以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。以下の説明及び図面においては、同一の部品には同一の参照符号及び名称を付してある。それらの機能も同様である。したがって、それらについての詳細な説明をその都度繰返すことはしない。
[第1の実施の形態]
−構成−
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の斜視図であり、図2は、呼気センシング装置10の内部構成を示す水平断面図である。図1を参照して、呼気センシング装置10は、上下方向の長さが左右方向の長さより短い略直方体形状の筐体18と、筐体18の右側面に設けられ、筐体18内部に呼気を導入するための呼気導入口30を有する呼気導入部28と、筐体18の右側面において呼気導入部28の上方に設けられる表示部20と、筐体18の左側面、正面及び背面にそれぞれ設けられ、筐体18内部から呼気を排出するための呼気排出口23,25,27をそれぞれ有する第1呼気排出部22、第2呼気排出部24及び第3呼気排出部26と、筐体18上部に設けられ、表示部20の表示動作及び後述する切替弁64の切替動作等の各処理を実行するための制御部32と、筐体18の上面に設けられ、呼気センシング装置10による呼気分析を開始させるための測定開始ボタン34と、測定開始ボタン34近傍に設けられ、後述する第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50を再生させるための再生ボタン36と、筐体18の上面において制御部32の上方に設けられる表示画面21とを含む。
図2を参照して、筐体18は、例えば、プラスチック又はアクリル樹脂等からなる内部空間を有する、幅30mm〜300mm、奥行き30mm〜300mm、及び、高さ30mm〜150mm程度の大きさの容器状部材であり、その内部は、中央部に第1開口部56及び第2開口部58をそれぞれ有する板状部材である第1仕切部材52及び第2仕切部材54によって、中央部に位置する呼気導入室70と、呼気導入室70に対して第3呼気排出部26側に位置する第1センサ室72と、呼気導入室70に対して第2呼気排出部24側に位置する第2センサ室74とに仕切られる。すなわち、第1仕切部材52は第1センサ室72と呼気導入室70との間に設けられ、第2仕切部材54は呼気導入室70と第2センサ室74との間に設けられる。
図3は、第1仕切部材52の部分拡大図(円53で囲む部分)である。図3(a)は、第1仕切部材52を呼気センシング装置10の背面側から透視して見たときの図であり、図3(b)は、水平断面図である。図3を参照して、第1仕切部材52は、選択透過膜60を挟む2枚の板状部材52a,52bからなる。板状部材52aは第1センサ室72側に設けられ、板状部材52bは呼気導入室70側に設けられる。2枚の板状部材52a,52bは2層構造を有し、選択透過膜60を挟む面側に位置する層は、例えば、シリコーンゴム等の各種ゴム等からなる。選択透過膜60を挟む面とは反対側の面側に位置する層は、例えば、アクリル樹脂等の各種硬質高分子樹脂等からなる。このように、選択透過膜60を挟む面側に位置する層を、比較的軟らかい材質の材料からなるようにすることで、選択透過膜60を安定して固定することができる。第2仕切部材54は、第1仕切部材52と同一の構成であり、選択透過膜62を挟む2枚の板状部材54a,54bからなる。板状部材54aは呼気導入室70側に設けられ、板状部材54bは第2センサ室74側に設けられる。選択透過膜60,62の構成材料としては、後述するガスセンサ素子80によって検出される呼気中の特定ガス成分を優先的に透過させる材料等の、ガスセンサ素子80の特定ガス成分に対する検出感度及び検出精度を向上させ得る材料から適宜選択される。テーブル2に選択透過膜を構成する各構成材料に対応する優先透過ガスとその適用分野について、テーブル3に各選択透過膜の構成材料におけるガス透過係数について、テーブル4に各種ゴム及び各種プラスチックの気体透過性について、テーブル5にジメチルシリコーンからなるシリコーンゴムの気体透過性について示す。
テーブル2〜テーブル5を参照して、例えば、所望の特定ガス成分が水素(H2)ガスである場合には、選択透過膜60,62は、ポリスルホン/シリコーンゴム共重合体、ポリスルホン、ポリイミド、セルロースアセテート又はポリ4−メチルペンテン等の高分子材料、若しくはパラジウム等の水素(H2)ガスを吸着する金属を含有する材料等からなる膜であることが好ましく、これらの中でも、より優れた水素(H2)ガス選択透過性を有する点から、ポリイミドからなる膜であることが特に好ましい。また、所望の特定ガス成分が有機蒸気である場合には、ポリイミド又はシリコーンゴムからなる膜であることが好ましく、これらの中でも、より優れた有機蒸気選択透過性を有する点からシリコーンゴムからなる膜であることが特に好ましい。ここで、有機蒸気とは、一般的には炭化水素系、アルコール系又はケトン系等の揮発性有機化合物の蒸気のことであり、具体的には、メタン、エタン、ペンタン又はアセトン等の蒸気のことである。選択透過膜60,62の厚みとしては、適度な機械的強度を有し、かつ呼気中の所望の特定ガス成分の透過を阻害しない程度であれば特に限定されないが、5μm〜50μmであることが好ましい。
本実施の形態では、選択透過膜60には、水分を除去し、かつ呼気中のマーカである一酸化窒素(NO)を優先的に透過可能な疎水性の膜(例えば、NO-selective membrane(商品名、World Precision Instruments社製))を使用し、選択透過膜62には、呼気中のマーカであるアセトンを優先的に透過可能なポリイミドからなる膜を使用する。
第1センサ室72には、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度を選択的に測定するための第1ガスセンサ48が、そのセンサ面が第1開口部56に臨み、かつ第1センサ室72の内部空間に露出するようにセンサ基板40に支持されて設けられる。また第2センサ室74には、呼気中のアセトンの濃度を選択的に測定するための第2ガスセンサ50が、そのセンサ面が第2開口部58に臨み、かつ第2センサ室74の内部空間に露出するようにセンサ基板42に支持されて設けられる。また、センサ基板40と第1ガスセンサ48との間、及び、センサ基板42と第2ガスセンサ50との間には、ヒータ41,43がそれぞれ設けられる。ヒータ41,43は、制御部32と電気的に接続され、制御部32から入力される加熱制御信号に従って、第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50を加熱する。ヒータ41,43としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、白金(Pt)薄膜又は白金(Pt)板等からなるものを使用できる。
