JP4941138B2 - 樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents

樹脂成形体及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4941138B2
JP4941138B2 JP2007179359A JP2007179359A JP4941138B2 JP 4941138 B2 JP4941138 B2 JP 4941138B2 JP 2007179359 A JP2007179359 A JP 2007179359A JP 2007179359 A JP2007179359 A JP 2007179359A JP 4941138 B2 JP4941138 B2 JP 4941138B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
scattering
molded body
resin
peak
polypropylene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007179359A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008037102A (ja
Inventor
孝至 桜井
秀樹 大嶋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Chemical Co Ltd filed Critical Sumitomo Chemical Co Ltd
Priority to JP2007179359A priority Critical patent/JP4941138B2/ja
Publication of JP2008037102A publication Critical patent/JP2008037102A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4941138B2 publication Critical patent/JP4941138B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Processing And Handling Of Plastics And Other Materials For Molding In General (AREA)
  • Injection Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本発明は、プロピレン樹脂からなる樹脂成形体及びその製造方法に関するものである。さらに詳細には、剛性及び衝撃強度に優れる樹脂成形体及びその製造方法に関するものである。
プロピレン樹脂成形体は、自動車用部品や家電製品用部品等の工業材料として、多くの分野で使用されている。例えば、特許文献1には、剛性、表面硬度、耐熱性等の改良を目的として、キシレン抽出不溶部が99.0重量%以上、アイソタクチック・ペンタッド分率が98%以上、アイソタクチック平均連鎖長が500以上、キシレン不溶部のカラム分別法による各フラクションの平均連鎖長が800以上であるフラクションの合計が10重量%以上であるプロピレン系重合体が開示されている。
特開平7−292022号公報
しかし、特許文献1に開示されているプロピレン樹脂からなる樹脂成形体の剛性及び衝撃強度については、さらなる改良が求められている。
以上の課題に鑑み、本発明の目的は、剛性及び衝撃強度に優れる樹脂成形体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、樹脂成形体を構成するプロピレン樹脂を、結晶部と非結晶部の繰返し構造の周期である長周期が、複数算出されるような構造とすることにより、樹脂成形体の剛性や強度を向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、結晶部と非結晶部とを有するプロピレン樹脂からなる樹脂成形体であって、前記プロピレン樹脂は、その小角X線散乱法により155℃〜165℃で測定した散乱プロファイルの散乱ピークを複数個有することを特徴とする樹脂成形体に係るものである。
また、本発明は上記樹脂成形体の製造方法であって、極限粘度が6.0dl/g以上のポリプロピレンを、5質量%〜40質量%含有するプロピレン樹脂を賦形して成形体前駆体を製造する工程と、前記成形体前駆体を150℃〜170℃で熱処理する工程と、を有することを特徴とする樹脂成形体の製造方法に係るものである。
本発明によれば、剛性及び衝撃強度に優れる樹脂成形体及びその製造方法が提供される。
[樹脂成形体]
本発明に係る樹脂成形体は、結晶部と非結晶部とを有し、小角X線散乱法により155℃〜165℃で測定した散乱プロファイルのピークを、複数個有するプロピレン樹脂からなることを特徴とする。
