JP4940558B2 - 無線応答装置及び無線応答通信方式 - Google Patents

無線応答装置及び無線応答通信方式 Download PDF

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Description

本発明は、質問器との間で無線により信号を送受信する無線応答装置及び無線応答通信方式に関し、特に、固有のエネルギー源を持たずに高ノイズ環境化での通信が可能な無線応答装置及び無線応答通信方式に関する。
従来、遠隔場所での物理量、化学量等の測定量を検出するためには、測定場所にセンサーを配置し、信号線を延設することで、計測を可能としてきた。
しかし、信号線を延設する構造では、移動体や回転体等の内部へのセンサーの設置は困難であり、また、血液中の酸素分圧や血圧、体温等の生体の状態の定常的な分析や、大気または水中の化学・生物的汚染の定常的な分析等の微小・過酷な遠隔場所からの定常的計測・認識が必要な場合に困難を生じる。
また、複数の物品や人に個別の識別コードを与え、物流等のリソースマネジメントや、個人認証に用いることが近年検討されているが、それらの用途においても有線の構造では全く機能しない。
この問題を解決するために、例えば弾性表面波素子に送受信のための機能を加え、遠隔場所からの呼びかけあるいは質問に対して、固有のエネルギー源を有さずに外部の情報をセンシングしたり、個別の装置の識別信号を応答する無線応答装置が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
米国特許3273146号 特開昭55−46159号公報 特許第3315984号公報
しかし、特許文献1〜3に記載された従来の無線応答装置によると、それらをパーソナルコンピュータ(PC)や複写機等の電子機器の周辺及び内部で使用した場合、機器から発生する電磁ノイズの影響で電磁波信号の良好な伝搬が阻害され、十分に機能しなくなるという問題がある
そこで、無線装置の出力を上げることにより、無線装置の電磁波伝搬向上を図ることが可能となるが、逆に機器に対するノイズの影響が大きくなり、また電波法等の規制の面からも出力には上限が定められ、良好な信号伝搬距離が妨げられるという問題が生じる。
耐ノイズ性を向上する方法として、信号を広帯域な周波数の電波にした後発信し、受信した広帯域な周波数の電波から信号を抽出する方法が考えられ、それらの中には直接スペクトル拡散方式、周波数ホッピング方式、パルス化周波数変調方式等の携帯電話や無線LAN等の情報機器で使用されている方式があるが、それらを実現する為には複雑な機構が必要となる為装置が大きくなり、また固有のエネルギー源が必要となることから、微小・過酷な遠隔場所からの定常的計測・認識が必要な場合に困難を生じる。
本発明の目的は、電子機器から発生する電磁ノイズ下でも良好な無線通信が可能な小型無線応答装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、基板上に、広帯域な周波数を持つパルス入力信号を受信する受信部と、前記パルス入力信号を弾性表面波へ変換する入力変換器と、前記弾性表面波を伝搬する遅延ラインと、伝搬された前記弾性表面波を広帯域な周波数を持つパルス出力信号へ変換する出力変換器と、前記パルス出力信号を送信する送信部とを備えた無線応答装置であって、前記入力変換器及び前記出力変換器は、複数の共振条件を有し、所望の周波数範囲において共振条件が連続的に変化する少なくとも1つの櫛形電極からなり、前記周波数範囲における複数の周波数での位相整合条件を満たすように前記入力変換器側と前記出力変換器側の前記櫛形電極を前記基板上に配置して構成され、前記櫛形電極は、当該櫛形電極の電極幅及び電極間隔が徐々に広くなるように形成されていることを特徴とする無線応答装置を提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、基板上に、広帯域な周波数を持つパルス入力信号を受信する受信部と、前記パルス入力信号を弾性表面波に変換する入力変換器と、前記弾性表面波を伝搬する遅延ラインと、伝搬された前記弾性表面波を広帯域な周波数を持つパルス出力信号へ変換する出力変換器と、前記パルス出力信号を送信する送信部とを備えた無線応答装置と、前記パルス入力信号を送信し、かつ、前記パルス出力信号を受信し、前記パルス入力信号と前記パルス出力信号とを比較して、その位相の変化により信号を識別する信号送受信装置とからなり、前記入力変換器及び前記出力変換器は、複数の共振条件を有し、所望の周波数範囲において共振条件が連続的に変化する少なくとも1つの櫛形電極からなり、前記周波数範囲における複数の周波数での位相整合条件を満たすように前記入力変換器側と前記出力変換器側の前記櫛形電極を前記基板上に配置して構成され、前記櫛形電極は、当該櫛形電極の電極幅及び電極間隔が徐々に広くなるように形成されていることを特徴とする無線応答通信方式を提供する。
本発明の無線応答装置又は無線応答通信方式によれば、広帯域な周波数の無線信号を狭帯域な信号とすることなく遅延ライン上の信号(表面弾性波)に変換、伝搬し、広帯域な周波数の無線信号へ変換する機能と、遅延ライン上でセンシング及び識別信号を生成する機能とを持った無線応答装置を形成することにより、広帯域な信号を狭帯域な信号に変換することなく伝搬することが可能となり、ノイズ環境下での無線信号の抽出が可能となる。また、構造が単純である為、小型化が可能であり、かつコストを低減することができる。その結果、これまで実現できなかったノイズ環境下及び遠隔場所での高精度なセンシングが可能となる。
以下、実施の形態及び実施例により本発明を説明するが、図1〜図6、図8及び図10〜11に係る説明は本発明の参考の形態に関する説明を含むものであり、実施例1〜2、4、5はその表記にかかわらず実施例ではなく参考例である。
図1は、本発明の実施の形態に係る無線応答装置を表すブロック図を示す。この無線応答装置は、無線により入力信号を受信する受信部Aと、その入力信号を変換する入力変換器Bと、変換された信号がある一定時間を持って伝搬する遅延ラインCと、遅延ラインCからの信号を変換する出力変換器Dと、無線により出力信号を送信する送信部Eとを持つ。
受信部A及び送信部Eはアンテナ及び整合回路からなり、広帯域な特性を持った平面アンテナや微小ループ、微小ダイポールアンテナ、スパイラルアンテナ等の小型のアンテナを単数あるいは複数用いることで実現される。
