JP4948704B2 - トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ活性の特異的な遺伝的修飾および相同性または異型性の環境における発現 - Google Patents
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Description
(技術分野)
本発明は、トレハロース−6−ホスフェートの活性の増加および/または調節能の変更を有する、植物、動物、真菌類などの真核生物を得る方法に関する。本発明はまた、触媒活性および/または調節能について予想外の変化を発揮するトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼの特異的に修飾された対立遺伝子、およびその構築体を含有する形質転換された植物などの生物に関する。本発明はまた、トレハロース−6−ホスフェートのレベルおよびトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼの活性を測定する新規の方法に関する。
【0002】
トレハロースの生合成は2つの酵素的工程からなる。すなわち、トレハロース−6−ホスフェートを合成するトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ(TPS)により触媒される工程と、トレハロースを形成するトレハロース−6−ホスフェート・ホスファターゼ(TPP)により触媒される工程である。トレハロース代謝の遺伝子は最初、トレハロースを蓄積することが長年知られていた酵母や細菌などの生物に発見された。最近、この遺伝子の同族体が、トレハロースが検知されるようなレベルで見つかっていなかった高等植物や高等動物でも発見された。しかし、現在までのところ、これらのTPS遺伝子産物の酵素的トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ活性をインビトロで証明することは、不可能であった。異型系におけるこれらの発現も高いトレハロースの蓄積をもたらさない。これらの植物または動物のTPS遺伝子を用いて、同族系または異型系における商業的に重要な性質を改善することは、報告されていない。
【0003】
貯蔵糖の蓄積における通常の役割に加えて、トレハロース代謝が、ストレス耐性、グルコースの分解機構への進行の制御、グルコース誘導の情報伝達において主要な役割を果たすことは、知られている。下記するように、これらの表現型の性質は高度に産業上の重要性がある。
【0004】
強力な、または完全ともいえる脱水の下でも生存適用について感嘆すべき能力が酵母細胞、真菌胞子、ある種の無脊椎動物、甦生植物に存在している。これらの生物は水と接触するとすぐに機能を再開する。これらの無水耐性生物はまた、凍結、高度の真空、大量のイオン照射、高圧、非常な高温に損傷をこうむらないで耐えることができ、その多くは、タンパク質および膜の保護物としてニ糖類トレハロースを減少しないで蓄積する。
【0005】
トレハロースの保護機能もインビトロで証明されている。トレハロースを細胞、機能質、酵素、抗体、食物に加えると、これらのものを長期間の全脱水下で保存する。また、種々の別のストレス、例えば、高温、高圧、凍結などから保護する。
【0006】
維管束植物において、極く少数種でトレハロースの存在が確実に証明されている。また、いわゆる砂漠甦生植物 Selaginella lepidophylla に高レベルのトレハロースが存在する。この植物は、農産物を含む他のすべての高等植物と異なり、完全な脱水に耐えることができる。
【0007】
細胞および酵母におけるTPS遺伝子の欠失変異体はトレハロースを合成できず、浸透圧耐性、熱耐性、高圧耐性を欠いている。これは、TPS遺伝子が種々の型の耐性に関与することを示している。
【0008】
植物、動物、微生物またはこれらの特殊な部分にストレスに対する耐性を付与するために、これらの生物でトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼの活性を発現することが非常に望ましい。そうすると、農産物を、熱、旱魃、凍結を時にまたは継続的に蒙る地域において栽培することができる。植物や動物に由来する腐りやすい食物は、簡単な脱水で保存でき、長時間および遠距離の輸送における貯蔵ができる。
【0009】
本発明は初めて、トレハロースが普通はつくられないか、検知され得るようなレベルで蓄積しない生物、例えば、高等植物や高等動物において、高度のトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ活性および高度のトレハロースの蓄積を得ることを可能にした。従って、本発明は初めて、高等植物や高等動物におけるトレハロース蓄積の高度に効率的で制御された使用を可能にし、ストレス耐性を高める。
【0010】
本発明におけるこの達成は、特異的に修飾されたTPS遺伝子の構成的、誘導的および/または器官特異的な発現を示す、植物、動物、真菌類などから選択される真核生物の調製方法による。この方法は次の工程を含む。
【0011】
a)TPS遺伝子を準備し、
b)TPS遺伝子に対する適切な修飾を、該遺伝子を酵母の対応遺伝子と並べることにより設計し、そして遺伝子のどの部分が酵母遺伝子の5’末端を越えて伸張するかを確証し、
c)トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ活性の増加を達成するために、酵母遺伝子の5’末端を越えて伸張するTPS遺伝子のN末領域の部分、好ましくはその完全な伸張部分を欠失または不活化し、
【0012】
d)修飾遺伝子を発現ベクターに構成的、誘導的および/または器官特異的なプロモーターの制御下にクローニングし、
e)得た発現ベクターでもって植物の細胞または組織を形質転換し、
f)形質転換した植物の細胞または組織から完全な生物を再生せしめる。
【0013】
酵母遺伝子の5’末端を越えて伸張するTPS遺伝子のN末領域の部分不活化は、変異生成によりなし得る。
【0014】
本発明によって、植物由来の種々の遺伝子の末端切除で、酵母で発現したときに機能を増加できることが分かった。トレハロースの蓄積の増加および高度のトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ活性が、非切除の遺伝子に比して、認められた。構成的、誘導的および/または器官特異的なプロモーターを用いると、発現を種々の仕方で修飾および制御できる。誘導は、果実などの組織特異的であり、時間特異的であり、環境状態の変化によってなされる。後者の例としては、熱誘導や旱魃誘導がある。
【0015】
熱耐性を付与するための修飾TPS遺伝子の機能は次のシステムで確認できる。トレハロースは酵母における熱耐性の獲得に必要である。tps1△およびtps1△tps2△酵母欠失変異体は熱感性であり、表現型が対応同族遺伝子での相補性により修復される。植物または動物のTPSが酵母TPS1と機能的に類似かどうかを決定するために、所望の遺伝子を有するプラスミドで形質転換されたtps1△およびtps1△tps2△酵母変異体を熱耐性の獲得について試験する。細胞の熱耐性獲得能を致死熱ショックで測定する。
【0016】
酵母においてトレハロース代謝はグルコースについての生長に必須である。TPS遺伝子の欠失はグルコースの分解機構への非制御的進行を起こし、糖ホスフェートの過剰蓄積および遊離ホスフェートとATPの喪失をもたらす。トレハロース−6−ホスフェートはインビトロでヘキソキナーゼ活性を阻害することが知られており、TPS酵素がヘキソキナーゼ活性を制限してインビボでもその制御を行うと考えられる。
【0017】
グルコース誘導情報伝達、およびスクロースなどの関連する糖により直接的または間接的に誘導される情報伝達も、酵母などにおける外因性の糖の利用性や、光合成植物または動物の消化系などにおける糖の内部での産生に対する適切な反応について多くの生物で重要な役割を演じる。酵母において外因性のグルコースまたは関連の糖の存在は、エタノールの最大産生および迅速な生長を起こすいくつかの情報伝達経路を生起する。光合成植物において糖誘導情報伝達は、光合成活性、および供給源(光合成部分)と受容器官(非光合成部分、特定の根、種子、果実における)との糖の分配を調節する。動物において糖誘導情報伝達は、貯蔵器官による糖の吸収速度を調節する。例えば、肝臓による血糖グルコースの吸収速度を調節する。
【0018】
酵母のTPS変異体はグルコース誘導情報伝達を欠如する。欠如はヘキソキナーゼ活性のトレハロース−6−ホスフェート阻害の不存在によると考えられる。高等植物において、トレハロースは検知できる量では蓄積しないが、トレハロース代謝遺伝子の機能はよくわかっていない。異種TPSまたはTPP遺伝子が発現される植物は、光合成活性および供給源−受容部の糖分配を変えて、糖誘導情報伝達経路に対する正の効果を示す。これは、TPSまたはTPP遺伝子の発現により生じたトレハロース−6−ホスフェートのレベル変化に起因すると考えられる(特許出願 Zeneca-Morgan 6047 PCT)。
【0019】
本発明において、予測できない状態が示すように、植物TPS遺伝子のN末端を切除すると、その触媒活性および調整能が増加する。従って、本発明は、高等植物および場合により動物における糖誘導情報伝達をより効率的に変化せしめ得る。さらに、これが達成できるのは、いかなる植物および動物の種においても原則的に同族的遺伝子修飾、すなわち、同族TPS酵素の末端切除型の発現による。
【0020】
本発明において、糖誘導情報伝達におけるこの変更は、ストレス耐性の改善について上記したのと同じ工程で達成できる。
【0021】
グルコースの分解機構への流入についての制御を修復およびグルコース誘導情報伝達を修復するための修飾遺伝子の機能は、次のシステムで確認できる。酵母のTPS変異体はグルコース上で増殖する能力がない。グルコースの分解機構への流入およびグルコース誘導情報伝達の制御を欠くからである。本発明によって、tps1△酵母株における修飾TPS遺伝子の発現がグルコース上での増殖を回復し、増殖に必要な適切なグルコース誘導情報伝達制御の回復を示すことが分かる。
【0022】
本発明は、そのさらなる態様によって、トレハロース−6−ホスフェートおよびトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼを測定するための新規な方法を提供する。これは、トレハロース−6−ホスフェートの定量について高い信頼性を有する方法である。トレハロース−6−ホスフェートのレベルは、現在まで測定されているすべての生物において、非常に低く、100−200μmの範囲にある。この低濃度のために、通常の方法、例えば、HPLCによっては正確な定量が困難であり、信頼性が低い。クロマトグラフィ−法も、サンプルが一度に一つしか測定できないので、長くかかる。別の研究グループは、間接的方法でトレハロース−6−ホスフェートによる酵母ヘキソキナーゼの阻害を用いて、細胞抽出物におけるトレハロース−6−ホスフェートの濃度を検査している(Blazquez M. A., Lagunas R., Gancedo C. and Gancedo J. M ., 1993, FEBS Lett. 329, 51-54)。しかし、一般に、このような検定法は、細胞抽出物中に存在する他の化合物と作用しやすい。特に、酵母には存在しない多くの化合物を含有する植物や動物などの生物から誘導されるとき、その傾向がある。
【0023】
本発明において、トレハロース−6−ホスフェートのレベルの定量は、精製ホスホトレハラーゼ酵素、好ましくは Bacillus subtilis 由来の酵素を用いる新規の酵素検定法で達成できる。この方法は次の工程を含有する。
【0024】
a)分析すべき細胞の抽出媒体、好ましくは強酸での抽出。これはすべての酵素活性を破壊するが、トレハロース−6−ホスフェートを変性しない、
b)抽出物の中和、
c)抽出物の遠心分離、
【0025】
d)上澄み液中に存在するトレハロース−6−ホスフェート含有の酸性化合物の、アルカリ性および中性の化合物からの分離。好ましくはアニオン交換カラムによる、
e)酸性化合物を含有するフラクションを Bacillus subtilis 由来の精製ホスホトレハラーゼで処理し、トレハロース−6−ホスフェートをグルコース−6−ホスフェートおよびグルコースに定量的に変性さし、
【0026】
f)工程e)で産生されたグルコースを、産生されたグルコース−6−ホスフェートおよび残留の糖ホスフェートから、好ましくは2回目のアニオン交換カラムにより分離すること、
g)グルコースの存在を、好ましくはグルコースオキシダーゼおよびペルオキシダーゼ検定法により測定すること。
測定したグルコースレベルは、細胞抽出物中に元々存在するトレハロース−6−ホスフェートのレベルと等しい。
【0027】
