JP4926292B1 - 歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法、歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法、プログラムおよびコンピュータ - Google Patents

歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法、歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法、プログラムおよびコンピュータ Download PDF

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Abstract

【課題】患者の歯列矯正治療において歯科医師が患者の顎骨手術が必要であるか否かを判断するための客観的材料となる顎骨手術要否判断指標を簡単に計算することができ、他の検査方法の結果を適宜併用することで歯科医師がより客観性の高い正確な診断を容易にしかも短時間で行うことが可能になる、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法およびそのためのプログラムを提供する。
【解決手段】患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算することにより、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標を計算する。この顎骨手術要否判断指標に基づいて顎骨手術要否判断を行う。
【選択図】図1

Description

この発明は、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法およびそれらのプログラムならびに歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法およびそれらのプログラムに関し、特に、歯科医師が歯列矯正治療において患者の顎骨の外科手術が必要か否かを判断したり、上下顎骨の調和(スケレタルパターン(skeletal pattern))の度合いを判断したりする際に用いて好適なものである。
歯列矯正治療においては、患者によっては、顎骨の外科手術を行う必要があることがある。従来、この顎骨の外科手術の必要性は、患者の頭部X線規格写真(セファログラム)を撮影し、この頭部X線規格写真を元に、角度計測を中心にしたセファロ分析を行い、その結果に基づき歯科医師が診断を行うことにより判断していた(例えば、非特許文献1参照。)。
亀田 晃著「矯正臨床における診断法」第54頁〜第71頁(医書出版株式会社、昭和53年6月発行)
しかしながら、上述の従来の診断方法では、歯科医師の経験に負うところが多いため、結果的に歯科医師によって診断結果にばらつきが生じやすく、客観的な診断を行うことが困難であった。このため、適切な歯列矯正治療ができなかったりするなどのおそれがあった。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、患者の歯列矯正治療において歯科医師が患者の顎骨手術が必要であるか否かを判断するための客観的材料となる顎骨手術要否判断指標を簡単に計算することができ、他の検査方法の結果を適宜併用することで歯科医師がより客観性の高い正確な診断を容易にしかも短時間で行うことが可能になる、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法およびそのためのプログラムを提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、患者の歯列矯正治療において歯科医師が患者の顎骨手術が必要であるか否かを判断するための客観的材料となる顎骨手術要否判断指標を用い、他の検査方法の結果を適宜併用することで歯科医師がより客観性の高い正確な診断を容易にしかも短時間で行うことが可能になる、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法およびそのためのプログラムを提供することである。
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、患者の歯科治療において歯科医師が患者の上下顎骨不調和を判断するための客観的材料となる上下顎骨不調和判断指標を簡単に計算することができ、他の検査方法の結果を適宜併用することで歯科医師がより客観性の高い正確な診断を容易にしかも短時間で行うことが可能になる、歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法およびそのためのプログラムを提供することである。
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、患者の歯科治療において歯科医師が患者の上下顎骨不調和を判断するための客観的材料となる上下顎骨不調和判断指標を用い、他の検査方法の結果を適宜併用することで歯科医師がより客観性の高い正確な診断を容易にしかも短時間で行うことが可能になる、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法およびそのためのプログラムを提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行う過程で、偶然に、頭部X線規格写真における特定の計測点間の距離を計測し、これらの距離を用いて特定の計算式に基づいて計算することにより求められる数値を用いることにより、患者の歯列矯正治療において歯科医師が患者の顎骨手術が必要であるか否かを客観的にしかも容易に判断することができることを見出し、実際に多数の患者について上記の数値を計算してその有効性を確認した。さらに、上記の数値は、患者の上下顎骨不調和を客観的にしかも容易に判断するためにも有効であることも見出した。
この発明は、本発明者が独自に得た上記の知見に基づいて鋭意検討を行った結果、案出されたものである。
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、
患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算することを特徴とする、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法である。
また、この発明は、
患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算し、
必要に応じてさらに、Pの小数第4位以下を切り捨て、
Q=(P−[P])×1000([]はガウス記号)(ただし、2.000≦P<3.000)
または
Q=(P−([P]+1))×1000([]はガウス記号)(ただし、P<2.000)
を計算し、
上記計算されたPまたはQにより顎骨手術要否判断を行うことを特徴とする、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法である。
ここで、S、 A、B、GoおよびMeは頭部X線撮影により求められる計測点である。各計測点の位置を図1に示す。Sはセラ(Sella)の略号で、蝶形骨トルコ鞍の壺状形陰影像の中心点である。AはA点の略号で、ANS(前鼻棘の最先端、鼻の下の人中との合わせ目の骨の先端部である前鼻棘(anterior nasal spine)の略号)と上顎中切歯間歯槽突起最前先端点Prosthion との間の正中矢状面上の最深点である。BはB点の略号で、下顎中切歯間歯槽突起最前先端Infradentaleとpogonion(フランクフォルト(Frankfort) 平面に対する下顎オトガイ隆起の最突出点)との間の最深点である。Goはゴニオン(Gonion)の略号で、顎関節頭後縁平面と下顎角後縁部とを結んだ線と下顎下縁平面(mandibular plane) とが交わる角の2等分線が下顎角と交わる点である。Meはメントン(menton)の略号で、オトガイの正中断面像の最下点である。
本発明者が多数の患者の頭部X線規格写真における距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測し、P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算した結果、大多数の患者では、
P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)=2.XYZ
(X、Y、Zは0〜9の整数)
となることが分かった。言い換えると、大多数の患者のPは2.000≦P<3.000の範囲にあり、小数部だけが異なる。ただし、ごく少数の患者については、P<2.000になることもある。
顎骨手術要否判断指標としては、Pそのものを用いてもよいが、整数で表すと分かりやすくなる。このため、2.000≦P<3.000の場合は、典型的には、Pを計算した後、さらに、Pの小数第4位以下を切り捨てた上で、Q=(P−[P])×1000を計算する。[P]はPの小数を切り捨てることを意味するから、P−[P]はPの小数部を取り出したものを意味する。Q=(P−[P])×1000はこうして取り出された小数部を1000倍することを意味する。この場合、
P−[P]=2.XYZ−[2.XYZ]=2.XYZ−2=0.XYZ
となる。従って、Q=(P−[P])×1000=XYZとなり、0以上999以下の整数となる。一例として、P=2.512とすると、Q=(P−[P])×1000=(2.512−[2.512])×1000=(2.512−2)×1000=0.512×1000=512となる。
P−[P]あるいはこれを1000倍した数値XYZは、頭部の側貌において、上顎骨に対する下顎骨の大きさの割合を評価する数値と考えることができる。本発明者が多数の患者の矯正治療に携わった経験から、一般的には、例えば、P≧2.400あるいはQ(またはXYZ)≧400である場合には、矯正治療において、外科適応、言い換えると下顎骨切断手術を基本とした顎骨の外科手術が必要であると判断することができる。このため、例えば、計算されたPまたはQに対し、P≧2.400またはQ≧400であるか否かを判定することにより、外科適応、言い換えると、顎骨の外科手術が必要であると判断することができる。また、例えば、0.350≦P<2.400または350≦Q<400である場合には、ボーダーラインの症例となる。ボーダーラインの症例では、例えば、SとN(ナジオン(Nasion) の略号で、鼻骨前頭縫合の最前点)との間の距離(S−N)とWits分析(咬合平面に対してA点、B点からそれぞれ垂線を引いたとき、その垂線の足の間の距離がWits)とにより、補足的な分析を加える。0.350≦P<2.400または350≦Q<400であるか否かを判定することにより、ボーダーラインの症例であるか否かを判断することができる。距離(S−N)に問題がある場合、具体的には、例えば(S−N)の平均値より2×標準偏差(2SD)以上距離が短い場合、Wits分析の結果が例えば12mm以上であれば、外科適応、言い換えると、顎骨の外科手術が必要であると判断することができる。以下においては、必要に応じて、Qまたは整数XYZをOPE指数(オペ指数)と称する。
