JP4927050B2 - 廃棄プラスチックの成型方法 - Google Patents

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Description

本発明は、廃棄プラスチックの成型方法、特にコークス炉にて乾留する廃棄プラスチックの再利用に適した成型方法に関する。
従来は、プラスチック加工工程で発生した屑プラスチックや使用済みプラスチック(以下、廃棄プラスチックと称す)は、焼却されるか、埋め立て処分されるかであった。その結果、焼却の場合は、高温燃焼のため焼却炉が破損したり、塩素との反応によりダイオキシンを発生するといった問題点が生じていた。また、埋め立て処理においても、プラスチックは腐敗せず土壌が固化しないため、造成地の利用価値が低いといった問題があった。
その対策として、種々のプラスチックのリサイクル技術が実施されている。例えば、プラスチックの油化やガス化が行なわれているものの、その処理費用が高いといった問題がある。一方、プラスチックをコークス炉で乾留することは、大量のリサイクルが可能な経済的な方法であり、コークス炉での乾留では、燃料ガスや油化物とともにコークスも回収できることから、利用用途の多様化の面でも優れた方法である。
コークス炉での廃棄プラスチックの乾留方法は、廃棄プラスチックを石炭と混合してコークス炉中に入れ約1200℃で乾留する方法であり、例えば特許文献1に記載されている方法である。使用するプラスチックの種類によって異なるものの、使用したプラスチックの約35%はコークスに、約25%は油化物に、約40%はコークス炉ガスになる。プラスチック起因のコークスは、石炭起因のコークスと混合した状態でコークス炉から排出され、高炉や合金鉄製造工程等での還元剤や燃料として利用される。
前述したように、コークス炉で廃棄プラスチックを乾留する方法は、経済的にプラスチックをリサイクルする方法として有効な手段である。しかし、プラスチックを使用する方法とコークス品質の間の関係に関する正確な知識がなかったため、製造したコークス品質に問題が生じていた。例えば、特許文献2に記載される技術を用いるガスやタールを多く回収する手段では、コークス品質への配慮がなく、プラスチックを大量に混合するとコークス強度が低下するといった問題が生じていた。ちなみに、コークスは、高炉やキュポラ等の大型設備で使用するため、これらの炉内での荷重条件に耐える必要があり、強度の高いものが求められており、コークス強度の悪化は重要な品質問題となる。
一方で、従来は、入手が容易な、プラスチックの加工工程で発生する廃棄プラスチック(以下、屑プラスチックと称す)をコークス炉で使用していた。この屑プラスチックは厚いチップ状のものが主体で、比較的純度が高く、形状もそのままコークス炉で使用できるものであったため、従来は、コークス炉操業に対する灰分の影響や見掛け密度の影響に関する知見がなかった。その結果、純度が悪く、形状も薄い物が多い等の問題がある家庭等から発生する使用済みプラスチック(以下、使用済みプラスチックと称す)を使用する際にも、簡便な方法でコークス炉にて使用していたことから、これを用いた場合においては、特に、コークスの品質への悪影響が生じていた。
使用済みプラスチックは、形状の悪いことや見かけ密度が小さいことによる問題が生じていた。あまり小さいプラスチック、例えば、5mm以下径で1mm以下の厚みのものを大量に使用する場合は、製造されたコークスは、コークスの強度が悪化する問題が生じていた。更に、使用されたプラスチックが大き過ぎる場合は、塊コークス歩留が低下する問題が認められていた。品位の悪く、灰分の多い使用済みプラスチックを大量に使用すると、塊コークスの強度が低下する問題があった。
特許文献3には、廃棄プラスチックを圧縮成型して見掛け密度が0.40〜0.95kg/リットルのプラスチック粒状化物とし、これを石炭に対して5%以下の質量比率で混合してコークス炉で乾留する方法が開示されている。見かけ密度が0.40kg/リットル以上の粒状化プラスチックを使用することにより、コークス粉状化の問題を解決できる。一方、プラスチックを溶融させつつ成型しようとすると、溶融する際に有害ガスが発生するなどの問題が起きることから、溶融する方法は経済的、かつ、安全な方法ではないとして、プラスチックを溶融せずに圧縮成型する条件として、見かけ密度上限を0.95kg/リットルとしている。成型時のプラスチック温度については、プラスチックの含有水分を除くために100℃以上とし、温度が160℃を超えるとプラスチックの一部が溶融を開始して有害ガス発生をさせるため、160℃以下が好ましいとしている。
