以下、図面を参照して本発明に係る現況報告方法及び現況報告サーバの好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態においては最良の形態として、気象庁が実施している緊急地震速報に本発明を応用する例を説明する。但し、本発明は緊急地震速報に限らずその他の、例えば大規模な火災、洪水、台風等においても応用可能である。その場合であっても被災者の現況をいち早く親戚等に報告することが可能となる。
図1は、本発明の実施形態に係るシステム1の構成図を示す。本実施形態に係るシステム1は、被災者移動機端末10(一の移動機端末)、現況報告サーバ20(現況報告サーバ)、災害予測提供サーバ50(災害予測提供サーバ)、災害情報提供サーバ55、HLR(Home Location Register)57及びペアリング先移動機端末70(他の移動機端末)から構成されている。
被災者移動機端末10は、地震発生時に被災地に居たユーザ所有の移動機端末であり、具体的には携帯電話、PHS(Personal Handy phone System)及びPDA(Personal Digital Assistant)等が該当する。本実施形態において被災者移動機端末10及び後述のペアリング先移動機端末70の両方を含めて「移動機端末」と称する。
現況報告サーバ20は、災害予測提供サーバ50、災害情報提供サーバ55、HLR57、被災者移動機端末10及びペアリング先移動機端末70と通信可能であり、災害時に被災者移動機端末10の使用者の現況を予め登録した親戚等へ報告するサーバである。
災害予測提供サーバ50は、地震の災害の予測探知を行うサーバである。具体的には震源地に近い位置でとらえた震度をただちに解析して震源や地震の規模を判断し、当該判断に基づいて各地に地震波が到達する前に各地の震度を予測探知する。災害予測提供サーバ50は、大規模地震の発生が予測された場合に被災予測地に関する情報である被災地予測情報と、当該被災予測地において予測される災害規模に関する情報である規模予測情報(以後、被災地予測情報と規模予測情報との両方を合わせて「災害予測情報」と言う)と、を現況報告サーバ20へ送信する。本実施形態では、規模予測情報として震度を用いる。また、被災予測情報としては、日本全土を200領域に分けた領域区分を用いる。
災害情報提供サーバ55は、災害が発生した場合に実際の災害の情報を収集し、被災地に関する情報である被災地情報と、当該被災地における規模に関する情報である規模情報(以後災害地情報と災害規模情報とを合わせて「災害情報」と言う)と、を現況報告サーバ20に送信する。
HLR57は、移動機端末の位置登録を管理するサーバであり。移動機端末の現在の在圏情報を保持している。
図1においては、被災者移動機端末10が一台のみ記載されているが通常は複数の被災者移動機端末10が存在する。また、ペアリング先移動機端末70はここでは3台記載されているが、3台に限定されない。
図2は、被災者移動機端末10の機能構成図である。被災者移動機端末10は、簡易現況報告取得部11、現在位置計測部12及び現在位置送信部13を含んで構成されている。
簡易現況報告取得部11は、現況報告サーバ20における簡易現況報告部26が送信した簡易現況報告(後述)を受信する機能を有する。被災者移動機端末10が当該機能を備えることによって、被災者移動機端末10が災害発生以前に災害の発生を予知可能となる。簡易現況報告の受信は以下に述べる現在位置の自動計測の開始誘因となる。
現在位置計測部12は、簡易現況報告取得部11が簡易現況報告を受信すると現在位置を自動計測する機能を有する。具体的には既知の測位方法であるGPS(Global Positioning System)を利用して現在の位置を経度及び緯度で特定する。被災者移動機端末10が当該機能を備えることにより、後述の方法により在圏地から求める被災者移動機端末10の現在位置よりも詳細な現在位置を計測することが可能となり、後述する詳細現況報告をより正確な報告とすることが可能となる。
現在位置送信部13は、現在位置計測部12が計測した現在位置を現況報告サーバ20に送信する機能を備える。
図3は、現況報告サーバ20の機能構成図である。現況報告サーバ20は、災害予測情報取得部21、簡易現況判断部22、ペアリング情報保持部23、最終在圏地情報保持部24、最終在圏地判断部25、簡易現況報告部26、現在位置情報取得部27、災害情報取得部28、詳細現況判断部29、及び詳細現況報告部30を含んで構成されている。
