現在、多数のデバイスが、IPネットワークを使用して、相互に通信を行っている。モバイル機器にモビリティサポートを提供するために、IETF(Internet Engineering Task Force)では、IPv6におけるモビリティサポート(MIPv6:Mobile IPv6)の開発が進められている。モバイルIPでは、各モバイルノードは、永続的なホームドメインを持っている。モバイルノードが、自身のホームネットワークに接続している場合、モバイルノードには、ホームアドレス(HoA:Home Address)として知られるプライマリグローバルアドレスが割り当てられる。一方、モバイルノードがホームネットワークから離れている場合、すなわち、他のフォーリンネットワークに接続している場合には、通常、モバイルノードには、気付アドレス(CoA:Care-of Address)として知られる一時的なグローバルアドレスが割り当てられる。モビリティサポートの考えは、モバイルノードが他のフォーリンネットワークに接続している場合でも、自身のホームアドレスで、そのモバイルノードまで到達可能となるようにするものである。
このような考えは、下記の非特許文献1において、ホームエージェント(HA:Home Agent)として知られるエンティティを、ホームネットワークに導入することによって実践されている。モバイルノードは、バインディングアップデート(BU:Binding Update)として知られるメッセージを使用して、ホームエージェントへの気付アドレスの登録を行う。これにより、ホームエージェントは、モバイルノードのホームアドレスと気付アドレスとの間のバインディングを生成することが可能となる。ホームエージェントは、モバイルノードのホームアドレスに向けられたメッセージを受信(intercept)し、パケットのカプセル化(あるパケットを新たなパケットのペイロードとすることであり、パケットトンネリングとしても知られている)を用いて、そのパケットをモバイルノードの気付アドレスに転送する機能を担っている。
一方、無線デバイスの台数の増加はさらに加速しており、モビリティ技術において、新たな技術分野(class)が現れるであろうことが予想される。その1つが、ノードを含むネットワーク全体が、そのまま接続ポイントを変えるネットワークモビリティ(すなわち、NEMO)である。これは、個々のホスト用のモビリティサポートの概念を、ノードを含むネットワーク用のモビリティサポートに拡張した場合に、移動を行うネットワークに係る解決策として、モバイルネットワークがインターネットに対してどの接続ポイントで接続している場合でも、プライマリグローバルアドレスでモバイルネットワーク内のノードに到達可能とすることができる機構の提供を目的としている。
IETFでは、現在、下記の非特許文献2に記載されているように、ネットワークモビリティに対する解決策が提案されている。ここでは、モバイルルータがホームエージェントに対してBUを送信する際に、モバイルルータによって、モバイルネットワーク内のノードが使用しているネットワークプリフィックスが指定される。このネットワークプリフィックスは、BUに挿入されるネットワークプリフィックスオプションとして知られる特別なオプションを使用して指定される。これにより、ホームエージェントは、プリフィックスに基づくルーティングテーブルを構築し、その結果、ホームエージェントは、こうしたプリフィックスを有する送信先に送信されるパケットを、モバイルルータの気付アドレスに転送することが可能となる。
また、トンネリング技術を使用することによって、ホームエージェントを利用したホスト及びネットワークモビリティサポートが提供される。しかしながら、これによって、準最適化(サブオプティマル)として知られる問題が生じることとなる。この問題は、モバイルノードが通信相手ノードであるコレスポンデントノード(CN:Correspondent Node)と通信を行う際、それらの間において送信されるパケットが、モバイルノードからコレスポンデントノードへのダイレクトな経路を経由するのではなく、ホームエージェントを経由しなければならないことにより生じる。モバイルノードがそのホームエージェントから遠く離れている場合には、このような準最適化によって、通信は非効率となり、パケットの遅延が増大する。
上述の状況に基づいて、非特許文献1には、モバイルノードがBUをコレスポンデントノードに送信することができる旨が記載されている。コレスポンデントノードが、モバイルノードのホームアドレスと気付アドレスとのバインディングを把握した場合、それらの間で伝送されるパケットは、モバイルノードの気付アドレスに直接送受信される(ホームエージェントを経由せずに)。しかし、これには、コレスポンデントノードによって、モバイルIPが理解されてサポートされる必要がある。さらに、モバイルノードが、多数のコレスポンデントノードと通信を行う必要がある場合には、その実行が必要となるバインディングアップデートの回数は、飛躍的に増大する。なお、コレスポンデントノードに対してBUを送信するためには、モバイルノードは、BUメッセージの送信に先立って、モバイルノードとコレスポンデントノードとの間で2つの特別なパケット交換を伴うリターンルータビリティ(RR:Return Routability)処理を実行する必要がある。送信される特別なパケットは、モバイルノードからコレスポンデントノードに送信されるホームテストイニット(HoTI)メッセージ、及び、気付テストイニット(CoTI)メッセージと、HoTIメッセージ及びCoTIメッセージのそれぞれの応答としてコレスポンデントノードから送信されるホームテスト(HoT)メッセージ、及び、気付テスト(CoT)メッセージである。
上述の問題を解決するため、例えば、下記の特許文献1及び特許文献2には、モバイルIPv4で定義されているフォーリンエージェントとして知られるエンティティが記載されている。これらの解決策では、コレスポンデントノード自体がモバイルであることが前提とされ、その結果、コレスポンデントノードがフォーリンエージェントの配下に接続する。そして、経路最適化を達成するために、モバイルノードのフォーリンエージェントと、コレスポンデントノードのフォーリンエージェントとの間でトンネルが確立される。しかしながら、これらの解決策はモバイルIPv4に特有である。モバイルIPv6では、フォーリンエージェントの概念は存在せず、モバイルIPv6やネットワークモビリティへのこれらの解決策の適用方法は不明瞭であるが、おそらく、フォーリンエージェントのように機能するエンティティを設ける必要が生じることになる。また、下記の特許文献3や非特許文献3に開示されている解決策も、上述の解決策と類似している。
下記の特許文献3には、モバイルノードがコレスポンデントノードに対して送信したHoTIメッセージ及びCoTIメッセージを受信(intercept)するルーティング最適化プロキシが開示されている。ルーティング最適化プロキシは、コレスポンデントノードに代わって、リターンルータビリティ処理を遂行する。
また、非特許文献3には、コレスポンデントルータ(CR:Correspondent Router)が記載されている。モバイルノードがコレスポンデントノードとの間で経路最適化を実行しようとした場合に、モバイルノードは、最初に、対象となるコレスポンデントノードを取り扱っている(代理している)適切なコレスポンデントルータの発見を試みる。コレスポンデントルータが決定された場合には、モバイルノードは、バインディングアップデートをコレスポンデントルータに送信する。これ以降は、モバイルノードからコレスポンデントノードに送信されるパケットは、コレスポンデントルータにトンネルされ、コレスポンデントルータは、パケットのデカプセル化(decapsulate)を行って、そのパケットをコレスポンデントノードに転送する。また同様に、コレスポンデントノードからモバイルノードに送信されるパケットも、コレスポンデントルータによって受信(intercept)され、コレスポンデントルータは、そのパケットをモバイルノードにトンネルする。なお、非特許文献3で言及されている解決方法は、コレスポンデントルータがトップレベルモバイルルータ(TLMR:Top Level Mobile Router)の位置でリフレクティブBU(reflective BU)を実行することによって、ネスト(nest:入れ子)状態のMRに係る問題の解決も試みている。
また、下記の非特許文献4では、MRからCRへの経路最適化(RO)の問題、ネスト状態のMRからCRへのROの問題、MRが訪問ドメインに存在する場合のMR間のROの問題に関して言及されている。ここでは、経路制御ヘッダ(PCH:Path Control Header)がパケットのホップバイホップオプションに挿入されることによって問題の解決が図られている。
非特許文献4に記載の解決方法によれば、トンネルの終点(HA)が、デカプセル化を行った後、ホップバイホップオプションとしてトンネルの始点のアドレスをパケットに挿入する。CRは、トンネルの始点のアドレスを含むPCHホップバイホップオプションを受信すると、例えばネスト状態のMRの場合には、PCHの最も内側のMRのCoAに対してバインディング要求を始動する。
この方法は、MRによる明示的なCRの探索が行われず、MRとCRとの間で標準のRRは実行されないので、非特許文献3に記載の方法とは異なっている。また、この方法では、インフラストラクチャに固定されたCR及びモバイルのCR(MR)が、CRとして動作してPCHオプションの解釈を行うように構成されている。
また、下記の非特許文献5では、MRは、MRの配下に接続されているローカル固定ノード(LFN:Local Fix Node)のプロキシとして動作し、CNとLFNとの間にROを実現するために、MRとCNとの間でMIPv6に基づくシグナリングが行われる。ここで、CNが、MIPv6に基づくROプロトコルを理解すると仮定すると、MRは、あて先アドレスとしてCNのアドレスを使用し、送信元アドレスとしてMRのCoAを使用して、HoTIメッセージ及びCoTIメッセージをCNに送信する。この解決策は、訪問ドメインに存在するLFNとホームドメインに位置するCNとの間に完全な最適化を行うことを目的としている。
また、特許文献4には、少なくとも最初の上流MRを経由して、MNNとCNとの間の通信を最適化する方法が説明されている。この特許文献4には、MRが標準のRR及びMR−CN間のBU(PSBUを用いる)の使用を選択した場合に、CNがPSBUの検証を行うことが困難であることが記載されている。したがって、この方法では、MNNが認知することなく透過的な方法で、MRからのバインディングが、MNNごとにCNに行われる。そのため、MR自身及び接続されているMNNのために、MRが拡張されたRRを行い、2つの異なる鍵を統合して、MRからCNにBUが実行される。MRは、標準RRのホームキー生成トークン、気付アドレスキー生成トークン、MNNキー生成トークンを含む3つのキー生成トークンによって新たなキーを生成し、このキーをCNに対するBUによるMNNのアドレス登録のために使用する。なお、標準RRのキー生成トークンは、上述のようなBUメッセージの登録用の新たなキーに加えて、標準のキーを生成するために使用される。さらに、この方法は、ネスト状態のMRをサポートするために拡張される。その結果、ネスト状態のすべてのMRがCNへのBUを行って、CNはMNNへのツリー経路を推測することが可能となる。また、この方法では、フローごとにMNNからCNへのROを実現する方法も示されている。
また、特許文献5には、MRとCRとの間の経路最適化が説明されている。なお、特許文献5に開示されている技術は、非特許文献3に記載の技術と同様であるが、CRの探索を行う場合に、より信頼性の高い正式なネームサーバが使用される。このサーバは、MRから要求された特定のCNのアドレス用のCRを決定する際の支援を行う。その後、MRは、決定されたCRに対してRR及びBUを行う。CRは、トンネルを設定する前に、サーバを利用して、MRが実際にこのプレフィックスを所有しているか、あるいはプレフィックスの集合を所有していることをチェックする。また、特許文献5に開示されている技術は、システムの動作のために公開鍵暗号化方式(PKI:public Key Infrastructure)が必要とされる。基本的に、信頼のあるキーはCRとネームサーバとの間や、MRとネームサーバとの間で確立される必要がある。また、CRはシステムのインフラストラクチャにおいては、固定ノードとみなされる。
一方、無線通信の重要性が増しており、今後、数多くのエンドノードがモバイルになることが予想される。例えばMHは各自が移動を行い、LFNはモバイルネットワークに常に接続された状態で移動を行う。このとき、エンドノードは、インターネットのドメイン/サイト/リンクに位置している場合に最適な経路を経由して到達可能となることが要求される。
ホームリンクに存在しながら相互に通信を行う2つのモバイルノードや、ホームリンク/ホームサイト/ホームドメインに位置しながら相互に通信を行う2つの固定ノードに関しては、標準IPv6ルーティングによって、最適化された経路を経由するパケット配送が行われるようになるので、特別な問題は生じない。しかしながら、一方又は両方のエンドノードが訪問リンク/訪問サイト/訪問ドメインに位置している場合には、経路最適化方法によって到達可能な状態にすることが必要となり、その処理が行われる必要がある。
