JP4934493B2 - 時効析出型合金ストリップの熱処理方法 - Google Patents

時効析出型合金ストリップの熱処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4934493B2
JP4934493B2 JP2007124460A JP2007124460A JP4934493B2 JP 4934493 B2 JP4934493 B2 JP 4934493B2 JP 2007124460 A JP2007124460 A JP 2007124460A JP 2007124460 A JP2007124460 A JP 2007124460A JP 4934493 B2 JP4934493 B2 JP 4934493B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
strip
heat treatment
copper alloy
aging precipitation
precipitation type
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007124460A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008280567A (ja
Inventor
高橋  功
信行 田中
崇夫 平井
昭行 大田
敬輔 北里
誠人 大久保
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
THE FURUKAW ELECTRIC CO., LTD.
Original Assignee
THE FURUKAW ELECTRIC CO., LTD.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by THE FURUKAW ELECTRIC CO., LTD. filed Critical THE FURUKAW ELECTRIC CO., LTD.
Priority to JP2007124460A priority Critical patent/JP4934493B2/ja
Publication of JP2008280567A publication Critical patent/JP2008280567A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4934493B2 publication Critical patent/JP4934493B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、時効析出型合金ストリップの熱処理方法に関する。
一般に、鉄、銅、アルミニウム、チタン等の純金属、またはこれらに添加元素を加えた合金を薄い板状(ストリップ)として形成した後の熱処理としては、前記ストリップをコイル状に巻いたものをケースに入れて加熱炉(バッチ炉)で加熱を行う、バッチ熱処理が実施されている。
バッチ熱処理の場合、ストリップを構成する金属材料(以下、ストリップ材料とする)の前記バッチ炉内での最高到達温度をT(℃)、前記ストリップ材料の融点をTm(℃)としたとき、熱処理温度は、T/Tm=0.75未満となるように設定されることが多い。これは、熱処理温度が高いとストリップ材料の熱膨張によるストリップ同士の密着が生じたり、ストリップの強度の低下により自重で変形が生じたりするためである。前記密着部分は、次工程前に密着部分を引き剥がす必要があるが、特に、厚さ0.5mm以下のストリップでは、前記密着部分が引き剥がされる際に、ストリップが著しく変形して商品価値を失うことがある。
また、バッチ熱処理の場合、加熱処理後の冷却はケースを冷却することにより行うため、前記ストリップの冷却速度は50〜100℃/hと遅く、10℃/sec程度の冷却速度が要求される熱処理(例えば時効析出型合金の溶体化処理)には適用できない。そこで、時効析出型合金の溶体化処理のように速い冷却速度が必要な場合には、連続熱処理炉(連続焼鈍炉ともいう)が一般的に用いられている。
ところで、近年、時効析出型合金ストリップに対する特性要求値は向上しており、この特性要求値を満足するために、T/Tm≧0.75を満足する高い温度での熱処理(溶体化処理)が必要になっている。溶体化処理温度は合金の添加元素の種類、濃度で決まるものであり、求められる溶体化処理温度よりも低い温度で溶体化処理を行うと、続く時効処理で析出強化が不十分となる。例えば、銅合金の時効析出型合金においては、高強度、高導電率の要求から合金中の溶質濃度が高くなっており、溶体化処理に必要な温度、具体的にはストリップ材料の最高到達温度は800〜1000℃と高くすることが求められる。ところが、銅合金の融点は1050〜1100℃付近であるため、上記のような高温条件では、溶体化処理時にストリップは著しく軟化することになる。