このようなプロファイルを示すプロピレン樹脂からなる樹脂成形体では、結晶部と非結晶部の繰返し構造の周期である長周期が、複数算出される。結晶部及び非結晶部の厚みが双方ともに厚い長周期構造を形成することによって、樹脂成形体の剛性及び衝撃強度を従来よりも、より向上させることが可能となる。なお散乱プロファイルのピークの数は、2つであることが好ましい。また、結晶構造の長周期(d)は、散乱プロファイルの散乱ピークに対応する波数(以下、散乱ベクトルと称する)(q)を、d=2π/qの式に代入して求めることができる。
ここで、本発明における「結晶部」とは、樹脂成形体中に結晶として存在する部分をいう。そして「非結晶部」とは結晶以外の部分をいう。また、「散乱プロファイル」とは、後述のように小角X線散乱測定により得られる散乱強度を、散乱ベクトルの関数として表したものであり、「散乱ピーク」とは、上記散乱プロファイルをガウシアン関数で近似したときのピークをいう。
ここで、上記散乱プロファイルは、0.08nm-1以上0.15nm-1未満の波数範囲(i)内に少なくとも1個の散乱ピークが存在し、かつ、0.15nm-1以上0.30nm-1以下の波数範囲(ii)内に少なくとも1個の散乱ピークが存在し、前記波数範囲(i)内にある前記少なくとも1個の散乱ピークのうち、最大強度を有するピークの強度をピーク強度(1)とし、波数範囲(ii)内にある前記少なくとも1個の散乱ピークのうち、最大強度を有するピークの強度をピーク強度(2)としたときに、前記ピーク強度(1)の前記ピーク強度(2)に対する比が1〜5であることが好ましい。
このようなピーク強度の比を有する樹脂成形体は、剛性及び衝撃強度により優れる。
上記強度比が1未満の場合、樹脂成形体の衝撃強度が不十分となる傾向にある。また、強度比が5を超えた場合、剛性が不十分となる傾向にある。
本発明では、小角X線散乱装置として、0.08nm-1の空間分解能を有する光学系と、樹脂成形体を加熱する加熱装置と、X線検出器と、からなる小角X線散乱装置が用いられることが好ましい。例えば、「シンクロトロン放射利用技術、(株)サイエンスフォーラム、第177〜183頁、(1989)」に記載されているようなシンクロトロン放射光X線を用いた小角X線散乱測定システムを用いることが好ましい。
樹脂成形体を加熱する加熱装置としては、X線が通過する窓を有し、少なくとも1℃/分以上の昇温速度で昇温できる加熱装置が用いられる。なお、加熱装置は市販の装置を用いてもよい。
X線検出器は、ミリ秒の単位でX線の散乱を検出できるX線検出器であり、好ましくは、前記散乱を2次元で記録することができる2次元X線CCD検出器である。なお、X線検出器は市販の装置を用いてよい。
小角X線散乱の測定は、樹脂成形体を一定の加熱速度で(例えば、1〜10℃/分)、室温から(例えば25℃から)、樹脂成形体が溶融する温度まで(例えば、170℃〜180℃まで)、昇温させながら、樹脂成形体にX線を照射し、樹脂成形体から散乱されるX線を、一定の温度間隔で(例えば、1〜5℃の間隔で)、X線検出器により測定することが好ましい。
そして、上記のような測定方法により得られる測定結果を、散乱強度を縦軸として、また散乱角度あるいは、X線の入射波と散乱波の波数ベクトルの差として定義される散乱ベクトル(q)を横軸としてプロットすることにより、散乱プロファイルが得られる。この散乱プロファイルをガウシアン関数で近似したときの散乱ピーク位置の波数から、長周期を算出することができる。なお、数値解析ソフトウェアは市販のソフトウェアを用いてよい。
小角X線散乱の測定温度は、155℃〜165℃であることが好ましい。測定温度が150℃より低い場合には、0.08nm-1以上0.15nm-1未満の波数範囲(i)に存在する散乱ピークの観測精度が不十分になる場合がある。また、測定温度が165℃より高い場合には、0.15nm-1以上0.30nm-1以下の波数範囲(ii)内に存在する散乱ピークの観測精度が不十分になることがある。
ここで、樹脂成形体の熱劣化防止と、樹脂成形体への熱伝導速度の観点から、測定時の昇温速度は、1℃/分〜10℃/分であることが好ましく、5℃/分〜10℃/分であることがより好ましい。
散乱ピークの観測精度の観点から、小角X線散乱の測定温度の間隔は、0.1℃〜5℃であることが好ましく、0.1℃〜1℃であることがより好ましい。
このようにして得られた散乱プロファイルは、0.08nm-1以上0.15nm-1未満の波数範囲(i)内に少なくとも1個の散乱ピークが存在し、かつ、0.15nm-1以上0.30nm-1以下の波数範囲(ii)内に少なくとも1個の散乱ピークがそれぞれ存在し、波数範囲(i)内にある前記少なくとも1個の散乱ピークのうち、最大強度を有するピークの強度をピーク強度(1)とし、波数範囲(ii)内にある前記少なくとも1個の散乱ピークのうち、最大強度を有するピークの強度をピーク強度(2)としたときに、前記ピーク強度(1)の前記ピーク強度(2)に対する比が1〜5であり、好ましくは1〜4.5であり、更に好ましくは1〜4である。
なお、波数範囲(i)及び(ii)内におけるピークの数は、それぞれ1つであることが好ましい。
[樹脂成形体の製造方法]
本発明に係る樹脂成形体の製造方法は、成形体前駆体を製造する工程(以下、成形工程ともいう)と、この成形体前駆体を熱処理する工程(以下、熱処理工程ともいう)と、を有する。以下詳細に説明する。