入力変換器B及び出力変換器Dは、アンテナから導入された広帯域な周波数の電気信号を、遅延ライン上を伝搬する弾性表面波と呼ばれる信号に変換する櫛型電極、及び伝搬された弾性表面波をアンテナから送信される広帯域な周波数の電気信号に変換する櫛形電極より構成される。この櫛型電極は入力変換器側と出力変換器側で対になっており、本発明においては、共振条件の異なる複数の櫛型電極をそれぞれの位相整合条件を満たすように配置(例えば、図6参照)、あるいは共振条件が連続的に変化する1つの櫛型電極をそれぞれの周波数での位相整合条件を満たすように配置(例えば、図9参照)されており、この構造を用いることにより広帯域性を失うことなく電気信号と弾性表面波との変換をすることができる。また、他の実施の形態としては、図6に示す複数の櫛型電極のそれぞれを図9に示すような共振条件が連続的に変化する櫛型電極としてもよく、あるいは共振条件が段階的(階段状)に変化する櫛型電極としてもよい。これらの場合においても櫛型電極対はそれぞれの共振条件における周波数での位相整合条件を満たすような距離に配置される。
遅延ラインCは弾性表面波が伝搬する媒体として機能するが、特定の誘電体基板などを材料として用いることにより外部の影響を受けて信号が変化するセンサーとしての機能も持つことができる。更に、遅延ラインC上に炭素系化合物あるいは半導体を形成することで、外部の物理・化学的影響を受けて信号が変化する多様なセンサーとしての機能を持つことができる。炭素系化合物(有機膜)としては、例えば、水分を吸着することで抵抗が変化するポリスチレン・スルホン酸ナトリウムのような高分子導電性感湿膜、あるいは水を吸着することにより誘電率が変化する酢酸セルロース膜のような感湿膜を用いて、湿度センサーとして機能させることができる。また、半導体(半導性の膜)としては、例えば、WOやMnO薄膜を用いて、HSやNOを吸着させるセンサーとして用いることができる。この場合には遅延ラインCは外部の影響を受けて信号を変化させるセンサーとしての機能を持たない材料を用いることが好ましい。また、以上説明した遅延ラインCは、ライン上に反射電極あるいは吸収体を形成することで、複数のデバイスの識別信号を生成する機能を持つことも可能である。
以下に本発明の無線応答装置をより詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
図2は、本発明の実施の形態に係る無線応答装置の平面図である。この無線応答装置は、弾性表面波が伝搬するための遅延ラインCとしての誘電体基板104aと、無線電波としての電気信号と誘電体基板104aを伝搬する信号としての弾性表面波とのエネルギー変換を行うための誘電体基板104a上に形成された入力変換器B及び出力変換器D、具体的には、共振条件の異なる4対の櫛型電極(IDT:Interdigital Transducer)105A,106A,107A,108A、105B,106B,107B,108Bと、4対の櫛型電極の一端にそれぞれ整合部(インピーダンスマッチング部109A,109B)を介して接続された受信部A及び送信部Eとしての一対のアンテナ102A,102Bとを備える。
図2では4対の櫛型電極としたが、何対とするか及びどのような形状(幅、間隔など)とするかは、ノイズ環境状況や要求する精度等によって適宜調整可能であり、共振条件が変化する櫛型電極1対のみであってもよい。また、アンテナは一対に限らず、複数対であってもよい。更に、この構造は入力/出力端で対称な機能を持つこともできる為、無線応答装置内に反射電極を形成することにより出力側の櫛型電極と送信アンテナを設けずに、入力側の櫛型電極と受信アンテナに出力側の櫛型電極と送信アンテナの機能を兼ねさせた構造にしてもよい。
誘電体基板104aの材料としては、SiO,SrTiO,BaTiO,BaZrO,LaAlO,ZrO,Y8%−ZrO,MgO,MgAl,LiNbO,LiTaO,Al,ZnO等の酸化物、ABO型のペロブスカイト型として、BaTiO,PbTiO,Pb1-xLax(ZryTi1-y1-x/4(xおよびyの値によりPZT、PLT、PLZT),Pb(Mg1/3Nb2/3)O,KNbO等の正方晶,斜方晶もしくは擬立方晶系材料、擬イルメナイト構造体としてLiNbO,LiTaO等に代表される強誘電体等、またはタングステンブロンズ型として、SrxBa1-xNb,PbxBa1-xNb等が挙げられる。この他に、BiTi12、PbKNb15、KLiNb15、さらに以上列挙した強誘電体の置換誘導体等から選択される、鉛を含むABO型のペロブスカイト型酸化物も好適に用いられる。これらの材料のうち、特に、LiNbO、LiTaO、ZnO等の材料が弾性表面波の表面速度、結合係数、圧電定数等の点から好ましい。
また、これら誘電体基板104aとしては、以下に示すような基板材料の上に、上述の誘電体材料を薄膜状態として形成しても良く、それらの基板の材料としては、Si,Ge,ダイアモンド等の単体半導体、ガラス、AlAs,AlSb,AlP,GaAs,GaSb,InP,InAs,InSb,AlGaP,AlLnP,AlGaAs,AlInAs,AlAsSb,GaInAs,GaInSb,GaAsSb,InAsSb等のIII−V系の化合物半導体、ZnS,ZnSe,ZnTe,CaSe,CdTe,HgSe,HgTe,CdS等のII−VI系の化合物半導体、導電性もしくは半導電性の単結晶基板として、Nb,La等をドープしたSrTiO,AlドープZnO,In,RuO,BaPbO,SrRuO,YBaCu7-x,SrVO,LaNiO,La0.5Sr0.5CoO,ZnGa,CdGa,MgTiO,MgTi等の酸化物、またはPd,Pt,Al,Au,Ag等の金属等が挙げられるが、既存の半導体プロセスとの適合性やコストの面から、Si、GaAs、ガラス等の材料を用いることが好ましい。
誘電体薄膜の膜厚は、目的に応じて適宜選択されるが、通常は0.1μmから10μmの間に設定される。また、この誘電体薄膜は、櫛型電極における電気機械結合係数/圧電係数、あるいはアンテナを一体化した場合のアンテナの誘電損失等の観点から、エピタキシャルまたは単一配向性を有することが好ましい。また、誘電体薄膜上にGaAs等のIII−V族半導体あるいはダイヤモンド等の炭素を含有する薄膜を形成してもよい。これにより、弾性表面波の表面速度、結合係数、圧電定数等を向上させることもできる。
数対の櫛型電極105A〜108A、105B〜108Bは、導電パターンにより形成される。この導電パターンの材料としては、Ti,Cr,Cu,W,Ni,Ta,Ga,In,Al,Pd,Pt,Au,Ag等の金属、またはTi−Al,Al−Cu,Ti−N,Ni−Cr等の合金を、単層もしくは2層以上の多層構造に積層することが好ましく、金属としてはAu,Ti,W,Al,Cu、及びこれらの合金が特に好ましい。また、この金属層の膜厚は、1nm以上10μm未満とすることが好ましい。