一方で、温度の上昇により溶質元素の拡散が早まるため、溶体化処理に必要な温度に到達した後にストリップ材料を固溶状態に維持するためには、冷却速度を従来より速くする必要がある。これは、冷却速度が遅いと、冷却過程で溶質元素の析出が生じてしまい、次工程の時効処理を行った際に強度の向上が低くなるからである。
また、冷却速度が速くなると、熱伝達時間が短く、幅方向で熱履歴が変わってしまうことから、熱処理後の特性値、例えばストリップ幅方向の機械的強度に差が生じやすい。通常の連続焼鈍では幅方向の端部が冷却されやすく、端部の温度が低くなる温度分布が生じる。このようなことから、ストリップの両端部を後の工程で切り捨てなければならない場合があり、歩留まりの悪化の原因となっている。
さらに、上述のように、ストリップが著しく軟化し強度が低下した状態で速い速度で冷却を行うと、ストリップの幅方向に波などの形状不良が生じやすい。この波は後工程の冷間圧延工程などでしわとなり、最終製品としてのストリップにもしわが残ることとなる。したがって、一般的な連続熱処理炉では対応できない。特に、板厚が0.5mm以下の薄物ストリップについては、波によるしわの発生がより顕著である。波が発生する要因としては、(1)冷却過程で生じる圧縮応力による幅方向の座屈、(2)冷却過程で幅方向の温度差により生じる熱応力による座屈、等が挙げられる。
このようなしわの発生を抑制するための対策として、下記特許文献1には、冷却帯の入口で、ストリップの湾曲量を検出し、この検出結果に基づき、ストリップの表面および裏面に吹付ける冷却ガスの温度を調整することが記載されている。しかしながら、特許文献1の記載に基づき本発明者らが実験を行ったところ、特に板厚が薄い材料の場合には材料の熱伝達が速いため、表面と裏面とで温度差が生じず、しわの改善は困難であることがわかった。
また、下記特許文献2には、熱応力によるストリップの変形を抑制するために、ストリップに付加する平均張力を、板幅、ヤング率等に基づき計算される値より大きくすることが記載されている。しかしながら、特許文献2の記載に基づき板厚0.2mmのストリップを用いて実験を行ったところ、上述したT/Tm≧0.75を満たす高温の熱処理条件では、張力を上げることでむしろしわが多く形成されることがわかった。これは、強度が著しく低下していること、及び板厚が薄いことが原因であり、張力を上げた事で幅方向の内向きに応力が生じ座屈が生じていると考えられる。
また、下記特許文献3には、ストリップの幅方向の温度差に起因する形状不良を解消するために、冷却帯の入口で測定したストリップ温度に基づき、ストリップに生じる幅方向の応力分布を推定し、冷却ガスプレナム圧を制御することが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の冷却方法では、応力分布の推定が難しく、操業化は困難である。
なお、特許文献1〜3のいずれにおいても、T/Tm≧0.75を満たす、ストリップ材料の融点に近い高温の熱処理条件で溶体化処理を行う方法について何ら記載されていない。
特開平7−11336号公報 特開平8−269575号公報 特開平10−265856号公報
このように、引張強度等の特性要求値を満足するために材料の融点に近い高温条件での溶体化処理を実施しようとすると、溶体化処理後の冷却速度を従来よりも速くする必要がある一方で、急速冷却により材料に形状不良が生じやすく、また、幅方向での熱履歴に起因して、幅方向の特性に差が生じやすい。このため、材料の融点に近い高温条件での溶体化処理を行うことは、実現していないのが現状である。
本発明の第1の目的は、従来のストリップと比較し、引張強度に優れ、良好なストリップ形状を有し、幅方向の特性差の小さいストリップを得ることができる、厚さ0.5mm以下の時効析出型合金ストリップの熱処理方法を提供することにある。
第2の目的は、特性要求値を満足するためにストリップ材料の融点に近い高温での溶体化処理を行った場合にも、引張強度に優れ、良好なストリップ形状を有し、且つ、幅方向の特性差の小さいストリップを得ることができる、厚さ0.5mm以下の時効析出型合金ストリップの熱処理方法を提供することにある。
本発明の第1の態様は、時効析出型合金を厚さ0.5mm以下のストリップとして形成し、前記ストリップを熱処理炉により加熱した後冷却する時効析出型合金ストリップの熱処理方法において、前記ストリップの最高到達温度をT(℃)、前記ストリップを構成する時効析出型合金の融点をTm(℃)としたとき、前記ストリップをT/Tm=0.75〜0.95を満たす条件で加熱する加熱処理工程と、前記加熱処理工程により加熱された前記ストリップを冷却する冷却処理工程とを含み、前記熱処理炉の炉内最高温度部において前記ストリップに付加する張力を、前記最高到達温度Tにおける前記ストリップの耐力の3%以上19%以下とすることを特徴とする時効析出型合金ストリップの熱処理方法である。
このように、T/Tm=0.75〜0.95を満たす高温条件で、ストリップに対して加熱処理工程を含む熱処理を実施することにより、続く時効処理において、充分な析出強化効果を得ることができ、ストリップ材料の引張強度を向上させることができる。また、熱処理炉の炉内最高温度部においてストリップに付加する張力を、最高到達温度Tにおけるストリップの耐力の3%以上19%以下とすることにより、ストリップに波を生じさせない良好なストリップ形状を得ることができる。
