JP4949251B2 - 診断化合物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規ペプチド系化合物並びに陽電子放射断層撮影(PET)を用いた画像診断法におけるそれらの使用に関する。具体的には、本発明は、血管新生に関連する受容体、特にインテグリン受容体(例えばαvβ3インテグリン受容体など)に結合するターゲティングベクターとしての上記ペプチド系化合物の使用に関する。そこで、かかる化合物は、例えば悪性疾患、心疾患、子宮内膜症、炎症関連疾患、関節リウマチ及びカポジ肉腫の診断又は治療に使用し得る。さらに、本発明は、かかるペプチド系化合物の製造方法及び試薬に関する。
画像診断への放射性標識生理活性ペプチドの応用は、核医学において重要性を増しつつある。特定の細胞型と選択的に相互作用する生物活性分子は標的組織に放射能を送達するのに有用である。例えば、放射性標識ペプチドは、画像診断及び放射線治療のため腫瘍、梗塞巣及び感染組織に放射性核種を送達するのに多大な潜在的可能性を有している。半減期が約110分の18Fは、多くの受容体画像観察に好まれる陽電子放出核種である。従って、18F標識した生理活性ペプチドは、様々な疾患の検出及び評価のためのPETへの有用性から、臨床での多大な潜在的用途を有している。
新しい血管は脈管形成と血管新生という2つの異なる機序で形成される。血管新生は既存の血管からの枝分れによる新しい血管の形成である。このプロセスに対する主な刺激として、組織内の細胞への栄養及び酸素の不十分な供給(低酸素)がある。細胞は血管新生因子の分泌によって応答することがある。血管新生因子は多数存在するが、しばしば言及されるその一例は血管内皮増殖因子(VEGF)である。これらの因子は、基底膜のタンパク質を分解するタンパク分解酵素の分泌だけでなく、かかる潜在的に有害な酵素の作用を制限する阻害剤の分泌も惹起する。血管新生因子のもう一つの顕著な作用は内皮細胞を遊走させ分裂させることである。血管の反管腔側に連続層をなす基底膜に付着した内皮細胞は有糸分裂を起こさない。付着の喪失と血管新生因子受容体からのシグナルとの複合作用によって、内皮細胞の移動、増殖及び再配列が起こり、最終的には新血管周囲に基底膜が合成される。
血管新生は創傷治癒及び炎症過程を始めとする組織の増殖及びリモデリングに重要である。腫瘍は、ミリメートル大に達すると、その増殖速度を保つため血管新生を惹起しなければならない。血管新生は内皮細胞とそれらの周囲の環境に特徴的な変化を伴う。これらの細胞の表面は遊走に備えてリモデリングされ、基底膜が分解されて、タンパク分解の誘発と制御に関与する各種タンパク質に加えて、隠れた構造が露出される。腫瘍の場合、形成される血管ネットワークは通常はまとまりがなく、鋭いねじれや動静脈シャントの形成を伴う。血管新生の阻害も抗腫瘍療法の有望な方策であると考えられる。血管新生に伴う形質転換も診断に極めて有望であり、その一例は悪性疾患であるが、この方策は、炎症及びアテローム性動脈硬化症を始めとする様々な炎症関連疾患にも極めて有望であり、初期アテローム性動脈硬化病変のマクロファージは血管新生因子の潜在的発生源である。
細胞接着に関与するリガンドの多くはアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)のトリペプチド配列を含んでいる。RGD配列は、この配列を提示するリガンドと細胞表面の受容体との間の一次認識部位として作用すると思われる。リガンドと受容体との二次的相互作用は上記相互作用の特異性を高めると一般に考えられている。こうした二次的相互作用は、リガンドと受容体のRGD配列に直接隣接した部分又はRGD配列から離れた部位で起こり得る。
したがって、生体内での血管新生に関連するインテグリン受容体の効率的ターゲティング及びイメージングには、選択的で親和性が高く化学的に頑強で安定なRGD系ベクターが必要とされる。さらに、バックグラウンドの問題を軽減するための造影剤の設計に際しては、排泄経路が重要な因子となる。
国際公開第03/006491号には、血管新生に関連したインテグリン受容体を標的とするペプチド系化合物が記載されている。しかし、PETのような画像診断法に有用なペプチド系化合物に対するニーズがさらに存在する。同時係属中のPCT/GB2004/001052には、生物活性ベクターを18Fで標識するのに適した方法が記載されている。しかし、迅速かつ効率的に製造でき、しかも望ましい生物活性を保持しているペプチド系化合物に対するニーズが依然として存在する。