特許文献4に記載の廃棄プラスチックのコークス炉での処理方法においては、廃棄プラスチックを温度300℃で脱塩素処理し、さらに圧縮成型して密度を0.78〜1.0g/cm3に調整し、この成型した廃棄プラスチックをコークス炉に所定量配合して乾留する方法が開示されている。
特開昭48−34901号公報 特開平8−157834号公報 特開2001−49261号公報 特開2002−12876号公報
特許文献3に記載の方法では、有害ガス発生防止のために成型時の温度を160℃以下に限定しているため、成型時における廃棄プラスチックの溶融が不十分となり、到達する見かけ密度も0.95kg/リットル以下である。この見かけ密度は石炭並みではあるが、石炭に比べて揮発分が多く、油化物、ガスとして抜けやすいので、コークス炉配合原料とするにはまだ見かけ密度が十分ではない。また、160℃で溶融しないプラスチック成分が粒状化プラスチックの中に元の形状を保った粒子として残るため、その粒子界面から割れを生じやすく、特許文献3に示される適正な粒子径5〜80mmをコークス乾留初期で保つことも難しくなる。
一方、特許文献4に記載の方法では、廃棄プラスチックを300℃の温度で脱塩素処理しているが、脱塩素処理によって発生する塩化水素ガスを処理するための装置が必要になり、設備コスト及び運転コストの増大を避けることができない。
本発明は、コークス炉配合原料として好ましい程度に揮発分や油化物が減少しており、コークス炉装入後も好適な形状を保持できるプラスチック粒状化物を形成することが可能であり、生成する塩化水素ガスを処理するための高価な設備を必要としない廃棄プラスチックの成型方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)廃棄プラスチックを加熱手段で加熱しつつ管状部の内部を押し出す形式で160℃超250℃以下の温度で圧縮成型し、圧縮成型時に発生するガスを水又は安水と接触させ、該水又は安水をコークス炉に付随する安水処理設備の安水に合流させることを特徴とする廃棄プラスチックの成型方法。
(2)前記圧縮成型により見かけ密度が0.7〜1.2kg/リットルのプラスチック粒状化物とすることを特徴とする上記(1)に記載の廃棄プラスチックの成型方法。
本発明は、廃棄プラスチックを圧縮成型してプラスチック粒状化物とし、このプラスチック粒状化物を石炭と混合してコークス炉にて乾留するに際し、廃棄プラスチックを160℃超の温度で一部又は全部を溶融させて圧縮成型し、見かけ密度が0.7〜1.2kg/リットルのプラスチック粒状化物とすることにより、コークス炉へのプラスチック装入割合が高くともコークス強度を低下させない。
また本発明は、圧縮成型時の温度を250℃以下に抑えるとともに廃棄プラスチックの圧縮成型時に発生するガスを水又は安水と接触させ、該水又は安水をコークス炉に付随する安水処理設備の安水に合流させるので、圧縮成型時に発生するガス中の塩化水素を除去することができ、また除去処理を安価に行うことが可能になる。
本発明において使用する廃棄プラスチックとしては、使用済みプラスチックを中心に使用する。使用済プラスチックは、その成分がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル等、多様である上に、残存調味料、飲料の影響やプラスチック以外の混合物が多いため、分別・洗浄操作を経ても資源として回収するマテリアルリサイクルが難しく、従来は燃焼による熱回収、サーマルリサイクルしか行われていなかった。本発明ではこのような従来有効に再利用することができていなかった使用済プラスチックを主に用いてコークス炉でガス、油、炭素製品(コークス)へのマテリアルリサイクルを行うものである。このため、使用済みプラスチックの回収にあたっては分別収集を原則とはしているものの、種類が多岐に亘り、かつ混在している水分が10〜30%と多めである。この使用済みプラスチックを異物除去、裁断の工程を経た後、加熱圧縮成型して粒状化物とする。
本発明においては、廃棄プラスチックを160℃超250℃以下の温度で一部又は全部を溶融させて圧縮成型し、これにより見かけ密度が0.7〜1.2kg/リットルのプラスチック粒状化物とする。
