起電力装置の構成を示した上面図である。図2は、図1の100−100線に沿った断面図である。図3は、図1に示した一実施形態による光起電力装置の接着層付近の拡大断面図である。図4は、図1の200−200線に沿った断面図である。図5は、図1の300−300線に沿った断面図である。まず、図1〜図5を参照して、本発明の一実施形態による光起電力装置の構成について説明する。
本発明の一実施形態による光起電力装置では、図1に示すように、光電変換部1の上面(主表面)上に、銅線(金属線)からなる集電極2が、エポキシ系の熱硬化型の導電性ペースト(銀(Ag)ペースト)からなる導電性の接着層3により接着されている。この集電極2および接着層3は、光電変換部1の上面上に、図1のA方向に約2mmのピッチ(中心間間隔)で配置されるとともに、図1のB方向に互いに平行に延びるように複数設けられている。
ここで、本実施形態では、集電極2は、約50μmの直径を有する実質的に円形状の断面形状を有するように形成されている。また、集電極2の接着層3と接する領域には、図2および図4に示すように、複数の凹部2aを有する凹凸形状が形成されている。この凹凸形状の凹部2aは、集電極2の延びる方向に交差する断面の外周に沿って所定の間隔で複数設けられているとともに、集電極2の延びる方向(図4のB方向)に沿っても所定の間隔で複数設けられている。また、図3に示すように、凹部2aの深さを凹部深さ(H)、互いに隣接する凹部2aの谷部(底部)同士の距離を凹部ピッチ(P)、凹部2aの開口幅を凹部開口幅(W)とすると、集電極2の凹部2aは、約2μm〜約15μmの凹部深さ(H)と、約2μm〜約15μmの凹部ピッチ(P)と、約1.8μm〜約13μmの凹部開口幅(W)とを有するように形成されている。そして、この凹部2aには、接着層3に含まれる約1.1μmの平均直径(粒子径)を有する銀(Ag)からなる粒状フィラー3aと、約6μmの最大長さ(粒子径)を有する銀(Ag)からなるフレーク状フィラー3bとが充填されている。なお、粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bは、本発明の「金属粒子」の一例である。
また、図1に示すように、光電変換部1上の接着層3の両端部から約25mm内側の位置に、集電極2の延びる方向に対して直交する方向(A方向)に延びるように、2つのバスバー電極4が形成されている。このバスバー電極4は、エポキシ系の熱硬化型の導電性ペースト(銀(Ag)ペースト)からなるとともに、約1.5mmの幅を有している。また、集電極2および接着層3と、バスバー電極4とが交差する領域では、図5に示すように、集電極2と接着層3とを覆うように、バスバー電極4が形成されている。このバスバー電極4により、複数の集電極2が互いに電気的に接続されている。
また、光電変換部1では、図2に示すように、約1Ω・cmの抵抗率と、約104mm(縦)×約104mm(横)の大きさと、約300μmの厚みとを有するとともに、(100)面を有するn型単結晶シリコン基板5の上面および下面には、テクスチャ構造(凹凸形状)が形成されている。そして、n型単結晶シリコン基板5の上面上に、約5nmの厚みを有する実質的に真性のi型非晶質シリコン層6が形成されている。また、i型非晶質シリコン層6の上面上には、約5nmの厚みを有するp型非晶質シリコン層7と、約80nm〜約100nmの厚みを有する透明導電膜8とが順次形成されている。また、透明導電膜8は、約5質量%のSnO2を含有するInO2からなるITO(Indium Tin Oxide)膜によって構成されている。
また、n型単結晶シリコン基板5の下面上には、約5nmの厚みを有する実質的に真性のi型非晶質シリコン層9と、約5nmの厚みを有するn型非晶質シリコン層10と、約80nm〜約100nmの厚みを有する透明導電膜11とが順次形成されている。また、透明導電膜11の下面上には、所定の間隔を隔てて互いに平行な方向に延びるように形成された複数のフィンガー電極部12aと、フィンガー電極部12aにより収集された電流を集合させるバスバー電極部(図示せず)とからなる裏面電極12が形成されている。この裏面電極12は、エポキシ系の熱硬化型の導電性ペースト(銀(Ag)ペースト)により形成されている。
図6〜図8は、本実施形態による光起電力装置の光電変換部への銅線の取付工程を説明するための図である。次に、図1〜図8を参照して、本発明の一実施形態による光起電力装置の製造プロセスについて説明する。
まず、図2および図4を参照して、光電変換部1の製造プロセスについて説明する。