国際公開第03/006491号パンフレット
第一の実施形態では、本発明は、放射性フッ素化方法であって、以下の式(I)の化合物を式(II)の化合物と反応させて式(III)の化合物を得る方法を提供する。
式中、ベクターは次式のフラグメントを含む。
式中、nは0〜20の整数であり、mは0〜10の整数であり、Yは水素、C1−6アルキル基(例えばメチル基)又はフェニルである。
式中、m、n及びYは式(II)の化合物で定義した通りであり、ベクターは式(I)の化合物で定義した通りである。
この反応は適当な溶媒中、例えば、pH域1〜11、好ましくは2〜11、さらに好ましくは2〜6の水性緩衝液中で、5〜100℃の穏和な温度、好適には20〜70℃、好ましくは室温で実施できる。
ある特定の実施形態では、式(I)及び(III)のベクターは次の式(A)の化合物である。
式中、Xは−NH又は次式の基である。
式中、aは1〜10の整数、好ましくは1である。
式(I)の化合物のベクターの一部をなすリンカー基は、得られる式(III)のコンジュゲートにおける好ましい排泄特性など、良好なインビボ薬物動態が得られるように選択される。親油性及び/又は電荷の種々異なるリンカー基を使用することによって、診断上のニーズに応じてペプチドのインビボ薬物動態を大きく変化させることができる。例えば、式(III)のコンジュゲートを腎排泄によって身体から除去することが望まれる場合には親水性リンカーを使用し、肝胆道排泄による除去が望ましい場合には疎水性リンカーを使用する。ポリエチレングリコール部分を含むリンカーは血液クリアランスを遅らせることが判明しており、状況によっては望ましい。
式(I)の化合物のベクターの一部をなすリンカーはC1−60ヒドロカルビル基、好適にはC1−30ヒドロカルビル基であって、適宜酸素又は窒素のような1〜30個のヘテロ原子、好適には1〜10個のヘテロ原子を含むものである。好適なリンカー基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル鎖、芳香族、ポリ芳香族及びヘテロ芳香族環、さらにエチレングリコール、アミノ酸又は炭水化物サブユニットを含むポリマーが挙げられる。好ましくは、式(I)の化合物のベクターの一部をなすリンカーはポリエチレングリコールサブユニットを含むものであり、最も好ましくはリンカーは次の式Bのものである。
式中、bは2〜20の整数、好ましくは3〜10、最も好ましくは5である。
「ヒドロカルビル基」という用語は、炭素と水素からなる有機置換基をいい、かかる基は、飽和、不飽和又は芳香族部分を含んでいてもよい。
したがって、式(I)の好ましい化合物は次の式(Ia)のものである。
式中、Xは−NH又は次式の基である。
式中、aは1〜10の整数、好ましくは1であり、bは2〜20の整数、好ましくは3〜10、最も好ましくは5である。
式(II)の好ましい化合物は、mが0、nが0、Yが水素であるものである。
式(I)及び(III)の化合物は、ペプチド合成の常法、例えばAtherton,E. and Sheppard,R.C.; “Solid Phase Synthesis”; IRL Press: Oxford, 1989に記載の固相ペプチド合成法で調製し得る。式(I)の化合物へのアミノオキシ基の導入は、ペプチドアミン官能基と活性化酸との反応によって形成された安定なアミド結合の形成によって達成でき、ペプチドの合成時又は合成後に導入される。
別の態様では、本発明は、放射性標識ペプチド系化合物の製造に有用な試薬としての用途を有する上述の式(I)及び(Ia)で表される化合物を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、上記で定義した式(III)の放射性標識コンジュゲート又はその塩を提供する。式(III)の好ましい化合物は次の式(IIIa)のものである。
式中、Xは−NH又は次式の基である。
式中、aは1〜10の整数、好ましくは1であり、bは2〜20の整数、好ましくは3〜10、最も好ましくは5である。
式(III)の特に好ましい化合物は次のものである。
式(III)及び(IIIa)の化合物の適当な塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びイソエチオン酸と形成されるような薬学的に許容される酸付加塩が挙げられる。
式(II)の化合物は、式(IV)の対応前駆体又はその保護誘導体から製造することができる。
