以下図面を用いて本発明を実施するための最良の形態についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
図1及び図7に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
図1は本発明により作製した太陽電池の好ましい層構成の一例を表す図である。図1において101は基板、102は反射層、103は反射増加層、104はn又はp型層、105はn/i又はp/iバッファ層である。106はi型層、107はp/i又はn/iバッファ層、108はp又はn型層、109はn又はp型層、110はn/i又はp/iバッファ層、111はi型層、112はp/i又はn/iバッファ層である。113はp又はn型層、114は透明電極、115は集電電極である。ここで、反射層102及び反射増加層103からなる116は裏面反射層である。またn又はp型層104、n/i又はp/iバッファ層105、i型層106、p/i又はn/iバッファ層107、p又はn型層108からなる117は第一の光起電力素子である。同様にn又はp型層109、n/i又はp/iバッファ層110、i型層111、p/i又はn/iバッファ層112、p又はn型層113からなる118は第二の光起電力素子である。
本発明は上記i型層の少なくとも1つを本発明の方法で作製した微結晶シリコンを含むi型層により構成することでプラズマ状態の変化を少なくし、長時間安定なプラズマ状態を維持することができる。
またプラズマCVD法により移動する基板上に微結晶シリコンを含む堆積膜を形成する方法において、特性均一性に優れた堆積膜を長時間安定に形成することができる。
さらに微結晶シリコンを含む堆積膜の特性及び均一性を向上させ、光起電力素子とした場合の素子特性を向上させることができる。
また本発明は上記i型層の少なくとも1つを本発明の方法で作製した微結晶シリコンを含むi型層により構成することで本発明の効果を得ることができる。即ち、長時間の光照射によっても特性が低下しない又は特性の低下が小さい光起電力素子を得ることができる。
図7は本発明の静止状態の基板上(以後静止基板と記す)に300nm以上の膜厚の堆積膜を形成した際の堆積膜表面の状態を示す図である。
図7において、701はアモルファスシリコンからなる領域、702は微結晶シリコンからなる領域、703は境界領域である。このように堆積膜形成条件や装置構成にもよるが、プラズマ状態が局所的に異なる場合には基板上に晶系の異なる(アモルファスと微結晶)領域を有する堆積膜が形成される。図7から明らかなようにこれらの領域は色彩も異なる。
ここで本発明において微結晶シリコンからなる領域の面積とは図7における微結晶シリコンからなる領域702の面積である。そして、全体の面積とは図7における微結晶シリコンからなる領域702の面積とアモルファスシリコンからなる領域701の面積の合計である。
本発明者らの知見によれば、例えばロール・ツー・ロール型のプラズマCVD方法等のように移動する基板上に堆積膜を形成させた場合、前述したように経時的にプラズマ状態が変化し、分布が生じる。しかし、プラズマの状態が変化しても、堆積膜は移動する基板上に形成されるため、形成された堆積膜の表面状態からはプラズマ状態が不均一であることの判別が困難となる。即ち基板の特定の位置に着目すると、その位置は基板の移動によって微結晶シリコンからなる領域もアモルファスシリコンからなる領域も通過することとなる。この場合、当該基板上に形成された堆積膜は、層厚方向に微結晶シリコンからなる領域で形成された堆積膜と、アモルファスシリコンからなる領域で形成された堆積膜とが層状に形成されることとなる。しかし、この場合の堆積膜は、基板の搬送速度及び前記各領域のプラズマ状態によっては前記各領域を通過時に形成される層厚は薄いものとなり、層厚方向には必ずしも明確な界面が形成されるわけではない。このような場合、アモルファスと微結晶が混在するか、または先に堆積した堆積膜の晶系の影響を一定の割合で後に堆積した堆積膜が受けることとなる。即ち、先の堆積膜の晶系を、後の堆積膜が一定の割合で引き継ぐ。その結果、基板の移動方向(基板の長手方向)においては前述のような色彩が大きく異なる領域は形成されない。
即ち、基板を移動させながら堆積膜を形成した場合、見かけ上堆積膜はある程度均一(少なくとも色彩のムラは顕在化しない)ものとなる。
一般に堆積膜形成工程において、高周波電力、圧力、基板温度、ガス流量等の堆積膜形成条件の各パラメータを適宜制御しながら堆積膜形成を行う。しかし前述の理由により移動する基板上に堆積膜を形成させた場合、微結晶シリコンからなる領域と、アモルファスシリコンからなる領域は見かけ上判別できない。このため、上記パラメータの調整は、微結晶シリコンからなる領域と、アモルファスシリコンからなる領域の存在する比率に対して直接制御することはできない。
さらに、堆積膜形成時間が長くなると、図7に示したようなアモルファスシリコンからなる領域と微結晶シリコンからなる領域の面積の比率が変化する。具体的には微結晶シリコンからなる領域の面積に対するアモルファスシリコンからなる領域の面積の比率が大きくなる。
これは経時的に高周波電極表面に堆積する膜厚が厚くなり、電極上に一種の抵抗体が形成されること、及び電極間距離が膜厚分小さくなることによりプラズマ状態が局所的に変化することが主要因と考えられる。
さらに堆積膜形成室の内壁や排気口内壁等への堆積膜の成長や、ポリシラン等の副生成物等の付着により排気コンダクタンスが変化することも、プラズマ状態の変化の一因となっているものと考えられる。
このような状態で堆積膜の形成を行うと、プラズマ空間中のパワー密度、電子、イオン、ラジカル等の分布、さらにプラズマ空間に印加されたバイアスのかかり方が変化する。このため、時間の経過とともにバイアス電流が流れにくくなり、プラズマ空間中のイオンがバイアス電圧によって拘束されず、基板に衝突する確率が大きくなる。これによって堆積膜の構造が乱れ、局所的に微結晶からアモルファスに晶系が変化するものと考えられる。そしてアモルファスシリコンからなる領域の面積の比率がある程度以上大きくなると、設計通りの素子特性が得られなくなるものと考えられる。
本発明者らはこの関係に着目し、基板を移動させながら堆積した堆積膜だけではなく、基板を静止させて堆積膜を形成した堆積膜の状況を観察した。そして、静止基板上に堆積させた堆積膜の微結晶シリコンからなる領域の面積を全体の面積に対して所定の範囲内になるように堆積膜形成条件を制御することで前述の課題を解決するものである。この結果、長時間安定に堆積膜を形成することを可能にするものである。即ち、微結晶シリコンからなる領域の比率に基づいて直接的に堆積膜形成条件を最適範囲に制御するものである。
ここで本発明における微結晶シリコンからなる堆積膜とは、非単結晶シリコンからなる堆積膜中に一定の割合以上微結晶シリコンを含む堆積膜であり、部分的にアモルファスシリコンを含む堆積膜も含む。具体的にはラマン分光法で見た場合の結晶成分に起因するラマン散乱強度(典型的な例として520cm−1付近)が以下の関係を満たすものである。即ち、アモルファスに起因するラマン散乱強度(典型的な例として480cm−1付近)の1倍以上の堆積膜をいう。好ましくは当該強度比が3倍以上、より好ましくは5倍以上、最適には7倍以上である堆積膜をいう。
本発明の積層型光起電力素子の微結晶半導体に適する平均結晶粒径は、10nm〜500nmが適した範囲として挙げられる。そして、微結晶半導体のi型層が、柱状構造を有していることが好ましい。
また本発明において実質的にアモルファスシリコンからなる堆積膜とは、非単結晶シリコンからなる堆積膜中に実質的に結晶質シリコンを含まない堆積膜であり、部分的に結晶質シリコンを含む堆積膜も含む。具体的には堆積膜のアモルファス成分に起因するラマン散乱強度に対する結晶質の結晶成分に起因するラマン散乱強度との比が1倍よりも小さいものをいう。
本発明において、静止基板上に堆積した堆積膜の微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域との判別は以下の方法が好ましい。また微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率を求める方法としては、以下の方法が好ましい。
静止基板上に堆積した堆積膜の微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域との判別については、静止基板上に堆積した堆積膜をサンプルとして切り出す。そして、基板上の複数個所をラマン分光法により分析し、ラマン散乱強度を求めることによって判別することが可能である。
そして、生産工程では前記比率が所定の範囲になるように成膜条件を制御することで対応できる。このように成膜条件を制御することにより、長時間堆積膜の形成を行った場合でも堆積膜の晶系の分布、或いは堆積膜の膜質を維持することができる。
また上記のようにサンプルとして切り出すことにより堆積膜形成工程のタクトタイムを長くしてしまう場合には、次のような方法により判別することが好ましい。