図2および図4に示すように、約1Ω・cmの抵抗率と、約104mm(縦)×約104mm(横)の大きさと、約300μmの厚みとを有するとともに、(100)面を有するn型単結晶シリコン基板5を、アルカリ水溶液によりエッチングすることにより、n型単結晶シリコン基板5の上面および下面に、テクスチャ構造(凹凸形状)を形成する。その後、洗浄することにより不純物を除去する。そして、RFプラズマCVD法を用いて、周波数:約13.56MHz、形成温度:約100℃〜約300℃、反応圧力:約5Pa〜約100Pa、RFパワー:約1mW/cm2〜約500mW/cm2の条件下で、n型単結晶シリコン基板5の上面上に、約5nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層6と、約5nmの厚みを有するp型非晶質シリコン層7とを順次形成する。なお、p型非晶質シリコン層7を形成する際のp型ドーパントとしては、3族元素であるB、Al、Ga、Inが挙げられる。p型非晶質シリコン層7の形成時に、SiH4(シラン)ガスなどの原料ガスに、上記したp型ドーパントの少なくとも1つを含む化合物ガスを混合することによって、p型非晶質シリコン層7を形成することが可能である。
次に、上記i型非晶質シリコン層6およびp型非晶質シリコン層7と同様の形成プロセスにより、n型単結晶シリコン基板5の下面上に約5nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層9と、約5nmの厚みを有するn型非晶質シリコン層10とを順次形成する。なお、n型非晶質シリコン層10を形成する際のn型ドーパントとしては、5族元素であるP、N、As、Sbが挙げられる。n型非晶質シリコン層10の形成時に、原料ガスに上記したn型ドーパントの少なくとも1つを含む化合物ガスを混合することによって、n型非晶質シリコン層10を形成することが可能である。
次に、スパッタリング法を用いて、p型非晶質シリコン層7の上面上、および、n型非晶質シリコン層10の下面上に、ITO膜からなる透明導電膜8および11をそれぞれ形成する。具体的には、この透明導電膜8および11の形成時には、SnO2粉末を約5質量%含むIn2O3粉末の焼結体からなるターゲットを、スパッタリング装置(図示せず)のチャンバ(図示せず)内のカソード(図示せず)に設置する。この場合、SnO2粉末の量を変化させることにより、ITO膜中のSn量を変化させることが可能である。なお、Inに対するSnの量は、約1質量%〜約10質量%が好ましい。
そして、p型非晶質シリコン層7およびn型非晶質シリコン層10が形成されたn型単結晶シリコン基板5をカソードと平行に対向配置する。そして、チャンバ(図示せず)を真空排気した後、加熱ヒータ(図示せず)を用いて、基板温度が約200℃になるまで加熱する。そして、基板温度を約200℃にした状態で、ArガスとO2ガスとの混合ガスを流して圧力を約0.4Pa〜約1.3Paに保持するとともに、カソードに約0.5kW〜約2kWのDC電力を投入することにより放電を開始する。このようにして、透明導電膜8および11をそれぞれp型非晶質シリコン層7の上面上およびn型非晶質シリコン層10の下面上の各々に約80nm〜約100nmの厚みになるまで形成する。
次に、図3および図6〜図8を参照して、光電変換部1への銅線の取付工程について説明する。
まず、約50μmの直径を有する銅線2b(図6参照)の所定の領域に、サンドブラスト法により凹凸形状を形成した後、その凹凸形状が形成された銅線2bをボビン21(図6参照)に巻き取る。具体的には、サンドブラスト法により、約1.8μm〜約13μmの平均粒径を有するアルミナ粒を約49×104N/m2〜約29.4×104N/m2の噴射圧力で銅線2b(図6参照)に衝突させる。これにより、銅線2bに、平均約2μm〜約15μmの凹部深さ(H)(図3参照)と、平均約2μm〜約15μmの凹部ピッチ(P)と、平均約1.8μm〜約13μmの凹部開口幅(W)とを有する凹凸形状が形成される。なお、銅線2bは、本発明の「金属線」の一例である。なお、凹部深さ(H)および凹部ピッチ(P)が銅線2bの直径(約50μm)に対して約30%以上の大きさである約16μm以上の大きさを有するように凹凸形状を形成した場合には、銅線2b自体の強度が低下するので、後述する光電変換部1への銅線2bの取付工程において、銅線2bが破断しやすくなる。このため、凹部深さ(H)および凹部ピッチ(P)は、約16μm未満の大きさに形成するのが好ましい。