式(II)の化合物は、以下に示す対応する式(IV)の前駆体又はその保護誘導体から、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドのような適当な溶媒中、通常室温又は昇温(例えば最高140℃)で、サイクロトロン生成水性[18F]フッ化物(好適には、塩基(例えば、テトラブチルアンモニウム又はKCO/Kryptofix−222)からの蒸発によって予め活性化しておいたもの)と反応させることによって調製し得る。式(II)の化合物のアルデヒド又はケトン官能基は、フッ素化後の単なる酸処理によって、アセタールやケタールのような保護前駆体から迅速に生成させることもできる。
式中、Lは脱離基であって、好ましくは、m=1のとき、Lはp−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩若しくはメタンスルホン酸塩又はハロゲンであり、mが0のとき、Lはp−トリアルキルアンモニウム塩又はp−ニトロであり、Y、m及びnは式(II)の化合物について記載した通りである。
以下のインビトロ競争結合アッセイに示す通り、式(I)及び(Ia)の化合物は、血管新生に関連する受容体に結合する。したがって、これらの化合物は、血管新生に関連した疾患及び病態の治療、インビボ診断及びイメージングに有用であろう。
「血管新生に関連した疾患及び病態」としては、以下に挙げる疾患及び病態がある。これに関しては国際公開第98/47541号も参照できる。
血管新生に関連した疾患及び病態としては、様々な形態の癌及び転移、例えば乳癌、皮膚癌、直腸結腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌又は卵巣癌が挙げられる。
血管新生に関連したその他の疾患及び病態は、炎症(例えば慢性)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ及び歯肉炎である。
血管新生に関連したさらに別の疾患及び病態は、動静脈奇形、星細胞腫、絨毛癌、グリア芽細胞種、神経膠腫、血管腫(小児性、毛細血管性)、肝細胞腫、過形成性子宮内膜症、虚血性心筋症、子宮内膜症、カポジ肉腫、黄斑変性症、黒色腫、神経芽細胞腫、閉塞性末梢動脈疾患、骨関節炎、乾癬、網膜症(糖尿病性、増殖性)、強皮症、精上皮腫及び潰瘍性大腸炎である。
本発明は、上記で定義した一般式(III)又は(IIIa)の化合物又はその塩の有効量(例えばインビボPETイメージングに有効な量)を、1種以上の薬学的に許容される補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含んでなる放射性医薬組成物も提供する。
本発明の好ましい実施形態は、医療用、特に血管新生に関連した疾患又は病態の例えばPETによるインビボ診断又はイメージングに使用するための、上記で定義した一般式(III)又は(IIIa)の化合物又はその塩である。
式(III)又は(IIIa)の放射性標識コンジュゲートは、PETイメージングのため、所望の信号が得られる十分な量で患者に投与すればよく、典型的な放射性核種投与量は体重70kg当たり0.01〜100mCi、好ましくは0.1〜50mCi、最も好ましくは1〜20mCiで通常十分である。
したがって、式(III)又は(IIIa)の放射性標識コンジュゲートは、当業者の技術常識に属する方法で、生理学的に許容される担体又は賦形剤を用いて投与用に製剤化すればよい。例えば、上記化合物は、適宜薬学的に許容される賦形剤を添加して、水性媒体に懸濁又は溶解し、次いで得られた溶液又は懸濁液を滅菌すればよい。
本発明は、別の態様では、放射性医薬品をヒト又は動物の身体に投与してヒト又は動物の身体の少なくとも一部分の画像を生成させるインビボイメージング(好適にはPET、好ましくは血管新生に関連した疾患又は病態のイメージング)法に用いられる放射性医薬品の製造における、式(III)又は(IIIa)の放射性標識コンジュゲート又はその塩の使用を提供する。
本発明は、さらに別の態様では、放射性医薬品を身体(例えば脈管系)に投与して放射性医薬品が分配された身体の少なくとも一部分の画像をPETを用いて生成させる血管新生に関連した疾患又は病態のインビボ診断又は画像生成方法であって、該放射性医薬品が式(III)又は(IIIa)の放射性標識コンジュゲート又はその塩を含む、方法を提供する。
