JP4927618B2 - 光心線識別方法及び識別装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光伝送線路の心線対照を行うのに用いられる光心線識別方法及び光心線識別装置に関し、特にPON通信システムにおいて未使用心線を識別するのに用いられる光心線識別方法及び光心線識別装置に関する。
光ファイバを用いた通信システムとして、図4に示すようなPON(Passive Optical Network)通信が知られている。PON通信システム900では、OLT(Optical Line Terminal)901からの下りの光信号λ91がスプリッタ902で分岐され、複数のユーザ側ONU(Optical Network Unit)903に送信される。各ONUでは、自分宛にきた光信号のみを選択して取得する。この下りの光信号λ91には、各ONU903から送出する上りの光信号λ92の送出タイミングを制御する信号も含まれている。
各ONU903から送出された各光信号λ92は、スプリッタ902で合波され、OLT901が指定したタイミングの信号列でOLT901に入力される。OLT901では、上りの光信号λ92の信号列がONU903のそれぞれの光信号に分けられる。
上記構成のPON通信システム900において、光通信を行う光線路を監視し、異常が発生した場合にはその保守を行う装置として、例えば特許文献1に開示されているものが知られている。これは、開設済みの光線路に対し、局側から試験光を送出し、ユーザ側のONUに設けられているターミネーションで反射されて再び局側に戻ることを確認することで、光線路を監視している。
これに対し、開設されていない空き回線を新たに使用する場合には、上記の装置を用いて未使用の心線を選択することはできない。例えば図5(a)に示すように、スプリッタ902に先行配線された心線に対して、クロージャ部920の位置にONUを新設して回線の開通を行う際には、既にONU903が設置され使用されている心線(現用心線)を誤切断しないよう、空き回線である未使用の心線を識別して切断するする必要がある。
従来、未使用の心線を識別するためには、図5(b)に示すように、敷設されている光ファイバケーブル910の端末部に赴いて新設予定の心線を選択し、そこから心線対照用の試験光を入射し、この試験光を切断予定箇所のクロージャ部920で心線対照機を用いて検出することで当該心線を特定している。このようにして新設予定の心線を識別した後に、この心線を切断してONU903aを新設する(図5(c)という方法をとっていた。
特許第3042594号公報
しかしながら、上記従来の技術では以下のような問題があった。光ファイバケーブルの端末から試験光を入射して心線対照を行う方法では、作業箇所が光ファイバケーブルの端末部と切断予定箇所の2箇所となってしまい、作業人員を少なくとも2人配備する必要があって高コストとなってしまうといった問題がある。また、光ファイバケーブルの端末部では、試験光を入射する心線を複数の心線の中から選択する必要があるため時間がかかり、さらに光源を接続するための手間がかかった。
上記のように、新設予定の心線を選択するための心線対照作業は非常に手間のかかる作業であることから、実運用においては、該当する心線を設備図面等の設計データのみを用いて選択し、心線対照機を用いた心線対照作業を省略することがあった。そのため、心線を誤選択して切断してしまうといった問題もあった。
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、ONUの新設可能な未使用心線を簡略にかつ確実に識別可能な光心線識別方法及び光心線識別装置を提供することを目的とする。
本発明の光心線識別方法の第1の態様は、局側から光信号を送出するOLTと、ユーザ側から異なる波長の光信号を送出するONUとを、スプリッタを介して光ファイバケーブルで接続して構成されるPON通信システムにおいて、前記スプリッタと前記ONUとの間に配索された前記光ファイバケーブル内の複数の心線から前記ONUを新設可能な未使用心線(以下では新設対象心線という)を識別する光心線識別方法であって、一端が前記スプリッタの分波側に接続された前記心線は、他端が事前に反射させる手段が講じられており、前記OLTから送出される前記光信号(以下では下り光信号という)と、前記下り光信号が前記反射させる手段が講じられた他端で反射されて前記OLT側に向けて伝送される反射光信号(以下では上り光信号という)とを前記スプリッタより下流側で測定し、前記下り光信号と前記上り光信号とがともに検出されるときの前記心線を前記新設対象心線と識別することを特徴とする。
