JP4943176B2 - 溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法 - Google Patents
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Description
このため、耐火物の溶損が顕著とならない程度の温度で溶鉄を加熱し、冷鉄源を溶解するという方法の確立が必要となっていた。
この方法の一つとして、加熱装置付き混銑炉へ冷鉄源である鉄スクラップを装入して溶解する際に、溶鉄に粉状または粒状の炭素源を吹き込むことにより、炭素濃度を高位に維持する方法がある。
従って、溝型誘導加熱装置付き混銑炉で鉄スクラップを溶解するに際しては、溶鉄中の炭素を冷鉄源表面から浸炭させることで、冷鉄源の融点を溶銑温度以下に低下させて溶解することが必要である。
そのため、炉本体内へ鉄スクラップを装入すると同時に溶鉄を多量に装入し、更に炭素の添加を行いながら、冷鉄源を溶解する方法が提案されていた。
しかし、この溶銑鍋の移し替えに伴う鍋耐火物への吸熱ロスと、溶鉄からの放熱ロスが多量に発生し、またその熱を補うための電力、更には転炉での炭材等の熱源付与のコストが多額になる。また、上記した作業を繰り返した際には、溶鉄搬送の物流効率が低下し、クレーンの稼働率の点でも望ましくない。
また、特許文献2には、冷鉄源の溶解に際し、炉本体内の溶鉄に装入口を介して冷鉄源を装入し、また同じ装入口から溶鉄を追加装入することで、炉本体内で溶鉄の撹拌を行うことが開示されている。
特許文献1に開示された方法では、耐火物が著しく溶損しない程度の溶鉄温度で、溶鉄を撹拌して冷鉄源を浸炭溶解できるが、本願発明者らの知見では、炭素源の吹き込みのみでは、冷鉄源の溶解時間が短縮できない場合があった。このため、冷鉄源が未溶解の状態で、炉本体から溶鉄を排出しようとすれば、未溶解の冷鉄源が排出口を塞ぐトラブルが生じ、冷鉄源を安定して溶解できないばかりか、炉本体から溶鉄を排出する際の作業性が悪化する問題も発生する。
一方で、溶鉄のC濃度を高濃度に維持するため、溶鉄への炭素源の供給量を増やした場合、この炭素源の溶融歩留りが悪ければ、未溶解の炭素源を昇温するための電力ロス、および未溶解の炭素源自体の消費ロスにより、鉄スクラップ溶解に要するコストと溶解能力に多大な支障が発生する。
前記炉本体は、該炉本体の炉内直径が3m以上8m以下、該炉本体の軸方向の炉内長さLが5m以上25m以下であり、前記冷鉄源が装入された前記炉本体内の溶鉄の最大浴深さDと、前記炉本体の軸方向の炉内長さLとの比(D/L)を、0.1以上0.4以下の範囲内とした後、前記炉本体内の溶鉄中にガスによって炭素源を吹き込み、前記ガスの吹き込み量を該炉本体内の溶鉄と前記冷鉄源との合計質量の単位量あたり0.001Nm 3 /(分・トン)以上0.02Nm 3 /(分・トン)以下とし、前記炉本体内の溶鉄の炭素濃度を、3.5質量%以上飽和炭素濃度以下とし、かつ前記炉本体内の溶銑の温度を、1280℃以上1450℃以下とする。
本発明に係る溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法において、前記炉本体内の溶鉄の最大浴深さDは1.2m以上6.0m以下であり、前記炉本体内の溶鉄への前記炭素源の吹き込み位置は、前記溝型誘導加熱装置の溶鉄吸入口から上方へ250mm以上の位置で、かつ前記炉本体内の溶鉄の浴面から下方へ700mm以上の位置とすることが好ましい。
特に、請求項1記載の溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法は、炭素源を吹き込むためのガスの吹き込み量を規定しているので、例えば、炭素源の吹き込みに用いるランスの溶損を抑制しながら、溶鉄の撹拌効果も得ることができる。また、溶鉄の炭素濃度、および温度範囲についても規定しているので、冷鉄源の溶解がより良好になる条件に設定でき、冷鉄源の溶解時間を更に短縮できる。
請求項2記載の溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法は、炉本体内の溶鉄と冷鉄源の加熱に要する溝型誘導加熱装置の電力を規定するので、この溝型誘導加熱装置に流れ込み加熱された後に排出される溶鉄の流れを制御でき、炉本体の下方での撹拌効率を更に向上でき、前記した効果を更に高めることができる。