第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50はいずれも、後述する、呼気中の特定ガス成分を選択的に吸着する物質94により表面修飾されたカーボンナノ構造体88の集合体からなるセンシング部82を含むガスセンサ素子80を含む。カーボンナノ構造体88は、カーボンナノチューブ(以下「CNT(Carbon Nano Tube)」と記す。)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン及びフラーレンからなるグループから選択される炭素系導電性材料からなることが好ましく、更にはCNTからなることが好ましい。このようなグループから選択されるカーボンナノ構造体88は、その形状がナノオーダーの微細構造であることから、応答性に優れかつ検出下限が非常に低く、ppbオーダの微量の特定ガス成分の検出が可能である。これらの中でも、CNTからなるカーボンナノ構造体88は上述の効果を特に発現しやすい。
図4は、ガスセンサ素子80の構成の一例を概略して示す図であり、図5は、センシング部82における表面修飾の様子を模式的に示す図である。図4を参照して、ガスセンサ素子80は、呼気中の特定ガス成分を選択的に吸着する物質94により表面修飾されたカーボンナノ構造体88の集合体からなるセンシング部82と、センシング部82の両端に配置される電極84及び電極86とを含む。図5を参照して、センシング部82は、例えばCNTからなるカーボンナノ構造体88と、カーボンナノ構造体88表面に固定された、呼気中の特定ガス成分を選択的に吸着する物質94とを含む。ここでは、物質94として、一酸化窒素(NO)を選択的に吸着する金属フタロシアニンの分子構造を図示したが、特にこれに限定されるものではない。本実施の形態では、第1ガスセンサ48のセンシング部82として、一酸化窒素(NO)及び水分を選択的に吸着するコバルトフタロシアニン(以下「CoPc」と記す。)により表面修飾されたものを使用し、第2ガスセンサ50のセンシング部82として、アセトンを選択的に吸着するマンガンフタロシアニン(以下「MnPc」と記す。)により表面修飾されたものを使用する。本実施の形態では、選択透過膜60によって水分が除去されるので、第1ガスセンサ48のセンシング部82は、一酸化窒素(NO)のみを選択的に検出することができる。
カーボンナノ構造体88の表面に何らかの化学物質が付着すると、電子移動が起こり起電力が発生する。言い換えれば、カーボンナノ構造体88の2点間に電位差又は電気抵抗の変化が生じる。この電気抵抗の変化を検出すれば、化学物質の検出(センシング)が可能となる。また、ある特定ガス成分を選択的に吸着する物質94によりカーボンナノ構造体88の表面を修飾すると、上述の電気抵抗の変化は、表面に修飾された物質94の挙動に連動するようになるので、特定ガス成分のみを検出できるガスセンサ素子80を得ることができる。
例えば、MnPcによりカーボンナノ構造体88の表面を修飾すると、呼気中のアセトンがMnPcに吸着される。その結果、前述のようにカーボンナノ構造体88の電気抵抗が変化する。この変化量は、カーボンナノ構造体88表面に吸着したアセトンの量に応じて変わる。したがって、センシング部82に電流を通したときの抵抗値の変化を測定することにより、呼気中のアセトンの濃度を検出することができる。
図6は、第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50の双方に設けられる、ガスセンサ素子80の抵抗変化を測定するための測定回路100の構成を示す図である。図6を参照して、測定回路100は、定電圧源130と、定電圧源130の両端子間に直列に接続されるガスセンサ素子80及び負荷抵抗134と、ガスセンサ素子80及び負荷抵抗134間の接点に接続された入力を持ち、この接点の電位変化を増幅するための増幅器136とを含む。呼気中の特定ガス成分の検出時、すなわち呼気分析時には、この電位変化を測定するために、増幅器136の他方の端子に、後述する制御部32のA/D(Analog−to−Digital)変換器(図示せず。)が接続される。図4に示すガスセンサ素子80の電極84は、定電圧源130のプラス端子に、電極86は負荷抵抗134及び増幅器136にそれぞれ接続される。負荷抵抗134の抵抗値は既知である。ガスセンサ素子80及び負荷抵抗134間の接点の電位変化を測定することにより、ガスセンサ素子80の電気抵抗の変化を知ることができ、これにより、ガスセンサ素子80に吸着した特定ガス成分の濃度を知ることができる。
呼気導入部28は、呼気導入室70内部と呼気センシング装置10外部とを連通する。呼気導入部28は、先端部に位置する呼気導入口30から導入される呼気を呼気導入室70内部へと流通するための矢符Aに示す流路を形成する呼気導入路44と、呼気導入口30から導入される呼気を呼気センシング装置10外部へと排出するための矢符Bに示す流路を形成する死腔排出路46とを含むT字型のパイプ状部材からなる。すなわち、死腔排出路46は、その長軸が呼気導入路44の長軸と直交するように、呼気導入路44の中央部から分岐するように形成される。呼気導入部28としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、内径10mm〜30mm、長さ50mm〜150mmの呼気導入路44と、内径10mm〜30mm、長さ50mm〜100mmの死腔排出路46とを有するT字型パイプ状部材であることが好ましい。呼気導入部28は、ユーザが手作業で、呼気センシング装置10本体を持運ぶことを可能にする取っ手としての機能も有する。呼気導入路44と死腔排出路46とが分岐する部分(以下、「分岐部分」と記す。)には、切替弁64が設けられる。切替弁64は、制御部32と電気的に接続され、後述する流量センサ66による呼気流量の測定結果に基づいて制御部32から入力される切替制御信号に従って、導入された呼気が呼気導入路44又は死腔排出路46を流通するように呼気導入路44と死腔排出路46とを切替える。切替弁64としては、当該分野で一般的に使用される可動式のものであれば特に制限されず電磁式切替弁等を使用できる。