ここで、上記高温条件での加熱処理工程を含む熱処理を実施する場合、上述したように、加熱処理工程後の冷却処理工程の冷却速度を従来よりも速くする必要がある一方で、急速冷却により材料に形状不良が生じやすく、また、幅方向での熱履歴に起因して、幅方向の特性に差が生じやすい。
そこで、本発明者らは、高温条件での加熱処理工程を含む熱処理を実施するにあたり、材料の形状不良の解消及び幅方向の特性の均一化について種々の検討を行い、以下のような知見を得た。
一般に、工業的に溶体化処理を行った場合、実験室レベルで小型サンプル(例えば長さ及び幅が数cm〜数十cm、厚さが0.5mm以下)の溶体化処理を行った場合(これを理想的な溶体化状態と定義する)と比べて、溶体化処理後に行われる時効処理によって得られるストリップの強度は低い。これは、工業的な熱処理では冷却速度が低下し、冷却中に溶質元素が粗大に析出してしまい、析出強度向上に寄与しなくなるためである。そこで、理想的な溶体化状態で得られる強度の90%以上(強度の損失分が理想的な溶体化状態で得られる強度の10%以下)の強度が得られれば、工業的に好ましいと判断することとし、これを前提として、発明者らは種々の材料の溶体化処理実験を行った結果、工業的に好ましいと判断できる強度を得るためには、加熱処理工程後の冷却処理工程において、ストリップを前記最高到達温度T(℃)から前記最高到達温度T(℃)の60〜80%の温度まで、20〜150℃/secの冷却速度で冷却(急冷)する必要があることを見出した。
また、温度勾配が400℃/m以下となる条件、及び/又は、熱処理炉内の最高温度部においてストリップに付加する張力が、その温度でのストリップの耐力の10%以下となる条件で冷却を行うことにより、良好なストリップ形状を得ること見出した。これは、高温の熱処理条件においては、上記特許文献2の記載とは逆に、形状を安定するにはむしろ張力を低下させなければならないという知見である。
さらに、冷却中のストリップ幅方向の温度差が±10℃以下となる条件で冷却を行うことにより、ストリップ材料の両端部と中央部との熱履歴が均一化され、熱処理後の機械的強度に幅方向の差が生じ難いことを見出した。
すなわち、本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る熱処理方法において、前記冷却処理工程は、前記ストリップを前記最高到達温度T(℃)から前記最高到達温度T(℃)の60〜80%の温度まで、冷却速度20〜150℃/secで冷却する工程であることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る熱処理方法において、前記冷却処理工程は、温度勾配が400℃/m以下となる条件で前記ストリップを冷却する工程であることを特徴とする。
本発明の第の態様は、前記第1から第のいずれかの態様に係る熱処理方法において、前記熱処理炉の炉内最高温度部において前記ストリップに付加する張力を、前記最高到達温度Tにおける前記ストリップの耐力の10%以下とすることを特徴とする。
本発明の第の態様は、前記第1から第のいずれかの態様に係る熱処理方法において、前記ストリップを構成する時効析出型合金は、その融点Tm(℃)の75%未満の温度で母相と第2相に相分離を起こす時効析出型合金であることを特徴とする。
本発明の第の態様は、前記第1から第のいずれかの態様に係る熱処理方法において、前記熱処理炉は、連続熱処理炉であることを特徴とする。
本発明の第の態様は、前記第1から第のいずれかの態様に係る熱処理方法により製造された時効析出型銅合金ストリップであって、前記ストリップの幅方向に生じる波の最大高さ10mm以下であることを特徴とする時効析出型銅合金ストリップである
本発明の第の態様は、前記第1から第のいずれかの態様に係る熱処理方法により製造された時効析出型銅合金ストリップであって、前記ストリップの幅方向の引張強さ分布±10MPa以下であることを特徴とする時効析出型銅合金ストリップである
本発明の第の態様は、前記第1から第のいずれかの態様に係る熱処理方法により製造された時効析出型銅合金ストリップであって、前記ストリップの引張強度、理想的溶体化状態における引張強度の90〜100%の値であることを特徴とする時効析出型銅合金ストリップである
本発明によれば、T/Tm=0.75〜0.95を満たす高温条件で、ストリップに対して加熱処理工程を含む熱処理を実施することにより、従来のストリップと比較し、引張強度に優れ、良好なストリップ形状を有し、幅方向の特性差の小さいストリップを得ることができる。また、加熱処理工程後の冷却処理工程における冷却速度、温度勾配、ストリップ材料幅方向の温度差、及び熱処理炉内の最高温度部においてストリップに付加する張力を適正化することで、材料の融点に近い前記高温条件においても、引張強度に優れ、良好なストリップ形状を有し、且つ、幅方向に特性差の小さいストリップを得ることが可能となる。