災害予測情報取得部21は、災害の発生が予測された場合に被災予測地に関する情報である被災地予測情報と、当該被災予測地において予測される災害規模に関する情報である規模予測情報と、を災害予測提供サーバ50から受信する機能を備える。災害予測情報の具体例を図10に示す。図10に示すように本実施形態においては、被災予測情報として日本全土を200領域(即ち一都道府県あたり2〜3領域)程度に分けた領域を用いる。規模予測情報としては、具体的には震度を用いる。災害予測情報取得部21は、被災地予測情報を簡易現況判断部22へ送る。現況報告サーバ20が当該機能を有することによって、現況報告サーバ20が災害の発生以前或いは災害の発生とほぼ同時に災害の発生を予知することが可能となる。
簡易現況判断部22は、災害予測情報取得部21が受信した被災地予測情報と、HLR57が保持する被災者移動機端末10の現在における在圏情報と、からユーザが災害予測地内に在圏しているかを判断する機能を有する。具体的にはHLR57から取得した移動機端末の現在の在圏地が被災予測地内であった場合には簡易現況判断部22は当該移動機端末が災害予測地内に在圏していると判断する。HLR57から取得した移動機端末の現在の在圏地が被災予測地外であった場合には、簡易現況判断部22は当該移動機端末が災害予測地内に在圏していないと判断する。
在圏地が被災予測地内であるか或いは被災予測地外であるかの判断は、例えば当該在圏地を形成する基地局の所在場所が被災予測地に属している場合に在圏地が被災予測地内であると判断し、在圏地を形成する基地局の所在場所が被災予測地に属していない場合に在圏地が被災予測地外であると判断できる。簡易現況判断部22は判断結果を簡易現況報告部26へ送る。
ペアリング情報保持部23は、ペアリング情報を保持している。ペアリング情報とは、被災者移動機端末10が被災予測地に在圏していた場合にその旨を通知する送信先を示す情報である。
図11にペアリング情報保持部23が保持するデータの構造の例を示す。図11で示すようにペアリング情報は、登録者、名前、続柄等、電話番号、メールアドレス、通知方法、簡易現況報告完了有無及び詳細現況報告完了有無を関連付けて構成される。
「登録者」とは、被災者のことを指す。ここには登録者を一意に特定できる情報(電話番号等)が保持されている。「名前」とは、ペアリング先を一意に特定できる情報のことである。これによってペアリング先が登録者(図11の例ではユーザA)と関連付けられることとなる。
これらペアリング情報保持部23に保持されているペアリング先などのデータは、「登録者」であるユーザにより、例えば移動機端末購入時に登録される。更に、移動機端末を購入した時点で続柄等を登録することで、親戚間(父、母、祖母、祖父、兄弟姉妹、夫)ではお互いに自動的に登録することができるようにしても良い。こうすることで親戚の登録漏れをなくし、災害時に確実に現況情報が親戚に送信されることとなる。また、手作業による登録負担を軽減することが可能となる。
「通知方法」には、被災者移動機端末10の使用者が登録した簡易現況報告及び詳細現況報告の送信方法が保持されている。例えばメール操作が苦手な相手に対しては電話による伝言メッセージによる方法が選択可能に保持される。
「簡易現況報告完了有無」には、後述の簡易現況報告が完了したか否かを示す情報が保持されている。簡易現況報告の送信に成功した(指定するメールボックスに送信された、或いは移動機端末に届いた)場合には「有」が保持される。簡易現況報告の送信を未だしていない、及び送信したが未だに成功していない(例えば移動機端末が圏外となっているため移動機端末までメールが届いていない)状態では「無」が保持される。「通知方法」として電話による伝言メッセージを選択した場合であって、且つペアリング先が伝言を再生した場合には「再生済み」が保持され未だに再生していない状態であれば「未再生」が保持される。
「詳細現況報告完了有無」には、後述の詳細現況報告が完了したか否かを示す情報が保持されている。詳細現況報告の送信に成功した(指定するメールボックスに送信された、或いは移動機端末に届いた)場合には「有」が保持される。詳細現況報告の送信を未だしていない、及び送信したが未だに成功していない(例えば移動機端末が圏外となっているため移動機端末までメールが届いていない)状態では「無」が保持される。「通知方法」として電話による伝言メッセージを選択した場合にはペアリング先が伝言を再生した場合には「再生済み」が保持され、未だに再生していない状態であれば「未再生」が保持される。
最終在圏地情報保持部24は、被災者移動機端末10が最後に在圏していた在圏地であるところの最終在圏地についての情報を保持する機能を有する。図6には最終在圏地情報保持部24が保持するデータ構造の例を示す。この図にあるように最終在圏地情報保持部24に保持される情報は最終在圏地及び在圏フラグを含んで構成される。最終在圏地情報保持部24は一定時間間隔でHLR57と同期を行う。同期の結果特定された各移動機端末に関連付けられた現在の在圏地を属性「最終在圏地」の値として保持する。
