JP4952142B2 - ポンプ - Google Patents

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Description

本発明は、回転軸に結合された羽根車を備えたポンプに関する。
ポンプの羽根車は、羽根の前縁部のキャンバ接線の方向と流体(液体)の流入方向とのずれが大きくなると、よどみ点とは反対側の面で局所的に圧力が低下し、キャビテーションが発生することが知られている。キャビテーションは、効率や揚程等のポンプ特性を悪化させたり機器を損傷させたりする要因となっている。そのため、羽根の前縁部のキャンバ接線の方向を流体の流入方向に一致するように設計することが好ましいが、流体の流入方向はポンプの運転条件によって変化する。詳しく説明すると、例えば図9に示すように設計点より小流量の運転条件では、羽根1の前縁部(図9中左下側部分)の正圧面2によどみ点が発生し、その反対側の負圧面3で局所的に圧力が低下してキャビテーションが発生する。そのため、図9中点線で示すように、羽根1の前縁部のキャンバ接線4の角度を正圧面2側(図中左上側)に傾けることが好ましい。一方、例えば図10に示すように設計点より大流量の運転条件では、羽根1の前縁部(図10中左下側部分)の負圧面3によどみ点が発生し、その反対側の正圧面2で局所的に圧力が低下してキャビテーションが発生する。そのため、図10中点線で示すように、羽根1の前縁部のキャンバ接線4の角度を負圧面3側(図中右下側)に傾けることが好ましい。このように大流量運転及び小流量運転におけるキャビテーション性能は、トレードオフの関係にあり、両方のバランスをとって設計するしかなかった。
また、従来、例えばハブの外周側に複数の羽根を設けたオープン形の羽根車において、ハブに液体の流れに沿って開口する複数の液体取入れ口を形成し、各羽根の前縁付近の正圧面(圧力面)に開口する複数の液体吐出口を形成し、これら液体取入れ口と液体吐出口を連通させる複数の通路(詳細には、ハブの内部の上流側通路及び羽根の内部の下流側通路)を形成したものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この羽根車を有するポンプでは、羽根車の回転に伴い、ケーシング内を通過する液体の一部がハブの液体取入れ口から上流側通路に連続的に取り入れられ、遠心力作用により圧力を与えられて羽根の下流側通路内を径方向外側に流れ、複数の液体吐出口から吐出されるようになっている。これにより、羽根の前縁付近の正圧面に沿って流れる液体に運動エネルギーを与えて剥離を抑制し、ポンプの大流量運転におけるキャビテーションの発生を低減するようになっている。
また、従来、例えば主板と側板の間に複数の羽根を設けたクローズ形の羽根車において、一端が羽根の前縁付近の負圧面に開口し、他端が主板の負圧面側の高圧領域に開口し、羽根の内部に羽根に沿って延びる湾曲又は屈曲した複数の管路を形成したものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。この羽根車を有するポンプでは、羽根車の回転に伴い、羽根車の2次側の高圧流体が管路を通して羽根の前縁付近の負圧面に導かれる。これにより、羽根の前縁付近の負圧面における流体の速度エネルギーを回復させて流体の剥離を抑制し、ポンプの小流量運転におけるキャビテーションの発生を低減するようになっている。
特開平5−306698号公報 特開平11−210686号公報
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
上記特許文献1に記載の従来技術では、複数の羽根の前縁付近の正圧面にそれぞれ形成した複数の液体吐出口から流体(液体)を吐出することにより、ポンプの大流量運転におけるキャビテーション性能を向上させるようになっている。一方、上記特許文献2に記載の従来技術では、複数の羽根の前縁付近の負圧面にそれぞれ形成した開口から流体(液体)を流出させることにより、ポンプの小流量運転におけるキャビテーション性能を向上させるようになっている。すなわち、上記従来技術では、ポンプの大流量運転及び小流量運転のうちいずれか一方に特化してキャビテーション性能を改善しており、両方を共に改善することができなかった。