以下に、本発明の熱処理方法の実施形態について説明する。
本発明の熱処理方法は、厚さ0.5mm以下の時効析出型合金ストリップに対する加熱処理工程及びそれに続く冷却処理工程を含む。
時効析出型合金としては、例えば、銅合金、鉄合金、アルミニウム合金等の、ストリップ材料の融点Tm(℃)の75%未満の温度で母相と第2相に相分離を起こす時効析出型合金が挙げられる。以下に、各処理条件について説明する。
(加熱処理工程における条件)
ストリップ材料の最高到達温度をT(℃)、融点をTm(℃)としたとき、T/Tm=0.75〜0.95を満たす条件で、ストリップに熱処理(溶体化処理)を行う。なお、熱処理炉におけるストリップの加熱温度については、ストリップ材料の合金組成および時効処理後のストリップの諸特性を考慮して設定される。熱処理炉内のストリップの実体温度は、一般に計算により求められる。加熱温度の制御は、一般的な熱処理炉を用いた場合と同様に制御される。
このような条件で溶体化処理を行うことにより、その後の時効処理において第2相が十分に析出し、大きな析出強化効果を得ることができ、ストリップの引張強度を向上させることができる。引張強度は、JIS−Z2241に基づいた測定方法により求められる。
なお、T/Tmが0.95を超える場合には、僅かな温度ばらつきで材料の融点を超えてしまい、材料が融けて破断する可能性が高くなる。このため、長尺のストリップをT/Tmが0.95を超えるような高温条件で工業的に熱処理するのは、実質的には不可能であると考えられる。
(冷却処理工程における条件)
(1)冷却速度
高温条件で溶体化処理を実施することにより、溶質元素の拡散が早まるため、溶体化温度に到達した後に固溶状態を維持するためには、冷却速度を速くする必要がある。冷却条件としては、溶体化処理を実施した後、ストリップ材料の最高到達温度T(℃)の60%〜80%までは、20〜150℃/secの冷却速度で冷却(急冷)することが望ましい。このような条件で冷却を行うことにより、上述した理想的な溶体化状態で得られる強度の90%以上の強度を得ることができる。
冷却速度が20℃/secより遅いと、時効処理後の強度が、理想的な溶体化状態で得られる強度の90%未満に低下しやすくなる。また150℃/sec以上では、時効処理後の強度は変わらなくなるだけでなく、設備が大型化し、後述する様に材料の温度勾配が大きくなり、ストリップ形状を悪化させるため好ましくない。
また、最高到達温度の60〜80%としたのは、80%以上では温度が高いため溶質元素の拡散が早く粗大析出が生じやすいからである。一方、60%以下では時効処理後の強度が変わらなくなるだけでなく、設備の大型化が必要になるからである。
(2)温度勾配
冷却時の温度勾配はストリップ形状に影響を及ぼす。温度勾配は400℃/m以下とすることが好ましい。なお、温度勾配は、単位長さでの温度変化を表す。
400℃/mを超えると材料の収縮差により生じる熱応力が大きくなりしわが入りやすくなる。温度勾配は材料の冷却速度÷ライン速度で求められ、前述の冷却速度範囲を満足し、400℃/mを超えないように、ライン速度を設定すればよい。
このように、温度勾配を制御することで、熱処理後のストリップの幅方向に生じる波の最大高さが10mm以下となる。10mmを超えると商品価値が低くなり、また搬送ロールに巻き付けられた時にしわが折れ重なってしまい、最終製品としてのストリップをコイラーで巻き上げる事すら困難となることがある。
波の最大高さは、図2に示すように、ストリップを長手方向に500mmの長さに切断し、平坦な板の上に載せ、山の最大高さを計測することで求めることができる。
(3)幅方向の温度差
一般に、ストリップの両端部は冷却されやすいため、両端部と中央部との温度差が生じる。冷却速度が速いと、熱伝達によって温度差が緩和される時間が少ないことから、温度差がそのまま持ち越され、熱履歴が中央部と端部で異なることになる。このため、溶体化処理後の機械的強度、及びその後の時効処理時の強度が、幅方向で異なる。これを回避するためには中央部と両端部との温度差を±10℃以下、好ましくは±5℃以下に制御することが望ましい。これにより、幅方向の引張強さの差を±10MPa以内にすることが可能となる。
幅方向の引張強さの差は、ストリップ材を幅方向に50mm間隔でJIS−Z2241に基づく引張試験を行い、引張強さの幅方向分布を求め、その最大値と最小値の差とする。
(熱処理炉内における張力の条件)
熱処理炉の炉内最高温度部においてストリップに付加する張力も、ストリップ形状に影響を及ぼす。炉内最高温度部においてストリップに付加する張力は、その温度におけるストリップの耐力の10%以下に制御することが好ましい。張力は、高いと幅方向の内向きに応力が作用し、ストリップに波が生じ、その波により後工程でしわが生じる。波が最も発生しやすいのはストリップが最高到達温度に到達した部分であり、しわを防ぐには、この部分に付加する張力を、ストリップ材料の最高到達温度における耐力の10%以下とすることがましい。