成形工程は、極限粘度が6.0dl/g以上のポリプロピレン(以下、ポリプロピレンAとする)を全量の5質量%〜40質量%含有するプロピレン樹脂を、成形する工程である。ポリプロピレンAを含有するプロピレン樹脂を用いることにより、得られる樹脂成形体の結晶部と非結晶部の繰返し構造の周期である長周期が、複数算出されるようになる。このような樹脂成形体とすることにより、樹脂成形体の剛性及び衝撃強度を向上させることが可能となる。
ポリプロピレンAの極限粘度[η]は6.0dl/g以上であるが、機械的物性、特に剛性の向上という観点からは、6.5dl/g以上であることが好ましく、6.7dl/g以上であることがより好ましい。極限粘度が6.0dl/g未満である場合、樹脂成形体の衝撃強度が不十分となることがある。
また、樹脂成形体に用いられるポリプロピレンAの含有量は、プロピレン樹脂の全体を100質量%とした場合、5質量%〜40質量%であり、7.5質量%〜35.0質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましく、12.5質量%〜25.0質量%であることが更に好ましい。含有量が5質量%未満である場合、樹脂成形体の衝撃強度が不十分となることがある。また、含有量が40質量%を超えた場合、樹脂成形体の剛性が低下することがある。
また、プロピレン樹脂は、極限粘度が4.5dl/g以下のポリプロピレン(以下、ポリプロピレンBとする)を、更に含有することが好ましい。ポリプロピレンBを含有することにより、樹脂成形体の剛性及び衝撃強度をより向上させることが可能となる。
上述のように、ポリプロピレンBの極限粘度は、4.5dl/g以下であり、4.3dl/g以下であることが好ましく、4.0dl/g以下であることがより好ましい。極限粘度が4.5dl/gより大きい場合、衝撃強度の改良効果が不十分となることがある。
また、プロピレン樹脂中のポリプロピレンBの含有量は、プロピレン樹脂の全体を100質量%とした場合、60質量%〜95質量%であり、65質量%〜92.5質量%であることが好ましく、70質量%〜90質量%であることがより好ましく、75質量%〜87.5質量%であることが更に好ましい。
なお、上記ポリプロピレンA及びポリプロピレンBを含有するプロピレン樹脂全体の極限粘度は、2.0dl/g以上であることが好ましく、2.5dl/g以上であることがより好ましく、3.0dl/g以上であることがさらに好ましい。
上記ポリプロピレンA及びポリプロピレンBは、それぞれ単独重合体、又はエチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィンとプロピレンとのランダム重合体であってもよい。中でも単独重合体であることがより好ましい。
ここで、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィンとプロピレンとの共重合体としては、エチレン及び炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィンとプロピレンとからなるプロピレン系ランダム共重合体、又は、プロピレン単独重合体とプロピレン−エチレンランダム共重合体部とを含有するプロピレン系ブロック共重合体等が挙げられる。
また樹脂成形体の剛性、耐熱性又は硬度を高めるという観点から、ポリプロピレンAの13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は、好ましくは0.94以上である。
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法(すなわち13C−NMRを用いる方法)によって測定されるポリプロピレンの分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖(換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖)の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、Macromolecules,8,687(1975)に基づいて行う)。具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。
ポリプロピレンA及びポリプロピレンBを含有するプロピレン樹脂全体のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量分布(重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))は、好ましくは5.0〜35.0であり、より好ましくは、5.5〜30.0であり、さらに好ましくは、6.0〜25.0である。
上記ポリプロピレンA及びポリプロピレンBの製造方法としては、重合触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合法を組合せて用いてもよい。