本発明の目的は、大流量運転及び小流量運転におけるキャビテーション性能を共に向上させることができるポンプを提供することにある。
(1)上記目的を達成するために、本発明は、回転軸と、前記回転軸に結合された羽根車とを備え、液体を圧送するポンプにおいて、前記羽根車は、羽根の前縁部の正圧面に開口した第1の湧出孔と、前記羽根の前縁部の負圧面に開口した第2の湧出孔と、前記羽根車における前記第1及び第2の湧出孔より径方向内側に開口した吸入口と、前記第1及び第2の湧出孔並びに吸入口を連通する流路とを有する。
本発明においては、例えば羽根車の回転に伴う遠心力の作用により、羽根車の吸入口に流入した流体(液体)が流路内を流れ、羽根の正圧面及び負圧面に開口した第1及び第2の湧出孔より流出する。そして、例えば設計点より大流量の運転条件では、第1の湧出孔から羽根の正圧面に流体が流出することにより、羽根の正圧面に沿って流れる液体に運動エネルギーを与えて剥離を抑制し、キャビテーションの発生を低減することができる。一方、例えば設計点より小流量の運転条件では、第2の湧出孔から羽根の負圧面に流体が流出することにより、羽根の負圧面に沿って流れる液体に運動エネルギーを与えて剥離を抑制し、キャビテーションの発生を低減することができる。したがって、ポンプの大流量運転及び小流量運転におけるキャビテーション性能を共に向上させることができる。
(2)上記(1)において、好ましくは、前記羽根車の下流側の流体が前記吸入口に流入する。
)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記流路は、前記吸入口から前記羽根の外周側に向かって伸びつつ断面積が減少するように形成し、前記第1及び第2の湧出孔は、前記流路に沿って複数形成する。
)上記目的を達成するために、本発明は、回転軸と、前記回転軸に結合された羽根車とを備え、液体を圧送するポンプにおいて、前記羽根車は、羽根の前縁部の正圧面に開口した第1の湧出孔と、前記羽根の前縁部の負圧面に開口した第2の湧出孔と、前記羽根における第1及び第2の湧出孔より下流側に開口した吸入口と、前記第1及び第2の湧出孔並びに吸入口を連通する流路とを有する。
本発明によれば、大流量運転及び小流量運転におけるキャビテーション性能を共に向上させることができる。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明のポンプの一実施形態である立軸斜流ポンプの構造を表す軸方向断面図である。また、図2は、図1中断面II−IIによる羽根の断面図であり、図3は、図1中断面III−IIIによる羽根の断面図である。また、図4は、羽根車に形成した吸入口廻りの構造を表す斜視図である。
これら図1〜図4において、立軸斜流ポンプ5は、ケーシング6と、このケーシング6内に回転可能に支持され、その上端部に接続された駆動装置(図示せず)によって回転する回転軸7と、この回転軸7の下端部に結合された羽根車8とを備えている。
ケーシング6は、羽根車8を収納するケーシングライナ9と、このケーシングライナ9の下側(図1中下側)に接続されたベルマウス10と、ケーシングライナ9の上側(図1中上側)に接続されたボウルケーシング11と、このボウルケーシング11の上側に接続された揚水管12及び吐出しエルボ(図示せず)等を備えている。ボウルケーシング11の内周側には、羽根車8の下流側に配置される複数の案内羽根13と、これら案内羽根13に支持された中央のハブ14とが設けられている。なお、図示しないが、ボウルケーシング11のハブ14及び吐出しエルボには、回転軸7を回転可能に支持する軸受装置が設けられている。
羽根車8は、例えばオープン形の羽根車であり、回転軸7の下端部に取り付けられた中空のハブ15と、このハブ15の外周側に接合された複数の羽根16とで構成されている。そして、本実施形態の大きな特徴として、羽根車8は、各羽根16の前縁部の正圧面17に開口した複数の湧出孔18(第1の湧出孔)と、これら湧出孔18とそれぞれ対をなし、各羽根16の前縁部の負圧面19に開口した複数の湧出孔20(第2の湧出孔)と、ハブ15における羽根16の接合部(言い換えれば、羽根車8における湧出孔18,20より径方向内側)にそれぞれ形成され、ハブ15の中空部21に開口する複数の吸入口22と、羽根16の内部にそれぞれ形成され、湧出孔18,20及び吸入口22を連通させる複数の湧出流路23とを有している。