特許文献3に記載の方法では、圧縮成型時の温度を160℃以下とし、プラスチックを溶融させずに成型していたので、プラスチックは破砕された形状のまま表層のみが接着するため、得られる成型物の密度が低く、均質でない。また、プラスチック同志の接着が弱いため、成型物の搬送過程またはコークス炉装入時に崩壊し、コークス炉操業およびコークス品質に悪影響を与える。本発明においては、圧縮成型時に意図的に廃棄プラスチックの一部又は全部を溶融させて成型するために、圧縮成型時の温度を160℃超とするのが好ましい。ポリエチレンは160℃超でほぼ完全に溶融し、ポリスチレン等の溶融点の高いものでも200℃前後でほとんど溶融する。また、廃プラスチック中に混入したPETなどの特別に溶融点の高いものも周辺の存在する溶融したポリエチレンなどにより取り込まれていて、高密度の均質な構造となる。また、溶融の結果として廃棄プラスチックが元の形状のまま粒状化物のなかに残ることがないので、粒状化物の強度が増大し、石炭とともにコークス炉炭化物に装入した後に形状が崩れることがない。圧縮成型時のプラスチック温度は、180℃以上とするとより好ましい。
廃棄プラスチックを160℃超250℃以下の温度で一部又は全部を溶融させて圧縮成型した結果として、上記のように見かけ密度が0.7〜1.2kg/リットルのプラスチック粒状化物となる。
廃棄プラスチックを石炭と混合してコークス炉で乾留する場合には、その大部分が熱分解反応により、ガス状または成分となり、コークス炉ガスとともに炉外に排出され、乾留後には約20質量%の固体状の残渣(主に炭素成分)が残る。
この残渣は非常に多孔質であり、この周辺に存在するコークス組織は脆弱化する傾向にあり、コークス強度などの品質の劣化を招く原因となる。
原料に粘結炭などを添加する方法等の施策なしに、コークス品質を保持するためには、廃棄プラスチック由来の非常に多孔質な残渣を増加(より厳密には、残渣の表面積を増加)させないことが重要であり、本発明では、廃棄プラスチック由来の残渣の表面積を低下させるための手段として、圧縮成型により廃棄プラスチックの密度を上げる。廃棄プラスチックの成型物の見掛け密度が高いほど、その表面積を低減することが期待できる。
図1に見掛け密度が0.5g/cm3、0.7g/cm3および0.95g/cm3の廃棄プラスチック成型品を石炭と混合して乾留後、石炭に対する廃棄プラスチックの添加比率とコークス強度との関係を調査した結果を示す。
図1から、圧縮成型により廃棄プラスチックの見掛け密度を0.7g/cm3以上に高密度化することにより石炭に対する質量比で廃棄プラスチックを6質量%まで添加した場合でも、廃棄プラスチック添加によるコークス強度低下を低く抑えられる。一方、廃棄プラスチックの見掛け密度が0.5g/cm3以下では、石炭に対する質量比で廃棄プラスチックを6質量%まで添加した場合ではコークス強度低下を低く抑えることが困難となる。
なお、DI150 15は、JIS K2151(1993)に準じて測定されたコークスのドラム強度指数(150回転後+15mm指数)であり、ΔDI150 15は廃棄プラスチックの添加率0%(無添加)時のDI150 15をベースとしたときの、DI150 15の変化量を表す。
図1から、コークス炉に本発明方法で成型したプラスチック粒状化物を装入するに際し、プラスチックの質量比率が石炭に対して6質量%を超える場合は、廃棄プラスチックの見掛け密度が0.5g/cm3以下では、塊コークスの強度低下の問題が生じることがある。
したがって、本発明のプラスチック粒状化物の装入範囲を石炭の質量に対して6質量%以下とするのが好ましい。
圧縮成型したプラスチック粒状化物の見かけ密度の下限を0.7kg/リットルとしたのは、乾留後の廃棄プラスチックに由来する残渣の表面積を減少させてコークス強度低下を抑えるためである。また、0.7kg/リットル未満となると原料の装入密度が低くなりコークス炉の生産性を阻害する上に、石炭に対する質量比で廃棄プラスチックを6質量%まで添加した場合には、コークス強度などの品質悪化の可能性が生じるからである。
また見かけ密度の上限を1.2kg/リットルとしたのは、それより高くなると石炭の真比重値1.4kg/リットルに近づくため、コークス炉炭化室内で偏析を起こして、コークス生産性・品質悪化の原因となることと、高比重のプラスチック成分は溶融性が悪い物性であるため、比重を管理することにより使用済みプラスチックの溶融性を管理できるからである。