重合触媒としては、例えば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分と、(b)有機アルミニウム化合物と、(c)電子供与体成分とからなる触媒系が挙げられる。この触媒系としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報等に記載されている触媒系が挙げられる。
上記の重合法における固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)及び電子供与体成分(c)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、公知の触媒の使用方法によって、適宜、決めればよい。
重合温度は、通常、−30℃〜300℃であり、好ましくは20℃〜180℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2MPa〜5MPaである。また、分子量及び極限粘度を調整するために分子量調整剤として、例えば、水素を用いることができる。
ポリプロピレンA及びポリプロピレンBの製造方法において、重合(本重合)を実施する前に、予備重合を行ってもよい。予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(a)及び有機アルミニウム化合物(b)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で重合を実施する方法等が挙げられる。
また本発明において、ポリプロピレンA及びポリプロピレンBは、二段階で重合することにより一度に製造してもよい。二段階での重合によって製造する方法としては、例えば、前段でポリプロピレンAを製造した後、後段でポリプロピレンBを製造する方法が挙げられる。
このようにして得られるポリプロピレンA及びポリプロピレンBは、溶融混練してプロピレン樹脂とした後に賦形される。溶融混練の方法としては、例えば、別々に重合したポリプロピレンA及びポリプロピレンBとを、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等で溶融混練する方法が挙げられる。混練の温度は、通常、170℃〜300℃であり、混練の時間は、通常、1分〜20分である。また、各成分の混練は同時に行ってもよく、分割して行ってもよい。各成分を分割して混合する場合、混練順序は特に限定されるものではない。
また、プロピレン樹脂は、必要に応じて、上記ポリプロピレンA及びポリプロピレンB以外の樹脂や、各種添加剤を含有していてもよい。
ポリプロピレンA及びポリプロピレンB以外の樹脂としては、例えば、エラストマー等が挙げられる。また、添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、無機充填剤、有機充填剤等が挙げられる。
プロピレン樹脂の賦形には、通常、射出成形が用いられる。射出成形には、射出機と金型とを有する射出成形機が用いられ、プロピレン樹脂は射出機内で実質的に溶融状態にされ、所定の射出圧力で金型キャビティに充填される。
上記成形工程において、剛性及び衝撃強度に優れた樹脂成形体を得るために、金型キャビティに射出されたプロピレン樹脂を、所定の圧力で加圧して保持(保圧)してもよい。保圧を行うことにより、プロピレン樹脂を構成する重合体の分子鎖の配向度が高まり、結晶部及び非結晶部の厚みが双方ともに厚い長周期構造を形成することが可能となる。その結果、より優れた剛性及び耐衝撃性を有する樹脂成形体を得ることが可能となる。
保圧時の圧力は、金型キャビティの大きさによって異なるが、射出成形機の最大射出圧力Pの15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることが最も好ましい。
保圧時間としては、0.5秒〜60秒であることが好ましく、1秒〜50秒であることがより好ましい。また、保圧時の金型の温度としては10℃〜70℃であることが好ましく、20℃〜60℃であることが好ましい。
保圧時の圧力の測定方法は、所望の樹脂成形体の形状によって異なるが、一般的には、射出成形機に設けられている圧力計を用いて測定する。
このような方法により得られる成形体前駆体は、150℃〜170℃で熱処理を行う熱処理工程を経て樹脂成形体となる。熱処理工程を行うことにより、樹脂成形体中のプロピレン樹脂の結晶部及び非結晶部の厚みが双方ともに厚い長周期構造を十分に有する結晶構造にすること、即ち、上述の散乱プロファイルにおけるピーク強度(1)のピーク強度(2)に対する比を1以上にすること、が可能となる。これによって、得られる樹脂成形体の剛性及び衝撃強度を、より短時間で向上させることが可能となる。
熱処理工程における熱処理温度は、150℃〜170℃であり、150℃〜165℃であることが好ましく、150℃〜160℃であることが更に好ましい。熱処理時間は、10分間〜400時間であることが好ましく、10分間〜300時間であることがより好ましく、10分間〜200時間であることが更に好ましい。
熱処理温度を150℃以上にすることにより、機械的特性、特に剛性をより向上させることが可能となる。また熱処理温度を170℃以下にすることにより、樹脂成形体の形状を安定化させることが可能となる。