呼気導入部28の内部において、呼気導入口30と分岐部分との間には、流量センサ66が、そのセンサ面が呼気導入部28の内部空間に露出するように装着される。流量センサ66は、導入される呼気の流量を測定できるものであれば特に限定されず、カーボンナノ構造体88の集合体からなるセンサ、羽根車式センサ、電磁式センサ、カルマン式センサ又は超音波式センサ等を使用できる。これらの中でも、カーボンナノ構造体88の集合体からなるセンサであることが好ましく、更にはCNTの集合体からなるセンサであることが好ましい。これにより、チタン酸バリウム又は酸化チタン等の金属酸化物半導体からなるセンサ等の他のセンサを使用する場合と比較して、より一層装置の小型化を達成できる。また、例えば、にんにく臭又は口臭等を発生する匂い物質等の、呼気分析を妨害するような成分(以下「妨害成分」と記す。)を選択的に吸着する物質によって表面修飾することにより、呼気の流量を測定するとともに、呼気中に含まれる妨害成分の検出が可能になる。したがって、これらの妨害成分の混入に対する、例えば、第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50の再生処理を行なう、又は、後述する再測定点灯部142を点灯させて被験者に対して再測定を促す等の対策を施すことが可能になるので、より正確な呼気分析を実現できる。流量センサ66は制御部32と電気的に接続され、呼気流量の測定結果を出力値として、制御部32に対して出力する。
このように、呼気導入路44及び死腔排出路46を含む呼気導入部28において、呼気導入路44及び死腔排出路46の分岐部分には切替弁64が設けられ、呼気導入口30と分岐部分との間には流量センサ66が設けられる。そして、切替弁64は、流量センサ66による呼気流量の測定結果に基づいて制御部32から入力される切替制御信号に従って、呼気導入路44と死腔排出路46とを切替える。これにより、死腔部分の呼気を確実に除去することができる。また、呼気排出経路と呼気測定経路とを別に設ける必要がなくなるので、従来のものと比較して装置の単純化及び小型化を達成できる。ここで、死腔とは、気道空間、すなわち上気道部分のことである。死腔部分の呼気は、肺から排出される呼気とともに、血液との成分交換に寄与していない吸入された大気(以下「吸気」と記す場合がある。)が混合されているので、正確な呼気分析を行なうための試料として好ましくない。したがって、正確な呼気分析を行なうために、死腔部分の呼気を除く必要がある。なお、一般的な成人男性及び成人女性は、一回の呼吸で500mL程度の呼気を吐出し、このうち死腔部分の呼気の容量は150mL〜200mL程度である。したがって、制御部32により、流量センサ66の測定結果に基づいて算出される呼気導入量が150mL〜200mLに達したと判定されたときに、切替弁64による死腔排出路46から呼気導入路44への切替動作が行なわれることが好ましい。これにより、死腔部分の呼気をより一層確実に除去することができ、より一層正確な呼気分析が可能になる。
呼気導入部28が筐体18と連通する部分近傍には、筐体18内部に呼気が流入するのを許容し、かつ筐体18内部から呼気が流出するのを阻止する逆止弁75が設けられる。逆止弁75としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、弁体がプラスチック等の薄板からなるもの、又は、略平板状の逆止弁等を使用できる。略平板状の逆止弁としては、例えば、市販品(商品名:AP61シリーズ、東横化学株式会社製)等を使用できる。逆止弁75は、ばね又は自重等による押付け力によって弁体を弁座に押しつけることで筐体18内部から呼気が流出するのを阻止する。そして、被験者により導入された呼気により上述の押付け力を上回る圧力が弁体に対して加わった際に、筐体18内部に呼気が流入するのを許容する。
表示部20は、制御部32と電気的に接続され、流量センサ66の測定結果に基づいて算出される呼気導入量に基づいて制御部32から入力される表示制御信号に従って、呼気導入量の状態を表示するための表示装置である。表示部20の表示方式としては、被験者が自己の呼気導入量の状態を確認できる方式であれば特に限定されるものではなく、バーグラフ表示等の目盛り式表示又はデジタル表示等を使用できる。このように、表示部20が設けられることによって、被験者は自己の呼気導入量の状態を確認しながら呼気を吐出することができるので、正確に呼気のサンプリングを行なうことができ、呼気分析に必要な呼気量を容易に確保できるようになる。したがって、呼気分析の精度がより一層向上するので、より信頼性の高い呼気分析を行なうことができる。また、呼気サンプリングの失敗が減り、再測定の回数を減らすことができるので、呼気分析に要する手間及び時間を省くことができる。
図7は、表示部20における表示の一例を示す図である。図7を参照して、表示部20は、制御部32から入力される表示制御信号に従って個別に点灯する5つの点灯部140A〜140Eと、「再測定」と表示された部分を点灯する再測定点灯部142とを含む。点灯部140A〜140E及び再測定点灯部142は、例えばLED(Light Emitting Diode)等からなる。点灯部140A〜140Eは、この順に表示面積が大きくなるように並んで配置され、これらの表示面積は、呼気導入量にそれぞれ対応する大きさとなるように構成される。点灯部140A〜140Eは、流量センサ66の測定結果に基づいて算出される呼気導入量に基づいて制御部32から入力される表示制御信号に従って、呼気導入量の増加に伴ってこの順に順次点灯し、呼気導入量が呼気分析に必要な予め定める所定量に達したときに、全ての点灯部140A〜140Eが点灯するように構成される。これにより、被験者は自己の呼気導入量の状態をより一層容易に確認できるので、呼気分析の精度が更に向上し、より一層信頼性の高い呼気分析を行なうことができる。