本発明の光心線識別方法の他の態様は、前記スプリッタより下流側の所定の測定位置で前記心線を通光する前記異なる波長の光信号を測定して第1の測定値を取得し、前記第1の測定値が所定の閾値より小さいとき、前記測定位置で前記心線を通光する前記上り信号を測定して第2の測定値を取得し、前記測定位置より下流側で前記心線に所定の大きさの損失を付与したときの前記上り信号を測定して第3の測定値を取得し、前記第2の測定値と前記第3の測定値とが異なるとき、前記心線を前記新設対象心線と判定することを特徴とする。
本発明の光心線識別装置の第1の態様は、局側から光信号を送出するOLTと、ユーザ側から異なる波長の光信号を送出するONUとを、スプリッタを介して光ファイバケーブルで接続して構成されるPON通信システムにおいて、前記スプリッタと前記ONUとの間に配索された前記光ファイバケーブル内の複数の心線から前記ONUを新設可能な未使用心線(以下では新設対象心線という)を識別する光心線識別装置であって、前記スプリッタより下流側に設けられ、前記OLTから送出される前記光信号(以下では下り光信号という)を検出する第1の検出器と、前記下り光信号が事前に反射させる手段が講じられている前記心線の端面で反射されて前記OLT側に向けて伝送される反射光信号(以下では上り光信号という)を検出する第2の検出器とを有する検出部と、前記検出部の前記第1の検出器と前記第2の検出器とからそれぞれの測定値を入力し、前記第1の検出部で前記下り光信号が検出され、かつ前記第2の検出部で前記上り光信号が検出されたときの前記心線を前記新設対象心線と判定する判定処理部と、を備えることを特徴とする。
本発明の光心線識別装置の他の態様は、前記第1の検出器と前記第2の検出器とが、それぞれ前記下り光信号と前記上り光信号とを選択的に受光する波長選択機能を備えることを特徴とする。
本発明の光心線識別装置の他の態様は、さらに、前記心線に所定の大きさの損失を付加する損失付加手段を備え、前記第1の検出器及び前記第2の検出器には、前記下り信号及び前記上り信号を遮断するフィルタが着脱可能にそれぞれ備えられ、前記判定処理部は、前記第1の検出器及び前記第2の検出器に前記フィルタを装着して前記第2の検出器で前記異なる波長の光信号を測定した第1の測定値と、前記第1の検出器及び前記第2の検出器から前記フィルタを取外して前記第2の検出器で前記上り信号を測定した第2の測定値と、前記第1の検出器及び前記第2の検出器から前記フィルタを取外しかつ前記損失付加手段で前記損失を付加して測定した第3の測定値と、をそれぞれ入力し、前記第1の測定値が所定の閾値より小さく、かつ前記第2の測定値と前記第3の測定値とが異なると判定された前記心線を前記新設対象心線と判定していることを特徴とする。
本発明によれば、OLTから送出される下り光信号と、事前に反射させる手段が講じられている未使用心線の端部で反射された上り光信号とがともに検出されることでONUの新設可能な未使用心線を識別していることから、ONUの新設対象心線を簡略にかつ確実に識別可能な光心線識別方法及び光心線識別装置を提供することが可能となる。
本発明の好ましい実施の形態における光心線識別装置及び識別方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
本発明の実施の形態に係る光心線識別方法及び光心線識別装置を、図2を用いて詳細に説明する。図2は、局110に設置されたOLT111とユーザ側に設置されたONU120とを、スプリッタ130を介して光ファイバケーブル140で接続して構成されたPON通信システム100の一部を拡大して示した模式図である。図2ではスプリッタ130を1台のみ示しているが、OLT111に接続されている光ファイバケーブル140には、スプリッタ130が接続されている心線以外の他の心線にも同様のスプリッタが接続されている。また、スプリッタ130の下り方向にさらに別のスプリッタを直列に接続させてさらに分波されることもある。本実施形態の心線識別方法は、最下流のスプリッタ130に接続される光ファイバケーブル140aの心線識別を行うものである。