そして熱処理時間を10分間よりも長くすることにより、機械的特性、特に衝撃強度を向上させることが可能となる。また熱処理時間を400時間よりも短くすることによりプロピレン樹脂の分解を防ぎ、十分な機械的特性を付与することが可能となる。
熱処理方法としては、例えば、(1)成形体前駆体を製造した金型から成形体前駆体を取り出さずに、金型を150℃〜170℃に加熱する方法、(2)成形体前駆体を150℃〜170℃に保持したロール面や熱板面に接触させる方法、(3)150℃〜170℃の窒素、アルゴン、空気等のガスが充満したオーブン内に成形体前駆体を配置する方法、(4)150℃〜170℃のシリコンオイル、水等の不活性液体が充填した浴槽内に成形体前駆体を浸漬する方法等が挙げられる。
以下に、本発明を実施例と比較例を挙げて更に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定されるものではない。
本発明で用いるプロピレン樹脂、又は、本発明の樹脂成形体の物性測定方法及び、製造方法を以下に示す。
(1)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて、溶媒としてテトラリンを用い、濃度0.1g/dl、0.2g/dl及び0.5g/dlの3点について135℃のもと還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。
(2)曲げ弾性率(単位:MPa)
ASTM D790に準拠し、射出成形により成形された3.2mm厚の試験片を使用して、23℃における曲げ弾性率を測定した。
(3)アイゾット衝撃強度(単位:kJ/m2
JIS−K−7110に準拠し、射出成形により成形された3.2mm厚の、成形後にノッチ加工を行った試験片を使用して、23℃におけるアイゾット衝撃強度を測定した。
(4)小角X線散乱測定の構成
(4−1)小角X線散乱測定装置の構成
小角X線散乱測定装置の光学系は、光軸上に上流から樹脂成形体の加熱装置と真空パスと2次元X線CCD検出器が設置されてなる構成とした。加熱装置にはジャパンハイテック(社)の小角X線散乱装置用加熱せん断流動場印加ユニット(CSS−450NV)を用いた。2次元X線CCD検出器には浜松ホトニクス(株)の空冷式2次元X線CCD検出器(C7300)及びイメージインテンシファイアを用い、また、2次元X線CCD検出器側の真空パス側面の光軸上に10mmΦの鉛製ビームストップを設置した。
(4−2)小角X線散乱測定の条件
樹脂成形体を、Through View測定に対応した設置となるように加熱装置にセットして、10℃/分の昇温速度で樹脂成形体が完全に融解するまで昇温させながら、6秒毎に76m秒の露光時間にて、樹脂成形体からの小角X線散乱を測定した。
(4−3)小角X線散乱データの解析
2次元X線CCD検出器で検知される小角X線散乱の散乱強度は、検出器に付属のソフトウェア(商品名:Hi−pic6.3)を用いて解析した。始めに、樹脂成形体を設置せずに、小角X線散乱装置用加熱せん断流動場印加ユニットのみの小角X線の散乱を測定してバックグラウンドを取得した。次に、ユニットに樹脂成形体を設置して、ユニットに設置された樹脂成形体の小角X線の散乱を測定した。そして、測定された小角X線の散乱からバックグラウンドを差し引く処理を行った。さらに、散乱角が既知であるコラーゲンの小角散乱像から2次元画像上の任意の点における散乱ベクトル(q)を決め、樹脂成形体の流動方向の散乱強度を縦軸に、散乱ベクトルを横軸として散乱プロファイルを作成した。
樹脂成形体中の長周期は、数値解析ソフトウェア(商品名:KaleidaGraph4.0)を用いて以下の手順で算出した。
始めに、樹脂成形体を10℃/分の速度で昇温させる過程において、散乱ベクトル0.08nm-1以上0.15nm-1未満及び散乱ベクトル0.15nm-1以上0.30nm-1以下の範囲に散乱ピークの強度の最大値が、それぞれ観測され、かつ、散乱ベクトル0.08nm-1以上0.15nm-1未満の範囲の散乱強度が最大となった160℃〜161℃における散乱プロファイルに対して、下記ガウシアン関数を用いて散乱プロファイルを近似して、散乱プロファイルのパラメータ(m1〜m6)を決定した。
y=m1+m2×exp{−((x−m3)/m4)2}+m5×exp{−((x−m6)/m4)2
ここで、m1は定数であり、パラメータm3は、波数範囲(i)(0.08nm-1以上0.15nm-1未満)に対応する散乱ベクトル(q)であり、パラメータm6は、波数範囲(ii)(0.15nm-1以上0.30nm-1以下)に対応する散乱ベクトルである。そして、パラメータm2及びm5は、ピーク強度(1)及びピーク強度(2)であり、パラメータm4はガウシアン関数の半値幅である。
長周期(d)は、m3及びm6の値より、d=2π/qの式を用いて求めた。また、強度比(ピーク強度(1)/ピーク強度(2))は、散乱ピークのピーク強度(1)及びピーク強度(2)の値(m2およびm5)を用いて求めた。
(5)プロピレン樹脂の製造方法
プロピレン樹脂としては、特開平10−212319号公報記載の触媒を用いて製造した。以下のプロピレン−エチレン共重合体(PP−1)及びプロピレン単独重合体(PP−2)を用いた。