アンテナ102A,102B、インピーダンスマッチング部103A,103Bは、櫛形電極を形成した基板と別個の基板上に形成した後、互いに接合した形状にしているが、櫛型電極と同一基板上に形成しても良い。
図3は、本発明の他の実施の形態に係る無線応答装置の平面図である。この無線応答装置は、上述したように、図2における誘電体基板104aに代えて、基板201上に形成した誘導体薄膜202としたものである。この図3に基づいて、本発明の実施の形態に係る無線応答装置の製造方法の一例について以下に説明する。
まず、基板201を準備し、この基板201上に誘電体薄膜202を成膜する。誘電体薄膜202を基板201上に成膜する方法としては、電子ビーム蒸着、フラッシュ蒸着、イオン・プレーティング、Rf−マグネトロン・スパッタリング、イオン・ビーム・スパッタリング、レーザー・アブレーション、MBE(分子線エピタキシャル)、CVD(気相成長法),プラズマCVD,MOCVD(有機金属気相成長法)等の気相法、ゾルゲル法、及びMOD法等のウエット・プロセスのいずれの方法をも用いることができる。
次に、基板201上の誘電体薄膜202表面に金属膜を成膜する。金属膜は、電子ビーム蒸着、フラッシュ蒸着、イオン・プレーティング、Rf−マグネトロン・スパッタリング、DC−マグネトロン・スパッタリング、イオン・ビーム・スパッタリング、レーザー・アブレーション、MBE等によって作製することができる。
次に、基板201上に成膜した金属膜から所定の形状の導電パターン、すなわち複数の櫛型電極206A〜208A,206B〜208B、アンテナ203A,203B、インピーダンスマッチング部204A,204Bを形成する。金属膜から所定の形状の導電パターンを形成する方法としては、金属膜を成膜した後、不要部分をエッチングにより除去するエッチング法と、金属膜を形成しない部分にマスクを形成し、このマスクを用いて金属膜を成膜した後、マスクを除去するリフトオフ法とがある。
エッチング法の場合は、金属膜を成膜した後、薄膜上にフォトレジストあるいは電子線レジストを塗布、露光してマスクを形成し、このマスクを用いてエッチングを行う。エッチング方法としては、HCl,HNO,HF,HSO,HPO,C,NHF等の水溶液やその混合水溶液によるウエット・エッチング、CCl,CCl,CHClFCFやそれらのOとの混合ガスによるリアクティブ・イオン・エッチング、またはイオンビーム・エッチング等のドライ・エッチング等が好適である。
リフトオフ法の場合は、光導波路上にフォトレジストあるいは電子線レジストを塗布し、ネガパターンを露光してマスクを形成し、このマスクを用いて金属を成膜する。その後、マスク上の堆積物と共にマスクを除去する。金属膜の形成は、上記エッチング法とリフトオフ法のいずれによっても可能であるが、下側に形成される誘電体膜202に対する損傷がより少ない点で、リフトオフ法の方が好ましい。
櫛型電極の形状と配置としては、櫛形電極による弾性表面波は、電極幅(1本の櫛の幅)をh、電極間隔(2本の櫛の間隔)をa、電極間距離をd(d=a+h)とし、基板材料によって異なる表面波の速度をvとすると、f=v/2dで表される共振周波数fにて最も強く励振される為、広帯域な応答を持つ弾性表面波を得る為には、例えば、電極幅h及び電極間隔aを変化させた櫛型電極を複数個(206A〜208A)形成し、更にそれらの電極からの弾性表面波を受ける出力側の櫛型電極(206B〜208B)に対する位相を整合するように、櫛形電極間の距離を合わせて配置する。又は、出力側の櫛型電極(206B〜208B)に換えて反射電極を設け、反射電極に対する位相を整合するように、櫛型電極/反射電極間の距離を合わせて配置する。
次に、本発明の実施の形態の動作を説明する。一方のアンテナが質問器から広帯域な周波数を持つ質問信号を無線で受信すると、質問信号がアンテナに接続された複数の異なる共振周波数を持つ櫛型電極により広帯域な周波数を持ったまま弾性表面波に変換され、その弾性表面波は誘電体薄膜を介して対となる他方の櫛型電極に伝搬する。このとき、誘電体薄膜を伝搬する弾性表面波の位相は、質問信号が有する位相から誘電体薄膜の温度に応じてシフトする。他方の櫛型電極に伝搬した広帯域な周波数を持つ弾性表面波は、複数の異なる共振周波数を持つ櫛型電極により広帯域な周波数を持つ応答信号に変換され、その応答信号は櫛型電極に接続されたアンテナから無線により質問器に送信される。質問器側では、信号処理により周辺ノイズから質問信号及び応答信号が抽出され、質問信号及びから応答信号への位相のシフト量を求め、これに基づいて誘電体薄膜の温度、すなわち応答無線装置が検出した温度を検知する。
本発明の実施の形態では、一対又は複数対の櫛型電極を用いることができるが、櫛型電極と弾性表面波を反射する反射器との組合せを用いてもよい。また、質問器側の信号処理は、周波数の比較に限らず、検出対象に応じて位相や伝搬時間等の比較により行ってもよい。さらに、検出対象は、誘電体薄膜の材質等や構造等を適宜選択することにより、温度、圧力に限らず、湿度、変位等の他の物理量あるいは化学量を検出することができる。
以下に、温度、湿度、圧力、加速度を検出する各センサーとしての本発明の実施の形態について説明する。
(温度センサー)
本発明の無線応答装置を温度センサーとして利用する場合、誘電体基板104a及び誘電体薄膜202には、LiNbOを好適に使用できる。LiNbO結晶のSAW伝搬速度は温度変化に対して敏感で温度係数は約〜75×10-6/℃となる。櫛形電極の幅は変化しない為、この伝搬速度の変化は周波数の変化を引き起こし、100℃温度が変化することにより、中心周波数に対して約0.2〜0.3%程度、周波数がシフトする。アンテナ及びマッチング回路は中心周波数に合わされBPF(バンドパスフィルタ)として働く為、受信機(質問器)により受信した電波(中心周波数近辺)の強度は周波数のシフトにより低下することとなる。よって、基準の温度における信号強度をリファレンスとすることで、温度変化により線形に信号強度が変化してワイヤレスセンサの温度を判別することができる。
(湿度センサー)
本発明の無線応答装置を湿度センサーとして利用する場合、誘電体基板104a及び誘電体薄膜202には、LiTaOを好適に使用できる。LiTaO結晶のSAW伝搬速度は温度変化に対して敏感で温度係数は約〜18×10-6/℃となり、LiNbOに対して1/4と小さく、10℃の温度変化があった場合の変化率はSAWの速度変化は0.005%程度となる。このLiTaOの上に酢酸セルロースを10μmスピンコートする。酢酸セルロースは吸水性を持ち、湿度10%から70%RHの間に比誘電率が約50%変化する性質を持ち、この誘電率が変化する材料をLiTaO上に形成することで、SAWの速度に対して0.06%の変化があり、湿度センサーとして用いた場合、温度変化により擾乱を受けずに測定できる。また、温度変化が大きい場合は、別途温度センサーを併用してそれらを補正しても良い。