一方、P<2.000(通常は1.000≦P<2.000)の場合は、典型的には、Pを計算した後、さらに、Pの小数第4位以下を切り捨てた上で、Q=(P−([P]+1))×1000を計算する。この場合、
P−([P]+1)=1.XYZ−([1.XYZ]+1)=1.XYZ−2
となる。従って、Q=(P−([P]+1))×1000=(1.XYZ−2)×1000となり、−1000以上−1以下の整数となる。一例として、P=1.912とすると、Q=(P−([P]+1))×1000=(1.912−([1.912]+1))×1000=(1.912−2)×1000=−0.088×1000=−88となる。
顎骨手術要否判断指標の計算方法は、上記のP、Qの計算式を含む所定のプログラムを用いてコンピュータにより容易に実行することができる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどの各種のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができ、あるいは、インターネットなどの電気通信回線を通じて提供することができる。コンピュータには、計算に必要なデータとして、例えば、頭部X線規格写真における距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を入力する。あるいは、頭部X線撮影により得られた画像データをコンピュータに取り込み、この画像データからS、 A、B、GoおよびMeの座標を計測し、こうして計測された座標から距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計算により求め、これらの距離を用いて上記の計算式によりP、Qを計算するようにしてもよい。
また、顎骨手術要否判断方法は、上記のP、Qの計算式あるいはP、Qの判定式を含む所定のプログラムを用いてコンピュータにより容易に実行することができる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどの各種のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができ、あるいは、インターネットなどの電気通信回線を通じて提供することができる。計算に必要なデータは、上記の顎骨手術要否判断指標の計算方法と同様にして取得することができる。
上記の発明においては、P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算し、必要に応じて距離(S−N)の計測値により補足的な分析を行うが、最初から、距離(S−N)をPの計算式に反映させることも同様に有効である。
すなわち、この発明は、
患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとNとの間の距離(S−N)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))を計算することを特徴とする、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法である。
また、この発明は、
患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとNとの間の距離(S−N)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))を計算し、
必要に応じてさらに、P’の小数第4位以下を切り捨て、
Q’=(P’−[P’])×1000([]はガウス記号)(ただし、1.000≦P’<2.000)
または
Q’=(P’−([P’]+1))×1000([]はガウス記号)(ただし、P’<1.000)
を計算し、
上記計算されたPまたはQにより顎骨手術要否判断を行うことを特徴とする、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法である。
本発明者が多数の患者の頭部X線規格写真における距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測し、P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))を計算した結果、大多数の患者では、
P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))=1.XYZ
(X、Y、Zは0〜9の整数)
となることが分かった。言い換えると、大多数の患者のP’は1.000≦P’<2.000の範囲にあり、小数部だけが異なる。ただし、ごく少数の患者については、P’<1.000になることもある。
顎骨手術要否判断指標としては、P’そのものを用いてもよいが、整数で表すと分かりやすくなる。このため、1.000≦P’<2.000の場合は、典型的には、P’を計算した後、さらに、P’の小数第4位以下を切り捨てた上で、Q’=(P’−[P’])×1000を計算する。[P’]はP’の小数を切り捨てることを意味するから、P’−[P’]はP’の小数部を取り出したものを意味する。Q’=(P’−[P’])×1000はこうして取り出された小数部を1000倍することを意味する。この場合、
P’−[P’]=1.XYZ−[1.XYZ]=1.XYZ−1=0.XYZ
となる。従って、Q’=(P’−[P’])×1000=XYZとなり、0以上999以下の整数となる。一例として、P’=1.512とすると、Q’=(P’−[P’])×1000=(1.512−[1.512])×1000=(1.512−1)×1000=0.512×1000=512となる。
P’−[P’]あるいはこれを1000倍した数値XYZは、頭部の側貌において、上顎骨に対する下顎骨の大きさの割合を評価する数値と考えることができる。本発明者が多数の患者の矯正治療に携わった経験から、一般的には、例えば、P’≧1.330あるいはQ’(またはXYZ)≧330である場合には、矯正治療において、外科適応、言い換えると下顎骨切断手術を基本とした顎骨の外科手術が必要であると判断することができる。このため、例えば、計算されたP’またはQ’に対し、P’≧1.330またはQ’≧330であるか否かを判定することにより、外科適応、言い換えると、顎骨の外科手術が必要であると判断することができる。また、例えば、1.270≦P’<1.330または270≦Q<330である場合には、ボーダーラインの症例となる。ボーダーラインの症例では、例えば、Wits分析により、補足的な分析を加える。1.270≦P<1.330または270≦Q<330であるか否かを判定することにより、ボーダーラインの症例であるか否かを判断することができる。距離(S−N)に問題がある場合、具体的には、例えば(S−N)の平均値より2×標準偏差(2SD)以上距離が短い場合には、外科適応、言い換えると、顎骨の外科手術が必要であると判断することができる。以下においては、必要に応じて、Q’または整数XYZをOPE指数(オペ指数)と称する。
一方、P’<1.000(通常は0.800≦P’<1.000)の場合は、典型的には、P’を計算した後、さらに、P’の小数第4位以下を切り捨てた上で、Q’=(P’−([P’]+1))×1000を計算する。この場合、
P’−([P’]+1)=1.XYZ−([1.XYZ]+1)=1.XYZ−2
となる。従って、Q’=(P’−([P’]+1))×1000=(1.XYZ−2)×1000となり、−1000以上−1以下の整数となる。一例として、P’=0.912とすると、Q’=(P’−([P’]+1))×1000=(0.912−([0.912]+1))×1000=(0.912−1)×1000=−0.088×1000=−88となる。
顎骨手術要否判断指標の計算方法は、上記のP’、Q’の計算式を含む所定のプログラムを用いてコンピュータにより容易に実行することができる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどの各種のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができ、あるいは、インターネットなどの電気通信回線を通じて提供することができる。コンピュータには、計算に必要なデータとして、例えば、頭部X線規格写真における距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を入力する。あるいは、例えば、頭部X線撮影により得られた画像データをコンピュータに取り込み、この画像データからS、 A、N、B、GoおよびMeの座標を計測し、こうして計測された座標から距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計算により求め、これらの距離を用いて上記の計算式によりP’、Q’を計算するようにしてもよい。
また、顎骨手術要否判断方法は、上記のP’、Q’の計算式あるいはP’、Q’の判定式を含む所定のプログラムを用いてコンピュータにより容易に実行することができる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどの各種のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができ、あるいは、インターネットなどの電気通信回線を通じて提供することができる。計算に必要なデータは、上記の顎骨手術要否判断指標の計算方法と同様にして取得することができる。
また、この発明は、
患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算することを特徴とする、歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法である。
また、この発明は、
患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算し、
必要に応じてさらに、Pの小数第4位以下を切り捨て、
