以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る電子鍵盤楽器の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、本実施の形態の電子鍵盤楽器は、音高情報を含む演奏データを入力するための鍵盤および所定の楽音効果を付与するための3つのペダルを含む演奏操作子1と、各種情報を入力するための複数のスイッチやダイアル、ジョイスティックを含む設定操作子2と、演奏操作子1の操作状態を検出する検出回路3と、設定操作子2の操作状態を検出する検出回路4と、装置全体の制御を司るCPU5と、該CPU5が実行する制御プログラムや各種テーブルデータ等を記憶するROM6と、演奏データ、各種入力情報および演算結果等を一時的に記憶するRAM7と、各種情報等を表示する、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)および発光ダイオード(LED)等を備えた表示装置8と、前記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種自動演奏データ、各種データ等を記憶する記憶装置9と、図示しない外部機器を接続し、この外部機器とデータの送受信を行う通信インターフェース(I/F)10と、演奏操作子1から入力された演奏データや、前記記憶装置9に記憶されたいずれかの自動演奏データを再生して得られた演奏データ等を楽音信号に変換するとともに、その楽音信号に各種効果を付与するための音源・効果回路11と、該音源・効果回路11からの楽音信号を音響に変換する、たとえば、DAC(Digital-to-Analog Converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム12とにより構成されている。
上記構成要素3〜11は、バス13を介して相互に接続され、音源・効果回路11にはサウンドシステム12が接続されている。
表示装置8には、本実施の形態では、演奏ガイドや鍵域分割位置、音高“C4”(中央ド)の位置などを表示するために鍵毎に設けられたLEDが含まれている。各LEDは、たとえば赤色と緑色の2色を発光する2色LEDであり、赤色で演奏ガイド時の演奏(押鍵)位置と鍵域分割位置を表示し、緑色で中央ドの位置を表示する。なお、LEDは、2色発光のものに限らず、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色発光のものや、R,G,Bを組み合わせて多色発光にしたものなどであってもよい。その場合には、演奏ガイド時の演奏位置、鍵域分割位置および中央ドの位置をそれぞれ異なった色で発光させることが好ましい。
記憶装置9は、たとえば、フレキシブルディスク(FD)、ハードディスク(HD)、CD−ROM、DVD(デジタル多目的ディスク)、光磁気ディスク(MO)および半導体メモリなどの記憶媒体とその駆動装置である。記憶媒体は、駆動装置から着脱可能であってもよいし、記憶装置9自体が、電子鍵盤楽器から着脱可能であってもよい。あるいは、記憶媒体も記憶装置9も着脱不可能であってもよい。なお、記憶装置9(の記憶媒体)には、前述のように、CPU5が実行する制御プログラムも記憶でき、ROM6に制御プログラムが記憶されていない場合には、この記憶装置9に制御プログラムを記憶させておき、それをRAM7に読み込むことにより、ROM6に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU5にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。
通信I/F10としては、たとえば、MIDI(musical instrument digital interface)信号などの音楽信号を専用に送受信する音楽専用有線I/F、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)やIEEE1394(アイトリプルイー1394)などの汎用近距離有線I/F、Ethernet(登録商標)などの汎用ネットワークI/F、無線LAN(local area network)やBluetooth(登録商標)などの汎用近距離無線I/Fを挙げることができる。本実施の形態では、通信I/F10として、USBを採用しているが、これに代えて他の種類のI/Fを採用してもよいし、これに他の種類のI/Fを加えるようにしてもよい。
図2は、自動演奏データのフォーマットの一例を示す図である。