次に、図6に示すように、ボビン21から引き出した銅線2bが破断や撓みを生じないように、平行に配置された4本の円柱部22aを有する巻取り部材22を等速で回転するとともに、銅線2bに所定の張力(約0.196N)を付与しながら、銅線2bを巻取り部材22の円柱部22aに約2mmのピッチで平行に配置されるように巻き取る。このとき、銅線2bの凹凸形状が巻取り部材22の回転中心O1に対して外側に向くように巻き取る。
そして、図7に示すように、銅線2bの凹凸形状が形成された領域に、約50μmの厚みを有するエポキシ系の熱硬化型の導電性ペースト(銀(Ag)ペースト)3cを塗布する。具体的には、円筒状のローラ23から所定の距離を隔てて厚み調節ローラ24を配置し、ローラ23を回転させることにより、ローラ23の表面に約50μmの厚みを有する導電性ペースト3cを塗布する。その後、銅線2bに所定の張力(約0.196N)を付与しながら、ローラ23の導電性ペースト3cを銅線2bに接触させた状態で、ローラ23を回転することにより、導電性ペースト3cを銅線2bに転写する。このとき、導電性ペースト3aの転写速度と同じ大きさでローラ23を平行移動させる。この場合、銅線2bと導電性ペースト3cとの接触面積を小さくすることが可能となる。これにより、導電性ペースト3cを銅線2bから引き離す際に銅線2bにかかる応力を小さくすることが可能となるので、銅線2bが破断や撓みを生じるのを抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、導電性ペースト3cには、約1.1μmの平均直径(粒子径)を有する銀(Ag)からなる粒状フィラー3aと、約6μmの最大長さ(粒子径)を有する銀(Ag)からなるフレーク状フィラー3bとが含まれている。
その後、図8に示すように、光電変換部1を固定台25に固定する。そして、約2mmのピッチで平行に配置されるとともに、導電性ペースト3cが塗布された銅線2bを光電変換部1の所定の領域に配置する。そして、熱硬化型の導電性ペースト3cを光電変換部1の上面に接触させた状態で、ランプヒータ(図示せず)により約200℃の温度で約30分間熱処理を行うことにより、導電性ペースト3cを硬化させて接着層3を形成する。これにより、光電変換部1の上面上に、銅線2bからなる集電極2が形成される。すなわち、本実施形態では、1つのボビン21から引き出した銅線2bを、巻取り部材22の円柱部22aに平行に巻き取り、光電変換部1に接着することにより集電極2を形成するので、集電極2と同数のボビン21から引き出した銅線2bを平行に配置して光電変換部1に接着する従来の方法に比べて、ボビン21の数を減少させることが可能となる。これにより、ボビン21を配置するスペースを省スペース化することが可能となる。なお、本実施形態では、図3に示すように、集電極2は、接着層3に含まれる粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bが凹部2aに充填された状態で形成される。
次に、図1および図5を参照して、バスバー電極4および裏面電極12の製造プロセスについて説明する。
まず、図1に示すように、スクリーン印刷法を用いて、光電変換部1上の接着層3の両端部から約25mm内側の位置に、集電極2および接着層3の延びる方向に対して直交する方向に延びるように、導電性ペーストを転写する。なお、この導電性ペーストとしては、エポキシ系の熱硬化型の導電性ペースト(銀(Ag)ペースト)を用いる。この後、加熱炉内で約200℃で約1時間加熱することにより導電性ペーストを硬化させる。これにより、光電変換部1上の接着層3の所定の領域に、複数の集電極2を互いに接続するバスバー電極4が形成される。このとき、このバスバー電極4が集電極2および接着層3と交差する位置では、図5に示すように、集電極2および接着層3を覆うようにバスバー電極4が形成される。
その後、スクリーン印刷法を用いて、エポキシ系の熱硬化型の導電性ペースト(銀(Ag)ペースト)を裏面側の透明導電膜11の所定の領域上に転写した後、加熱炉内で約200℃で約1時間加熱することにより導電性ペーストを硬化させて裏面電極12を形成する。これにより、透明導電膜11の下面上に所定の間隔を隔てて互いに平行に延びるように形成された複数のフィンガー電極部12aと、フィンガー電極部12aにより収集された電流を集合させるバスバー電極部(図示せず)とからなる裏面電極12が形成される。このようにして、図1に示した本発明の一実施形態による光起電力装置が作製される。
