JP4943961B2 - 配電盤劣化診断システム、配電盤劣化診断装置、配電盤劣化診断方法およびプログラム - Google Patents
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Description
一方、絶縁物の劣化と並び、配電盤の主な事故要因としては、母線接続部の劣化がある。劣化原因としては、母線接続部の締め付けの緩み、母線接続部の腐食等がある。母線接続部の劣化は、配電盤の焼損や短絡などの重大な事故を招き、事実上配電盤の寿命に直結する。
母線接続部の劣化診断としては、母線接続部の温度を観測することが知られている(特許文献1)。これは、劣化に起因して接触抵抗が増加すると、母線接続部の温度上昇が起こることから、温度上昇を観測することで劣化を診断しようとするものである。しかし、劣化に起因する接触抵抗の増加は微小であることから、これを単純な温度上昇として検知することは現実には困難であった。
これらの図を見ると分かるように、温度ゆらぎがプラス方向に変位する期間が存在する。そして、接触抵抗が大きくなる程、すなわち、図10よりも図11の方が、温度ゆらぎが大きくなるという傾向がある。これらの知見によって、母線接続部における温度ゆらぎを精緻に評価することで、母線接続部の劣化の前兆をとらえることができることがわかった。そこで、母線接続部における温度ゆらぎを測定、評価し、精度良く配電盤の劣化診断を行うことができる配電盤劣化診断システムの開発が課題となった。
前記統計量は、平均、分散、歪度、尖度のいずれか1つであっても良い。
また、前記統計量は、平均、分散、歪度、尖度のうちの複数の組み合わせであっても良い。
また、前記統計量比較手段の結果から前記配電盤内の母線接続部の劣化情報を出力する劣化情報出力手段、を更に具備することが望ましい。
また、前記統計量比較手段の結果から前記配電盤内の母線接続部の劣化を検知し、警報を出力する警報出力手段、を更に具備することが望ましい。
配電盤劣化診断装置21は、制御部23、記憶部25、メディア入出力部27、通信制御部29、入力部31、表示部33、周辺機器I/F部35等が、バス37を介して接続される。
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶部25、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部23が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
これらの各プログラムコードは、制御部23により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
入力部31を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
図3は、配電盤劣化診断装置21の機能の概要を示すブロック図である。
時系列データ61は、温度ゆらぎ信号から所定時間ごとにサンプリングしたデータである。短時間区間63は、時系列データ61の集合を分割する区間である。尚、図4では、便宜上、線分ではなく矩形で表現している。ウィンドウ幅65は、短時間区間63の幅である。時間シフト幅67は、分割する際に時間軸に沿ってずらす幅である。このように、時系列データ61は、隣り合う短時間区間63に重複して含まれるように分割される。
ここで、時系列データ61は、所定時間ごとに抽出した値であるから、データの時間間隔は一定である。従って、ウィンドウ幅65の長さと時間シフト幅67の長さは、含まれる時系列データ61の個数で表現できる。そして、時系列データ61の総個数をN(個)、ウィンドウ幅65の長さをR(個)、時間シフト幅67の長さをL(個)とすると、短時間区間63の数Mは、M=N/L+1となる。
図5では、横方向に何番目の短時間区間63に対する計算結果かを示し、縦方向に何番目の周波数fkに対する計算結果かを示している。計算結果のデータ数は、M×S(個)である。
周波数ごとの平均μ1(k)(k=0〜S−1) は、次式で算出する。
そして、統計量比較手段49は、周波数ごとに、周波数統計量算出手段47によって算出された統計量と予め記憶された正常時の統計量との差が、所定の閾値(例えば、正常時の3倍等)を超えるかどうか判断する。更に、所定の閾値を超える周波数の個数が所定の数に達した場合(例えば、1つでも所定の閾値を超えた場合、または、3つ以上が所定の閾値を超えた場合等)、配電盤3内の母線接続部5が劣化していると判断する。
図6は、本実施の形態における配電盤劣化診断システム1において実行される正常時の統計量を記憶する処理の流れを説明するフローチャートである。
正常時の統計量は、例えば、配電盤を設置した時の初期段階で測定、算出することが望ましいが、母線接続部が劣化していないことが明らかであれば、配電盤劣化診断システム1を導入する段階で測定、算出しても良い。また、S101からS105までを複数回行い、負荷電流が異なる複数種類の正常時の統計量を記憶するようにしても良い。
一方、統計量比較手段49による比較結果から正常と判断した場合(S206のNo)、処理を終了する。
尚、いずれの場合であっても、配電盤劣化診断装置21の制御部23は、劣化情報出力手段51によって、劣化情報を出力しても良い。
図8は、配電盤3内の母線接続部5の接触抵抗を50mΩとし、負荷電流を0Aから50Aまでステップ的に変化させた前後50秒間の母線接続部5における温度ゆらぎ信号を示している。尚、横軸は時間であり、縦軸は温度である。温度は、0Vで30℃を示し、0.01Vが1℃に相当する。図8を見ると、途中から温度ゆらぎ信号がプラス方向に変位していることが分かる。
図9では、座標平面の一方の軸が時間、他方の軸が周波数を示しており、各周波数のスペクトル(0〜0.007)を高さによって表現している。図9によると、時間が約15秒〜22秒、周波数が約0.1Hz〜2Hz(0.1Hz未満はノイズとして除去される)では、0.003〜0.007の値を示していることが分かり、温度ゆらぎ信号の変化を詳細に把握できる。更に本実施の形態によって、これらの統計量を算出し、正常時の統計量と比較することで、正常時との相違を明確に判断でき、配電盤3内の母線接続部5の劣化診断が可能となる。
3………配電盤
5………母線接続部
7………温度センサ
9………電流センサ
11………帯域通過フィルタ
13………増幅器
15………データ蓄積装置
21………配電盤劣化診断装置
23………制御部
25………記憶部
27………メディア入出力部
29………通信制御部
31………入力部
33………表示部
35………周辺機器I/F部
37………バス
39………ネットワーク
41………時系列データ入力手段
43………負荷電流データ入力手段
45………短時間フーリエ変換演算手段
47………周波数統計量算出手段
49………統計量比較手段
51………劣化情報出力手段
53………警報出力手段
61………時系列データ
63………短時間区間
65………ウィンドウ幅
67………時間シフト幅
Claims (11)
- 配電盤の劣化を診断するシステムであって、
前記配電盤内の母線接続部の温度と周囲温度との温度差を測定し、前記温度差に係る温度ゆらぎ信号を出力する温度センサと、
前記温度センサから出力される温度ゆらぎ信号の中から適当な周波数帯域を通過させる帯域通過フィルタと、
前記帯域通過フィルタを通過する温度ゆらぎ信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器によって増幅される温度ゆらぎ信号を所定時間ごとに時系列データとしてサンプリングし、蓄積するデータ蓄積装置と、
前記データ蓄積装置から取得する前記時系列データを基に、温度ゆらぎ信号の短時間フーリエ変換を演算する短時間フーリエ変換演算手段と、前記短時間フーリエ変換の結果から各周波数の統計量を算出する周波数統計量算出手段と、算出された統計量と予め記憶された正常時の統計量とを比較する統計量比較手段と、を具備する配電盤劣化診断装置と、
によって構成されることを特徴とする配電盤劣化診断システム。 - 前記配電盤内の母線接続部の負荷電流を測定し、負荷電流データを出力する電流センサ、
が更に構成に含まれ、
前記データ蓄積装置は、前記電流センサから出力される負荷電流データを更に蓄積し、
前記配電盤劣化診断装置の統計量比較手段は、前記データ蓄積装置から取得する負荷電流データを考慮して比較するものであることを特徴とする請求項1に記載の配電盤劣化診断システム。 - 配電盤の劣化を診断する装置であって、
前記配電盤内の母線接続部の温度と周囲温度との温度差に係る温度ゆらぎ信号を所定時間ごとにサンプリングした時系列データを基に、前記温度ゆらぎ信号の短時間フーリエ変換を演算する短時間フーリエ変換演算手段と、
前記短時間フーリエ変換の結果から各周波数の統計量を算出する周波数統計量算出手段と、
算出された統計量と予め記憶された正常時の統計量とを比較する統計量比較手段と、
を具備することを特徴とする配電盤劣化診断装置。 - 前記統計量は、平均、分散、歪度、尖度のいずれか1つであることを特徴とする請求項3に記載の配電盤劣化診断装置。
- 前記統計量は、平均、分散、歪度、尖度のうちの複数の組み合わせであることを特徴とする請求項3に記載の配電盤劣化診断装置。
- 前記統計量比較手段は、前記配電盤内の母線接続部の負荷電流データを考慮して比較するものであることを特徴とする請求項3に記載の配電盤劣化診断装置。
- 前記統計量比較手段の結果から前記配電盤内の母線接続部の劣化情報を出力する劣化情報出力手段、
を更に具備することを特徴とする請求項3に記載の配電盤劣化診断装置。 - 前記統計量比較手段の結果から前記配電盤内の母線接続部の劣化を検知し、警報を出力する警報出力手段、
を更に具備することを特徴とする請求項3に記載の配電盤劣化診断装置。 - 配電盤の劣化を診断する方法であって、
正常時の前記配電盤内の母線接続部の温度と周囲温度との温度差を測定し、前記温度差に係る温度ゆらぎ信号を所定時間ごとに時系列データとしてサンプリングし、前記時系列データを基に前記温度ゆらぎ信号の短時間フーリエ変換を演算し、前記短時間フーリエ変換の結果から各周波数の統計量を算出し、算出した統計量を正常時の統計量として記憶する第1のステップと、
診断時の前記配電盤内の母線接続部の温度と周囲温度との温度差を測定し、前記温度差に係る温度ゆらぎ信号を所定時間ごとに時系列データとしてサンプリングし、前記時系列データを基に前記温度ゆらぎ信号の短時間フーリエ変換を演算し、前記短時間フーリエ変換の結果から各周波数の統計量を算出し、算出した統計量と前記正常時の統計量とを比較する第2のステップと、
を含むことを特徴とする配電盤劣化診断方法。 - 前記第1のステップでは、更に、前記配電盤内の母線接続部の負荷電流を測定して正常時の負荷電流データとして記憶し、
前記第2のステップでは、更に、前記配電盤内の母線接続部の負荷電流を測定して診断時の負荷電流データとして記憶し、前記診断時の負荷電流データと前記正常時の負荷電流データとを考慮して、算出した統計量と前記正常時の統計量とを比較することを特徴とする請求項9に記載の配電盤劣化診断方法。 - コンピュータを請求項3から請求項8までのいずれかに記載の配電盤劣化診断装置として機能させるプログラム。
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