以上の原理により、湿度が変化することで中心周波数に対して約0.06%程度、周波数がシフトする。アンテナ及びマッチング回路は中心周波数に合わされBPF(バンドパスフィルタ)として働く為、受信機(質問器)により受信した電波(中心周波数近辺)の強度は周波数のシフトにより低下することとなる。よって、基準の湿度における信号強度をリファレンスとすることで、湿度変化により線形に信号強度が変化してワイヤレスセンサの湿度を判別することができる。
(圧力センサー)
本発明の無線応答装置を圧力センサーとして利用する場合、誘電体基板104a及び誘電体薄膜202には、LiTaOを好適に使用できる。LiTaO結晶のSAW伝搬速度は温度変化に対して敏感で温度係数は約〜18×10-6/℃となり、LiNbOに対して1/4と小さく、10℃の温度変化があった場合の変化率はSAWの速度変化は0.005%程度となる。このLiTaOの膜厚方向に肉薄部(ダイヤフラム部)と肉厚部を設けて、ダイヤフラム上に櫛型電極を形成する。このダイヤフラム部分に圧力がかかることで、基板材料が変形し、櫛型電極の幅及びSAWの速度が中心周波数に対して0.2%程度変化し、圧力センサーとして用いた場合、温度変化により擾乱を受けずに測定できる。また、温度変化が大きい場合は、別途温度センサーを併用してそれらを補正しても良い。
以上の原理により、圧力が変化することで中心周波数に対して約0.2%程度周波数がシフトする。アンテナ及びマッチング回路は中心周波数に合わされBPF(バンドパスフィルタ)として働く為、受信機(質問器)により受信した電波(中心周波数近辺)の強度は周波数のシフトにより低下することとなる。よって、基準の圧力における信号強度をリファレンスとすることで、圧力変化により線形に信号強度が変化してワイヤレスセンサの圧力を判別することができる。
図4は、(a)は圧力センサーとして機能する無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるX−X線断面図である。この無線応答装置は、Si基板301上に、バッファ層としてSiO2薄膜302、および誘電体薄膜としてLiTaO薄膜303からなる積層誘電体層を形成し、その上部に、アンテナ304A,304B、インピーダンスマッチング部305A,305B、Alからなる櫛型電極306A〜309A,306B〜309Bを形成し、Si基板301の裏面中央にダイヤフラム部301aを形成するとともにその両側にグランド電極300A,300Bを形成したものである。
(加速度センサー)
本発明の無線応答装置を加速度センサーとして利用する場合、誘電体基板104a及び誘電体薄膜202には、LiTaOを好適に使用できる。LiTaO結晶のSAW伝搬速度は温度変化に対して敏感で温度係数は約〜18×10-6/℃となり、LiNbOに対して1/4と小さく、10℃の温度変化があった場合の変化率はSAWの速度変化は0.005%程度となる。このLiTaOの基板を保持する場合に一端のみを保持し、多端は非固定状態にする。このデバイスに加速度が作用すると、加速度によりねじれが生じて基板材料に変形を生じ、櫛型電極の幅及びSAWの速度が中心周波数に対して0.1%程度変化し、圧力センサーとして用いた場合、温度変化により擾乱を受けずに測定できる。また、温度変化が大きい場合は、別途温度センサーを併用してそれらを補正しても良い。
以上の原理により、加速度が変化することで中心周波数に対して約0.1%程度周波数がシフトする。アンテナ及びマッチング回路は中心周波数に合わされBPF(バンドパスフィルタ)として働く為、受信機(質問器)により受信した電波(中心周波数近辺)の強度は周波数のシフトにより低下することとなる。よって、基準の加速度における信号強度をリファレンスとすることで、加速度変化により線形に信号強度が変化してワイヤレスセンサの加速度を判別することができる。
図5は、(a)は加速度センサーとして機能する無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるY−Y線断面図である。この無線応答装置は、Si基板401上に、バッファ層としてMgO薄膜402、および誘電体薄膜としてLiTaO薄膜403からなる積層誘電体層を形成し、その上部に、アンテナ404A,404B、インピーダンスマッチング部405A,405B、Alからなる櫛型電極406A〜409A,406B〜409Bを形成し、Si基板401の裏面にグランド電極400、その一端部分のみを保持固定する固定部400aを形成したものである。
本発明の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
この無線応答装置に対して広帯域な周波数の質問無線信号を送ることで、内部で帯域を大きく変化させないまま応答信号を返すことができ、この無線応答装置からの応答を位相の変化として識別することができる。従って、通常の位相変化による無線応答装置の識別の場合はその周波数帯域が狭い為ノイズ環境化で使用した場合に応答信号をノイズから抽出し判別することが難しいのに対して、本発明においては広帯域性を保ったままの無線送受信が可能となるので、高ノイズ化での信号抽出が可能となる。特に、質問信号として広帯域な周波数を持つパルスを用いて、その位相の変化により信号を識別することにより、耐ノイズ性と通信距離の拡大の二つの特性を兼ねる通信方式を提供することができる。
図6は、本発明の実施例1の無線応答装置を示す図である。この無線応答装置は、受信部としてのダイポールアンテナ2Aとインピーダンスマッチング部3A、及び送信部としてのダイポールアンテナ2Bとインピーダンスマッチング部3Bが形成されたガラス基板1上に、遅延ラインとしての機能を持つLiNbO結晶基板4a上に入力変換器および出力変換器としての複数の櫛型電極5A〜8A,5B〜8Bを有するチップ4を実装し、複数の櫛型電極5A〜8Aの一端をインピーダンスマッチング部3Aとダイポールアンテナ2Aに、複数の櫛型電極5B〜8Bの一端をインピーダンスマッチング部3Bとダイポールアンテナ2Bに、それぞれボンディングワイヤ9A,9Bを介して接続したものである。
