JP4931097B2 - キャップを開封しやすい形状を有するガラスびん - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、キャップを開封しやすいような形状を有するガラスびん、特にびん胴部にくびれ部を有するガラスびんに関する。
【0002】
【従来の技術】
ジャム等の内容物を充填するガラスびんにおいては、内容物がびんからこぼれることがないように金属製あるいはプラスチック製等のキャップによってびん口部が密封されている。このキャップは、一度開封した後も随時口部を密閉できるように、通常、ねじ部が設けられた口部外周に螺合するような構造になっている。したがって、キャップを開けるときは、片手でびんを握り、もう一方の手でキャップを握って、双方の手を各々逆方向にねじってキャップを開封するのが通常の方法である。このようなびんにおいて、従来のびん胴部の形状はびんの上方部、中央部、下方部のいずれも同じ太さのストレートびんが主流であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のようにキャップを開封するとき、特に商品を購入した後初めて開封するときには、一般的にキャップは固く閉められており、しかもガラスびんはびん表面が滑りやすいため、ストレート形状のびんでは力を入れにくく、キャップを開封するのが困難であった。そこで、本発明は、握りやすくキャップを開封しやすいようなびん形状を有するガラスびんを提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、口部にキャップを螺合してびん本体を密封するガラスびんにおいて、水平断面が略円形の丸びんであり、びん胴部にくびれ部を有し、びんの満量容量が200〜1,000ml、びん本体の高さが70〜200mm、胴径が60〜100mm、くびれ部の径が48〜80mm、口外径が50〜85mm、胴径とくびれ部の径との比が0.80〜0.95、くびれ部の幅が15〜35mmであることを特徴とするガラスびんである。
【0005】
びん胴部にくびれ部を設けることによって、びん胴部を持つ手の指がくびれ部にフィットして胴部をしっかりとにぎることが可能となるため、キャップを開封するときに力を入れやすい。また、前記くびれ部には凹凸加工を設けることが望ましい。これにより指が一層滑りにくくなり、より安定して力を加えられるようになるからである。凹凸加工には、例えば、手が痛くならない程度に浅くくびれ部の幅方向に対して縦や斜めに彫り模様を施すことや、また、くびれ部のびん表面を梨地加工することなどがある。もちろん、凹凸加工の方法はこれらに限定されるものではなく、要するに、指への引っかかりができて滑りにくくなるものであれば良い。
【0006】
びんの満量容量が200〜1,000mlであるのは、199ml以下のびんでは必然的にびん本体の高さが低くなり、びん胴部が細くなる上に、くびれ部を設けると内容物を表示するラベルを貼る面がごくわずかになってしまい、実用的でないからである。また、くびれ部が細くなりすぎて、かえって力が入れにくくなるからである。一方、1,001ml以上のびんでは必然的にびん本体の高さが高くなり、びん胴部が太くなるので、くびれ部を設けてもラベルを貼る面は確保できるが、後述するように力を入れやすい握り幅との関係上、びんが太くなりすぎて力が入れにくくなってしまい好ましくないからである。
【0007】
次に、びんの高さが70〜200mmであるのは、上記したように、高さが69mm以下のびんでは低すぎて、びん胴部にくびれ部を設けた上で胴部のその他の場所にラベル面を確保するのは難しくなってしまうからであり、一方、高さが201mm以上のびんでは高すぎて、スプーンやジャムナイフを使って、特にびんの底や中央から下の方に残った内容物をすくい出すことが難しくなってしまうからである。
【0008】
また、くびれ部の径が48〜80mmであるのは、くびれ部はキャップを開封するときに握って力を入れやすくするために設けたものであるので、人の握力とにぎり幅の関係から握りやすい径に限定したものである。というのも、人間工学的に人が力を入れやすいにぎり幅というのは決まっているからである。人間工学による根拠として、握力と握り幅の関係について表1に示す。これは、『人間工学基準数値数式便覧』(1992年4月発行)を参考にしたものである。表1の上の表は、握力と握り幅との関係を数値で表したもので、下のグラフはこれをグラフに表したものである。握力は、最大値を100とした場合の相対値として表している。この表1によると、握力は男性・女性ともに握り幅が55mmのときに最大値がでている。最大値がでた55mmの握力を100%とした場合に、80%以上の握力がでた握り幅を人が力を入れやすい握り幅とした。すなわち、くびれ部の径の上限を80mmとしたのは、男女ともに80%以上の握力がでた握り幅の限界値だからであり、これ以上径が大きいと力を入れにくくなるからである。一方、くびれ部の径の下限を48mmとしたのは、これよりも径が小さくても80%以上の握力は出ているが、47mm以下だとスプーンに内容物をのせた状態でくびれ部を通しにくくなってしまうからである。