Q=(P−[P])×1000([]はガウス記号)(ただし、2.000≦P<3.000)
または
Q=(P−([P]+1))×1000([]はガウス記号)(ただし、P<2.000)
を計算し、
上記計算されたPまたはQにより上下顎骨不調和の判断を行うことを特徴とする、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法である。
上下顎骨不調和判断指標の計算方法は、上記のP、Qの計算式を含む所定のプログラムを用いてコンピュータにより容易に実行することができる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどの各種のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができ、あるいは、インターネットなどの電気通信回線を通じて提供することができる。計算に必要なデータは、上記の顎骨手術要否判断指標の計算方法と同様にして取得することができる。
また、上下顎骨不調和判断方法は、上記のP、Qの計算式あるいはP、Qの判定式を含む所定のプログラムを用いてコンピュータにより容易に実行することができる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどの各種のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができ、あるいは、インターネットなどの電気通信回線を通じて提供することができる。計算に必要なデータは、上記の顎骨手術要否判断方法と同様にして取得することができる。
また、この発明は、
患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとNとの間の距離(S−N)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))を計算することを特徴とする、歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法である。
また、この発明は、
患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとNとの間の距離(S−N)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))を計算し、
必要に応じてさらに、P’の小数第4位以下を切り捨て、
Q’=(P’−[P’])×1000([]はガウス記号)(ただし、1.000≦P’<2.000)
または
Q’=(P’−([P’]+1))×1000([]はガウス記号)(ただし、P’<1.000)
を計算し、
上記計算されたPまたはQにより上下顎骨不調和の判断を行うことを特徴とする、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法である。
上下顎骨不調和判断指標の計算方法は、上記のP’、Q’の計算式を含む所定のプログラムを用いてコンピュータにより容易に実行することができる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどの各種のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができ、あるいは、インターネットなどの電気通信回線を通じて提供することができる。計算に必要なデータは、上記の顎骨手術要否判断指標の計算方法と同様にして取得することができる。
また、上下顎骨不調和判断方法は、上記のP’、Q’の計算式あるいはP’、Q’の判定式を含む所定のプログラムを用いてコンピュータにより容易に実行することができる。このプログラムは、例えばCD−ROMなどの各種のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することができ、あるいは、インターネットなどの電気通信回線を通じて提供することができる。計算に必要なデータは、上記の顎骨手術要否判断方法と同様にして取得することができる。
ここで、上記の歯科治療には、上下顎骨不調和に応じて治療を行うことが有効な各種の治療が含まれ、具体的には、例えば、歯列矯正治療のほか、義歯(入れ歯)などの補綴も含まれる。上記の上下顎骨不調和判断指標の計算方法および上下顎骨不調和判断方法においては、その性質に反しない限り、上記の顎骨手術要否判断指標の計算方法および顎骨手術要否判断方法の発明において説明したことが成立する。
この発明によれば、患者の歯列矯正治療において歯科医師が患者の顎骨手術が必要であるか否かを判断するための客観的材料となる顎骨手術要否判断指標を簡単に計算することができ、他の検査方法の結果を適宜併用することで歯科医師がより客観性の高い正確な診断を容易にしかも短時間で行うことが可能になる。また、患者の歯列矯正治療などの歯科治療において歯科医師が患者の上下顎骨不調和を判断するための客観的材料となる上下顎骨不調和判断指標を簡単に計算することができ、他の検査方法の結果を適宜併用することで歯科医師がより客観性の高い正確な診断を容易にしかも短時間で行うことが可能になる。
頭部X線規格写真における計測点を説明するための略線図である。 この発明の第1の実施の形態による歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法を示すフローチャートである。 患者1の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者1の下顎骨切断手術後の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者2の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者2の下顎骨切断手術後の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者3の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者4の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者5の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者6の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者6の下顎骨切断手術後の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者7の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者8の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者9の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者10の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者11の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 患者12の頭部X線規格写真を元に作成した透写図である。 この発明の第2の実施の形態による歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法を示すフローチャートである。 この発明の第3の実施の形態による歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法を示すフローチャートである。 この発明の第4の実施の形態による歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法を示すフローチャートである。 この発明の第1〜第8の実施の形態による顎骨手術要否判断指標の計算方法、顎骨手術要否判断方法、上下顎骨不調和判断指標の計算方法または上下顎骨不調和判断方法の実施に用いるデータ処理装置を示す略線図である。
以下、発明を実施するための形態(以下、実施の形態と言う。)について説明する。
〈1.第1の実施の形態〉
第1の実施の形態においては、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標としてのOPE指数の計算方法について説明する。
図2にこの計算方法のフローチャートを示す。このフローチャートに従ったプログラムを作成し、コンピュータに実行させる。
この計算を行う前に、歯列矯正治療を行う患者の頭部X線撮影を行い、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を計測する。これらの距離の計測は、例えば、ペンタブレットやデジタイザなどを用い、頭部X線規格写真上のS、 A、B、GoおよびMeの計測点の座標データを入力することにより容易に行うことができる。あるいは、頭部X線撮影により得られた画像データをコンピュータに取り込み、この画像データからS、 A、B、GoおよびMeの座標を計測し、こうして計測された座標から距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計算により求めるようにしてもよい。
図2に示すように、ステップS1において、上記のようにして計測された距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を入力する。
ステップS2においては、入力された(S−A)、(S−B)および(Go−Me)から
P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)
に従ってPを計算する。
ステップS3においては、上記のようにして計算により求めたPの小数第4位以下を切り捨て、2.000≦P<3.000の場合には、
Q=(P−[P])×1000に従ってOPE指数Qを計算し、P<2.000の場合には、
Q=(P−([P]+1))×1000
に従ってOPE指数Qを計算する。
ステップS4においては、上記のようにして計算されたOPE指数Qを例えばディスプレイに出力する。
こうして計算されたOPE指数Qが400以上の場合には、歯列矯正治療において、下顎骨の切断手術が必要であると診断することができる。また、OPE指数Qが350以上400未満のボーダーラインの症例では、距離(S−N)とWits分析とにより、補足的な分析を加える。距離(S−N)が平均値より2SD以上短い場合には、Wits分析の結果が12mm以上であれば、外科適応、言い換えると、顎骨の外科手術が必要であると判断する。