ここで、図1(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法に使用する模式的に示した混銑炉の正断面図、側断面図である。
また、炉本体10は、溶銑11の排出時に、炉本体10の軸方向(長手方向)の軸心Cを中心として回転し、炉本体10内部の溶銑11を外部へ排出する機能を有している。
なお、冷鉄源の装入は、炉本体10へ溶銑11を供給しながら行っているが、溶銑を供給した後に行ってもよく、またこの双方で行ってもよい。
ここで、冷鉄源とは、鉄を主成分(例えば、95質量%以上)とするものであればよく、例えば、鉄のスクラップ、屑鉄、または酸化鉄であり、その装入は、例えば、装入時の炉内溶鉄(溶銑または溶銑と溶解した冷鉄源)1トン当たり、未溶解分が0kgを超え100kg以下の範囲内となるように調節しながら行う。
そして、炉本体10内に貯留された溶銑11と冷鉄源を、炉本体10内に保持した状態で、炉本体10内に更に炭素源を吹込み、冷鉄源を溶解させる。この炭素源の装入量は、例えば、溶銑1トン当たり0.015kg/(分・トン)以上0.25kg/(分・トン)以下程度である。なお、本実施の形態では、炭素源は、硫黄成分を含むコークス(例えば、粉状または粒状)であるが、他の炭材、例えば、石炭またはゴムを使用してもよい。
従って、溶銑11を溝型誘導加熱装置12で加熱しながら、炭素源を溶銑11中に吹き込む前提で、溶銑11の撹拌を確保する必要がある。
そこで、本実施の形態では、円筒型の炉本体10の断面において、真下を0°とし、真上を180°とした場合、溶銑吸入口14の上端位置を、真下を基準として炉本体10の周方向両側に、20°以上70°以下の範囲内のP°に配置するのがよい。これは、炉本体の長手方向に垂直な断面形状は概ね円形であり、その外形が軸心Cを中心とした円状となることによる。このため、冷鉄源の投入時と溶銑の排出時を除く、溶銑の保熱または加熱貯蔵時における重力方向を真下と定義し、中心(回転軸)から真下に仮想線を設定して、炉本体の内側炉壁と交わる点を0°と定義した。なお、P°については、真下から仰角をP°持たせ、前記した中心より仮想線を設定して、内側炉壁と交わる点をP°とするものである(前記断面の円において2箇所あり)。
従って、溶銑吸入口の上端位置を、20°以上70°以下の範囲に設定したが、下限を24°とすることが好ましく、また上限を60°とすることが好ましい。
なお、以上に示した知見は、炉本体の炉内直径が3m以上8m以下(溶銑吸入口の上端位置が24°以上66°以下)であり、軸方向の炉内長さLが5m以上25m以下であり、例えば、炉内直径と炉内長さLとの比が0.2以上0.5以下の場合を想定して得られた結果である。このとき、炉本体の最大貯銑量は、100トン以上4400トン以下であり、溶銑の貯銑容積は、炉本体の容積の75%以下、かつ最大貯銑量の20%以上、そして、溶鉄の最大浴深さDは1.2m以上6.0m以下を想定している。
ここで、溶銑の最大浴深さDと炉内長さLとの比(D/L)が、0.1未満の場合、炉内長さLに対して最大浴深さDが浅過ぎるため、溶銑の撹拌流動がランス廻りのみでの局所的な流動となり、炉本体の端部における溶銑の流動が著しく停滞する。これにより、炉本体の端部の浴中に堆積した冷鉄源は流動しずらくなり、また溶銑中の炭素量に偏りが生じて均等に維持できなくなり、更には炭素濃度を上昇させることが困難となるため、冷鉄源の浸炭溶解速度に支障をきたす。
以上のことから、溶銑の最大浴深さDと炉内長さLとの比(D/L)を、0.1以上0.4以下としたが、好ましくは下限を0.2とし、上限を0.3とする。
ここで、溶銑1トンあたりの投入電力が5.0kW以下の場合、溝型誘導加熱装置の湯道(溶銑の流路)を形成する耐火物に、例えば、介在物またはスラグ等の異物が付着し、湯道を閉塞する可能性があり、更にこの現象が著しい場合には、ピンチ効果により溶銑流が遮断される。
以上のことから、溝型誘導加熱装置の電力を、炉本体内の溶銑と冷鉄源との合計質量の単位量あたり5.0kW/トンを超え50kW/トン未満としたが、溶銑の流速を高位に安定して維持する場合には、下限値を8.0kW/トンを超える電力とすることが好ましく、また、耐火物の溶損抑制を重視する場合には、上限値を13.5kW未満とすることが好ましい。
なお、溝型誘導加熱装置12の設置位置は、前記したように炉本体10の真下を除く下部としているが、ここで炉本体の長手方向(軸方向)に2箇所以上にするとよい。これにより、溶銑の単位量あたりの投入電力を少なくしても、溶銑の撹拌効果を高位に維持できる。
この現象は、溶銑の撹拌効果が強過ぎる場合に見られ、また炭素源の吹き込み位置の深さとも関連することが確認された。炭素源の吹き込みは、溶銑中へ吹き込みランスを浸漬し、ランス先端部の開口部から溶銑中に炭素源を吹き込むことで行うが、吹き込まれた炭素源とキャリアガスは、ランス先端部の開口部近傍で流速が速く、冷鉄源の溶解中に未溶解状態の冷鉄源を移動させる原因となり、移動した冷鉄源は溶銑吸入口を閉塞する場合があることを、本願発明者らは知見した。
そして、炭素源の吹き込み位置は、冷鉄源から離れた場所に配置することが望ましい(例えば、冷鉄源の上方250mm以上の位置)が、冷鉄源が溶銑吸入口の近傍にない場合は、閉塞原因となる可能性が低いため、溶銑吸入口から上方へ250mm以上の位置L1とすることで、溶銑吸入口の冷鉄源による閉塞を防止できる。なお、250mm未満では、例えば、炭素源の吹き込みにより、炉底部に沈降した冷鉄源をまきあげる場合があるため、加熱装置の溶銑吸入口が未溶解の冷鉄源を吸引することになり、加熱装置による溶銑の撹拌ができなくなる。従って、当然のことながら、冷鉄源を溶銑吸入口が塞がれるようには装入しない。
また、炭素源の吹き込み位置を、250mmより更に溶銑吸入口へ近づけた場合には、湯道内に泡が入って通電不良(不能)となる問題もある。
以上のことから、炭素源の吹き込み位置を溶銑吸入口から上方へ250mm以上、好ましくは300mm以上、更に好ましくは400mm以上の位置L1とすることにより、冷鉄源による溶銑吸入口の閉塞を防止できる。
一方、炭素源の吹き込み位置の上限は、溶銑の撹拌効果の減少と炭素源の未溶解防止の観点から、溶銑の浴面から下方へ700mm以上の位置L2とする。炭素源の吹き込み位置が、700mm未満の場合、即ち700mmの位置より浅くなった場合には、吹き込み後に溶銑の浴面へ浮上する炭素源が、溶銑中に溶解することなく未溶解のまま浴面に達するため、炭素源の溶銑への溶解歩留りが極端に低下する。
以上のことから、炭素源の吹き込み位置を、炉本体内の溶銑の浴面から下方へ700mm以上の位置、好ましくは800mm以上、更に好ましくは1000mm以上の位置L2とする。
溶銑への吹き込みガス量が0.001Nm3/(分・トン)以上の場合、炭素源の溶解と溶銑の撹拌力を確保することができるため、炉本体内の溶銑の撹拌効果を維持でき、冷鉄源の溶解を促進できる。また、溶銑への吹き込みガス量が0.02Nm3/(分・トン)以下の場合、炉内耐火物の撹拌による過剰溶損を一定レベル以下に抑制できるが、この上限値を超えれば、吹き込みによる炭素源の溶解効果が飽和するため有用ではない。
以上のことから、溶銑中への炭素源の吹き込みを、0.001Nm3/(分・トン)以上0.02Nm3/(分・トン)以下としたが、下限を0.003Nm3/(分・トン)、更には0.005Nm3/(分・トン)とすることが好ましく、上限を0.015Nm3/(分・トン)とすることが好ましい。
ここで、浸炭溶解を進行させるためには、溶銑の炭素濃度は高いほうが好ましいが、上限値を超えると、吹き込み炭素源の溶銑への未溶解分(残り)が発生するため、炭素源の歩留りが低下して経済的に好ましくない。一方、溶銑の炭素濃度が3.5質量%未満の場合、冷鉄源の未溶解分の発生が著しくなり、場合によっては、溶解時間を著しく延長しなければならない必要がある。
以上のことから、溶銑の炭素濃度を3.5質量%以上飽和炭素濃度以下としたが、下限を3.8質量%、更には4.0質量%とすることが好ましい。
浸炭溶解に必要な溶銑中の炭素濃度を確保するには、溶銑の温度を1280℃以上にすることが必要である。一方、溶銑の温度が1450℃を超える場合、炉本体内の耐火物の溶損が進む傾向がある。
以上のことから、溶銑の温度を1280℃以上1450℃以下としたが、下限を1300℃、更には1320℃とすることが好ましく、上限を1420℃、更には1400℃とすることが好ましい。
このようにして製造された溶銑11は、引き続き転炉(図示しない)へ供給され、従来公知の脱炭処理がなされる。
ここでは、溶鉄として溶銑を使用し、また冷鉄源として鉄のスクラップ(炭素濃度:0.2質量%程度)を使用し、炭素源として微粉の炭材を使用した。なお、炭材の吹き込みは、窒素ガスを使用してランスにより行った。
また、スクラップを溶銑に効率よく溶解できたか否かは、スクラップの溶銑への溶解時間をもとに判断した。なお、この溶解時間は、炉本体内へスクラップを装入した後、炉内の溶銑温度を連続的に測定し、溶解熱差から予想される温度降下量を逆算することで求めており、以下のように定義し評価した。
(炉内へ装入したスクラップが全て溶解するのに要する時間)≒(スクラップ溶解時間)
具体的には、以下の内容による。
これらを使用した熱バランスの式は、「(入熱量)=(溶銑温度の抜熱量)」の関係式が成り立つことから、以下のようにして示される。
α・E・Δt=Cp・Wp・ΔTp+(Qb−Qout)・Δt+Wc・ΔHc−δWsc・ΔHsc+Wsc・Q1
また、αは、電源からIHコイル(溝型誘導加熱装置の一部を構成するコイル)までの送電損失であり、電力設備計からの計算、および水冷ケーブルの冷却水抜熱実績等から求めることができる。なお、本法の場合は、操業の出力に応じて変化するが、およそ94〜97%であった。
Qbは、炉本体内の上部の溶銑のない炉内空間の温度を保持するためのバーナーの熱である。使用に際しては、バーナーに十分な燃焼空気を送り込み、完全燃焼させているため、バーナーの熱は、実績の燃料ガス使用量と理論燃焼熱量から求めた。
Qoutは、バーナーの燃焼排ガス組成、温度の実測値、および排ガス流量により、その顕熱を求めることで得た。
また、ΔHscも、同じくスクラップの固有熱物性であるが、通常260〜290(kJ/kg)程度となる。
Cpは、1300〜1400℃での文献値を用いて、0.90kJ/(kg・℃)とした。なお、本計算式では、スクラップの温度は、溶銑温度と同じと仮定しているが、実際には、スクラップの装入直後しばらくは、スクラップ温度が溶銑温度より低い温度となっている。しかしながら、スクラップの温度上昇に要する時間は、連続鋳造で発生したスラブ屑などの厚手屑においても、30〜50秒程度とスクラップの溶解に要する時間と比べると十分短い。前記したように、スクラップの溶解は熱供給律速ではなく、スクラップ表面への浸炭による融点低下に影響されるため、この仮定によるスクラップの溶解時間の決定精度への影響は、無視できるとした。
ΔTpは、各Δtごとの炉内の溶銑温度変化であり、実測値である。
また、ΔHcは、公知の物性値であり、熱力学データの文献値を用いた。
そして、Tp、Wsc、およびWcは実績値であり、δWscは、実績値から算出して求めた。
前記した熱バランスの式を用いて各ΔtごとのδWscを算出し、δWscの合計が装入したスクラップ量Wscと等しい(有効数字は10の位)量となった時点で、スクラップの溶解が完了したものと定義し、スクラップ投入からスクラップ溶解完了までのΔtの合計を、スクラップ溶解時間と定義した。
以下、各種試験結果について説明する。
混銑炉の炉本体の内径は6.5mであり、最大浴深さDは溶銑量を調整することにより、0.4〜4.5mの範囲で変更した。このため、炉本体内の貯銑量は、約500〜2000トンの範囲内で変化した。なお、使用した溶銑温度は1360〜1380℃であり、炭素濃度は3.9質量%以上4.2質量%以下である。
また、炉本体の下部(炉本体の真下を0°として45°の位置に設置)には、間隔をあけて6基のIHを設置しており、各IHの出力Eを1000〜4000kW/基、即ち、炉本体内の溶銑とスクラップとの合計質量の単位量あたり10kW/トン以上40kW/トン以下の範囲で調整した。
図2から明らかなように、炉本体内の溶鉄の最大浴深さDと炉本体の炉内長さLとの比(D/L)が、0.1以上0.4以下のときに、スクラップの溶解時間を5分程度まで短縮できることを確認できた。
なお、炭材の吹き込み量、ガス量、および炭材の吹き込みに使用したランス先端の開口部の位置は、前記した図2の場合の試験条件と同様である。