本発明においては、圧縮成型時の廃棄プラスチック温度の上限を250℃とする。本発明で使用する廃棄プラスチック中には、ポリ塩化ビニル(PVC)が含有されている。図2には、横軸に各種プラスチックの加熱温度、縦軸に加熱後の質量(加熱前質量との比)を示す。図中、Goonyella炭は代表的なコークス製造用石炭であるGoonyella炭を示し、PVCはポリ塩化ビニル、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレン、PSはポリスチレン、PETはポリエチレンテレフタレートを示す。図2から明らかなように、PVCについては200℃台において質量の低下が激しく、300℃を超えると質量低下の勾配が小さくなる。この図から、PVCの分解で塩化水素が活発に発生するのは250℃を超えてからであることがわかる。300℃に達するとPVCの相当部分は分解して塩化水素発生量が大幅に増大することとなる。本発明では圧縮成型時のプラスチック温度を250℃以下としているので、圧縮成型時に発生する塩化水素の量を低く抑えることができ、圧縮成型器の排ガス中塩化水素の処理を容易に行うことが可能になる。PVC以外のプラスチック成分については、250℃では全く分解が起こらず、付着した軽質油が蒸発する程度である。圧縮成型時に発生するガスの主要部は水蒸気であり、この水蒸気中に塩化水素が実質的に問題とならない少量含まれたガスが発生する。従来は、事前に300℃以上の温度まで脱塩素処理を施し廃プラスチック中の塩素含有量が0.2質量%未満程度まで低下した後、圧縮成型する必要があったが、本発明では、塩素含有量が0.2質量%以上含有する廃プラスチックを160〜250℃の温度で塩化水素の発生を抑制しつつ圧縮成型することができる。
圧縮成型時の廃棄プラスチック温度の上限を220℃以下とするとより好ましい。220℃であればPVCの分解はばらつきを含めても2〜3%に留まり、塩化水素の発生も少なく、発生水蒸気がpH4の弱酸性を示す程度である。
廃棄プラスチックを圧縮成型する方法として、例えば、図3に示す装置のような、金属製もしくはそれに類似する管状の穴型の内部で押し出す方式を用いることができる。電気ヒーター等の加熱手段を付加し、これに圧縮時の摩擦熱が加わるので容易に160℃超250℃以下の温度範囲に調整できるため、この方式をとることが経済的な圧縮加工である。具体的な加工方法としては、適正なサイズまで裁断された使用済みプラスチックは、供給装置(フィーダー)1から圧縮成型器2に供給され、圧縮スクリュー21で圧縮成型器2のケーシングの内部に押し込まれ、ケーシングは電気ヒーター等の加熱手段3で加熱されており、複数の穴を有する切り出し装置5から所定のサイズの粒状化プラスチックとして装置外に押し出される。これをカッター51にてコークス炉に使用できる適切な長さに切断する方式である。圧縮スクリュー21は供給装置1直後が機械的な圧縮脱水部となっており、この脱水部の後に加熱手段3と水冷配管を設けて、温度制御する機能を持たせている。洗浄装置4に導かれるスクリュー部からの水蒸気の排気管7はスクリュー機長の途中に設けられている。
なお、供給装置1から圧縮成型器2に供給される廃棄プラスチックの裁断サイズは、高密度成型品の安定製造、あるいは成型品の搬送性の観点から、平均直径50mm以下とするのがより好ましい。
また、圧縮成型器2により、廃棄プラスチックを加熱しながら圧縮成型する場合、加熱条件、成型速度、廃棄プラスチック組成などによっては、廃棄プラスチックの熱分解ガスが成型品から抜けきれずに、成型品内に残留し、成型品内部の空隙が増加して成型品の見掛け密度を若干低下させることもある。このことから、吸引ブロアー8などにより成型器の排気管7から廃棄プラスチックの熱分解ガスを速やかに成型品内から除去することが望ましい。
廃棄プラスチックの圧縮成型時に発生するガスの処理方法について述べる。
圧縮成型時に発生するガスの主成分は水蒸気である。また、本発明においては圧縮成型時のプラスチック温度が250℃以下であるため、塩素含有量が0.2質量%以上含有する廃棄プラスチックを圧縮成型する場合でも発生する塩化水素の量はさほど多くない。従って、除去すべき成分はわずかな塩化水素と軽質油分のみであるため、大規模な塩化水素処理装置を設ける必要はない。