また、両方のエンドノードが、ネストが1段階のVMN(Visiting Mobile Node:訪問モバイルノード)又はモバイルホスト(MH)の場合には、MIPv6に基づく双方向のRR及びBU/BAによって双方向のROが実現される。なお、2つのエンドノードの両方が1段階のネスト状態にある場合は双方向のROは部分的に行われる。なお、1段階のネスト状態のVMNは、例えば、MRがインターネットに直接接続されている訪問リンク(visited link)上に存在する場合において、このMRの配下に接続されているVMNである。
図1には、例えばNEMOベーシックサポートのような従来の標準プロトコルによってサポートされている経路を経由して、データが発送される場合のフォールバックがついて図示されている。ここでは、訪問ドメイン(visited domain)に存在するLFN150及びLFN151の2つのピアノードが、相互に通信を行おうとしており、他方のピアノードの位置を知らないか、あるいは、お互いがインターネットトポロジ(グローバル通信ネットワーク100)に対して移動していることを知らないとする。
ここで、LFN150は、リンク103を通じてMR140に接続されており、MR140は、アクセスネットワーク101を通じてAR(Access Router:アクセスネットワーク)130に接続されている。同様に、LFN151は、リンク104を通じてMR141に接続されており、MR141は、アクセスネットワーク102を通じてAR131に接続されている。また、AR130及びAR131は、グローバル通信ネットワーク100(例えばインターネット)に接続されている。また、HA120はMR140のホームエージェントであり、HA121はMR141のホームエージェントである。
LFN150がLFN151とデータ通信セッションを開始する場合、LFN150は、データグラムのあて先アドレスをLFN151のHoAに設定する。LFN150は単純リンク161を通じてMR140に接続されているので、パケットは、MR140経由で発送される。
MR140はNEMOベーシックプロトコルを実装しているので、パケットはカプセル化されて、経路(双方向トンネル)160を通じてトンネルされる。そして、HA120においてパケットはデカプセル化され、あて先がLFN151なので、経路(拡張リンク)163を経由してMR141のホームドメインに発送される。ここで、HA121はパケットを受信(intercept)し、経路(双方向トンネル)162を通じてMR141のCoAにトンネルする。MR141は、パケットを受信してデカプセル化し、LFN151に送信する。また、LFN151がLFN150に応答を送信する場合も、同様の処理が行われる。
この図1に示すシナリオでは、データ経路が長く歪曲しており、さらに、データパケットの経路上の2箇所のインスタンスでトンネリングが行われて、パケットの平均サイズが増加する。したがって、最適化が行われることが望ましいことは明らかである。
また、図2には、本発明が有用である別のシナリオが図示されている。なお、図2には、このようなシナリオにおける従来のプロトコルの欠点が示されている。なお、ここでも、説明のために標準化プロトコルのみに焦点を当てる。
ここでは、MH170がMIPv6 ROプロトコルを実装しており、さらに、LFN151が、BCE(Binding Cache Entry:バインディングキャッシュエントリ)を生成してHoT及びCoTメッセージを送信することによってRRをサポートできると仮定する。また、MR141にはNEMOベーシックサポートプロトコルが実装されていると仮定する。また、このシナリオでは、MH170及びMR141は訪問リンクに接続されている。また、このシナリオでは、AR130に直接接続されているピアノード(MH170)が、MR141に接続されているLFN151と通信を行おうとしている。また、このシナリオでは、HA120はMH170のホームエージェントであり、HA121はMR141のホームエージェントであると仮定する。
MH170がMIPv6 ROモジュールを実装していると仮定しているので、MH170は、まずLFN151に対してRR処理を始動する。LFN151はこのRR処理を部分的にサポートしており、MH170のCoA及びHoAはLFN151に登録される。ここでMH170がデータ通信を開始した場合、MH170は、自身のCoAを使用し、HA120へのトンネルの使用を避ける。しかしながら、MH170は、ピアノード(LFN151)の位置を把握していないので、パケットはLFN151のホームドメインに発送され、HA121がパケットを受信(intercept)してMR141のCoAにトンネルする。そして、MR141はデカプセル化を行って、パケットをLFN151に転送する。
また、LFN151は、応答データパケットを送信しようとする場合には、自身のBCEをチェックしてMH170のCoAを特定する。そして、LFN151は、ルーティングヘッダタイプ2(RH2)を使用して、ソースルーティングを行う。ここで、MR141はあて先アドレスを参照する。BCE内にNEMOベーシックサポートユニットをサポートしているエントリ又はIPv6ルーティングテーブルが存在しないので、MR141は、自身のHA121にパケットをトンネルする。HA121はデカプセル化を行って正しいゲートウェイに発送し、最終的に、パケットは標準IPv6ルーティングメカニズムによってMH170に発送される。
ここで見られる問題は、経路が長く歪曲しており、さらに、パケットの平均サイズを増加させるトンネルが1つ存在しているという点である。
また、図3には、ネストが存在するシナリオが示されている。なお、図3では、従来の標準プロトコルに関する問題が説明される。図3において、VMN171はMR140の配下でネスト状態にあり、VMN172はMR141の配下でネスト状態にある。これら2つのVMN171、172が、相互にデータ通信を行おうとしている。ここで、両方のVMN171、172にMIPv6 ROプロトコルが実装されていると仮定する。また、両方のMR140、141には、NEMOベーシックサポートプロトコルが実装されていると仮定する。また、HA120はMR140のHAであり、HA121はMR141のHAである。また、MR140はAR130を通じてグローバル通信ネットワーク100に接続されており、MR141はAR131を通じてグローバル通信ネットワーク100に接続されている。
まず、VMN171及びVMN172は、標準の双方向のRR、BU及びBAを行い、また、正当な方法によって互いのHoA及びCoAのバインディングを把握していると仮定する。最初のシグナリングの後、相互にデータを送信する場合には、RH2が使用される。MR140及びMR141は、バインディングキャッシュ又はバインディングリスト(BL:Binding List)にVMN171、172から送信されるデータパケットのあて先アドレスを保持しておらず、それぞれパケットを各自のHA120、121にトンネルする。その結果、VMN171から送信されたデータパケットは、単純リンク165、双方向トンネル166、拡張リンク167、別の双方向トンネル168、単純リンク169を通って、最終的にVMN172に配送される。
双方向のRR、BU及びBAは、プロトコルのシグナリングコストを増大させるので、かなりの量のシグナリングが発生することになる。また、パケットは、一部が最適化された経路を通るので、経路当たりのパケットの平均サイズは、トンネリングによるカプセル化によって増加する。
さらに別のシナリオにおいて、従来の技術に係るプロトコルの問題を理解するため、図4を参照しながら、ネスト状態にあるVMN173が、訪問ドメインに存在するLFN151と通信を行おうとしているシナリオについて説明する。図4において、MR140及びMR141はNEMOベーシックプロトコルを実装しており、エンドホストがMIPv6 ROを使用すると仮定する。
片方向のRR、BU及びBAがVMN173とLFN151との間で行われた場合、VMN173は、自身のHA122にデータパケットをトンネルする必要がなくなり、代わって、自身のCoAをすぐに使用することができる。しかしながら、MR140のBCE、BL又はルーティングテーブルには、あて先アドレスであるLFN151のアドレスに関するエントリは保持されておらず、データは経路10を経由してMR140のHA120にトンネルされる。データはHA120でデカプセル化されて、MR141のホームドメインに発送され、経路11を経由してMR141に再びトンネルされる。そして、最終的に、データパケットはMR141でデカプセル化されて、LFN151に到達する。
また同様に、LFN151は、応答メッセージを送信しようとする場合には、直接VMN173のCoAに向けて発送する。MR141における経路関連テーブルのエントリでは、あて先アドレスは特定されないので、パケットはHA121を経由してトンネルされた後、最終のあて先であるVMN173に到達する。
このシナリオでは、MIPv6 ROプロトコル及びNEMOベーシックサポートプロトコルを使用した場合に、データパケットの経路が長く歪曲することが示される。
Keiichi Shimizu and Yusuke Kinoshita, “Route Optimization Method and Agent Apparatus”, US Patent Application 20020009066A1, 29 May 2001.
Jarno Rajahalme, “Route Optimizing Mobile IP Providing Location Privacy”, WO 2004/010668, 19 July 2002.
Cedric Westphal, “Routing Optimization Proxy in IP Networks”, US Patent Application 20040095913A1, 20 Nov 2002.
Alexis Oliverau, Christophe Janneteau and Alexandru Petrescu "A Method of Validated Communication", WO 2005/015853 A1, 17 Feb 2005.
Marco Molteni, Pascal Thubert and Patrick Wetterwald "Arrangement for Retrieving Routing Information for Establishing a Bidirectional Tunnel between a Mobile Router and a Correspondent Router", WO 2004/104740 A2, 2 Dec 2004.
Johnson, D. B., Perkins, C. E., and Arkko, J., "Mobility Support in IPv6", Internet Engineering Task Force (IETF) Request For Comments (RFC) 3775, June 2004.
Devarapalli, V., et. al., "NEMO Basic Support Protocol", Internet Engineering Task Force (IETF) Request For Comments (RFC) 3963, January 2005.
Ryuji Wakikawa and Masafumi Watari, "Optimized Route Cache Protocol", IETF Internet Draft: draft-wakikawa-nemo-orc-00.txt, Work-In-Progress, July 2004.
J. Na, S. Cho, C. Kim, S. Lee, H. Kang and C. Koo, "Route Optimization Scheme based on Path Control Header", IETF Internet Draft: draft-na-nemo-path-control-header-00.txt, April 2004.
C. Bernardos, M. Bagnulo, M. Calderon and I. Soto, "Mobile IPv6 Route Optimisation for Network Mobility (MIRON)", IETF Internet Draft: draft-bernardos-nemo-miron-00.txt, Expires January 12, 2006.
C. Ng and J. Hirano, "Securing Nested Tunnels Optimization with Access Router Option", IETF Internet Draft: draft-ng-nemo-access-router-option-01.txt, Expired January 10, 2005.