本実施形態では、上記のように、集電極2の接着層3に接する領域に、凹凸形状を形成することによって、集電極2の接着層3に接する領域の表面積を大きくすることができるので、集電極2と接着層3との接着面積を大きくすることができる。これにより、集電極2の接着層3に対する接着強度を大きくすることができるので、集電極2が接着層3から剥離するのを抑制することができる。その結果、集電極2が光電変換部1から剥離するのを抑制することができる。また、集電極2と接着層3との接着面積を大きくすることができるので、集電極2と導電性の接着層3との間の接触抵抗が大きくなるのを抑制することができる。これにより、光起電力装置の出力損失が増加するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、集電極2の凹凸形状に、複数の凹部2aを設けることによって、集電極2の接着層3に接する領域の表面積をより大きくすることができるので、集電極2と接着層3との接着面積をより大きくすることができる。これにより、集電極2の接着層3に対する接着強度をより大きくすることができるので、集電極2が接着層3から剥離するのをより抑制することができる。その結果、集電極2が光電変換部1から剥離するのをより抑制することができる。
また、本実施形態では、集電極2の凹凸形状の凹部2aに、接着層3の銀(Ag)からなる粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bを充填することによって、集電極2と、接着層3の粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bとの接触面積を大きくすることができるので、集電極2と接着層3との間の接触抵抗が大きくなるのをより抑制することができる。これにより、光起電力装置の出力損失が増加するのをより抑制することができる。
また、本実施形態では、集電極2の凹凸形状の凹部2aの凹部開口幅(W)を、接着層3の粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bの粒子径よりも大きく形成することによって、集電極2の凹凸形状の凹部2aに、容易に、接着層3の粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bを充填することができるので、集電極2と接着層3の粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bとの接触面積を、容易に、大きくすることができる。
また、本実施形態では、集電極2の凹凸形状の凹部2aを、集電極2の延びる方向に交差する断面の外周に沿って所定の間隔で複数設けるとともに、集電極2の延びる方向に沿っても所定の間隔で複数設けることによって、集電極2の接着層3に接する領域の表面積をより大きくすることができるので、集電極2と接着層3との接着面積をより大きくすることができる。
また、本実施形態では、銅線2bの所定の領域に、サンドブラスト法により凹凸形状を形成することによって、銅線2bに容易に凹凸形状を形成することができる。
図9は、本発明の一実施形態による効果を確認するために行った実験を説明するための図である。次に、上記した本発明の一実施形態による効果を確認するために行った実験について説明する。この実験では、銅線2bの凹凸形状の大きさを変化させて実施例1−1〜1−5および比較例1−1による光起電力装置を作製するとともに、その作製した光起電力装置について、集電極2の剥離強度および起電力装置の出力を測定した。
(実施例1−1)
この実施例1−1では、サンドブラスト法を用いて、約1.8μmの平均粒径を有するアルミナ粒を約49×104N/m2の噴射圧力で銅線2bに衝突させることにより、銅線2bに平均約2μmの凹部深さ(H)と、平均約2μmの凹部ピッチ(P)と、平均約1.8μmの凹部開口幅(W)とを有する凹凸形状を形成した。これ以外は、上記実施形態と同様にして、実施例1−1による光起電力装置を作製した。
(実施例1−2)
この実施例1−2では、サンドブラスト法を用いて、約4μmの平均粒径を有するアルミナ粒を約39.2×104N/m2の噴射圧力で銅線2bに衝突させることにより、銅線2bに平均約5μmの凹部深さ(H)と、平均約5μmの凹部ピッチ(P)と、平均約4μmの凹部開口幅(W)とを有する凹凸形状を形成した。これ以外は、上記実施形態と同様にして、実施例1−2による光起電力装置を作製した。
(実施例1−3)
この実施例1−3では、サンドブラスト法を用いて、約6μmの平均粒径を有するアルミナ粒を約35.3×104N/m2の噴射圧力で銅線2bに衝突させることにより、銅線2bに平均約8μmの凹部深さ(H)と、平均約8μmの凹部ピッチ(P)と、平均約6μmの凹部開口幅(W)とを有する凹凸形状を形成した。これ以外は、上記実施形態と同様にして、実施例1−3による光起電力装置を作製した。