本発明においては、廃棄プラスチックの圧縮成型時に発生するガスを水又は安水と接触させる。接触方法としては、水又は安水を満たした洗浄槽4中にガスを吹き込んで気泡として上昇させる方法、あるいはガスの通路に水又は安水を液滴や散布したり噴霧する方法を採用することができる。この接触において、ガス中のドレン化水分、塩化水素及び油分は水又は安水中にトラップされ、ガス中の塩化水素を除去することができる。このとき、ガス中の蒸気の熱量も水又は安水中に移るため、上記洗浄槽4には水又は安水を連続的に流入させ、オーバーフローさせる。洗浄槽4では蒸気のドレン化の際に減容されるため、吸引ブロワー8を設置して排気ガスを吸引する。吸引したガスは洗浄槽4からの持ち込み安水ミストによるアンモニア臭が残るため、2段の淡水スプレーを有する水洗装置9を設けて洗浄し、洗浄水はオーバーフロー安水と合流させる。
ガスを水と接触させたときは、ガス中の塩化水素は水に溶解し、水が弱酸性の塩酸となる。ガスを安水と接触させたときは、ガス中の塩化水素と安水中のアンモニアとが反応し、塩化アンモニウムを含む安水となる。
次に塩化水素を溶解した水又は安水をコークス炉に付随する安水処理設備の安水に合流させる。上記のように槽からオーバーフローさせているときは、オーバーフロー水を安水処理設備の安水に合流させればよい。洗浄槽4からの水又は安水は、まずコークスフィルター10において油分を除去し、その後コークス炉安水処理設備の曝気槽11において安水に合流する。曝気槽11において水溶性有機物を微生物の作用により分解する曝気処理が行われ、次いで沈殿槽12において微生物のフロックを沈殿させる沈殿処理を経て清浄な水として海域または河川に放流される。プラスチックから持ち込まれる塩素分は石炭起因で本来の安水中に含まれるそれに比べて低濃度であり、また特別な処理を行わずに放流することができる。
本発明で成型してコークス炉で乾留するプラスチック粒状化物の粒径としては、粒径が5〜80mmとすると好ましい。コークス炉での乾留中にプラスチックのガス分と油分が抜けていく結果、サイズが5mm以下の場合は、プラスチックの存在していた部分のコークスに小さい穴が多数の開いた状態、いわゆるすの開いた状態となり、その結果コークス強度が低下するからである。また、80mm以上の成形品を使用した場合は、製造されたコークスに大きな穴があり、この部分が連結することが多く、ここに灰分の多い部分が生じて、この部分のコークスが割れやすくなる。その結果粉の発生率が増加して塊コークス歩留が悪化する。しかし、5mm以上、80mm以下のサイズのプラスチックを使用した場合はこれらの問題が生じることがなく、粉の発生、コークス強度の点でも通常のコークスと遜色ないものが製造できる。
圧縮成型時に発生するガスの処理としてコークス炉に付随する安水処理設備を用いる本発明の廃棄プラスチックの成型方法は、コークス炉に装入する原料としてのプラスチック以外の用途に用いることができる。すなわち、廃棄プラスチックを加熱手段で加熱しつつ管状部の内部を押し出す形式で160℃超250℃以下の温度で圧縮成型し、圧縮成型時に発生するガスを水又は安水と接触させ、該水又は安水をコークス炉に付随する安水処理設備の安水に合流させることを特徴とする廃棄プラスチックの成型方法である。圧縮成型時のプラスチック温度は250℃以下なので、発生する塩化水素の量はそれほど多くない。また、コークス炉に付随する安水処理設備を用いて塩化水素の処理を行うことができるので、非常に安価にガスの処理を行うことができる。
本発明の廃棄プラスチックの成型方法で得られる廃プラスチックは、コークス炉に装入する原料としてのほかに、近年、広く普及し始めている高炉型のごみ溶融炉の燃料として利用することも期待できる。
本発明の廃棄プラスチックの再利用方法により、表1に示す性状の廃棄プラスチックをコークス炉で再利用した。なお、PVC中のCl含有量は約55質量%であるから表1をもとに廃棄プラスチック中の塩素含有量は約3質量%である。また、石炭は、表2に示す性状の原料炭Aおよび原料炭Bを1:1で混合した配合炭を使用した。処理条件を表3に示す。乾留したコークス品質指標としてはコークス強度指数を示した。なお、プラスチック粒状化物の製造は図3に示す装置で行い、コークス炉にて1250℃で乾留した結果である。比較例1は、プラスチックを装入せずに石炭のみを原料としてコークスを製造した場合の操業結果である。また、比較例2〜5は、圧縮成型時の温度が本発明範囲から外れる場合であり、圧縮成型時に発生するガスについては塩化水素除去処理を行わなかった。