呼気導入部28の呼気導入口30は、使い捨てのマウスピース150を着脱可能に構成される。図8は、マウスピース150の構成を示す図であり、図8(A)は、伸長状態のマウスピース150を示す図であり、図8(B)は、短縮状態のマウスピース150を示す図であり、図8(C)は伸長状態のマウスピース150を長軸方向に切断したときの断面図である。図8(A)及び図8(B)を参照して、マウスピース150は、山部と谷部とを交互に繰返し、折り畳み可能に構成される蛇腹構造を有し、カバー部152と、骨組部154とを含む。カバー部152は、ポリオレフィン等の高分子材料、紙又はプラスチック等からなる略円筒状部材である。骨組部154は、鋼等の金属又はプラスチック等からなるリング状部材であり、カバー部152の長軸方向に間隔をあけて複数個設けられ、マウスピース150を補強する。マウスピース150の先端部156、すなわち被験者が口でくわえる部分は、被験者が口でくわえ易く、かつ呼気がもれにくい形状及び大きさに形成されることが好ましい。先端部156の好ましい形状としては、例えば、楕円筒形状又はリコーダの歌口のような形状等がある。先端部156の好ましい大きさとしては、特に限定されず適宜設定されればよいが、本実施の形態においては、先端部156以外の骨組部154aとして、直径が呼気導入口30と同程度の大きさである直径15mmのリング状部材を使用し、先端部156における骨組部154bとして、直径が骨組部154aの直径よりも小さくなるように形成される直径10mmのリング状部材を使用する。マウスピース150の先端部156に対して反対側の他端部158は、呼気導入口30から外れにくい形状に形成されることが好ましい。他端部158の形状としては、特に限定されず適宜設定されればよいが、本実施の形態においては、内部に爪状の突起部が形成されるようにカバー部152に2つの凹部160が設けられ、呼気導入部28の呼気導入口30には、凹部160を引掛けるための爪状の引掛部(図示せず)が設けられる。マウスピース150の内壁は、呼気中の水分等に対して耐性を有するように、フッ素樹脂又はシリコン樹脂等による防水処理が施されることが好ましい。また先端部156の外壁は、被験者が口で加えた際に不快感を得ることのないようにラミネート加工等の表面処理が施されることが好ましい。
図8(A)及び図8(B)を参照して、マウスピース150の長軸方向に対して圧縮力P1が印加されると、各骨組部154間のカバー部152が屈曲して谷部を形成し、皿状に積層された短縮状態となる。この短縮状態において、マウスピース150の長軸方向に対して引っ張り力P2が印加されると、各骨組部154間のカバー部152が延伸され、元の伸長状態に戻る。このように、マウスピース150は、その長軸方向に印加される圧縮力P1又は引っ張り力P2によって伸縮自在であり、かつ湾曲可能な蛇腹構造を有し、呼気分析を行なう場合には伸長状態にして使用し、保管する場合には短縮状態にして保管する。
図8(C)を参照して、少なくとも1つの骨組部154には、そのリング孔の部分を覆うように、フィルタ162が接着剤等により接着されて設けられる。ここで、フィルタ162は、呼気に含まれる、呼気分析に不要な物質等を除去するための膜であり、例えば、不織布、不織布に触媒体、多孔質材料、吸湿剤又は吸着材等を担持させたもの、若しくは、選択透過膜等を使用できる。不織布としては、呼気中の水分及び埃等を濾過可能なものであれば特に限定されないが、レーヨン、コットン又はポリプロピレン等からなるメルトブロー若しくはスパンレース等を使用できる。不織布に担持させる触媒体としては、例えば、一酸化炭素(CO)除去用の白金等の貴金属からなるナノ微粒子等を使用できる。多孔質材料としては、例えば、活性炭等を使用できる。吸湿剤としては、例えば、塩化カルシウム等を使用できる。吸着材としては、例えば、シリカゲル等を使用できる。選択透過膜としては、呼気中の妨害成分等を除去可能なものであれば特に限定されないが、シリコーンゴム等からなる膜を使用できる。なお、フィルタ162として選択透過膜を使用する場合には、被験者が口でくわえる部分であるマウスピース150の先端部156とフィルタ162との間のカバー部152に、選択透過膜162を通過できないガス成分を排出するための通気孔を設ける、若しくは、先端部156とフィルタ162との間のカバー部152の一部が、選択透過膜162を透過できないガス成分を透過可能な膜からなる構成とすることが好ましい。このような構成にすることにより、選択透過膜162を通過できない呼気分析に不要なガス成分を効率よく排出することができるので、呼気の導入をより一層効率よく行なうことができる。上述の通気孔の大きさとしては、選択透過膜162の種類、使用枚数及び厚み等に応じて、マウスピース150の先端部156とフィルタ162との間における圧力損失が好ましい値となるように適宜設定されればよい。本実施の形態では、1つの骨組部154aにフィルタとして不織布を設けたが、呼気の流通が阻害されない程度であればこの設置数に限定されず、複数の、好ましくは1つ〜3つの骨組部154に様々な作用を有するフィルタを組合せて設けることができる。
このように、マウスピース150は、伸縮及び湾曲自在な蛇腹構造を形成する、略円筒状のカバー部152と、カバー部152の長軸方向に間隔をあけて設けられる複数の骨組部154とを含み、骨組部154には、呼気中の特定物質を除去するためのフィルタ162が設けられる。このように、マウスピース150は、複数の骨組部154を含む蛇腹構造を有するので、被験者は、呼気分析を行なう場合には、マウスピース150の長さを被験者にとって最適な長さに容易に調整でき、更に、マウスピース150を湾曲させることで先端部156の位置を被験者にとって最適な位置に容易に調整することができる。したがって、呼気の導入を容易に行なうことができるようになる。また、コンパクトな状態で保管できるようになるので、保管に要する場所を小さくすることができる。更に、フィルタ162を必要に応じて複数設けることができるので、呼気に含まれる特定物質、例えば呼気分析を妨害するおそれのある水分及び埃等の物質を容易に除去できるようになり、呼気センシング装置10に対する負担を軽減でき、より信頼性の高い呼気分析を行なうことができる。
また、マウスピース150は、上述のような比較的安価な材料から構成されるので、使い捨て可能である。これによって、フィルタの掃除等に要する手間及び時間を省くことでき、かつ衛生面に優れるマウスピース150を提供することができる。