(実施例1−4)
この実施例1−4では、サンドブラスト法を用いて、約10μmの平均粒径を有するアルミナ粒を約31.4×104N/m2の噴射圧力で銅線2bに衝突させることにより、銅線2bに平均約12μmの凹部深さ(H)と、平均約12μmの凹部ピッチ(P)と、平均約10μmの凹部開口幅(W)とを有する凹凸形状を形成した。これ以外は、上記実施形態と同様にして、実施例1−4による光起電力装置を作製した。
(実施例1−5)
この実施例1−5では、サンドブラスト法を用いて、約13μmの平均粒径を有するアルミナ粒を約29.4×104N/m2の噴射圧力で銅線2bに衝突させることにより、銅線2bに平均約15μmの凹部深さ(H)と、平均約15μmの凹部ピッチ(P)と、平均約13μmの凹部開口幅(W)とを有する凹凸形状を形成した。これ以外は、上記実施形態と同様にして、実施例1−5による光起電力装置を作製した。
(比較例1−1)
この比較例1−1では、凹凸形状を形成していない銅線を集電極として用いた。これ以外は、上記実施形態と同様にして、比較例1−1による光起電力装置を作製した。
次に、上記のようにして作製した実施例1−1〜実施例1−5および比較例1−1による光起電力装置について、集電極2の剥離強度を測定した。具体的には、図9に示すように、光電変換部1を固定し、集電極2の一方の端部を引き剥がすとともに、光電変換部1の上面に対して垂直な方向に折り曲げた。そして、折り曲げた集電極2の一方の端部を測定装置26のクリップ26aで挟み、集電極2を上方へ引張ることにより、集電極2が光電変換部1から剥離する際のピーク強度を測定装置26で測定した。
また、上記のようにして作製した実施例1−1〜実施例1−5および比較例1−1による光起電力装置について、ソーラーシミュレーターにより出力を測定した。なお、空気透過量(Air Mass):1.5、放射照度:100mW/cm2、温度:25℃の条件で行った。
以下の表1に、上記集電極2の剥離強度および光起電力装置の出力の測定結果を示す。なお、この表1には、比較例1−1による剥離強度で規格化した規格化剥離強度、および、比較例1−1による光起電力装置の出力で規格化した規格化出力を示している。
上記表1の結果から、実施例1−1〜1−5の規格化剥離強度(実施例1−1:1.08、実施例1−2:1.1、実施例1−3:1.08、実施例1−4:1.08、実施例1−5:1.06)は、凹凸形状を有しない銅線を集電極として用いた従来構造による比較例1−1の規格化剥離強度(比較例1−1:1)に比べて大きいことがわかる。すなわち、実施例1−1〜1−5では、比較例1−1に比べて、集電極2の剥離を抑制することができることがわかった。これは、凹凸形状が形成されていない従来構造による比較例1−1の集電極と異なり、凹凸形状が形成されている実施例1−1〜1−5による集電極2では、集電極2と接着層3との接触面積が大きいことにより、集電極2と接着層3との接着強度が大きくなったことによると考えられる。これにより、集電極2が光電変換部1から剥離するのを抑制するためには、集電極2に凹凸形状を形成することが好ましいことが判明した。
また、上記表1の結果から、実施例1−2〜1−5の規格化出力(実施例1−2:1.002、実施例1−3:1.008、実施例1−4:1.009、実施例1−5:1.007)は、凹凸形状を有しない銅線を集電極として用いた従来構造による比較例1−1の規格化出力(比較例1−1:1)に比べて大きいことがわかる。すなわち、実施例1−2〜1−5では、比較例1−1に比べて、光起電力装置の出力を向上させることができることがわかった。これは、凹凸形状が形成されていない従来構造による比較例1−1の集電極と異なり、凹凸形状が形成されている実施例1−2〜1−5による集電極2では、集電極2と接着層3との接触面積が大きいことにより、集電極2と、接着層3の粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bとの接触面積が大きくなり、集電極2と、接着層3の粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bとの接触抵抗が低減されたことによると考えられる。なお、実施例1−1による光起電力装置の出力が比較例1−1による光起電力装置の出力に比べて向上しなかったのは、集電極2の凹凸形状の凹部2aの凹部開口幅(W)が接着層3のフレーク状フィラー3bの粒子径に比べて十分に大きく形成されなかったことにより、集電極2の凹凸形状の凹部2aに、接着層3のフレーク状フィラー3bを十分に充填することができなかったためであると考えられる。