微結晶シリコンとアモルファスシリコンとは光学的バンドギャップ及び堆積膜の表面性等が異なる。そのため、基板上に堆積された堆積膜の膜厚がある程度の膜厚以上になると、堆積膜表面の色彩又は反射率が、微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域とで異なる。(図7参照)従って堆積膜表面の色彩又は反射率の差異に着目すれば、微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域とを判別することが可能になる。そこで堆積膜形成工程(第1の堆積膜形成工程)の前に、基板を静止(搬送停止)させた状態で堆積膜を形成する(第3の堆積膜形成工程)。そして、基板を静止させた状態で形成した堆積膜の状況を観察し、上記色彩又は反射率の違いから微結晶シリコンの比率を求める。そして、生産工程では前記色彩が一定の範囲になる(微結晶シリコンの比率が一定の範囲になる)ように成膜条件を制御(調整)することで対応できる。
また、堆積膜形成開始後に本発明を実施する場合には、堆積膜形成工程(第1の堆積膜形成工程)の後に、基板の移動(搬送)を一時的に静止(搬送停止)して、静止状態で堆積膜を形成する(第3の堆積膜形成工程)。そして、静止状態で形成した堆積膜の状況を観察し、上記色彩又は反射率の違いから微結晶シリコンの比率を求める。次いで前記色彩が一定の範囲になる(微結晶シリコンの比率が一定の範囲になる)ように成膜条件を制御(調整して)基板の移動を伴う堆積膜の形成を再開する(第2の堆積膜形成工程)ことで対応できる。上記のように第3の堆積膜形成工程は、基板の移動を伴う堆積膜形成工程の前に行っても良いし、堆積膜形成工程の途中に行っても良いし、その両方を行っても良い。一方、堆積膜形成時間が比較的短く、堆積膜形成中の堆積膜の変化が少ない場合には、成膜工程の途中で第3の堆積膜形成工程を行う必要はない。この場合は第3の成膜工程の後は、最後まで第1の成膜工程のままで良く、前記第2の成膜工程は不要となる。即ち、本発明の第2の成膜工程とは、成膜工程の途中で、本発明の前記第3の成膜工程(基板静止状態での堆積膜の形成)を行った場合に、その前の成膜工程と、その後に再開した成膜工程とを便宜的に分けて説明するものである。
このように成膜条件を制御することにより、長時間堆積膜の形成を行った場合でも堆積膜の晶系の分布、或いは堆積膜の膜質を維持することができる。
本発明における色彩とは、堆積膜表面の色の色相、明度、彩度の少なくとも1つを意味する。そして色相、明度、彩度の少なくとも1つに基づいて、微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域とを判別することができる。
また同様に堆積膜表面の反射率の違いに基づいて微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域とを判別することができる。
本発明において色彩に基づいて微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域とを判別する方法としては、目視による判別の他、色彩計、分光測色計等を用いることも有効である。
ここで上記微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域との判別についてさらに説明する。本発明者らの知見によれば、微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域とは、図7に示すように堆積した膜厚にもよるが境界では色彩が大きく変化する。これは、(1)吸収する光の波長領域が異なること、(2)境界は比較的急峻に変化すること等の理由によると考えられる。このため、300nm程度以上の膜厚があれば、静止基板上に堆積した堆積膜の微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域とは目視によっても十分判別可能である。そこで予め微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域のラマン散乱強度比との相関を求めておく。そして、数値基準又は色見本等を作成し、判断基準を明確にする。このようにすることで、目視により微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域との面積の比率を求め、堆積膜の特性を一定の範囲に制御することができる。
また、堆積膜の特性をさらに厳密に制御する場合には、堆積膜の色彩の違いを色彩計、分光測色計等を用いて厳密に面積の比率を求めることによって制御することができる。
また反射率に基づいて微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域とを判別する方法としては、目視による判別の他、分光測色計、分光反射計等を用いることも有効である。
また予め堆積膜表面の色彩又は反射率と、ラマン散乱強度との相関を求めておけば、さらに厳密な判別を行うことも可能である。
微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率を求める方法としては、静止基板上に堆積させた堆積膜の色彩又は反射率を観察又は測定する。また、所望の結晶性を有する微結晶シリコンを含む堆積膜と、アモルファスシリコンからなる堆積膜の各々のラマン散乱強度との関係を予め求めておく。そしてこれらの関係から静止基板上に堆積させた堆積膜の色彩又は反射率の異なる領域の比率を求め微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率を算出することができる。
例えば堆積膜の結晶成分に起因するラマン散乱強度がアモルファス成分に起因するラマン散乱強度の7倍以上の場合の色彩又は反射率との相関を求めておく。このようにすることで、当該条件を満たす微結晶シリコンからなる領域の面積及び全体の面積に対する面積比率を求めることができる。
本発明において微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率は好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、最適には80%以上である。
本発明において静止基板上に堆積させた堆積膜表面を観察する位置としては、各成膜室間の通路、又は基板を巻き取位置に観察窓を設け、目視、色彩計、分光測色計、分光反射計等により直接観察する。或いはCCDカメラ、スキャナー等で一旦画像データとして読み取った後、目視、色彩計、分光測色計、分光反射計等により観察することが可能である。
また本発明において微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域との比率を観察するために静止基板上に堆積膜を形成する工程は、堆積膜形成工程の前後に設ける。例えばロール基板に第1の堆積膜形成工程(第1の堆積膜形成工程)後、ロール基板への第2の堆積膜形成工程(第2の堆積膜形成工程)の前に静止成膜(第3の堆積膜形成工程)を行うことが好ましい。
上記静止基板上に堆積膜を形成する工程(第3の堆積膜形成工程)は、堆積膜の形成を開始する前に予め行っても良い。また、基板の移動を伴う堆積膜形成(第1の堆積膜形成工程)を開始後、所定の時間経過後に、基板の搬送を一旦中断して静止基板上に堆積膜を形成(第3の堆積膜形成工程)しても良い。その後基板の搬送を開始して堆積膜の形成を再開する(第2の堆積膜形成工程)。さらに堆積膜形成工程の最後に静止基板上に堆積膜を形成(第3の堆積膜形成工程)しても良い。このように必要に応じて堆積膜の形成前、形成中、形成後にプラズマの状態の変化を確認することができる。
また、単結晶シリコン、或いは多結晶シリコン等のシート状ではない個々が独立した基板を用いる際には、複数の基板を一体的に保持するホルダにより保持して搬送することができる。この場合には本発明の微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域との比率を観察する方法としては、以下の方法がある。即ち、前記ホルダにダミーの基板を設置し、ダミー基板上に静止成膜を行い前述の方法と同様に観察することができる。また複数のダミー基板を使用する変わりに、ホルダ全体と同一の大きさの単一、又は一体型のダミー基板を使用することもできる。
本発明において、微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域の比率を確認するために静止基板上に堆積させる膜厚としては以下の範囲が好ましい。これは、薄すぎると、膜の晶系が安定せず(堆積初期はアモルファスと考えられる)、また堆積膜自体の光吸収量が小さく晶系による色彩等の差異が小さいからである。即ち、微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域との判別が困難となるからである。一方、厚すぎると、ダウンタイムの増大、膜剥がれの誘発等の問題が発生するため、最適な膜厚が存在する。本発明者らの知見によれば、静止基板上に堆積させる堆積膜の膜厚として、好ましくは300nm以上3μm以下、より好ましくは400nm以上2μm以下、最適には500nm以上1μm以下である。