張力の測定方法は、連続熱処理炉の構造により異なる。連続熱処理炉にはストリップを縦に搬送する縦型、ストリップを横に搬送する横型があり、それぞれの場合について説明する。
縦型炉の場合は、炉の下部に設置するロードセルロールで計測する張力に、炉下部から炉内最高温度部までの距離より求まる自重分を加算し、ストリップ材の断面積で割ることで求められる。
横型炉の場合は、炉の入口または出口に設置するロードセルロールで計測する張力をストリップ材の断面積で割ることで求められる。
また、張力の制御は、一般的な連続熱処理炉における張力制御方法を用いることにより実現可能である。
耐力の測定方法は、JIS−Z2241に基づき引張試験を行い、0.2%の永久伸びを生じるときの応力を算出する。
高温での熱処理(溶体化処理)を行うため、本発明の熱処理方法においては、熱処理炉として連続熱処理炉(連続焼鈍炉)を用いることが好ましい。
連続熱処理炉としては、前述のとおりストリップを縦に搬送する縦型、及び横に搬送する横型があり、さらに縦型は上から下に搬送するダウンヒート型、下から上に搬送するアップヒート型が存在する。本発明はこれらの何れを使用してもよい。
図1に、本発明の熱処理方法を実施することができる連続熱処理炉の構成の一例を示す。連続熱処理炉は、ストリップ1の搬送方向上流側から、ストリップ1に加熱処理を実施するための加熱帯2と、ストリップ1に冷却処理を実施するための冷却帯3とを有している。搬送ロール4、5は、ストリップ1を炉内中央に搬送させるためのロールである。
次に、図1に示した連続熱処理炉を用いて行った実施例について説明する。
表1に示す材料及び板厚のストリップを、表1に示す熱処理条件で熱処理し、熱処理後の強度達成率、幅方向の最大波高さ、及び幅方向の引張強度差を測定した。各測定結果を、表1に合わせて示す。
Figure 0004934493
表1に示すように、比較例1は、T/Tm<0.75であるため、対応する本発明例2と比較して強度達成率が低い。一方、比較例2は、T/Tm>0.95であるため、通板中に板切れが発生した。
また、本発明例2と本発明例13との比較、及び、本発明例7と本発明例17との比較から、冷却速度が20℃/sec以上の場合に、高い強度達成率を得られることがわかる。
また、本発明例2と本発明例14との比較、及び、本発明例7と本発明例18との比較から、幅方向温度差が±10℃以下の場合には、幅方向引張強度差を小さくできることがわかる。
さらに、本発明例2と本発明例15及び16との比較、及び、本発明例7と本発明例19との比較から、ライン張力/耐力値が10%以下の場合には、幅方向最大波高さを小さくできることがわかる。
本発明の熱処理方法を実施することができる連続熱処理炉の概略構成図である。 ストリップの波の最大高さの測定方法を示す概念図である。
符号の説明
1:ストリップ
2:加熱帯
3:冷却帯
4、5:搬送ロール