OLT111からは、ONU120に向けて(以下では下り方向という)所定の波長(λ1とする)の光信号(以下では下り光信号という)が送出されており、この下り光信号がスプリッタ130で分波されて各ユーザ側のONU120に伝送される。一方、各ユーザ側に設置されたONU120からは、下り光信号の波長とは別の波長(λ2とする)の光信号がOLT111側に向けて(以下では上り方向という)送出されており、各ONU120からの光信号はスプリッタ130で合波されてOLT111に伝送される。波長λ1及び波長λ2として、例えばそれぞれ1.49μm、1.31μmのレーザ光が用いられる。
スプリッタ130の下り方向に接続される光ファイバケーブル140aとして、例えば24単心ケーブルを用いることができる。スプリッタ130の下り方向には、現在使用されている心線(以下では現用心線という)だけでなく、将来予想される需要数を含めた数だけ心線をスプリッタ130に事前に接続しておくことができる。従って、スプリッタ130の下り方向に接続された光ファイバケーブル140aには、現用心線のほかにスプリッタ130に接続されているが未使用の心線、及びスプリッタ130にも接続されていない心線が含まれている。
スプリッタ130に接続された光ファイバケーブル140aの下流側端部では、各心線の端面に対し事前に鏡面切断等の反射させる手段が講じられており、未使用の段階では下り方向に伝送された光が端部でフレネル反射するよう処理されている。この処理は、例えば光ファイバケーブル140aの敷設時に行うものとし、その後も端面状態が適切に維持されるよう保守されているものとする。
本実施形態の光心線識別方法は、ONUを新設する対象の心線(以下では新設対象心線という)として、最下流のスプリッタ130に接続された光ファイバケーブル140aから未使用の心線を識別する方法を提供するものである。ONUを新たに設置するクロージャ(以下では引き落としクロージャという)150の設置箇所を測定位置とし、この測定位置において光ファイバケーブル140a内の心線を通光する下り光信号及び上り光信号を本実施形態の光心線識別装置200で測定して検出することで、新設対象心線を識別している。
本実施形態では、上記の測定位置において測定する下り光信号として、OLT111から送出される波長λ1の光信号を用いている。また、測定対象の上り光信号としては、OLT111から送出された波長λ1の光信号が、測定対象の心線の端面で反射されて上り方向に伝送される光信号を用いるものとしている。測定対象の心線がその端面で下り光信号を反射して上り方向に伝送されるのは、これが未使用の心線の場合であり、既にONU120が接続されている場合には、下り光信号の反射が心線端面での反射に比べて非常に小さく、両者を明確に区別することができる。以下では、ONU120が接続されている場合の下り光信号の反射が非常に小さいことから、この場合には上り光信号が検出されないものとして説明している。
そこで本実施形態では、光心線識別装置200において、OLT111から送出される波長λ1の下り光信号が検出され、かつ下り光信号が端面で反射されて上り方向に伝送される波長λ1の上り光信号が検出された場合には、測定対象の心線をONUの新設可能な未使用心線と判定している。このように、本実施形態の光心線識別方法によれば、OLT111から送出される波長λ1の下り光信号が、測定対象の心線の端面で反射されるか否かを判定していることから、引き落としクロージャ150より下流側にONU120が接続されているか否かを確実に識別することが可能となる。
また、下り光信号と上り光信号がともに検出されない場合には、測定対象の心線がスプリッタ130に接続されていない心線であると判定している。すなわち、この測定対象の心線は、スプリッタ130に接続されていないため、OLT111から送出される波長λ1の下り光信号が伝送されていないと判定し、ONUを新設する対象の心線から除外している。
本実施形態の光心線識別方法を、図1に示す流れ図を用いてさらに詳細に説明する。まずステップS1において、OLT111から波長λ1の下り光信号が送出される。この下り光信号を、引き落としクロージャ150が設置されている測定位置において測定する(ステップS2)。そして、ステップS3において、下り光信号が検出されたか否かを判定する。
ステップS3の判定において、下り光信号が検出された場合には、ステップS4において上り光信号を測定する。測定対象の心線は、ステップS3の判定によりスプリッタ130に接続されて波長λ1の下り光信号が伝送されていることから、これが未使用の心線である場合には、下り光信号が端面で反射されて上り方向に伝送される。ステップS4における測定の結果をもとに、ステップS5で上り光信号が検出されたか否かを判定し、その結果上り光信号が検出された場合には、測定対象の心線が未使用心線でありONUを新設する対象の心線であると識別する(ステップS6)。