【表1】
Figure 0004931097
【0009】
さらに、びんの胴径とくびれ部の径との比が0.80〜0.95であるのは、胴径とくびれ部の径との差がこれ以上あると胴部とくびれ部の段差が大きくなって握りにくいため力が入りにくく、また逆に、差がこれ以下になるとくびれ部を設けたことによる効果、すなわち、力を入れやすくキャップを開封し易いという効果が期待できなくなるからである。
【0010】
従って、びんの胴径が60〜100mmであるのは、くびれ部の径を上記のように人間工学上人が力を入れやすい握り幅にし、このくびれ部の径と胴径との比を上記のようにくびれ部の効果をより発揮しうるような値にしたことによるものである。
【0011】
口外径が50〜85mmであるのは、これ以上口部の径が小さいびんでは内容物をスプーンですくい出しにくくなってしまい、実用的ではないからである。また逆に、これ以上口部の径が大きいびんではキャップを手のひらに収め持つことができなくなり、キャップを開けにくくなるからである。
【0012】
次に、くびれ部の幅が15〜35mmであるのは、びんをしっかりと握れるように、くびれ部はそこに指がフィットする幅で設ける必要があることから、指の幅との関係から限界づけたものである。すなわち、びん胴部に設けられたくびれ部は通常親指と人差し指で握られることが多いため、一番太い指である親指がフィットするような幅であることが必要だからである。人間工学の統計によれば(参考文献『日本人の人体計測データ』(1997年10月発行)、表2に示すように、日本人の親指の幅の平均値は、19.1mmである。くびれ部の幅は、この親指幅に、びんの大きさとの釣り合いやラベル面の確保等を考慮して若干の幅を持たせた数値である。くびれ部の幅がこれ以上狭くては指がぴったりとフィットしないので力が入りにくくなってしまい、逆にこれ以上広くては、くびれ部としての役割を果たさないからである。ここで、くびれ部の幅とは、図7に示すように、両側の内向きR部分(p)の終点(P点)間の距離(H4)をいう。
【表2】
Figure 0004931097
【0013】
びん胴部の高さが74mm以上であって、くびれ部が口部端から25〜45mmの位置から底部に向かって始まっているものであるのは、びん胴部の高さが比較的高いびんはびん胴部に握るスペースがあることから、胴部を持つ場合が多いため、口部近くの胴部にくびれ部を設けた方がキャップに近くて力を入れやすいためである。また、びん胴部の高さが74mm未満であって、くびれ部が底部端から30〜40mmの位置から底部に向かって始まるものであるのは、びん胴部の高さが比較的低いびんはびん胴部に握るスペースがなく胴部をしっかりと持つことができないことから底部を手のひらにのせて持つことが多く、したがって、底部近くの胴部にくびれ部を設けた方がしっかりびん本体を握れるのでキャップを開封しやすいからである。ここで、びん胴部の高さを74mmを基準として分けているのは、表3に示すように、上記した『日本人の人体計測データ』によれば、びん胴部を握る人差し指から小指までの幅(手幅)の平均値は、74.0mmだからである。このように、びん胴部がこれ以上の高さがあれば口部付近の胴部にくびれ部を設けた方が、キャップを開ける手とびんを握る手の距離が近いためキャップを開封しやすくなる点で良く、反対に、これ以下の高さしかなければ胴部を握ってキャップを開けることが困難なので、底部付近にくびれ部を設けた方が底部をしっかり握れ、キャップを開封しやすくなって良い。上記のびん胴部の高さとは、図1及び図2に示すように、びん底部からびん肩部の始点(口部に向かって縮径をはじめる点)までの高さ(H5)をいう。
【表3】
Figure 0004931097
【0014】
なお、くびれ部はびん胴部の口部側かあるいは底部側かどちらかに設ける必要がある。なぜなら、びん胴部には、上述したように内容物の商品名、原材料、製造元などを表示するためのラベルを貼り付けなければならず、その面積を確保するためには、くびれ部をびん胴部に設ける位置に制限があるからである。すなわち、ラベルはできるだけ大きいものの方が宣伝効果・販売促進のためには望ましいため、びん胴部の中央付近にくびれ部を設けることは実用的ではないからである。