Claims (9)

  1. 時効析出型合金を厚さ0.5mm以下のストリップとして形成し、前記ストリップを熱処理炉により加熱した後冷却する時効析出型合金ストリップの熱処理方法において、前記ストリップの最高到達温度をT(℃)、前記ストリップを構成する時効析出型合金の融点をTm(℃)としたとき、前記ストリップをT/Tm=0.75〜0.95を満たす条件で加熱する加熱処理工程と、前記加熱処理工程により加熱された前記ストリップを冷却する冷却処理工程とを含み、前記熱処理炉の炉内最高温度部において前記ストリップに付加する張力を、前記最高到達温度Tにおける前記ストリップの耐力の3%以上19%以下とすることを特徴とする時効析出型合金ストリップの熱処理方法。
  2. 前記冷却処理工程は、前記ストリップを前記最高到達温度T(℃)から前記最高到達温度T(℃)の60〜80%の温度まで、冷却速度20〜150℃/secで冷却する工程であることを特徴とする請求項1に記載の時効析出型合金ストリップの熱処理方法。
  3. 前記冷却処理工程は、温度勾配が400℃/m以下となる条件で前記ストリップを冷却する工程であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の時効析出型合金ストリップの熱処理方法。
  4. 前記熱処理炉の炉内最高温度部において前記ストリップに付加する張力を、前記最高到達温度Tにおける前記ストリップの耐力の10%以下とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の時効析出型合金ストリップの熱処理方法。
  5. 前記ストリップを構成する時効析出型銅合金は、その融点Tm(℃)の75%未満の温度で母相と第2相に相分離を起こす時効析出型銅合金であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の時効析出型合金ストリップの熱処理方法。
  6. 前記熱処理炉は、連続熱処理炉であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の時効析出型合金ストリップの熱処理方法。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の時効析出型銅合金ストリップの熱処理方法により製造された時効析出型銅合金ストリップであって、前記ストリップの幅方向に生じる波の最大高さが10mm以下であることを特徴とする時効析出型銅合金ストリップ
  8. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の時効析出型銅合金ストリップの熱処理方法により製造された時効析出型銅合金ストリップであって、前記ストリップの幅方向の引張強さ分布が±10MPa以下であることを特徴とする時効析出型銅合金ストリップ
  9. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の時効析出型銅合金ストリップの熱処理方法により製造された時効析出型銅合金ストリップであって、前記ストリップの引張強度が、理想的な溶体化状態における引張強度の90〜100%の値であることを特徴とする時効析出型銅合金ストリップ
JP2007124460A 2007-05-09 2007-05-09 時効析出型合金ストリップの熱処理方法 Active JP4934493B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007124460A JP4934493B2 (ja) 2007-05-09 2007-05-09 時効析出型合金ストリップの熱処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007124460A JP4934493B2 (ja) 2007-05-09 2007-05-09 時効析出型合金ストリップの熱処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008280567A JP2008280567A (ja) 2008-11-20
JP4934493B2 true JP4934493B2 (ja) 2012-05-16