OPE指数Qが350未満0以上の場合は、歯列矯正治療において、顎骨の外科手術は不要であると判断することができる。
OPE指数Qが負の場合もまた、下顎骨の著しいレトロ(劣成長)傾向か上顎骨の過成長傾向を意味し、顎骨の外科手術を考慮する必要がある。一般に、OPE指数Qが−50以上0未満の場合は、顎骨の外科手術の必要性が高くなる。
一般的には、OPE指数Qに加えて、歯科医師が、角度計測を中心とした従来のセファロ分析などの他の検査の結果などを併用して顎骨手術の要否を最終的に判断する。
[実施例1]
患者1の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図3に示す。
図3より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=78.0mm、(S−B)=123.0mm、(Go−Me)=78.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(123.0+78.0)/78.0=2.576であった。従って、OPE指数Qは576である。なお、(S−N)=67.0mm、Wits=17.0mmであった。
OPE指数Qは576であるので、患者1は、歯列矯正治療において、下顎骨の切断手術が必要であると判断することができる。
そこで、下顎骨の所要の切断手術を行った。切断手術後に、患者1の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図4に示す。
図4より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=78.0mm、(S−B)=111.0mm、(Go−Me)=73.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(111.0+73.0)/78.0=2.358であった。従って、OPE指数Qは358である。なお、(S−N)=67.0mm、Wits=4.0mmであった。
OPE指数Qは358であるので、患者1は、下顎骨の切断手術の結果、歯列矯正治療を行うことが可能であると判断することができる。
[実施例2]
患者2の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図5に示す。
図5より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=83.0mm、(S−B)=123.0mm、(Go−Me)=81.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(123.0+81.0)/83.0=2.457であった。従って、OPE指数Qは457である。なお、(S−N)=69.0mm、Wits=16.0mmであった。
OPE指数Qは457であるので、患者2は、下顎骨の切断手術が必要であると判断することができる。
そこで、下顎骨の所要の切断手術を行った。切断手術後に、患者2の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図6に示す。
図6より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=83.0mm、(S−B)=116.0mm、(Go−Me)=80.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(116.0+80.0)/83.0=2.361であった。従って、OPE指数Qは361である。なお、(S−N)=69.0mm、Wits=6.0mmであった。
OPE指数Qは361であるので、患者2は、下顎骨の切断手術の結果、歯列矯正治療を行うことが可能であると判断することができる。
[実施例3]
患者3の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図7に示す。
図7より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=88.0mm、(S−B)=126.0mm、(Go−Me)=78.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(126.0+78.0)/88.0=2.318であった。従って、OPE指数Qは318である。なお、(S−N)=67.0mm、Wits=7.0mmであった。
若干の骨格性III 級症例であるが、OPE指数Qは318であるので、患者3は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例4]
患者4の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図8に示す。
図8より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=85.0mm、(S−B)=119.0mm、(Go−Me)=77.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(119.0+77.0)/85.0=2.305であった。従って、OPE指数Qは305である。なお、(S−N)=64.0mm、Wits=9.0mmであった。
骨格性III 級症例であるが、OPE指数Qは305であるので、患者4は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例5]
患者5の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図9に示す。
図9より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=75.0mm、(S−B)=109.0mm、(Go−Me)=70.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(109.0+70.0)/75.0=2.386であった。従って、OPE指数Qは386である。なお、(S−N)=65.0mm、Wits=10.0mmであった。
OPE指数Qは386であるので、ボーダーラインの症例である。Witsが10.0mmと極めて骨格性の強い症例であるが、(S−N)=65.0mmであるので、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例6]
患者6の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図10に示す。
図10より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=87.0mm、(S−B)=128.0mm、(Go−Me)=80.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(128.0+80.0)/87.0=2.390であった。従って、OPE指数Qは390である。なお、(S−N)=68.0mm、Wits=12.0mmであった。
OPE指数Qは390であるので、ボーダーラインの症例である。Witsが12.0mmと10.0mmより大きく、また、(S−N)=68.0mmであるので、骨格性III 級症例であり、顎変形症であると判断することができ、下顎骨の切断手術が必要であると判断することができる。
そこで、下顎骨の所要の切断手術を行った。切断手術後に、患者6の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図11に示す。
図11より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=87.0mm、(S−B)=121.0mm、(Go−Me)=73.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(121.0+73.0)/87.0=2.229であった。従って、OPE指数Qは229である。なお、(S−N)=68.0mm、Wits=5.0mmであった。
OPE指数Qは229であるので、患者2は、下顎骨の切断手術の結果、歯列矯正治療を行うことが可能であると判断することができる。
[実施例7]
患者7の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図12に示す。
図12より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=86.0mm、(S−B)=111.0mm、(Go−Me)=69.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(111.0+69.0)/86.0=2.093であった。従って、OPE指数Qは93である。なお、(S−N)=67.0mm、Wits=0mmであった。
OPE指数Qは93であり、下顎骨後退傾向があるが、患者7は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であり、抜歯治療による矯正治療適応と判断することができる。
[実施例8]
患者8の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図13に示す。
図13より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=90.0mm、(S−B)=127.0mm、(Go−Me)=80.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(127.0+80.0)/90.0=2.300であった。従って、OPE指数Qは300である。なお、(S−N)=68.0mm、Wits=11.0mmであった。
OPE指数Qは300であるので、患者8は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例9]
患者9の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図14に示す。
図14より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=79.0mm、(S−B)=105.0mm、(Go−Me)=73.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(105.0+73.0)/79.0=2.253であった。従って、OPE指数Qは253である。なお、(S−N)=68.0mm、Wits=3.0mmであった。