同図に示すように、自動演奏データは、複数のトラックからなり、各トラックは、音域情報と、ノートイベント(ノートオン/オフイベント)とタイミング(その直後に位置するノートイベントを再生すべきタイミングを示すデータ)を一組とし、それを再生順に並べて形成されるシーケンスデータからなる。本実施の形態では、自動演奏データは主として、鍵盤の演奏練習に使用されるので、少なくとも右手パートと左手パートのデータが含まれていればよい。したがって、他のパートのデータ、つまりトラック3以降のデータは、本実施の形態では必須のものではなく、含まれていてもいなくてもよいので、一点鎖線で示されている。音域情報は、そのトラックに含まれるノートイベントの音域、つまり、そのトラックに含まれるすべてのノートイベントの最低音高から最大音高までの音域を示す情報である。
なお、図示例のフォーマットは、あくまでも一例に過ぎず、自動演奏データには、音域情報の含まれていないものや、1つのトラックに、パート情報(たとえば、SMF(standard MIDI file)形式の自動演奏データの場合には、MIDIチャンネル)を付加したノートイベント(+タイミング)を再生順に並べたものもある。前者の自動演奏データを使用する場合には、各トラックに含まれるすべてのノートイベントの音高を前記CPU5に解析させて、トラック毎の音域を求めるようにすればよい。また、後者の自動演奏データを使用する場合には、CPU5にパート毎の自動演奏データを生成させ、パート毎にそのパートに含まれるすべてのノートイベントの音高を解析させて、パート毎の音域を求めるようにすればよい。また、ノートイベント以外のイベントデータを自動演奏データ内に含ませてもよいことは、言うまでもない。
自動演奏データは、本実施の形態の電子鍵盤楽器(のROM6や記憶装置9)に予め内蔵されているものでもよいし、着脱可能な記憶媒体から供給されるものでもよいし、前記通信I/F10経由で外部装置(たとえば、インターネット上の音楽コンテンツ配信サーバ)から供給されるものでもよい。
また、自動演奏データは、1曲分の楽曲に対応したものでもよいし、楽曲のうちの一部のフレーズに対応したものであってもよい。あるいは、楽曲とは関係のない、練習用のフレーズに対応したものであってもよい。
以上のように構成された電子鍵盤楽器が実行する制御処理を、まず図3〜図5を参照してその概要を説明し、次に図6を参照して詳細に説明する。
本実施の形態の電子鍵盤楽器には、動作モードとして、通常モードと連弾モードが設けられ、連弾モードには、ソングモードと非ソングモードが設けられている。ここで、ソングモードとは、ユーザが選択した自動演奏データを何らかの目的のため(単純に聴くため、演奏ガイドのため、一致判定のため、楽譜表示のためなど)に再生するモードである。そして、連弾モード&(かつ)ソングモードが選択されると、CPU5は、第1〜第3の鍵域分割・音域設定モードのうち、選択されているモードに応じて、次のようにして、鍵盤の全鍵域を所定の鍵域分割位置で左右鍵域に分割するとともに、左右鍵域にそれぞれ所定の音域を設定する。
(M1)第1の鍵域分割・音域設定モード:予め定められた鍵域分割位置(本実施の形態では、鍵盤の中央位置)で左右鍵域に分割するとともに、現在選択中の自動演奏データの音域が低音域、中音域および高音域のうちのいずれに該当するかに応じて、その音域に対応する音域を左右鍵域のそれぞれに設定する(図3)
(M2)第2の鍵域分割・音域設定モード:予め定められた鍵域分割位置(本実施の形態では、鍵盤の中央位置)で左右鍵域に分割するとともに、現在選択中の自動演奏データの左手パートの音域を左鍵域に、右手パートの音域を右鍵域に設定する(図4)
(M3)第3の鍵域分割・音域設定モード:現在選択中の自動演奏データの音域が右鍵域にすべて含まれるように鍵域分割位置を決定するとともに、その自動演奏データの音域を右鍵域の音域に設定し、左鍵域の音域を所定のルールで決定して設定する(図5)。
そして、鍵域分割位置と左右鍵域の設定音域をユーザに知らせるために、CPU5は、鍵域分割位置の鍵の近傍に設けられたLEDを赤色に発光させ、左右鍵域のそれぞれの中央ドの位置の鍵の近傍に設けられたLEDを緑色に発光させるようにしている。なお、図3〜図5では、赤色の発光を黒四角形“■”で表現し、緑色の発光を黒丸“●”で表現している。これは、図面に色付けすることができないからである。したがって、鍵毎に設けられたLEDを上から見た形状はすべて円形であり、四角形のものはない。
このように、本実施の形態の電子鍵盤楽器では、連弾演奏をする状況に応じて各鍵域の音域や鍵盤分割位置を適切に自動設定することが可能となる。
次に、この制御処理を詳細に説明する。