第1呼気排出部22は、呼気導入室70内部と筐体18外部とを連通し、第2呼気排出部24は、第2センサ室74内部と筐体18外部とを連通し、第3呼気排出部26は、第1センサ室72内部と筐体18外部とを連通する。第1呼気排出部22としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmのパイプ状部材を使用することができる。第2呼気排出部24及び第3呼気排出部26には、第1センサ室72及び第2センサ室74が類似の構成を有するように同一の部材が使用されることが好ましい。第2呼気排出部24及び第3呼気排出部26としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、内径10mm〜30mm、長さ10mm〜50mmのパイプ状部材を使用することができる。
第1呼気排出部22には、呼気導入室70の内圧が予め定められる圧力を超えたときに、自動的に呼気導入室70内部から筐体18外部へと呼気を流出させる逆止弁76が設けられる。逆止弁76は、筐体18内部から呼気が流出するのを許容し、かつ筐体18内部へガスが流入するのを阻止する。逆止弁76としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、弁体がプラスチック等の薄板からなるもの、又は、略平板状の逆止弁等を使用できる。略平板状の逆止弁としては、例えば、市販品(商品名:AP61シリーズ、東横化学株式会社製)等を使用できる。逆止弁76は、ばね又は自重等による押付け力によって弁体を弁座に押しつけることで筐体18内部へガスが流入するのを阻止する。そして、呼気導入室70の内圧により上述の押付け力を上回る圧力が加わった際に、筐体18内部から呼気が流出するのを許容する。逆止弁76は、呼気導入室70内部の呼気による内圧を制御して、必要以上の呼気が第1センサ室72及び第2センサ室74に流入することを防ぐ。
第2呼気排出部24には、第2センサ室74の内圧が予め定められる圧力を超えたときに、自動的に第2センサ室74内部から筐体18外部へと呼気を流出させる逆止弁77が設けられる。第3呼気排出部26には、第1センサ室72の内圧が予め定められる圧力を超えたときに、自動的に第1センサ室72内部から筐体18外部へと呼気を流出させる逆止弁78が設けられる。逆止弁77及び逆止弁78は、筐体18内部から呼気が流出するのを許容し、かつ筐体18内部へガスが流入するのを阻止する。逆止弁77及び逆止弁78は、第1センサ室72及び第2センサ室74が類似の構成を有するように同一の部材が使用されることが好ましい。逆止弁77及び逆止弁78としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、弁体がプラスチック等の薄板からなるもの、又は、略平板状の逆止弁等を使用できる。略平板状の逆止弁としては、例えば、市販品(商品名:AP61シリーズ、東横化学株式会社製)等を使用できる。逆止弁77及び逆止弁78は、ばね又は自重等による押付け力によって弁体を弁座に押しつけることで筐体18内部へガスが流入するのを阻止する。そして、第2センサ室74の内圧又は第1センサ室72の内圧により上述の押付け力を上回る圧力が加わった際に、筐体18内部から呼気が流出するのを許容する。
逆止弁76における押付け力は、逆止弁77及び逆止弁78における押付け力よりも大きくなるように設定される。したがって、筐体18内部を流通する呼気によって筐体18内部に内圧が生じ、第2センサ室74の内圧及び第1センサ室72の内圧が逆止弁77及び逆止弁78における押付け力を超えると、逆止弁77及び逆止弁78が開く。その後、筐体18内部において内圧が更に上昇して、呼気導入室70の内圧が逆止弁76における押付け力を超えると、逆止弁76が開く。
このように、押付け力が設定されることによって、呼気の流れをより一層効率よく生じさせることができるとともに、呼気の流速をより一層安定して制御することができる。したがって、呼気センシング装置10の検出感度を更に高め、応答速度を更に速くすることができるとともに、呼気の吐出の強さの違いに影響されることなくより一層安定して呼気分析を行なうことができる。
筐体18の背面部における第1センサ室72側の面には、第1呼気排出部22と連通する部分を塞ぐように、選択透過膜68が設けられ、筐体18の正面部における第2センサ室74側の面には、第2呼気排出部24と連通する部分を塞ぐように選択透過膜69が設けられる。選択透過膜68,69の構成材料としては、選択透過膜60又は選択透過膜62を透過した呼気中のガス成分を優先的に透過させ、かつ大気中の各成分を透過させにくい材料から適宜選択される。選択透過膜68,69の厚みとしては、適度な機械的強度を有する程度であれば特に限定されないが、5μm〜50μmであることが好ましい。
本実施の形態では、選択透過膜68には、選択透過膜60と同様の膜である、水分を除去し、かつ呼気中のマーカである一酸化窒素(NO)を優先的に透過可能な疎水性の膜(例えば、NO-selective membrane(商品名、World Precision Instruments社製))を使用し、選択透過膜69には、選択透過膜62と同様の膜である、呼気中のマーカであるアセトンを優先的に透過可能なポリイミドからなる膜を使用する。
呼気導入室70において、呼気導入部28と第1呼気排出部22との間であって、第1開口部56及び第2開口部58よりも第1呼気排出部22側には、一対の反射板38a,38bが設けられる。反射板38aは、その反射面が第1開口部56を向くように配置され、反射板38bはその反射面が第2開口部58を向くように配置される。これらの反射板38a,38bは、呼気導入部28から呼気導入室70内部に導入され、第1開口部56及び第2開口部58を通過せず第1呼気排出部22側に流通する呼気を、第1開口部56及び第2開口部58に向けて反射させることで呼気の流通方向を第1開口部56及び第2開口部58に向かう方向に変更する。このように、反射板38a,38bが設けられることによって、第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50へ向かう呼気の流れをより一層効率良く生じさせることができるので、呼気分析の検出感度をより高め、応答速度をより速くすることができる。また選択透過膜60,62における呼気中の特定ガス成分の透過をより効率良く行なわせることができる。
制御部32は、CPU(Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサ等によって実現される処理回路と、ROM(Read−Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む記憶部と、A/D変換器と、主電源と(以上いずれも図示せず。)を含む。記憶部には、流量センサ66からの測定結果、並びに、表示部20の表示動作及び切替弁64の切替動作等の各種処理を実行するための各種プログラム等が記憶される。A/D変換器は、第1ガスセンサ48又は第2ガスセンサ50によりアナログ信号として出力される電位変化をデジタル化してデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号を処理回路に対して出力する。主電源は処理回路だけでなく、呼気センシング装置10の各構成部に対しても電力を供給する。処理回路は、記憶部に記憶される、測定結果等の各種データ若しくは各種プログラムを読出して各種判定を行ない、判定結果に応じて該当する呼気センシング装置10内部の各構成部に制御信号を送信して、各構成部の動作制御を行なう。例えば、処理回路は、流量センサ66による測定結果に基づいて呼気導入量を算出し、算出した呼気導入量が予め定める所定量に達したか否かを判定し、判定結果に応じて、切替弁64に対して切替制御信号を送信し、呼気の流路を切替える。なお、呼気導入量は、時間と呼気流量センサ66の抵抗変化とのプロファイル差等から算出される。また、処理回路は、所定のプログラムを実行して、A/D変換器から入力されるデジタル信号に基づいて呼気中の特定ガス成分の濃度を算出し、その算出結果を表示画面21に表示させるために、表示画面21に対して表示制御信号を出力する。
測定開始ボタン34及び再生ボタン36は、被験者等の利用者により押下されて操作されることで、制御部32に対してそれぞれの指示、すなわち呼気分析開始指示、又は、第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50の再生処理開始指示に応じた制御信号を出力する。
表示画面21は、制御部32と電気的に接続され、制御部32から入力される表示制御信号に従って、呼気中の特定ガス成分の濃度等を、例えば折れ線グラフ表示等によって表示するための表示装置である。表示画面21としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されず、液晶表示装置等を使用できる。
−動作−
図1〜図6を参照して、本実施の形態に係る呼気センシング装置10は以下のように動作する。通常、被験者等の利用者は、最初に第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50の再生処理を行ない、次いで、呼気分析を行なう。
すなわち、まず、被験者等により再生ボタン36が操作されると、制御部32は、ヒータ41,43に一定時間電流を流して加熱し、第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50のセンシング部82に吸着したガス成分を脱離させる。
次いで、被験者等により測定開始ボタン34が操作されると、定電圧源130により、ガスセンサ素子80と負荷抵抗134とを直列接続したものの両端に一定電圧がかけられるとともに、切替弁64により、呼気導入部28に導入される呼気が死腔排出路46を流通する状態にされる。そして、被験者により呼気導入口30にマウスピース150が設置され、設置されたマウスピース150から呼気が導入されると、流量センサ66は、死腔排出路46を流通する呼気の流量を測定して、その測定結果を出力値として制御部32に対して出力する。制御部32の処理回路は、流量センサ66からの入力値を積算した積算流量を呼気導入量として算出し、算出した呼気導入量が、死腔部分の呼気の容量に相当する、例えば200mlに達したか否かを判定する。そして、算出した呼気導入量が200mLに達したと判定すると、切替弁64に対して切替制御信号を出力し、導入された呼気の流路が呼気導入路44を流通するように切替弁64を切替える。一方、制御部32の処理回路によって、導入された呼気の流量が200mlに達していないと判定された場合には、切替制御信号は送信されず、導入された呼気が死腔排出路46を流通する状態のままで維持される。
切替弁64が切替えられて、導入された呼気が呼気導入路44を流通するようになると、制御部32は、算出した呼気導入量に応じて表示部20に対して表示制御信号を出力し、対応する表示部20の点灯部140A〜140Eを表示させる。すなわち、呼気導入量の増加に伴って点灯部140A〜140Eをこの順に点灯させていき、呼気導入量が呼気分析に必要な予め定める所定量、例えば500mLに達したときに、全ての点灯部140A〜140Eが点灯するように表示させる。被験者が全ての点灯部140A〜140Eが点灯したことを確認し、呼気の導入を停止すると、流量センサ66からの入力値が「0」になる。制御部32は、常時流量センサ66からの入力値が「0」であるか否かを判定しており、流量センサ66からの入力値が「0」であると判定すると、表示部20に対して表示終了信号を出力し、全ての点灯部140A〜140Eを消灯させる。なお、制御部32は、例えば被験者が呼気導入時に途中で呼気の吐出を止めること等によって、全ての点灯部140A〜140Eが点灯する前に、流量センサ66からの入力値が「0」であると判定した場合には、表示部20に対して再測定を指示する表示制御信号を出力し、再測定点灯部142を点灯させる。また、制御部32は、例えば、マウスピースの破損等によって呼気が正常に導入されず呼気導入量の増加を検出できない場合、又は、呼気導入量が流量センサ66の検知可能範囲量を大きく外れる場合等においても、表示部20に対して再測定を指示する表示制御信号を出力し、再測定点灯部142を点灯させる。
呼気導入部28において呼気導入路44を流通した呼気は呼気導入室70に導入され、その一部は第1開口部56及び第2開口部58を通過して第1センサ室72及び第2センサ室74に直接流入する。このとき、選択透過膜60の存在により、呼気中の特定ガス成分のうち、水分が除去されるとともに一酸化窒素(NO)が優先的に第1センサ室72に導入される。同様に、選択透過膜62の存在により、呼気中の特定ガス成分のうち、アセトンが優先的に第2センサ室74に導入される。
第1センサ室72に優先的に導入された呼気中の一酸化窒素(NO)は、第1ガスセンサ48のセンシング部82に選択的に吸着され、その結果、ガスセンサ素子80の電極84,86間の電気抵抗が増加する。その変化は、増幅器136の出力電圧の変化として制御部32のA/D変換器に対して出力される。同様に、第2センサ室74に優先的に導入された呼気中のアセトンは、第2ガスセンサ50のセンシング部82に選択的に吸着され、その結果、ガスセンサ素子80の電極84,86間の電気抵抗が増加する。その変化は、増幅器136の出力電圧の変化として制御部32のA/D変換器に対して出力される。A/D変換器は、入力された電位変化をデジタル信号に変換して制御部32の処理回路に対して出力し、処理回路は、入力されたデジタル信号に基づいて呼気中の一酸化窒素(NO)又はアセトンの濃度を算出して、その算出結果を表示画面21に表示させる。このように出力電圧変化を知ることによって、呼気中の特定ガス成分の濃度を確認することができる。
第1ガスセンサ48のセンシング部82により一酸化窒素(NO)が吸着された呼気は、選択透過膜68を優先的に通過して、第3呼気排出部26の呼気排出口27から呼気センシング装置10外部に排出される。同様に、第2ガスセンサ50のセンシング部82によりアセトンが吸着された呼気は、選択透過膜69を優先的に透過して、第2呼気排出部24の呼気排出口25から呼気センシング装置10外部に排出され、呼気分析が終了する。
上述のようにして、筐体18内部には、呼気導入部28から導入された呼気が、選択透過膜60、第1ガスセンサ48、選択透過膜68、第4呼気排出部26の順に流通する流路と、選択透過膜62、第2ガスセンサ50、選択透過膜69、第3呼気排出部24の順に流通する流路との2つの流路が形成される。
第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50の検出感度を高め、応答速度を速くするには、呼気が2つの流路を円滑に流通するように呼気の流れを生じさせる必要がある。また、呼気は、被験者等による呼気の吐出の強さによって生じる呼気導入室70の内圧を利用して選択透過膜60,62を通過するが、呼気分析を呼気の吐出の強さの違いに影響されることなく安定して行なうために、呼気の流れの速度(以下「流速」と記す。)を制御する必要がある。本実施の形態では、以下のようにして、呼気の流れを形成し、その流速を制御している。
すなわち、呼気導入開始時には、逆止弁76,77,78は閉じた状態にある。被験者により筐体18内部に呼気が導入されると、筐体18内部に内圧が生じる。そして、第2センサ室74の内圧及び第1センサ室72の内圧が、ばねの強さ等によって予め調整される押付け力である、例えば、大気圧の1.1倍の圧力を超えると、逆止弁77,78は自動的に開き、第2センサ室74内部及び第1センサ室72内部から筐体18外部へと呼気を流出させる。そして、筐体18内部の内圧が更に上昇して、呼気導入室70の内圧が、ばねの強さ等によって予め調整される押付け力である、例えば、大気圧の1.2倍の圧力を超えると、逆止弁76は自動的に開き、呼気導入室70内の呼気を筐体18外部へと流出させることで、必要以上の呼気が第1センサ室72及び第2センサ室74に流入することを防ぐ。
このように、第2センサ室74の内圧及び第1センサ室72の内圧が予め調整される押付け力を超えたときに、逆止弁77,78が自動的に開いて第2センサ室74内部及び第1センサ室72内部から呼気を流出させるので、呼気の流れを効率よく生じさせることができる。更に、呼気導入室70の内圧が予め調整される押付け力を超えたときに、逆止弁76が自動的に開いて呼気導入室70内部から呼気を流出させるので、呼気の流速が一定になるように制御することができる。したがって、呼気センシング装置10の検出感度を高め、応答速度を速くすることができるとともに、呼気の吐出の強さの違いに影響されることなく安定して呼気分析を行なうことができる。
なお、第1センサ室72及び第2センサ室74に流入せず、第1呼気排出部22側に流通する呼気の一部は、反射板38a,28bにより反射されて、その流通方向を第1開口部56及び第2開口部58に向かう方向に変更される。
[第2の実施形態]
−構成−
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る呼気センシング装置200を示す斜視図であり、図10は、呼気センシング装置200の内部構成を示す水平断面図である。図9及び図10を参照して、呼気センシング装置200は、第2センサ室74及び第2呼気排出部24が設けられず、これに伴って、第2仕切部材54、選択透過膜62、第2ガスセンサ50、ヒータ43、センサ基板42、選択透過膜69及び逆止弁77を有しない点、並びに、補正用ガスセンサ202、ヒータ204及びセンサ基板206を有する点以外は、呼気センシング装置10と同一の構成である。呼気センシング装置200において、呼気センシング装置10と同一の機能を有する構成部には同一の参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さない。
呼気センシング装置200において、筐体18の正面には、大気中の一酸化窒素(NO)の濃度を測定するための補正用ガスセンサ202が、そのセンサ面が呼気センシング装置200外部に露出するように、センサ基板206に支持されて設けられる。また、センサ基板206と補正用ガスセンサ202との間には、ヒータ204が設けられる。ヒータ204は、制御部32と電気的に接続され、制御部32から入力される加熱制御信号に従って、補正用ガスセンサ202を加熱する。ヒータ204には、ヒータ41に用いられるものと同様のものを使用できる。
補正用ガスセンサ202には、第1ガスセンサ48に用いられるものと同一のものを使用する。すなわち、補正用ガスセンサ202のセンシング部82として、水分及び一酸化窒素(NO)を選択的に吸着するCoPcにより表面修飾されたものを使用する。補正用ガスセンサ202は、制御部32と電気的に接続され、測定結果を出力値として、制御部32に対して出力する。制御部32は、補正用ガスセンサ202の測定結果に基づいてA/D変換器から入力されるデジタル信号を補正する。
呼気センシング装置200では、第1ガスセンサ48によって呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度が選択的に検出される。しかし、この検出結果は、呼気中に含まれる、血液との成分交換に寄与していない吸気の影響を受けたものである。したがって、より信頼性の高い呼気分析を行なうためには、この吸気の影響を排除する必要がある。呼気センシング装置200では、補正用ガスセンサ202によって吸気に相当する装置外部の大気中の一酸化窒素(NO)の濃度を検出し、その検出結果に基づいて、第1ガスセンサ48の検出値の補正を行なう。第1ガスセンサ48の検出値に対する補正方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されないが、第1ガスセンサ48の検出値から補正用ガスセンサ202の検出値を差し引く方法等がある。