図6(a)と図6(b)は、共に最終在圏地情報保持部24が保持するデータ構造の例を示しているが、ある時刻における保持内容が図6(a)に示されており、次に各移動機端末の在圏地を管理するサーバと同期を行った直後の状態を図6(b)に示す。当該同期(以後「今回の同期」という)において移動機端末Aは前回の同期時と同じ領域である“エリアA”に在圏していたため引き続きエリアAが保持される。移動機端末Bは前回同期時には“エリアA”に在圏していたが今回同期において“エリアB”に在圏していたため最終在圏地が“エリアB”に書き換えられることになる。移動機端末Cは前回同期時にエリアBに在圏していたが、今回同期時にどのエリアにも在圏していなかった。そのため最終在圏地の値は書き換えられることなく“エリアB”のまま保持され「在圏フラグ」に“圏外”が設定されることになる。
最終在圏地判断部25は、最終在圏地情報保持部24を参照することにより被災者移動機端末10が最後に在圏していた在圏地を得て、当該最後に在圏した在圏地が災害予測地内か否かを判断する機能を有する。
具体例として、最終在圏地情報保持部24が保持するデータが図6(b)に示す状態であった時刻において、災害予測情報取得部21は、災害予測提供サーバ50から災害予測情報を取得し、且つエリアBを形成する基地局が被災予測地に属する場合について説明する。移動機端末Cは圏外であるため最終在圏地判断部25が最終在圏地参照し、被災予測地内に在圏しているか否かを判断することとなる。最終在圏地判断部25は、最終在圏地情報保持部24に保持されたデータのなかで移動機端末Cのレコードの属性「最終在圏地」を参照することで、移動機端末Cの最終在圏地がエリアBであるとの情報を得る。次に当該得られた最終在圏地情報(エリアB)と被災地予測情報とを比較する。エリアBを形成する基地局は被災予測地に属しているため最終在圏地判断部25は、移動機端末Cが被災予測地内に存在している可能性が高いと判断する。
現況送信サーバ10が当該機能を有することによって、震災発生時においてどこにも在圏していない移動機端末について、最後に在圏していた最終在圏場所から当該移動機端末の使用者が災害予測地に居た可能性を判断することができる。現実に、携帯電話の電源を切って就寝し就寝中に震災が発生した場合など、最終在圏地から災害予測地に居た可能性を判断することに意義がある場合が多い。
現況報告サーバ20が当該機能を有することによって、災害によって通信が不可能となってしまった場合などであっても、被災予測地に居た可能性について判断でき、ペアリング先に対して迅速に情報を提供することが可能となる。
簡易現況報告部26は、被災者移動機端末10の使用者が災害予測地に居る可能性がある旨の報告であるところの簡易現況報告をペアリング先に送信する機能を有する。具体的には、簡易現況報告部26は簡易現況判断部22が災害予測地内に在圏していると判断した被災者移動機端末10及び最終在圏地判断部25が災害予測地内に在圏している可能性が高いと判断した被災者移動機端末10と関連付けられたペアリング先についての情報をペアリング情報保持部23を参照することで得る。ペアリング先ヘの連絡方法として、どのような方法(メール又は電話による伝言メッセージ等)が登録されているかをペアリング情報から取得する。連絡方法として「メール」が登録されている場合には、メールアドレスに簡易現況報告を送信する。連絡方法として「電話による伝言メッセージ」が登録されている場合には、電話番号に電話を掛けて予め録音された伝言メッセージを流す。
簡易現況報告のメール送信に成功した場合に簡易現況報告部26は、ペアリング情報保持部23に保持された該当するペアリング先のレコードの属性「簡易現況報告完了有無」を“有”に書き換える。メール送信に失敗した場合に簡易現況報告部26は、ペアリング情報保持部23に保持された該当するペアリング先のレコードの属性「簡易現況報告完了有無」を“無(再送)”に書き換える。
簡易現況報告部26は、ペアリング先のレコードの属性「簡易現況報告完了有無」が“有”である場合には当該ペアリング先にはメールの送信をしない。簡易現況報告部26は、ペアリング情報保持部23が保持する全てのペアリング先レコードの属性簡易現況報告完了有無が「有」になるまで当該ペアリング先へのメール送信を繰り返す。但し、繰り返し回数、又は初めて送信をした時刻から一定の時間を設定し、それら回数又は時間が超過した場合にはそれ以上メールを送信しないとしても良い。
簡易現況を報告する手段はメールに限らず、電話による伝言メッセージでも良い。そのようにすることでメールの操作が苦手な親戚なども簡易現況報告を受け取る事が可能となる。電話による伝言メッセージの場合には、予めメッセージ内容を複数種類録音しておき、災害時には登録されている電話番号に自動的に電話を掛け、ペアリング先が電話に出た場合に予め録音しておいたメッセージを流す。