図6は、本実施の形態の電子鍵盤楽器、特にCPU5が実行する制御処理の手順を示すフローチャートである。
本制御処理は、主として、
(1)通常モードでの演奏処理(ステップS2)
(2)基本連弾状態設定処理(ステップS3)
(3)基本連弾状態での演奏処理(ステップS5)
(4)基本連弾状態変更処理(ステップS6〜S10)
によって構成されている。
本実施の形態の電子鍵盤楽器では、デフォルトの動作モードは通常モードなので、ユーザが積極的に動作モードを変更しない限り、動作モードは通常モードを継続する。このときCPU5は、前記(1)の通常モードでの演奏処理を繰り返す(ステップS1→S2→リターン→S1)。この(1)通常モードでの演奏処理では、ユーザが鍵盤を押鍵するとCPU5は、前記検出回路3からその押鍵状態を取得し、取得した押鍵状態に応じたノートオンイベントを生成して前記音源・効果回路11へ供給する。ここで、生成されるノートオンイベントは、通常の押鍵操作に応じたもの、つまり、押鍵操作された鍵に元々割り当てられている音高の楽音を発音させるものである。音源・効果回路11は、供給されたノートオンイベントに応じた楽音信号を生成するための楽音パラメータを、対応するレジスタに設定する。そして音源・効果回路11は、所定のタイミングで、設定された楽音パラメータに基づく楽音信号を生成して、前記サウンドシステム12へ供給する。サウンドシステム12は、供給された楽音信号に応じた音響を生成して出力する。
ユーザが、たとえば前記設定操作子2に含まれる動作モード切替スイッチ(図示せず)を用いて、動作モードを通常モードから連弾モードに切り替えると、CPU5は、処理を前記(2)の基本連弾状態設定処理に進める(ステップS1→S3)。この(2)基本連弾状態設定処理では、まずCPU5は、予め定められた鍵域分割位置(本実施の形態では、鍵盤の中央位置)で左右鍵域に分割し、左右鍵域を略同一音域に設定し、左右鍵域に同一音色を割り当て、前記3つのペダルのうちの左右ペダルをそれぞれ左右鍵域のダンパ・ペダルに設定する。このような設定状態を、以下「基本連弾状態」という。基本連弾状態は、前記RAM7の所定位置に確保された基本連弾状態格納領域(図示せず)に格納されるとともに、音源・効果回路11にも供給される。音源・効果回路11は、供給された基本連弾状態に含まれる各設定情報(鍵域分割位置、左右鍵域に設定された各音域、左右鍵域に割り当てられた音色、左右ペダルに設定された機能)を対応するレジスタに設定する。
次にCPU5は、鍵域分割位置の鍵の近傍に設けられたLEDを赤色に発光させ、左右鍵域のそれぞれの中央ドの位置の鍵の近傍に設けられたLEDを緑色に発光させる。
たとえば、左鍵域の各鍵に元々割り当てられている各音高を一様に2オクターブ(Oct)だけ上(増加方向)にシフトさせ、右鍵域の各鍵に元々割り当てられている各音高を一様に2オクターブ(Oct)だけ下(減少方向)にシフトさせることにより、左右鍵域に各音域を設定した場合、この(2)基本連弾状態設定処理を施した後の鍵盤の状態は、図3(b)に示す状態になる。ただし、図3(b)は、実際には、連弾モード&ソングモードが選択されたときに、第1の鍵域分割・音域設定モードが選択されている場合の鍵盤の状態の一例を示すものであり、この(2)基本連弾状態設定処理が実行された場合の鍵盤の状態を示すものではない。
なお、左右鍵域の各音域は、上記場合では完全に一致するように設定したが、これに限られる訳ではなく、前記従来の電子鍵盤楽器で説明したように、左右鍵域で多少のずれを生じさせるようにしてもよい。前記「略同一」とは、この意である。また、本実施の形態では、鍵盤として、音高が“A0”から“C8”までの88鍵のものを使用し、「予め定められた鍵域分割位置」として、“F4”の位置を採用し、88鍵を“F4”以上(右鍵域)と“E4”以下(左鍵域)で44鍵ずつに分割するようにしている。もちろん、鍵域分割位置はこれに限られる訳ではなく、各鍵域で略同数の鍵になればよく、ただ、88鍵の鍵盤の場合には、“A0”〜“C4”,“A4”〜“C8”を含む音域を各鍵域で確保できるような位置が好ましい。
連弾モードに切り替えられた後、ユーザがさらなるモード設定を行わないとき(連弾モード&非ソングモードの選択時)には、CPU5は、処理を前記(3)の基本連弾状態での演奏処理に進めた後、この(3)基本連弾状態での演奏処理を繰り返す(ステップS4→S5→リターン→S1→(S3→)S4)。なお、図6のフローチャートでは、この(3)基本連弾状態での演奏処理が実行されるときには常に、前記(2)基本連弾状態設定処理が実行されるようになっている。しかし(2)基本連弾状態設定処理は、通常モードから連弾モードに切り替えられたときに1度だけ実行されればよいので、その後は(2)基本連弾状態設定処理を迂回して、ステップS1からステップS4に進むようにすればよい。