トレハロース−6−ホスフェートの測定に確立した方法を、トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ活性の測定に拡大できる。現在まで、トレハロース−6−ホスフェート形成の割合に直接的に基づくトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ活性の測定をするのに利用できる方法はなかった。トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼは、基質グルコース−6−ホスフェートおよびUDPグルコースからのトレハロース−6−ホスフェートおよびUDPを触媒する。
【0028】
トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ活性を測定するのに広く使用されている普通の方法では、酵素の第2産物、UDPのの形成を測定する(Hotiger, T,., Schmutz, P., and Wiemken, A., 1987, J. Bacteriol. 169: 5518-5522)。しかし、細胞抽出物中の他の酵素、例えば、グルコーゲン・シンターゼが存在して、UDPをつくり得る。トレハロース−6−ホスフェートの形成を直接測定する方法が非常に好ましい。さらに、該方法では、UDPを測定し得る前に反応の終了を要するので、時間関数で酵素機能を継続的に測定できない。
【0029】
本発明により今回、精製ホスホトレハラーゼ酵素のよって一度に2つの目標を達成できることが分かった。この目的のために組み合せ検定法を開発した。ここでは、トレハロース−6−ホスフェートをグルコースに精製ホスホトレハラーゼによって直接的かつ継続的に変換し、産生されたグルコースをグルコース・オキシダーゼ/ペルオキシダーゼ法を用いて継続的に測定する。この検定法において、ホスホトレハラーゼ、グルコース・オキシダーゼおよびペルオキシダーゼは過剰に存在し、細胞抽出物中のトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼが着色産物形成の制限因子である。
【0030】
本発明はさらに、特異的に修飾されたTPS遺伝子の構成的、誘導的および/または器官特異的な発現を示す植物などの真核生物に関する。この植物などの真核生物は、本発明方法によって得ることができる。本発明はさらに、この植物の種子や植物学的に再生可能構造、例えば、挿木、体細胞胚、原形質、およびこれらの種子および構造に由来する子孫の生成に関する。本発明はさらに、他の真核生物のさらなる子孫にも関する。
【0031】
TPSは、植物など種々の源に由来し得る。特に、Selaginella lepidophylla、Arabidopsis thaliana、コメ、リンゴ、サトウキビ、ヒマワリ(Helianthus annus)、タバコ( Nicotiana tabacum)、ダイズ(Glycine max)に由来する。種々の遺伝子を同族および異種の環境で発現させ得る。
【0032】
形質転換する真核生物は、植物であり、遺伝子が由来しTPS活性が得られるように修飾される植物、または異種の植物である。修飾した遺伝子に特に好ましい宿主は、農作植物、特に、本来的にはストレス耐性がないが、本発明方法によりストレス耐性が得られる植物である。あるいは、修飾の目標は、植物の全体または特殊な部分において光合成生産能を増加すること、および/または炭素分配を改善することである。
【0033】
形質転換する他の真核生物は、真菌、動物、動物細胞である。TPS活性の増加に有益な真菌の例として、Aspergillus niger、Agaricus bisporus、Pictia pastoris、Kluyveromyces lactis、メチロトローフ酵母がある。酵母の例は Saccharomyces cerevisiae である。動物細胞は、例えば、タンパク質および低分子の生産に使用される哺乳動物および無脊椎動物の細胞培養物、およびバキュロウイルス発現に使用される無脊椎動物の細胞である。
【0034】
本発明を下記の実施例でさらに説明するが、制限することを意図するものでない。
【0035】
実施例
一般材料と方法
試薬
ベーカー(Baker)またはシグマ(Sigma)の分析用特別試薬を使用した。制限酵素および修飾酵素はベーリンガー−マンハイム(Boehringer-Mannheim)からのものであった。ZAPcDNA合成キット、Uni−ZAP・XRベクターおよびギガパック(Gigapack)IIゴールド・パッケージ抽出物はストラタジーン・クローニング・システムズ(Stratagene Cloning Systems)(USA)から入手した。ヌクレオチド配列を決定するシークエナーゼ・バージョン(Sequenase Version)2.0キットは合衆国バイオケミカル・コーポレーション(Biochemical Corporation)(USA)から購入した。
【0036】
テマリカタヒバ(フッカツソウ)(Selaqunella lepidophylla, Hook. & Grev. Spring.)はメキシコ・モレロス(Morelos)州およびオアハカ(Oaxaca)州の乾燥地帯の岩石土壌から乾燥状態で採集した。次いで、これをコンビロン(Conviron)増殖チャンバーまたは温室内で制御条件(平均50%の湿度と、24℃、16時間の照明)下にて栽培した。植物への給水は2L植木鉢に隔日に水20mlとした。テマリカタヒバを脱水ストレス処理するために、全草または小葉をワットマン(Whatman)3MM濾紙上に置き、風乾した。その時点から脱水時間を決定した。
【0037】
株
cDNAバンクを大腸菌株XL1−ブルーMRF1に塗付し、SOLR株を用いて“ZAP−cDNA合成キット”(ストラタジーン・クローニング・システムズ、カリフォルニア、USA)添付の指示書に従い、ラムダファージからpブルースクリプトを切出した。大腸菌DH5アルファ株を用いてサブクローニングし、構築体を調製した。アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A. tumefaciens)LBA4404株を用いタバコを形質転換し、プラスミドpRK2013を担持する大腸菌HB101株(Bevan, M. (1984) Nucl. Acids Res. 22: 8711-8721)を用い、すでに記載した三親接合法(Bevan, M. (1984)、上記)により、プラスミドpIBT36を大腸菌からアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A. tumefaciens)に移入した。
【0038】
DNA操作
細菌の形質転換、プラスミドおよびラムダ・バクテリオファージからのDNA単離などの組換えDNA技法は標準手法に従い実施した(Sambrook, J., Fritsch, E.F. & Maniatis, T. (1989) Molecular cloning: A laboratory manual. Second Edition. Cold Spring Harbor Laboratory press, New York)。放射活性断片の標識化はオリゴヌクレオチドでの“ランダム・プリンティング”により実施した(Feinberg, A.P. & Vogelstein, B. (1983) Anal. Biochem. 132: 6.130)。
【0039】
構築体
発現ベクターpBN35はpBin19(Bevan, M. (1984)、上記)の誘導体であって、850bpのカリフラワー・ウイルスCaMV35Sプロモーター(Guilley, H., Dudley, K., Jonard, G., Richards, K., & Hirth, L. (1982) Cell 21: 285-294)をpBin19のHindIIIとSalI部位間に、またT−DNAノパリン・シンセターゼ遺伝子のポリアデニル化シグナルを構成する260bp断片(Bevan, M., Barnes, W. & Chilton, M.D. (1983) Nucl. Acids Res. 11: 369-385)を同じベクターのSacIとEcoRI部位にサブクローニングして構築したものである(図4)。
プラスミドpIBT36(図5)はsl−tps/pcDNAを発現ベクターpBN35のBamHIとKpnI部位にサブクローニングして構築した。
【0040】
テマリカタヒバ(S. lepidophylla)cDNAバンクの構築
cDNAクローンを単離するために、発現バンクは、ZAPcDNA合成キット、Uni−ZAP・XRベクターおよびギガパック(Gigapack)IIゴールド・パッケージング抽出物を用い、2.5時間乾燥したテマリカタヒバ(S. lepidophylla)小葉から単離したmRNAにより調製した。製造元(ストラタジーン・クローニング・システムズ、カリフォルニア、USA;カタログ#200400、200401および2004029)が提供する“ZAP−cDNA合成キット”実験室マニュアルに工程毎に従った。ポリA+RNAは既知法(Chomczyniski, P. & Sacchi, N. (1987) Anal. Biochem. 162: 156-159)に従い、2.5時間乾燥したテマリカタヒバ(S. lepidophylla)小葉から抽出した。バンクの当初の力価は1mlあたり2×106バクテリオファージ・プラークであったが、増幅後には1mlあたり1.5×1011バクテリオファージ・プラークであった。
【0041】
プラスミド・pブルースクリプトSK(−)は実験室マニュアル“ZAP−cDNA合成キット”(ストラタジーン・クローニング・システムズ、カリフォルニア、USA;カタログ#200400、200401および2004029)に基づく“ザッピング”技法により、バクテリオファージから切出した。
【0042】
DNA配列決定
挿入断片の逐次欠失は酵素ExoIIIおよびヌクレアーゼS1により選択したクローン(Henikoff, S. (1984) Gene 28: 351-359)から創製し、次いでジデオキシヌクレオチドによる鎖成長終結法を用いてそのヌクレオチド配列を決定した(Sanger, F., Nicklen, S. & Coulson, A.R. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463-5467)。DNA配列はウイスコンシン大学遺伝学コンピュータ・グループ(UWGCG)ソフトウエア・パッケージ(Devereux, J. Haeberli, P. & Smithies, O. (1984) Nucl. Acids Res. 12: 387-395)により分析した。疎水性プロットは既知プログラム(Kyte, J. & Doolittle, R. (1982) J. Mol. Biol. 157: 105-132)を用いて入手し、ベストフィット(BESTFIT)プログラムによるタンパク質配列平衡整列はUWGCGパッケージに含まれていた。
【0043】
核酸のハイブリダイゼーション
バンクをスクリーニングするために、バクテリオファージ・プラークをハイボンド(Hybond)ナイロン膜(アマーシャム・ライフ・サイエンス(Amersham Life Sciences))に転移し、DNAを変性する常套法により処理した(Sambrook, J. et al.(上記)Second Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)。濾紙はポリヌクレオチド・キナーゼにより32P同位元素で標識したオリゴヌクレオチドにより、6×SSC(1×SSC=0.15M−NaClおよび0.015Mクエン酸ナトリウム)を37℃で用い、ハイブリダイズさせた。濾紙は3回洗浄したが、各洗浄同一温度で10分間とし、以下の条件によった:6×SSC;4×SSC;および2×SSC。
【0044】
サザンおよびノーザン・ゲルブロット技法は、以下の修飾を加えた標準プロトコール(Sambrook, J. et al. 上記)に従い実施した。ゲノム・サザン法については、DNAをTBE緩衝液中0.8%アガロース・ゲル上で分画し、ハイボンドN+ナイロン膜(アマーシャム・ライフ・サイエンス)に転移した。該濾紙は65℃で2×SSC(1×SSC=0.15M−NaClおよび0.015Mクエン酸ナトリウム)を用い、プローブとして32P同位元素で標識したsl−tps/pcDNAによりハイブリダイズした。濾紙は3回洗浄したが、各洗浄同一温度で20分間とし、以下の条件によった:2×SSC;1×SSC;および0.5×SSC。ノーザン法については、MOPS−ホルムアルデヒド・緩衝液中で1.2%アガロース・ゲルを使用し、ハイボンドN+ナイロン膜を転移に使用した。ハイブリダイゼーション条件は50%ホルムアミドと2×SSC中42℃とした。濾紙の連続3回の洗浄はそれぞれ55℃で、2×SSC、2×SSCおよび1×SSCにより実施した。