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態において説明する。なお、以下に説明する本発明の実施の形態では、本発明を開示するために最良と思われるいくつかのシナリオについて説明を行う。
本発明は、基本的に、訪問リンク/サイト/ドメインに存在している2つのエンドノード間で通信が行われる場合の双方向のROに関する技術である。なお、エンドノードがVMNである場合に、ネストが発生していないか、ネストが1段階であることが望ましいが、より高次のネストが発生している場合においても、本発明に係る適切なCRの特定及び経路の最適化という特徴は実現可能である。
まず、図5を参照しながら、本発明を実現するMHの機能アーキテクチャについて説明する。図5には、スタックのレイヤ3のプロトコルを実現する新たなルーティングユニットモジュールが図示されている。この新たなルーティングユニットモジュールを、可動CR−ROモジュール(Movable CR-RO module)305と呼ぶことにする。なお、新たなROプロトコルに関しては、別の実施の形態において詳細に説明を行う。
ここで、新たなROユニットは、主に、ピアノードが訪問ドメインに存在する場合にROを提供するように設計されているとする。この機能アーキテクチャでは、上位レイヤプロトコル301は、ユーザアプリケーション、セッション及びトランスポートプロトコルを有している。
プロトコルの中間レイヤには、インターネットワーキングプロトコル306が存在する。インターネットワーキングプロトコル306は、例えば、IPv6ルータ探索プロトコルを実施するIPv6ルータ探索モジュール302、IPv6近隣探索プロトコルを実施するIPv6近隣探索モジュール303と、その他のプロトコルを実施するモジュールをいくつか有している。
上記のその他のプロトコルとしては、例えば、アドレス自動構成プロトコルや、MIPv6に基づくモビリティサポート関連プロトコルが挙げられる。図5には、IPv6に基づくモビリティサポート関連プロトコルを実施するモジュールとして、MIPv6に基づくモビリティサポートプロトコル及びROを実施するモバイルIPv6+ROモジュール304と、新たなROプロトコルである可動CR−ROプロトコルを実施する可動CR−ROモジュール305とが図示されている。なお、この図5には、インターネットワーキングレイヤのすべての機能が図示されているわけではない。また、図5に図示されている機能アーキテクチャはMHであり、アドホックネットワークが形成される必要がない場合には、スタックにドメイン内ルーティングプロトコル(intra domain routing protocol)がサポートされる必要はない。
モビリティ関連ルーティングモジュールであるモバイルIPv6+ROモジュール304及び可動CR−ROモジュール305は両方共、ルーティングの機能をサポートするために、自身に関連するBCE及びBLを有している。
ホームドメインに存在するMHは、MIPv6 ROを利用するBCEが生成されない場合には標準IPv6メカニズムを利用して通信を行う。ここで、MHがホームリンクに存在し、そのピアノードが訪問ドメインに存在すると仮定する。このとき、MHは、MIPv6 ROを利用して通信を行う。したがって、MHは、ホームに存在する場合には可動CR−ROモジュール305を除くすべてのモジュールを動作させる必要がある。
一方、MHが訪問ドメインに存在する場合には、HAへの登録が不可欠である。これは、モバイルIPv6+ROモジュール304によってサポートされる。また、MHは、新たなROユニット(可動CR−ROモジュール305)を有しており、訪問ドメインに存在する場合には常にこのRO用のプロトコルの使用を開始する。新たなROプロトコルでサポートされている望ましい応答メッセージが得られない場合には、MHは、ROを行うか又はHA経由のトンネルを行うためにMIPv6 ROを利用する。
また、図5には、下位レイヤプロトコル308が図示されている。下位レイヤプロトコル308は、データリンクレイヤ関連プロトコル及び物理レイヤプロトコルを有している。また、データパス300は、上位レイヤプロトコル301とインターネットワーキングレイヤプロトコル306との間のインタフェースを示しており、データパス307は、下位レイヤプロトコル308とインターネットワーキングプロトコル306との間のインタフェースを示している。
なお、この機能アーキテクチャは、各レイヤの機能モジュールの変更が、スタックの他のレイヤのプロトコルの実現に影響することなく独立して行われるか、あるいは、変更のあったスタックに存在する他の機能エンティティ内で行われるように構成されている。
また、図6には、この新たな可動CR−ROモジュールを実装するMRの好適な機能アーキテクチャが図示されている。MRはルータなので、MRのルーティングユニットはMHより複雑である。
MRは、ドメイン内又はIPv6ルーティングプロトコルをサポートするIPv6ルーティングプロトコルモジュール202、モバイルIPv6+ROモジュール203、NEMOベーシックサポートプロトコルを実施するNEMOベーシックモジュール204をサポートする必要がある。また、これらに加えて、MRは、特に自身の配下に接続されているモビリティ非対応LFNノードのために必要なROを実現するとともに、MRに接続されているVMNのために更なる最適化を提供するために、可動CR−ROモジュール205をサポートする必要がある。
また、通常の機能アーキテクチャと同様に、経路管理やルーティング、ルーティング関連シグナリングに係る処理を行うインターネットワーキングレイヤプロトコル206は、上位レイヤプロトコル201と下位レイヤプロトコル208との間に存在する。ここでは、主要なプロトコル機能は、互いにインタフェース200及びインタフェース207を通じて通信を行う。
上述の構成においては、MH、VMN、MRのいずれかが訪問ドメインに存在している場合にのみ、新しいROモジュールが始動するか、あるいはRO処理が開始される。また、データ通信を行っている2つのピアノードが訪問ドメインに存在している場合は、本発明は完全に実施される。
また、図7には、一方のピアノード(イニシエータノード174と呼ぶことにする)が訪問ドメインに存在しておりRO処理を開始し、他方のピアノード(LFN151)がMR141の配下の別の訪問ドメインに存在しているシナリオが図示されている。一般的には、イニシエータノード174は、LFN151とデータ通信を開始しようとしているか、自身の配下のモバイルネットワークに接続されている別のノードのためにROの手助けを行おうとしているシナリオが考えられる。ここでは、イニシエータノード174がLFN151とデータ通信を行おうとしているシナリオについて説明する。
イニシエータノード174は、LFN151とデータ通信を行おうとしており、LFN151にテストメッセージを送信する(経路280)。テストメッセージを構築する際には、あて先拡張ヘッダ(destination extension header)にMCRDstOpt(Movable CR Destination Option)を使用する。図7に図示される例では、イニシエータノード174は、送信元アドレスとして自身のCoAを使用する。また、イニシエータノード174は、最初のテストメッセージのMCRDstOptで自身のHoAを送信する。このテストメッセージはあて先ノードのホームドメインに向けて経路283経由で発送され、MR141のHAであるHA121によって受信(intercept)される。
HA121は、テストメッセージをトンネルにカプセル化し、さらに、あて先拡張ヘッダ内のMCRDstOptを調べて、MCRDstOptをトンネルヘッダにコピーする。なお、標準IPv6トンネリング仕様によれば、トンネルエントリポイント(例えば、HA121)は、パケットのカプセル化を行う前にあて先拡張ヘッダを参照するように要請されている。HA121は、MCRDstOptを特定すると、トンネルヘッダ内に生成するあて先拡張ヘッダに、MCRDstOptをコピーする。このトンネルメッセージは、経路282経由で伝送されてMR141に到達する。
MR141は、あて先拡張ヘッダのMCRDstOptを理解するための動作を行う必要がある。MR141は、LFN151の支援エージェントとして動作し、ROの支援を行うことが可能である。最初のテストメッセージは、経路284を経由してLFN151に渡されるが、通常のIPv6ノードであるLFN151は、本発明の実施に関連するオプション又はメッセージを破棄する。なお、オプションのタイプの最初のビットは、このオプションを解釈することができない受信者が、メッセージではなくオプションを無視するように設定されることが望ましい。
MR141は、このMCRDstOptを受信すると、イニシエータノード174に何らかの応答シグナリングを行うことによって、自身のホームアドレス及びLFN151のアドレスを伝える。イニシエータノード174は、応答を受信した後、最適化された方法でLFN151に到達可能となるようにMR141とROを行う必要があることを把握する。さらに、イニシエータノード174は、応答によって、ピアノード(LFN151)が訪問ドメインに存在していることを把握する。したがって、応答後に、イニシエータノード174及びMR141は、MIPv6の方法を利用して双方向のRR、BU及びBAを行う。
イニシエータノード174とMR141との間でトンネル確立処理が完了した後、イニシエータノード174は、LFN151にデータを送信しようとする場合には、データをMR141へのトンネルにカプセル化する。このとき、トンネルヘッダにRH2拡張ヘッダを使用することが望ましい。イニシエータノード174からのデータパケットは、経路285を経由してMR141にトンネルされる。MR141は、データのデカプセル化を行い、経路286経由でLFN151にデータを送信する。
LFN151はイニシエータノード174と通信を行おうとする場合には、LFN151はROを実施できない(もっとも起こり得るケースである)ので、そのあて先をイニシエータノード174のHoAに設定する。MR141は、上述の新たなルーティングモジュールに関連するBCEをチェックし、そこに存在するノード(イニシエータノード174)のHoAを特定することができる。さらに、MR141は、LFN151のアドレスも、BCE内のこのエントリに関連付けられていることを把握する。したがって、MR141は、トンネルのあて先アドレスとしてイニシエータノード174のCoAを使用して、ROのトンネル(経路285)にパケットをカプセル化する。
なお、この実施の形態では、本発明の基本的な部分及び簡単なシナリオのみが説明されている。さらに複雑なシナリオに関しては他の具体例で説明され、より詳細に本発明が説明される。
また、LFN151はMIPv6 ROをサポートしていないと仮定しているが、LFN151はMIPv6 ROをサポートしている場合であっても、このシステムに存在することが可能である。これを実現する方法について、以下に説明する。
MCRDstOptが任意のテストメッセージではなく、イニシエータノード174によって開始されたRRストリームで送信された場合には、LFN151(MIPv6 ROが実装されている)は、MCRDstOptを無視することができる。そして、LFN151はRRを実行して、最終的に、データ伝送のあて先アドレスとしてイニシエータノード174のCoAを使用する。
一方、MR141は、この新しいプロトコルに関連するあて先(イニシエータノード174)のCoAをBCE内に有しているかをチェックすることができる。その結果、MR141は、テストメッセージの送信による新しいRO処理を開始せず、代わりに経路285を通じたトンネリングを行う。したがって、基本的に、イニシエータノード174とLFN151との間の片方向のRRは無駄となり、これを避けるようにすることが好適である。これは、イニシエータノード174自身が行うことが可能である。
すなわち、MR141から可動CR−ROに関連した応答を受信し、LFN151から標準RRに関連した応答を(MIPv6 ROで)受信した場合、イニシエータノード174は、2つの応答を区別することが可能であり、LFN151との間における更なるRR及びBUを中止することが可能である。その結果、LFN151ではBCEは形成されない。あるいは、別の方法として、MR141がLFN151とVMNとを区別することが可能であれば、MR141は、LFN151に対してRRを実行しないように通知することも可能である。
なお、上記の問題は実際の実施に依存するものである。また、LFN151がMIPv6 ROを実装しているというシナリオはあまり頻繁に生じるものではなく、実際には、非常に稀なシナリオである。
次に、以下の具体例において、LFN151が単にIPv6ノードである場合について考察する。図8には、本発明が使用されている場合のデータ経路及びシグナリング経路について、より詳細に示されている。なお、イニシエータノード174のHAはHA120であり、MR141のHAはHA121である。
イニシエータノード174は、自身のHA120へのトンネルでカプセル化されたMCRDstOptを有するテストメッセージを作成する。このトンネルメッセージ180は、HA120に送信される。HA120は、このトンネルメッセージ180のデカプセル化を行い、LFN151のホームドメインに、デカプセル化されたテストメッセージ181を発送する。