湧出流路23は、羽根16の前縁部に沿いハブ15の吸入口22から羽根16の外周側に向かって伸びつつ、断面積が徐々に減少するように形成されており、この湧出流路23に沿って複数対の湧出孔18,20が形成されている。このように湧出流路23の断面積を羽根16の外周側に向かって減少させることにより、吸入口22から羽根16の外周側の湧出孔18,20までの流路における圧力損失を低減するようになっている。なお、対をなす湧出孔18,20の圧力損失はほぼ同じになっている。
羽根車8のハブ15の中空部21は、羽根車8のハブ15とボウルケーシング11のハブ14との間隙を介し羽根車8の下流側の流体(液体)の一部が流入し、湧出孔18,20近傍の流体より圧力が高くなっている。この圧力差及び羽根車8の回転に伴う遠心力の作用により、ハブ15の中空部21の流体が吸入口22に流入して羽根16の湧出流路23内を流れ、湧出孔18,20から羽根16の正圧面17及び負圧面19に湧き出すようになっている。なお、ハブ15の内周面の吸入口22近傍には、吸入補助手段として、羽根車8の回転に伴って生じる周方向の流れ(旋回流)を吸入口22に向けさせる偏向部材24が設けられている。
次に、本実施形態の作用効果を図5及び図6により説明する。図5及び図6は、本実施形態による作用を説明するための羽根16の断面図であり、図5は、ポンプ5の小流量運転の場合を表し、図6は、ポンプ5の大流量運転の場合を表す。
これら図5及び図6において、例えば設計点より小流量の運転条件では、羽根16の正圧面17によどみ点が発生して圧力が局所的に高くなり、反対側の負圧面19での圧力が局所的に低くなる。このとき、対をなす正圧面17の湧出孔18及び負圧面19の湧出孔20の圧力損失がほぼ同じであるから、正圧面17の湧出孔18からの湧出し流量が少なくなり、負圧面19の湧出孔20からの湧出し流量が多くなり、図5中一点鎖線で示すような湧出膜が羽根16の表面上に形成される。これにより、例えば羽根16の前縁部のキャンバ接線を正圧面17側に傾けた場合(上述の図9参照)と同様な効果を得ることができ、流体の流入方向とのずれを小さくして、キャビテーションの発生を低減することができる。なお、見方を変えれば、湧出孔20から羽根16の負圧面19に流体が流出することにより、羽根16の負圧面19に沿って流れる液体に運動エネルギーを与えて剥離を抑制し、キャビテーションの発生を低減することができるとも言える。
一方、例えば設計点より大流量の運転条件では、羽根16の負圧面19によどみ点が発生して圧力が局所的に高くなり、反対側の正圧面17での圧力が局所的に低くなる。このとき、対をなす正圧面17の湧出孔18及び負圧面19の湧出孔20の圧力損失がほぼ同じであるから、負圧面19の湧出孔20からの湧出し流量が少なくなり、正圧面17の湧出孔18からの湧出し流量が多くなり、図6中一点鎖線で示すような湧出膜が羽根16の表面上に形成される。これにより、例えば羽根16の前縁部のキャンバ接線を負圧面側に傾けた場合(上述の図10参照)と同様な効果を得ることができ、流体の流入方向とのずれを小さくして、キャビテーションの発生を低減することができる。なお、見方を変えれば、湧出孔18から羽根16の正圧面17に流体が流出することにより、羽根16の正圧面17に沿って流れる液体に運動エネルギーを与えて剥離を抑制し、キャビテーションの発生を低減することができるとも言える。
以上のように本実施形態においては、ポンプの大流量運転及び小流量運転におけるキャビテーション性能を共に向上させることができる。また、羽根16の表面上に高圧な湧出膜を形成することにより、キャビテーションが崩壊した際に発生するマイクロジェットによる羽根16の表面の損傷を低減することができる。また、本実施形態では、流体の流入方向とのずれが小さくなるように羽根16の前縁部のキャンバ接線を傾けた場合と同様な効果を得るので、大流量運転及び小流量運転におけるポンプ効率を共に向上させることができる。
なお、上記一実施形態においては、羽根16の前縁部の正圧面17及び負圧面19に開口する複数対の湧出孔18,20を形成した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば図7に示すように、羽根16の前縁部に多孔質材25を設け、この多孔質材に湧出流路23を形成することにより、羽根16の前縁部の正圧面17及び負圧面19に多数の湧出孔を形成するようにしてもよい。このような変形例においても、上記一実施形態同様の効果を得ることができる。