【0045】
タバコの形質転換
タバコ(Nicotania tabacum var. SR1)の形質転換はプラスミドpIBT36を含むアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)LBA4404株を用い、葉ディスク法(Horsch, R.B., Fry, J.E., Hoffmann, N.L., Eichholtz, D., Rogers, S.G., Fraley, R.T. (1985) Science 227: 1229-1231)により実施した。葉ディスクはビタミン(Murashige, T. & Skoog, F. (1962) Physiol. Plant. 15: 473-497)、ホルモン(0.1ppmのNAAおよび1ppmのBAP)および抗生物質(100μg/mlカナマイシンおよび200μg/mlカルベニシリン)を含むMS培地を容れたペトリ皿中で培養し、4ないし6週間で苗条を再生させた。苗条は、抗生物質(100μg/mlカナマイシンおよび200μg/mlカルベニシリン)を含み、ホルモンもビタミンも含まないMs培地を容れたマゼンタ・ポットに移し、2ないし3週間後に根を再生させた。再生させた植物を土壌入りのポットに移し、増殖チャンバー(24℃で16時間の照明)内で栽培し、4ないし6週間内に稔性植物を得た。
【0046】
トレハロースの定量
トレハロースはトレハラーゼによる分解法により定量した(Araujo, P.S.:, Panek, A.C., Ferreira, R. & Panek, A.D. (1989) Anal. Biochem. 176: 432-436)。可溶性糖類を得るために、新鮮な組織500mgまたは乾燥組織50mg(液体窒素中にて凍結)をミクロ遠沈管用ホモジナイザーにて、100mM−PBS緩衝液(pH7.0)中粉砕した。4倍容量の無水エタノールを加え、サンプルは蒸発を避けるためにネジ式キャップで蓋をしたチューブ内で10分間沸騰させた。次いで、ミクロ遠沈管に入れて13,000rpm、2分間遠沈し、上清を回収した。サンプルは等容量の80%エタノールで再抽出し、ペレットを真空乾燥した。サンプルは50mM−PBS(pH6.5)0.250mlに再懸濁した。
【0047】
トレハロースの定量のために、トレハラーゼ4μl(約15mU)を該抽出物10ないし30μlに加え(シグマ・カタログNo.T−8778)、30℃で2時間培養した。負対照として、抽出物を入れたが、トレハラーゼは入れなかったチューブを用い、正対照としては、純トレハロース(シグマ・カタログNo.T−3663)を入れたチューブを用いた。50mM−PBS(pH7.0)により容量を0.5mlとし、シグマ・キット(カタログNo.510−A)からのグルコースオキシダーゼおよびペルオキシダーゼ0.5ml加えて、グルコースを定量した。インキュベーションは37℃で40分間とし、425nmでの吸光度を直ちに測定した。グルコース濃度を計算するために、0ないし75mM間の値での標準グルコース曲線を用いた。トレハラーゼを入れていないチューブの値をこの酵素で処理した値から差引き、グルコース1モルがトレハロース1/2モルであることを考慮して、トレハロースの量を計算した。
【0048】
酵素活性の定量
トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼの活性を定量するために、本質的に340nmでのNADHのモル吸光度を測定する共役検定法からなる報告された方法(Londesborough, J. & Vuorio, O (1991) J. Gen. Microbiol. 137: 323-330)に従った。反応は、40mM−HEPES/KOH(pH6.8)緩衝液、10mMグルコース−6−ホスフェート、5mM−UDP−グルコース、10mM−MgCl2およびウシ血清アルブミン1mg/mlを含む100μl容量中で実施した。反応混合物を30℃で10分間培養し、2分間沸騰させて反応停止した。チューブを冷却後、40mM−HEPES/KOH(pH6.8)緩衝液、10mM−MgCl2、ホスホエノールピルビン酸エステル2.5μg/ml、0.24mM−NADH、3.5単位のピルビン酸キナーゼおよび5単位の乳酸デヒドロゲナーゼ(シグマ・カタログNo.P−0294)を含む900μlを加えた。上記同様の条件下でインキュベートし、340nmのNADHの消失を分光光度法により測定した。トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼの比活性を定量するために、タンパク質濃度をブラッドフォード法により測定した(Bradford, m.m. (1976) Anal. Biochem. 72: 248-254)。
【0049】
実施例1
TPS遺伝子の選択
適切なTPS遺伝子は様々な方法で選択することができた。植物TPS遺伝子を単離するためには2つの主たる可能性がある。まず第一に、TPS1遺伝子を欠失しているサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞の機能を相補することが直接的で簡便な方法である。この遺伝子の欠失は酵母において多面発現表現型の原因となる(Van Aelst et al., 1993, Mol. Microbiol. 8, 927-943)。表現型の一つはかかる細胞がグルコース上で増殖し得ないことである。対象となる植物からのcDNAライブラリーを酵母発現プラスミドに構築することで、TPS1を欠失している酵母株を形質転換することができる。形質転換体は次いでグルコースでの増殖の回復について調べることができる。他方、形質転換体でのトレハロースの合成も測定することができる。もし形質転換体がグルコース培地上での増殖能を回復しているか、または再びトレハロースを産生していることが判明するならば、プラスミドDNAを単離して、その挿入断片の配列を決定することができる。次いで、その配列に基づいて真のTPS同族体またはサプレッサーが単離されたか否かを結論することができる。
【0050】
第二に、報告されたヌクレオチド配列から推定されるトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼのアミノ酸配列について比較することができる。用いる配列は大腸菌、EC−otsA[Kaasen, I., McDougall, J., Strom, A.R. (1994) Gene 145: 9-15];シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、SP−TPS1 [Blazquez, M.A., Stucka, R., Feldman, H & Gancedo, C. (1994) J. Bacteriol. 176: 3895-3902];アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、AN−TPS1 [Wolschek, M.F. & Kubicek, C.P. (1994) NCBI: 配列番号551471; 未公開];サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、SC−TPS1 [McDougall, J., Kaasen, Y. & Strom, A.R. (1993) FEMS Microbiol. Let. 107: 25-30];クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、KL−GGS1 [Luyten, K., de Koning W., Tesseur, Y., Ruiz, M.C., Ramos, J., Cobbaert, P., Thevelein, J.M., Hohmann, S. (1993) Eur. J. Biochem. 217: 701-713] 由来のものである。
【0051】
植物同族体単離についての一例として、Sl−TPSのcDNAの単離について本明細書にて説明する。
【0052】
乾燥したテマリカタヒバ(フッカツソウ)(Selaqunella lepidophylla)をメキシコ・モレロス(Morelos)州およびオアハカ(Oaxaca)州の乾燥地帯の岩石土壌から採集した。次いで、これをコンビロン(Conviron)増殖チャンバー内で2Lの花卉上、24℃、16時間の照明と平均50%の湿度下にて栽培した。植物への給水は隔日に水20mlとした。
【0053】
cDNAクローンを単離するために、2.5時間乾燥したテマリカタヒバ(S.lepidophylla)の小葉50gから単離したmRNA5μgを用いて発現バンクを調製した。cDNAを合成した後、Uni−ZAP XRベクター1μgを用いてクローン化した。バクテリオファージに生体外でゲノムを詰込み、次いで縮重したオリゴヌクレオチドの混合物について、報告されている大腸菌および酵母の配列のトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼにおいて共通領域をコードしているものを篩い分けした。単離したクローンの一つは完全コーディング領域をもつcDNA(sl−tps)に対応する(配列番号1)。
【0054】
推定アミノ酸配列の分析結果は、細菌および種々の酵母の報告されているトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼの配列に比較して、トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼについては53%の同一性、トレハロース−6−ホスフェート・ホスファターゼについては29%であった。
【0055】
SL−TPSと呼称されるsl−tpsによりコードされるタンパク質のトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼに対する相同性は、前者のN末端領域でマップ化し、トレハロース−6−ホスフェート・ホスファターゼに対するSL−TPSの相同性を全配列について見出すことができる。
【0056】
テマリカタヒバ(S. lepidophylla)について記載した単離操作は、他の植物、好ましくは単子葉および双子葉植物いずれについても使用することができる。この方法は一般的に応用可能な方法であるが、その理由はイワヒバ(Selaginella) TPSを取出すために使用した分解オリゴヌクレオチドをシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) にて成功裏に試験し得たからである。PCR反応を用い、シロイヌナズナ(A. thaliana) TPS遺伝子の断片を単離し得た。この断片に基づき、完全なシロイヌナズナ(A. thaliana) TPS遺伝子を単離した(配列番号2)。
【0057】
実施例2
構築体の調製
1.植物TPS遺伝子を含む酵母発現ベクターの構築
完全長S1TPS1遺伝子を含む3.1kbの断片は、エキスパンド・ハイ−フィデリティ(Expand High-fidelity) DNAポリメラーゼ(ベーリンガー;Boehringer)によるPCR(94℃、3分、1サイクル;94℃、1分、50℃、1分、72℃、2分、40サイクル;72℃、10分、1サイクル)により増幅して得た。オリゴヌクレオチドとして、SLTPS−S1(
【表1】
、太字は開始コドンを示し、下線はNcoI部位を示す)および共通(
【表2】
)プライマーを鋳型としてのpブルースクリプトSKにクローン化したS1−TPS1cDNAと共に使用した。PCR−断片をNcoIおよびKpnIで消化し、pSAL4にクローン化した。酵母tps1Δおよびtps1Δtps2Δ変異株を形質転換し、SDGal(−ura)プレート上で選択した。相補性はSDG1c(−ura最少培地プラス100μM−CuSO4)にて検定した。
【0058】
N末端欠失構築体の構築には、以下のオリゴヌクレオチドを使用した:オリゴ5’SLTPS−100
【表3】
、太字は開始コドンを示し、下線はNcoI部位を示す。オリゴ3’共通
【表4】
。
【0059】
2.8kb断片は、オリゴヌクレオチドSLPTPS−100と共通プライマー、および鋳型としてpブルースクリプトSKにクローン化したS1−TPS1cDNAにより、エキスパンド・ハイ−フィデリティ(Expand High-fidelity) DNAポリメラーゼ(ベーリンガー;Boehringer)によるPCR(94℃、3分、1サイクル;94℃、1分、50℃、1分、72℃、2分、40サイクル;72℃、10分、1サイクル)により増幅して得た。PCR−断片をNcoIおよびKpnIで消化し、pSAL4にクローン化した。酵母tps1Δおよびtps2Δ変異体を形質転換し、SDGal(−ura)にて選択した。相補性はSDG1c(−ura最少培地プラス100μM−CuSO4)にて検定した。