この(3)基本連弾状態での演奏処理では、CPU5は、左鍵域に対する押鍵がなされたときには、その押鍵に応じたノートオンイベントを生成して音源・効果回路11の左パートに供給し、さらに、左ペダルが操作されたときには、その操作に応じた操作イベントを生成して音源・効果回路11の左パートに供給する一方、右鍵域に対する押鍵がなされたときには、その押鍵に応じたノートオンイベントを生成して音源・効果回路11の右パートに供給し、さらに、右ペダルが操作されたときには、その操作に応じた操作イベントを生成して音源・効果回路11の右パートに供給する。ここで、「ノートオンイベントを生成して音源・効果回路11の左パートに供給する」とは、左パートを示す情報を付与したノートオンイベントを音源・効果回路11に供給することであり、「ノートオンイベントを生成して音源・効果回路11の右パートに供給する」とは、右パートを示す情報を付与したノートオンイベントを音源・効果回路11に供給することである。そして、音源・効果回路11側で、供給されたノートオンイベントを解析し、左パートのものについては、そのノートオンイベントに含まれる音高情報を、左鍵域に設定されている音域に応じた音高に変換した後、その音高の楽音信号を生成するための楽音パラメータを、対応するレジスタに設定する一方、右パートのものについては、そのノートオンイベントに含まれる音高情報を、右鍵域に設定されている音域に応じた音高に変換した後、その音高の楽音信号を生成するための楽音パラメータを、対応するレジスタに設定する。また、「操作イベントを生成して音源・効果回路11の左パートに供給する」とは、左パートを示す情報を付与した操作イベントを音源・効果回路11に供給することであり、「操作イベントを生成して音源・効果回路11の右パートに供給する」とは、右パートを示す情報を付与した操作イベントを音源・効果回路11に供給することである。そして、音源・効果回路11側で、供給された操作イベントを解析し、左パートのものについては、左鍵域のノートオンイベントに基づいて生成される楽音信号にダンパ効果を付与するための楽音パラメータを、対応するレジスタに設定する一方、右パートのものについては、右鍵域のノートオンイベントに基づいて生成される楽音信号にダンパ効果を付与するための楽音パラメータを、対応するレジスタに設定する。このように、本実施の形態では、鍵域分割後の押鍵およびペダル操作に対する音高変換および効果変更を音源・効果回路11側で行うようにしたが、これに限らず、CPU5がノートオンイベントおよび操作イベントを生成する際に行うように、つまり、CPU5が音高変換および効果変更した後のノートオンイベントおよび操作イベントを生成するようにしてもよい。
次にユーザが、連弾モードが選択されている状態で、さらにソングモードを選択すると、CPU5は、処理を前記(4)基本連弾状態変更処理に進める(ステップS4→S6)。この(4)基本連弾状態変更処理では、まずCPU5は、ユーザによって選択された自動演奏データをその記憶場所から取得して、前記RAM7の所定位置に確保された自動演奏データ格納領域(図示せず)に格納する(ステップS6)。次にCPU5は、自動演奏データ格納領域内の自動演奏データの音域を検出する(ステップS7)。自動演奏データは、本実施の形態では、トラック毎の音域情報を持っているので、ステップS7の処理では、CPU5は、自動演奏データの各トラックの音域情報を読み出して、RAM7の所定位置に確保された音域情報格納領域(図示せず)に格納する。なお、トラック毎の音域情報を持っていない自動演奏データが選択されたときには、CPU5は、各トラックに含まれるすべてのノートイベントの音高を1つずつチェックして行くことで、トラック毎の音域を検出し、トラック毎の音域情報として音域情報格納領域に格納する。さらに、複数パートのノートイベントが1つのトラックに混在する自動演奏データが選択されたときには、CPU5は、前述のように、パート毎のノートイベントを生成した後、トラック毎の音域情報を持っていない自動演奏データの音域を検出する上記処理と同様の処理により、パート毎の音域を検出し、パート毎の音域情報として音域情報格納領域に格納する。