本発明の他の実施形態を図8により説明する。本実施形態は、羽根における湧出孔より下流側に開口した吸入口を有する実施形態である。
図8は、本実施形態における羽根の断面図である。なお、この図8において、上記一実施形態と同等の部分には、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態では、羽根車8は、各羽根16の前縁部の正圧面17に開口した複数の湧出孔18と、これら湧出孔18とそれぞれ対をなし、各羽根16の前縁部の負圧面19に開口した複数の湧出孔20と、各羽根16の後縁部(言い換えれば、羽根16における湧出孔18,20より下流側)に開口する複数の吸入口26と、各羽根16の内部に形成され、湧出孔18,20及び吸入口26を連通させる複数の湧出流路27とを有している。そして、圧力差により、羽根車8の下流側の流体が吸入口26に流入して湧出流路27内を流れ、湧出孔18,20から羽根16の正圧面17及び負圧面19に湧き出すようになっている。
以上のように構成された本実施形態においても、上記一実施形態同様、ポンプの大流量運転及び小流量運転におけるキャビテーション性能を共に向上させることができる。
なお、以上においては、オープン形の羽根車8を例にとって説明したが、これに限られず、例えばクローズ形の羽根車に適用してもよい。また、本発明の適用対象として立軸斜流ポンプ5を例にとって説明したが、これに限られず、例えば横軸斜流ポンプ、軸流ポンプ、渦巻きポンプ等に適用してもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
本発明のポンプの一実施形態である立軸斜流ポンプの構造を表す軸方向断面図である。 図1中断面II−IIによる羽根の断面図である。 図1中断面III−IIIによる羽根の断面図である。 本発明のポンプの一実施形態を構成する羽根車の吸入口廻りの構造を表す斜視図である。 本発明のポンプの一実施形態における作用を説明するための羽根の断面図であり、ポンプの小流量運転の場合を表す。 本発明のポンプの一実施形態における作用を説明するための羽根の断面図であり、ポンプの大流量運転の場合を表す。 本発明のポンプの一変形例における羽根の断面図である。 本発明のポンプの他の実施形態における羽根の断面図である。 従来構造における作用を説明するための羽根の断面図であり、ポンプの小流量運転の場合を表す。 従来構造における作用を説明するための羽根の断面図であり、ポンプの大流量運転の場合を表す。
符号の説明
5 立軸斜流ポンプ
7 回転軸
8 羽根車
16 羽根
17 正圧面
18 湧出孔(第1の湧出孔)
19 負圧面
20 湧出孔(第2の湧出孔)
22 吸入口
23 湧出流路
26 吸入口
27 湧出流路

Claims (4)

  1. 回転軸と、前記回転軸に結合された羽根車とを備え、液体を圧送するポンプにおいて、
    前記羽根車は、羽根の前縁部の正圧面に開口した第1の湧出孔と、前記羽根の前縁部の負圧面に開口した第2の湧出孔と、前記羽根車における前記第1及び第2の湧出孔より径方向内側に開口した吸入口と、前記第1及び第2の湧出孔並びに吸入口を連通する流路とを有することを特徴とするポンプ。
  2. 請求項1記載のポンプにおいて、前記羽根車の下流側の体が前記吸入口に流入することを特徴とするポンプ。
  3. 請求項1又は2記載のポンプにおいて、前記流路は、前記吸入口から前記羽根の外周側に向かって伸びつつ断面積が減少するように形成し、前記第1及び第2の湧出孔は、前記流路に沿って複数形成したことを特徴とするポンプ。
  4. 回転軸と、前記回転軸に結合された羽根車とを備え、液体を圧送するポンプにおいて、
    前記羽根車は、羽根の前縁部の正圧面に開口した第1の湧出孔と、前記羽根の前縁部の負圧面に開口した第2の湧出孔と、前記羽根における第1及び第2の湧出孔より下流側に開口した吸入口と、前記第1及び第2の湧出孔並びに吸入口を連通する流路とを有することを特徴とするポンプ。
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