本発明において晶系を制御する方法としては、堆積膜形成条件の中で、以下から選択される条件の少なくとも1つを制御することが有効である。即ち、高周波電力密度、電極間距離に対するバイアス電圧、電極面積に対するバイアス電流、原料ガス流量に対する高周波電力、原料ガス流量に対する希釈ガス流量の比率、基板温度、圧力、電極間距離である。そしてこれらのパラメータと堆積膜の晶系との相関を予め求めておくことにより、微結晶シリコンからなる領域とアモルファスシリコンからなる領域との比率一定の比率以内になるように制御することができる。
例えば、堆積膜形成時間の経過とともにバイアス電流が減少し、その結果微結晶シリコンからなる領域の面積が減少する場合には、バイアス電圧の設定値を大きくすることで対応可能である。また基板の変形等により基板の端部が天板から部分的に浮き上がり設定温度が変化することによって微結晶シリコンからなる領域の面積が減少する場合には、以下のように対応できる。即ち、基板温度の設定値または高周波電力密度等を制御することによって基板に寄与する全体の熱収支を制御することによって対応可能である。ここで上記天板とは、基板の裏面側から基板を支持し、かつ熱的、電気的に接触することにより温度制御等を行う機能を有する部材をいう。
本発明の積層型光起電力素子の微結晶半導体に適する平均結晶粒径は、10nm〜300nmが適した範囲として挙げられる。そして、微結晶半導体のi型層が、柱状晶構造を有していることが好ましい。
また本発明において実質的にアモルファスシリコンからなる堆積膜とは、非単結晶シリコンからなる堆積膜中に実質的に結晶質シリコンを含まない堆積膜であり、部分的に結晶質シリコンを含む堆積膜も含む。具体的には堆積膜のアモルファス成分に起因するラマン散乱強度に対する結晶質の結晶成分に起因するラマン散乱強度との比が1倍よりも小さいものをいう。
本発明においては堆積膜形成時の圧力は、100Pa以上2000Pa以下、好ましくは150Pa以上1800Pa以下、最適には300Pa以上1500Pa以下である。
また本発明において電極間距離とは、高周波電極と対向電極との距離であって、基板を対向電極として兼用させることも可能である。本発明において電極間距離は、好ましくは2mm以上50mm以下、より好ましくは3mm以上30mm以下、最適には5mm以上20mm以下である。
本発明において、光起電力素子の構成は図1で示したダブル構成に限られず、図2から図4に示した、トリプル構成、或いはシングル構成等必要に応じてより構成層の数を増減させることができる。
ここで図2において、201は基板、202は反射層、203は反射増加層、204はn又はp型層、205はn/i又はp/iバッファ層、206はi型層、207はp/i又はn/iバッファ層である。208はp又はn型層、209はn又はp型層、210はn/i又はp/iバッファ層、211はi型層、212はp/i又はn/iバッファ層、213はp又はn型層である。214はn又はp型層、215はn/i又はp/iバッファ層、216はi型層、217はp/i又はn/iバッファ層、218はp又はn型層、219は透明電極、220は集電電極である。ここで、反射層202及び反射増加層203からなる221は裏面反射層である。またn又はp型層204、n/i又はp/iバッファ層205、i型層206、p/i又はn/iバッファ層207、p又はn型層208からなる222は第一の光起電力素子である。またn又はp型層209、n/i又はp/iバッファ層210、i型層211、p/i又はn/iバッファ層212、p又はn型層213からなる223は第二の光起電力素子である。さらにn又はp型層214、n/i又はp/iバッファ層215、i型層216、p/i又はn/iバッファ層217、p又はn型層218からなる224は第三の光起電力素子である。
図3において、301は基板、302は反射層、303は反射増加層、304はn又はp型層、305はn/i又はp/iバッファ層、306はi型層、307はp/i又はn/iバッファ層である。308はp又はn型層、310は透明電極、311は集電電極である。ここで、反射層302及び反射増加層303からなる312は裏面反射層である。またn又はp型層304、n/i又はp/iバッファ層305、i型層306、p/i又はn/iバッファ層307、p又はn型層308からなる313は第一の光起電力素子である。
図4において、401は透光性基板、402は透明電極、403はp又はn型層、404はp/i又はn/iバッファ層、405はi型層、406はn/i又はp/iバッファ層である。407はn又はp型層、408はp又はn型層、409はp/i又はn/iバッファ層である。410はi型層、411はn/i又はp/iバッファ層、412はn又はp型層、413は反射増加層、414は裏面電極である。ここで、p又はn型層403、p/i又はn/iバッファ層404、i型層405、n/i又はp/iバッファ層406、n又はp型層407からなる415は第一の光起電力素子である。同様にp又はn型層408、p/i又はn/iバッファ層409、i型層410、n/i又はp/iバッファ層411、n又はp型層412からなる416は第二の光起電力素子である。反射増加層413及び裏面電極414からなる417は裏面反射層である。
図5は本発明を実施するための製造装置の一形態を表す図である。図5において501は基板、502はガスゲート、503は巻き出しボビン、504は巻き出し室、505は巻き取りボビン、506は巻き取り室、507はn型層成膜室、508はi型層成膜室である。509はp型層成膜室、510はプレヒータ、511は温度制御ユニット、512はカソード(高周波電極)である。
また図6はi型層成膜室の拡大図である。図6において、601はi型層成膜室、602は基板、603はガスゲート、604は第1の真空容器、605はゲートガス導入管、606は排気口である。607はマグローラー、608はランプヒーター、609は温度制御ユニット、610は冷却手段、611は加熱手段、612はマグネット、613は開口調整板である。614は第2の真空容器(放電空間)、615はシャワーカソード、616は中間板、617は原料ガス導入管、618はガイシ、619はフローティング板、620は誘電体板である。
次に図5及び図6を参照して本発明の堆積膜形成方法について説明する。ここで図5及び図6はロール・ツー・ロール方式の堆積膜形成装置であるが、本発明はロール・ツー・ロール方式に限定されることはない。バッチ式、枚葉式の堆積膜形成装置においても基板を移動させながら堆積膜を形成する装置には有効である。
また本発明において原料ガス、希釈ガス等のガス流量の単位について、『sccm』又は『slm』という単位を使用する。当該単位は各々『1cm3/min(normal)』又は『1000cm3/min(normal)』を意味する。
まず、不図示の反射層、反射増加層形成装置により、反射層及び反射増加層を形成したステンレス基板を巻き出し室504内の巻き出しボビン503から巻きだす。そしてガスゲート502、n型層成膜室507、i型層成膜室508、p型層成膜室509を連通して、巻き取り室506内の巻き取りボビン505にセットする。次いで巻き出し室504、巻き取り室506及び各成膜室507から509内を不図示の排気口から排気し、例えば1×10−4Pa以下の圧力とする。次にガスゲート502からゲートガス(例えば水素、ヘリウム等)を流す。各成膜室507から509には各々所望の原料ガスを、成膜室内に設けられた不図示のガス導入管から所望の流量導入する。同時に各成膜室507から509において、プレヒータ510、温度制御ユニット511により基板を所望の温度に加熱する。各成膜室内において、原料ガス流量、基板温度、圧力等が所定の条件に達したら、カソード512に対して不図示の高周波電源から高周波電力を印加し、プラズマを生起させる。これに伴い基板を巻き出し室504側から巻き取り室506側へ搬送することによって基板上に順次n型層、i型層、p型層を堆積することでpin構成を形成する。
次いで不図示の透明電極堆積用の蒸着器を用いて、p型層上に透明電極を所望の層厚に堆積する。また、同様にして、透明電極上に集電電極を堆積する。
ここで、各成膜室507から509内の成膜について図6を参照してi層成膜室を例示してより詳細に説明する。i型層成膜室601は、その両端にガスゲート603が連通して設けられる。ガスゲート603にはゲートガス導入管605が設けられており、ゲートガス導入管から水素、ヘリウム、不活性ガス等のゲートガスが導入される構造となっている。このゲートガスは隣接する他の成膜室とのガスの混合を抑制する機能を有する。i型層成膜室の内部は、第1の真空容器604の内部に、高周波プラズマを発生させる第2の真空容器614を有する2重の構成を有する。そして、第2の真空容器内部に高周波電極をとガス導入管とを兼ねたシャワーカソード615が配置される。シャワーカソード615にはマッチングボックスを介して高周波電源が接続される。第1の真空室604と第2の真空室614とは空間を仕切る壁によって空間の一部が分離されている。第2の真空容器614を構成する壁面のうち、基板602と対向する壁面には、開口調整板613が設けられる。そして第2の真空容器614内で発生させたプラズマが基板と接触する領域を制御可能な構成となっている。