HA121は、元のテストメッセージ181を受信(intercept)し、テストメッセージ181をMR141あてのトンネルパケット182にカプセル化する。さらに、HA121は、テストメッセージ181のMCRDstOptをトンネルヘッダにコピーする。トンネルパケット182はMR141でデカプセル化される。そして、MR141は、自身のメモリに、MCRDstOptの内容及びLFN151のアドレスを格納する。また、元のテストメッセージ183は、LFN151に渡される。LFN151は、単なるIPv6ノードであり、上述のような本発明に係る動作を行うことはない。すなわち、LFN151は、テストメッセージ183に対する応答を行わない。
一方、MCRDstOptを取得したMR141は、送信元アドレスとして自身のHoAを有し、メッセージパラメータとしてLFN151のアドレスのみが含まれる応答メッセージを開始する。これにより、イニシエータノード174は、このMR141のHoAが所望のあて先と同一のプレフィックスを有していることをチェックできるようにする。
そして、MR141は、自身のHA121に応答メッセージ184をトンネルする。応答メッセージ184を受信したHA121は、デカプセル化を行って、応答メッセージ185をイニシエータノード174のホームドメインに送信する。この応答メッセージ185を受信(intercept)したHA120は、応答メッセージをカプセル化し、イニシエータノード174のCoAあてにトンネルされる応答メッセージ186を送信する。応答メッセージ186を受信したイニシエータノード174は、デカプセル化を行って、応答メッセージ186から必要なパラメータ(MR141のHoA及びLFN151のアドレス)を取得する。応答メッセージ186を受信した後、イニシエータノード174及びMR141は、図8のブロック187に示されているように、双方向のRR、BU及びBAを実行する。
双方向のバインディング処理が成功した後、イニシエータノード174は、MR141のCoAに向かうトンネルにLFN151へのデータをカプセル化し、トンネルパケット188を送信する。MR141はトンネルパケット188のデカプセル化を行って、データパケット189をLFN151に送信する。また、同様に、LFN151がイニシエータノード174にデータパケット190を送信する場合、データパケット190は、MR141でカプセル化されて、図8に示すように、トンネルパケット191によってイニシエータノード174のCoAに送信される。なお、イニシエータノード174がMHの場合には、図7及び図8で説明される処理が行われる。
一方、図9には、本発明の実施の形態において、図4に図示されている従来のプロトコルを使用するシナリオと比較して、ルーティングの経路が確実に少なくなるシナリオが図示されている。この具体例では、図7に示すイニシエータノード174がVMN173であり、訪問ドメインに存在するMR140の配下でネスト状態となっている場合に係る本発明が説明される。
図9には、VMN173がMR140の配下に接続されており、MR141の配下に接続されているLFN151とデータ通信を開始しようとしているシナリオが図示されている。ここで、MR141は訪問リンクを通じてAR131の配下に接続されており、MR140は訪問リンクを通じてAR130の配下に接続されている。なお、VMN173、MR140、MR141には、可動CR−ROモジュールが実装されている。また、HA120はMR140のHAであり、HA121はMR141のHAであり、HA122はVMN173のHAである。HA120、HA121、HA122は、あて先拡張ヘッダのMCRDstOptを識別して、MCRDstOptをトンネルヘッダにコピーする処理を行う必要がある。
まず、VMN173が、テストメッセージをLFN151に送信する(経路380)。このテストメッセージは、MR140でHA120に向かうトンネルにカプセル化され、経路381を通じて送信される。HA120において、テストメッセージはデカプセル化されて、LFN151のホームドメインに経路382を通じて発送される。ここで、テストメッセージは、HA121によって受信(intercept)され、MCRDstOptがトンネルヘッダにコピーされてカプセル化され、経路383のトンネルを通じて発送される。このメッセージは、トンネル出口ポイント(MR141)に到達する。
MR141は、上述の動作と同様に、デカプセル化を行って内部パラメータを調べる。そして、MR141はVMN173にその応答を送信し、その後、VMN173とMR141との間で、RRに関連するシグナリングによって双方向トンネルが確立される。なお、テストメッセージは経路384を通じてLFN151に渡されてもよいが、LFN151はこのテストメッセージを理解せず、テストメッセージは破棄される。
ここで、VMN173は、LFN151のBCEを有していないことから、あて先(通信相手)がLFNであることを把握する。したがって、VMN173は、MR141によるトンネリングによって、LFN151へのデータパケットをトンネルする。すなわち、トンネルヘッダにおいて、あて先アドレスはMR141のCoAに設定される。VMN173からトンネルされるデータパケットは、まず経路385を通じてMR140に到達し、MR140で更にカプセル化されて、経路386経由でHA120に送信される。ここで、データパケットはデカプセル化されて、経路387を通じてMR141のCoAに送信される。MR141はそのデータパケットをデカプセル化し、データパケットは経路388を通じてLFN151に到達する。
また、MR140は、MR141のCoAのバインディングを有していないことに気が付き、通常のテストメッセージ処理(RR処理)が開始される。そして、最終的に、MR140及びMR141は、バインディングキャッシュエントリに互いのHoA及びCoAを有することになる。このRR処理により、VMN173がLFN151にトンネルされるデータパケットを送信する場合には、MR140がMR141へのトンネルを行い、その結果、パケットはより最適化された経路389を通じて伝送されるようになる。これを実現するためのより良い方法も存在する。
例えば、イングレスフィルタリングを通過できるようにするとともに、完全なトンネルを実現する際のオーバヘッドを低減するために、MR140は、MR141にトンネルすることが可能であるか、あるいは非特許文献6に開示されている技術のように、自身のCoAに送信元アドレスを変更できることが望ましい。MR140は、VMN173によって生成されたトンネルのあて先アドレス(MR141のCoA)を調べることにより、このアドレスがMR141のCoAに対応していることを把握する(なお、MR140は、MR141のHoA及びCoAを有している)。そして、MR140は、トンネルの送信元(VMN173)がLFNではないことを把握し、その結果、非特許文献6に開示されている技術のように、容易に送信元アドレスを変更することが可能となる。
また、上述のROが完全に確立された後、LFN151がデータパケットをVMN173に送信する際に、MR141は同様の方法を用いて、BCEをチェックしてあて先アドレス(VMN173のHoA)及びLFN151の送信元アドレスを探し、VMN173にパケットをトンネルする。なお、トンネルヘッダはあて先がMR140のCoAであり、VMN173のCoA及びHoAのエントリが含まれているRH2を有することが望ましい。
従来の技術に係る図4と図9とを比較した場合、本発明によって最適化された経路が提供されることは明らかである。
また、図10には、図7に示すイニシエータノード174がMRであるシナリオが図示されている。ここで、LFN150及びLFN151は両方共、訪問ドメインに存在しており、相互に通信を行おうとしている。また、HA120はMR140のHAであり、HA121はMR141のHAである。
LFN150がデータ通信を開始するとき、MR140はLFN151との経路最適化のために、可動CR−ROモジュールを始動する。上述の具体例で説明したように、テストメッセージは、経路480、483、482を通じて伝送され、MR141に到達する。なお、ここでは、MR140のCoAがテストメッセージの送信元アドレスとして使用されるものとする。
テストメッセージを受信した後、MR140及びMR141は、MR141が応答処理を完了して双方向トンネルを確立する。トンネル形成後にLFN150がデータパケットを送信した場合、MR140は、そのあて先がLFN151であることを見つけてBCEをチェックし、LFN151と同一のプレフィックスを有するMR140のアドレスを特定する。そして、MR140は、上記のトンネルにパケットをカプセル化することによって、パケットは経路485を経由して伝送されるようになる。また、LFN151がデータパケットを送信した場合も、相手側(MR141)において同様の処理が行われる。
従来の技術に係る図1と図10とを比較した場合、本発明の利点は明らかである。
また、図11には、2つのVMN173及びVMN174が訪問ドメインに位置しており、それぞれMR140及びMR141の配下でネスト状態にあり、相互にデータ通信を行うシナリオが図示されている。さらに、MR140及びMR141も訪問ドメインに存在する。なおHA120はMR140のHAであり、HA121はMR141のHAである。また、HA123はVMN173のHAであり、HA122はVMN174のHAである。
VMN173がVMN174とデータ通信を行おうとする場合、VMN173は、まず、自身のHoAを含むMCRDstOptを有し、VMN174のHoAをあて先とするテストメッセージを構成する。なお、このシナリオでは、テストメッセージを構成する際に、VMN173のCoAが送信元アドレスとして使用される。
このメッセージは経路580を通じてMR140に渡される。そして、MR140でカプセル化されて経路581を通じて伝送され、HA120でデカプセル化される。次に、このメッセージは、経路582を通じてVMN174のホームドメインに発送される。そして、HA122によって受信(intercept)され、MCRDstOptがトンネルヘッダにコピーされてトンネルされる。そして、トンネルパケットは経路583を通じてHA121に到達し、HA121において、MCRDstOptが再びトンネルヘッダにコピーされて、MR141のCoAに更にトンネルされる。
メッセージが経路584を通じてMR141に到達すると、MR141は、VMN173のHoAを取得するとともに、インナパケットのあて先が、自身のメモリ内に存在するVMN174のCoAであることに気が付く。そして、テストメッセージは、経路585を通じてVMN174に到達し、VMN174はデカプセル化を行うとともに、MCRDstOpt(VMN173のHoA)を取得する。また、MR141及びVMN174の両方共、それぞれVMN173に対してテストメッセージへの応答を送信することになる。
VMN173は、これら(MR141及びVMN174)のHoAを含む応答を受信すると、これらのエンティティのそれぞれとの間で、RR処理、BU及びBAを開始する。双方向のRR、BU及びBAの処理後、最終的にVMN173は、VMN174のHoA及びCoAを保持し、さらに新たなルーティングモジュールに関連するBCE内に、MR141のHoA及びCoAを保持する。したがって、このBCEから、VMN173は、プレフィックスのマッチングによって、VMN174のCoAに到達可能となるためにはMR141に到達する必要があることが発見可能となる。そして、VMN173は、データをVMN174に送信する際には、あて先をMR141のCoAとし、RH2の最後のスロットをVMN174のHoAとする。
このパケットが経路586を通じてMR140に到達した場合、MR140は、MR141のCoAを含むBCEを有していないので、パケットを自身のHA120にトンネルし、その結果、パケットは経路587経由で発送されることになる。HA120はパケットのデカプセル化を行い、内部のデータパケットは経路588を通じて送信され、最終的に経路589を通じてVMN174に到達する。VMN174が応答データパケットを即座に送信する場合には、VMN174は、VMN173へのツリー経路上に存在する他のMRを知らないので、VMN173のCoAをあて先とし、RH2のスロットとしてVMN173のHoAのみを含むデータパケットを構築する。
MR141は、このデータパケットを取得した場合には、あて先アドレスがBCEに含まれているVMN173のCoAであることに気が付く。したがって、MR141は、このデータパケットをVMN173あてのトンネルにカプセル化するか、あるいは、送信元アドレスを自身のCoAに変更して、メッセージを送信する。最終的に、メッセージは、MR140のHA120を経由して発送され、VMN173に到達する。その後、任意の時間経過後に、上述の具体例で説明したように、MR140は、可動CR−ROモジュールを始動して、MR141にテストメッセージを送信し、最終的にMR141との間で双方向トンネルを確立する。この後、VMN173によって生成されたデータパケットは、経路590を通じて発送される。この場合、パケットはMR140からMR141にトンネルされ、これによって、ルーティングの経路は短くなる。