また、実施例1−3〜1−5による光起電力装置の出力が特に向上したのは、集電極2の凹凸形状の凹部2aの凹部開口幅(W)が、接着層3の粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bの粒子径に比べて十分に大きく形成されたことにより、集電極2の凹凸形状の凹部2aに、接着層3の粒状フィラー3aおよびフレーク状フィラー3bを十分に充填することができたためであると考えられる。
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、n型単結晶シリコン基板上にi型非晶質シリコン層を介してp型非晶質シリコン層を形成した光起電力装置を例にとって説明したが、本発明はこれに限らず、金属線からなる集電極を用いる構造を有する光起電力装置であれば、単結晶シリコン系、多結晶シリコン系、薄膜シリコン系、化合物半導体系、色素増感系、有機系などの種々の光起電力装置について本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、接着層、バスバー電極および裏面電極の材料として、エポキシ系の熱硬化型の導電性ペーストを用いたが、本発明はこれに限らず、接着層、バスバー電極および裏面電極の材料として、エポキシ系以外の樹脂材料を含む導電性ペーストを用いてもよい。たとえば、ポリエステル系、アクリル系、ポリビニル系、ポリウレタン系およびフェノール系などの樹脂材料を含む導電性ペーストを用いてもよい。ただし、この場合には、各樹脂に適応した硬化条件を用いることによって導電性ペーストを硬化させる必要がある。
また、上記実施形態では、集電極の接着層に接する領域のみに凹凸形状を形成した例について説明したが、本発明はこれに限らず、図10に示した本実施形態の第1変形例のように、実質的に円形状の断面形状を有する集電極31の円周面全体に凹凸形状を形成してもよい。この場合、円形状の断面形状を有する集電極31を、捩れた状態で光電変換部1の上面上に取り付けた場合にも、集電極31の接着層3に接する領域に容易に凹凸形状を配置することができるので、集電極31と接着層3との接着面積を容易に大きくすることができる。
また、上記実施形態では、ボビンから引き出した銅線を、巻取り部材の4本の円柱部に平行に巻き取り光電変換部に接着した例を示したが、本発明はこれに限らず、巻取り部材の円柱部を2本以上設けるとともに、ボビンから引き出した銅線を、巻取り部材の2本以上の円柱部に平行に巻き取り光電変換部に接着してもよいし、巻取り部材に矩形の筒形状または矩形の柱状を有する1つの柱部を設けるとともに、ボビンから引き出した銅線を、巻取り部材の1つの柱部に平行に巻き取り光電変換部に接着してもよい。
また、本実施形態では、銅線の凹凸形状をサンドブラスト法により形成した例について説明したが、本発明はこれに限らず、凹凸形状が形成された型を銅線に押し付けることにより、銅線に凹凸形状を形成してもよいし、レーザーを銅線表面に照射することにより、銅線に凹凸形状を形成してもよい。
また、上記実施形態では、集電極を実質的に円形状の断面形状を有するように形成した例について説明したが本発明はこれに限らず、図11に示した本実施形態の第2変形例のように、集電極32を矩形形状の断面形状を有するとともに、集電極32の接着層3に接着される面に凹部32aを有する凹凸形状を形成してもよい。この場合、集電極32と接着層3との接触面積をより大きくすることができる。
また、上記実施形態では、導電性ペーストの金属粒子として銀を用いた例を示したが、本発明はこれに限らず、導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、導電性ペーストの金属粒子として、たとえば、金、銅、ニッケル、アルミニウムなどの金属を用いてもよいし、これらの合金を用いてもよい。また、2種類以上の金属を混合して用いることも可能である。
また、上記実施形態では、導電性ペーストの金属粒子として、約1.1μmの平均直径を有する粒状フィラーと、約6μmの最大長さを有するフレーク状フィラーを用いた例について示したが、本発明はこれに限らず、導電性ペーストの金属粒子として、種々の形状および大きさを有するフィラーを組み合わせて用いてもよいし、図12に示した本実施形態の第3変形例のように、粒状フィラーのみを用いてもよいし、フレーク状フィラーのみを用いてもよい。