次にCPU5は、左右鍵域の演奏パートを設定する(ステップS8)。演奏パートには、本実施の形態では、共通パートと左右別パートの2種類が設けられている。そして、「共通パートを設定」とは、左鍵域にも右鍵域にも共通のパート、つまり左手パートおよび右手パートの両方を設定することを意味し、「左右別パートを設定」とは、左鍵域には左手パートを、右鍵域には右手パートを設定することを意味する。なお、「共通パート」または「左右別パート」のいずれを設定するかは、前記(M1)〜(M3)のモードのうち、選択中のモードによって一意的に決定される。具体的には、(M1)または(M3)のいずれかのモードが選択されているときには、「共通パート」が設定され、(M2)のモードが選択されているときには、「左右別パート」が設定される。
次にCPU5は、前記ステップS7で検出した音域と前記ステップS8で設定した演奏パートに応じて、鍵域分割位置および/または各鍵域における音域を設定した後、鍵域分割位置の鍵の近傍に設けられたLEDを赤色に発光させ、左右鍵域のそれぞれの中央ドの位置の鍵の近傍に設けられたLEDを緑色に発光させる(ステップS9)。ここで、鍵域分割位置および/または各鍵域における音域の設定も、(M1)〜(M3)のモードのうち、選択中のモードによって一意的になされる。
具体的には、(M1)のモードが選択されているときには、CPU5は、鍵域分割位置を予め定められた位置(本実施の形態では、鍵盤の中央位置)に設定するとともに、前記音域情報格納領域に格納された音域情報によって示される音域が低音域、中音域または高音域のいずれに属するかを判別し、左右鍵域の各音域をその判別結果に応じた音域に設定する。なお、音域情報は、前述のように、トラック毎に検出されるので、音域がどの音域に属するかの上記判別は、すべてのトラック(本実施の形態では、2トラック)の音域情報をチェックして行う必要があることは言うまでもない。このようにして、左右鍵域の各音域は、音高情報の音域が中音域の場合には中音域に設定され(図3(b)参照)、音高情報の音域が高音域の場合には高音域に設定され(図3(c)参照)、音高情報の音域が低音域の場合には低音域に設定される(図3(d)参照)。ここで、図3(a)に示すように、低音域とは、“C2”〜“C5”を、中音域とは、“C3”〜“C6”を、高音域とは、“C4”〜“C7”を主として含む音域を言う。
一方、(M2)のモードが選択されているときには、CPU5は、鍵域分割位置を予め定められた位置(本実施の形態では、鍵盤の中央位置)に設定するとともに、音域情報格納領域に格納された音域情報のうち、トラック1(右手パート)についての音域情報によって示される音域が低音域、中音域または高音域のいずれに属するかを判別し、右鍵域の音域をその判別結果に応じた音域に設定し、トラック2(左手パート)についての音域情報によって示される音域が低音域、中音域または高音域のいずれに属するかを判別し、左鍵域の音域をその判別結果に応じた音域に設定する。図4の例では、自動演奏データの左手パートの音域は“F2”〜“F4”であり、右手パートの音域は“C4”〜“E6”であるので、左鍵域は、左手パートの音域が含まれる音域、つまり左鍵域の各鍵に元々割り当てられている各音高を一様に1オクターブだけ上にシフトさせた音域に設定され、右鍵域は、右手パートの音域が含まれる音域、つまり右鍵域の各鍵に元々割り当てられている各音高を一様に1オクターブだけ下にシフトさせた音域に設定される。
さらに、(M3)のモードが選択されているときには、CPU5は、音域情報格納領域に格納された音域情報によって示される音域(に相当する鍵数)を含む鍵域を決定し、その鍵域が右鍵域になるように鍵域分割位置を設定し、その音域情報の音域を右鍵域に設定する一方、左鍵域には、その鍵域の幅と音域情報の音域とを比較して最適な音域を決定し、その音域を設定する。図5の例では、自動演奏データの音域は“F2”〜“G6”であるので、鍵域分割位置は“F3”に設定されるとともに、右鍵域は、この音域“F2”〜“G6”が含まれる音域、つまり右鍵域の各鍵に元々割り当てられている各音高を一様に1オクターブだけ下にシフトさせた音域に設定され、左鍵域は、左鍵域の各鍵に元々割り当てられている各音高を一様に2オクターブだけ下にシフトさせた音域に設定される。なお、本実施の形態では、優先鍵域、つまり、選択された自動演奏データの音域が広く、左右鍵域を略均等に分割すると、どちらの鍵域でも当該自動演奏データの音域をカバーできなくなる虞がある場合に、全音域が優先的に割り当てられる鍵域として、右鍵域を採用したが、これは、右鍵域を生徒が演奏することが多いからである。したがって、左鍵域を生徒が演奏することがある場合には、優先鍵域を右鍵域にするか左鍵域にするか設定できるようにした方が好ましい。優先鍵域でない鍵域、つまり、当該自動演奏データの音域をカバーできない鍵域を先生が演奏することで、優先鍵域を演奏する生徒に教習する場合には、先生は、オクターブを読み替えて(たとえば、本来は“C6”の音高の音を“C5”で)演奏したり、設定操作子2に含まれる所定の操作子を必要に応じて操作することで、現在設定されているオクターブを適宜設定し直しながら演奏するようにする。