一方、i型層成膜室601内の基板602は、i型層成膜室内部に設けられたマグローラー607及び温度制御ユニット609によって支持されている。温度制御ユニット609は内部に冷却手段610及び加熱手段611とを有し、また基板と接触する面側にマグネット612を設けることによって、温度制御ユニット609と基板602とが熱的及び電気的に接触する構造となる。そして、基板を支持しながら、基板の温度制御及び基板の電位制御(アース電位に制御)を行う。シャワーカソード615はカソード表面にガスを分散導入するための多数のガス放出孔を有し、シャワーカソード615内部にはガスの均一分散を行うためにガス通過孔を有する中間板616が設置される。これによりガス導入管617よりシャワーカソード615内部に導入された原料ガスは、中間板616で分散される。その後、シャワーカソード615の表面に設けられたガス放出孔を通って第2の真空容器(放電空間)614内に導入される。シャワーカソードの下部にはi型層成膜室601の外壁との間に、金属材料からなるフローティング板619と誘電体板620との積層構造を有する。これによりシャワーカソード615のインピーダンスの調整及びシャワーカソード615とi型層成膜室との間の空間で異常放電が発生することを抑制できる。この結果、高周波電力が効率良くシャワーカソード615に伝達される構造となっている。またシャワーカソード615の側面は、絶縁ガイシ618及び絶縁ガイシの外部を取り囲む導電性の壁面によってシールドされる構造となっている。また、シャワーカソード615及びガスゲート603よりi型層成膜室601内部に導入されたガスは排気口606から排気される構造となっている。
尚、上記説明ではn型層成膜室507、i型層成膜室508、p型層成膜室509各々1つのからなる構成により説明した。しかし、必要に応じて各成膜室の数を増減し、例えばダブル、トリプルといった所望の積層数を有する積層型光起電力素子を形成する装置構成とすることも可能である。さらに必要に応じて上記成膜室のほかにn/i又はp/iバッファ層成膜室を組み合わせることも可能である。
また、本発明の静止基板上に堆積させた堆積膜を観察する方法としては以下の方法が好ましい。即ち、図5において、ガスゲート502又は巻き取り室506に観察用の窓を設け、基板を移動させながら、又は基板を一旦停止させて、目視による観察、スキャナー、CCD等の検出装置による観察を行う。
次に、本発明の光起電力素子の各構成要素について詳細に説明する。
〈基板、反射層〉
本発明の光起電力素子に用いる基板としては、ステンレス鋼などの金属基板、特にフェライト系のステンレス鋼が適している。さらに単結晶シリコン或いは多結晶シリコンを基板として使用することができる。また、絶縁性基板では、ガラスやセラミックスなどが適している。
絶縁性基板の場合には、絶縁性基板上に金属や透明導電膜などを堆積して、絶縁性基板上を導電処理する必要がある。ガラスなどの透光性基板を使用して、基板上に透明導電膜を堆積して光起電力素子を形成した場合、光は半導体側に入射するのみならず、透光性基板側から入射することも可能である。
導電処理としては、Al、Ag、Cuなどの金属単体、またはそれらの合金を反射層として堆積することが挙げられる。反射層の厚さとしては、金属そのものの反射率が得られる厚さ以上の厚さに堆積することが必要である。
単結晶シリコン、或いは多結晶シリコン等のシート状ではない個々が独立した基板を用いる際には、複数の基板を一体的に保持するホルダにより保持して搬送することができる。
反射層の表面ができるだけ平坦であるように形成するには、比較的低い温度で数10nm〜300nmの厚さで形成することが好ましい。また、反射層の表面が凹凸であるように形成するには、300nmより厚く、数μ以下の厚さで形成することが好ましい。
〈反射増加層〉
また、半導体層で吸収される光量を多くするための反射増加層を上記の金属基板または反射層上に設けることが望ましい。反射増加層の層厚としては、100nm〜5000nmが最適な範囲として挙げられる。
反射増加層は、入射光及び反射光の乱反射を増大し、半導体層内での光路長を伸ばす役割を有する。また、反射層の元素が半導体層へ拡散あるいはマイグレーションを起こし、光起電力素子がシャントすることを防止する役割を有する。さらに、適度な抵抗をもつことにより、半導体層のピンホール等の欠陥によるショートを防止する役割を有する。さらに、反射増加層は、反射層と同様にその表面に凸凹を有していることが望ましい。反射増加層は、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム錫(ITO)等の導電性酸化物からなることが好ましく、蒸着、スパッタ、CVD、電析等の方法を用いて形成されることが好ましい。またこれらの形成方法を適宜組み合わせて行うこともできる。これらの導電性酸化物に導電率を変化させる物質を添加してもよい。反射増加層を形成する場合には、反射層と接する領域では、反射増加層の形成速度を小さくする方法が好ましいものである。また、反射層と接する領域では、形成雰囲気中に酸素を含有させることも好ましいものである。
スパッタ法によって反射層、反射増加層を形成する条件は、方法やガスの種類と流量、内圧、投入電力、成膜速度、基板温度等が大きく影響を及ぼす。例えばDCマグネトロンスパッタ法で、酸化亜鉛ターゲットを用いて酸化亜鉛膜を形成する場合には、ガスの種類としてはAr、Ne、Kr、Xe、Hg、O2などがあげられる。ガス流量は、装置の大きさと排気速度によって異なるが、例えば成膜空間の容積が20リットルの場合、1sccmから100sccmが望ましい。また成膜時の内圧は10mPaから10Paが望ましい。投入電力は、ターゲットの大きさにもよるが、直径15cmの場合、10Wから10kWが望ましい。また基板温度は、成膜速度によって好適な範囲が異なるが、1μm/hで成膜する場合は、70℃から450℃であることが望ましい。
また電析法によって酸化亜鉛膜を形成する条件は、耐腐食性容器内に、硝酸イオン、亜鉛イオンを含んだ水溶液を用いるのが好ましい。硝酸イオン、亜鉛イオンの濃度は、0.001mol/lから1.0mol/lの範囲にあるのが望ましい。0.01mol/lから0.5mol/lの範囲にあるのがより望ましい。0.1mol/lから0.25mol/lの範囲にあるのがさらに望ましい。硝酸イオン、亜鉛イオンの供給源としては特に限定するものではなく、両方のイオンの供給源である硝酸亜鉛でもよい。また、硝酸イオンの供給源である硝酸アンモニウムなどの水溶性の硝酸塩と、亜鉛イオンの供給源である硫酸亜鉛などの亜鉛塩の混合物であってもよい。さらに、これらの水溶液に、異常成長を抑制し、密着性を向上させるために、炭水化物を加えることも好ましいものである。炭水化物の種類は特に限定されるものではないが、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)などの単糖類、マルトース(麦芽糖)、サッカロース(ショ糖)などの二糖類を用いることができる。さらに、デキストリン、デンプンなどの多糖類などや、これらを混合したものを用いることができる。
また酸化亜鉛膜の結晶粒径、傾斜核等を制御するために、フタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、ナフタル酸あるいはこれらのエステルなどを適宜添加することができる。これらの多価カルボン酸の濃度は、0.5μmol/l〜500μmol/lとすることが好ましく、50μmol/l〜500μmol/lとすることがより好ましい。そして150μmol/l〜500μmol/lとすることがさらに好ましい。多価カルボン酸の濃度をこのように制御することにより、光閉じ込め効果に適したテクスチャー構造の酸化亜鉛膜を効率よく形成できる。
水溶液中の炭水化物の量は、炭水化物の種類にもよるが概ね、0.001g/lから300g/lの範囲にあるのが望ましく、0.005g/lから100g/lの範囲にあるのがより望ましい。そして0.01g/lから60g/lの範囲にあることがさらに望ましい。電析法により酸化亜鉛膜を堆積する場合には、前記の水溶液中に酸化亜鉛膜を堆積する基体を陰極にし、亜鉛、白金、炭素などを陽極とするのが好ましい。このとき負荷抵抗を通して流れる電流密度は、10mA/dmから10A/dmであることが好ましい。
〈p型層、n型層〉
p型層またはn型層は、光起電力素子の特性を左右する重要な層である。p型層またはn型層のアモルファス材料、微結晶や多結晶材料としては、例えばa−Si:H、a−Si:HX、a−SiC:H、a−SiC:HXが挙げられる。また、a−SiGe:H、a−SiGeC:H、a−SiO:H、a−SiN:H、a−SiON:HX、a−SiOCN:HXが挙げられる。また、μc−Si:H、μc−SiC:H、μc−Si:HX、μc−SiC:HX、μc−SiGe:H、μc−SiO:H、μc−SiGeC:H、μc−SiN:Hが挙げられる。また、μc−SiON:HX、μc−SiOCN:HX、poly−Si:H、poly−Si:HX,poly−SiC:H、poly−SiC:HXが挙げられる。また、poly−SiGe:H、poly−Si、poly−SiC、poly−SiGeが挙げられる。さらに以上の材料にp型の価電子制御剤(周期率表第III族原子B、Al、Ga、In、Tl)やn型の価電子制御剤(周期率表第V族原子P、As、Sb、Bi)を高濃度に添加した材料が挙げられる。