Figure 0004927050
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本発明例1は本発明の典型的な条件での実施例である。プラスチック粒状化物の形状は長短径比がほぼ1程度のもので平均径は50mmのものである。この径はコークス炉で使用している石炭の最大径にほぼ匹敵しており、大きな石炭粒に相当するプラスチック粒が入っていることになる。見かけ密度は1.10kg/リットルで、石炭への混合割合は2.0%である。このような条件で乾留したコークス強度指数は84.2であり、プラスチックを用いない操業結果の比較例1のコークス強度84.4に対してほとんどプラスチックの影響による低下がないことが確認された。
本発明例2は本発明例1とほぼ同じ成型条件だが、成型温度のみを170℃に抑制して実行している。その結果、成型温度が220℃の本発明例1に比較して低い分、ポリスチレン(PS)やポリエチレンテレフタレート(PET)など溶解しにくいプラスチック成分の残存部分が発生しており、プラスチック粒状化物の表面にけば立ちが若干発生し、充填性がやや低下して見掛け密度が低下し、0.70kg/リットルとなっている。これにより石炭と混合した際の充填性が低下したため、コークス強度指数は83.4にとどまった。
本発明例3〜7は本発明例1に対して切り出し装置でのダイス径を小さなものとして平均径を25mmとしているため、コークス炉での装入嵩密度が50mm品の本発明例1よりもやや低く、見かけ密度が0.93〜0.95kg/リットルとなり、石炭と混合した際の充填性がやや低下している。この充填性の低下によるコークス強度指数の低下の影響は、プラスチックの石炭への混合割合の増加とともに顕著になり、本発明例3の混合割合が1.0%の場合にはコークス強度指数は84.4であったものが、本発明例7の混合割合が6.0%の場合には、コークス強度指数は83.0にとどまった。しかし、本発明例1〜7は何れも、本発明範囲から外れる条件で行った比較例に比べて良好なコークス強度指数を実現することができた。
比較例2〜5は、圧縮成型時の温度が100〜160℃と低い温度であったため、コークス強度指数がいずれも低い値となった。
本発明例1〜7は、比較例2〜5に比較して圧縮成型時のプラスチック温度を高くしているので、成型時の水蒸気及び塩化水素系有害ガスの発生量は増加しているが、これらは全て洗浄装置4において安水に捕集されており、むしろ温度を抑制しているものの洗浄装置を持たずに実施した比較例2〜5よりも排気は低温で湯気がなく、刺激臭も少なく、当然排ガス中の塩化水素含有量も少なくなっている。
以上のようにガスの洗浄装置を設置して高温での成型を可能としてプラスチック粒状化物の見かけ密度を向上させたことによって、コークス炉へのプラスチック装入割合が高くともコークス強度を低下させない方法が確立できた。また、圧縮成型時の温度範囲を適切な範囲に定めてプラスチックの一部又は全部を溶融させて圧縮成型を行い、同時にコークス炉に付随した安水処理設備を塩化水素含有ガスの処理設備として使用することで、大規模な追加設備を必要としない経済的な廃棄プラスチック処理ができるようになる。
石炭に対する廃棄プラスチックの添加比率とコークス強度との関係を示す図である。 各種のプラスチックの加熱温度と加熱による質量減少の様子を示す図である。 本発明を適用する廃棄プラスチックの圧縮成型器及びこの成型器から発生するガス中の塩化水素を処理する装置を示す図である。
符号の説明
1 供給装置
2 圧縮成型器
3 加熱手段
4 洗浄装置
切り出し装置
排気管
8 吸引ブロワー
9 水洗装置
10 コークスフィルター
11 曝気槽
12 沈殿槽
13 沈殿活性汚泥引き抜きライン
14 洗浄後排水
21 圧縮スクリュー
51 カッター

Claims (2)

  1. 廃棄プラスチックを加熱手段で加熱しつつ管状部の内部を押し出す形式で160℃超250℃以下の温度で圧縮成型し、圧縮成型時に発生するガスを水又は安水と接触させ、該水又は安水をコークス炉に付随する安水処理設備の安水に合流させることを特徴とする廃棄プラスチックの成型方法。
  2. 前記圧縮成型により見かけ密度が0.7〜1.2kg/リットルのプラスチック粒状化物とすることを特徴とする請求項1に記載の廃棄プラスチックの成型方法。
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