【0015】
びん胴部の高さが74mm以上の場合に、くびれ部が口部端から25〜45mmの間隔を開けてはじまることとしたのは、くびれ部を握る手の親指及び人差し指と、キャップを握る手の親指との距離は、少し間隔があいていた方がより力を入れやすいため、くびれ部の始点と口部端との間隔は親指の幅よりも太い幅が必要となるからである。すなわち、くびれ部の始点と口部端との間隔が上記以下であるとキャップとくびれ部の間隔が狭すぎて力を入れにくくなってしまい、また逆に上記以上であるとキャップとくびれ部の間隔が広すぎてこれもまた両手が離れすぎてしまい力を入れにくくなってしまうからである。
【0016】
また、びん胴部の高さが74mm未満の場合に、くびれ部が底部端から30〜40mmの間隔を開けてはじまることとしたのは、上述のように背の低いびんは胴部ではなく底部を持つことが多く、びん底部を持つ場合にはびんを下から支え持つ格好になるので、ほぼ5本の指の腹がくびれ部に収まるようにくびれ部を設ける必要があるからである。したがって、指先から第2関節までの長さを中心に、底部端からくびれ部の始点までの間隔を限定した。上記『日本人の人体計測データ』によれば、人間工学的に中指の指先から第2関節までの長さ(中指第2節長)の平均値は、表4に示すように、男女、年齢別の各平均値がほぼ30〜40mmであることから、くびれ部をこの数値にするとちょうど持ち手の指の腹がくびれ部にフィットすることになり、キャップを開封しやすくなる。
【表4】
Figure 0004931097
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を表した図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は実施例のびん胴部の比較的高いびん(高びん)の側面図であり、図2は実施例のびん胴部の比較的低いびん(低びん)の側面図である。図4は実施例のガラスびん(高びん)の握り方の説明図である。図5〜7は実施例のガラスびん(低びん)の握り方▲1▼〜▲3▼の説明図である。
【0018】
実施例のびんは双方とも、びんの水平断面はすべて円形で、丸びんである。
【0019】
図1に示す実施例の高びんは、びんの満量容量が583ml、びん本体の高さ(H1)が114mm、胴径(D1)が72mm、くびれ部の径(D2)が63.5mm、口外径(D3)が59.9mm、胴径とくびれ部の径との比が0.88、くびれ部の幅(H4)が19mmである。また、くびれ部は口部端から28mmの位置から底部に向かって始まっている(H2)。これは、この実施例の高びんはびん胴部の高さ(H5)が89.5mmあり、上述のように持ち手の4本の指が収まるので胴部を握ってキャップを開封する場合が多いと考えられるため、口部付近の胴部にくびれ部を設けている。
【0020】
図2に示す実施例の低びんは、びんの満量容量が577ml、びん本体の高さ(H1)が99mm、胴径(D1)が78mm、くびれ部の径(D2)が72mm、口外径(D3)が59.9mm、胴径とくびれ部の径との比が0.92、くびれ部の幅(H4)が19mmである。また、くびれ部は底部端から30mmの位置から底部に向かって始まっている(H3)。これは、この実施例の低びんはびん胴部の高さ(H5)が71.5mmと比較的低く、胴部には4本の指が収まらない場合があり、かつ、胴径あるいはくびれ部の径が比較的太いので胴部を握ると力が入りにくくなることから、底部を持つ場合も多いと考えられるため、底部付近の胴部にくびれ部を設けている。
【0021】
また、実施例の高びんおよび低びん双方とも、くびれ部には凹凸加工を施している。図3に示すように、高びんにはくびれ部の外周にナナメの薄い彫り模様を等間隔に刻み入れており、図4〜6に示すように、低びんにはくびれ部の外周にタテの薄い彫り模様を等間隔に刻み入れている。これにより、くびれ部を握る指のひっかかりとなって、より一層持つ手に力を入れやすくなる。
【0022】
びんの握り方に関して、胴部と底部のどちらを握るのがよりキャップを開けやすいかについて、簡単なアンケートを行った。これには、実施例の高びんと低びんと同じ寸法のストレートびんを用いて、男女各10名に、高びんと低びんのそれぞれについて「胴部」と「底部」のどちらを持つ方が開けやすいかを聞いた。その結果、高びんの場合は「胴部」を選んだ人が16名、「底部」を選んだ人が4名であったのに対し、低びんの場合は「胴部」を選んだ人は4名、「底部」を選んだ人は16名であった。これにより、比較的高さのあるびんは胴部に握るスペースがあるため胴部を持ち、比較的低いびんで、かつ、胴径が太い場合は胴部に握るスペースもなく胴部は太くて持ちにくいので底部を持つことが確認できた。