特に、光入射側のp型層またはn型層には、光吸収の少ない結晶性の半導体層かバンドギャップの広い非晶質半導体層が適している。
p型層への周期率表第III族原子の添加量、およびn型層への周期率表第V族原子の添加量は、0.1〜50at%が最適量として挙げられる。
また、p型層またはn型層に含有される水素原子(H,D)またはハロゲン原子は、p型層またはn型層の未結合手を補償する働きをし、p型層またはn型層のドーピング効率を向上させるものである。p型層またはn型層へ添加される水素原子またはハロゲン原子は、0.1から40at%が最適量として挙げられる。特に、p型層またはn型層が結晶性の場合、水素原子またはハロゲン原子は0.1から8at%が最適量として挙げられる。
さらに、p型層/i型層、n型層/i型層の各界面側で水素原子または/およびハロゲン原子の含有量が多く分布しているものが好ましい分布形態として挙げられる。該界面近傍での水素原子または/およびハロゲン原子の含有量はバルク内の含有量の1.1〜2倍の範囲が好ましい範囲として挙げられる。このようにp型層/i型層、n型層/i型層の各界面近傍で水素原子またはハロゲン原子の含有量を多くすることによって、該界面近傍の欠陥準位や機械的歪を減少させることができる。そして本発明の積層型光起電力素子の光起電力や光電流を増加させることができる。
光起電力素子のp型層およびn型層の電気特性としては、活性化エネルギーが0.2eV以下のものが好ましく、0.1eV以下のものが最適である。また、非抵抗としては100Ωcm以下が好ましく、1Ωcm以下が最適である。さらに、p型層およびn型層の層厚は1から50nmが好ましく、3から10nmが最適である。
光起電力素子のp型層またはn型層の堆積に適した原料ガスとしては、シリコン原子を含有するガス化し得る化合物、ゲルマニウム原子を含有するガス化し得る化合物を挙げることができる。また、炭素原子を含有するガス化し得る化合物を挙げることができる。さらに、前記化合物の混合ガスなどを挙げることができる。
シリコン原子を含有するガス化し得る化合物としては、SiH4、SiH6、SiF4、SiFH3、SiF2H2、SiF3H、Si3H8が挙げられる。さらに、SiD4、SiHD3、SiH2D2、SiH3D、SiFD3、SiF2D2、SiD3H、Si2D3H3などが挙げられる。
ゲルマニウム原子を含有するガス化し得る化合物としては、GeH4、GeD4、GeF4、GeFH3、GeF2H2、GeF3H、GeHD3、GeH2D2、GeH3D、GeH6、GeD6などが挙げられる。
炭素原子を含有するガス化し得る化合物としては、CH4、CD4、CnH2n+2(nは整数)、CnH2n(nは整数)、C2H2、C6H6、CO2、COなどが挙げられる。
窒素含有ガスとしては、N2、NH3、ND3、NO、NO2、N2Oなどが挙げられる。
酸素含有ガスとしては、O2、CO、CO2、NO、NO2、N2O、CH3CH2OH、CH3OHなどが挙げられる。
価電子制御するためにp型層またはn型層に導入される物質としては、周期率表第III族原子および第V族原子が挙げられる。
第III族原子導入用の出発物質として有効に使用されるものとしては、ホウ素原子導入用として、B2H6、B4H10、B5H9、B5H11、B6H10、B6H12、B6H14などの水素化ホウ素が挙げられる。また、BF3、BCl3などのハロゲン化ホウ素などが挙げられる。その他には、AlCl3、GaCl3、InCl3、TlCl3などを挙げることができ、特にB2H6、BF3が適している。
第V族原子導入用の出発物質としては、燐原子導入用として、PH3、P2H4などの水素化燐、PH4I、PF3、PF5、PCl3、PCl5、PBr3、PBr5、PI3などのハロゲン化燐が挙げられる。その他には、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3などを挙げることができ、特にPH3、PF3が適している。
光起電力素子に適したp型層またはn型層の堆積方法は、RFプラズマCVD法、VHFプラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法などである。特に、RFプラズマCVD法又はVHFプラズマCVD法で堆積する場合、容量結合型のプラズマCVD法が適している。RFプラズマCVD法、又はVHFプラズマCVD法でp型層またはn型層を堆積する場合、堆積室内の基板温度は100℃以上350℃以下、内圧は10Pa以上2000Pa以下が好ましい。RF又はVHFパワーは0.01W/cm2以上5.0W/cm2以下、堆積速度は0.1nm/sec以上10nm/sec以下が最適条件として挙げられる。
また、上記のガス化し得る化合物をH2、He、Ne、Ar、Xe、Krなどのガスで適宜希釈して堆積室に導入しても良い。
特に、微結晶半導体やa−SiC:H等の光吸収の少ないかバンドギャップの広い層を堆積する場合には、水素ガスで2から100倍に原料ガスを希釈することが好ましい。そして、RFおよびVHFパワーは比較的高いパワーを導入するのが好ましい。本発明においてRFの周波数としては1MHz以上、30MHz以下が適した範囲であり、特に13.56MHz近傍の周波数が最適である。またVHFの範囲としては30MHz以上、500MHz以下、より好ましくは40MHz以上450MHz以下、最適には50MHz以上400MHz以下である。
p型層またはn型層をマイクロ波プラズマCVD法で堆積する場合、マイクロ波プラズマCVD装置は、堆積室に誘電体窓(アルミナセラミックス等)を介して導波管でマイクロ波を導入する方法が適している。マイクロ波プラズマCVD法でp型層またはn型層を堆積する場合、本発明の堆積膜形成方法も適した堆積方法であるが、更に広い堆積条件で光起電力素子に適用可能な堆積膜を形成することができる。
マイクロ波プラズマCVD法によりp型層またはn型層を堆積する場合、堆積室内の基板温度は100℃以上400℃以下、内圧は0.05Pa以上300Pa以下が好ましい。また、マイクロ波パワーは0.01W/cm3以上1W/cm3以下、マイクロ波の周波数は0.5GHz以上10GHz以下が好ましい範囲として挙げられる。
また、上記のガス化し得る化合物をH2、He、Ne、Ar、Xe、Krなどのガスで適宜希釈して堆積室に導入しても良い。
微結晶半導体やa−SiC:H等の光吸収の少ないかバンドギャップの広い層を堆積する場合には、水素ガスで2から100倍に原料ガスを希釈し、マイクロ波パワーは比較的高いパワーを導入するのが好ましい。
〈微結晶i型層〉
本発明の光起電力素子の微結晶シリコンを含むの堆積に好適な方法は、RFプラズマCVD法、VHFプラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法などが挙げられる。特に、微結晶シリコンの堆積速度は使用する電磁波に依存し、同一の投入エネルギーでは周波数が高い方が堆積速度が速くなる。
本発明における微結晶シリコンに適したシリコン原子供給用の原料ガスとしては、SiH4、Si2H6、SiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3Fなどのシラン系原料ガスが挙げられる。また、SiH3Cl、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiD4、SiHD3、SiH2D2、SiH3D、SiFD3、SiF2D2、SiD3H、Si2D3H3などのシラン系原料ガスが挙げられる。
また、微結晶シリコンゲルマニウムに適したゲルマニウム供給用の原料ガスとしては、GeH4、GeF4、GeHF3、GeH2F2、GeH3Fなどが挙げられる。さらに、GeHCl3、GeH2Cl2、GeH3Cl、GeHD3、GeH2D2、GeH3D、GeH6、GeD6などが挙げられる。
原料ガスは、良好な微結晶半導体を形成するために、水素ガスで希釈する必要があり、その希釈率は10倍以上が好ましい。特に好ましい希釈率の範囲は、10倍から100倍の範囲である。希釈率が小さい場合には微結晶が形成されず、アモルファスが形成される。一方、希釈率を高くし過ぎた場合には、微結晶の堆積速度が低くなり過ぎて実用上の問題が生じる。また、水素希釈に加えてヘリウムガスで希釈することも可能である。
本発明に適した微結晶を作成するための基板温度は、100℃以上500℃以下である。特に堆積速度を大きくする場合には、基板温度は比較的高い温度に設定することが望ましい。
本発明の微結晶を堆積するときのチャンバー内の圧力としては、VHFプラズマCVDCVD法で微結晶半導体を堆積する場合には、100Pa以上2000Pa以下が好適な範囲として挙げられる。またマイクロ波プラズマCVD法で微結晶半導体を堆積する場合には、圧力は0.05Pa〜300Paが好ましい圧力である。