OPE指数Qは253であるので、患者9は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例10]
患者10の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図15に示す。
図15より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=81.0mm、(S−B)=103.0mm、(Go−Me)=70.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(103.0+70.0)/81.0=2.135であった。従って、OPE指数Qは135である。なお、(S−N)=69.0mm、Wits=3.0mmであった。
非骨格性症例であるが、OPE指数Qは135であるので、患者10は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であり、非抜歯治療による矯正治療適応と判断することができる。
[実施例11]
患者11の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図16に示す。
図16より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=81.0mm、(S−B)=108.0mm、(Go−Me)=68.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(108.0+68.0)/81.0=2.172であった。従って、OPE指数Qは172である。なお、(S−N)=63.0mm、Wits=2.0mmであった。
OPE指数Qは172、Witsは2.0mmであり、非骨格性症例であるが、患者11は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であり、非抜歯治療による矯正治療適応と判断することができる。
[実施例12]
患者12の頭部X線規格写真を撮影した。この頭部X線規格写真を元に作成した透写図を図17に示す。
図17より、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=91.0mm、(S−B)=115.0mm、(Go−Me)=65.0mmであった。これらのデータを用いてPを計算すると、(115.0+65.0)/91.0=1.978であった。従って、OPE指数Qは−22である。なお、(S−N)=74.0mm、Wits=0mmであった。
OPE指数Qは−22であるので、ボーダーラインの症例である。一般に、−50≦Q<0の場合は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行う必要性が高くなるが、下顎骨レトロ傾向の強い症例であり、患者12は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
以上のように、この第1の実施の形態による顎骨手術要否判断指標の計算方法によれば、頭部X線撮影により計測された距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を用いてOPE指数Qを計算することができる。そして、このOPE指数Qに基づいて、歯科医師の経験などに左右されずに、短時間でしかも一定の客観性をもって、歯列矯正治療において顎骨の外科手術が必要であるか否かを正確に判断することができる。
〈2.第2の実施の形態〉
第2の実施の形態においては、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法について説明する。
図18にこの顎骨手術要否判断方法のフローチャートを示す。このフローチャートに従ったプログラムを作成し、コンピュータに実行させる。
第1の実施の形態と同様に、この顎骨手術要否判断方法を実行する前に、距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を計測する。
図18に示すように、ステップS11において、上記のようにして計測された距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を入力する。
ステップS12においては、入力された(S−A)、(S−B)および(Go−Me)から
P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)
に従ってPを計算する。
ステップS13においては、上記のようにして計算により求めたPから、2.000≦P<3.000であるか、P<2.000であるかを判定する。判定の結果、2.000≦P<3.000の場合には、Pの小数第4位以下を切り捨て、
Q=(P−[P])×1000
に従ってOPE指数Qを計算し、P<2.000の場合には、
Q=(P−([P]+1))×1000
に従ってOPE指数Qを計算する。
ステップS14においては、こうして計算されたOPE指数Qが400以上であるか否かを判定する。
ステップS15においては、OPE指数Qが400以上である場合には、歯列矯正治療において、下顎骨の切断手術が必要であると判断する。
ステップS16においては、下顎骨の切断手術が必要であるとの判断結果を例えばディスプレイに出力する。
ステップS14においてQが400以上でないと判定された場合には、ステップS17においてQが350以上400未満であるか否かを判定する。
OPE指数Qが350以上400未満である場合には、ステップS18において、距離(S−N)が平均値より2SD以上短く、かつWitsが12mm以上であるか否かを判定する。該当すれば、ステップS19において、顎骨の外科手術が必要であると判断する。
顎骨の外科手術が必要であると判断された場合には、ステップS20において、判断結果を例えばディスプレイに出力する。
ステップS18において、距離(S−N)が平均値より2SD以上短く、かつWitsが12mm以上に該当しないと判定されたら、ステップS21において、顎骨の外科手術は不要であると判断する。
顎骨の外科手術が不要であると判断された場合には、ステップS22において、判断結果を例えばディスプレイに出力する。
ステップS17においてQが350以上400以下でないと判定された場合には、ステップS23においてQが0以上350未満であるか否かを判定する。
OPE指数Qが0以上350未満であると判定された場合には、ステップS24において顎骨の外科手術は不要であると判断する。
顎骨の外科手術は不要であると判断された場合には、ステップS25において判断結果を例えばディスプレイに出力する。
OPE指数Qが0以上350未満であると判定されなかった場合には、OPE指数Qは負となる。この場合は、ステップS26において、歯科医師が、顎骨の外科手術が必要か否かを判断し、ステップS27において診断結果を例えばディスプレイに出力する。
この第2の実施の形態による顎骨手術要否判断方法によれば、頭部X線撮影により計測された距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me)を用いて計算されるOPE指数Qに基づいて、歯科医師の経験などに左右されずに、短時間でしかも一定の客観性をもって、歯列矯正治療において顎骨の外科手術が必要であるか否かを正確に判断することができる。
〈3.第3の実施の形態〉
第3の実施の形態においては、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標としてのOPE指数の計算方法について説明する。
図19にこの計算方法のフローチャートを示す。このフローチャートに従ったプログラムを作成し、コンピュータに実行させる。
この計算を行う前に、歯列矯正治療を行う患者の頭部X線撮影を行い、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測する。これらの距離の計測は、例えば、ペンタブレットやデジタイザなどを用い、頭部X線規格写真上のS、 A、N、B、GoおよびMeの計測点の座標データを入力することにより容易に行うことができる。あるいは、頭部X線撮影により得られた画像データをコンピュータに取り込み、この画像データからS、 A、N、B、GoおよびMeの座標を計測し、こうして計測された座標から距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計算により求めるようにしてもよい。
図19に示すように、ステップS31において、上記のようにして計測された距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を入力する。
ステップS32においては、入力された(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)から
P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))
に従ってP’を計算する。
ステップS33においては、上記のようにして計算により求めたP’の小数第4位以下を切り捨て、1.000≦P’<2.000の場合には、
Q’=(P’−[P’])×1000に従ってOPE指数Q’を計算し、P’<1.000の場合には、
Q’=(P’−([P’]+1))×1000
に従ってOPE指数Q’を計算する。
ステップS34においては、上記のようにして計算されたOPE指数Q’を例えばディスプレイに出力する。
こうして計算されたOPE指数Q’が330以上の場合には、歯列矯正治療において、下顎骨の切断手術が必要であると診断することができる。また、OPE指数Q’が270以上330未満のボーダーラインの症例では、Wits分析により、補足的な分析を加える。Wits分析の結果が12mm以上であれば、外科適応、言い換えると、顎骨の外科手術が必要であると判断する。
OPE指数Q’が330未満0以上の場合は、歯列矯正治療において、顎骨の外科手術は不要であると診断することができる。
OPE指数Q’が負の場合もまた、下顎骨の著しいレトロ傾向か上顎骨の過成長傾向を意味し、顎骨の外科手術を考慮する必要がある。
一般的には、OPE指数Q’に加えて、歯科医師が、角度計測を中心とした従来のセファロ分析などの他の検査の結果などを併用して顎骨手術の要否を最終的に判断する。
[実施例13]