Family

ID=40141637

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007124460A Active JP4934493B2 (ja) 2007-05-09 2007-05-09 時効析出型合金ストリップの熱処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4934493B2 (ja)

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2672241B2 (ja) * 1993-01-19 1997-11-05 株式会社神戸製鋼所 強度及び曲げ加工性が優れた銅合金材の製造方法
EP0854200A1 (en) * 1996-10-28 1998-07-22 BRUSH WELLMAN Inc. Copper-beryllium alloy
JP3300684B2 (ja) * 1999-07-08 2002-07-08 清仁 石田 形状記憶特性及び超弾性を有する銅系合金、それからなる部材ならびにそれらの製造方法
JP2003301250A (ja) * 2002-04-10 2003-10-24 Mitsubishi Shindoh Co Ltd 時効硬化溶接管およびその製造方法
US7182823B2 (en) * 2002-07-05 2007-02-27 Olin Corporation Copper alloy containing cobalt, nickel and silicon
JP3977376B2 (ja) * 2004-02-27 2007-09-19 古河電気工業株式会社 銅合金
JP4646192B2 (ja) * 2004-06-02 2011-03-09 古河電気工業株式会社 電気電子機器用銅合金材料およびその製造方法
JP4501818B2 (ja) * 2005-09-02 2010-07-14 日立電線株式会社 銅合金材およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008280567A (ja) 2008-11-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6339616B2 (ja) 展伸用途のマグネシウム系合金
TWI552813B (zh) 鎂合金板的製造方法及鎂合金線圈材料
CN108699641B (zh) Al-Mg-Si系合金材料、Al-Mg-Si系合金板和Al-Mg-Si系合金板的制造方法
US9754703B2 (en) Copper alloy wire rod and method for manufacturing the same
JP2017179457A (ja) Al−Mg―Si系合金材
WO2012111632A1 (ja) マグネシウム合金圧延材、およびマグネシウム合金部材、ならびにマグネシウム合金圧延材の製造方法
JP6356084B2 (ja) 冷間圧延用圧延板の製造方法及び純チタン板の製造方法
JP2017179442A (ja) Al−Mg―Si系合金材
JP4934493B2 (ja) 時効析出型合金ストリップの熱処理方法
JP2011231359A (ja) 高強度6000系アルミニウム合金厚板及びその製造方法
JP2008238241A (ja) アルミニウム金属板の製造方法
KR100935797B1 (ko) 상자소둔 열처리 공정을 포함하는 냉간압연강판 제조공정에있어서 스트립간의 흡착 발생 저감 방법
JP5928408B2 (ja) 熱間仕上圧延における先端反り防止方法および装置
JP6317966B2 (ja) Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びに通電部品
EP3521459B1 (en) METHOD FOR PRODUCING Fe-Ni-BASED ALLOY THIN PLATE AND Fe-Ni-BASED ALLOY THIN PLATE
JP2017179452A (ja) Al−Mg―Si系合金板の製造方法
US9598749B2 (en) Rolled magnesium alloy material, magnesium alloy structural member, and method for producing rolled magnesium alloy material
JP2016180130A (ja) Cu−Ni−Si系銅合金板材およびその製造方法並びにリードフレーム
WO2017168891A1 (ja) Al-Mg―Si系合金板の製造方法
JP4718273B2 (ja) 強化α黄銅及びその製造方法
JP7067322B2 (ja) 縞鋼板の製造方法
JP2008223146A (ja) Fe−Ni系合金薄板材の製造方法
JP6269548B2 (ja) 熱延鋼板の製造方法
JP6056333B2 (ja) 極薄冷延鋼板の製造方法
CN107847995B (zh) 电解电容器电极用铝材料的制造方法、铝电解电容器用电极材料的制造方法、和铝电解电容器的制造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100104

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110210

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110308

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110419

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120203

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120220

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4934493

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150224

Year of fee payment: 3

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350