本発明は、さらに別の態様では、癌(好ましくは血管新生)に関連した病態に対処するための薬剤(細胞傷害性薬剤)によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターする方法であって、式(III)又は(IIIa)の放射性標識コンジュゲート又はその塩を身体に投与し、細胞受容体(好ましくは内皮細胞受容体、特にαvβ3受容体)による上記コンジュゲートの取り込みを検出し、任意ではあるが好ましくは、上記投与と検出を、例えば上記薬剤による治療の前後途中に繰り返すことを含んでなる方法。
本発明のさらに別の実施形態では、式(II)の補欠分子族と式(I)の化合物を含む、放射性フッ素化トレーサー調製用キットを提供する。
上記キットの使用に際して、式(II)の化合物を式(I)の化合物に添加するが、各々好適には水性緩衝液(pH1〜11)に好適に溶解させてもよい。穏和な温度で1〜70分間反応させた後、標識ペプチドを例えば固相抽出(SPE)又は梗塞液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、回収すればよい。
以下の実施例によって本発明を例示するが、実施例では以下の略語を用いる。
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
NMR:核磁気共鳴
TFA:トリフルオロ酢酸
hr(s):時間
min(s):分
DMAP:4−(ジメチルアミノ)ピリジン
THF:テトラヒドロフラン
DCM:ジクロロメタン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
TBAF:フッ化テトラブチルアンモニウム
MeOH:メタノール
TLC:薄層クロマトグラフィー
TIS:トリイソプロピルシラン
DMSO:ジメチルスルホキシド
PBS:リン酸緩衝食塩水
PyAOP:[7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム−ヘキサフルオロリン酸]
Boc:t−ブトキシカルボニル
RT:室温。
実施例1: 4−トリメチルアンモニウムベンズアルデヒドトリフレート(化合物1)の合成
本化合物は、Haka他(J.Labelled Cpds. & Radiopharms 1989 27(7)823)に記載の方法で合成した。
実施例2: ペプチド前駆体(化合物3)の合成
ペプチド(化合物2)は標準的ペプチド合成法を用いて合成した。
(a)1,17−ジアジド−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン
乾燥ヘキサエチレングリコール(25g、88mmol)と塩化メタンスルホニル(22.3g、195mmol)の無水THF(125mL)溶液をアルゴン雰囲気下に保ち、氷水浴で0℃に冷却した。トリエチルアミン(19.7g、195mmol)の無水THF(25mL)溶液を、45分かけて滴下した。1時間後に冷浴を取り除き、反応液をさらに4時間撹拌した。混合物に水55mLを添加し、次いで炭酸水素ナトリウム(5.3g、pH8まで)及びアジ化ナトリウム(12.7g、195mmol)を添加した。THFを留去し、水溶液を24時間還流した(二層を形成)。混合物を冷却し、エーテル(100mL)を添加し、水相を塩化ナトリウムで飽和させた。相を分離して、水相をエーテル(4×50mL)で抽出した。有機相を一つにまとめて塩水(2×50mL)で洗浄し、乾燥させた(MgSO)。溶媒を濾過して蒸発させ、黄色油状物26g(89%)を得た。生成物はそれ以上精製せずに次の工程に用いた。
(b)17−アジド−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカナミン
激しく攪拌した5%HCl(200mL)中の1,17−ジアジド−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカン(25g、75mmol)の懸濁液に、トリフェニルホスフィン(19.2g、73mmol)のエーテル(150mL)溶液を室温で3時間かけて添加した。反応混合物をさらに24時間撹拌した。相を分離して、水相をジクロロメタン(3×40mL)で抽出した。水相を氷水浴で冷却し、固形水酸化カリウムを添加してpHを12に調整した。水相を濃縮して、生成物をジクロロメタン(150mL)で抽出した。有機相を乾燥(NaSO)、濃縮して、黄色油状物22g(95%)を得た。生成物をエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)で分析した(MH計算値307.19、実測値307.4)。粗油状物はそれ以上精製せずに次の工程に用いた。
(c)23−アジド−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15,18,21−ヘキサオキサトリコサン酸