また、簡易現況報告部26は、ペアリング先に簡易現況報告を送信すると同時に被災者移動機端末10に対して簡易現況報告を送信する機能を有する。
現況送信サーバ20が当該機能を有することによって、被災者が災害の発生を知り災害に備えることが可能となる。一方で、被災者移動機端末10が簡易現況報告を受信することが、被災者移動機端末10による現在位置の自動計測の開始誘因となる。
現在位置情報取得部27は、被災者移動機端末10が自動計測した被災者移動機端末10の現在位置情報を被災者移動機端末10から受信する機能を有する。受信する情報は、具体的には被災者移動機端末10の現在位置を特定する経度及び緯度、並びに被災者移動機端末10を特定する識別子(電話番号など)である。現在位置情報取得部27は、取得した被災者移動機端末10の現在位置情報を詳細現況判断部29に送る。
一方で、移動機端末が圏外である場合に現在位置情報取得部27は、被災者移動機端末10から現在位置情報を受信することはできない。その場合に現在位置情報取得部27は、最終在圏地判断部25を参照して簡易現況判断部22で説明した方法で被災者移動機端末10の最終在圏地を取得し、当該取得した最終在圏地を形成する基地局の存在位置を現在位置情報として詳細現況判断部29に送る。
現況報告サーバ20が当該機能を有することによって被災者移動機端末10の現在における正確な位置情報を得ることが可能となり、後述する詳細現況報告の正確さを更に向上させることができる。
災害情報取得部28は、被災地に関する情報である被災地情報と、当該被災地における規模に関する情報である規模情報と、を災害情報提供サーバ55から取得する機能を有する。災害情報取得部28は、取得した災害情報を詳細現況判断部29に送る。現況報告サーバ20が当該機能を有することによって、詳細な災害情報を詳細現況報告に含めることが可能となり、詳細現況情報を更に正確なものとすることができる。
詳細現況判断部29は、被災者移動機端末10の現在位置情報を現在位置情報取得部27から受取り、被災地情報及び規模情報を含む災害情報を災害情報取得部28から受取る。そして、詳細現況判断部29は、被災者移動機端末10の現在位置情報と、被災地情報と、当該被災地情報と関連付けられた規模情報と、から被災者移動機端末10の現在位置における実際の災害規模を判断する機能を有する。
具体的には被災者移動機端末10の現在位置を含む被災地情報が存在するか否かを判断し、被災地情報に被災者移動機端末10の現在位置が含まれる場合には、当該被災地情報と関連付けられた災害規模を判断する。当該判断された災害規模を実際に被災者移動機端末10が存在した場所における災害規模とする。本実施形態においては災害規模とは震度で表示される。
被災者移動機端末10の現在位置が被災地情報に含まれていない場合には、実際に被災者移動機端末10が存在している場所において災害は生じていなかったものと判断できる。本実施形態においては震度0を示す。言い換えれば被災者移動機端末10が存在している場所において現実には地震は発生しなかったものと判断できる。
詳細現況判断部29は上記方法によって判断された実際に被災者移動機端末10が存在している場所における災害の規模であるところの震度を、被災者を特定する情報と関連付けて詳細現況報告部30に送る。被災者を特定する情報とは例えば電話番号を用いることができる。
上記方法により、当該被災者の現在位置における災害規模が微細なもの(例えば震度1、2或いは3程度)であると判断された場合、若しくは上記方法によって現実には災害は生じていないと判断された場合であっても、簡易現況報告が送信されているペアリング先に対しては詳細現況報告を送信することが好適である。そうすることで、簡易現況報告を受信して、親戚などの現況を心配するペアリング先がいち早く実際の被災現況を知ることとなり安心することとなる。
詳細現況報告部30は、詳細現況判断部29が判断した被災者移動機端末10の現在の存在場所における実際の災害規模を被災者移動機端末10と関連付けられたペアリング先に送信する機能を有する。
具体的には、被災者を特定する情報と、被災者と関連付けられた実際に被災者移動機端末10が存在している場所における災害の規模であるところの震度と、を詳細現況判断部29から受取る。また、ペアリング情報保持部23に保持された被災者と関連付けられたペアリング情報を参照することで通知方法(メール或いは電話)、及び通知先(メールアドレス又は電話番号)を得る。通知方法が“メール”であった場合は、メールによって実際の震度を送信する。通信方法が“電話(伝言メッセージ)”であった場合は、該当する電話番号に電話をし、電話に出た場合には予め作成してあるメッセージを流す。
詳細現況報告のメール送信に成功した場合に詳細現況報告部30は、ペアリング情報保持部23に保持された該当するペアリング先のレコード中の属性「詳細現況報告完了有無」の値を“有”に書き換える。メール送信に失敗した場合に詳細現況報告部30は、ペアリング情報保持部23に保持された該当するペアリング先のレコード中の属性「詳細現況報告完了有無」を“無(再送)”に書き換える。
詳細現況報告部30は、ペアリング先のレコード中の属性「詳細現況報告完了有無」が“有”である場合には当該ペアリング先にはメールの送信をしない。詳細現況報告部30は、ペアリング情報保持部23が保持する全てのペアリング先レコードの属性「詳細現況報告完了有無」が“有”になるまで当該ペアリング先へのメール送信を繰り返す。但し、繰り返し回数、又は初めて送信をした時刻から一定の時間を設定し、それら回数又は時間が超過した場合にはそれ以上メールを送信しないとしても良い。
図4は、ペアリング先移動機端末70の機能構成図である。ペアリング先移動機端末70は、被災者移動機端末10が登録し、或いは親戚として自動的に登録された移動機端末である。ペアリング先移動機端末70は、簡易現況報告取得部75、表示部76、詳細現況報告取得部77、入力判断部78及び通信部79を含んで構成される。
簡易現況報告取得部75は、現況報告サーバ20における簡易現況報告部26が送信した簡易現況報告を受信する機能を有する。簡易現況報告取得部75は、受信した簡易現況報告を表示部76に送る。
ペアリング先移動機端末70が、当該機能を有することによって、現況報告サーバ20が送信した簡易現況報告を受信することができることとなり、被災者となる可能性のある者の親戚などは、地震の発生以前或いはそれとほぼ同時に親戚などが被災者となる可能性があることを知ることができ、いち早く次に取るべき行動に移ることが可能となる。
表示部76は、簡易現況報告取得部75が受信した簡易現況報告を表示する機能を有する。図12及び図13にディスプレイの表示例を示す。図12は、簡易現況報告を受信した時点でのペアリング先移動機端末70のディスプレイの表示例を示す。図12に示すように表示部76は、被災した可能性のある者を識別する情報と災害発生時に在圏していた領域とを表示する。
ペアリング情報として通知方法が“電話(伝言メッセージ)”と設定されていた場合には、ペアリング先は現況報告サーバ20から電話を受けることとなる。その場合に表示部76と同等の機能は音声によって達成される。つまり、ペアリング先が現況報告サーバ20からの電話に出ると例えば「このメッセージは○×さんが設定した方への自動配信です。○×さんのいるエリア付近●●で強い地震が発生しました。今後の情報に注意してください。」とのテープ音が流れるようになっている。
図13は、現況報告サーバ20における簡易現況判断部22が対象とする移動機端末が被災予測地に在圏していることを確認できず(後述の図8におけるステップS201において“NO”)、且つ最終在圏地判断部25が対象とする移動機端末の最終在圏地が被災予測地に含まれると判断した(後述の図8におけるステップS206において“YES”)場合に、簡易現況報告部26が簡易現況報告を送信した場合のペアリング先移動機端末70における表示の例を示す。
この場合は対象となる移動機端末の最終在圏地が被災予定地に含まれているがその後例えば電源を切ったまま別の場所に移動したことなどもあり得る等のため現在の在圏地が被災予定地に含まれる場合と比較して実際に移動機端末が被災予定地内に存在している可能性は低い。従って、表示内容は「可能性がある」との表示となる。それ以外の点については図12の説明で述べたことと同様である。
表示部76は更に、以下に述べる詳細現況報告取得部77が受信した詳細現況報告を表示する機能を有する。図14にディスプレイの表示例を示す。
図14に示すように、表示部76は、被災者の名前、被災地、規模情報としての震度及び次に取るべき行動のリストを表示する。
詳細現況報告における被災地領域は、簡易現況報告における被災地予測における領域よりも狭い(すなわち領域数が多い)。本実施形態では、市町村ごとの領域設定を用いている。
ペアリング情報として通知方法が“電話(伝言メッセージ)”と設定されていた場合にも同様である。ペアリング先が現況報告サーバ20からの電話に出ると例えば「このメッセージは○×さんが設定した方への自動配信です。○×さんのいる大田区エリア付近では震度6が観測されています。メッセージを残す方は発信音の後にメッセージを録音してください。」とのテープ音が流れるようになっている。
ペアリング先移動機端末70が、このような機能を備えることにより、被災者となる可能性のある者の親戚などは、地震の発生以前或いはそれとほぼ同時に親戚などが被災者となる可能性を知ることができ、いち早く次の取るべき行動に移ることが可能となる。
詳細現況報告取得部77は、現況報告サーバ20における詳細現況報告部30が送信した詳細現況報告を受信する機能を有する。詳細現況報告取得部77は、受信した詳細現況報告を表示部76へ送る。
ペアリング先移動機端末70が、当該機能を有することによって、現況報告サーバ20が送信した詳細現況報告を受信することができることとなる。それにより、簡易現況報告を受信した被災者となる可能性のあった者の親戚などは、簡易現況報告に続けて詳細な情報を得ることが可能となり、当該報告を次に取るべき行動の参考とすることができる。
入力判断部78は、ペアリング先が取るべき対応リストの何れかがペアリング先によって選択されたか否かを判断する機能を有する。具体的にはカーソル、十字キー或いはタッチパネル等あらゆる公知のポインティングディバイスを用いることができる。更にキーボード或いは10キー等でも勿論良い。
通信部79は、入力判断部78によって判断された入力に対応する通信を行う機能を有する。具体的には、ペアリング先が「電話をする」と入力した場合にはペアリング先移動機端末70は自動的に対象とする被災者の電話番号に電話をかける。ペアリング先が「メールする」を選んだ場合にはペアリング先移動機端末70は自動的に対象とする被災者のアドレスが設定されたメール返信機能を起動させる。
ここで、一般回線を通じて被災地に存在する移動機端末に対して電話をかける或いはメールを送信する場合について述べる。大規模災害が発生した場合に図示しない災害用メールサーバ及び災害用メッセージ録音サーバを設置する。
災害用メールサーバ及び災害用メッセージ録音サーバは被災地から離れた場所に設置されている。被災地において通話が出来ない或いは通信が混んでいる場合には自動的に災害用メッセージ録音サーバに通話を繋げるようにする。通話者の声が録音され録音された内容は通話相手(被災者)が災害用メッセージ録音サーバに接続することでいつでも確認することができる。
本実施形態では災害用メッセージ録音サーバはペアリング情報を保持しており、ペアリング先から被災者への通話であった場合には詳細現況報告の内容が流されても良い。又は、被災者の設定によってはペアリング先以外の第三者からの電話に対しても詳細現況報告の内容が流されても良い。
通信が不通となる原因として、通信回線の輻輳、基地局の倒壊、移動機端末の電池切れ等様々な要因が考えられる。これらの場合には親戚などが被災者に対してメールを送っても被災者はメールを確認することができない。
そのため、震災時に災害用メールサーバを設置する。このメールサーバは東日本旅客鉄道株式会社等無線を利用しない強いインフラ(即ち強い専用線)を持つ業者のサーバと接続されており、震災時には専用線を利用して被災者にメールを送信する。例えば東日本旅客鉄道株式会社のサーバと接続している例を説明する。ペアリング先から災害用メールサーバにメールをする。当該メールは、東日本旅客鉄道株式会社のインフラを利用し転送され、被災地付近でメールの送付先である被災者がSuica(登録商標)に移動機端末を触れるとメールの内容が携帯電話に送信される。又は、Suica(登録商標)のディスプレイにメールの内容を表示しても良い。これによってたとえ無線基地局が震災などで倒壊した場合であっても被災者にメールを送信することができるようになる。
また、充電器が破損する、或いは電気が通じない等の原因により携帯電話の充電ができなくなる事態も考えられるが、この場合はFelica(登録商標)の電磁誘導を用いて認証を行い、メールの内容の表示は改札ディスプレイに表示することでメールの内容を確認することができるようになる。
図14に記載されたペアリング先が取るべき対応リスト中の「メッセージを残す」とは、一般回線を通じて被災地内に存在する移動機端末に電話をかける場合に災害用メッセージ録音サーバに接続する対応である。電話が不通であることが事前に分かっている場合などに有効である。
ペアリング先が取るべき対応リスト中の「災害用メールサーバにメール送信」という対応があっても良い。無線通信が利用不可能であることが分かっている場合に有効である。
図5に現況報告サーバ20のハードウェア構成図を示す。図5に示すとおり移動機端末は物理的には、CPU101と、主記憶装置であるRAM102及びROM103と、通信を制御する通信モジュール104と、フラッシュメモリーなどの補助記憶部105と、キーボードなどの入力装置106と、LCDや有機ELディスプレイなどの出力装置107とを含んで備える。移動機端末の各機能は、CPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール104、出力装置107、入力装置106を動作させると共に、RAM102や補助記憶部105におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。移動機端末のハードウェア構成も同様である。
次に、図7を用いて被災者移動機端末10における処理の流れについて説明する。簡易現況報告取得部11は、現況報告サーバ20における簡易現況報告部26が送信した簡易現況報告を受信する(ステップS100)。現在位置計測部12は、簡易現況報告取得部11が簡易現況報告を受信すると現在位置を自動計測する(ステップS101)。現在位置送信部13は、現在位置計測部12が計測した現在位置を現況報告サーバ20に送信する(ステップS102)。
次に、図8を用いて現況報告サーバ20における処理の流れを説明する。災害予測情報取得部21は、被災地予測情報と規模予測情報とを含む災害予測情報を災害予測提供サーバ50から受信する(ステップS200)。簡易現況判断部22は、災害予測情報取得部21が受信した被災地予測情報と、HLR57が保持する被災者移動機端末10の現在における在圏情報と、から被災者移動機端末10が災害予測地内に在圏しているかを判断する(ステップS201)。
ステップS201において、被災者移動機端末10が災害予測地内に在圏していると判断した場合(ステップS201にて“YES”)に、簡易現況報告部26は、ペアリング情報保持部23を参照することにより被災者移動機端末10と関連付けられたペアリング情報を得て、被災者移動機端末10の使用者が災害予測地内に居る可能性がある旨の報告である簡易現況報告をペアリング先に送信し、同時に同趣旨の報告を被災者移動機端末10に対しても送信する(ステップS202)。
現在位置情報取得部27は、被災者移動機端末10が送信した被災者移動機端末10の現在位置情報を受信する(ステップS203)。災害情報取得部28は、災害情報提供サーバ55から実際の被災地情報と規模情報とを含む災害情報を取得する(ステップS204)。
詳細現況判断部29は、ステップS203で取得した被災者移動機端末10の現在位置情報と、ステップS204で取得した被災地情報と、当該被災地情報と関連付けられた規模情報と、から被災者移動機端末10の現在位置における実際の災害規模を判断する(ステップS205)。
詳細現況報告部30は、ステップS205で判断された被災者移動機端末10の現在位置における実際の災害規模を被災者移動機端末10と関連付けられたペアリング先に送信する(ステップS206)。
次に、被災者移動機端末10が災害予測地内に在圏していないと判断した場合(ステップS201にて“NO”)に、最終在圏地判断部25は、最終在圏地情報保持部24を参照することにより被災者移動機端末10が最後に在圏していた在圏地である最終在圏地を得て、当該最終在圏地が災害予測地内か否かを判断する(ステップS207)。
被災者移動機端末10が最後に在圏した位置が災害予測地外であると判断した場合は(ステップS207にて“NO”)、処理を中断する。
被災者移動機端末10が最後に在圏した位置が災害予測地内であると判断した場合に(ステップS207にて“YES”)、簡易現況報告部26は、被災者移動機端末10の使用者が被災予測地内に居た可能性がある内容の簡易現況報告を被災者移動機端末10と関連付けられたペアリング先に対し送信する(ステップS208)。
災害情報取得部28は、災害情報提供サーバ55から被災地情報と規模情報とを含む災害情報を取得する(ステップS209)。詳細現況判断部29は、ステップS207で取得した被災者移動機端末10の最終在圏地と、ステップS209で取得した被災地情報と、当該被災地情報と関連付けられた規模情報と、から実際の災害現況を判断する(ステップS210)。
詳細現況報告部30は、ステップS210で判断した詳細な現況を被災者移動機端末10と関連付けられたペアリング先に送信する(ステップS206)。
次に、図9を用いてペアリング先移動機端末70における処理の流れについて説明する。簡易現況報告取得部75は、現況報告サーバ20における簡易現況報告部26が送信した簡易現況報告を受信する(ステップS700)。
表示部76は、簡易現況報告取得部75が受信した簡易現況報告を表示する(ステップS701)。詳細現況報告取得部77は、現況報告サーバ20における詳細現況報告部30が送信した詳細現況報告を受信する(ステップS702)。表示部76は、詳細現況報告取得部77が受信した詳細現況報告と、ペアリング先が取るべき対応リストと、を表示する(ステップS703)。
ペアリング先が取るべき対応リストとは例えば「電話をする」、「メールする」或いは「メッセージを残す」である。詳細現況報告を送信する方法がメールであった場合には、メールの本文にハイパーリンクを張った文字を表示するようにする。
入力判断部78は、ペアリング先が取るべき対応リストの何れかがペアリング先によって選択されたか否かを判断する(ステップS704〜S706)。通信部79は、ステップS704〜706によってペアリング先が何れかの対応を選択した場合に夫々対応する通信を行う(ステップS707〜709)。
次に図15及び図16を用いて簡易現況報告と詳細現況報告との関係を説明する。図15は簡易現況報告において用いられる領域と詳細現況報告で用いられる領域との関係を模式的に示す図である。簡易現況報告において用いられる領域は本実施形態では日本を200領域に分割している。それに対し詳細現況報告において用いられる領域はそれよりも細かい(領域数が多い)領域を用いており、本実施形態では市町村程度の領域を用いている。
図16は、簡易現況報告と詳細現況報告との関係を説明するための表である。図16におけるユーザa〜ユーザdは図15におけるユーザa〜ユーザdと対応している。
この例において簡易現況報告では広い(領域数が少ない)領域を用いているためユーザa〜ユーザcまでは同じ領域内(東京都東部)に含まれており、震度情報は同じ震度6である。
この場合ユーザa〜ユーザcに対応付けられたペアリング先には同じ内容(震度6)の簡易現況報告が送信される。このような簡易現況報告によってペアリング先はいち早くユーザa〜ユーザcが被災予測地に居ることの可能性が高いことを知ることができる。
図16に示す表中の属性「位置情報」とは、本実施形態で詳細現況報告において用いられる被災者移動機端末10の現在位置を示す。図16に示したように被災者移動機端末10が何れかの在圏地に在圏している場合には現在位置はGPS情報を用いて取得される。被災者移動機端末10が圏外となっている場合には当該被災者移動機端末10の最終在圏地に対応する基地局の位置情報を用いる。
詳細現況報告で用いられる領域は簡易現況報告で用いられる領域より狭く(領域数は多い)本実施形態においては市町村程度である。そのため簡易現況報告段階では同一の領域(東京都東部)に属していたユーザa〜cも、詳細現況報告段階では別々の領域(大田区、千代田区及び文京区)に属することとなる。
簡易現況報告で用いられる領域分割では同じ領域に含まれる地点において実際の震度は大きく異なる場合があり得る。図16で示した例ではユーザaが属する大田区と、ユーザcが属する文京区と、では簡易現況報告で用いる領域区分では同じ東京都東部に属しており簡易現況報告段階では同じ震度(震度6)であるとして扱われる。しかし、詳細現況報告段階ではユーザaが属する大田区は震度6であり、ユーザcが属する文京区は震度が3とする。
このことは、ユーザaと関連付けられたペアリング先の立場では詳細現況報告によってユーザaが居る大田区の震度は6であると知ることとなる。ペアリング先は次にとる行動として、すぐにでも電話連絡を取るべきであると考えることができる。一方ユーザcと関連付けられたペアリング先の立場では詳細現況報告によってユーザcが居る文京区の震度は3であると知ることとなる。簡易現況報告が届き、次なる情報を一刻も早く知りたいと望むペアリング先は「震度3ならおそらく大丈夫であろう」との安心を得ることとなる。ペアリング先は次に取る行動として、直ちに電話連絡を取る必要は必ずしもなく、メールを送信すれば良いと考えることができる。
次に本実施形態の作用・効果について述べる。本実施形態によれば、簡易現況報告部26が簡易現況報告を送信し、続いて詳細現況報告部30が詳細現況報告を送信して、ペアリング先移動機端末70の使用者は災害発生以前或いはそれとほぼ同時に、災害予測に基づいた簡易現況報告を受信することができるため、ペアリング先移動機端末70の使用者は被災者移動機端末10の使用者が被災予想地に居る可能性があることを直ちに知ることとなる。また、被災地情報、規模情報及び被災者移動機端末10の現在位置情報に基づいて判断された詳細現況報告を送信することで、ペアリング先移動機端末70の使用者は被災者移動機端末10の使用者の現在位置での実際の災害現況を知ることとなる。それによりペアリング先移動機端末70の使用者は次に取るべき行動を決めることが可能となる。
また、本実施形態における現況報告サーバ20の最終在圏地判断部25が最終在圏地から被災者移動機端末10の存在場所を判断するため、例えば移動機端末の故障、電池切れ等によって圏外である場合であっても、最終在圏地判断部25が最終在圏地から被災者移動機端末10の使用者が被災予測地内に存在するか否かを判断し、被災者移動機端末10の使用者が被災予測地内に居た可能性がある情報をペアリング先移動機端末70に送信することが可能となる。
また、被災者移動機端末10における現在位置計測部12がGPSを用いて現在位置を測定するため、被災者移動機端末10の現在位置をより正確に把握することができる。そのことにより他のユーザはより正確な詳細現況報告を得ることが可能となる。
10…被災者移動機端末、21…災害予測情報取得部、22…簡易現況判断部、23…ペアリング情報保持部、24…最終在圏地情報保持部、25…最終在圏地判断部、26…簡易現況報告部、27…現在位置情報取得部、28…災害情報取得部、29…詳細現況判断部、30…詳細現況報告部、50…災害予測提供サーバ、55…災害情報提供サーバ、70…ペアリング先移動機端末。