シロイヌナズナ(A. thaliana) TPS遺伝子を含む酵母発現ベクターの構築のために、RT−PCRを用いた。
【0060】
100mM−NaCl含有の液体MS培地にて2週間生育したシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) cv.コロンビア実生から抽出した総RNA(5μg)を、オリゴdT(25マー)プライマーにより、スーパースクリプト(SuperScript) II(ギブコ;GIBCO)を用い逆転写した。PCR反応(94℃、3分、1サイクル;94℃、1分、50℃、1分、72℃、2分、40サイクル;72℃、10分、1サイクル)は、オリゴAth/TPS−5’(
【表5】
;太字は開始コドンを示し、下線はNcoI部位を示す)およびAth/TPS−3’(
【表6】
;太字は終止コドンを示し、下線はNotI部位を示す)を用いてAtTPS1を増幅するために、エキスパンド・ハイ−フィデリティ(Expand High-fidelity) DNAポリメラーゼ(ベーリンガー;Boehringer)により実施した。2.8kb断片は予期どおりのサイズに対応して入手し、NcoIおよびNotIで消化して、pSAL6にクローン化した。酵母tps1Δおよびtps1Δtps2Δ変異株を形質転換した。形質転換体はSDGal(−his最少培地)にて増殖した。相補性はSDG1c(−his最少培地プラス100μM−CuSO4)にて検定した。
【0061】
N末端欠失構築体の構築には、以下のオリゴヌクレオチドを使用した:
オリゴAth/TPS−ΔN5’
【表7】
;太字は開始コドンを示し、下線はNcoI部位を示す。
オリゴAth/TPS−3’
【表8】
;太字は終止コドンを示し、下線はNotI部位を示す。
【0062】
100mM−NaCl含有の液体MS培地にて2週間生育したシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) cv.コロンビア実生から抽出した総RNA(5μg)を、スーパースクリプト(SuperScript) II(ギブコ;GIBCO)とオリゴdT(25マー)プライマーを用い逆転写した。PCR反応(94℃、3分、1サイクル;94℃、1分、50℃、1分、72℃、2分、40サイクル;72℃、10分、1サイクル)は、オリゴAth/TPS−?N5’およびAth/TPS−3’を用いてAtTPS1を増幅するために、エキスパンド・ハイ−フィデリティ(Expand High-fidelity) DNAポリメラーゼ(ベーリンガー;Boehringer)により実施した。2.6kb断片は予期どおりのサイズに対応して入手し、NcoIおよびNotIで消化して、pSAL6にクローン化した。酵母tps1Δおよびtps1Δtps2Δ変異株を形質転換した。形質転換体はSDGal(−his最少培地)にて増殖した。
相補性はSDG1c(−his最少培地)にて検定した。
【0063】
2.植物TPS遺伝子含有植物発現ベクターの構築
植物発現ベクターをクローン化するために、植物トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ遺伝子を酵母tps1Δ変異体にて先ず試験し、次いで適切な植物形質転換ベクターにサブクローン化した。2.9kbのAtTPS1および2.6kbのΔNAtTPS1コーディング領域を、プラスミドpSAL6::AtTPS1およびpSAL6::ΔNAtTPS1をNcoIおよびKpnI酵素により消化して単離した。この後者の部位はpSAL6のNotI部位下流に位置する。
【0064】
3.1kbのS1TPS1および2.8kbのΔNS1TPS1をコーディングする領域は、同様にプラスミドpSAL4.S1TPS1およびpSAL4.dNS1TPS1をNcoIおよびKpnI酵素により消化して単離した。DNA断片はすべてAtTPS1 5’リーダー、XbaIおよびNcoI部位を含む57bpの断片に結合した。この断片はオリゴヌクレオチドNA4(
【表9】
)およびNA5(
【表10】
)をアニーリングして入手した。
【0065】
各連結リーダー・コーディング領域カセットはさらにXbaIおよびKpnIで消化した発現ベクターpBN35(図1)に連結し、AtTPS1を含むプラスミドpIBT101(図2)、ΔNAtTPS1を含むpIBT102(図3)、S1TPS1を含むpIBT103(図4)、およびΔNS1TPS1を含むpIBT104(図5)に誘導する。ベクターpBN35は、強力な構成的プロモーターであるカリフラワーウイルス(CaMV)35Sプロモーター(Guilley, H., et al., Cell 21: 285-294 (1982)) の制御下、如何なる遺伝子の発現をも可能とする。
【0066】
これらのプラスミドは再生成時にトレハロースを産生し得るアグロバクテリウム系により形質転換された遺伝形質転換植物を得るために使用した。これらの構築体はアグロバクテリウム系を用い、あるいは技術上既知の他の方法により形質転換し得る植物において発現し得る。
【0067】
発現ベクターpBN35はpBin19の誘導体(Bevan, M., Nucl. Acids Res. 22: 8711-8721 (1984)) であって、pBin19のHindIIIとSalI部位間の850bpのカリフラワーウイルスCaMV35Sプロモーター(Guilley, H. et al., 上記)およびT−DNAノパリンシ・シンセターゼ遺伝子のポリアデニル化シグナルを構成する260bp断片(Bevan, M. et al., Nucl. Acids Res. 11: 369-385 (1983)) を同じベクターのSacIおよびEcoRI部位にサブクローニングすることにより構築した(図1)。
【0068】
3.HA標識S1 TPS1、At TPS1、ΔN S1TPS1およびΔN At TPS1対立遺伝子の構築
完全長植物TPS1遺伝子とN末端欠失対立遺伝子間の活性の相違が、前者が酵母細胞中で発現される際に正しいTPS複合体を形成し得ないことのよるのかどうか決定するために、これら遺伝子の標識化体を調製した。図9に示した図式を、これらの構築体を調製するために用いた。図10は得られたプラスミドを示す。
【0069】
植物TPS遺伝子を含むプラスミドを2つのユニーク制限部位で消化するが、その一つは遺伝子(R1)の直後で切断すること、第二は遺伝子(R2)の3’に近接して切断することである。R1とR2の併用によって除かれる断片は、R1とR2で消化されるPCRによって得られる断片と置換える。R2部位はPCR産物内に位置し、一方、R1部位は逆プライマー(rev)の部分である。逆プライマーの構成は以下のとおりである:
関連遺伝子−3’の6種アミノ酸に対する5’R1−STOP−HA標識コドン
【0070】
表1は、使用したプライマーを示す:
該プライマーは完全長遺伝子並びにΔN対立遺伝子両方に使用することができる。
表1
【表11】
表2
表2は、使用した異なるベクターと制限酵素を示す。
【表12】
【0071】
実施例3
修飾植物TPS遺伝子を有する酵母tps変異体の機能的相補性
1.tps1Δとtps1Δtps2Δ株の増殖欠陥の相補性
完全長またはN末端欠失テマリカタヒバ(フッカツソウ)(S. lepidophylla)またはシロイヌナズナ(A. thaliana)TPS遺伝子を含む酵母発現ベクターによりtps1Δとtps1Δtps2Δ株を形質転換した。対照として、野生型のtps1Δまたはtps1Δtps2Δ株を空プラスミドにより、または酵母TPS1遺伝子を含むプラスミドにより形質転換した。形質転換体はグルコースおよびフルクトース含有培地上での増殖について試験した。図6は完全なもしくは切断したテマリカタヒバ(S. lepidophylla)TPS遺伝子を含む酵母発現ベクターにより形質転換した野生型およびtps1Δ株のグルコースおよびフルクトース含有培地上での増殖を示す。レーンは以下のとおりである:1.WT;2.tps1Δ;3.tps1Δ+ΔNTPS1 S1;4.tps1Δ+TPS1 S1;5.tps1Δ+TPS1 Sc;6.tps1Δtps2Δ;7.tps1Δtps2Δ+ΔNTPS1 S1;8.tps1Δtps2Δ+TPS1 S1;9.tps1Δtps2Δ+TPS1 Sc;10.tps1Δtps2Δ+TPS2 Sc。
【0072】
完全長クローンはtps1Δtps2Δ株を相補するのみである。グルコースまたはフルクトース上でtps1Δ株の増殖欠陥を相補することはできない。しかし、N末端部分が欠失するならば、Cu誘発性プロモーターから発現したテマリカタヒバ(S. lepidophylla)遺伝子がtps1Δ株の増殖欠陥を相補することが可能である。このことはN末端欠失の有益な効果を明らかに示している。
【0073】
もし植物遺伝子がより強力なプロモーターの制御下に発現されるならば、完全長クローンもグルコースまたはフルクトース上での増殖のためにtps1Δ株を相補することができる(未開示)。
【0074】
2.tps1Δ株におけるトレハロースレベルの回復
トレハロースはニーベス(Neves)らの方法により酵母細胞中で測定した(Microbiol. Biotechnol. 10: 17-19 (1994))。この方法において、トレハロースはトレハラーゼにより分解され、形成されるグルコースをグルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ法により測定する。簡潔に説明すると、細胞を減圧フラスコ上、0.22または0.45μm細孔の濾紙上に捕集し、水洗した。細胞を集め、その重量を量り、液体窒素中で凍結した。トレハロース抽出のために、Na2CO3(0.25M)を細胞に加え(細胞50mgあたり1ml)、20分間沸騰させた。遠沈後、上清10μlを用い、トレハロース含量を測定した。各サンプルは1M酢酸溶液5μlを加えて中和した。各サンプルに、緩衝液T1(300mM−NaAc+30mM−CaCl2、pH5.5)5μlおよびトレハラーゼ溶液(真菌フミコーラ・グリセア(Humicola grisea) から単離)20μlを添加した。サンプルは45℃で45分間インキュベートした。この工程において、トレハロースはグルコースに分解される。サンプルに平行して、トレハロース標準液および対照サンプルをも測定した。このインキュベーションの後、チューブを簡単に遠心し、その上清30μlを用いてグルコースを定量した。
【0075】
各サンプルに、o−ジアニシジン(0.1mg/ml)含有グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ溶液1mlを添加し、その混合物を30℃で1時間インキュベートした。56%(v/v)硫酸を加えて反応を停止させた。各サンプルについて、546nmでの吸光度を測定した。
【0076】
トレハロースレベルは、Cu誘発性プロモーターの制御下に、S1TPS1、ΔNS1TPS1、AtTPS1またはΔNAtTPS1遺伝子を含むプラスミドで形質転換したサッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)にて測定した。表3は3回の個々の実験結果を示す。略号1Δはtps1Δを表す。
表3
【表13】
【0077】
この表の結果は図6に示した結果を確認するものである。完全長クローンはグルコースまたはフルクトース含有培地上でtps1Δ株の増殖欠陥を相補することができない。さらにガラクトース上で、これらの完全長クローンはtps1Δ株においてトレハロースを産生することができない。しかし、もしテマリカタヒバ(フッカツソウ)(S. lepidophylla)またはシロイヌナズナ(A. thaliana)TPS遺伝子のN末端部分が欠失していて、かつtps1Δ株がこれらの遺伝子を含むプラスミドにより形質転換されているならば、これらの株はグルコースまたはフルクトース上で増殖可能となり、これらの株も高レベルのトレハロースを産生する。(“−”は細胞がこの条件下で増殖し得ないために測定できなかったことを意味する;“ND”は検出不可を意味する)
【0078】
3.N末端欠失はインビトロ検定においてTPS活性を得るために必要である。トレハロース−6-ホスフェート・シンターゼ活性はホッティガー(Hottiger)ら記載の共役酵素検定法により測定した(J. Bacteriol., 169: 5518-5522 (1987))。粗製抽出物は50mMトリシン緩衝液(pH7.0)で平衡化した2mlベッド容量のセファデックスG−25カラム上で脱塩した。検定混合物は50mMトリシン/KCl(pH7.0)、12.5mM−MgCl2、5mM−UDPグルコース、10mMグルコース−6−ホスフェート、酵素サンプルおよび水を含み、総容量240μlであった。対照においては、グルコース−6−ホスフェートを除き、水に置換えた。検定混合物を30℃で30分間インキュベートした。5分間沸騰して反応を停止させた。冷却後、検定混合物を13000rpmで10分間遠心した。上清中の形成されたUDPを酵素法により測定した。検定混合物は66mMトリシン/KCl(pH7.6)、1.86Mピルビン酸ホスホエノール、0.3mM−NADH、5U乳酸デヒドロゲナーゼ、およびサンプル60μlを含み、総容量990μlであった。反応はピルビン酸キナーゼ10μlを添加することにより開始させ、37℃で30分間インキュベートした。340nmでの吸光度減少を記録し、それを用いて酵素活性を計算した。