一方、ステップS3の判定の結果、下り光信号が検出されなかった場合には、測定対象の心線がスプリッタ130に接続されていないと判定してONUを新設する対象の心線でないと識別する(ステップS7)。また、ステップS5の判定において、上り光信号が検出されないと判定された場合には、測定対象の心線には既にONUが接続されている現用心線と判定し、測定対象の心線を新設対象心線でないと識別する(ステップS8)。
本発明の実施の形態に係る光心線識別装置200の構成を図3に示す。光心線識別装置200は、OLT111から下り方向に送出される下り光信号を検出する第1の検出器211と、この下り光信号が事前に反射させる手段が講じられている心線の端面で反射されて上り方向に伝送される上り光信号を検出する第2の検出器212とを備えた検出部210と、第1の検出器211と第2の検出器212とからそれぞれの測定値を入力して新設対象心線を識別する判定処理部220とから構成されている。
第1の検出器211と第2の検出器212は、測定対象の波長λ1の光信号のみを測定するように波長選択機能を有しており、例えばフォトダイオード(PD)の前面に波長λ1の光信号のみを通過させる光学フィルタを設けて構成することができる。また、検出器212は心線の端面で反射された光信号を測定することから、高感度な性能を有するセンサを用いる必要がある。判定処理部220は、第1の検出器211及び第2の検出器212で測定した各測定値を入力し、これを用いて図1に示す処理を実行している。
上記説明の通り、本発明の光心線識別方法及び光心線識別装置によれば、OLTから送出される下り光信号と、この下り光信号が心線の端面で反射された上り光信号とを検出して新設対象心線を識別していることから、誤識別の恐れがなく信頼性の高い心線識別が可能となる。また、作業人員を引き落としクロージャの設置場所にのみに配置すればよいことから、省力化を図ることができる。さらに、本発明の光心線識別装置のみを用いて新設対象心線を識別でき、従来のような試験光を出射させる光源等が不要なことから、低コストで心線識別作業が行える。
本発明の別の実施の形態に係る光心線識別方法及び光心線識別装置を、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態の光心線識別装置300を用いて、ONUの新設が可能な対象心線を識別する本実施形態の光心線識別方法を説明する全体流れ図である。上記の光心線識別装置200を用いて、OLT111から送出される波長λ1の光信号を測定する方法では、上り方向の反射光の強度が特に低い場合には、これを検出することができなくなるおそれがある。すなわち、下り方向に同じ波長λ1の光信号が伝送されており、その一部が検出器212でも測定されてしまうが、これが上り方向の反射光よりも高い強度となっている場合には、反射光の有無を判定できなくなってしまうおそれがある。
そこで、本実施形態では、反射光である上り光信号の強度を測定する代わりに、心線の伝送損失を変化させたときの上り光信号の強度の変化を検出させるようにしている。すなわち、測定位置より下流側で心線に伝送損失を付加したとき、これによる光信号の変化が第2の検出器で検出できた場合には、上り方向の反射波が伝送されていると判定することができる。この場合、上り方向にONU120から波長λ2の光信号が送出されていないことを事前に確認しておく必要がある。
本実施形態の光心線識別方法では、図6に示すように、光信号の測定を2段階に分けて行っており、符号301で示す第1段階では波長λ2の光信号の測定を行う。波長λ2の光信号の測定では、波長λ1の光信号も含めて測定することのないよう、波長λ1の光信号を遮断して行う。第1段階301の測定の結果、波長λ2の光信号が検出された場合には、測定対象の心線はONUが接続された現用心線であると判定する。また、波長λ2の光信号が検出されなかった場合には、さらに次の符号302で示す第2段階の測定を行う。
第2段階302の測定では、OLT111から送出される波長λ1の光信号の反射光を測定する。但し、反射光の強度が低いためこれを検出できないおそれがあることから、本実施形態では、測定位置より下流側で測定中の心線に所定の損失を付加し、これによって測定値が変化するか否かを検出している。その結果、測定値の変化が検出された場合には、上り方向に反射光が伝送されていると判定でき、当該心線を新設対象心線と判定できる。心線に付加する損失は1〜2dB程度でよく、この程度の損失を付加することで反射光の変化を判定することが可能である。