17−アジド3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカナミン(15g、50mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、ジグリコール酸無水物(Acros社、6.4g、55mmol)を添加した。反応混合物を一晩撹拌した。反応はESI−MS分析でモニターし、反応を完結に導くため試薬を追加した。溶液を濃縮して黄色残渣を得、これを水(250mL)に溶解させた。ジクロロメタンで一晩連続的に抽出することによって水相から生成物を単離した。溶媒を乾燥、蒸発させたところ、収量は18g(85%)であった。生成物をESI−MS分析で特性決定した(MH計算値423.20、実測値423.4)。生成物はそれ以上精製せずに次の工程に用いた。
(d)23−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15,18,21−ヘキサオキサトリコサン酸
23−アジド−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15,18,21−ヘキサオキサトリコサン酸(9.0g、21mmol)を水(50mL)に溶解し、H(g)−Pd/C(10%)を用いて還元した。反応は、ESI−MS分析で所望の生成物に完全に転化したことが認められるまで(MH計算値397.2、実測値397.6)、行った。粗生成物はそれ以上精製せずに次の工程に用いた。
(e)(Boc−アミノオキシ)アセチル−PEG(6)−ジグリコール酸
ジシクロヘキシカルボジイミド(515mg、2.50mmol)のジオキサン溶液(2.5mL)を、(Boc−アミノオキシ)酢酸(477mg、2.50mmol)とN−ヒドロキシスクシンイミド(287mg、2.50mmol)のジオキサン溶液(2.5mL)に滴下した。反応液を室温で1時間撹拌し、濾過した。濾液を、23−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15,18,21−ヘキサオキサトリコサン酸(1.0g、2.5mmol)とN−メチルモルホリン(278μl、2.50mmol)の水溶液(5mL)が入った反応容器へ移した。混合物を室温で30分間撹拌した。所望の生成物に完全に転化したことがESI−MS分析で認められた(MH計算値570.28、実測値570.6)。粗生成物を分取用HPLC(カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出波長214nm、勾配:60分間で0〜50%B(A=HO/0.1%TFA、B=アセトニトリル/0.1%TFA)、流速10mL/分)で精製し、純粋な生成物500mg(38%)を得た。生成物はHPLCで分析した(カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2.00mm、検出波長214nm、勾配:10分間で0〜50%のB(A=HO/0.1%TFA、B=アセトニトリル/0.1%TFA)、流速0.75mL/分、保持時間(Rt):5.52分)。NMR分析でさらに確認した。
(f)(Boc−アミノオキシ)アセチル−PEG(6)−ジグリコール酸と化合物2との結合
(Boc−アミノオキシ)アセチル−PEG(6)−ジグリコール酸(0.15mmol、85mg)及びPyAOP(0.13mmol、68mg)をDMF(2mL)に溶解した。N−メチルモルホリン(0.20mmol、20μL)を添加し、混合物を10分間撹拌した。化合物2(0.100mmol、126mg)とN−メチルモルホリン(0.20mmol、20μL)のDMF(4mL)溶液を添加し、反応混合物を25分間撹拌した。追加のN−メチルモルホリン(0.20mmol、20μL)を添加し、混合物をさらに15分間撹拌した。DMFを減圧蒸発させ、生成物を10%アセトニトリル/水で抽出し、分取用HPLC(カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出UV波長214nm、勾配:40分間で5〜50%B(A=HO/0.1%のTFA、B=アセトニトリル/0.1%のTFA)、流速10mL/分)で精製し、100mgの半精製標品を得た。TFAに代えてHCOOHを用いた2次精製工程(勾配:0〜30%B、その他は上記の通り)で、生成物89mg(50%)を得た。生成物をHPLC(カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出UV波長214nm、勾配:10分間で0〜30%B(A=HO/0.1%のHCOOH、B=アセトニトリル/0.1%のHCOOH)、流速0.3mL/分、保持時間10.21分)で分析した。ESI−MSでさらに生成物の特性決定を行った(MH 2+計算値905.4、実測値906.0)。