【0079】
【0080】
TPS活性の測定結果を表3に示す。その結果は完全長クローンではないN末端欠失TPS遺伝子のみが、酵母中で発現された場合に、トレハロース−6-ホスフェート・シンターゼの高い活性に至らしめることを示している。
【0081】
HA標識対立遺伝子の構築後、これらの対立遺伝子をtps1Δおよびtps1Δtps2Δ株に導入した。以下の株が得られた:
【表14】
【0082】
HA標識の存在は植物遺伝子の機能を阻害しなかった。完全長植物対立遺伝子のCUP1プロモーター(pSalベクター)からの発現はtps1Δ株のグルコース上増殖欠陥を回復しなかった。N末端欠失対立遺伝子の発現は、非HA標識対立遺伝子について観察したと同様に、グルコース上の増殖を回復しなかった。
【0083】
完全長およびN末端欠失HA標識S1 TPS1遺伝子は、tps1Δおよびtps1Δtps2Δ株両方において試験した。
【0084】
株PVD164(tps1Δ+S1 TPS1−HA)、PVD165(tps1Δ+ΔN S1 TPS1−HA)、PVD179(tps1Δtps2Δ+S1 TPS1−HA)、およびPVD181(tps1Δtps2Δ+ΔN S1 TPS1−HA)はSDgal−URA(+CuSO4)において定常期に至るまで増殖した。細胞を抽出緩衝液(1リットルにつき:10.7gのNa2HPO4・2H2O、5.5gのNaH2PO4・H2O、0.75gのKCl、246mgのMgSO4・7H2O、1mM−PMSF、pH7.0)で洗浄し、500μlの抽出緩衝液に再懸濁した。抽出はガラスビーズの存在下に1分間2回ボルテックスすることにより実施した。抽出液は20分間遠沈し澄明とした。
【0085】
抽出液10μgを7.5%PAGEゲルで泳動させた。ブロッティング後、ニトロセルロース膜を、2%BSA含有TBST(5×TBS:6gのトリス+45gのNaCl、pH7.4;TBST=1×TBS+0.05%トゥイーン20)中1時間インキュベートした。次いで、濾紙を2%BSA含有TBSTに1:1000に希釈した抗HA抗体(抗HA高親和性、ラットモノクローナル抗体クローン3F10,ベーリンガー・マンハイム(Boehringer Mannheim))と1時間インキュベートした。濾紙をTBST中3×5分洗浄し、次いで、2%BSA含有TBSTに1:20000に希釈した第二抗体(シグマ(Sigma)A−6066;抗−ラット)と45分間インキュベートした。次いで、濾紙をTBST中3×5分洗浄した。その後、濾紙をTBS中で5分間洗浄した。アルカリホスファターゼ顕色混合物(10mlの100mMトリス、pH9.5;50mMMgCl2;100mM−NaCl、37.5μlX−ホスフェート塩および50μlニトロブルーテトラゾリウム(NBT))を濾紙に加え、バンドが見えるようになったところで水を加えて反応を停止させた。結果を図11に示す。
【0086】
完全長S1 Tps1タンパク質(HA標識なし)の分子量計算値は109353であり、一方、ΔN S1 Tps1タンパク質の分子量は99453である。
【0087】
完全長TPS1遺伝子とN末端欠失TPS1遺伝子間の相補能力の差が、完全長タンパク質が正しいTPS複合体を形成し得ないという事実を原因とするかどうか決定するために、完全長S1 TPS1またはΔN S1 TPS1遺伝子で形質転換したtps1Δ株から調製した酵母抽出物のFPLC分析を実施した。抽出液はゲル濾過カラム(スーパーデックス(Superdex)200HR10/30)上で分離し、750μlのフラクションをベル(Bell)ら記載のとおりに捕集した(J. Biol. Chem., 373, 33311-33319, 1998)。タンパク質を含む最初のフラクションはフラクション10である。カラムの特性に基づき、また検定実験に基づくと、フラクション10−14のタンパク質は800,000ないし400,000ダルトンの範囲の巨大タンパク質複合体に相当する。
【0088】
図11は抗HA抗体を用いたウエスタンブロットの結果を示す。ここでは、フラクション10ないし15のみを表示する。遊離のTPS1タンパク質はフラクション25〜27に存在する(未開示)。非常に重要なことは完全長およびΔN S1 TPS1対立遺伝子の両方がTPS複合体の他のサブユニットと複合体を形成することができる。このことはN末端領域それ自体が植物Tps1タンパク質の残余部分に直接阻害機能を発揮する可能性のあることを示していると思われる。
【0089】
完全長TPS1対立遺伝子が高等植物においてトレハロースの合成を達し得ないという事実は、N末端の阻害効果を原因とする可能性がある。これらN末端欠失構築体での形質転換植物構築は、高トレハロースレベルと良好なストレス抵抗性をもつ植物に至らしめ得る。
【0090】
実施例4
トレハロース産生シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) 形質転換植物の構築
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) 生態型コロンビアの形質転換は真空浸透法(Bechtold, N. et al., C.R. Acad. Sci. Paris 316: 1194-1199 (1993); Bent, A. et al., Science 265: 1856-1860 (1994)) により実施し、その際、ヘルパープラスミドpMP90と適切なプラスミド構築体を取込んでいるアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)C58C1を使用し、ヘルパーとしてプラスミドpRK2013を取込んでいる大腸菌株HB101を用いる三親交配により大腸菌株DH5−アルファから動員する。
【0091】
簡潔に説明すると、シロイヌナズナ(A. thaliana) を22〜20℃、16時間の照明下、4〜6週間、花序が出始めるまで成長させる。真空デシケーター内にアグロバクテリウム培養物を注ぎ込んだ後、シロイヌナズナ植物を入れたポットを倒立して置き、5分間真空浸透させる。植物を上記の条件下で成長させる。種子を収獲し、4.4g/LのMS塩、1%スクロース、0.5g/LのMES緩衝液pH5.7(KOH)、0.8%フィトアガー(phytagar)、および30mg/Lのカナマイシンを入れたペトリ皿中で選択し、形質転換体を選択する。500mg/Lのカルベニシリンを同様に加え、細菌増殖を停止する。5〜7日後、形質転換体が緑色植物として目視し得るので、これを1.5%フィトアガーとした以外上記と同じ培地に移植する。6〜10日後に、真葉をもつ植物を土壌に移植する。
【0092】
形質転換植物の分析を実施し、サザンブロット法により植物ゲノム内の遺伝子組込みと遺伝子コピー数を定量し、導入遺伝子の転写を標準技法によるノーザンブロット法により実施する(Sambrook, J. et al., Molecular cloning: A laboratory manual. Second Edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1989))。S1−TPS1に対する抗体を用い、ウエスタンブロットにより導入遺伝子が正しく翻訳されていることを確認する(Towbin, H. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76, 4350-4353 (1979))。トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ活性(De Virgilio, C. et al., FEBS Lett. 273: 107-110 (1990))およびトレハロース含量(Neves, MJ. et al., World J. Microbiol. Biotechnol. 10: 17-19 (1994)) を既知方法により測定した。
【0093】
表4は植物トレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ遺伝子を過剰発現する形質転換シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) の表現型を示す。
表4:植物トレハロース−6−Pシンターゼ遺伝子を過剰発現する形質転換シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) の表現型
【表15】
【0094】
実施例5
形質転換のジャガイモ、サトウダイコンおよびサトウキビ植物でのトレハロースの大量合成
遺伝子工学は、異種生体におけるほとんどすべての遺伝子発現を可能にした。形質転換植物は、商業的に興味深い化合物の大規模生産にバイオリアクターとして使用できる。これらの化合物は、本来ならば限られた量しか得られないものであって、例えば、生物分解性プラスチック、いろいろな炭水化物、薬用ポリペプチド、工業用酵素などである(Goddijn, O.J.M and Pen, J., Trends Biotech. 13: 379-387 (1995))。経済的重要性の大きい農産物を含む高等植物の形質転換に関して、さまざまな方法が報告されている(Walden, R. and Wengender, R., Trends Biotech. 13: 324-331 (1995))。タバコの形質転換(Horsch, R.B. et al., Science 227: 1229-1231 (1995))およびジャガイモの形質転換(Sheerman, S. and Bevan, M.W., Plant Cell Rep. 7: 13-16 (1988))は、Agrobacterium tumefasciens株を用いて効率的に実施されている。この技術は、該分野に精通する人達が実験室で使用できる。あらゆる植物トレハロース-6-ホスフェート・シンターゼ遺伝子について、植物体における発現のための構造体は、そのN末領域欠如のSlTPS1が好ましく、T-DNA発癌性遺伝子を欠くTiプラスミドから誘導したベクター内において作られ、そのベクターは、例えば、カナマイシン耐性を与える形質転換植物のための選択マーカーを含む(Bevan, M., 1984, Nucl. Acids Res. 22: 8711-8721)。さらに、形質転換植物に与えられる使用目的によっては、適当なプロモーターを選択しなければならない。T-DNAに含まれるノパリン・シンテターゼ遺伝子から得られるポリアデニル化信号が使用できる。(Bevan, M., Barnes, W. and Chilton, M.-D., 1983, Nucl. Acids. Res. 11: 369-385)。
【0095】
産業用トレハロースの過剰生産には、ジャガイモ、サトウキビおよびサトウダイコンのような植物を使用する。例えば、ジャガイモは大量の炭水化物を塊茎に貯蔵している。植物バイオマスの見地から、ジャガイモは単位面積当たりの最も生産性の高い代表的な農産物の一つである(Johnson, V.A. and Lay, C.L., 1974, Agric. Food Chem. 22: 558-566)。強力な塊茎特異的プロモーターとして、パタチン(patatin)遺伝子のクラスlプロモーターがあり(Bevan, M. et al., Nucl. Acids Res. 14: 4625-4638 (1986); Jefferson, R. et al., Plant Mol. Biol. 14: 995-1006 (1990))、それを使って大量のトレハロースを生産できる。トレハロースを過剰に生産する方法としてジャガイモやサトウダイコンあるいはサトウキビを使用する利点は、これらの植物が人間の食物であるからであり、したがって、そこから分離したトレハロースが容易に消費者に受けいれられる。植物の過剰生産で得たトレハロースは、制限酵素や修飾酵素 (Colaco, C. et al., Bio/Technology 10: 1007-1111 (1992))、ワクチンまたは加工食品のような産業用生物分子の保存に使用できる。
【0096】
実施例6
環境ストレス耐性を有する形質転換穀類植物