【0023】
これより、胴部に握るスペースがあるびんは口部付近の胴部にくびれ部を設け、胴部に握るスペースがないびんは底部付近の胴部にくびれ部を設けるのが、くびれ部を握ることによりキャップを開けやすくするという効果をより一層発揮することになる。したがって、実施例の高びんには口部付近の胴部にくびれ部を設け、実施例の低びんには底部付近の胴部にくびれ部を設けている。
【0024】
実施例のびんの握り方について図3〜6に示す。図3にあるように、実施例の高びんのキャップを開封するときのびん胴部の握り方は、くびれ部に持ち手の親指と人差し指がフィットするようににぎるのが一般的である。これに対して低びんのキャップを開封するときのびん胴部の握り方は、上記の高びんの握り方と同様にくびれ部に親指と人差し指をフィットさせてにぎる握り方▲1▼と、びん胴部を握り、結果的にくびれ部に薬指をフィットさせてにぎる握り方▲2▼と、また、低びん特有の握り方として、びんの底部を手のひらにのせて、くびれ部には5本の指の腹がフィットするように握る握り方▲3▼とがある。これを図4〜6に示す。
【0025】
次に、くびれ部の効果が発揮され、実施例のびんの形状がキャップを開封しやすいものになっているか検証するため、さらなるアンケートを実施した。実施例の高びん、低びん、およびこれらと同じ寸法でくびれ部のないストレートびんの高びん、低びんとの中で、いずれのびんが最も持ちやすく力が入れやすいかについて、男性・女性各50名に試行してもらいその結果を聞いた。アンケートは一人につき、力の入りやすい順に1位と2位の2つのびんを選んでもらい、集計は1位を2点とし、2位を1点として計算した。この結果を表5に示す。
【表5】
Figure 0004931097
【0026】
このアンケートに対して最も多かった回答が、表5に示されるように、123点の「くびれ部」を有する高びんであり、その次に99点の「くびれ部」を有する低びんであった。これにより、びんにくびれ部を設けた方がストレートびんよりも力を入れやすく、キャップを開封しやすいということが確認できた。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、びん胴部にくびれ部を設けたことにより、また、びんの満量容量、びんの高さ、胴径、前記くびれ部の径、くびれ部の幅、胴径とくびれ部の径との比など、人間工学的に人が握りやすく力を入れやすい最適な数値を検討して設計したことにより、びんを握りやすく力を入れやすくなり、キャップを開封する困難性が減少し、キャップを開封しやすいびん形状となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の高びんの側面図である。
【図2】実施例の低びんの側面図である。
【図3】実施例の高びんの握り方の説明図である。
【図4】実施例の低びんの握り方▲1▼の説明図である。
【図5】実施例の低びんの握り方▲2▼の説明図である。
【図6】実施例の低びんの握り方▲3▼の説明図である。
【図7】くびれ部の幅(H4)の説明図である。
【符号の説明】
1 ガラスびん
2 口部
3 肩部
4 くびれ部
5 胴部
6 底部
7 キャップ

Claims (3)

  1. 口部にキャップを螺合してびん本体を密封するガラスびんにおいて、水平断面が略円形の丸びんであり、びん胴部にはくびれ部を有し、びんの満量容量が200〜1,000ml、びん本体の高さが70〜200mm、胴径が60〜100mm、くびれ部の径が48〜80mm、口外径が50〜85mm、胴径とくびれ部の径との比が0.80〜0.95、くびれ部の幅が15〜35mmであるガラスびんであって、びん胴部の高さが74mm以上で、前記くびれ部が口部端から25〜45mmの位置から底部に向かって始まることを特徴とするガラスびん
  2. 口部にキャップを螺合してびん本体を密封するガラスびんにおいて、水平断面が略円形の丸びんであり、びん胴部にはくびれ部を有し、びんの満量容量が200〜1,000ml、びん本体の高さが70〜200mm、胴径が60〜100mm、くびれ部の径が48〜80mm、口外径が50〜85mm、胴径とくびれ部の径との比が0.80〜0.95、くびれ部の幅が15〜35mmであるガラスびんであって、びん胴部の高さが74mm未満で、前記くびれ部が底部端から30〜40mmの位置から底部に向かって始まることを特徴とするガラスびん
  3. 請求項1又は2記載のガラスびんにおいて、前記くびれ部に凹凸加工を設けたことを特徴とするガラスびん
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