PP−1:極限粘度が2.9dl/gで、エチレンを0.3wt%含有し、アイソタクチック・ペンタッド分率が0.965であるプロピレン−エチレン共重合体。
PP−2:極限粘度が7.0dl/gであるプロピレン単独重合体。
(6)熱処理方法
熱処理は、ギアオーブン中の、ステンレス製のたて20cm、横20cm、高さ2cmの容器の中に試験片を静置し、縦22cm、横22cm、厚み0.5cmのステンレス製の板で蓋をした後、実施した。
〔実施例1〕
PP−1を90重量部、PP−2を10重量部混合したものを、内径40mmの単軸押出機にて溶融混練し、ペレット状のプロピレン樹脂を得た。このプロピレン樹脂を射出成形機(東芝機械製 IS100EN)を用いシリンダー温度260℃、保圧の圧力を射出成形機の最大射出圧力Pの33%に設定し、試験片を成形した。その試験片をギアオーブンを使用して、表1の条件で熱処理を行った。熱処理後の試験片を用いて、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度を測定した。これらの結果を表1に示した。
また、小角X線散乱の測定から、散乱プロファイルを作成してガウシアン関数にて近似することにより、パラメータm1〜m6、長周期、最大強度及び強度比を求めた。散乱プロファイルを図1、散乱プロファイルの解析結果を表2及び図2に示した。
〔実施例2〕
PP−1を70重量部、PP−2を30重量部混合して調製したプロピレン樹脂を、射出成形し、表1記載の条件で熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作で行った。曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の結果を表1に示した。また、散乱プロファイルを図3に、散乱プロファイルの解析結果を表2及び図4に示した。
〔比較例1〕
PP−1を90重量部、PP−2を10重量部混合して調製したプロピレン樹脂を、射出成形し、表1記載の条件で熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作で行った。曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の結果を表1に示した。また、散乱プロファイルを図5に、散乱プロファイルの解析結果を表2及び図6に示した。
〔比較例2〕
PP−1を70重量部、PP−2を30重量部混合して調製したプロピレン樹脂を、射出成形し、表1記載の条件で熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作で行った。曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の結果を表1に示した。また、散乱プロファイルを図7に、散乱プロファイルの解析結果を表2及び図8に示した。
〔比較例3〕
PP−1のみを用いて射出成形し、表1記載の条件で熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の操作で行った。曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の結果を表1に示した。また、散乱プロファイルを図9に、散乱プロファイルの解析結果を表2及び図10に示した。
〔比較例4〕
PP−1のみを用いて射出成形し、表1記載の条件で熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして行った。曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の結果を表1に示した。また、散乱プロファイルを図11に、散乱プロファイルの解析結果を表2及び図12に示した。
Figure 0004941138
Figure 0004941138
本発明の実施例1の試験片を用いて得られた160℃における小角X線散乱プロファイルである。 本発明の実施例1の試験片を用いて得られた160℃における小角X線散乱プロファイルの解析結果を示した図である。 本発明の実施例2の試験片を用いて得られた160℃における小角X線散乱プロファイルである。 本発明の実施例2の試験片を用いて得られた160℃における小角X線散乱プロファイルの解析結果を示した図である。 比較例1の試験片を用いて得られた160℃における小角X線散乱プロファイルである。 比較例1の試験片を用いて得られた160℃における小角X線散乱プロファイルの解析結果を示した図である。 比較例2の試験片を用いて得られた160℃における小角X線散乱プロファイルである。 比較例2の試験片を用いて得られた160℃における小角X線散乱プロファイルの解析結果を示した図である。 比較例3の試験片を用いて得られた161℃における小角X線散乱プロファイルである。 比較例3の試験片を用いて得られた161℃における小角X線散乱プロファイルの解析結果を示した図である。 比較例4の試験片を用いて得られた161℃における小角X線散乱プロファイルである。 比較例4の試験片を用いて得られた161℃における小角X線散乱プロファイルの解析結果を示した図である。