穀類は、世界中において栄養補給の基本的な食物を構成する。もし穀類が寒冷、酷暑、塩害、旱魃などに耐えてトレハロースを産生すれば、望ましくない気候条件下でも穀類を栽培できる。これを達成するために必要なのは、植物トレハロース-6-ホスフェート・シンターゼ遺伝子、好ましくはN末領域欠如のSl-TPS1を、これらの環境要因により誘導されるプロモーター制御のもとに、発現せしめることである(Baker, S.S. et al., Plant Mol. Biol. 24: 701-713 (1994); Takahashi, T. et al., Plant J. 2: 751-761 (1992); Yamaguchi-Shinozaki, K. and Shinozaki, K., Plant Cell 6: 251-264 (1994))。ストレス状況下でのみトレハロース合成が、炭水化物代謝を方向転換させるトレハロースの継続的生産(構成的プロモーターを使用による)を避けるので、結果として穀物の質と生産性が低下する。トウモロコシ(D'Halluin, K. et al., Plant Cell 4: 1495-1505 (1992))、オオムギ(Wan, Y. and Lemaux, P.G., Plant Physiol. 104: 37-48 (1994))、コムギ(Vasil, V. et al., Bio/Technology 10: 667-674 (1992))およびコメ(Shimamoto, K. et al., Nature 338: 274-276 (1989))の形質転換に関する報告がなされている。この方法は当分野の技術者によって実施できる。
【0097】
実施例7
長い貯蔵寿命を有する形質転換植物からとれる果実
トマト、マンゴー、バナナなどのさまざまなタイプの果実は熟すのが早く、消費者にわたる前に腐敗し易い。この問題を避けるために、果実を早期に収穫したり、冷凍庫や環境調節した倉庫などを慣習的に使用してきた。しかしながら、これらの方法は費用がかかり、果実を遠方に輸送する場合は特に経費の負担が大きい。トマトの貯蔵寿命を延ばすために、果実の熟成に関与するポリガラクツロナーゼ遺伝子をアンチセンスにおいて発現する形質転換植物を用いて、熟成を遅らせる方法が報告されている。しかしながら、熟成の時期を遅らせたとしても、この方法にはまだ問題が残る。ある程度の時間がたっても、熟成過程が続き、生産物が消費者に良好な状態で必ずしも到達しない。
【0098】
この方法に代わるものとして、形質転換のトマト、マンゴーおよびバナナにおけるトレハロースの製造を今回提案する。例えば、トマトの果実に特異的なプロモーター(Bird, C.R. et al., Plant Mol. Biol. 11: 651-662, (1988))を使用し、植物トレハロース-6-ホスフェート・シンターゼ遺伝子、好ましくはN末領域欠如のSlTPS1を過剰発現せしめると、トレハロースがトマトの器官に特異的に蓄積する。トマト植物の形質転換および再生の方法は(McCormick, S. et al., Plant Cell Rep. 5: 81-84 (1996)の記述のごとく)、当業者なら実行できる。トマトなどの果実を熟成状態で収穫し、次にその全部あるいは部分を脱水乾燥して、冷凍の必要もなく長期保存できる。それに水を加えて元にもどすと、果実は消費者の要求する自然な感覚的特性を持つようになる。原則的に、対象の植物について再生および形質転換のシステムが利用可能で、適当な果物特異的プロモーターが存在すれば、上記の方策は、別種の果物においても実施できる。
【0099】
実施例8
有性または無性の繁殖に関与する細胞、器官あるいは植物部分の生存能の増大
生存能が引き伸ばされた花粉の生産は、植物育成計画や生殖細胞質の保存に大いに役立つ。同様に、長期保存の可能性と、種子、球根、塊茎、接ぎ木、挿し木および花などの生存能の増大は、植物育成と生殖細胞質の保存に大きな影響を与える。形質転換植物の組織、器官あるいは部分にトレハロースが存在する場合、それらの組織、器官あるいは部分は、室温下の脱水状態で、トレハロースの存在しない場合よりかなり長期間の保存が可能である。この目的を達成するために、植物トレハロース-6-ホスフェート・シンターゼ遺伝子、好ましくはN末領域欠如のSl-TPS1を、組織特異的あるいは器官特異的プロモーターの統制下で植物発現ベクターにクローン化し、この構築体で対象の植物を形質転換することが必要である。この方法は、当業者に知られている。花粉特異的プロモーター(Guerrero, F.D. et al., Mol. Gen. Genet. 224: 161-168 (1990))、塊茎特異的プロモーター(Bevan, M. et al., Nucl. Acids Res. 14: 4625-4638 (1986); Jefferson, R., Plant Mol. Biol. 14: 995-1006 (1990))、および種子特異的プロモーター(Colot, V. et al., EMBO J. 7: 297-302 (1988))に関する報告がされており、これらを使って、植物においてトレハロース発現のためのハイブリッド遺伝子を作成できる。
【0100】
実施例9
各種ストレス状態の試験
形質転換植物の各種ストレス状態に対する耐性を下記の方法で試験した。
【0101】
1.寒冷
構成的35Sプロモーターの制御のもとで、Sl-TPS1を過剰発現する形質転換植物をサザンブロット法によって分析し、植物ゲノムへの正しいトランスジーン挿入を確認した。Sl-TPS1遺伝子の発現をノーザンブロット法で確証した。形質転換物を調べてトレハロースが蓄積すること、およびべクターのみによる形質転換の対照植物中にトレハロースを検出しないことを確認した。形質転換Arabidopsis T2世代植物(発芽後20日)をバーミキュライト培養土入りポットに植え、16時間明るく、8時間暗くして、24℃の温室内で水分を十分与えて育成した。対照植物およびトレハロース合成植物を温室に移し、明るさを一定にして4℃で10日間、次に温度を24℃にもどして2日間育成した。その他のセットの植物は24℃のままにした。寒冷処理した植物の損傷は、視覚により判断し(白化現象、葉の活力減退および枯死)、光合成における光阻害の測定(Murata, N. et al., Nature 356: 710-713 (1992))をIRGA装置(赤外線ガス分析器)で行なった。寒冷処理植物と非寒冷処理植物との比較の後に、葉の大きさと植物の高さで生長遅滞度を測定した。
【0102】
2.冷凍
耐冷凍度を、前記のようにして得た寒冷処理の対照植物およびトレハロース合成植物について電解質漏洩テストによって測定した。切断葉を零下のいろいろな気温で凍らせ、解凍した後に、伝導度メーター(Jaglo-Ottosen, K.R. et al., Science 280: 104-106 (1998))で組織からのイオン漏洩を測定して、細胞膜損傷による細胞の損害を評価した。
【0103】
3.熱
形質転換Arabidopsis T2世代植物(発芽後20日)を対照およびトレハロース合成に分けて、バーミキュライト培養土入りのポットに植え、16時間明るく、8時間暗くして、24℃の温室内で水分を十分与えて育成した。植物を事前調整して、35℃で2時間インキュベーションの後に、46℃〜56℃の範囲でいろいろな温度の熱ストレスに1時間さらし、それぞれ独立した処理を行なった。植物を5日間24℃の状態にもどした。植物の損傷は、視覚により判断した(白化現象、葉の活力減退および枯死)。24℃で7日間ペトリシャーレの内側の加湿フィルター上で育成した苗で同様な試験を行なった(Lee, J.H. et al., Plant J. 8: 603-612 (1995))。
【0104】
4.乾燥
形質転換シロイヌナズナ(Arabidopsis)T2世代植物(発芽後20日)を対照およびトレハロース合成に分けて、バーミキュライト培養土入りのポットに植え、16時間明るく、8時間暗くして、24℃の温室内で水分を十分与えて育成した。数日間加水を止めて葉がしおれるまで旱魃状態のストレスを課した後、再び植物に加水した。トレハロース合成植物が正常に生育したのに反して、対照植物は元に戻らなかった。また、切断葉を20%の湿潤状態で空気乾燥した。48時間以上、生体重を測定した。トレハロース合成植物は減量が少なかった(Holmstrom, K.-O. et al., Nature 379: 683-684 (1996))。
【0105】
5.浸透圧ストレス
形質転換シロイヌナズナ(Arabidopsis)T2世代植物(発芽後20日)を対照およびトレハロース合成に分けて、バーミキュライト培養土入りのポットに植え、16時間明るく、8時間暗くして、24℃の温室内で水分を十分与えて育成した。別組の植物に1〜3週間、いろいろな濃度のNaCl(100-300mM)あるいはPEG(5または10%)を注水した。植物の高さと生体重の変化を計測して成長度を評価した(Tarczynski, M.C. et al., Science 259: 508-510 (1993))。
【0106】
6.貯蔵
植物TPS遺伝子を、例えば、エチレンで誘導され、熟した果物のなかで活性が最高に達するトマト果物特異的E8プロモーター(Lincoln, J.E. & Fischer, R.L. Mol. Gen. Genet. 212: 71-75 (1988); Good, X. et al., Plant Mol. Biol. 26: 781-790 (1994); Tieman, D. et al., Plant Cell 4: 667-679 (1992)の制御下で、NOSpA 3’末端を含むpBIN19ベクター(Guilley, H. et al., Cell 21: 285-294 (1982))および(Bevan, M. et al., Nucl. Acids Res. 11: 369-385 (1983))においてクローン化する。これらのベクターは三世代交配によってAgrobacterium tumefasciensに動員される。トマトに関する形質転換は、確立しているプロトコールによって実行される(Tieman, D. et al., Plant Cell 4: 667-679 (1992))。形質転換果物の分析は種々の技術を使って行なう。ゲノム・サザン・ゲルにより植物ゲノムにおけるSl-TPS1の組込みを測定、また、ノザンブロット法によるSl-TPS1転写の測定およびウエスタンブロット法によるSl-TPS1タンパク質発現の測定がある。Sl-TPS1酵素活性およびトレハロース容量の計測は標準的な技術で行なう(De Virgilio, C. et al., FEBS Lett. 273: 107-110 (1990))および(Neves, MJ. et al., World J. Microbiol. Biotechnol. 10: 17-19 (1994))。貯蔵寿命についての分析は、成熟度を計るいろいろなパラメーターについて対照トマトおよびトレハロース産生トマトで数週間以上かけて行った。パラメータは、果実の軟化度、エチレン産生および果実の品質(生地、色合い、糖度、サイズなど)などである。
【0107】
実施例10
トレハロース-6-ホスフェートの検定
1.1 存在するトレハロース-6-ホスフェートの検定
Tps1、とりわけその生産物たるトレハロース-6-ホスフェートの重要性を調べるのに必須なのは、サイトソルに明らかに存在するTre6Pレベルの計測である。これまでに三つのTre6Pレベル測定方法が記述されている。一番目の方法(Melerio et al., 1993, Analytical Biochemistry 213, 171-2)においては、TCA抽出と組み合せてTre6Pを抽出し、次いでエーテル抽出、バリウムアセテート沈降、および陰イオン交換クロマトグラフィーを行う。Tre6Pは、アルカリ性ホスファターゼによって脱リンされ、トレハラ−ゼによって2つのグルコース分子中に加水分解される。最後にそのグルコースをグルコースオキシダーゼ−ペルオキシダーゼ法で検出する。この方法は、Tre6Pの大量生産と精製の手段として評価され開発されてきた。報告された酵母細胞におけるTre6Pレベルがグルコース、トレハロースおよびGlu6Pより低いので、この方法はバックグラウンドが大きく、感受性に欠ける。
【0108】
二番目の方法では、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によってTre6Pの検出および定量化を行なう(De Virgilio et al., 1993, Eur J Biochem 212, 315-23)。この方法を用いて熱ショックの後にtps2Δ変異体における高Tre6Pレベルの定量(Reinders et al., 1997, Mol Microbiol 24, 687-95)および抑制解除の野性型酵母細胞にグルコースを付加した後におけるTre6Pレベルの一過性増加の検出 (Hohmann et al., 1996, Mol Microbiol. 20, 981-91)が可能になった。検出限度はおよそ200μM Tre6Pであった。この検出限度は、細胞の指数増殖期および定常期において報告されている安定状態のレベルに近い(Blazquez et al., 1993, FEBS Lett 329, 51-4)。この方法の感度では、正常の酵母菌株あるいはTre6P合成に影響された菌株における濃度についての信頼できる定量が不可能である。