実施例3: 化合物3と 18 F−フルオロベンズアルデヒドとの化学選択的ライゲーションによる化合物4の合成
ペプチド3の脱保護を、ペプチド10mgに水分量5%のTFAを添加することによって実施した。1ml水中のBoc脱保護ペプチド(5.9mg、0.0044mmol)を、1mlアセトニトリル中の4−フルオロベンズアルデヒド(化合物1)(1.1mg、0.94μl、0.0089mmol)に添加した。混合物のpHは3.5であった。45分後、70℃で、混合物を分取用逆相クロマトグラフィー(Phenomenex Luna C18カラム,00G−4253−N0、溶媒A=水+0.1%TFA、溶媒B=CHCN+0.1%TFA、勾配:30分間で10〜40%B、流速5.0ml/分、214nmで検出)で2回精製して、純粋な化合物2.0mg(32%)を得た(分析用HPLC:Phenomenex Luna C18カラム,00G−4252−E0、溶媒A=水+0.1%TFA、溶媒B=CHCN+0.1%TFA、勾配:20分間で10〜50%B、流速1.0ml/分、保持時間16.3分、検出波長214及び254nm)。質量分析法でさらに特性決定したところ、m/z値1437.2[M−H]であった。
実施例4: 18 F−化合物4の放射合成
方法1
18F−フッ化物(最大370MBq)をKryptofix 222(0.5mlアセトニトリル中5mg)及び炭酸カリウム(0.1M水溶液50μl)の存在下、N下で110℃に20分間加熱して共沸乾燥した。この間、3×0.5mlのアセトニトリルを添加し、蒸発させた。40℃未満に冷却した後、トリメチルアンモニウムベンズアルデヒドトリフレート溶液(0.4mlのDMSO中1mg)を添加した。反応容器を密閉し、90℃で15分間加熱して標識反応を行った。一方、化合物3(6mg)を水分量5%のTFA(200μl)で室温で5分間処理した。次いで溶媒を減圧除去した。脱保護ペプチドを、0.1M NHOAc緩衝液(pH4)0.4mlに再び溶解し、反応容器中で4−18F−フルオロベンズアルデヒドと一緒にした。反応容器を密閉し、70℃に15分間加熱して結合させた。室温に冷却した後、分取用ラジオHPLC(カラム:Phenomenex Luna C18(2) 5μm 10×100mm、溶媒A=水/0.1%TFA、溶媒B=アセトニトリル/0.1%TFA、勾配:5分間で15〜25%B、12分間で25%B、10分間25〜50%のB、流速4.0mL/分、検出UV波長210及び254nm)で生成物を得た。生成物画分を水(10ml)で希釈し、SepPak C18−plusカートリッジ(10mlのEtOH及び20mlのHOでコンディショニング)にかけた。化合物4をエタノール(1mL)で溶出した。エタノールを減圧除去し、化合物4をPBSに処方した。
方法2
a) 18 F−フルオロベンズアルデヒドの放射合成
18F−フッ化物(最高370MBq)をKryptofix 222(0.5mlアセトニトリル中5mg)及び炭酸カリウム(0.1M水溶液50μl)の存在下、N下で110℃に20分間加熱して共沸乾燥する。この間、3×0.5mLのアセトニトリルを添加し、蒸発させる。40℃未満に冷却した後、トリメチルアンモニウムベンズアルデヒドトリフレート溶液(0.4mlのDMSO中1mg)を添加する。反応容器を密閉し、90℃で15分間加熱して標識反応を行う。粗反応混合物を室温に冷却し、水を添加して希釈する。混合物を複数のイオン交換カートリッジ(エタノール(又はアセトニトリル)及び水でコンディショニング)に連続して流し、アセトニトリル/水混合物で溶出する。溶出液をC18 SepPakを用いて濃縮するがフルオロベンズアルデヒドはアセトニトリル中に溶出される。
b)化合物3と4− 18 F−フルオロベンズアルデヒドとの結合
化合物3を水分量5%のTFAで室温で5分間処理する。次いで溶媒を減圧蒸発させて除去する。ペプチドを0.1M NHOAc緩衝液(pH4)0.5mLに再び溶解し、反応容器中で4−18F−フルオロベンズアルデヒドと一緒にする。反応容器を密閉し、70℃に15分間加熱して結合させる。室温に冷却した後、分取用ラジオHPLC(方法1に記載の通り)又はSPEで生成物を得る。