測定中の心線は、第1段階301でONUから波長λ2の光信号が送出されていないことを確認済みであることから、測定位置より下流側で損失を付加したことによる測定値の変化は、反射光によるものであると判定することができる。また、損失を付加する位置は、測定位置より下流側とする必要があり、測定位置より上流側で損失を付加すると、測定位置では損失を付加する前後で下り方向の光信号の強度も変化してしまうため、反射光の変化の有無を検出することができなくなってしまう。
上記の通り、本実施形態の光心線識別方法では、第1段階301でONUから波長λ2の光信号が送出されていない光心線であることを確認し、第2段階302で測定位置より下流側で損失を付加したときに測定値が変化する心線を新設対象心線であると判定するようにしたことにより、反射光の強度が低い場合でも新設対象心線を正確に判定することが可能となっている。
本実施形態の光心線識別装置300の概略構成を図7に示す。光心線識別装置300は、検出器311、312の受光面前方に、波長λ1の光信号をカットするフィルタ313、314を着脱可能に備えている。このフィルタ313、314は、第1段階の波長λ2の光信号を測定するときに用いるものである。
第1の検出器311は、光心線識別装置200と同様、OLT111から下り方向に送出される下り光信号を検出するものであり、第2の検出器312は、上り方向の光信号として波長λ1の反射光又はONU120から送出される波長λ2の光信号を測定するものである。第2の検出器312で波長λ2の光信号を測定する場合には、波長λ1の光信号を受光するのを防止するために、第1の検出器311と第2の検出器312のそれぞれにフィルタ313、314を装着する。フィルタ313、314は、波長λ1の光信号を遮断するフィルタである。
本実施形態の光心線識別装置300はさらに、測定対象の光心線に所定の大きさの損失を付加するための損失付加手段330を備えている。損失付加手段330は、光心線識別装置300の図示しない筐体に一体に具備されるようにしてもよく、あるいは、光心線識別装置300の筐体とは別に設けてもよい。
光心線識別装置300を用いて行う本実施形態の光心線識別方法を、図8の流れ図を用いてさらに詳細に説明する。まずステップS11において、検出器311、312の受光面前方にフィルタ313、314を装着し、次のステップS12で波長λ2の光信号を測定して第1の測定値を取得する。ステップS13において、第1の測定値が所定の閾値A1より小さいかを判定し、閾値A1より小さい場合には第2段階のステップS15に進み、閾値A1以上の場合には当該心線を現用心線と判定する(ステップS14)。閾値A1には、波長λ2の光信号の有無を判定するのに好適な値を用いる。
第2段階ではまず、ステップS15で検出器311、312の受光面前方からフィルタ313、314を取り外す。次のステップS16では、検出器312で波長λ1の反射光を測定して第2の測定値を取得する。その後、損失付加手段330を用いて当該心線の測定位置より下流側に所定の損失を付加し(ステップS17)、その時の波長λ1の反射光を検出器312で測定して第3の測定値を取得する(ステップS18)。そして、ステップS19で第2の測定値と第3の測定値との差の絶対値が所定の閾値A2より大きいかを判定する。
ステップS19の判定の結果、両者の差の絶対値が閾値A2より大きいと判定した場合には、波長λ1の反射波の変化が検出されたと判定して当該心線を新設対象心線と判定する(ステップS20)。また、両者の差の絶対値が閾値A2以下でほとんど変化していない場合には、反射波がないと判定して当該心線を現用心線と判定する(ステップS21)。閾値A2には、波長λ1の反射波の変化を検出するのに好適な値を設定する。
本実施形態の心線識別方法を用いた1実施例を、図9を用いて以下に説明する。本実施形態の心線識別方法では、第1の測定値をもとにONU120から波長λ2の光信号が送出されているか否かを容易に判定することができる。そこで、図9では第2段階の心線識別方法について説明する。第2段階では、測定中の心線を通光する光はOLT111から送出された波長λ1の光信号のみであることが確認されている。
図9(a)、(b)は、測定中の心線の端部にONU120が接続されていない場合の波長λ1の光信号の強度を示している。図9(a)の例では、測定位置における波長λ1の下り光信号の強度をー23dBmとし、心線端部の反射手段による反射で15dBの低下があるものとしている。この場合、測定位置における反射波の強度はー38dBmとなる。