また、上記実施形態では、n型単結晶シリコン基板の上面および下面にテクスチャ構造を形成した例について示したが、本発明はこれに限らず、n型単結晶シリコン基板の上面および下面にテクスチャ構造(凹凸形状)を形成しなくてもよい。
また、上記実施形態では、1つの光電変換部を用いて光起電力装置を作製した例について説明したが、本発明はこれに限らず、2つ以上の光電変換部を用いて光起電力装置を作製してもよい。この場合、図13に示した本実施形態の第4変形例のように、凹凸形状(図示せず)が形成された銅線(金属線)からなる集電極33を隣接する光電変換部1の裏面電極として用いてもよい。また、複数の集電極33を互いに接続するためにバスバー電極(図示せず)を設けてもよい。
また、上記実施形態では、集電極として約50μmの直径を有する円形の断面の銅線を用いたが、本発明はこれに限らず、集電極として種々の構成の金属線を用いることができる。たとえば、約50μm以外の直径を有する金属線や、銅線以外の金属や合金などからなる金属線や、表面の一部または全部に金属または合金のメッキを施した金属線などを集電極として用いることができる。また、集電極を配置する数および間隔についても、種々の構成を適用することができる。
また、上記実施形態では、約1.5mmの幅を有する2本のバスバー電極をそれぞれ光電変換部の両側の端部から約25mmの位置に互いに平行な方向に延びるように形成したが、本発明はこれに限らず、バスバー電極の数、幅および形成位置として上記以外の種々の構成を適用することができる。
また、上記実施形態では、バスバー電極と集電極とが交差する領域において、バスバー電極が集電極上を覆うように構成したが、本発明はこれに限らず、バスバー電極と集電極とが電気的に接続されていれば、バスバー電極と集電極とが交差する領域において、集電極の上面上の全ての領域を覆うようにバスバー電極が形成されている必要はなく、集電極の上面の一部のみを覆うように、バスバー電極を設けてもよい。
また、上記実施形態では、裏面電極を光電変換部の表面側の接着層を形成した後に形成したが、本発明はこれに限らず、透明導電膜を形成した後、接着層を形成する前に裏面電極を形成してもよい。また、接着層に集電極を接触させた後に裏面電極を形成してもよい。
また、上記実施形態では、導電性ペースト(銀(Ag)ペースト)を加熱して硬化させることにより裏面電極を形成しているが、本発明はこれに限らず、上記以外の方法により裏面電極を形成してもよい。たとえば、Alなどを蒸着することにより裏面電極を形成したり、表面側の集電極と同様に、金属線を接着層により接着することによって裏面電極を形成してもよい。
また、上記実施形態では、裏面側の透明導電膜の下面上にバスバー電極部とフィンガー電極部とからなる裏面電極を形成したが、本発明はこれに限らず、裏面側の透明導電膜の下面上の全体を覆うように裏面電極を形成してもよい。
また、上記実施形態では、半導体材料として、シリコン(Si)を用いたが、本発明はこれに限らず、SiGe、SiGeC、SiC、SiN、SiGeN、SiSn、SiSnN、SiSnO、SiO、Ge、GeC、GeNのうちのいずれかの半導体を用いてもよい。この場合、これらの半導体は、結晶質、または、水素およびフッ素の少なくともいずれか一方を含む非晶質または微結晶であってもよい。
また、上記実施形態では、透明導電膜を構成する材料として、Snをドープした酸化インジウム(ITO)を用いたが、本発明はこれに限らず、ITO膜以外の材料からなる透明導電膜を用いてもよい。たとえば、Zn、As、Ca、Cu、F、Ge、Mg、S、SiおよびTeの少なくとも1つを化合物粉末として適量、酸化インジウム粉末(In2O3)に混ぜて焼結することにより作製したターゲットを用いて形成した透明導電膜を用いてもよい。
また、上記実施形態では、RFプラズマCVD法を用いて非晶質シリコン層を形成したが、本発明はこれに限らず、蒸着法、スパッタリング法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR法、熱CVD法、LPCVD(減圧CVD)法など他の方法を用いて、非晶質シリコン層を形成してもよい。
また、上記実施形態では、透明導電膜を構成するITO膜のスパッタリング時に、Arガスを用いたが、本発明はこれに限らず、He、Ne、Kr、Xeの他の不活性ガスまたはこれらの混合気体を用いることも可能である。
また、上記実施形態では、スパッタリング時の放電動作を、DC電力を用いて行ったが、本発明はこれに限らず、パルス変調DC放電や、RF放電、VHF放電、マイクロ波放電などを用いてもよい。