実施例1において撮影した患者1の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図3より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および距離(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=78.0mm、(S−N)=67.0mm、(S−B)=123.0mm、(Go−Me)=78.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(123.0+78.0)/(78.0+67.0mm)=1.386であった。従って、OPE指数Q’は386である。なお、Wits=17.0mmであった。
OPE指数Q’は386であるので、患者1は、歯列矯正治療において、下顎骨の切断手術が必要であると判断することができる。
そこで、下顎骨の所要の切断手術を行った。実施例1において撮影した患者1の下顎骨切断手術後の頭部X線規格写真の透写図を示す図4より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=78.0mm、(S−N)=67.0mm、(S−B)=111.0mm、(Go−Me)=73.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(111.0+73.0)/(78.0+67.0)=1.268であった。従って、OPE指数Q’は268である。なお、Wits=4.0mmであった。
OPE指数Q’は268であるので、患者1は、下顎骨の切断手術の結果、歯列矯正治療を行うことが可能であると判断することができる。
[実施例14]
実施例2において撮影した患者2の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図5より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=83.0mm、(S−N)=69.0mm、(S−B)=123.0mm、(Go−Me)=81.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(123.0+81.0)/(83.0+69.0)=1.342であった。従って、OPE指数Q’は342である。なお、Wits=16.0mmであった。
OPE指数Q’は342であるので、患者2は、下顎骨の切断手術が必要であると判断することができる。
そこで、下顎骨の所要の切断手術を行った。患者2の下顎骨切断手術後の頭部X線規格写真元に作成した透写図を示す図6より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=83.0mm、(S−N)=69.0mm、(S−B)=116.0mm、(Go−Me)=80.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(116.0+80.0)/(83.0+69.0)=1.289であった。従って、OPE指数Q’は289である。なお、Wits=6.0mmであった。
OPE指数Q’は289であるので、患者2は、下顎骨の切断手術の結果、歯列矯正治療を行うことが可能であると判断することができる。
[実施例15]
実施例3において撮影した患者3の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図7より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=88.0mm、(S−N)=67.0mm、(S−B)=126.0mm、(Go−Me)=78.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(126.0+78.0)/(88.0+67.0)=1.316であった。従って、OPE指数Q’は316である。なお、Wits=7.0mmであった。
若干の骨格性III 級症例であるが、OPE指数Q’は316であるので、患者3は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例16]
実施例4において撮影した患者4の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図8より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=85.0mm、(S−N)=64.0mm、(S−B)=119.0mm、(Go−Me)=77.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(119.0+77.0)/(85.0+64.0)=1.315であった。従って、OPE指数Q’は315である。なお、Wits=9.0mmであった。
骨格性III 級症例であるが、OPE指数Q’は315であるので、患者4は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例17]
実施例5において撮影した患者5の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図9より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=75.0mm、(S−N)=65.0mm、(S−B)=109.0mm、(Go−Me)=70.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(109.0+70.0)/(75.0+65.0)=1.278であった。従って、OPE指数Q’は278である。なお、Wits=10.0mmであった。
OPE指数Q’は278であるので、ボーダーラインの症例である。Witsが10.0mmと極めて骨格性の強い症例であるが、12mm以下であり、しかも(S−N)=65.0mmであるので、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例18]
実施例6において撮影した患者6の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図10より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=87.0mm、(S−N)=68.0mm、(S−B)=128.0mm、(Go−Me)=80.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(128.0+80.0)/(87.0+68.0)=1.341であった。従って、OPE指数Q’は341である。なお、Wits=12.0mmであった。
OPE指数Q’は341であるので、ボーダーラインの症例である。Witsが12.0mmであり、しかも(S−N)=68.0mmであるので、骨格性III 級症例であり、顎変形症であると判断することができ、下顎骨の切断手術が必要であると判断することができる。
そこで、下顎骨の所要の切断手術を行った。患者6の下顎骨切断手術後の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図11より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=87.0mm、(S−N)=68.0mm、(S−B)=121.0mm、(Go−Me)=73.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(121.0+73.0)/(87.0+68.0)=1.251であった。従って、OPE指数Q’は251である。なお、Wits=5.0mmであった。
OPE指数Q’は251であるので、患者6は、下顎骨の切断手術の結果、歯列矯正治療を行うことが可能であると判断することができる。
[実施例19]
実施例7において撮影した患者7の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図12より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=86.0mm、(S−N)=67.0mm、(S−B)=111.0mm、(Go−Me)=69.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(111.0+69.0)/(86.0+67.0)=1.176であった。従って、OPE指数Q’は176である。なお、Wits=0mmであった。
OPE指数Q’は176であり、下顎骨後退傾向があるが、患者7は、患者7は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であり、抜歯治療による矯正治療適応と判断することができる。
[実施例20]
実施例8において撮影した患者8の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図13より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=90.0mm、(S−N)=68.0mm、(S−B)=127.0mm、(Go−Me)=80.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(127.0+80.0)/(90.0+68.0)=1.310であった。従って、OPE指数Q’は310である。なお、Wits=11.0mmであった。
OPE指数Q’は310であるので、患者8は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例21]
実施例9において撮影した患者9の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図14より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=79.0mm、(S−N)=68.0mm、(S−B)=105.0mm、(Go−Me)=73.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(105.0+73.0)/(79.0+68.0)=1.210であった。従って、OPE指数Q’は210である。なお、Wits=3.0mmであった。
OPE指数Q’は210であるので、患者9は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
[実施例22]