上述のシナリオと同様に、このシナリオは、ネストのレベルが小さい場合における本発明の動作を示している。しかし、この具体例によれば、本発明は、ネスト状態の場合における最適化を目的としていない場合であっても、ネスト状態の場合において動作することが明らかとなる。また、図3に図示されている従来の技術の場合に比べて、本発明によれば、経路に関しては確実に最適化が行われることが示される。
また、図12には、本発明に関連するシグナリングや、このシグナリングが最適化可能であることが分かるように、2つのLFN150及びLFN151が訪問ドメインに存在し、データ通信を行う場合におけるシグナリングが明らかにされている。以下、図12を参照しながら、この具体例について説明する。ここで説明するシグナリングを実現する方法は多数存在しているが、この具体例では、最適化は行わず、こうした方法の1つについてのみ説明する。
ここでは、テストメッセージとして、MR140が可動CR−ROモジュールを始動した場合に生成するHoTIメッセージを用いることにする(したがって、テストメッセージを追加する必要がない)。なお、HoTIメッセージをテストメッセージとして使用する長所に関しては、別の具体例において説明する。
図12において、MCRDstOptを有するHoTIメッセージ1100が、HA120あてにトンネルされ、HA120においてデカプセル化される。デカプセル化されたHoTIメッセージ1102はHA121に発送される。HA121では、HoTIメッセージはカプセル化され、カプセル化されたHoTIメッセージ1103はMR141に到達する。
MR141はデカプセル化を行って、HoTIメッセージ1103から、上述の具体例で説明した必要なパラメータ(MR140のHoA及びLFN151のアドレス)と、ホームイニットクッキー(home init cookie)とを取得する。なお、ホームイニットクッキーがMR141あてではない場合でも、この処理が行われ、本発明を実施するための不要なシグナリングが低減される。そして、最終的に、HoTIメッセージ1105がLFN151に送信され、LFN151において破棄される(ただし、LFN151がいかなる種類のROも理解しないと仮定する)。
また同時に、MR140は、送信元アドレスとして自身のCoAを使用して、LFN151をあて先とするCoTIメッセージ1101を送信する。このCoTIメッセージ1101の送信は、エンドノード(通信相手)がVMN又はMHの場合もあり、この場合には、ROを遅延なく確立することができるためである。CoTIメッセージ1101はMR140で生成され、HA121に発送される。そして、HA121でトンネルにカプセル化され、カプセル化されたCoTIメッセージ1104がMR141に送信される。MR141は単にCoTIメッセージ1104をデカプセル化し、通常のメッセージとしてCoTIメッセージ1106をLFN151に送信する。なお、このCoTIメッセージにはMCRDstOptが存在していないので、MR141は、基本的にこのCoTIメッセージ1106を無視して、単に正しいあて先(LFN151)に送信する処理のみを行う。
ここで、MR141は、上述のHoTIメッセージに基づいて、応答メッセージを構成する。応答メッセージは、モビリティヘッダに埋め込むことが可能である。MR141は、IPv6ヘッダに送信元アドレスとして自身のHoAを有するメッセージを構築する。MR141は、モビリティヘッダのモビリティオプションにLFN151のアドレスを挿入して、自身のHA121に応答メッセージ1107をトンネルする。HA121では、応答メッセージ1107はデカプセル化され、デカプセル化された応答メッセージ1108がMR140のHA120に発送される。HA120では、応答メッセージ1108はカプセル化されて、カプセル化された応答メッセージ1109がMR140にトンネルされる。なお、応答メッセージ1109は、MR140のHoAあてに送信される。
この応答メッセージ1109を受信したMR140は、双方向トンネルを始動させることを決定し、MR141にCoTIメッセージ1110を送信する。なお、既に、ホームイニットクッキーは送信されており、したがって、更なる送信を行う必要はない。この具体例に係る動作は、シグナリングストームを抑えるように最適化が行われている点において進歩性を有していると言える。MR140のCoTIメッセージ1110は、MR141のHoAあてに送信される。その結果、CoTIメッセージ1110は、HA121においてカプセル化され、カプセル化されたCoTIメッセージ1111はMR141に送信される。このCoTIメッセージ1111を受信したMR141は、CoTIメッセージ1111から気付イニットクッキー(care-of init cookie)を取得する。そして、MIPv6 RR処理と同様に、MR141は、ホームキー生成トークン(home key generation token)及び気付キー生成トークン(care-of key generation token)を生成する。
なお、当業者であれば、ホームキー生成トークンが、ホームイニットクッキー、RRを開始したイニシエータノードのHoA、nonceを使用して作成され、気付キー生成トークンが、気付イニットクッキー、RRを開始したイニシエータノードの気付アドレス、nonceを使用して作成されることは明らかである。
これらのトークンの生成後、MR141は、HoTメッセージ1112をMR140のHoAに送信する。HoTメッセージには、ホームキー生成トークン、nonceインデックス、ホームイニットクッキーが含まれている。また、HoTメッセージ1112の送信元アドレスには、自身のHoAが使用される。上記のカプセル化されたHoTメッセージ1112はHA121に送信される。HA121では、HoTメッセージ1112はデカプセル化され、HoTメッセージ1113がHA120に発送される。HA120では、HoTメッセージ1113はカプセル化され、その結果、HoTメッセージ1114がMR140に到達する。MR140はHoTメッセージ1114をデカプセル化して、必要なコンテンツを取得する。
また同様に、MR141は、送信元アドレスとして自身のHoAを使用したCoTメッセージを送信する。なお、ここでは、MR141は、あて先アドレスとしてMR140のCoAを使用する。気付イニットクッキー、気付キー生成トークン、nonceインデックスを有するCoTメッセージがカプセル化されて、カプセル化されたCoTメッセージ1115がHA121にトンネルされる。HA121はCoTメッセージ1115のデカプセル化を行って、MR140のCoAにCoTメッセージ1116を発送する。CoTメッセージ1116を受信したMR140は、MR141にBUを登録するために使用するバインディングキーを計算する処理を開始する。
また、MR141は自身あてのCoTIメッセージ1111の受信とほぼ同時に、MR140あてのHoTIメッセージを始動する。このHoTIメッセージはMR140のHoAあてに送信される。また、送信元アドレスはMR141のHoAとなる。その結果、HoTIメッセージ1117がカプセル化され、HA121に送信される。HA121では、HoTIメッセージ1117はデカプセル化されて、HoTIメッセージ1118がHA120に送信される。HA120では、HoTIメッセージ1118がカプセル化されて、HoTIメッセージ1119がMR140に送信される。
また、ほぼ同時に、MR141はCoTIメッセージをMR140に送信する。このCoTIメッセージでは、送信元アドレスとしてMR141のCoAが使用され、あて先アドレスとしてMR140のHoAが使用される。このCoTIメッセージ1120は、HA120に送信され、HA120においてカプセル化されて、CoTIメッセージ1121としてMR140にトンネルされる。
また、同様に、MR140は送信元アドレスとして自身のHoAを使用し、あて先アドレスとしてMR141のHoAを使用したHoTメッセージを送信することが可能である。そして、このHoTメッセージ1122はHA120にトンネルされ、HA120においてデカプセル化され、HoTメッセージ1123がHA121に発送される。そして、HA121において、HoTメッセージ1123はカプセル化されて、カプセル化されたHoTメッセージ1124がMR141に到達する。
一方、MR140は、送信元アドレスとして自身のHoAを使用し、あて先アドレスとしてMR141のCoAを使用したCoTメッセージを再び送信する。CoTメッセージ1125はHA120にトンネルされ、その後、デカプセル化されたCoTメッセージ1126がMR141に到達する。なお、MR141も、自身に必要なバインディングキーの計算を行ってもよい。
そして、MR140は、自身のBUメッセージ1127をMR141に送信する。なお、MR140は、BUメッセージ1127の送信元アドレスとして自身のCoAを使用し、また、あて先アドレスとしてMR141のCoAを使用する。また、同様に、MR141も、BUメッセージ1128を送信する。これによって、MR140及びMR141におけるBUは完了する。なお、BUに対する応答であるBAが送信されるが、ここでは説明を省略する。
以上の動作により、LFN150から送信されたデータパケット1129は、MR140においてMR141にトンネルされ、トンネルデータパケット1130はMR141に到達する。そして、MR141において、トンネルデータパケット1130は、デカプセル化され、元のデータパケット1131がLFN151に到達する。
なお、LFN151ではなくVMNの場合には、MR141によって生成された応答に加えて、VMN自身による応答も始動される。また、VMNが送信するCoTメッセージに、応答に必要なパラメータが埋め込まれてもよい。また、図13には、図12に示すシナリオに関し、シグナリングのストリームが最適化可能であることが示されている。
なお、図12に示すシナリオと同一ではあるが、図13には、シグナリングに関して可能な最適化の具体例が図示されている。図12と比較することによって、図13に示すシナリオにおいてシグナリングストームを抑えるという利点が明らかとなる。
図13においても、MR140がHoTIメッセージ1000を送信し、HA120によるHoTIメッセージ1102の転送を経て、HoTIメッセージ1003がMR141に到達する。MR141は、HoTIメッセージをデカプセル化した際に、ホームイニットクッキー、MCRDstOpt、LFN151のアドレスを取得する。また、MR141は、CoTIメッセージから気付イニットクッキーを取得するために、LFN151のアドレスに送信されるCoTIメッセージを探索する状態となる。そして、MR141は、CoTIメッセージ1004を検出し、CoTIメッセージ1004から気付イニットクッキーを取得する。
ここで、MR140に別々の応答メッセージ(MR140への独立したHoTメッセージと、MR140への独立したHoTIメッセージ)を送信する代わりに、ここでは、これらすべてのメッセージが、1つの応答メッセージ1007に結合される。なお、応答メッセージ1007には、送信元アドレスとしてMR141のHoAが使用されるので、HoTIメッセージとしての有用性が実現される。また、この応答メッセージ1007には、あて先アドレスとしてMR140のHoAが使用されるので、HoTメッセージとしての有用性が実現される。さらに、この応答メッセージ1007にはLFN151のアドレスが格納されるので、応答メッセージとしての有用性が実現される。
応答メッセージ1007には、LFN151のアドレスに加えて、自身のホームイニットクッキー、MR140から送信されたホームイニットクッキーを使用して生成されたホームキー生成トークン、nonceインデックス、MR140から送信されたホームイニットクッキーが含まれる必要がある。なお、応答メッセージ1007がモビリティヘッダメッセージとして送信される場合には、上述のパラメータは、モビリティオプションとして挿入されてもよい。これは、実際の実施に応じて定められる。
その結果、結合された応答メッセージ1007が送信され、最終的に応答メッセージ1009がMR140に到達する。MR140では、メッセージ1009はデカプセル化されて、必要なパラメータが取得される。ここで、この受信した応答メッセージ1009から、MR140は、BUメッセージを送信するためのホームキー生成トークンや、MR141に送信するHoTメッセージを準備するためのいくつかのパラメータを把握する。さらに、応答メッセージの送信元アドレスとのトンネルを通じてLFN151に到達可能であることから、MR140は、可動CR−ROモジュールが利用可能であることを把握する。なお、ここでは、単に組み合わされたメッセージによって最適化が行われるスキームに関して説明する。すなわち、応答メッセージ1009を送信した後に、さらに、MR141は別の組み合わされたメッセージを送信する。