Claims (4)

  1. 結晶部と非結晶部とを有するプロピレン樹脂からなる樹脂成形体であって、
    前記プロピレン樹脂は、その小角X線散乱法により155℃〜165℃で測定した散乱プロファイルの散乱ピークを複数個有し、
    極限粘度が6.0dl/g以上のポリプロピレンを、
    前記プロピレン樹脂の全量の5質量%〜40質量%含有することを特徴とする樹脂成形体。
  2. 前記散乱プロファイルにおいて、0.08nm-1以上0.15nm-1未満の波数範囲(i)内に少なくとも1個の散乱ピークが存在し、かつ、0.15nm-1以上0.30nm-1以下の波数範囲(ii)内に少なくとも1個の散乱ピークがそれぞれ存在し、
    前記波数範囲(i)内にある前記少なくとも1個の散乱ピークのうち、最大強度を有するピークの強度をピーク強度(1)とし、
    前記波数範囲(ii)内にある前記少なくとも1個の散乱ピークのうち、最大強度を有するピークの強度をピーク強度(2)としたときに、前記ピーク強度(1)の前記ピーク強度(2)に対する比が1〜5であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体。
  3. 前記プロピレン樹脂は、極限粘度が4.5dl/g以下のポリプロピレンを、前記プロピレン樹脂の全量の60質量%〜95質量%更に含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形体。
  4. 請求項1から3いずれかに記載のプロピレン樹脂からなる樹脂成形体の製造方法であって、
    極限粘度が6.0dl/g以上のポリプロピレンを、5質量%〜40質量%含有するプロピレン樹脂を賦形して成形体前駆体を製造する工程と、
    前記成形体前駆体を150℃〜170℃で熱処理する工程と、
    を有することを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
JP2007179359A 2006-07-10 2007-07-09 樹脂成形体及びその製造方法 Expired - Fee Related JP4941138B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007179359A JP4941138B2 (ja) 2006-07-10 2007-07-09 樹脂成形体及びその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006189006 2006-07-10
JP2006189006 2006-07-10
JP2007179359A JP4941138B2 (ja) 2006-07-10 2007-07-09 樹脂成形体及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008037102A JP2008037102A (ja) 2008-02-21
JP4941138B2 true JP4941138B2 (ja) 2012-05-30