本発明における微結晶半導体を堆積する場合のチャンバーヘの投入パワーとしては、0.01W/cm2以上10W/cm2以下の範囲が好適な範囲として挙げられる。また、原料ガスの流量と投入パワーの関係で示すと、堆積膜の特性を重視する場合は堆積速度が投入パワーに依存するパワーリミテッドの領域が適している。またガス利用効率を重視する場合は堆積速度が導入ガス流量に依存するフローリミテッドの領域が適している。
微結晶半導体の特性をより向上させる場合には、必要以上に基板に陽イオンが衝突しないように電界(バイアス電界)を制御するのが好ましいものである。例えば高周波電極にアース電位に対して負の直流電界を重畳することによって、プラズマ空間中に存在する陽イオンを高周波電極側で捕獲することにより、基板に衝突する陽イオンの数を制御することができる。
さらに、本発明における微結晶半導体の堆積には、基板と電力投入用の電極間距離が重要な因子である。本発明に適した微結晶半導体を得られる電極間距離は、2mm以上50mm以下の範囲である。
本発明の積層型光起電力素子の微結晶半導体に適する平均結晶粒径は、10nm以上300nm以下が適した範囲として挙げられる。
平均結晶粒径が10nmよりも小さいと、結晶粒界にアモルファスが多く存在するようになり、光劣化を示すようになる。また、結晶粒径が小さいと電子や正孔の移動度や寿命が小さくなり、半導体としての特性が低下する。一方、平均結晶粒径が300nmよりも大きいと、結晶粒界の緩和が十分に進まず結晶粒界に未結合手等の欠陥が生じ、該欠陥が電子や正孔の再結合中心として働き、その結果微結晶半導体の特性が低下する。
また、微結晶の形状としては、電荷の移動方向に沿って細長い形状が適したものである。加えて、本発明における微結晶中に含有される水素原子またはハロゲン原子の割合は、30%以下が望ましい範囲である。
光起電力素子において、i型層は照射光に対してキャリアを発生輸送する重要な層である。i型層としては、僅かにp型、僅かにn型の層も使用することができる(p型になるか、あるいはn型になるかは、テイルステイト等の固有欠陥の分布による。)。
本発明の光起電力素子のi型層としては、バンドギャップが均一な半導体の他に、以下のものが適している。即ちシリコン原子とゲルマニウム原子とを含有してi型層の層厚方向にバンドギャップが滑らかに変化し、バンドギャップの極小値がi型層の中央の位置よりp型層とi型層の界面方向に片寄っているものも適している。また、i型層中にドナーとなる価電子制御剤とアクセプターとなる価電子制御剤とが同時にドーピングされているものも適している。
特に、p型層/i型層、n型層/i型層の各界面側で水素原子または/およびハロゲン原子の含有量が多く分布しているものが好ましい分布形態として挙げられる。該界面近傍での水素原子または/およびハロゲン原子の含有量はバルク内の含有量の1.1から2倍の範囲が好ましい範囲として挙げられる。さらに、シリコン原子の含有量に対応して、水素原子または/およびハロゲン原子の含有量が変化していることが好ましい。シリコン原子の含有量が最小のところでの水素原子または/およびハロゲン原子の含有量は1at%以上10at%以下が好ましい範囲である。また、水素原子または/およびハロゲン原子の含有量の最大の領域の0.3から0.8倍が好ましい範囲である。
水素原子または/およびハロゲン原子の含有量をシリコン原子に対応させて変化させる。すなわち、バンドギャップに対応して、バンドギャップの狭いところで水素原子または/およびハロゲン原子の含有量が少なくなっているものである。
i型層の層厚は、光起電力素子の構造(例えば、シングルセル、タンデムセル、トリプルセルなど)、およびi型層のバンドギャップに大きく依存するが0.7〜30.0μmが最適な層厚として挙げられる。
また、i型層のバンドギャップは、p型層/i型層、n型層/i型層の各界面方向で広くなるように設計することが好ましい。このように設計することによって、光起電力素子の光起電力、光電流を大きくすることができ、更に長時間使用した場合の光劣化等を防止することができる。
〈アモルファスi型層〉
本発明は必要に応じて微結晶シリコンを含むi型層を含むpin接合を有する単位素子と、アモルファスシリコンを含むi型層を含むpin接合を有する単位素子との積層型光起電力素子とすることができる。この場合アモルファスシリコンの堆積に好適な方法は、RFプラズマCVD法、VHFプラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法などが挙げられる。特に、アモルファスシリコンの堆積速度は使用する電磁波に依存し、同一の投入エネルギーでは周波数が高い方が堆積速度が速くなる。
本発明におけるアモルファスシリコンに適したシリコン原子供給用の原料ガスとしては、SiH4、Si2H6、SiF4、SiHF3、SiH2F2、SiH3Fなどのシラン系原料ガスが挙げられる。また、SiH3Cl、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiD4、SiHD3、SiH2D2、SiH3D、SiFD3、SiF2D2、SiD3H、Si2D3H3などのシラン系原料ガスが挙げられる。
また、アモルファスシリコンゲルマニウムに適したゲルマニウム供給用の原料ガスとしては、GeH4、GeF4、GeHF3、GeH2F2、GeH3Fなどが挙げられる。また、GeHCl3、GeH2Cl2、GeH3Cl、GeHD3、GeH2D2、GeH3D、GeH6、GeD6などが挙げられる。
原料ガスは、良好なアモルファス半導体を形成するために、水素ガスで希釈する必要があり、その希釈率は5倍以上が好ましい。特に好ましい希釈率の範囲は、5倍から50倍の範囲である。また、水素希釈に加えてヘリウムガスで希釈することも可能である。
本発明に適したアモルファスを作成するための基板温度は、100℃以上500℃以下である。特に堆積速度を大きくする場合には、基板温度は比較的高い温度に設定することが望ましい。
本発明のアモルファスを堆積するときのチャンバー内の圧力としては、0.05Pa以上500Pa以下が好適な範囲として挙げられる。特に、VHFプラズマCVD法でアモルファス半導体を堆積する場合には、圧力は50Pa以上300Pa以下の圧力範囲が好ましい。マイクロ波プラズマCVD法でアモルファス半導体を堆積する場合には、圧力は0.1Pa以上10Pa以下が好ましい圧力範囲である。
本発明におけるアモルファス半導体を堆積する場合のチャンバーヘの投入パワーとしては、0.01W/cm2以上5W/cm2以下の範囲が好適な範囲として挙げられる。また、原料ガスの流量と投入パワーの関係で示すと、堆積速度が投入パワーに依存するパワーリミテッドの領域が適している。また、ガス利用効率を重視する場合は堆積速度が導入ガス流量に依存するフローリミテッドの領域が適している。
アモルファス半導体の堆積速度を早くした場合には、基板にイオンが衝突するように直流電界(バイアス電界)を制御するのが好ましいものである。
加えて、本発明におけるアモルファス中に含有される水素原子またはハロゲン原子の割合は、5〜30%が望ましい範囲である。
光起電力素子において、i型層は照射光に対してキャリアを発生輸送する重要な層である。i型層としては、僅かにp型、僅かにn型の層も使用することができる(p型になるか、あるいはn型になるかは、テイルステイト等の固有欠陥の分布による。)。
本発明の積層型光起電力素子のi型層としては、バンドギャップが均一な半導体が適している。また、シリコン原子とゲルマニウム原子とを含有してi型層の層厚方向にバンドギャップが滑らかに変化し、バンドギャップの極小値がi型層の中央の位置よりp型層とi型層の界面方向に片寄っているものも適している。また、i型層中にドナーとなる価電子制御剤とアクセプターとなる価電子制御剤とが同時にドーピングされているものも適している。
特に、p型層/i型層、n型層/i型層の各界面側で水素原子または/およびハロゲン原子の含有量が多く分布しているものが好ましい分布形態として挙げられる。該界面近傍での水素原子または/およびハロゲン原子の含有量はバルク内の含有量の1.1から2倍の範囲が好ましい範囲として挙げられる。さらに、シリコン原子の含有量に対応して、水素原子または/およびハロゲン原子の含有量が変化していることが好ましい。シリコン原子の含有量が最小のところでの水素原子または/およびハロゲン原子の含有量は1at%以上10at%以下が好ましい範囲である。水素原子または/およびハロゲン原子の含有量の最大の領域の0.3から0.8倍が好ましい範囲である。水素原子とハロゲン原子を同時に含有量している場合、ハロゲン原子の含有量は、水素原子の含有量よりも1/10以下であるのが好ましいものである。
水素原子または/およびハロゲン原子の含有量をシリコン原子に対応させて変化させる。すなわち、バンドギャップに対応して、バンドギャップの狭いところで水素原子または/およびハロゲン原子の含有量が少なくなっているものである。
i型層の層厚は、光起電力素子の構造(例えば、シングルセル、タンデムセル、トリプルセルなど)、およびi型層のバンドギャップに大きく依存するが0.05μm以上10μm以下が最適な層厚である。