このメッセージは、MR141がMR140に送信しようとするCoTメッセージとCoTIメッセージとを組み合わせたメッセージである。MR141は、組み合わされたメッセージのあて先を、CoTIメッセージ1001から把握されるMR140のCoAに設定する。また、MR141は、組み合わされたメッセージによって、MR140に対して自身のCoAを明示する。したがって、組み合わされたメッセージでは、基本的に、CoTIメッセージ及びCoTメッセージの機能の有効性が組み合わされる。また、この組み合わされたメッセージによって、MR141が生成した気付イニットクッキー、MR141が生成した気付キー生成トークン、このトークンを生成するために使用される気付イニットクッキー、nonceインデックスが運ばれる必要がある。なお、上記の組み合わされたメッセージは、図13のメッセージ1010である。このメッセージ1010は、上述と同様にモビリティヘッダを使用して構築されてもよい。なお、当業者であれば、それぞれ異なるメッセージに関して、モビリティヘッダのタイプが異なることは容易に分かることは明らかである。
この組み合わされたメッセージ1010を受信した後、MR140は、HoTメッセージ1011をMR141に送信する。なお、MR140は、HoTメッセージのあて先をMR141のHoAに設定する必要がある。一方、最適化を行うため、MR140は、送信元アドレスとして自身のCoAを使用することも可能である。このHoTメッセージ1011は、HA121によって転送され、HoTメッセージ1012としてMR141に到達する。また、同様に、MR140はCoTメッセージ1013を送信する。CoTメッセージに関しては、あて先がMR141のCoAに設定されることが重要である。
MR140からのHoTメッセージは、MIPv6 RRと同様に通常のパラメータを有している。また、MR140からのCoTメッセージも同様である。そして、最終的に、RRに関連するすべての最適化シグナリングが完了し、MR140はBUメッセージ1014を送信する。なお、MR141も同様にBUメッセージ1015を送信する。なお、図13では、BUストリームのみが図示されているが、実際には、各BUに伴ってBAが送信される。
また、図14には、本発明が完全には成功しないシナリオが図示されている。上述のように、本発明は、主にピアノードが訪問ドメインに存在する場合(理想的なシナリオ)に最適化される。しかしながら、以下には、理想的なシナリオとは異なり、本発明で提供されるROが行われない場合(本発明が完全には成功しないシナリオ)が示される。ここでも同様に、ピアノードは、LFN150及びLFN151である。また、MR140のHAはHA120であり、MR141のHAはHA121である。また、MR140が訪問ドメインに存在し、LFN151がホームドメインに存在すると仮定する。
LFN150がLFN151とデータ通信を開始した場合、MR140は訪問リンクに存在するので、上述の具体例で説明したように、テストメッセージ処理が開始される。このテストメッセージは、トンネルによって経路1200を通じて発送される。HA120は、このテストメッセージのデカプセル化を行って、LFN151のホームドメインに、経路1201を通じてテストメッセージを発送する。HA121は、バインディングを有していないのでプロキシとして機能できず、テストメッセージを受信(intercept)しない。その結果、HA121は、MR141へのトンネルを行わない。したがって、MCRDstOptを有するメッセージは、MR141ではなくLFN151に到達する。
しかしながら、MR141はモバイルであり、ほとんどの場合はホームドメインから離れている。したがって、MR141がホームドメインに存在する状態は頻繁に起こるものではなく、本発明では、MR141がホームドメインに存在しないシナリオに焦点を当てることにする。なお、MR141がホームに存在する場合には、図1と比較した場合、経路の半分は部分的に最適化が行われている。したがって、最適化が行われない場合でも大きな問題はない。
上述の動作において、MCRDstOptを送信する方法が多数存在することを述べたが、それぞれの方法には、長所及び問題が存在する。
任意のテストメッセージが使用される場合には、どの場合においても、帯域幅を浪費する付加的なRRシグナリングが行われる必要があり、最適化経路の確立に遅延がもたらされる可能性がある。したがって、本発明に係る好適な方法は、テストメッセージとしてCoTIメッセージを使用するものである。図15において、テストメッセージとしてCoTIメッセージを使用できることを示す。
図15には、テストメッセージとして使用されるCoTIメッセージ500のメッセージ構造の一例が図示されている。これはCoTIメッセージであり、IPv6ヘッダ501の送信元アドレスは、メッセージを送信するイニシエータノードのCoAである。また、あて先は、イニシエータノードがトンネルの確立を望んでいる受信者となる。
さらに、あて先拡張ヘッダに挿入されるMCRDstOpt(可動CRあて先オプション)502が図示されている。CoTIメッセージでは、テストメッセージのイニシエータノードのHoAは明らかにされないので、イニシエータノードのHoAは、MCRDstOptに挿入される。また、通常と同様に、CoTIメッセージは気付イニットクッキー504を伝送する必要がある。これは、モビリティヘッダ503のデータセクションに付加される。
テストメッセージとしてCoTIメッセージを使用する利点は、CoTIメッセージの送信元アドレスにCoAが使用されるので、CoTIメッセージはトンネルされずに、より迅速にあて先に到達することにある。
また、本発明の別の好適な方法として、テストメッセージとしてHoTIメッセージを使用することも可能である。図16には、テストメッセージ403として機能するHoTIメッセージが図示されている。このHoTIメッセージでは、テストメッセージのイニシエータノードのHoAは、IPv6ヘッダ404の送信元アドレスとなる必要がある。したがって、このテストメッセージは、トンネルにカプセル化される必要があり、トンネルパケットはパケット400のようになる。
トンネルIPv6ヘッダ401を有するトンネルパケット400には、送信元アドレスとしてイニシエータノードのCoAが設定される。また、このトンネルパケット400は、イニシエータノードのHAへのトンネルなので、トンネルヘッダはトンネル認証ヘッダ(トンネルAH:Authentication Header)402を有している。なお、このテストメッセージはモビリティメッセージであり、非特許文献1によれば、あて先拡張ヘッダにトンネルホームアドレスあて先オプション(tunnel home address destination option)は挿入されない。
テストメッセージとしてHoTIメッセージを使用する場合には、送信元アドレスとしてHoAが使用されるので、さらにMCRDstOptにHoAを挿入する必要はない。なお、オプションの実際の内容は空であってもよく、また、オプションに暗号鍵が挿入されてもよい。オプションのタイプによって、これがどのタイプのオプションであるかが明らかにされる必要があり、受信者は、関連する情報の取得方法をこのメッセージから把握する。一方、通常のHoTIメッセージと同様に、モビリティ拡張ヘッダ(モビリティヘッダ)406によってHoTIメッセージが構成され、このメッセージ内にホームイニットクッキー407が存在する。
このモビリティ拡張ヘッダ406を使用する利点は、HoAをMCRDstOptで送信する必要はなく、代わりに、例えばMCRDstOptを用いて暗号鍵を送信することができるという点である。さらに、イニシエータノードのHAにトンネルされるので、メッセージは、よりセキュリティが強化された状態となる。暗号鍵を使用することによる利点は、応答メッセージの送信元が応答の際にこの鍵を送信することができ、イニシエータノードは、テストメッセージが正しい場所に送信されたという確証を得ることができることにある。
しかしながら、この解決方法をネスト構造のCN環境で適切に動作させる必要がある場合には、HoTIメッセージのMCRDstOpt内にイニシエータノードのHoAを使用することが望ましい。これにより、MRが、内部のHoTIパケットまで詳細に調べる処理負荷を避けることが可能となる。
また、図17には、本発明の好適な具体例における応答メッセージの一例が図示されている。上述の具体例では、シグナリングを最適化するため、応答メッセージが、RRに関連するパラメータを含む多数のパラメータを有する方法に関して説明した。ここでは、応答メッセージの基本的な構造が明らかにされる。
応答メッセージのあて先アドレスは、テストメッセージのイニシエータノードのHoAであると考えられる。また、応答メッセージの送信元アドレスは応答メッセージのイニシエータのHoAであるか、あるいは別の方法では、MCRDstOptを取得したノードのHoAが挿入される。応答メッセージ603の送信元アドレス及びあて先アドレスは、IPv6ヘッダ604内に格納される。また、IPv6ヘッダ604は、応答メッセージの送信元アドレスフィールド605及びあて先アドレスフィールドを有している。送信元アドレスフィールド605には、例えば応答メッセージの送信元のHoAが含まれ、あて先アドレスフィールド606には、テストメッセージのイニシエータノードのHoAが含まれる。
また、応答メッセージは、いくつかの新たなタイプのモビリティ拡張ヘッダとして構成することも可能である。応答メッセージは、MRが代わりに応答を行っており、テストメッセージがあて先としているLFNのアドレス608を有している。また、テストメッセージによって暗号鍵が送信された場合には、応答メッセージの受信者がメッセージの妥当性をチェックできるように、この暗号鍵609が送信されてもよい。なお、この暗号鍵609には、テストメッセージで送信された暗号鍵を使用して、応答メッセージに暗号化関数を適用した結果が用いられることが望ましい。これにより、受信者は、応答メッセージの真正性を検証することが可能となる。
また、通常と同様に、応答メッセージのイニシエータノードのHoAが送信元アドレスとして使用されるので、この応答メッセージはトンネル内にカプセル化される。カプセル化応答パケット600を構築する際には、トンネルIPv6ヘッダ601と共にトンネルAH602がトンネルヘッダとして使用される。
また、図18には、相互に通信を行おうとしているLFN150及びLFN151が訪問ドメインに存在しており、ネストが3段階である場合のシナリオが図示されている。LFN150は、MR140、MR141、MR142の下でネスト状態にある。なお、HA120、HA121、HA122は、それぞれMR140、MR141、MR142のホームエージェントである。また、LFN151は、MR143、MR144、MR145の下でネスト状態にある。なお、HA123、HA124、HA125は、それぞれMR143、MR144、MR145のホームエージェントである。
本発明によれば、このような状況下においても最適化が提供される。この具体例では、このような状況下において本発明が実施された場合に、シグナリングの負荷を低減するための更なる最適化の実行が望ましいことが示される。まず、以下に、本発明を使用して最適化が実現される方法について説明し、続いて、より良い最適化を行うためには更なる拡張が必要であることを説明する。
LFN150がLFN151とデータ通信処理を開始する場合、MR142は可動CR−ROモジュールを始動し、MCRDstOptを有するテストメッセージがLFN151に送信される。このテストメッセージは、HA120、HA121、HA122を通過した後、HA125に発送される。HA125はトンネルエントリポイントなので、MCRDstOptが+トンネルヘッダにコピーされる。テストパケットがHA124に届いた場合も同様の処理が行われ、最終的にHA123に到達する。そして最後に、多重カプセル化されたテストパケットはMR143に到達する。
ここで、テストパケットが送信された場合には、すべての上流ルータ(MR143、144、145)は、インナパケットのあて先アドレスに加えてMCRDstOptの値に着目する。そして、これらの各MR143、144、145は、テストメッセージの発信者であるMR142に対して、それぞれ応答メッセージを送信する。MR142は、各応答の受信後に、MR143、MR144、MR145のそれぞれと双方向RR、BU及びBAを開始する。そして、3つの双方向トンネル確立処理を完了した後、MR142は、LFN150からLFN151に送信されるデータパケットに関して、MR145へのトンネルのRH2にMR143、MR144、MR145のCoAを挿入することによって、最適化されたデータ通信を開始する。
そして、MR142がMR145との間で最適化されたデータ通信を開始した後、MR141は、ROを行うためにMR143(TLMR)へのテストメッセージを始動する。この処理は先に説明したものであり、MR141が参照するあて先アドレスがMR143のCoAであることに起因して行われる。このように、MR142のすべての上流MR(MR140及びMR141)が、それぞれMR143と双方向トンネルを確立する。したがって、すべての上流MR(MR140及びMR141)は各自のHAにトンネルを行う代わりにMR143にトンネルを行うことが可能となる。
以上のことから、ネスト状態にあるCNのROに関する問題を解決するためには、シグナリングが多数行われる必要があることが分かる。なお、当業者であれば、ROを行う場合にはバインディングストームが伴うことが分かる。MR142は、最適かつセキュアな方法で大量のシグナリングを行うことなく、MR143、MR144、MR145のそれぞれのCoAを把握する必要がある。さらに、MR145は、最適かつセキュアな方法でMR142、MR141、MR140のそれぞれのCoAを把握する必要がある。したがって、本発明を拡張する場合には、上述の目的を実現されることが望ましい。