このようにして基本連弾状態が変更されると、変更後の基本連弾状態が前記基本連弾状態格納領域に書き込まれるとともに、音源・効果回路11に供給される。これに応じて、基本連弾状態格納領域の内容は更新され、音源・効果回路11内の対応するレジスタの内容も更新される。
次にCPU5は、ソング再生処理と、設定変更後の連弾状態での演奏処理を行う(ステップS10)。ここで、ソング再生処理には、選択されている自動演奏データを単純に再生する再生処理、自動演奏データに基づいた演奏ガイド処理、再生処理または演奏ガイド処理に応じた演奏と、これに合わせてユーザが鍵盤を用いて行った演奏との一致判定を行う一致判定処理、自動演奏データに基づいた楽譜表示処理などが含まれる。なお、設定変更後の連弾状態での演奏処理は、前記(3)基本連弾状態での演奏処理と同様である。その理由は、演奏処理では、ノートイベントおよび操作イベントを生成して音源・効果回路11に供給する処理を行うのみであり(このため、両演奏処理間で処理手順に差がない)、楽音パラメータを音源・効果回路11の各レジスタに設定する処理はすべて、音源・効果回路11側に委ねるようにしたからである。
なお、前記(4)基本連弾状態変更処理内には、前記(M1)〜(M3)のモードを切り替える処理が記載されていないので、そのモード切り替えは必然的に、図示しない別の場所で行われることになっていたが、これに限らず、この(4)基本連弾状態変更処理内で、そのモード切り替えを行えるようにしてもよい。また、(M3)のモードを選択するかどうかは、選択された自動演奏データの音域に依存するので、つまり、音域が極めて広い自動演奏データが選択された場合に、(M3)のモードを選択する意義があるので、音域が極めて広い自動演奏データが選択されたときには、他の(M1)および(M2)のモードより、この(M3)のモードが優先的に選択されるようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、前記図6のステップS8の処理によって、各鍵域の演奏パートを設定するようにしたが、これに限らず、電子鍵盤楽器毎に固定的に、共通あるいは左右別が決まっていてもよい。また、演奏パートの左右別設定は、本実施の形態では、ソングモードが選択されているときに行うようにしたが、これに限らず、ソングモードが選択されていない連弾モードのときにも行えるようにしてもよい。その場合、基本連弾状態から、左右いずれか、または双方の音域を変更する。
なお、本実施の形態では、説明を簡単化するために、最初に連弾モードか否かを設定し、その後ソングモードか否かを設定するとともに、その後、モードの変更ができない例を示したが、当然のことながら、連弾モードの設定とソングモードの設定の順序は逆でもよいし、各モードにおいて任意にモード変更ができるようにしてもよい。
また、ソングモードにおいては、鍵域分割位置および/または各鍵域における音域を自動的に設定するようにしたが、自動的に設定するか否かをユーザが設定できるようにしてもよい。また、自動設定する際に、「自動設定しますがいいですか?」などの確認メッセージを表示するようにしてもよい。また、鍵域分割位置のみ自動設定するようにしてもよいし、音域のみ自動設定するようにしてもよい。さらに自動設定後に、マニュアル操作により設定変更可能に構成してもよい。
また、ソングモードにおいて、自動演奏データの選択し直しができるようにしてもよいことは言うまでもない。
さらに、本実施の形態では、鍵盤の全鍵域を2つの部分鍵域(左右鍵域)に分割するようにしたが、分割数は“2”に限られる訳ではなく、“3”以上であってもよい。
なお、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードおよび該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、たとえば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、通信ネットワークを介してサーバコンピュータからプログラムコードが供給されるようにしてもよい。
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
1…演奏操作子(鍵盤),2…設定操作子(第1の設定手段、第2の設定手段),5…CPU(第1の設定手段、第2の設定手段、決定手段、制御手段、分割位置表示手段、中央ド表示手段),8…表示装置(分割位置表示手段、中央ド表示手段)