また、i型層のバンドギャップは、p型層/i型層、n型層/i型層の各界面方向で広くなるように設計することが好ましい。このように設計することによって、光起電力素子の光起電力、光電流を大きくすることができ、更に長時間使用した場合の光劣化等を防止することができる。
〈透明電極〉
透明電極は、インジウム酸化物、インジウム−スズ酸化物などの透明電極が適している。
透明電極の堆積には、スパッタリング法と真空蒸着法が最適な堆積方法として挙げられる。DCマグネトロンスパッタリング装置において、基板上にインジウム酸化物からなる透明電極を堆積する場合、ターゲットには金属インジウム(In)やインジウム酸化物(In2O3)などが用いられる。
また、基板上にインジウム−スズ酸化物からなる透明電極を堆積する場合、ターゲットには以下のものが用いられる。即ち、金属スズ、金属インジウム、金属スズと金属インジウムの合金、スズ酸化物、インジウム酸化物、インジウム−スズ酸化物などが適宜組み合わされて用いられる。
スパッタリング法で堆積する場合、基板温度は重要な因子であって、25℃以上600℃以下が好ましい範囲として挙げられる。また、スパッタリング用のガスとしては、アルゴンガス(Ar)、ネオンガス(Ne)、キセノンガス(Xe)、ヘリウムガス(He)などの不活性ガスが挙げられ、特にArガスが最適である。また、上記の不活性ガスに酸素ガス(O2)を必要に応じて添加することが好ましい。特に、金属をターゲットにしている場合には、酸素ガス(O2)を添加することは必須である。
さらに、上記の不活性ガスによって効果的にスパッタリングを行うためには、放電空間の圧力は0.05Pa以上10Pa以下の範囲であることが好ましい。加えて、スパッタリングの電源としてはDC電源やRF電源が適しており、スパッタリング時の電力としては10W以上1000Wの範囲が適している。
透明電極の堆積速度は、放電空間内の圧力や放電電力に依存し、最適な堆積速度は0.01nm/sec以上10nm/sec以下の範囲である。
透明電極の層厚は、反射防止膜の条件を満たすような条件で堆積するのが好ましく、具体的には50nm以上300nm以下が好ましい範囲として挙げられる。
真空蒸着法により透明電極を堆積するに適した蒸着源としては、金属スズ、金属インジウム、インジウム−スズ合金などが挙げられる。
また、透明電極を堆積するときの基板温度としては、25℃以上600℃以下の範囲が適している。
さらに、透明電極を堆積するとき、堆積室を10−4Pa以下に減圧した後に、酸素ガス(O2)を5×10−3Pa以上9×10−2Pa以下の範囲で導入することが必要である。この範囲で酸素を導入することによって、蒸着源から気化した金属が気相中の酸素と反応して良好な透明電極が堆積される。
また、上記の圧力でRF電力を導入してプラズマを発生させ、該プラズマを介して蒸着を行ってもよい。
上記の条件による透明電極の堆積速度は、0.01nm/sec以上10nm/sec以下の範囲であることが好ましい。堆積速度が0.01nm/sec未満であると生産性が低下し、10nm/secより大きくなると粗な膜となり透過率、導伝率や密着性が低下するからである。
〈集電電極〉
本発明において、集電電極115は、透明電極114の抵抗率を充分低くできない場合に必要に応じて透明電極114上の一部分に形成され、電極の抵抗率を下げ、光起電力素子の直列抵抗を下げる働きをする。
集電電極の材料としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、コバルト、タンタル、ニオブ、ジルコニウムなどの金属などが挙げられる。もしくはステンレス鋼などの合金、または粉末状金属を用いた導電ペーストなどが挙げられる。そして、その形状は、できるだけ半導体層への入射光を遮らないように、櫛状に形成される。
また、光起電力装置の全体の面積に対して、集電電極の占める面積は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最適には5%以下が望ましい。
集電電極のパターンの形成にはマスクを用い、形成方法としては蒸着法、スパッタリング法、メッキ法、印刷法などが用いられる。
なお、本発明の積層型光起電力素子を用いて、所望の出力電圧、出力電流の光起電力装置を製造する場合には、本発明の光起電力素子を直列あるいは並列に接続する。そして、表面と裏面に保護層を形成し、出力の取り出し電極等が取り付けられる。また、光起電力素子を直列接続する場合、必要に応じて逆流防止用のダイオードを組み込むことができる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例においては以下に説明する手順により図5に示したロール・ツー・ロール装置を用いて基板を搬送(移動)させながら50時間連続的に堆積膜の形成を行った。その際、5時間経過毎に静止成膜を行い、その表面状態の変化と堆積膜の特性との関係を調べた。
ステンレス(SUS430BA)からなる帯状の基体(幅40cm、有効部長さ1000m、厚さ0.125mm)を十分に脱脂、洗浄した。不図示の連続スパッタリング装置に装着し、Ag電極をターゲットとして、厚さ100nmのAg薄膜をスパッタ蒸着させた。さらにZnOターゲットを用いて、厚さ1.2μmのZnO薄膜をAg薄膜の上にスパッタ蒸着し、帯状の導電性基板501を形成した。
本実施例においては、堆積膜形成開始前に基板を5分間静止させてi型層の堆積膜形成室で表1に記載の条件で堆積膜形成(以後静止成膜と記す)を行った。以後5時間毎に静止成膜を行い、この堆積膜形成を50時間行った。基板搬送速度は300mm/分で搬送した。
静止成膜部分は50時間の堆積膜形成工程終了後、巻き取り室から基板を取り出し、各静止成膜部分を切り出して表面を目視により観察した。そして、色彩の異なる部分について各々ラマン散乱光強度を測定し、比較することで微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率を求めた。
また静止成膜部分以外の堆積膜の形成は、図5の装置を用い、先に示した手順により、表1に記載の条件により基板側から順にnipの各半導体層を堆積した。その後不図示のスパッタリング装置及び蒸着装置によりnip光電変換ユニット上には、前面電極114として、厚さ80nmの透明導電性ITO膜をスパッタリング法にて堆積した。その上に電流取出のための櫛形Ag電極115を蒸着法にて堆積することにより、図3に示すpin構造よりなる太陽電池(シングルセル)のサンプルを作製した。
このとき各層の膜厚は、n型層の層厚を20nm、n/iバッファ層の層厚を10nm、p/iバッファ層の層厚を10nm、p型層の層厚を5nm、i型層の層厚を1500nmとした。
ここで本実施例において、上記太陽電池のサンプルは、以下に説明する理由により、各静止成膜部分から各堆積膜形成室の装置長の合計の長さ分離れた部分を光起電力素子のサンプルとした。
静止成膜を行うと、その際に各堆積膜形成室内に滞在していた基板部分は5分間分の堆積膜が形成されている。従ってその後基板の搬送を開始して通常の堆積膜の形成を再開しても、設計通りのpin構造とはならない。そこで静止成膜時に各堆積膜形成室内に存在した基板部分の直後(各堆積膜形成室内に存在した基板の端部から10cm離れた位置)の基板に堆積された堆積膜を先の手順に従って太陽電池のサンプルとした。
尚、表1において、高周波電力としてRFと記載のあるものは周波数13.56MHzのRF電力であり、VHFと記載のあるものは周波数60MHzのVHF電力である。またバイアス電圧は高周波電極にアース電位に対して負の向きになるように所定の直流電界を重畳した。
作製した各サンプルについてソーラーシミュレータ(AM1.5、100mw/cm2)により、光電変換効率、短絡電流(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクタ(FF)を測定した。その後、各サンプルは50℃に保たれた状態で、AM1.5のスペクトルを1sunの光強度で1000時間光照射を行った。光照射後の各サンプルについて光照射前と同様に各特性を測定し、光劣化率を求めた。
結果を表2に示す。
表2において面積比率とは微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率を示す。また表中の記号は、
Jsc(短絡電流)
◎・・・25mA/cm2以上
○・・・20mA/cm2以上25mA/cm2未満
△・・・15mA/cm2以上20mA/cm2未満
×・・・15mA/cm2未満又は測定不能
Voc(開放電圧)
◎・・・0.5V以上
○・・・0.4V以上0.5V未満
△・・・0.3V以上0.4V未満
×・・・0.3V未満又は測定不能
FF(フィルファクタ)
◎・・・0.5以上
○・・・0.4以上0.5未満
△・・・0.3以上0.4未満
×・・・0.3未満又は測定不能
η(光電変換効率)
◎・・・7%以上
○・・・6%以上7%未満
△・・・5%以上7%未満
×・・・5%未満
光劣化率
◎・・・7%未満
○・・・7%以上12%未満
△・・・12%以上17%未満
×・・・17%以上
を示す。