次に、この実施例1の製造方法を説明する。まず、洗浄、エッチング、乾燥を予め行ったLiNbO結晶基板4a上に、フォトレジストをスピンコートし、プリベークの後、電極幅及び電極間隔各1.25μm、長さ100μm、電極対数5(櫛数2で電極対数1を形成、以下同じ)(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極5A、電極幅及び電極間隔各1.67μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極6A、電極幅及び電極間隔各2.00μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極7A、電極幅及び電極間隔各2.50μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極8Aの4つの入力端櫛型電極をそれぞれ対向に位置する同形態の出力端櫛型電極5B,6B,7B,8Bに対し、それぞれの位相条件が同じとなるように距離を調整して配置した電極形状に露光した。さらにポストベークを行い、これに続いて現像を行うことにより、複数個の櫛型電極形状のテーパ状レジストパターンを形成した。
このレジストパターンを用いて、DC−マグネトロンスパッタリング装置により、Arガス流量が200sccm、圧力0.5Pa、基板温度100℃の条件で、AlにCuを5重量%添加した密度90%以上のターゲットからAl−Cu薄膜をスパッタリング形成した。ここでリフトオフを行い、櫛型電極5A,6A,7A,8Aの4つの入力端櫛型電極をそれぞれ同形態の出力端櫛型電極5B,6B,7B,8Bにそれぞれの位相条件が同じとなるように距離を調整して配置した電極を形成した。
このLiNbO結晶基板から約1mm角のチップ4をダイシングし、そのチップ4を予め約35cmのダイポールアンテナ2A,2B及びインピーダンスマッチング部3A,3Bが形成されたガラス基板1上に接着し、櫛型電極5A,6A,7A,8A、5B,6B,7B,8Bの一端をボンディングワイヤ9A,9Bを介してインピーダンスマッチング部3A,3Bと接続した。
この無線応答装置を、プリンター等の電子機器内部に設置して、装置内部の温度を計測したところ、0〜100℃の領域にて、温度変化に対応した応答を示し、電子機器からのノイズが多く観察されたにもかかわらず、それらから約400〜800MHzの広帯域な周波数にて信号を抽出でき、数十cm離れた状態でのモニタリングに成功した。
<比較例1>
図7は、実施例1に対応する比較例1として一般的な無線応答装置を示す図である。この無線応答装置は、受信部としてのダイポールアンテナ12Aとインピーダンスマッチング部13A、及び送信部としてのダイポールアンテナ12Bとインピーダンスマッチング部13Bが形成されたガラス基板11上に、遅延ラインとしての機能を持つLiNbO結晶基板14a上に入力変換器および出力変換器として一対の櫛型電極15A,15Bを有するチップ14を実装し、一対の櫛型電極15A,15Bの一端とインピーダンスマッチング部3A,3B及びダイポールアンテナ2A,2Bとをボンディングワイヤ19A,19Bを介してそれぞれ接続したものである。
次に、この比較例1の製造方法を説明する。まず、洗浄、エッチング、乾燥を予め行ったLiNbO結晶基板14a上に、フォトレジストをスピンコートし、プリベークの後、電極幅及び電極間隔各2.5μm、長さ500μm、電極対数50(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極15A,15Bの形状に露光した。さらにポストベークを行い、これに続いて現像を行うことにより、櫛型電極形状のテーパ状レジストパターンを形成した。
このレジストパターンを用いて、DC−マグネトロンスパッタリング装置により、Arガス流量が200sccm、圧力0.5Pa、基板温度100℃の条件で、AlにCuを5重量%添加した密度90%以上のターゲットからAl−Cu薄膜をスパッタリング形成した。ここでリフトオフを行い、Al−Cuからなる櫛型電極15A,15Bを形成した。
このLiNbO結晶基板から約1mm角のチップ14をダイシングし、そのチップ14を予め約35cmのダイポールアンテナ12A,12B及びインピーダンスマッチング部13A,13Bが形成されたガラス基板11上に接着し、櫛型電極15A,15Bとインピーダンスマッチング部13A,13Bとをボンディングワイヤ19A,19Bを介してそれぞれ接続した。
この比較例1の無線応答装置の動作を約400MHzにて確認できたが、プリンター等の電子機器の内部での使用に対して、機器の発生するノイズにより良好な信号を得ることができず、無線応答装置として機能することができなかった。
図8は、本発明の実施例2の無線応答装置を示す図である。この無線応答装置は、Si基板21上にバッファ層としてMgO薄膜22とその上部に遅延ラインとして機能する誘電体薄膜であるLiNbO薄膜23を形成し、その上部に入力変換器および出力変換器として機能するAlからなる複数の櫛型電極対26A,27A,28A,29A、26B,27B,28B,29B、受信部および送信部として機能するアンテナ24A,24B、インピーダンスマッチング部25A,25Bを形成したものである
次に、この実施例2の製造方法を説明する。まず、洗浄、エッチング、乾燥を予め行ったSi基板21上に、RFスパッタリング法により、RFパワー50W、O/Arガス流量比が0.05、O/Ar圧力比が0.005、圧力0.5Pa、基板温度600℃の条件で、化学量論的組成比が酸化マグネシウム密度90%以上のターゲットから高配向のMgO薄膜22を50nm形成した。更にそのMgO薄膜22上にRFスパッタリング法により、RFパワー50W、O/Arガス流量比が0.05、O/Ar圧力比が0.005、圧力0.5Pa、基板温度600℃の条件で、化学量論的組成比がLiNbO密度90%以上のターゲットから高配向のLiNbO薄膜23を2μm形成した。
次に、薄膜22,23を積層したSiウェハ表面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベークの後、電極幅及び電極間隔各1.25μm、長さ100μm、対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極26A、電極幅及び電極間隔各1.67μm、長さ100μm、対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極27A、電極幅及び電極間隔各2.00μm、長さ100μm、対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極28A、電極幅及び電極間隔各2.50μm、長さ100μm、対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極29Aの4つの入力端櫛型電極をそれぞれ対向に位置する同形態の出力端櫛型電極26B,27B,28B,29Bに対して、それぞれの位相条件が同じとなるように距離を調整して配置した電極形状に露光した。また、約4cm角のアンテナ24A,24B、それらを結ぶインピーダンスマッチング部25A,25Bの配線形状に露光した。さらにポストベークを行い、これに続いて現像を行うことにより、テーパ状レジストパターンを形成した。