図3から明らかなように、インダクションヒーターの出力を、炉本体内の溶銑とスクラップとの合計質量の単位量あたり5.0kW/トンを超え50kW/トン未満とすることで、インダクションヒーターの出力を過剰に高くすることなく、スクラップの溶解時間を短縮できることを確認できた。
また、炉本体の下部(炉本体の真下を0°として45°の位置に設置)には、間隔をあけて6基のIHを設置しており、IHの出力Eを、炉本体内の溶銑とスクラップとの合計質量の単位量あたり9kW/トン以上12kW/トン以下の範囲とした。
図4から明らかなように、炭材の吹き込み位置をインダクションヒーターの溶鉄吸入口(吸引口ともいう)から上方へ250mm以上(L1)とすることで、スクラップの溶解時間を十分に短縮できることを確認できた。
また、炭材の吹き込みに使用したランス先端の開口部の位置を、L1=1200mmに固定し、L2を300〜2000mmの範囲内で変更した結果、図5から明らかなように、炭材の吹き込み位置を炉本体内の溶銑の浴面から下方へ700mm以上(L2)とすることで、スクラップの溶解時間を十分に短縮できることを確認できた。
また、炉本体の下部(炉本体の真下を0°として45°の位置に設置)には、間隔をあけて6基のIHを設置しており、IHの出力Eを、炉本体内の溶銑とスクラップとの合計質量の単位量あたり9kW/トン以上12kW/トン以下の範囲とした。
なお、炭材の吹き込みに使用したランス先端の開口部の位置を、L1=1200mm、L2=1500mmとした。
図6から明らかなように、溶銑温度を1280℃以上1450℃の範囲内とし、かつガスの吹き込み量を1〜12Nm3/分で、炉本体内の溶鉄とスクラップとの合計質量の単位量あたり0.001Nm3/(分・トン)以上0.02Nm3/(分・トン)以下の範囲内とすることで、スクラップの溶解時間を十分に短縮できることを確認できた。
図7から明らかなように、炉本体内の溶鉄の炭素濃度を、3.5質量%以上飽和炭素濃度以下(ここでは、5質量%以下)とすることで、スクラップの溶解時間を十分に短縮できることを確認できた。
Claims (3)
- 水平配置された円筒型の炉本体の内部に溶鉄を保持し、溶鉄の排出時は前記炉本体を回転させて内部の溶鉄を炉外に排出し、更に溶鉄の温度を維持および上昇させる溝型誘導加熱装置を前記炉本体の真下を除く下部に備え、冷鉄源を装入して溶解する混銑炉における冷鉄源の溶解方法において、
前記炉本体は、該炉本体の炉内直径が3m以上8m以下、該炉本体の軸方向の炉内長さLが5m以上25m以下であり、前記冷鉄源が装入された前記炉本体内の溶鉄の最大浴深さDと、前記炉本体の軸方向の炉内長さLとの比(D/L)を、0.1以上0.4以下の範囲内とした後、前記炉本体内の溶鉄中にガスによって炭素源を吹き込み、前記ガスの吹き込み量を該炉本体内の溶鉄と前記冷鉄源との合計質量の単位量あたり0.001Nm 3 /(分・トン)以上0.02Nm 3 /(分・トン)以下とし、前記炉本体内の溶鉄の炭素濃度を、3.5質量%以上飽和炭素濃度以下とし、かつ前記炉本体内の溶銑の温度を、1280℃以上1450℃以下とすることを特徴とする溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法。 - 請求項1記載の溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法において、前記炉本体内の溶鉄と前記冷鉄源の加熱に要する前記溝型誘導加熱装置の電力を、該炉本体内の溶鉄と前記冷鉄源との合計質量の単位量あたり5.0kW/トンを超え50kW/トン未満とすることを特徴とする溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法。
- 請求項1および2のいずれか1項に記載の溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法において、前記炉本体内の溶鉄の最大浴深さDは1.2m以上6.0m以下であり、前記炉本体内の溶鉄への前記炭素源の吹き込み位置を、前記溝型誘導加熱装置の溶鉄吸入口から上方へ250mm以上の位置で、かつ前記炉本体内の溶鉄の浴面から下方へ700mm以上の位置とすることを特徴とする溝型誘導加熱装置付き混銑炉における冷鉄源の溶解方法。
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