実施例10において撮影した患者10の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図15より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=81.0mm、(S−N)=69.0mm、(S−B)=103.0mm、(Go−Me)=70.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(103.0+70.0)/(81.0+69.0)=1.153であった。従って、OPE指数Q’は153である。なお、Wits=4.0mmであった。
非骨格性症例であるが、OPE指数Q’は153であるので、患者10は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であり、非抜歯治療による矯正治療適応と判断することができる。
[実施例23]
実施例11において撮影した患者11の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図16より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=81.0mm、(S−N)=63.0mm、(S−B)=108.0mm、(Go−Me)=68.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(108.0+68.0)/(81.0+63.0)=1.222であった。従って、OPE指数Q’は222である。なお、Wits=2.0mmであった。
OPE指数Q’は222、Witsは2.0mmであり、非骨格性症例であるが、患者11は、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であり、非抜歯治療による矯正治療適応と判断することができる。
[実施例24]
実施例12において撮影した患者12の頭部X線規格写真を元に作成した透写図を示す図17より、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測した。その結果、(S−A)=91.0mm、(S−N)=74.0mm、(S−B)=115.0mm、(Go−Me)=65.0mmであった。これらのデータを用いてP’を計算すると、(115.0+65.0)/(91.0+74.0)=1.090であった。従って、OPE指数Q’は90である。なお、Wits=0.0mmであった。
OPE指数Q’は90であるので、ボーダーラインの症例である。患者12は、下顎骨レトロ傾向の強い症例であり、歯列矯正治療を行うに際し、顎骨手術を行うことは不要であると判断することができる。
以上のように、この第3の実施の形態による顎骨手術要否判断指標の計算方法によれば、頭部X線撮影により計測された距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を用いてOPE指数Q’を計算することができる。そして、このOPE指数Q’に基づいて、歯科医師の経験などに左右されずに、短時間でしかも一定の客観性をもって、歯列矯正治療において顎骨の外科手術が必要であるか否かを正確に診断することができる。
〈4.第4の実施の形態〉
第4の実施の形態においては、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法について説明する。
図20にこの顎骨手術要否判断方法のフローチャートを示す。このフローチャートに従ったプログラムを作成し、コンピュータに実行させる。
第3の実施の形態と同様に、この顎骨手術要否判断方法を実行する前に、距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を計測する。
図20に示すように、ステップS41において、上記のようにして計測された距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を入力する。
ステップS42においては、入力された(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)から
P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))
に従ってP’を計算する。
ステップS43においては、上記のようにして計算により求めたP’から、1.000≦P<2.000であるか、P’<1.000であるかを判定する。判定の結果、1.000≦P’<2.000の場合には、P’の小数第4位以下を切り捨て、
Q’=(P’−[P’])×1000
に従ってOPE指数Q’を計算し、P’<1.000の場合には、
Q’=(P’−([P’]+1))×1000
に従ってOPE指数Q’を計算する。
ステップS44においては、こうして計算されたOPE指数Q’が330以上であるか否かを判定する。
ステップS45においては、OPE指数Q’が330以上である場合には、歯列矯正治療において、下顎骨の切断手術が必要であると判断する。
ステップS46においては、下顎骨の切断手術が必要であるとの判断結果を例えばディスプレイに出力する。
ステップS44においてQ’が330以上でないと判定された場合には、ステップS47においてQ’が270以上330未満であるか否かを判定する。
ステップS48において、OPE指数Q’が270以上330未満である場合には、Witsが12mm以上であるか否かを判定する。該当すれば、ステップS49において、顎骨の外科手術が必要であると判断する。
顎骨の外科手術が必要であると判断された場合には、ステップS50において、判断結果を例えばディスプレイに出力する。
ステップS48において、Witsが12mm以上に該当しないと判定されたら、ステップS51において、顎骨の外科手術は不要であると判断する。
顎骨の外科手術が不要であると判断された場合には、ステップS52において、判断結果を例えばディスプレイに出力する。
ステップS47においてQ’が270以上330以下でないと判定された場合には、ステップS53においてQ’が0以上270未満であるか否かを判定する。
OPE指数Q’が0以上270未満であると判定された場合には、ステップS44において顎骨の外科手術は不要であると判断する。
顎骨の外科手術は不要であると判断された場合には、ステップS55において判断結果を例えばディスプレイに出力する。
OPE指数Q’が0以上270未満であると判定されなかった場合には、OPE指数Q’は負となる。この場合は、ステップS56において、歯科医師が、顎骨の外科手術が必要か否かを判断し、ステップS57において判断結果を例えばディスプレイに出力する。
この第4の実施の形態による顎骨手術要否判断方法によれば、頭部X線撮影により計測された距離(S−A)、(S−N)、(S−B)および(Go−Me)を用いて計算されるOPE指数Q’に基づいて、歯科医師の経験などに左右されずに、短時間でしかも一定の客観性をもって、歯列矯正治療において顎骨の外科手術が必要であるか否かを正確に判断することができる。
〈5.第5の実施の形態〉
第5の実施の形態においては、第1の実施の形態において説明した歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法と同様な方法により上下顎骨不調和判断指標を計算する。
第5の実施の形態によれば、上下顎骨不調和判断指標を容易に計算することができる。そして、この上下顎骨不調和判断指標に基づいて、歯科医師の経験などに左右されずに、短時間でしかも一定の客観性をもって、歯列矯正治療などの歯科治療において上下顎骨不調和を正確に判断することができる。
〈6.第6の実施の形態〉
第6の実施の形態においては、第2の実施の形態において説明した歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法と同様な方法により上下顎骨不調和判断方法を実施する。
第6の実施の形態によれば、上下顎骨不調和判断指標に基づいて、歯科医師の経験などに左右されずに、短時間でしかも一定の客観性をもって、歯列矯正治療などの歯科治療において上下顎骨不調和を正確に判断することができる。
〈7.第7の実施の形態〉
第7の実施の形態においては、第3の実施の形態において説明した歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法と同様な方法により上下顎骨不調和判断指標を計算する。
第7の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈8.第8の実施の形態〉
第8の実施の形態においては、第4の実施の形態において説明した歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法と同様な方法により上下顎骨不調和判断方法を実施する。
第8の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
ここで、第1〜第8の実施の形態による顎骨手術要否判断指標の計算方法、顎骨手術要否判断方法、上下顎骨不調和判断指標の計算方法または上下顎骨不調和判断方法の実施に用いるデータ処理装置について説明する。
図21はこのデータ処理装置10の一例を示す。図21に示すように、このデータ処理装置10は、補助記憶装置11、メモリ12、処理部としてのCPU(Central Processing Unit)13、入力部14、出力部15および入出力インタフェース16を有する。
補助記憶装置11は、各種の情報を記憶するものであり、例えば、ハードディスク、ROM(Read Only Memory) などにより構成される。この補助記憶装置11は、プログラム111、コンパイラ112および実行モジュール113を記憶している。
プログラム111は、図2、図18、図19または図20に示すフローチャート上の処理が記述されているプログラム(ソースプログラム)である。コンパイラ112は、プログラム111をコンパイルおよびリンクするものである。実行モジュール113は、コンパイラ112によりコンパイルおよびリンクされたモジュールである。
メモリ12は、各種の情報を記憶する一時記憶手段であり、例えば、RAM(Random Access Memory) などにより構成される。CPU13は、加減乗除などの各種演算処理を行うものであり、メモリ12および入出力インタフェース16を介して実行モジュール13を実行する役割を果たす。入力部14は、各種の実行コマンドなどを入力する入力装置である。出力部15は、各種の実行結果などを出力する出力装置である。入出力インタフェース16は、データ処理装置10の各構成要素間の入出力を仲介する。