上記のように、波長λ1の反射波がある場合には、検出器312でー38dBmの反射波からの漏れ光を受光するが、検出器312には波長λ1の下り方向の光信号もわずかであるが受光してしまう。そのため、検出器312の測定値は、上記のー38dBmの反射波からの漏れ光よりも大きな値が得られる。この測定値から、反射光の漏れ光だけの強度を判定するのは困難である。
そこで、本実施形態では、図9(b)に示すように、測定位置より下流側で当該心線に所定の損失(ー1dBとする)を付加している。この場合、測定位置を通過した下り光信号の強度は、損失付加地点で1dB低下した後反射手段で反射されるときに15dB低下する。そして、反射されて上り方向に進む反射波は、損失地点で再び1dB低下することから、検出器312に受光される反射波の強度は、ー40dBmとなる。
上記の通り、損失付加手段によって1dBだけ損失を付加することで、検出器312では光信号の強度を2dB変化させたときの漏れ光の変化を測定する。損失を付加しないときの測定位置における強度−38dBm、及び損失を付加したときの測定位置における強度―40dBmを線形値に変換すると、それぞれ1.58×10−4mW、及び1.00×10−4mWとなる。光信号の強度が、両者の差である0,58×10−4mWだけ変化したときの漏れ光の変化を検出することで、反射波が伝送されていることを確認することができる。
これに対し、当該光心線の端部にONU120が接続されている場合には、図9(c)に示すように、損失を付加しない場合、下り光信号はONU120で50dB低下して反射される。その結果、検出器312は−73dBmの強度の光信号からの漏れ光を受光することになる。また、損失付加手段330で損失を付加した図9(d)の場合には、検出器312で−75dBmの強度の光信号からの漏れ光を測定することになる。
損失を付加しないときの光信号の強度−73dBm、及び損失を付加したときの光信号の強度―75dBmを線形値に変換すると、それぞれ5.01×10−8mW、及び3.16×10−8mWとなる。よって、両者の差は1.85×10−8mWとなるが、このようなわずかな強度の変化による漏れ光の変化は極めて小さく、これを検出することはほとんど不可能である。よって、損失付加の有無による検出器312の測定値の変化が十分小さい(閾値A2より小さい)ときは、当該心線にONU120が接続されていると判定できる。
上記では、波長λ1の下り方向の光信号からの漏れ光の影響については考慮していなかったが、検出器312で波長λ1の下り方向の光信号の漏れ光も受光してしまう場合には、検出器312の測定値はさらに大きくなる。しかしながら、検出器312で受光する波長λ1の下り光信号は、損失付加手段330で損失を付加するかしないかで変化することはないことから、損失を付加するときと付加しないときとの検出器312による測定値の差は、反射光の強度の変化だけで決まることになる。従って、検出器312の測定値の変化を検知するか否かによって、反射光が通光しているか否かを判定することができ、これにより新設対象心線か否かを正確に判定することが可能となる。
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る光心線識別方法及び光心線識別装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における光心線識別方法及び光心線識別装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明の実施形態に係る心線識別方法の処理の流れを示す流れ図である。 本発明の実施形態に係る心線識別方法を説明するためのPON通信システムの模式図である。 本発明の実施形態に係る心線識別装置を示すブロック図である。 PON通信システムの概略構成を示すブロック図である。 従来の心線識別方法を説明するためのPON通信システムの模式図である。 本発明の別の実施形態に係る光心線識別方法を説明する全体流れ図である。 本発明の別の実施形態に係る心線識別装置を示すブロック図である。 本発明の別の実施形態に係る心線識別方法の処理の流れを示す流れ図である。 本発明の別の実施形態に係る心線識別方法を用いた1実施例を説明する図である。
符号の説明
100、900 PON通信システム
110 局
111、901 OLT
120、903 ONU
130、902 スプリッタ