生物学的データ
結合試験
αvβ3インテグリン受容体を発現することが知られている細胞膜標品を用いて、125I−エキスタチン及びF−19標識ペプチドを競合リガンドとして用いた競合結合試験を実施した。結合曲線を得て、Prism(商標)ソフトウェアを用いてKiを算出した。
化合物4のKi値は10nMであった。
ルイス肺癌細胞での生体内分布
ルイス肺癌(LLC)細胞(0.1mL、1×10細胞/mL培地)をマウス(オス、C57BL/6、約25g)の右大腿部内側に皮下注射した。腫瘍の増殖についてマウスを15日間モニターしたが、この時点が、モデル増殖の期間中最も血管新生が高いレベルを示すため、選択された)。
18F−化合物の生体内分布を求めるため、担癌動物に、尾部静脈から試験標品(0.1mL、5〜10MBq/mL)を静脈内注射した。注射後の様々な時点で動物を安楽死させた。筋肉、腎臓、尿、肺、肝臓、胃、小腸、大腸、甲状腺、腫瘍を精査し、血液サンプルを採取した。解剖組織及び血液サンプルを秤量し、計数した(Wallac社自動ガンマカウンター)。各時点で少なくとも3匹の動物を調べた。結果は%id及び%id/g組織として表す。
表1及び表2は、ルイス肺癌モデルマウスにおける化合物4の生体内分布を示す。経時的データを集計した。5回の独立した試験の平均データ(n>3)を平均(標準偏差)として示す。
比較として、ルイス肺腫瘍モデルマウスにおける化合物5の生体内分布を表3及び表4に示す。時間ごとにデータを集計した。5回の独立した試験の平均データ(n>3)を平均(標準偏差)として示す。
化合物4にPEG部分を付加することによって、インビボ特性が格段に改善された。特に、120分後の血液、筋肉、肺及び肝臓のようなバックグラウンド組織での残存活性は、化合物5に比べて化合物4で格段に低かった。すなわち、腫瘍/バックグラウンド比が格段に向上し、イメージングが可能となる。

Claims (12)

  1. 放射性フッ素化方法であって、以下の式(I)の化合物を式(II)の化合物と反応させて式(III)の化合物を得る、方法。
    式中、 7 は−NH 2 又は次式の基であり、bは2〜20の整数である。
    (式中、aは1〜10の整数である。)
    式中、nは0〜20の整数であり、mは0〜10の整数であり、Yは水素、C1-6アルキル基はフェニルである。
    式中、m、n及びYは式(II)の化合物で定義した通りであり、 7 及びbは式(I)の化合物で定義した通りである。
  2. aが1である、請求項1記載の方法。
  3. bが3〜10である、請求項1又は請求項2記載の方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の式(Ia)の化合物。
  5. 以下の式(IIIa)の化合物又はその塩。
    式中、nは0〜20の整数であり、mは0〜10の整数であり、Yは水素、C 1-6 アルキル基又はフェニルであり、7は−NH2又は次式の基であり、bは2〜20の整数である。
    式中、aは1〜10の整数である。
  6. 当該化合物が次式で表される、式(IIIa)の化合物。
  7. 当該化合物が次式で表される、式(III)の化合物。
  8. 請求項乃至請求項のいずれか1項記載の式IIIa)の化合物又はその塩の有効量を、1種以上の薬学的に許容される補助剤、賦形剤又は希釈剤と共に含んでなる放射性医薬組成物。
  9. 医療用使用するための、請求項乃至請求項のいずれか1項記載の式IIIa)の化合物又はその塩。
  10. 血管新生に関連した疾患又は病態のインビボ診断又はイメージングに使用するための、請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の式(IIIa)の化合物又はその塩。
  11. 放射性医薬品をヒト又は動物の身体に投与してヒト又は動物の身体の少なくとも一部分の画像を生成させるインビボイメージングに用いられる放射性医薬品の製造における、請求項乃至請求項のいずれか1項記載の式IIIa)の放射性標識コンジュゲート又はその塩の使用。
  12. 前記インビボイメージング法が、関連した病態に対処するための薬剤によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニターするためのものであり、上記投与と検出繰り返し実施される、請求項11記載の使用
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