このレジストパターンを用いて、DC−マグネトロンスパッタリング装置により、Arガス流量が200sccm、圧力0.5Pa、基板温度100℃の条件で、AlにCuを5重量%添加した密度90%以上のターゲットからAl−Cu薄膜をスパッタリング形成した。ここでリフトオフを行い、櫛型電極26A,27A,28A,29Aの4つの入力端櫛型電極をそれぞれ同形態の出力端櫛型電極26B,27B,28B,29Bにそれぞれの位相条件が同じとなるように距離を調整して配置した電極形状に露光した。約4cm角のアンテナ24A,24B、それらを結ぶインピーダンスマッチング部25A,25BのAl−Cu導電パターンをSiウェハ上に形成した。
このSiウェハから幅約6cm、長さ約4cmの無線応答装置を切り出し、装置内部の直径20cmの円筒可動部品内に設置して、装置内部の温度を計測したところ、0〜100℃の領域にて、温度変化に対応した応答を示し、電子機器からのノイズが多く観察されたにもかかわらず、約400〜800MHzの周波数にて数十cm離れた状態でのモニタリングに成功した。
図9は、本発明の実施例3の無線応答装置を示す図である。この無線応答装置は、SrTiO基板31と、SrTiO基板31上に酸化物導電体としてSrRuO薄膜32とその上部に遅延ラインとして機能する誘電体薄膜であるPZT薄膜33を形成し、その上部に入力変換器および出力変換器として機能するAlからなる櫛型電極36A,36B、受信部および送信部として機能するアンテナ34A,34B、インピーダンスマッチング部35A,35Bを形成し、PZT薄膜33上の櫛型電極36A,36B間に電位測定用電極37を形成したものである
次に、この実施例3の製造方法を説明する。まず、洗浄、エッチング、乾燥を予め行ったSrTiO基板31上に、RFスパッタリング法により、RFパワー50W、O/Arガス流量比が0.1、O/Ar圧力比が0.15、圧力1.0Pa、基板温度600℃の条件で、化学量論的組成比よりSrが2%過剰なSrRuOターゲットから高配向SrRuO薄膜32を100nmスパッタリング形成した。更にそのSrRuO薄膜32上にRFスパッタリング法により、RFパワー50W、O/Arガス流量比が0.05、O/Ar圧力比が0.005、圧力0.5Pa、基板温度700℃の条件で、化学量論的組成比がPZT密度90%以上のターゲットから高配向PZT薄膜33を3μmスパッタリング形成した。
誘電体薄膜32,33を積層したSrTiO基板31表面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベークの後、電極幅及び電極間隔がそれぞれ約3μmから12μmまで徐々に広くなる幅を持ち、長さ500μm、電極対数20(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極36A,36B、約5cm角のアンテナ34A,34B、それらを結ぶインピーダンスマッチング部35A,35B、及び電位測定用電極37の形状に露光した。特に、櫛型電極36A,36Bは、図9において下へ向かうにしたがって(電極幅及び電極間隔が広がるにしたがって)共振条件が変化し、それぞれの周波数での位相条件が同じとなるように櫛型電極36A,36B間の距離を調整した電極形状に露光した。さらにポストベークを行い、これに続いて現像を行うことにより、テーパ状レジストパターンを形成した。
このレジストパターンを用いて、DC−マグネトロンスパッタリング装置により、Arガス流量が200sccm、圧力0.5Pa、基板温度100℃の条件で、AlにCuを5重量%添加した密度90%以上のターゲットからAl−Cu薄膜をスパッタリング形成した。ここでリフトオフを行い、櫛型電極36A,36B、約2cm角のアンテナ34A,34Bとそれらを結ぶインピーダンスマッチング部35A,35B、及び電位測定用電極37のAl−Cu導電パターンを形成した。
この約8cm角の無線応答装置をSrTiOウェハから切り出し、装置の中に設置して、装置内部の電位を計測したところ、数Vの分解能を示し、電子機器からのノイズが多く観察されたにもかかわらず、パルス信号による無線呼びかけに対して、約100から400MHzの周波数にて数十cm離れた状態での良好な応答を得た。
図10は、本発明の実施例4の無線応答装置を示す図である。この無線応答装置は、Si基板41上にバッファ層としてSiO薄膜42、および遅延ラインとして機能する誘電体薄膜であるZnO薄膜43からなる積層誘電体層を形成し、その上部に入力変換器および出力変換器として機能するAlからなる電極幅及び電極間隔各1.9μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極46A、電極幅及び電極間隔各2.5μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極47A、電極幅及び電極間隔各3.8μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極48A、電極幅及び電極間隔各7.5μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極49Aの4つの入力端櫛型電極とそれぞれ対向に位置する同形態の出力端櫛型電極46B、47B、48B、49Bとをそれぞれの位相条件が同じとなるように距離を調整して配置した。また、櫛型電極に送信部および受信部を兼ねるアンテナ44A,44Bおよびインピーダンスマッチング部45A,45Bが接続されて形成したものである。
次に、この実施例4の製造方法を説明する。まず、洗浄、エッチング、乾燥を予め行ったSi基板41上に、PECVD法により、RFパワー1000W、Oを搬送ガスとしてTEOSを5l/min、圧力0.2Pa、基板温度350℃の条件で、SiO薄膜42を100nm形成した。更にそのSiO薄膜42上にRFスパッタリング法により、RFパワー50W、O/Arガス流量比が0.05、O/Ar圧力比が0.005、圧力0.5Pa、基板温度400℃の条件で、化学量論的組成比が酸化亜鉛密度90%以上のターゲットから高配向ZnO薄膜43を5μmスパッタリング形成した。