次に、図19〜26を参照しながら、本発明の別の実施の形態について説明する。この本発明の別の実施の形態では、上述の実施の形態で着目された障害のあるシナリオ(本発明が完全には成功しないシナリオ)に係る課題を解決するための解決策が説明される。
図19に詳細に示されている具体例では、訪問ドメイン内で深いネスト状態にあるLFN152が、ホームリンク上に存在するMR140に接続されている相手ノードLFN150との間で、低減されたシグナリングによって経路最適化されたパス(経路最適化パス:RO path)を実現するための方法が示されている。以下、図19を参照しながら、この具体例について説明する。
この経路最適化パスは、ピアノードであるLFNに透過的に取得される。LFN152はMR142に接続されており、さらにMR142はMR143に接続されている。なお、MR142及びMR143は、訪問リンクに接続されており、MR142及びMR143のそれぞれのHAはHA122及びHA123である。
一方、LFN150はMR140に接続されており、MR140は自身のホームリンク上に存在している。ホームリンク上に存在するMR140のホームエージェントの1つはHA120である。
図19では、MR142は、LFN152が通信を行っているあて先に対して、テストメッセージ1400を送信する。このとき、MR142は、このメッセージのヘッダにMCRDstOptを付加する。このMCRDstOptは、MR142のHoA及び識別子の2つの属性を含んでいる。なお、以降、MCRDstOptの属性の1つである識別子をID(このトンネル確立手続きを識別するID)と呼ぶ。
なお、このテストメッセージ1400は、上述の実施の形態と同様に、HoTIであってもよく、したがって、HA122へのトンネルでカプセル化が可能である。このカプセル化されたテストメッセージ1400は、さらにMR143においてHA123へのトンネルでカプセル化される。そして、2重にカプセル化されたメッセージ1401の一部がHA123でデカプセル化され、カプセル化されたメッセージ1402がHA122に送信される。そして、HA122において、テストメッセージは完全にデカプセル化され、メッセージ(MCRDstOptを有するメッセージ)1403がLFN150に到達する。
本発明によれば、MRは、ホームリンク上に存在している際には、すべてのあて先オプション(自身をあて先とはしないものも含む)の検査を行う。なお、MRは、ホームではデカプセル化処理を行う必要はなく、この監視による処理の複雑さや処理時間は、全体的にMRにとってコストが高いものではないので、このような特徴は、MRの処理負荷を増大させるものではない。
LFN150は、経路最適化処理をサポートしていない場合が多く、この場合には、LFN150では、このメッセージ1403は無視されることになる。MR140は、MCRDstOptを検査して、テストメッセージ1403のあて先アドレスのプレフィックスが、自身が所有するプレフィックスであることを確認した後、テストメッセージの送信元に対して応答メッセージ1404を送信するか、あるいは、単にこのテストメッセージを転送して、応答メッセージの生成を行わない。
また、本発明によれば、応答メッセージのあて先(MR142)へのツリー経路上のMRを発見/特定するため、MR140は、応答メッセージ1404を生成する際に、自身のHoAと、テストメッセージで受信したIDとを、RESDstOpt(ResponseDstOpt、なお、図19では単にDstOptと記載)と呼ばれる新たなあて先オプション内に挿入する。この応答メッセージは、トンネル確立手続きを最適化するため、RRに関連するパラメータが挿入されているモビリティヘッダを有している。また、応答メッセージは、さらにLFN150のアドレスを有している。
このメッセージ1404は、HA122に到達する。ここで、HA122は、このメッセージ1404をMR142へのトンネルでカプセル化する。さらに、HA122は、トンネルエントリポイントなので、トンネリング仕様に従って、RESDstOptを精査する。本発明によれば、HA122は、このオプションを理解し、このオプションのタイプが2つのパラメータのみを有していることを把握する。そして、HA122は、生成したトンネルヘッダ(外側のトンネル)に、単にオプション(RESDstOpt)をコピーする。
このメッセージ1405はHA123に到達し、HA123において、さらにMR143にトンネルされる。ここではさらに、HA123は、HA123が生成したトンネルヘッダ(外側のトンネル)にRESDstOptをコピーする。この2重にカプセル化されたメッセージ1406はMR143に到達し、MR143においてデカプセル化される。デカプセル化の際に、MR143は応答あて先オプションを取得する。また、MR143はデカプセル化後のあて先アドレスに注目する。
ここでは、デカプセル化にMR143が注目したあて先アドレスは、MR142のCoAである。デカプセル化後、1回カプセル化されているメッセージ1407が、MR142に到達する。MR142は応答メッセージの所望の受信者であり、RESDstOptからパラメータを取得し、さらにモビリティヘッダからパラメータを取得する。MR142は、LFN150の値及びIDの値をチェックし、正しい応答を受信した旨を確認する。なお、ここで、何らかのメカニズムを用いて、MR142が、LFN/LMNとVMNとを区別できるようにすることも可能である。理想的には、MR142は、LFN/LMNに対してのみ、テストメッセージを送信する必要がある。なお、VMNは、自身のテストメッセージを送信することが可能である。
また、MR142は、媒体アクセス制御(MAC:Media Access Control)識別子を保持し、これによって自身が送信したテストメッセージへの応答メッセージを特定することが可能である。また、MR142が、自身が送信していないテストメッセージに対する応答を受信した場合には、その応答メッセージから1ホップ下流のアドレスを特定して、この応答メッセージがVMN又はMRのどちらによるものかを特定することも可能である。
本発明によれば、MR143は、受信した応答メッセージを特定し、自身のCoA、HoA、1ホップ下流のアドレス(MR142のCoA)、MR140から受信したIDを明らかにする別の応答メッセージ1408をMR140に送信する。このメッセージ1408はHA123にトンネルされ、HA123において、メッセージ1409が転送される。なお、ここで言及されているパラメータは、あて先オプションではなく、モビリティヘッダによって送信される。これは、応答−応答メッセージ(応答に対する応答メッセージ)によって、あて先へのツリー経路上の上流MRを特定する必要がないことによる。最終的に、このメッセージ1409はMR140に到達する。そして、MR140は、IDを確認し、トレースを所望していたツリー経路を把握して、メッセージ1409からパラメータを取得する。
MR142は、MR140から応答を受けるとすぐに、上述の実施の形態で説明したように、RR(すなわち、MR140との最適化RR)を開始する。セキュアなトンネル確立シグナリングのストリーム1410によって、MR140は、MR142のCoAを把握し、MR143から得られる応答メッセージを使用して、MR142に到達するツリー経路を推測することが可能となる。MR143は、MR140に対して、応答メッセージによってMR142のCoAを明らかにする。さらに、MR140は、RRに関連するシグナリングから、MR142のCoAを取得し、MR142へのツリー経路を推測する。本発明によれば、MR140は、ツリー経路を推測するとすぐに、このツリー経路の推測結果をRRに関連するシグナリングに利用して、シグナリングのルートを少なくすることが可能となる。
なお、RR及びトンネル確立の後、MR142は、MR140のHoAのみを有し、MR140へのツリー経路を有さないことになる。MR140から受信する応答ではCoAは明らかにはならないので、MR142は、MR140から受信する応答から、このツリー経路をすぐに予測することが可能である。さらに、MR142は、同一IDを含む最初の応答として、所望の受信者(MR140)から応答を受信するので、MR140がホーム上に存在することを把握する。また、MR140は、MR142とのトンネル確立の後、MR143のCoA、MR142のCoA、MR142のHoAがトンネル経路であるツリー経路を有する。LFN150がデータパケット1411をLFN152に送信する場合、MR140は、データパケット1411が新しいBCE内のあて先と同一であるプレフィックスを有しているか否かをチェックする。同一のプレフィックスを有する場合には、さらにMR140は、それに関連したツリー経路が見つかるか否かをチェックする。そして、もし見つかった場合には、MR140は、最初のあて先としてMR143のCoAを設定して、MR142にトンネルする。このトンネルされたパケット1412はMR142に到達し、MR142はデカプセル化を行って、データパケット1413がLFN152に伝送される。
また、図20には、ユニキャスト通信の両端が共に訪問ドメインに存在しており、一方が深いネスト状態にあるシナリオにおいて、RR及びBUシグナリングが低減された経路最適化を実現するために、本発明を活用するための方法が示されている。
図20において、イニシエータノード(イニシエータ)180は、訪問リンク(外部アクセスネットワーク)に接続されている。また、LFN151は、MR141に接続されており、MR141は、さらにMR142に接続されている。なお、MR141及びMR142は両方共、訪問リンク上に存在しており、これらのHAは、それぞれHA121とHA122である。
イニシエータ180はテストメッセージを送信し、このメッセージはLFN151に到達する。このメッセージが取る経路は、経路1500、1501(トンネル)、1502(2重トンネル)、1503(デカプセル化後の単一のトンネル)、1504であり、LFN151に到達する。MR142及びMR141は、受信したトンネルヘッダからMCRDstOptを受信し、関連する応答(図19で説明されている上述の別の実施の形態で言及されたものと同一の応答)を送信する。なお、MR141は、自身が訪問リンク上に存在していることを把握して、自身のCoAを応答メッセージのモビリティヘッダ内に挿入する点が、唯一異なっている。
また、この場合、本発明では、HAがトンネリングを行ってMCRDstOptの属性を自身が生成したトンネルヘッダにコピーする際、HAは、MCRDstOptにカウント属性と呼ばれる新たな属性の生成を行う(ただし、この属性が存在しない場合)。図20に示されているシナリオでは、HA121は、カウント属性を生成して値1を設定し、このカウント属性をMCRDstOptの属性として、自身が生成したトンネルヘッダに挿入する。HA122において更なるカプセル化が行われた場合には、このカウント属性の値は、HA122によって2にインクリメントされる。そして、HA122は、自身が生成したトンネルヘッダのMCRDstOptのカウント属性に値2を設定する。
MCRDstOptを取得したとき、MR142は、2のカウント値を受信し、MR141は、1のカウント値を受信する。MR142は、このようにカウント値2を受けるので、自身が所望の受信者の上流MRであり、テストメッセージが対象とする受信者ではないことを把握する。その結果、MR142は、応答メッセージを構成する際、例えば自身のCoA、ID、1ホップアドレスなどのキーパラメータを、あて先オプション内ではなくモビリティヘッダ内に挿入する。なお、これは、MR142が、応答メッセージを送信するためにあて先(イニシエータノード180)へのツリー経路上の上流MRを必要としないゆえに行われる。
一方、本発明は、不要なシグナリングを低減させるという目的を有しているが、MR141は所望の受信者であり、テストメッセージの送信者(イニシエータ180)へのツリー経路上に上流ルータの発見を必要としているので、MR141によって送信される応答メッセージには、あて先オプション内にHoA及びIDが含まれる。
MR142の応答メッセージの経路は、経路1505(単一トンネル)、1506(トンネルなし)である。また、MR141の応答メッセージの経路は、経路1507(単一トンネル)、1508(2重トンネル)、1509(単一トンネル)、そして最後に1510(トンネルなし)である。
この図から、MR141の応答メッセージに比べて、MR142からの応答メッセージが、最初にイニシエータ180に到着することは明らかである。最初の応答から得られるキーパラメータはID、MR142のHoA、MR142のCoA、MR141のCoA(MCRDstOptを有する最初のテストメッセージをデカプセル化した際に得られる)である。一方、2番目の応答メッセージ(MR141からの応答メッセージ)のパラメータは、ID、MR141のHoA、MR141のCoA、LFN151のアドレスである。