140、910 光ファイバケーブル
150、920 引き落としクロージャ部
200、300 心線識別装置
210、310 検出部
211、212、311、312 検出器
313、314 フィルタ
220、320 判定処理部
330 損失付加手段

Claims (5)

  1. 局側から光信号を送出するOLT(Optical Line Terminal)と、ユーザ側から異なる波長の光信号を送出するONU(Optical Network Unit)とを、スプリッタを介して光ファイバケーブルで接続して構成されるPON(Passive Optical Network)通信システムにおいて、前記スプリッタと前記ONUとの間に配索された前記光ファイバケーブル内の複数の心線から前記ONUを新設可能な未使用心線(以下では新設対象心線という)を識別する光心線識別方法であって、
    一端が前記スプリッタの分波側に接続された前記心線は、他端が事前に反射させる手段が講じられており、
    前記OLTから送出される前記光信号(以下では下り光信号という)と、前記下り光信号が前記反射させる手段が講じられた他端で反射されて前記OLT側に向けて伝送される反射光信号(以下では上り光信号という)とを前記スプリッタより下流側で測定し、
    前記下り光信号と前記上り光信号とがともに検出されるときの前記心線を前記新設対象心線と識別する
    ことを特徴とする光心線識別方法。
  2. 前記スプリッタより下流側の所定の測定位置で前記心線を通光する前記異なる波長の光信号を測定して第1の測定値を取得し、
    前記第1の測定値が所定の閾値より小さいとき、
    前記測定位置で前記心線を通光する前記上り信号を測定して第2の測定値を取得し、
    前記測定位置より下流側で前記心線に所定の大きさの損失を付与したときの前記上り信号を測定して第3の測定値を取得し、
    前記第2の測定値と前記第3の測定値とが異なるとき、前記心線を前記新設対象心線と判定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の光心線識別方法。
  3. 局側から光信号を送出するOLTと、ユーザ側から異なる波長の光信号を送出するONUとを、スプリッタを介して光ファイバケーブルで接続して構成されるPON通信システムにおいて、前記スプリッタと前記ONUとの間に配索された前記光ファイバケーブル内の複数の心線から前記ONUを新設可能な未使用心線(以下では新設対象心線という)を識別する光心線識別装置であって、
    前記スプリッタより下流側に設けられ、前記OLTから送出される前記光信号(以下では下り光信号という)を検出する第1の検出器と、前記下り光信号が事前に反射させる手段が講じられている前記心線の端面で反射されて前記OLT側に向けて伝送される反射光信号(以下では上り光信号という)を検出する第2の検出器とを有する検出部と、
    前記検出部の前記第1の検出器と前記第2の検出器とからそれぞれの測定値を入力し、前記第1の検出部で前記下り光信号が検出され、かつ前記第2の検出部で前記上り光信号が検出されたときの前記心線を前記新設対象心線と判定する判定処理部と、を備える
    ことを特徴とする光心線識別装置。
  4. 前記第1の検出器と前記第2の検出器とは、それぞれ前記下り光信号と前記上り光信号とを選択的に受光する波長選択機能を備える
    ことを特徴とする請求項2に記載の光心線識別装置。
  5. さらに、前記心線に所定の大きさの損失を付加する損失付加手段を備え、
    前記第1の検出器及び前記第2の検出器には、前記下り信号及び前記上り信号を遮断するフィルタが着脱可能にそれぞれ備えられ、
    前記判定処理部は、前記第1の検出器及び前記第2の検出器に前記フィルタを装着して前記第2の検出器で前記異なる波長の光信号を測定した第1の測定値と、前記第1の検出器及び前記第2の検出器から前記フィルタを取外して前記第2の検出器で前記上り光信号を測定した第2の測定値と、前記第1の検出器及び前記第2の検出器から前記フィルタを取外しかつ前記損失付加手段で前記損失を付加して測定した第3の測定値と、をそれぞれ入力し、前記第1の測定値が所定の閾値より小さく、かつ前記第2の測定値と前記第3の測定値とが異なると判定された前記心線を前記新設対象心線と識別している
    ことを特徴とする請求項2に記載の光心線識別装置。
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