誘電体薄膜42,43を積層したSi基板41表面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベークの後、電極幅及び電極間隔各1.9μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極46A、電極幅及び電極間隔各2.5μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極47A、電極幅及び電極間隔各3.8μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極48A、電極幅及び電極間隔各7.5μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極49Aの4つの入力端櫛型電極とそれぞれ対向に位置する同形態の出力端櫛型電極46B、47B、48B、49Bとをそれぞれの位相条件が同じとなるように距離を調整して配置した電極と、約4cm角のアンテナ44A,44B、それらを結ぶインピーダンスマッチング部45A,45Bの形状に露光した。さらにポストベークを行い、これに続いて現像を行うことにより、テーパ状レジストパターンを形成した。
このレジストパターンを用いて、DC−マグネトロンスパッタリング装置により、Arガス流量が200sccm、圧力0.5Pa、基板温度100℃の条件で、Al密度90%以上のターゲットからAl薄膜をスパッタリング形成した。ここでリフトオフを行い、46A、47A、48A、49Aの4つの入力端櫛型電極とそれぞれ対向に位置する同形態の出力端櫛型電極46B、47B、48B、49Bをそれぞれの位相条件が同じとなるように距離を調整して配置した電極および約4cm角のアンテナ44A,44Bとそれらを結ぶインピーダンスマッチング部45A,45Bの形状のAl導電パターンを形成した。次に、櫛型電極46A、47A、48A、49Aと46B、47B、48B、49Bの間に酢酸セルロースからなる薄膜400を形成した。
この約6cm角の無線応答装置をSiウェハから切り出し、プリンター等の電子機器の内部に設置し、その湿度を計測したところ、湿度変化に対応した応答を示し、パルス信号による無線呼びかけに対して、電子機器からのノイズが多く観察されたにもかかわらず、約100MHzから400MHzの周波数の領域にて、数十cm離れた状態での良好な応答を得た。
図11は、本発明の実施例5の無線応答装置を示す図である。この無線応答装置は、LiNbO基板51上に遅延ラインとして機能する誘電体薄膜であるダイヤモンド薄膜52を形成したウェハで、その上部に入力変換器および出力変換器として機能するAlからなる複数の櫛型電極対56A,57A,58A,59A、56B,57B,58B,59B、受信部および送信部として機能するアンテナ54A,54B、インピーダンスマッチング部55A,55Bを形成したものである
次に、この実施例5の製造方法を説明する。まず、ダイヤモンド薄膜52を積層したLiNbOウェハ51表面に、フォトレジストをスピンコートし、プリベークの後、電極幅及び電極間隔各0.50μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極56A、電極幅及び電極間隔各1.00μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極57A、電極幅及び電極間隔各1.50μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極58A、電極幅及び電極間隔各2.00μm、長さ100μm、電極対数5(電極対数2のみ図示した)の櫛型電極59Aの4つの入力端櫛型電極をそれぞれ対向に位置する同形態の出力端櫛型電極56B,57B,58B,59Bにそれぞれの位相条件が同じとなるように距離を調整して配置した電極形状に露光した。アンテナ54A,54B、それらを結ぶインピーダンスマッチング部55A,55Bの配線形状に露光した。さらにポストベークを行い、これに続いて現像を行うことにより、テーパ状レジストパターンを形成した。
このレジストパターンを用いて、DC−マグネトロンスパッタリング装置により、Arガス流量が200sccm、圧力0.5Pa、基板温度100℃の条件で、AlにCuを5重量%添加した密度90%以上のターゲットからAl−Cu薄膜をスパッタリング形成した。ここでリフトオフを行い、56A,57A,58A,59Aの4つの入力端櫛型電極をそれぞれ同形態の出力端櫛型電極56B,57B,58B,59Bにそれぞれの位相条件が同じとなるように距離を調整して配置した電極形状に露光した。アンテナ54A,54B、それらを結ぶインピーダンスマッチング部55A,55BのAl−Cu導電パターンをダイヤモンド薄膜を積層したLiNbOウェハ上に形成した。
このダイヤモンド薄膜を積層したLiNbOウェハから無線応答装置を切り出し可動部品内に設置して、約2〜8GHzの広帯域な周波数を持つ短パルスを質問無線信号として、数十m離れた位置から可動装置内部の温度を計測したところ、0〜100℃の領域にて、温度変化に対応した応答を示し、電子機器からのノイズが多く観察されたにもかかわらずモニタリングに成功した。
<比較例2>
実施例5と同様な無線応答装置を作製し、可動部品内に設置して、4GHzの周波数を持つCW信号を質問無線信号として、数十m離れた位置から可動装置内部の温度を計測したところ、信号が微弱でかつ電子機器からのノイズが多く温度の遠隔モニタリングをすることができなかった。
本発明の実施の形態に係る無線応答装置を表すブロック図である。 本発明の実施の形態に係る無線応答装置の平面図である。 本発明の他の実施の形態に係る無線応答装置の平面図である。 (a)は圧力センサーとして機能する無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるX−X線断面図である。 (a)は加速度センサーとして機能する無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるY−Y線断面図である。 (a)は本発明の実施例1に係る無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。 (a)は実施例1に対応する比較例1の無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。 (a)は本発明の実施例2に係る無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるC−C線断面図である。 (a)は本発明の実施例3に係る無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるD−D線断面図である。 (a)は本発明の実施例4に係る無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるE−E線断面図である。 (a)は本発明の実施例5に係る無線応答装置の平面図、(b)は(a)におけるF−F線断面図である。
符号の説明
101 ガラス基板
102A,102B アンテナ
103A,103B インピーダンスマッチング部
104 チップ、104a 誘電体基板
105A,106A,107A,108A 櫛型電極
105B,106B,107B,108B 櫛型電極
109A,109B ボンディングワイヤ
201 基板、202 誘電体薄膜
203A,203B アンテナ
204A,204B インピーダンスマッチング部
205A,206A,207A,208A 櫛型電極
205B,206B,207B,208B 櫛型電極
300A,300B グランド電極
301 Si基板、301a ダイヤフラム部
302 SiO薄膜、303 LiNbO薄膜
304A,304B アンテナ
305A,305B インピーダンスマッチング部
306A,307A,308A,309A 櫛型電極
306B,307B,308B,309B 櫛型電極
400 グランド電極、400a ダイヤフラム部
401 Si基板、402 MgO薄膜
403 LiTaO薄膜
404A,404B アンテナ
405A,405B インピーダンスマッチング部
406A,407A,408A,409A 櫛型電極
406B,407B,408B,409B 櫛型電極
1 ガラス基板
2A,2B ダイポールアンテナ
3A,3B インピーダンスマッチング部
4 チップ、4a LiNbO結晶基板
5A,6A,7A,8A 櫛型電極
5B,6B,7B,8B 櫛型電極
9A,9B ボンディングワイヤ
11 ガラス基板
12A,12B ダイポールアンテナ
13A,13B インピーダンスマッチング部
14 チップ、14a LiNbO結晶基板
15A,15B 櫛型電極
19A,19B ボンディングワイヤ
21 Si基板、22 MgO薄膜、23 LiNbO薄膜
24A,24B アンテナ
25A,25B インピーダンスマッチング部
26A,27A,28A,29A 櫛型電極
26B,27B,28B,29B 櫛型電極
31 SrTiO基板、32 SrRuO薄膜、33 PZT薄膜
34A,34B アンテナ
35A,35B インピーダンスマッチング部
36A,36B 櫛型電極
37 電位測定用電極
41 Si基板、42 SiO薄膜、43 ZnO薄膜
44A,44B アンテナ
45A,45B インピーダンスマッチング部
46A,47A,48A,49A 櫛型電極
46B,47B,48B,49B 櫛型電極
400 酢酸セルロース薄膜
51 LiNbO基板、52 ダイヤモンド薄膜
54A,54B アンテナ
55A,55B インピーダンスマッチング部
56A,57A,58A,59A 櫛型電極
56B,57B,58B,59B 櫛型電極

Claims (8)

  1. 基板上に、広帯域な周波数を持つパルス入力信号を受信する受信部と、前記パルス入力信号を弾性表面波に変換する入力変換器と、前記弾性表面波を伝搬する遅延ラインと、伝搬された前記弾性表面波を広帯域な周波数を持つパルス出力信号へ変換する出力変換器と、前記パルス出力信号を送信する送信部とを備えた無線応答装置であって、
    前記入力変換器及び前記出力変換器は、複数の共振条件を有し、所望の周波数範囲において共振条件が連続的に変化する少なくとも1つの櫛形電極からなり、前記周波数範囲における複数の周波数での位相整合条件を満たすように前記入力変換器側と前記出力変換器側の前記櫛形電極を前記基板上に配置して構成され、
    前記櫛形電極は、当該櫛形電極の電極幅及び電極間隔が徐々に広くなるように形成されていることを特徴とする無線応答装置。
  2. 前記遅延ラインは、外部の影響を受けて信号を変化させるセンサーとしての機能を持つ誘電体材料を前記基板に用いることにより、又は、前記基板上に前記誘電体材料を薄膜状に形成することにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の無線応答装置。
  3. 部の影響を受けて信号を変化させるセンサーとしての機能を持つ炭素系化合物又は半導体が前記遅延ライン上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線応答装置。
  4. 射電極又は吸収体が前記遅延ライン上に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線応答装置。
  5. 前記基板は、ダイヤフラム部を備えており、前記ダイヤフラム部の上に前記櫛電極が位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線応答装置。
  6. 前記基板は、その一端部分のみが固定部により固定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線応答装置。
  7. 前記受信部は前記送信部の機能を兼ね備え、前記入力変換器は前記出力変換器の機能を兼ね備え、かつ、前記送信部及び前記出力変換器に換えて反射電極を備えることを特徴とする請求項1記載の無線応答装置。
  8. 基板上に、広帯域な周波数を持つパルス入力信号を受信する受信部と、前記パルス入力信号を弾性表面波へ変換する入力変換器と、前記弾性表面波を伝搬する遅延ラインと、伝搬された前記弾性表面波を広帯域な周波数を持つパルス出力信号へ変換する出力変換器と、前記パルス出力信号を送信する送信部とを備えた無線応答装置と、
    前記パルス入力信号を送信し、かつ、前記パルス出力信号を受信し、前記パルス入力信号と前記パルス出力信号とを比較して、その位相の変化により信号を識別する信号送受信装置とからなり、
    前記入力変換器及び前記出力変換器は、複数の共振条件を有し、所望の周波数範囲において共振条件が連続的に変化する少なくとも1つの櫛形電極からなり、前記周波数範囲における複数の周波数での位相整合条件を満たすように前記入力変換器側と前記出力変換器側の前記櫛形電極を前記基板上に配置して構成され、
    前記櫛形電極は、当該櫛形電極の電極幅及び電極間隔が徐々に広くなるように形成されていることを特徴とする無線応答通信方式。
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