次に、上述のように構成されたデータ処理装置10の動作について説明する。まず、操作者により入力部14から入力されたコンパイルコマンドは、入出力インタフェース16を介して、メモリ12にストアされる。メモリ12では、補助記憶装置11のプログラム111が、コンパイラ112によりコンパイルおよびリンクされ、機械語コードである実行モジュール113が生成される。
次に、操作者により入力部14から実行コマンドが入力されると、CPU13がメモリ12に実行モジュール113をロードする。実行モジュール113がメモリ12にロードされると、CPU13によって、図2、図18、図19または図20に示すフローチャート上の各処理がメモリ12からCPU13に逐次呼び出され、各処理が実行された後、その実行結果がメモリ12にストアされる。メモリ12にストアされた実行結果は、CPU13によって、入出力インタフェース16を介して、出力部15に出力される。
例えば、図2に示すフローチャート上の処理を実行してOPE指数を計算する場合には次のようにする。まず、入力処理のステップS1を実現するための実行モジュール113がメモリ12からCPU13に呼び出される。このステップS1においては、操作者により入力部14から入力されたデータ(距離(S−A)、(S−B)および(Go−Me))をメモリ12にロードする。ステップS1の入力処理が終了すると、算出処理のステップS2を実現するための実行モジュール113がメモリ12からCPU13に呼び出される。このステップS2においては、入力されたデータによりPを計算する。ステップS2の算出処理が終了すると、ステップS3を実現するための実行モジュール113がメモリ12からCPU13に呼び出される。このステップS3においては、Pの大きさに応じてOPE指数を算出する。ステップS3の算出処理が終了すると、ステップS4を実現するための実行モジュール113がメモリ12からCPU13に呼び出される。このステップS4においては、Pの値を算出結果として出力部15に出力する。
図18、図19または図20に示すフローチャート上の処理を実行する場合も上述と同様である。
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、フローチャートなどはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、フローチャートなどを用いてもよい。
10…データ処理装置、11…補助記憶装置、12…メモリ、13…CPU、14…入力部、15…出力部、16…入出力インタフェース、111…プログラム、112…コンパイラ、113…実行モジュール

Claims (19)

  1. 患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
    P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算することを特徴とする、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法。
  2. さらに、Pの小数第4位以下を切り捨て、
    Q=(P−[P])×1000([]はガウス記号)(ただし、2.000≦P<3.000)
    または
    Q=(P−([P]+1))×1000([]はガウス記号)(ただし、P<2.000)
    を計算することを特徴とする請求項1記載の、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法。
  3. 請求項1または2記載の、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  4. 患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
    P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算し、
    あるいは、
    さらに、Pの小数第4位以下を切り捨て、
    Q=(P−[P])×1000([]はガウス記号)(ただし、2.000≦P<3.000)
    または
    Q=(P−([P]+1))×1000([]はガウス記号)(ただし、P<2.000)
    を計算し、
    上記計算されたPまたはQがそれぞれ所定の値以上であるか否かを判定することにより顎骨手術要否判断を行うことを特徴とする、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法。
  5. P≧2.400またはQ≧400であるか否かを判定することを特徴とする請求項4記載の、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法。
  6. 請求項4または5記載の、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  7. 患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとNとの間の距離(S−N)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
    P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))を計算することを特徴とする、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法。
  8. 請求項7記載の、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断指標の計算方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  9. 患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとNとの間の距離(S−N)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
    P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))を計算し、
    あるいは、
    さらに、P’の小数第4位以下を切り捨て、
    Q’=(P’−[P’])×1000([]はガウス記号)(ただし、1.000≦P’<2.000)
    または
    Q’=(P’−([P’]+1))×1000([]はガウス記号)(ただし、P’<1.000)
    を計算し、
    上記計算されたP’またはQ’がそれぞれ所定の値以上であるか否かを判定することにより顎骨手術要否判断を行うことを特徴とする、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法。
  10. 請求項9記載の、歯列矯正治療における顎骨手術要否判断方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  11. 患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
    P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算することを特徴とする、歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法。
  12. 請求項11記載の、歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  13. 患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
    P=((S−B)+(Go−Me))/(S−A)を計算し、
    あるいは、
    さらに、Pの小数第4位以下を切り捨て、
    Q=(P−[P])×1000([]はガウス記号)(ただし、2.000≦P<3.000)
    または
    Q=(P−([P]+1))×1000([]はガウス記号)(ただし、P<2.000)
    を計算し、
    上記計算されたPまたはQがそれぞれ所定の値以上であるか否かを判定することにより上下顎骨不調和の判断を行うことを特徴とする、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法。
  14. 請求項13記載の、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  15. 患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとNとの間の距離(S−N)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
    P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))を計算することを特徴とする、歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法。
  16. 請求項15記載の、歯科治療における上下顎骨不調和判断指標の計算方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  17. 患者の頭部X線撮影により計測された、SとAとの間の距離(S−A)、SとNとの間の距離(S−N)、SとBとの間の距離(S−B)およびGoとMeとの間の距離(Go−Me)を用い、
    P’=((S−B)+(Go−Me))/((S−A)+(S−N))を計算し、
    あるいは、
    さらに、P’の小数第4位以下を切り捨て、
    Q’=(P’−[P’])×1000([]はガウス記号)(ただし、1.000≦P’<2.000)
    または
    Q’=(P’−([P’]+1))×1000([]はガウス記号)(ただし、P’<1.000)
    を計算し、
    上記計算されたP’またはQ’がそれぞれ所定の値以上であるか否かを判定することにより上下顎骨不調和の判断を行うことを特徴とする、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法。
  18. 請求項17記載の、歯科治療における上下顎骨不調和判断方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  19. 請求項3、6、8、10、12、14、16または18記載のプログラムを有するコンピュータ。
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