【0109】
三番目の方法は、Tre6Pがインビトロ酵母ヘキソキナーゼ活性を阻害する事実の観察に基づいている(Blazquez et al., 1994, FEBS Micorbio. Lett 121, 223-7)。この阻害のレベルは、抽出物のTre6P容量計測に役立つ。ヘキソキナーゼ活性は、その産物の1つであるフルクトース-6-ホスフェート(Fru6P)の形成率を測定して計れる。定常期および指数増殖期の細胞における細胞内Tre6Pは、およそ200μMと推定される。報告者達はまた、Tre6Pのヘキソキナーゼ活性に対する阻害効果は、グルコースの存在によって抑制されることを観察している。状況によっては、グルコースが高濃度であったり、一般的に、抽出物に他の干渉化合物が存在したりするから、この方法もまた適当ではない。
【0110】
1.2 新しい方法の原理
本発明の方法は、既存の方法よりもっと感受性に富み、信頼され得ることを主要な目的とする。この方法は、treA遺伝子がコードするBacillus subtilisホスホトレハラーゼ酵素に基づいている。この酵素は、細菌性PTS系と機能的に関連し、Tre6PをグルコースおよびGlu6Pへの加水分解する(Helfert et al., 1995, Mol Microbiol 16, 111-120; Rimmele & Boos, 1994, J Bacteriol 176, 5654-64)。この反応で産出したグルコースを計測することで、Tre6Pの最初の量が計算できる。Glu6Pをこの目的には使用しない。その理由は、この化合物がしばしば大量に酵母細胞中に存在するからである。この化合物をTre6Pから分離するのはいたって困難であり、一方、抽出物に元から存在するグルコースは、陰イオン交換クロマトグラフィーによって糖ホスフェートから容易に分離できる(図16)。
【0111】
1.3 枯草菌(Bacillus subtilis)ホスホトレハラーゼ酵素の精製
ホスホトレハラーゼ酵素はM.K. Dahlのグループによって精製され特性が解明された(Gotsche & Dahl, 1995, J Bacteriol 177, 2721-6; Helfert, et al., 1995, 前掲)。このグループは、強い枯草菌(Bacillus subtilis)degO36プロモターの後方に構成的に発現するtreA遺伝子を有するpSG2プラスミドを調製した。
【0112】
高度に安定した発現を得るために、遺伝子を、強いIPTG誘発性tacプロモーターの後方にpCYB1ベクター(New England Biolabs)内でクローン化した。treA遺伝子を、プライマーCVV5
【表18】
およびプライマーCVV6
【表19】
でポリメラーゼ連鎖反応増幅し、PCR産物の各末端にAseIおよびSapI制限部位をそれぞれ導入し、pCYB1プラスミド内でクローンし、pCVV1と名付けた(図7)。’および ,は、制限酵素の挿入部分を示す。
【0113】
原型のpSG2プラスミド(EcVV1)または新規のpCVV1プラスミド(EcVV3)で形質転換された菌株のホスホトレハラーゼ活性の比較によると、後者の菌株がpSG2プラスミドを有する菌株より、10倍以上の活性を有していた(図17)。
【0114】
これらのEcVV3細胞を一夜4mlのLB-アンピシリン培養基で育成した。翌日、この培養基を使用して100mlのLBアンピシリンを接種し、そのまま3時間育成した後にIPTG(0.5mM)で発現を誘導し、培養基を続いて3時間37℃でインキュベートした。
【0115】
細胞を10分間4000rpmで遠心分離し、30mlの緩衝液A(25mM Bis-Tris pH7、10mM KCl、1mM CaCl2、1mM NgCl2)に再懸濁した。再懸濁細胞を2度加圧型細胞破壊装置(フレンチプレス)に通して細胞を破壊した。次に、未精製抽出物を30分間35000rpmの超遠心分離機にかけて不要物を除いてきれいにし、浮遊物を0.22μmのフィルターで濾過した。
【0116】
MonoQ HR5/5カラム上の20カラム量において、100%緩衝液Aから50%緩衝液B(25mM Bis-Tris pH7、10mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、1mM NaCl)までの直線勾配で、陰イオン交換クロマトグラフィーを実行した。500μlのフラクションを集めた。各フラクションのPNPG加水分解活性を計測し、最も活性の高い2つのフラクションを溜め、200μlに凝縮し、Vivaspinカラム (Vivascience)によるゲル濾過を行った。ゲル濾過のために、10%緩衝液を有する定組成溶出をSuperdex75カラム上で行った。最も高い活性を有する2つの500μlフラクションを溜めて、再びこれを400μlに凝縮し、−30℃でアリコートに貯蔵した。両方のカラムをAKTA−FPLCシステム(Pharmacia)上で作動させた。
【0117】
このようにして実行した精製によって、回収34%の特定の活性が4.5倍増加した。クーマシーブルー染色法によるSDS-PAGE分析は、その予期したサイズからの巨大な過剰発現タンパク質バンドを既に示していた。レーンにつき10μgタンパク質の最終精製フラクションにおいて、これ以外のバンドは見られなかった。
【0118】
1.4 酵母培養基のサンプリング
3mlの細胞懸濁液を、温度-40℃で10mlの60%メタノールに吹きかけてサンプルを取り出した。これによって、即座に細胞代謝を阻止し、グルコースを抑制解除細胞に加えるなどの実験操作の後に、時間関数として細胞内代謝産物の同定ができる(de Koning & van Dam, 1992, Anal Biochem 204, 118-23)。
【0119】
1.5 代謝産物の抽出
冷凍細胞から代謝産物の抽出を過塩素酸抽出法で実行した。
【0120】
1.6 最初の陰イオン交換クロマトグラフィー
細胞抽出物中に存在するTre6Pからグルコースおよびトレハロースを分離するために、弱いNE2-SPE陰イオン交換機(International Sorbent Technoloy, UK)を選んだ。
【0121】
吸着剤500mgが再懸濁した3mlの100%メタノール溶液をカラムに満たし、3mlの100%メタノールですすいだ。0.5Mの酢酸でカラムを均衡させながら弱陰イオンをそれに結合させ、カラムの余剰酸を、3mlのMilliQ水で2度すすぎ去った。サンプルをとり、結合サンプルを3mlの20%メタノールですすいで、特異的結合を除去した。陰イオンを2.5Mアンモニア溶液(pH12.5)で溶出した。抽出細胞100mgにつき吸着剤250mgを使用した場合に、カラムに対する過負荷の危険性はなかった。塩はグルコース同定を有意に妨げることはなかった。溶出抽出物をTre6Pの損失なしに蒸発させた。
【0122】
1.7 ホスホトレハラーゼ反応の条件
報告で最も望ましいとされるpH4または5の場合に、酵素が不安定であったので、より生理学的なpH7を選んでインキュベーションを実行した。インキュベションのための緩衝剤を50mM Bis-Tris緩衝剤(pH7)とした。インキュベーション中の温度を37℃とした。2000Uのホスホトレハラーゼを加え、サンプルを37℃で2時間インキュベートした。1ユニットは酵素の量であって、上記の条件下で1分間につき1nmolのTre6Pを加水分解する。
【0123】
1.8 2番目の陰イオン交換クロマトグラフィー
ホスホトレハラーゼ反応において生産されたグルコースを、他の陰イオン細胞に含まれる化合物から分離するために、2番目の陰イオン交換クロマトグラフィーを、最初のと同様の方法で実行した。今度は、カラムと結合せずグルコースを含む流液を、真空乾燥によって回収し、凝縮した。
【0124】
1.9 グルコースの検定
乾燥したグルコースのサンプルを、250μlの50mMのBis-Tris緩衝液(pH7)に再溶解した。各サンプルから、200μlの非希釈サンプル、1/5希釈サンプル、1/25希釈サンプルについて、グルコース濃度を測定した。マイクロタイタープレートにおいて、15ユニットのグルコース・オキシダーゼ、10ユニットのペルオキシダーゼおよびオルト-ジアニシジン(100μg)を含有する20μlの反応混合物を、200μlの量のサンプルに加えた。このプレートを37℃で45分間インキュベートし、次いで、40μlの56%硫酸を加えて反応を止めた。吸光度を530nmの波長で計測した。
【0125】
1.10 回収および再産生性
過塩素酸抽出の操作手順での回収は57%である。完全Tre6P検定での回収は25%である。この方法による検出限度は100μMで、Tre6Pの標準直線は生理学的に適切な範囲では直線である(図8)。Tre6P標準の作成は、過塩素酸抽出の前に、Tre6Pシンターゼを欠如したtps1Δ菌株の細胞に対して既知の量のTre6Pを加えて行う。直線勾配の標準誤差と、4つの独立標準直線の切片は、それぞれ2%と9%であった。
【0126】
トレハロース-6-ホスフェートの濃度は、全長およびN末欠失の植物TPS1対立遺伝子を含む酵母株で計測した。菌株は、指数増殖期まで、あるいは定常期までのどちらかで、ガラクトースあるいはグルコース含有の最小培養基で増殖した。この実験にあたって、tps1Δtps2Δのバックグラウンドを使用した。それは、tps1Δのバックグラウンドにおけるトレハロース-6-Pのレベルが、あまりにも低いために計測されないからである。使用した菌株は:
JT6308 1Δ2Δ + pSAL4
PVD44 1Δ2Δ + pSAL4/Sc TPS1
JT6309 1Δ2Δ + pSAL4/Sl TPS1
PVD43 1Δ2Δ + pSAL4/ΔN Sl TPS1
PVD138 1Δ2Δ + pSAL6/At TPS1
JT20050 1Δ2Δ + pSAL6/ΔN At TPS1
PVD150 2Δ + pRS6(HIS3マーカー含有の空きプラスミド)
“1Δ”は“tps1Δ”を表わし、“2Δ”は“tps2Δ”を表わす。
【0127】
酵母細胞を集めた後で、抽出物を実施例10で述べたようにしてつくり、トレハロース-6-Pの濃度を計測した。その結果を図18に示す。
【0128】
トレハロース-6-ホスフェートは、植物TPS1遺伝子を含有する株から調製した抽出物において、酵母TPS1遺伝子を過剰発現している対照菌株と比較して、4倍少なかった。この低いトレハロース-6-ホスフェートのレベルは、それらの菌株における分解機構へのグルコース流入が、未だに調節されていない理由の説明となろう(実施例12)。このグルコース流入の未調節は、全長あるいはN末欠失のどちらかの植物TPS対立遺伝子を含有する株について類似し、この事実は本発明で得た結果と適合する。トレハロース-6-ホスフェートのレベルにおいて、菌株が含む対立遺伝子が全長かN末欠失かの間に差異はない。
【0129】
実施例11
TPSとTPP領域のキメラ融合
トレハロース生合成に関与する効果的な酵素経路を生成するために、一連のキメラ酵素融合を、A.thalianaあるいはS.cerevisiae のいずれかからのTPS1およびTPS2由来のTPS領域とTPP領域の間につくった。これらの4つの融合体を図13に示す。
【0130】
第1融合体は、オリゴヌクレオチド(
【表16】
、下線がNcoI部位で、太字が開始コドン)および(5'-CGGGATCCAGCTGTCATGTTTAGGGC-TTGTCC-3'、下線がBamHI部位)で、エキスパンド・ハイ・フィデリティDNAポリメラーゼ(Boehringer)を使用して、PCR(94℃、3分間、1サイクル; 94℃、1分間、52℃、1分間、72℃、1.5分間、40サイクル; 72℃、10分間、1サイクル)によって得た、442アミノ酸のN末切除タンパク質(その最初の100アミノ酸を欠如する)をコードするAtTPS1(ΔNAtTPS1)由来の1337 bp DNA断片と、オリゴヌクレオチド(5'-CGGGATCCACTAACCAGAATGTCATCG-3'、下線がBamHI部位)および(
【表17】
、下線がKpnI部位で、太字が終止コドン)で、エキスパンド・ハイ・フィデリティDNAポリメラーゼを使用して、PCR(94℃、3分間、1サイクル; 94℃、1分間、52℃、1分間、72℃、1.5分間、40サイクル; 72℃、10分間、1サイクル)によって得た、374アミノ酸の全長タンパク質をコードするAtTPPB由来の1138 bp DNA断片とからなる。
【0131】