Family

ID=39172656

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007179359A Expired - Fee Related JP4941138B2 (ja) 2006-07-10 2007-07-09 樹脂成形体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4941138B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2664646A4 (en) * 2011-01-13 2017-07-19 Sekisui Chemical Co., Ltd. Method for producing polymer molded article, and polymer molded article

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0770334A (ja) * 1993-09-03 1995-03-14 Mitsubishi Chem Corp ポリオレフィン樹脂成形体
JPH08197640A (ja) * 1995-01-24 1996-08-06 Mitsubishi Chem Corp ポリオレフィン樹脂成形体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008037102A (ja) 2008-02-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9670353B2 (en) Thermoplastic vulcanizate with crosslinked olefin block copolymer
JP4205786B2 (ja) ポリプロピレン系樹脂組成物およびその射出成形体
CN104945729B (zh) 热塑性弹性体组合物
JP6553752B2 (ja) 繊維強化複合体
EP0124722A2 (en) Polymer composition and preparation method
JPH05194685A (ja) エチレン−プロピレンブロック共重合体
CN1142972C (zh) 聚丙烯基树脂组合物及其注塑制品
CA2175120A1 (en) Thermoplastic resin composition and injection molded article thereof
JP4941138B2 (ja) 樹脂成形体及びその製造方法
JP2018188631A (ja) 熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体
CN108727704B (zh) 丙烯树脂组合物和注射成型制品
DE112006002284B4 (de) Propylen-Ethylen-Buten-Blockcopolymer und dessen Verwendung zur Herstellung eines Formkörpers
US8017711B2 (en) Resin article and process for producing the same
JP5115031B2 (ja) プロピレン系樹脂成形体及びその製造方法
US8563673B2 (en) Propylene-based resin molded article and method for producing the same
Salazar et al. Relating fracture behavior to spherulite size in conrolled‐rheology polypropylenes
JP2009006708A (ja) 熱可塑性樹脂成形体及びその製造方法
JP5406020B2 (ja) プロピレン系重合体の架橋体
JP2014167056A (ja) 射出成形体及びその製造方法
JPH0551498A (ja) 熱可塑性樹脂組成物およびその射出成形体
CN108727687B (zh) 丙烯树脂组合物和注射成型制品
Tranchida et al. Influence of 2, 1‐erythro regiodefects on the crystallization behavior of isotactic polypropylene
Hassan et al. Irradiation processing of immiscible PP/EOC blend: Morphology control and processability modification
CN112204055B (zh) 聚丙烯组合物和模塑制品
CN1033961C (zh) 间同立构聚丙烯模制法及模制品

Legal Events

Date Code Title Description
RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20080204

RD05 Notification of revocation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425

Effective date: 20080516

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100621

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111108

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120106

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120131

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120213

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4941138

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150309

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees