JP4931603B2 - 酵素の安定化 - Google Patents

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Description

本発明は、酵素の安定化に関する。特に、安定化された酵素構造を生成する方法、安定化された酵素構造、および当該安定化された酵素構造の使用に関する。
酵素は、一般に、化学産業、製薬産業、美容産業等の各種産業において触媒として必要とされている。しかし化学触媒とは異なり、酵素は不安定であるため、その用途および貯蔵寿命が限られている。酵素は、温度およびpHに非常に左右されるため、多くの処理において使用が困難である。また、可溶性酵素は水性媒体からの回収が容易でなく、概して貯蔵中または処理中に酵素の活性度が低下するため、化学処理における触媒としての酵素の用途を制限してしまう。
酵素を固定化することで、触媒としての酵素の商業的使用を拡大することができる。酵素を固定化すると、酵素がより堅くなるため(酵素が固体相上または固体相中に固定されるため)その安定度が増し、また触媒の全体的な寸法が大きくなることで回収が簡単になるという二重の効果が得られる。
したがって、酵素の安定化および酵素を再利用可能にすることによるコスト削減の目的で、酵素を固体担体上に固定するということは、一般に実践されている。しかし酵素の固定化には限界がある。最も重要なのは、活性触媒(酵素)となるのは固定化された容量のうちのほんの僅かな部分であるため、反応器の容量単位当たりの酵素の活性度が低下するということである。本出願人は、架橋化酵素結晶(CLEC:cross−linked enzyme crystals)および架橋化酵素縮合体(CLEA:cross−linked enzyme agglomerates)の形態を取る自立した固定化酵素についても認識している。どちらに関しても、特定の活性の増大が主張されてきた。また、CLECおよびCLEAの架橋化酵素は反応媒体中で安定しており、抽出および再利用が容易である。時間のかかる結晶化のプロトコルが必要なCLECに比べ、CLEAは、費用が少なくより効率的な方法を提供するようである。しかし、CLECおよびCLEAの両方とも、酵素のいくつかの活性部位が露出しておらず、CLEAおよびCLECのいずれかを利用する処理では、この点を埋め合わせるべく、一定の機能を得るため過剰な酵素触媒(およびそれに伴うコスト増大)が必要となるという点で限界がある。さらに、これらの処理では、広範囲にわたる粒子寸法に関して、粒子の寸法および形態の制御が容易ではない。
したがって、本発明の目的は、触媒としての使用に好適な安定化された酵素構造を生成する方法を提供し、それによってこれらの欠点を少なくとも緩和することである。
本発明の第1の観点によると、酵素粒子を生成する方法であって、
第2の液相中に分散した第1の液相の液滴のエマルジョンであって、片方の液相が親水相で他方の液相が親水相と混和しない疎水相であり、且つ液滴と第2の液相との境界面または境界面内に酵素分子が位置しているエマルジョンを用意する工程と、
親水相および/または疎水相および/またはエマルジョンに架橋剤を加える工程と、
一時的な保護剤を親水相および/または疎水相および/またはエマルジョンに加える工程と、
各液滴の酵素分子を架橋剤により架橋化して粒子を形成し、架橋化中に酵素の活性部位を占拠する一時的な保護剤により、架橋剤による活性部位の占拠または架橋剤と活性部位との反応を阻止して、個々の液滴から、酵素分子における活性部位の大部分が粒子の内腔または粒子の外側を向いた状態で酵素分子が固定化されている安定した酵素粒子をそれぞれ形成する工程と、
第2の液相から個々の酵素粒子を回収する工程と、 を含んでいることを特徴とする方法が提供される。
この方法は、酵素分子を架橋化する工程は架橋剤を用いて実行される。したがって、この方法は、親水相および/または疎水相および/またはエマルジョンに架橋剤を加える工程を含んでいる。酵素を相界面に配向させるために、エマルジョンが形成された後で十分な時間が経過してから架橋化が起こるように架橋剤を選択するのが一般的である。
架橋剤は、使用された場合に多機能性の試剤となる。すなわち、酵素上の基と反応して架橋化高分子、つまり安定化された粒子、を形成することができる2以上の官能基または反応部位を有する分子となる。架橋剤は以下から選択してよい。ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトルエンジイソシアネート等のイソシアネート、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、およびグリオキサール等のアルデヒド、エポキサイド、無水物、その他。各種の架橋化試剤を使用することで、球体の物理的および/または化学的特性を変えることも可能となる。
また、この方法は、架橋化中に酵素の活性部位を占拠する一時的な保護剤を加えることによって、活性部位を架橋化剤による占拠または架橋化剤との反応から保護している。リパーゼの場合、この保護剤はたとえばトリブチリンであってよい。トリブチリンは水溶性であり、後で水中洗浄により容易に除去することができる。(特定のクラスに属する)特定の酵素は、架橋化中の活性度の損失を最小化するかまたは防ぐのに必要となる保護剤が異なる。
さらに、この方法は、たとえば浮遊、濾過、遠心、磁気等を用いて、第2の液相から安定化された酵素粒子を回収または分離する工程を含んでいる。このようにして回収された、安定化された酵素粒子は、必要に応じて洗浄してもよく、またその後に必要に応じて乾燥させてもよい。安定化された酵素粒子は、噴霧乾燥、減圧乾燥(vacuum drying)、または凍結乾燥の方法により乾燥されてよい。
エマルジョン中において、不混和性の第1の液相の液滴は通常球体であるため、当該構造は中空の球体形状となり、その球体構造の内側または内部は空であるか充填状態であるかのいずれかである。すなわち、各酵素構造は、架橋化および固定化された酵素分子の球状壁と、中空の中心、芯、または内部とから構成される。中空の中心、芯、または内部は空であってもよいし液体を含んでいてもよい。つまり、以下で説明するように充填状態であってもよい。
本発明の一実施形態によると、液相が構造を出入りできるように個々の構造が開口を有していてもよい。しかし、本発明の他の実施形態によると、構造が液体不透過性であってもよい。つまり、第1の液相を内部に閉じ込めた、すなわちその中空の芯が第1の液相で満たされているカプセル形状であってよい。液体の反応体系において、たとえば反応体系を触媒するためにこのような安定化された酵素カプセルを用いた場合、適切な密度を有する第1の液相を選ぶことにより、たとえば浮遊法(flotation)によって酵素カプセルを反応体系の他の成分から容易に切り離すことができる。しかし、そのような体系で用いる場合、必ずしも浮遊法によってそれらを分離しなければならないわけではない。なぜなら、安定化された酵素構造は自己支持型(self−supporting)であるという事実は、それらを反応体系の他の成分から分離してリサイクルまたは再利用するのが容易であるということを意味するからである。
酵素分子は、親水性の端または面および疎水性の端または面の両方を含んでいることが多い。そのような酵素を使用した場合、液滴と第2の液相との境界面における酵素の収集および/または配向が促進または確保される。そのような特性を高めるために自然の酵素を改質してもよい。親水相および/または疎水相および/またはエマルジョンに対して、疎水度および/または酵素の電荷を変えるための添加剤を加えてもよい。この目的で使用され得る添加剤または改質剤(modifier)の例として、特定のアミノ酸、アミノ化合物、プロテイン、長鎖炭化水素アルデヒド、および、共有結合するかまたは酵素に結合する他の改質剤が挙げられる。
酵素は、エステラーゼ、プロテアーゼ、ニトリラーゼ、ニトリルヒドラターゼ、オキシニトリラーゼ、エポキサイドヒドロラーゼ、ハロヒドリンデハロゲナーゼ、ポリフェノールオキシダーゼ(たとえばラッカーゼ)、ペニシリンアミダーゼ、アミノアシラーゼ、ウレアーゼ、ウリカーゼ、リゾチームアスパラギナーゼ、エラスターゼ等の酵素クラスから選択可能であるが、好ましくはリパーゼである。
リパーゼは、微生物、動物、または植物起源のものから選択可能であり、以下のうちいずれかを含む。シュードモナス・セパシアリパーゼ(Pseudomonas cepacia lipase)、シュードモナス・フルオレッセンスリパーゼ(Pseudomonas fluorescens lipase)、シュードモナス・アルカリゲネスリパーゼ(Pseudomonas alcaligenes lipase)、カンジダ・ルゴサリパーゼ(Candida rugosa lipase)、カンジダ・アンタークチカリパーゼA(Candida antarctica lipase A)、カンジダ・アンタークチカリパーゼB(Candida antarctica lipase B)、カンジダ・ウチリスリパーゼ(Candida utilis lipase)、サーモマイセス・ラヌギノサリパーゼ(Thermomyces lanuginosus lipase)、リゾムコール・ミエヘイリパーゼ(Rhizomucor miehei lipase)、アスペルギルス・ニガーリパーゼ(Aspergillus niger lipase)、アスペルギルス・オリゼリパーゼ(Aspergillus oryzae lipase)、ペニシリウム種リパーゼ(Penicillium sp lipase)、ムコール・ジャバニカスリパーゼ(Mucor javanicus lipase)、ムコール・ミエヘイリパーゼ(Mucor miehei lipase)、リゾプス・アルヒザスリパーゼ(Rhizopus arrhizus lipase)、リゾプス・デレマーリパーゼ(Rhizopus delemer lipase)、リゾプス・ジャポニクスリパーゼ(Rhizopus japonicus lipase)、リゾプス・ニベウスリパーゼ(Rhizopus niveus lipase)、および豚膵臓リパーゼ(Porcine Pancreatic lipase)。
リパーゼを用いる場合、特に、加水分解、酸分解、加アルコール分解、エステル化(esterification)、エステル転移(transesterification)、エステル交換(interesterification)、加アンモニア分解(ammoniolysis)、アミノ分解(aminolysis)、および過加水分解(perhydrolysis)の反応において、安定化されたリパーゼ構造を使用可能である。他の反応機構においては、その作用に応じて、他の酵素クラスを使用する。
より詳細には、酵素を親水相(本願明細書では「水相」または単に「W」とも称する)に溶解させるかまたは可溶化させ、そして親水相を含んだ酵素を疎水相(本願明細書では「油相」または単に「O」とも称する)と混合してエマルジョンを形成することにより、エマルジョンを用意してもよい。したがって、エマルジョンは、連続した水または親水相中に油または疎水相の液滴が存在しているO/W型でもよいし、連続した油または疎水相中に水または親水相の液滴が存在しているW/O型でもよく、O/W/O型、W/O/W型、または他の型でもよい。
この方法は、酵素を液滴容量内に強制的に沈殿させる(W/O型エマルジョンの場合)ということを、選択的に行う工程をさらに含んでいてもよい。
安定化された酵素構造または球体の凝集が問題となるのであれば、架橋化後にアミノ酸を加えることでこれを軽減または阻止することができる。これらのアミノ酸は、残留している遊離架橋剤群と反応して、架橋化球体の物理的特性を変えることができる。アミノ酸により球体を改質させると、球体の表面特性を操作することにより、特定の基質に向かう酵素の活性度を高めることも可能となる。アスパラギン酸による改質の結果、球体の親水性が向上したとしても、たとえば架橋化球体にフェニルグリシンを加えて球体の疎水性を向上させてもよい。
必要に応じて、この方法は、たとえば乾燥、凍結乾燥、またはヘキサン、超臨界二酸化炭素(疎水液の場合)、水(親水液の場合)等の適切な溶剤を用いた抽出、により、安定化された酵素構造から第1の液相を抜く工程をさらに含んでいてもよい。したがって、安定化された酵素カプセルから第1の液相(通常は油相)を抜きたければ、第1の液相を溶解することができる有機溶剤を安定化された酵素カプセルに接触させるか、または水中に適切な界面活性剤を混合したものをカプセルに接触させればよい。または、超臨界流体抽出により第1の液相を抜くことも可能である。流体は超臨界二酸化炭素であることが好ましい。二酸化炭素の臨界点(31.2℃、73.8バール)は十分に低いため、抽出処理によって安定化された酵素構造が損傷することはない。
酵素が溶けている親水相は水のみから構成されていてよいが、適切な緩衝剤を含んでいれば、よりよい結果が得られると考えられる。緩衝剤は、酵素の安定性を確保しつつ酵素分子の架橋化を促進するように、選択すべきである。たとえば、親水相は、pH7〜8の緩衝剤溶液から構成されてよい。このような緩衝剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液、Tris−(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(TRIS)緩衝剤を含んだ水溶液、またはKHPO/NaOH溶液であってよい。
あるいは、親水相はポリエチレングリコール(PEG)を含んでいるかポリエチレングリコール(PEG)から構成されていてよい。PEG400またはPEG100等の分子量の低いポリエチレングリコールを使用する場合、単独で使用可能である。すなわち、親水相は、分子量の低いポリエチレングリコールから成ることになる。しかし、替わりに、より分子量の高いポリエチレングリコールを任意で使用することもできる。その場合、ポリエチレングリコールは水中に溶解して親水相を形成する。油中水型エマルジョンにおける架橋剤としてイソシアネートを用いる場合、架橋剤は酵素だけではなくPEGとも反応し、強化型の安定化された酵素カプセルの形成を導く。強化型の安定化された酵素カプセルは、内部にヒドロゲルによるサポートを有する、酵素を組み込んだ膜を含む。あるいは、アクリルアミドを重合させて、類似のサポートを形成してもよい。これによってカプセルの機械的強度を向上でき、たとえばせん断力によるダメージへの耐性が増す。
水不混和相、すなわち疎水相は、鉱油、ホホバ油、アボカード油等の油等から構成されてよい。本発明の方法において使用されるエマルジョンは、通常、油中水型すなわちW/O型エマルジョンの形態である。しかし、先に示したように、水中油型すなわちO/W型、油中水中油型すなわちO/W/O型、または水中油中水型すなわちW/O/W型エマルジョンを替わりに用いることも可能である。したがって、たとえば酵素がリパーゼの場合、油中水型エマルジョンを用いて、疎水性であるリパーゼの活性部位の大部分を確実に外向きに配向させ、それにより構造の全実効活性度を増加させてもよい。
さらに、油中水型エマルジョンを使用する場合、第2の酵素を水溶相または親水相に溶解させると有利である。この第2の酵素が液滴/第2の液相界面に蓄積する能力をも有している場合、結果として生成される架橋化酵素構造は両方の酵素を含むことになる。あるいは、界面に蓄積しないように第2の酵素を選択した場合、架橋化酵素構造は、結果として、片方の酵素が構造の主成分となり、第2の酵素は構造内部に閉じ込められるか包含されることになる。このような組合せ型の酵素構造は、たとえば単一の反応工程における多数の反応を触媒するのに用いると有利である。さらに、補助因子または反応媒介物質が、改質されるかまたは別の方法で、液滴に含まれていてもよい。たとえば、球体中の第2の酸化還元酵素を再生するために、球体中に酸化還元酵素および適切な媒介物質が組み込まれていてもよい。
本発明のさらに他の実施形態によると、初期O/W型エマルジョンを形成してもよい。その際、リパーゼをある程度純化する。なぜなら、そこにある不純物は、リパーゼほどには境界面に集まらないからである。この方法は、架橋化を行う前に、エマルジョンを遠心して濃縮エマルジョンと希釈水相とを分離する工程を含んでいてもよい。その後、濃縮エマルジョンを用いて、さらにO/W型エマルジョンを形成してもよい。必要に応じて、この工程を1またはそれ以上の回数繰り返して、リパーゼの純度を高めてもよい。最後の純化工程の後、より低いHLB値を有する界面活性剤を加えることによりエマルジョンを転化してW/O型エマルジョンを形成してもよい。このHLB値は、3〜10、より好ましくは4〜6の範囲内であってよい。これにより、リパーゼの活性部位は、確実に、分散相の液滴の外側に向かって優先的に配向する。その後、上述のようにリパーゼの架橋化を行ってよい。
界面に凝集する酵素を使用し、且つW/O型エマルジョンを使用した場合、水相中に溶解している酵素の濃度を変えることによって、内部の架橋化酵素球体の形態を調節することができる。たとえば、酵素濃度を低くすることにより、中空の酵素球体を形成することができる。また、基質の平均拡散距離が少なくなるため、重量活性度が向上する。
酵素の活性度を高め(後の触媒反応での使用に関する)、エマルジョンの安定性を向上させたい場合は、界面活性剤を使用すればよい。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、高分子、またはこれらのうち2またはそれ以上の混合物であってよい。アニオン性の界面活性剤を使用する場合、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulphate)、ラウレス硫酸ナトリウム(sodium laureth sulphate)、アルキルエーテルスルフェート(alkyl ether sulphate)等のアルキルスルフェート(alkyl sulphate)であってよい。カチオン性の界面活性剤を使用する場合、セトリモニウムクロリド(centrimonium chloride)であってよい。非イオン性の界面活性剤を使用する場合、ポリオキシエチレン(10)イソ−オクチルシクロヘキシルエーテル(Triton X100)またはポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル(ノノキシノール−9)等のエトキシ化アルキルフェノールであってよい。双性イオン性または両親媒性の界面活性剤を使用する場合、デシルベタイン(decyl betaine)であってよい。高分子の界面活性剤を使用する場合、BASF社からPluronicという商品名で入手可能なもの等の、poloxamerとしても知られているエチレンオキシド−プロピレンオキシド−エチレンオキシドトリブロックコポリマーであってよい。あるいは、meroxapolとしても知られている、プロピレンオキシド−エチレンオキシド−プロピレンオキシドトリブロックコポリマーであってよい。
本発明の第2の観点によると、架橋化された酵素分子を備えることで安定した中空の酵素構造であって、酵素の活性部位の大部分が内部または外部のいずれかを向いた状態で酵素が固定化されていることを特徴とする酵素構造が提供される。
この酵素構造は、本発明の第1の観点に関して上に説明したものと同様である。
本発明の第3の観点によると、上述の酵素構造が複数存在している状態で反応媒体に反応を起こして、当該反応が酵素構造による触媒作用を受けるようにする工程を含んでいることを特徴とする、反応の実施方法が提供される。
以下の制限を意図しない実施例および添付の図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
[実施例1](非最適化)
油中水型エマルジョン(water−in−oil emulsion)からの架橋化され安定化されたリパーゼ球体(構造)
195gのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液(pH7.8)および5gの鉱油(カストロール)に対して、1gのAmano AKの酵素を加えた。次に、シルバーソンL4R試験室用ロータステータホモジナイザを用いて、6000rpmで5分間、この混合物を均質化した。そのエマルジョンに、1.5gのヘキサメチレンジイソシアネート(Merck Schuchardt)を加えた。このエマルジョンを室温で2時間撹拌した。その後、0.45μmの濾紙で濾過することによって架橋化された酵素構造を回収し、50mlのPBSでの洗浄を5回行った(合計250mlのPBS)。図1は、この方法によって得られた、代表的な安定化酵素球体または構造を示す。レーザー光散乱(Malvern Mastersizer 2000)により粒径を測定し、ザウター平均粒径の平均値49.4μmを得た(図2を参照)。
Vorderwulbecke,T.、Kieslich,K.、およびErdmann,H.(1992)によってEnzyme Microb.Technol.,14,631〜639の『Comparison of lipases by different assays』に記述されているように、また、Lopez−Serrano P.,Cao L.,van Rantwijk&Sheldon R.A.(2002)によってBiotechnology Letters.,24,1379〜1383の『Cross−linked enzyme aggregates with enhanced activity:application to lipases』に記述されているように、p−ニトロフェニルアセテート定量法を用いて安定化酵素(リパーゼ)構造の活性度を測定した。
この定量法では、脂肪酸p−ニトロフェニルエステルからのp−ニトロフェノールの解放を測定する。化学反応は、37℃、pH7.4で行われ、遊離したp−ニトロフェノールを410nmと測定する。得られた活性度は、リパーゼ1g当たり63Uであった(U:μmol/min)。
[実施例2]
油中水型エマルジョンからの架橋化または安定化されたリパーゼ球体(構造)
100mMのTris−Cl(Tris (hydroxymethyl) aminomethane)緩衝液(pH8.0)中でカンジダ・ルゴサリパーゼ(Candida rugosa lipase)(アトラス・バイオロジクス社)を、最終濃度が100mg/mlとなるまで再懸濁することにより、リパーゼ溶液を調製した。アミコン限外濾過セルに10Kポリエーテルサルホン膜(マイクロセップ社:PO Box 391647,Bramley 2018,南アフリカ)を取り付けたものを用いて、この酵素試料を、3倍量の100mMのTris−Cl緩衝液(pH8.0)に対してダイアフィルトレーションした。
以下の試剤を以下の容量だけ用いて、酵素球体を調製した。カンジダ・ルゴサリパーゼ溶液(上記で調製)を200μl、ノノキシノール−4を50μl、トリブチリンを50μl、鉱油を5ml。この混合物を1500rpmで1分間撹拌し、乳状にした。この溶液40μlにグルタルアルデヒド(gluteraldehyde)を加え(25%水溶液)、さらに10分間撹拌した。そのエマルジョンを、4℃で12時間置いておいた。
架橋化後、Beckman J2−21 MEの遠心分離機にJA20.1ロータを取り付けたものを用いて、エマルジョンを10000rpmで5分間遠心分離し、その後、油相を除去した。100mMのTris−Cl緩衝液(pH8.0)10mlで、ペレットを3回洗浄した。そして上述のような遠心分離によりペレットを回収した。洗浄後、ペレットを緩衝液1ml中に再懸濁し、酵素の活性度を調べた。図3は、得られた酵素球体を示す。球体の粒度分布は、約10〜100μmと小範囲であった(図4)。
Vorderwulbecke,T.、Kieslich,K.、およびErdmann,H.(1992)によってEnzyme Microb.Technol.,14,631〜639の『Comparison of lipases by different assays』に記述されているように、また、Lopez−Serrano P.,Cao L.,van Rantwijk&Sheldon R.A.(2002)によってBiotechnology Letters.,24,1379〜1383の『Cross−linked enzyme aggregates with enhanced activity:application to lipases』に記述されているように、p−ニトロフェニルパルミタートおよびp−ニトロフェニルブチラート定量法を用いて、安定化酵素(リパーゼ)構造の活性度を測定した。
この定量法では、脂肪酸p−ニトロフェニルエステルからのp−ニトロフェノールの解放を測定する。化学反応は、37℃、pH8.0で行われ、遊離したp−ニトロフェノールを410nmと測定する。添加剤としてトリブチリンを加えない場合の活性度は、水溶液中で自由な状態であった最初の酵素と比較して、0.11%であった(p−ニトロフェニルパルミタートの場合)。驚くべきことに、添加剤としてトリブチリンを加えた場合の活性度は、水溶液中で自由な状態であった最初の酵素と比較して、約5%(p−ニトロフェニルパルミタートの場合)から124%(p−ニトロフェニルブチラートの場合)の範囲に及んだ。
[実施例3]
架橋剤としてのデキストランアルデヒド
使用した架橋剤が、平均分子量20kDa(dextrab aldehyde)の、リュコノストック(leuconstoc)種由来の活性デキストラン(activated dextran)であった点、油相が植物油であった点、リパーゼ溶液とTris緩衝液との比が1:1であった点、および界面活性剤を使用しなかった点を除き、実施例2と同じことを繰り返した。Hong,T.、Guo,W.、Yuan,H.、Li,J.、Liu,Y.、Ma,L.、Bai,Y.、およびLi,T.によってJournal of Magnetism and Magnetic Materials,269,95〜100の『Periodate oxidation of nanoscaled magnetic dextran composites』に記述されているように(2004)、デキストランを過度のメタ過ヨウ素酸ナトリウムと反応させることによって、デキストランアルデヒドを調製した。得られた活性度は、水溶液中で自由な状態であった最初の酵素と比較して、7.5%(p−ニトロフェニルパルミタートの場合)であった。
[実施例4]
水中油型エマルジョンからの架橋化酵素球体
液相および界面活性剤の割合を変えることにより水中油型エマルジョンを生成した点を除き、実施例2と同じことを繰り返した。
[実施例5]
別の酵素クラス(ラッカーゼ)
Jordaan,J.、Pletschke,B.I.、およびLeukes,W.D.によって、Enz Microb Technol.34,635〜641の『Purification and partial characterization of a thermostable laccase from an unidentified basidiomycete』に記述されているように(2004)、使用した酵素がUD4種のラッカーゼであった点、および、トリブチリンの替わりにシリンガ酸(エタノールにおける飽和溶液)を用いた点を除き、実施例3と同じことを繰り返した。
球体は、100mMのスクシナート・ラクタート緩衝液(succinate−lactate buffer)pH4.5と平衡状態になった。ABTSを基質として25℃で球体を分析し、ラッカーゼの活性度を調べた。また、Jordaan,J.およびLeukes,W.D.(2003)によるEnz Microb Technol.33(2/3),212〜219の『Isolation of a thermostable laccase with DMAB and MBTH oxidative coupling activity from a mesophilic white rot fungus』に記載の方法にしたがい、分光測光法により生成物が420nmであることがわかった。
[実施例6]
タンパク質濃度
実施例2におけるリパーゼの濃度を半分にすると(トリブチリンは加えない)、リパーゼの活性度が重量で100%超増加した。
タンパク質濃度が低下すると(タンパク質濃度が高い場合に比べて)活性度が高まることの説明としては、水/油界面においてタンパク質(本例ではリパーゼ)が優先的に蓄積することが考えられる。これにより、リパーゼ濃度が低いと球体が「中空」となると考えられる。重量当たりで考えると、中空の球体は、反応基質および生成物の平均拡散距離が短くなるため、「充填状態」の球体と比較してより高い活性度を有することが期待される。
[実施例7]
沈殿剤の添加
実施例2のエマルジョン(トリブチリンは加えない)に、沈殿剤としてアセトンを加えると、活性度が114%増加する。
[実施例8]
油相の選択
実施例2の工程(トリブチリンは加えない)において、鉱油に替えて植物油を用いると、活性度が4倍増加するが、生成物溶液からの回収がより困難になる。これは、おそらく加水分解油が存在するためである。
[実施例9]
保護剤の添加
実施例2で議論したように、保護剤としてトリブチリンを加えると、カンジダ・ルゴサリパーゼの活性度が、最初の自由な状態であった酵素濃度と比較して0.14%から5%にまで増加した(p−ニトロフェニルパルミタートの場合)。この「保護剤の能力」は、すべての酵素に対して機能するわけではない。たとえば、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)由来のリパーゼに保護剤としてトリブチリンを加えると、最初の自由な状態であった酵素と比較して、活性度が12倍減少し、4.17から0.35%(p−ニトロフェニルブチラートの場合)となった。
[実施例10]
残留している遊離架橋剤群を結合して凝集を減らす
最終生成物にアミノ酸を加えると、球体の凝集が減少した。これは、球体表面に残留した架橋剤群にアミノ酸が結合したためであると考えられる。驚くべきことに、特にアミノ酸としてフェニルグリシンを使用した場合に、アミノ酸を用いない対照標準と比較して活性度の向上も確認された。実施例2(トリブチリンは加えない)における通常の方法と比較して、リパーゼ球体の活性度が100%向上したことが確認された(p−ニトロフェニルブチラートおよびp−ニトロフェニルパルミタートの両方に基づく)。
[実施例11]
ラッカーゼ架橋化球体のリサイクル
実施例5における方法にしたがってラッカーゼ球体を調製した。球体を、基質としての2,2’−アジノ−ビス−(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウム塩(ABTS)と6度反応させた。各反応の間に回収及び洗浄を行った。この6度のリサイクル作業後のラッカーゼの活性度は、球体の元々の活性度と同等であった。
[実施例12]
ナプロキセンエチルエステル(NEE)を用いたリパーゼ架橋化球体のリサイクル
実施例2における方法にしたがってリパーゼ球体を調製した。40℃で、基質としてのナプロキセンエチルエステル(NEE)と球体を3度反応させた。各反応の間に回収及び洗浄を行った。架橋化リパーゼ球体は、3度のリサイクル作業を経て、活性度が約70%低下した。(同じ酵素のCLECsにも同様の活性度の低下が見られた。Brady,D.、Steenkamp,L.、Skein,E.、Chaplin,J.A.およびReddy,S.(2004)によるEnz.Microb.Technol.34,283〜291の『Optimisation of the enantioselective biocatalytic hydrolysis of naproxen ethyl ester using ChiroCLEC−CR』。)
[実施例13]
p−ニトロフェニルパルミタートを用いたリパーゼ架橋化球体のリサイクル
実施例2における方法にしたがってリパーゼ球体を調製した。球体を、基質としてのp−ニトロフェニルパルミタートと反応させた。各反応の間に回収及び洗浄を行った。最後のリサイクルにおいて、活性度が最初のリパーゼ球体の活性度の79.6%にまで低下した。
[実施例14]
リパーゼ球体の活性度回収率の、CLEAとの比較
実施例2における方法にしたがってカンジダ・ルゴサリパーゼ球体を調製した。Cao,LおよびElzinga,J.による米国特許出願公開番号20030149172の実施例8にしたがって、グルタルアルデヒドとエチレンジアミンとの割合を1:7.88として、カンジダ・ルゴサリパーゼのCLEA’sを調製した。
CLEA’sと比較した球体の活性度保持率は、基質としてp−ニトロフェニルパルミタートを用いた場合、リパーゼ球体に関しては2.7%、CLEA’sに関しては3.4%と測定された。また、基質としてp−ニトロフェニルブチラートを用いた場合の活性度は、リパーゼ球体に関しては53.7%、CLEA’sに関しては6.5%と測定された。
[実施例15]
水中油型エマルジョンと油中水型エマルジョンとの比較(リパーゼの配向)
実施例2の方法にしたがって、油中水型のカンジダ・ルゴサリパーゼ球体を調製した。実施例2の方法にしたがって、水中油型のカンジダ・ルゴサリパーゼ球体を調製した。ただし、油の体積は0.2mlに減らし、緩衝液の体積は5mlに増やした。基質としてp−ニトロフェニルブチラートを用いた場合、油中水型エマルジョンで得られた活性度は水中油型エマルジョンよりも136.0%高く、水中油型エマルジョンから油中水型エマルジョンにかけて、8.9から26.0U/mgに増加した。
[実施例16]
機械的撹拌による球体の寸法の調節
実施例2の方法にしたがって、カンジダ・ルゴサリパーゼ球体を調製した。ただし、シルバーソンのホモジナイザは、攪拌するためではなくエマルジョンを生成するために使用した。ホモジナイザの速度設定のみを変えて、すなわち1000rpmおよび3000rpmで、2つの実験を行った。粒径分布を決定した結果、1000rpmおよび3000rpmで生成された球体の平均粒径がそれぞれ52.0μmおよび20.6μmであることが示された。また、基質としてp−ニトロフェニルパルミタートおよびp−ニトロフェニルブチラートを用いると、活性度がそれぞれ比較して28%および83%増加した
このように本発明は、架橋化によって酵素を安定化させるための方法であって、エマルジョンを酵素のビヒクルとして使用する方法を提供する。また、本発明は、構造を触媒として使用する際の後続反応のために、構造の単位容量当たりの酵素の表面積を最大限露出させることに関する。さらに、安定化された酵素構造は、容易に再利用でき、大部分の固定化された酵素生成物よりも安価であり、また各種処理における触媒として広範囲にわたって適用される。
その上、リパーゼは、親水性/疎水性の相界面に選択的配向性を有するため、そこに集中することになる。そのため、この方法を水中油型エマルジョンの例に適用すると、同時に粗細胞溶解産物から所望のリパーゼが精製される。多くの膜関連の酵素も含め、外側に疎水性領域を有する他の酵素に関して、同様のことが言える。
相界面でリパーゼを架橋化すると、リパーゼは活性化された(蓋が開いた)状態で固定される。
水中油型エマルジョンを使用すると、単一層(mono−layer)のリパーゼ球体が可能となる。これにより、酵素群の表面積を最大にする架橋化方法が提供される。
油中水型エマルジョンを使用すると、より高密度で多層の酵素球体が可能となる。
この形態で酵素を固定すると、酵素の回収及び再生が可能となる。
本発明の方法は、安定化された酵素の中空球構造を提供し、当該構造がその後の反応触媒に用いられた場合に以下の効果を奏する。
1.触媒(球状で中空のカプセル)の露出表面積が最大になる。
2.触媒の浮力を制御することができる。たとえば、反応媒体から浮遊粒子を容易に分離することができる。
3.エマルジョンの粒度分布を調節することにより、形成され固定化酵素粒子の平均寸法(径)を制御することができる。
4.多くのリパーゼ、そしていくつかの他の酵素が性質上有している溶媒界面における自己配向性を利用することで、活性部位の大部分が必要に応じて内腔または外部のいずれかに向かうように制御しつつ、固定化された酵素球体を生成できる。
5.親水性/疎水性界面の存在により、リパーゼ等の酵素を活性化状態で固定化することができる。
実施例1にしたがって調製された、架橋化リパーゼカプセルの光学顕微鏡写真である。 実施例1で調製された架橋化リパーゼカプセルの粒度分布である。 実施例2にしたがって調製された、架橋化リパーゼカプセルの光学顕微鏡写真である。 実施例2で調製された架橋化リパーゼカプセルの粒度分布である。

Claims (21)

  1. 酵素粒子を生成する方法であって、
    第2の液相中に分散した第1の液相の液滴のエマルジョンであって、片方の液相が親水相で他方の液相が親水相と混和しない疎水相であり、且つ液滴と第2の液相との境界面または境界面内に酵素分子が位置しているエマルジョンを用意する工程と、
    親水相および/または疎水相および/またはエマルジョンに架橋剤を加える工程と、
    一時的な保護剤を親水相および/または疎水相および/またはエマルジョンに加える工程と、
    各液滴の酵素分子を架橋剤により架橋化して粒子を形成し、架橋化中に酵素の活性部位を占拠する一時的な保護剤により、架橋剤による活性部位の占拠または架橋剤と活性部位との反応を阻止して、個々の液滴から、酵素分子における活性部位の大部分が粒子の内腔または粒子の外側を向いた状態で酵素分子が固定化されている安定した酵素粒子をそれぞれ形成する工程と、
    第2の液相から個々の酵素粒子を回収する工程と、
    を含んでいることを特徴とする方法。
  2. 個々の粒子が開口を有しており、これによって液相が構造を出入りできることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 親水相および/または疎水相および/またはエマルジョンに対して、疎水度および/または酵素の電荷を変えるための改質剤(modifier)を加える工程を含んでおり、改質剤は、アミノ酸、プロテイン、及び長鎖炭化水素アルデヒドから選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 酵素がリパーゼであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. リパーゼが、シュードモナス・セパシアリパーゼ(Pseudomonas cepacia lipase)、シュードモナス・フルオレッセンスリパーゼ(Pseudomonas fluorescens lipase)、シュードモナス・アルカリゲネスリパーゼ(Pseudomonas alcaligenes lipase)、カンジダ・ルゴサリパーゼ(Candida rugosa lipase)、カンジダ・アンタークチカリパーゼA(Candida antarctica lipase A)、カンジダ・アンタークチカリパーゼB(Candida antarctica lipase B)、カンジダ・ウチリスリパーゼ(Candida utilis lipase)、サーモマイセス・ラヌギノサリパーゼ(Thermomyces lanuginosus lipase)、リゾムコール・ミエヘイリパーゼ(Rhizomucor miehei lipase)、アスペルギルス・ニガーリパーゼ(Aspergillus niger lipase)、アスペルギルス・オリゼリパーゼ(Aspergillus oryzae lipase)、ペニシリウム種リパーゼ(Penicillium sp lipase)、ムコール・ジャバニカスリパーゼ(Mucor javanicus lipase)、ムコール・ミエヘイリパーゼ(Mucor miehei lipase)、リゾプス・アルヒザスリパーゼ(Rhizopus arrhizus lipase)、リゾプス・デレマーリパーゼ(Rhizopus delemer lipase)、リゾプス・ジャポニクスリパーゼ(Rhizopus japonicus lipase)、リゾプス・ニベウスリパーゼ(Rhizopus niveus lipase)、および豚膵臓リパーゼ(Porcine Pancreatic lipase)から選ばれることを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. エマルジョンを用意する工程は、酵素を親水相または水相(W)中に溶解させ、親水相を含んだ酵素を疎水相または油相(O)と混合してエマルジョンを形成するという方法で実行されることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
  7. エマルジョンが連続した疎水相中に親水相の液滴が分散しているW/O型エマルジョンである場合、酵素を液滴容量内に沈殿させるということを、選択的に行う工程を含んでいることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. エマルジョンにアミノ酸を加えて、個々の酵素粒子の凝集を阻止する工程を含んでいることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
  9. 酵素粒子から第1の液相を抜く工程を含んでいることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 親水相が、水、および任意で水中の緩衝剤から構成されることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 親水相が、ポリエチレングリコール、および任意でポリエチレングリコールと混合された水から構成されることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
  12. 疎水相が、油から構成されることを特徴とする請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. エマルジョンが、連続した疎水相中に親水相の液滴が分散しているW/O型エマルジョンであって、第2の酵素、補助因子(co factor)、および/または反応媒介物質が親水相中に存在していることを特徴とする請求項6〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 架橋化が行われる前の前記工程は、
    (1)連続した親水相中に疎水相の液滴が分散している初期エマルジョンを形成する工程と、
    (2)エマルジョンを遠心分離して濃縮エマルジョンと希釈親水相とを分離することでリパーゼの純度を高める工程と、
    (3)より低い親水−親油バランス(HLB)値を有する界面活性剤を加えることによりエマルジョンを転化して、連続した疎水相中に親水相の液滴が分散しているエマルジョンを形成する工程と、を含んでいることを特徴とする請求項6〜12のいずれか一項に記載の方法。
  15. 酵素の活性度を高め、エマルジョンの安定性を向上させるための界面活性剤が親水相および/または疎水相および/またはエマルジョンに加えられることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 請求項1に記載の工程により形成された、架橋化された酵素分子を備えることで安定した中空の酵素粒子であって、酵素の活性部位の大部分が内部または外部のいずれかを向いた状態で酵素が固定化されていることを特徴とする酵素粒子。
  17. 球体状であることを特徴とする請求項16に記載の酵素粒子。
  18. その内腔に液体を含んでいることを特徴とする請求項16または17に記載の酵素粒子。
  19. 酵素がリパーゼであることを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項に記載の酵素粒子。
  20. リパーゼが、シュードモナス・セパシアリパーゼ(Pseudomonas cepacia lipase)、シュードモナス・フルオレッセンスリパーゼ(Pseudomonas fluorescens lipase)、シュードモナス・アルカリゲネスリパーゼ(Pseudomonas alcaligenes lipase)、カンジダ・ルゴサリパーゼ(Candida rugosa lipase)、カンジダ・アンタークチカリパーゼA(Candida antarctica lipase A)、カンジダ・アンタークチカリパーゼB(Candida antarctica lipase B)、カンジダ・ウチリスリパーゼ(Candida utilis lipase)、サーモマイセス・ラヌギノサリパーゼ(Thermomyces lanuginosus lipase)、リゾムコール・ミエヘイリパーゼ(Rhizomucor miehei lipase)、アスペルギルス・ニガーリパーゼ(Aspergillus niger lipase)、アスペルギルス・オリゼリパーゼ(Aspergillus oryzae lipase)、ペニシリウム種リパーゼ(Penicillium sp lipase)、ムコール・ジャバニカスリパーゼ(Mucor javanicus lipase)、ムコール・ミエヘイリパーゼ(Mucor miehei lipase)、リゾプス・アルヒザスリパーゼ(Rhizopus arrhizus lipase)、リゾプス・デレマーリパーゼ(Rhizopus delemer lipase)、リゾプス・ジャポニクスリパーゼ(Rhizopus japonicus lipase)、リゾプス・ニベウスリパーゼ(Rhizopus niveus lipase)、および豚膵臓リパーゼ(Porcine Pancreatic lipase)から選ばれることを特徴とする請求項19に記載の酵素粒子。
  21. 請求項16〜20のいずれか一項に記載の酵素粒子が複数存在している状態で反応媒体に反応を起こして、当該反応が酵素粒子による触媒作用を受けるようにする工程を含んでいることを特徴とする、反応の実施方法。
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