表2から明らかなように、堆積膜形成時間とともに、微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率が小さくなり、光起電力素子の各特性もこれに伴い低下することがわかる。特に微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率が50%よりも小さくなると、微結晶としての特性よりもアモルファスとしての特性に近くなる。そして、開放電圧特性は微結晶よりもむしろ高くなる傾向にあるが、他の特性が低下する傾向にあり、特に短絡電流が小さくなり、光劣化率が大きくなる。
一方、色彩の異なる領域についての目視による領域判別及び各判別した領域のラマン分光法による散乱強度の測定結果との対比から目視の有効性が確認できた。即ち、目視により微結晶シリコンと判断した領域は、結晶成分に起因するラマン散乱強度が、アモルファスに起因するラマン散乱強度の5倍以上であった。また目視によりアモルファスシリコンと判断した領域は、結晶成分に起因するラマン散乱強度が、アモルファスに起因するラマン散乱強度の1倍以下であった。これは、目視の判断結果と良い一致をすることを示している。
以上の結果から、微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率は好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、最適には80%以上であることがわかる。また目視による判断が有効であることがわかる。
(実施例2)
本実施例においては実施例1と同様の手順により表3の条件で図5に示したロール・ツー・ロール装置を用いて基板を搬送(移動)させながら50時間連続的に堆積膜の形成を行った。
堆積膜の形成に際して、堆積膜の形成5時間毎に、i型層堆積室にて静止成膜を行った。
上記静止成膜部分の表面観察を、基板が巻き取り室506内の巻き取りボビン505に巻き取られる際に、巻き取り室506設けた不図示の観察窓から目視により観察を行った。そして、微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率が小さくならないように、バイアス電圧を−80Vから−200Vの範囲で調整した。さらに希釈水素量を10slmから20slmの範囲で調整した。このバイアス電圧及び希釈水素の流量は予備実験により微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率とバイアス電圧及び希釈水素量との関係を求めておき、求めた相関に基づいて調整した。
また静止成膜部分以外は実施例1と同様に図3に示すpin構造よりなる太陽電池(シングルセル)のサンプルを作製し、実施例1と同様に評価した。
これらの結果を表4に示す。
表4から明らかなように、堆積膜の形成を連続して行う際に、本発明の制御方法を用いることによって、微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率の変化を抑制することが可能となる。そして、その結果太陽電池の特性の低下を効果的に抑制することができることがわかる。
(実施例3)
本実施例では、複数の基板を用い、基板を交換しながら基板交換工程中は一旦プラズマCVDを中断して間欠的に堆積膜の形成を行う場合の本発明の効果を確認するために以下の手順で堆積膜の形成を行った。
第1から第5までの番号を設定した実施例1と同一の基板(但し各基板の長さは300m)を用い、第1の基板の堆積膜形成後、第2の基板に交換するという手順で成膜を行った。その際、第1の基板から第5の基板まで基板の交換工程以外は連続して表5の条件で堆積膜の形成を行った。またこのとき基板搬送速度は300mm/分で搬送した。基板交換工程中は一旦プラズマCVDを60分間中断する工程を加えることで間欠的に堆積膜の形成を行った。
堆積膜の形成に際して、第1の基板から第5の基板の各基板の最初と最後に、i型層堆積室にて静止成膜を行った。静止成膜部分の表面観察を、基板が巻き取り室506内の巻き取りボビン505に巻き取られる際に、巻き取り室506設けた不図示の観察窓から目視により観察を行った。そして、微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率が小さくならないようにバイアス電圧を−100Vから−250Vの範囲で調整した。さらに希釈水素量を10slmから20slmの範囲で調整した。バイアス電圧及び希釈水素の流量については予備実験により微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率とバイアス電圧及び希釈水素量との関係を求めておき、求めた相関に基づいて調整した。
また静止成膜部分以外は実施例1と同様に図3に示すpin構造よりなる太陽電池(シングルセル)のサンプルを作製し、実施例1と同様に評価した。
これらの結果を表6に示す。
(比較例1)
静止成膜による微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率の観察結果に基づく堆積膜形成条件の制御を行わない以外は実施例3と同様に成膜を行った。そして第1から第5までの5つの基板を用い、基板を交換しながら基板交換工程中は一旦プラズマCVDを60分間中断して間欠的に堆積膜の形成を行った。そして実施例3と同様に太陽電池のサンプルを作成し実施例2と同様に評価した。
結果を表7に示す。
表6及び表7から明らかなように、本発明の制御方法を用いることによって、間欠して堆積膜を形成する際の、微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率の変化を抑制することが可能となる。その結果太陽電池の特性の低下を効果的に抑制することができることがわかる。
(実施例4)
本実施例では、表8及び表9に示す堆積膜形成条件により太陽電池の層構成を図1に示すpin(トップ層)/pin(ボトム層)の構成からなる太陽電池(ダブルセル)とした。そして層構成以外は実施例2、実施例3及び比較例3と同様の手順でサンプルを作成し、同様の評価を行った。
但し、本実施例においては、トップ層のi型層の晶系はアモルファスで、ボトム層のi型層の晶系のみ微結晶とする構成を採用した。このため、ボトム層の形成時のみに本発明の制御方法を実施し、ボトム層を形成後、従来の方法によりトップ層を形成した。そして、ボトム層とトップ層とは各々各層堆積用に設計された図5に示す堆積膜形成装置で形成した。
その結果、ダブル構成の太陽電池素子の製造に対しても、実施例2実施例3、及び比較例1と同様に本発明の効果が確認された。
(実施例5)
本実施例では、表10、表11、表12に示す堆積膜形成条件により太陽電池の層構成を図2に示すpin(トップ層)/pin(ミドル層)/pin(ボトム層)の構成からなる太陽電池(トリプルセル)とした。そして層構成以外は実施例2、実施例3及び比較例3と同様の手順でサンプルを作成し、同様の評価を行った。
但し、本実施例においては、トップ層のi型層の晶系はアモルファスで、ボトム層及びミドル層のi型層の晶系のみ微結晶とする構成を採用した。このため、ボトム層及びミドル層の形成時のみに本発明の制御方法を実施し、ボトム層及びミドル層を形成後、従来の方法によりトップ層を形成した。そして、ボトム層、ミドル層及びトップ層は各々各層堆積用に設計された図5に示す堆積膜形成装置で形成した。
その結果、トリプル構成の太陽電池素子の製造に対しても、実施例2実施例3、及び比較例1と同様に本発明の効果が確認された。
(実施例6)
本実施例においては、連続的に堆積膜を形成する過程において、微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率に基づいて装置の整備を行うことによる装置の長期間安定使用の効果を確認した。
実施例1と同様の手順により表1の条件で図5に示したロール・ツー・ロール装置を用いて基板を搬送(移動)させながら連続的に堆積膜の形成を行った。
堆積膜の形成に際して、堆積膜の形成5時間毎に、i型層堆積室にて静止成膜を行った。
上記静止成膜部分の表面観察を、基板が巻き取り室506内の巻き取りボビン505に巻き取られる際に、巻き取り室506設けた不図示の観察窓から目視により観察を行った。そして、微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率が50%になった時点で、一旦成膜作業を終了した。そして、堆積膜形成装置の整備(装置内部のクリーニング、高周波電極の交換、部品の交換等)を行った後、再び堆積膜の形成を再開した。この一連の工程を10サイクル繰り返し、サイクル毎に成膜開始時と成膜終了時に実施例1と同様に太陽電池サンプルを作成し、実施例1と同様に評価した。その結果、1サイクル間では、経時的にサンプル特性は徐々に低下するものの、成膜終了時においても一定の基準値を満たし、成膜装置の整備後には再び特性が回復することが確認された。これにより本発明の微結晶シリコンからなる領域の面積の全体の面積に対する比率を堆積膜形成装置の整備を開始する基準とすることが、長期間安定的に太陽電池を生産する上で有効であることが確認された。