第2融合体は、ΔNAtTPS1と、オリゴヌクレオチド(5'-CGGGATCCGCTAAATCT-ATTAACATGG-3'、下線がBamHI部位)および(5'-CGGGGTACCATGG-TGGGTTGAGAC-3'、下線がKpnI部位)で、エキスパンド・ハイ・フィデリティDNAポリメラーゼ(Boehringer)を使用して、PCR(94℃、3分間、1サイクル; 94℃、1分間、50℃、1分間、72℃、1.5分間、40サイクル; 72℃、10分間、1サイクル)によって得た、C末から397アミノ酸をコードするScTPS2由来の1358 bp DNA 断片とからなる。
【0132】
第3の構造体は、オリゴヌクレオチド(5'-CCGCTCGAGGGTACTC-ACATACAGAC-3'、下線がXhoI部位)および(5'-CGGGATCCGGTGGCA-GAGGAGCTTGTTGAGC-3'、下線がBamHI)で、エキスパンド・ハイ・フィデリティDNAポリメラーゼ(Boehringer)を使用して、PCR(94℃、3分間、1サイクル; 94℃、1分間、52℃、1分間、72℃、1.5分間、40サイクル; 72℃、10分間、1サイクル)によって得た、492アミノ酸タンパク質をコードするScTPS1由来の1531 bp DNA 断片と、aTttpbとの間の融合もたらす。
【0133】
第4の融合は、上記の方法で得られるScTPS1と、ScTPS2との間のDNA断片によって作られる。
【0134】
PCR断片は適当な制限酵素によって消化し(図13)、pRS6ベクター内でサブクローンする。酵母tps1Δ、tps2Δおよびtps1Δ2Δ突然変異菌株を形質転換し、SDGal(-his)内で選択した。SDGlc(-his 最小培養基)および38.3℃での成長の相補性を検定した。
【0135】
実施例12
酵母tps1Δ菌株におけるN末欠失植物TPS1遺伝子の発現は、グルコース上での増殖を回復させるが、糖ホスフェートの過剰蓄積を抑制しない
S.cerevisiaeにおけるTPS1欠失は、結果として多面発現表現型をもたらす(Van Aelst t al., Mol. Microbiol., 8, 927-943)。表現型の1つは、急速に醗酵可能な糖類上でもはや成長できないような菌株である。なぜtps1Δがグルコース上で成長できないのかまだ明らかではない。3つの異なる仮説が提示されている(Hohmann and Thevelein, Trends in Biol. Sciences, 20, 3-10, 1995)。tps1Δ菌株をグリセロールからグルコース含有の培養基に移行させた場合、糖ホスフェートの急速な蓄積とATP濃度の急速な降下が起きる。明らかに、TPS1遺伝子は、グルコースの糖分解機構への流入を制御する機能を持っている。輸送とリン酸化は共役しているので、細胞に流入するあらゆる糖類はリン酸化される。Hxk2の活性を減退させることで、グルコースおよびフルクトース上でtps1Δ菌株の増殖欠陥表現型を抑制できる(Hohmann et al., Current genetics 23, 281-289, 1993)。 インビトロ研究により、Tps1タンパク質の産物、すなわちトレハロース-6-ホスフェートがHxk2の活性を阻害し、そのようにしてグルコースの糖分解機構への流入を制御できることが明らかになった。
【0136】
TPS1のS.lepidophylla同族体を酵母で発現さした場合、クローン全長を有する構造体とN末欠失の構造体との間で、グルコース含有の培養基上における増殖に関して明らかな差異が見られる。CUP1プロモーターの制御のもとに全長Sl TPS1で形質転換したtps1Δ菌株は、グルコース上では増殖しない。Sl Tps1の最初の100アミノ酸をコードする最初の300bp削除された構造体のtps1Δ菌株における発現は、グルコース上で増殖する。明らかに、全長のクローンがグルコース流入の問題を解決できないが、一方、N末欠失がグルコース流入を制御できる。
【0137】
これを試験するために、糖分解における最初の代謝産物の濃度計測実験を実行した。それには下記の菌株を使用した:
PVD72 Tps1Δ + pSAL4
PVD14 Tps1Δ + pSAL4/Sc TPS1
PVD73 Tps1Δ + pSAL4/Sl TPS1
PVD15 Tps1Δ + pSAL4/ΔN Sl TPS1
【0138】
糖分解代謝産物の測定のために、細胞を指数増殖期までSDグリセロール培養基上で育成した。細胞を遠心分離で採取した。ペレットを一度洗い、再懸濁して、次にYP培養基において30℃でインキュベートした。グルコースを100mMの最終濃度に加え、CuSO4を100μMの最終濃度に加えた。
【0139】
グルコースを加える前後に、表示の間隔でサンプルを取り出して、即座に-40℃の60%メタノール内でクエンチした。
【0140】
糖分解代謝産物の測定をこれらのサンプルについて、基本的にde Koningおよびvan Dam(Anal. Biochem. 204, 118-123, 1992)の記述にしたがって実行した。Lowry et al.(J. Biol. Chem. 193, 265-275, 1951)に従い測定したサンプルに含まれるタンパク質の全量、および酵母のサイトソルの量をタンパク質1mgにつき12μlとする仮定を用いて、サイトソルの濃度をmM単位で計測した。図14は、代表的な実験の結果を示す。
【0141】
結果から明らかなように、グルコースを加えた後の短時間では、S. lepidophyllaTPS1遺伝子が全長であるかN末欠失であるかで代謝産物の濃度に差異がない。グルコースを加えた後に糖ホスフェートの明らかな高い蓄積があり、この事実はtps1Δ菌株の場合と同様である。
【0142】
N末欠失構造体についてのこれらの結果からすると、糖ホスフェートの蓄積は、酵母細胞がグルコース上において増殖できるかできないかの事実には関係がない。これは、N末部分がグルコースの糖分解機構への流入の制御に重要であることを意味する。それはまた、ΔN SlまたはΔN At TPS1遺伝子を含有するtps1Δ菌株が、糖分解機構への全流入を増加させる手段として使用できることを意味する。この菌株は完全にグルコース上で増殖するが、糖分解機構の上部において代謝産物の高い蓄積が見られる。糖分解機構の下流における酵素の過剰発現は結果として大きな流入をもたらす。
【0143】
代謝産物の濃度は、グルコースを加えた後の短時間のあいだにしか計測できないので、別の実験で、代謝産物の濃度を指数増殖期および定常期のあいだに計測した。その結果を図15に示す。
【0144】
これらのデータは、最初の実験で得た結果を立証する。糖ホスフェートの過剰蓄積が、N末欠失構造体で形質転換したtps1Δ菌株にある。図14および15から、tps1Δ菌株とΔN Sl TPS1発現プラスミドを含んでいるtps1Δ菌株との間の差異はATPレベルであることが立証される。tps1Δ菌株におけるATPレベルはゼロまで降下するが、他の菌株ではそうではない。残っているATPレベルが、グルコース上での増殖に明らかに十分である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、発現ベクターpBN35を示す。
【図2】 図2は、AtTPS1を含むプラスミドpIBT101を示す。
【図3】 図3は、ΔNAtTPS1を含むpIBT102を示す。
【図4】 図4は、S1TPS1を含むpIBT103を示す。
【図5】 図5は、△NS1TPS1を含むpIBT104を示す。
【図6】 図6は、完全なもしくは切断したテマリカタヒバ(S. lepidophylla)TPS遺伝子を含む酵母発現ベクターにより形質転換した野生型およびtps1Δ株のグルコースおよびフルクトース含有培地上での増殖を示す。
【図7】 図7は、pCVV1を示す。
【図8】 図8は、非稀釈および稀釈のグルコースサンプルについての標準直線を示す。
【図9】 図9は、各遺伝子の標識化構築体を示す。
【図10】 図10は、標識化構築体で得られたプラスミドを示す。
【図11】 図11は、tps1Δまたはtps1Δtps2ΔバックグランドにおけるHA標識の完全長およびN末端欠失S1 TPS1遺伝子についてのウエステンブロットの結果を示す。
【図12】 図12は、株PVD164およびPVD165に関する結果を示す。
【図13】 図13は、TPSとTPPタンパク質のキメラ融合を示す。
【図14】 図14は、各糖分解代謝産物の時間変化を示す。
【図15】 図15は、各代謝産物の濃度測定の結果を示す。
【図16】 図16は、トレハロース−6−ホスフェートの検定法の概略を示す。
【図17】 図17は、菌株EcVV1とEcVV3とのホスホトレハラーゼ活性の比較を示す。
【図18】 図18は、各抽出物のトレハロース−6−ホスフェートの濃度測定の結果を示す。
Claims (13)
- 下記工程を含む、対応する野生型真核生物と比べて、増加したトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ(TPS)活性を有する非ヒト真核生物の調製方法:
a.植物TPSタンパク質を準備し、
b.該TPSタンパク質の配列を、酵母に由来する対応するタンパク質の配列と並べて、TPS活性に対する阻害作用と関連するTPSタンパク質のドメインを決定する、
ここで該阻害ドメインは、酵母タンパク質のN末端を超えて伸張するTPSタンパク質の該部分に対応する、
c.このTPSタンパク質のN末端部分を変異生成または切除することにより、該阻害ドメインの作用を抑制する、
d.構成的、誘導的および/または器官特異的なプロモーターの制御下に、工程c)においてTPSタンパク質のN末端部分を変異生成または切除することにより得たかかる改変されたタンパク質に対応する遺伝子を発現ベクターにクローニングする、
e.真核生物の細胞または真核生物の組織を、工程d)において得た発現ベクターでもって形質転換すること。 - 少なくとも完全な阻害ドメインが該TPSタンパク質から削除されている、請求項1の方法。
- 真核細胞または組織が植物細胞または組織であって、該形質転換が為され、該形質転換された植物の細胞または組織から完全な植物体を再生せしめる、請求項1または2の方法。
- 植物が穀物である、請求項3の方法。
- 植物が、コメ、リンゴ、サトウダイコン、ヒマワリ(Helianthus annuus)、タバコ(Nicotiana tabacum)およびダイズ(Glycine max)からなる群から選択される、請求項3の方法。
- 該真核生物が真菌類である、請求項1または2の方法。
- 該真菌がAspergillus niger、Agaricus bisporus、Pichia pastoris、Kluyveromyces lactis、メチロトローフ酵母からなる群から選択される、請求項6の方法。
- 該非ヒト真核生物が、タンパク質および低分子の生産に使用される哺乳動物および無脊椎動物の細胞培養物、ならびにバキュロウイルス発現に使用される無脊椎動物の細胞から選択される、請求項7の方法。
- 真核生物が、改変されたTPSを持たない対応する真核生物に比して、トレハロース合成活性が増加している、請求項1〜8いずれかの方法。
- 下記工程を含む、改変されたトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ(TPS)タンパク質の調製方法:
a.植物TPSタンパク質を準備し、
b.該TPSタンパク質の配列を酵母に由来する対応するタンパク質の配列と並べて、TPS活性に対する阻害作用と関連するTPSタンパク質のドメインを決定する、
ここで該阻害ドメインは、酵母タンパク質のN末端を超えて伸張するTPSタンパク質の部分に対応する、
c.このTPSタンパク質のN末端部分を変異生成または切除することにより、該阻害ドメインの作用を抑制する。 - 下記工程を含む、改変されたトレハロース−6−ホスフェート・シンターゼ(TPS)タンパク質の調製方法:
a.植物TPSタンパク質を準備し、
b.該TPSタンパク質の配列を酵母に由来する対応するタンパク質の配列と並べて、TPS活性に対する阻害作用と関連するTPSタンパク質のドメインを決定する、
ここで該阻害ドメインは、酵母タンパク質のN末端を超えて伸張するTPSタンパク質の部分に対応する、
c.このTPSタンパク質の少なくとも完全に阻害ドメインを削除することにより、該阻害ドメインの作用を抑制する。 - TPSタンパク質が植物に由来する、請求項1〜11いずれかの方法。
- 該植物が、テマリカタヒバ(Selaginella lepidophylla)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thalliana)、コメ、リンゴ、サトウダイコン、ヒマワリ(Helianthus annuus)、タバコ(Nicotiana tabacum)およびダイズ(Glycine max)からなる群から選択される、請求項12の方法。
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