イニシエータ180は、最初の応答を取得すると、LFN151の値が存在しないので、この応答が所望の受信者からではないことを認識する。また、イニシエータ180は、IDから、LFN151の上流のツリー経路上に、何らかのMRが存在することを把握する。イニシエータ180は、2つの応答パラメータを分析することによって、同一のID及び所望の応答であることから、ツリー経路としてMR142のCoA、MR141のCoA、MR141のHoA、LFN151のアドレスを推測することが可能である。したがって、このような応答(単一のテストメッセージに対して、異なる各MRからの複数の応答)からツリー経路を推測した後、本発明では、MR141への双方向トンネルを確立する際にこれらの結果が用いられる。
また、LFN151にデータを送信する場合に、このトンネルが使用される。トンネルヘッダでは、あて先アドレスはMR142のCoAになり、RH2には、MR141のCoAとMR141のHoAとが含まれる。経路最適化パスを、図26に図示されている従来の技術のものと比較した場合、このメカニズムの利点が明瞭に示される。最適化された経路は、多数のRR及びBUシグナリングを用いることなく形成され、必要不可欠なRR及びBUのみが、イニシエータ及び所望の受信者の間で行われる。なお、MRは、関連するMCRあて先オプションを取得した後に、カウント属性やあて先アドレスを見て、直接接続されているLFN及びVMN/MRを特定することが可能である。
上述のように、MRは、関連するMCRDstOptを取得した後に、カウント属性やあて先アドレスを参照して、直接接続されているLFN及びVMN/MRを特定することが可能である。例えば、MR142は、カウント値2を受けるので、MR141のCoAがVMN又はMRのどちらかに属し、LFNには属さないことを把握する。この場合、MR142は、MR141のCoAに対して、テストメッセージ処理を開始すべきではない。
図19、20を用いて説明される解決策では、IDを使用することによって、より簡単にツリー経路手続きの推測を行うことが可能となる一方、ツリー経路を探すノード内の状態管理アルゴリズムは、非常に複雑となり得る。また、トンネル確立のストリームのほとんどすべてにおいてIDの送信が行われる必要があり、帯域が浪費されるので、このメカニズムが不利な場合も存在する。さらに、完全な経路が推測されるまでノードはIDに関連するパラメータを保持する必要があって煩雑となる可能性があり、また、応答を受信した際にIDの値がチェックされる必要があって処理の複雑さが増加することになるので、IDを用いた場合には状態管理が複雑となってしまう。
図21及び本発明の実施の形態で説明されているように、本発明によれば、このようなIDや複雑な状態管理アルゴリズムを使用せずに、あて先のツリー経路を取得する別の方法が示される。なお、この別の方法では、あて先のツリー経路を発見する際にわずかな遅延が生じ、シグナリングがわずかながら増大するという犠牲が生じる。これは、図20で説明されている方法(単一のテストメッセージに対して複数の応答が発生する)とは異なり、単一のテストメッセージに対して単一の応答が生成され、その結果、ツリー経路の探索時に、複数のテストメッセージ及び同数の応答が生じる。
図21において、イニシエータ180は訪問リンク上に存在している。また、MR142及びMR141は訪問ドメイン内に存在し、LFN151はMR142及びMR141の下でネスト状態にある。また、HA121はMR141のHAであり、HA122はMR142のHAである。
イニシエータ180は、MCRDstOptを有するテストメッセージ1600を送信する(ここで、例えば、MCRDstOptを付加するためにCoTIが使用される)。イニシエータ180は、このMCRDstOptをコピー1タイプに分類し、これを識別するための適切なタイプ値(コピーフラグ)を設定する。このメッセージ1600はHA121に到達する。HA121は、自身が生成したトンネルヘッダにMCRDstOptをコピーし、トンネルヘッダ内のMCRDstOptのオプションタイプをコピー0タイプに設定したメッセージ1601を送信する。なお、コピー1タイプは、このオプションをトンネルヘッダに1回コピーすることが可能なことを意味しており、コピー0タイプは、あらゆるトンネルエントリポイントが、それぞれにおいて生成されたトンネルヘッダにこのオプションをコピーしてはならないことを意味している。
HA122は、カプセル化されたメッセージ1601を受信し、さらにパケットをトンネルする。しかし、メッセージ1601に含まれるコピー0タイプのMCRDstOptに基づいて、HA122は、あて先オプションをトンネルヘッダにコピーしない。このパケット1602はMR142に到達するが、トンネルヘッダにはMCRDstOptが存在しないので、MR142は関連するパラメータを取得せず、単にデカプセル化を行い、パケット1603がMR141に送信される。MR141は、コピー0タイプのMCRDstOptを取得する。これにより、MR141は、イニシエータ180のHoAのみを受信する(イニシエータ180によってIDは送信されない)。
ここで、MR141は、図21で説明される別の実施の形態に示されているように、通常の応答メッセージ1605を送信する。この応答メッセージ1605はHA122及びHA121を通じて、それぞれ応答メッセージ1606、1607として伝送され、最終的に、応答メッセージ1608がイニシエータ180に到達する。
イニシエータ180は、応答メッセージ1608のパラメータからMR141のCoAを取得し、その後、LFN151への経路上の任意の上流MRの探索を試みる。このために、イニシエータ180は、別のテストメッセージ1609をMR141のCoAに送信する。その結果、MR142は、パケット1611を受信したコピー0タイプのMCRDstOptを取得し、パケット1612、1613で示される応答を行う。この応答を受信すると、イニシエータ180は、続いてMR142のCoAに対する別のテストメッセージに係る処理を開始する(図21には不図示)。そして、イニシエータ180は、あるタイムアウト期間内に応答を受信することができないので、LFN151に到達可能なツリー経路を推測することができるようになる。すなわち、イニシエータ180は、最初の応答から、MR141のHoA、MR141のCoA、LFN151のアドレスの各パラメータを取得する。また、2番目の応答から、イニシエータ180は、MR142のHoA、MR142のCoA、MR141のCoAなどの各パラメータを取得する。これによって、イニシエータ180は、ツリー経路を推測することが可能となる。
ツリー経路を推測した後、イニシエータ180及びMR141は相互に双方向トンネルを確立する。このとき、シグナリングストリーム1614が使用される。また、ツリー経路情報が、トンネル確立処理においても利用される。MR141とのトンネル確立の後に、イニシエータ180は、BCE内に、MR142のCoA、MR141のCoA、MR141のHoA、LFN151のアドレスを有することになる。トンネルされたデータメッセージ1615はMR141に到達する。MR141は、デカプセル化を行って、LFN151にデータメッセージ1616を伝送する。なお、このシナリオでは、MR142のCoAがトンネルのあて先アドレスとなる。
また、図22には、IDを用いた方法を利用した場合において、最初のトンネルエントリポイントによってカプセル化された後のテストメッセージのパケット構造が示されている。パケット2000はカプセル化されたテストメッセージのパケットを示している。
テストメッセージのパケットはカプセル化されており、テストメッセージのパケットは、IPv6ヘッダ2008、あて先拡張ヘッダ2009、MCRDstOpt2010を有している。このMCRDstOpt2010は、“属性1(2011):テストメッセージ2011の送信者のHoA”、“属性2(2012):ID”の2つの属性を有している。なお、属性2(2012)のIDには、例えば、シーケンスナンバー、乱数、チェックサムなどを使用することが可能である。
シーケンスナンバーの場合にはIDの生成は容易であるが、参照可能であるとともに、攻撃者がシーケンスを予測して攻撃に着手することが可能であるため、セキュリティ上のリスクが存在する。また、乱数の場合には、セキュリティ上のリスクはより少なくなるが、メッセージごとに乱数が生成される必要がある。また、チェックサムが使用される場合には、IDの生成にハッシュアルゴリズムが使用される必要がある。なお、このチェックサム方法では、リプレイアタックが困難になるとともに、攻撃者がIDを予測することも困難である。したがって、チェックサム方法によれば、より強固なセキュリティが提供される。
また、これはCoTIに基づくメッセージなので、テストメッセージのモビリティヘッダ2013は、気付イニットクッキー2014を有している。また、トンネルヘッダは、トンネルIPv6ヘッダ2001、トンネルAH(Authentication Header:認証ヘッダ)2002、トンネルあて先拡張ヘッダ2003を有しており、トンネルあて先拡張ヘッダ2003は、MCRDstOpt2004を有している。さらに、トンネルのMCRDstOpt2004は、送信者のHoA(2005:2011と同一)、ID(2006:2012と同一)、カウント値(2007)の3つの属性を有している。トンネルエントリポイントは、内部のMCRDstOptを参照することができないので、このカウント値を生成する。
また、図23には、IDを用いないメカニズムを利用した場合において、最初のトンネルエントリポイントでトンネルされた後のテストメッセージのパケットの構造が示されている。図23において、オリジナルのテストパケットのMCRDstOpt5008には、コピー1タイプが記載される。したがって、このパケットを受信する最初のトンネルエントリポイントは、MCRDstOpt5008の内容を、自身が生成するトンネルヘッダにコピーして、トンネルヘッダ内のMCRDstOptにコピー0タイプを記載するので、他のすべてのトンネルエントリポイントはトンネリングを行う場合に、このオプションのコピーを行わない。なお、トンネルのMCRDstOpt5004内の属性値は、内部のオリジナルのMCRDstOpt5008と同一である。
また、図25には、IDを用いた方法を利用した場合において、所望の受信者からの最初のテストパケットに対する応答パケット4000が示されている。図25において、応答メッセージには、(上述の別の実施の形態で説明したように)送信元アドレスとして、応答の送信者のHoAが使用され、図25に示すような構造を有している場合が多い。応答の送信者は、自身のHAへのトンネルによってメッセージをカプセル化する。トンネルフィールドは、トンネルIPv6ヘッダ4001及びトンネル認証ヘッダ(トンネルAH)4002であり、実際の応答メッセージは、IPv6ヘッダ4003及びあて先拡張ヘッダ4004を有している。あて先拡張ヘッダ4004には、いくつかの応答パラメータが含まれている。あて先拡張ヘッダ4004内の属性の1つは、応答の送信者のHoA(属性1)4006であり、他の属性はテストメッセージで送信されたID(属性2)4007である。
また、応答メッセージ4000は、モビリティヘッダ4008を有している。このタイプのモビリティヘッダ4008には、3つのオプションが付加されている。オプション4009は、ホームイニットクッキー(HoTIクッキー)やホームキー生成トークンなどのRR実行や最適化RRに必要なオプション値を示している。また、オプション4010は、最初にテストメッセージが送信されたLFNのアドレスを示している。また、オプション4011は、応答を生成しているモバイルノード(すなわち、送信者)のCoAを示している。
また、図24には、テストメッセージのあて先に設定された理想的な所望のMRの上流MRであるMCRDstOptの受信者によって生成された応答メッセージが示されている。この上流MRは、上述の別の実施の形態で説明されているような更なる応答を行う必要がないので、図25に示されているようにあて先オプション(RESDstOpt)内にパラメータを入れる必要はない。したがって、この上流MRは、すべてのパラメータをオプションとしてモビリティヘッダ3007に挿入する。また、この応答は、送信元アドレスとしてHoAが設定される。したがって、この応答は、自身のHAにトンネルされる必要がある。また、モビリティヘッダ3007はオプション3008を有している。オプション3008には、1ホップ下流のMRのCoAが設定される。また、オプション3009には、送信者(当該上流MR)のCoAが設定される。また、オプション3010には、テストメッセージで送信されたIDが設定される。
なお、ここでは、本発明は、最も実用的かつ好適であると考えられる実施の形態で開示及び説明されているが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱しない程度において、設計事項やパラメータの詳細に関して様々な変更が加えられてもよいことが分かることは明白である。
また、上記の本発明の実施の形態の説明で用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又はすべてを含むように1チップ化されてもよい。なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。例えば、バイオ技術の適応などが可能性としてあり得る。