このように、呼気センシング装置200は、大気中の一酸化窒素(NO)を選択的に検出するための補正用ガスセンサ202を更に備え、制御部32は、補正用ガスセンサ202の検出結果に基づいて、第1ガスセンサ48により検出される値の補正を行なうので、呼気中に含まれる吸気の影響を排除することができ、より信頼性の高い呼気分析を行なうことができる。
−動作−
図9及び図10を参照して、本実施の形態に係る呼気センシング装置200は以下のように動作する。なお、呼気が呼気導入部28を流通して呼気導入室70に導入されるまでの動作、表示部20における表示動作、及び、反射板38a,38bの動作は、第1の実施の形態に係る呼気センシング装置10の動作と同様であるので、説明を省略する。
通常、被験者等の利用者は、最初に第1ガスセンサ48及び補正用ガスセンサ202の再生処理を行ない、次いで、呼気分析を行なう。すなわち、まず、被験者等により再生ボタン36が操作されると、制御部32は、ヒータ41及びヒータ204に一定時間電流を流して加熱し、第1ガスセンサ48及び補正用ガスセンサ202のセンシング部82に吸着したガス成分を脱離させる。
呼気導入部28において呼気導入路44を流通した呼気は呼気導入室70に導入され、その一部は第1開口部56を通過して第1センサ室72に直接流入する。このとき、選択透過膜60の存在により、呼気中の特定ガス成分のうち、水分が除去されるとともに一酸化窒素(NO)が優先的に第1センサ室72に導入される。第1センサ室72に優先的に導入された呼気中の一酸化窒素(NO)は、第1ガスセンサ48のセンシング部82に選択的に吸着され、その結果、ガスセンサ素子80の電極84,86間の電気抵抗が増加する。その変化は、増幅器136の出力電圧の変化として制御部32のA/D変換器に対して出力される。同時に、大気中の一酸化窒素(NO)は、補正用ガスセンサ202のセンシング部82に選択的に吸着され、その結果、ガスセンサ素子80の電極84,86間の電気抵抗が増加する。その変化は、増幅器136の出力電圧の変化として制御部32のA/D変換器に対して出力される。A/D変換器は、入力された電位変化をデジタル信号に変換して制御部32の処理回路に対して出力し、処理回路は、入力されたデジタル信号に基づいて呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度を算出する。このとき、処理回路は、補正用ガスセンサ202の検出値に基づいて、第1ガスセンサ48の検出値の補正を行なう。すなわち、第1ガスセンサ48に接続されるA/D変換器から入力されたデジタル信号から算出される呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度の値から、補正用ガスセンサ202に接続されるA/D変換器から入力されたデジタル信号から算出される大気中の一酸化窒素(NO)の濃度の値を差し引くことで、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度の補正を行う。処理回路は、補正後の算出結果を、表示画面21に表示させる。このように出力電圧変化を知ることによって、呼気中の特定ガス成分の濃度を確認することができる。
第1ガスセンサ48のセンシング部82により一酸化窒素(NO)が吸着された呼気は、選択透過膜68を優先的に通過して、第3呼気排出部26の呼気排出口27から呼気センシング装置200外部に排出され、呼気分析が終了する。
上述のようにして、筐体18内部には、呼気導入部28から導入された呼気が、選択透過膜60、第1ガスセンサ48、選択透過膜68、第4呼気排出部26の順に流通する流路が形成される。第1ガスセンサ48の検出感度を高め、応答速度を速くするには、呼気が上述の流路を円滑に流通するように呼気の流れを生じさせる必要がある。また、呼気は、被験者等による呼気の吐出の強さによって生じる呼気導入室70の内圧を利用して選択透過膜60を通過するが、呼気分析を呼気の吐出の強さの違いに影響されることなく安定して行なうために、流速を制御する必要がある。本実施の形態では、以下のようにして、呼気の流れを形成し、その流速を制御している。
すなわち、呼気導入開始時には、逆止弁76,78は閉じた状態にある。被験者により筐体18内部に呼気が導入されると、筐体18内部に内圧が生じる。そして、第1センサ室72の内圧が、ばねの強さ等によって予め調整される押付け力である、例えば、大気圧の1.1倍の圧力を超えると、逆止弁78は自動的に開き、第1センサ室72から筐体18外部へと呼気を流出させる。そして、筐体18内部の内圧が更に上昇して、呼気導入室70の内圧が、ばねの強さ等によって予め調整される押付け力である、例えば、大気圧の1.2倍の圧力を超えると、逆止弁76は自動的に開き、呼気導入室70内の呼気を筐体18外部へと流出させることで、必要以上の呼気が第1センサ室72に流入することを防ぐ。
このように、第1センサ室72の内圧が予め調整される押付け力を超えたときに、逆止弁78が自動的に開いて第1センサ室72内部から呼気を流出させるので、呼気の流れを効率よく生じさせることができる。更に、呼気導入室70の内圧が予め調整される押付け力を超えたときに、逆止弁76が自動的に開いて呼気を呼気導入室70内部から流出させるので、呼気の流速が一定になるように制御することができる。したがって、呼気センシング装置200の検出感度を高め、応答速度を速くすることができるとともに、呼気の吐出の強さの違いに影響されることなく安定して呼気分析を行なうことができる。
〈作用・効果〉
上述の実施の形態によれば、呼気センシング装置10,200は、内部に呼気中の一酸化窒素(NO)を検出するための第1ガスセンサ48を備える筐体18と、筐体18内部に呼気を導入するための呼気導入口30を有する呼気導入部28と、筐体18内部から呼気を排出するための呼気排出口27を有する第3呼気排出部26と、呼気導入部28と第1ガスセンサ48との間に設けられ、呼気導入部28から導入される呼気中の一酸化窒素(NO)を優先的に通過させる選択透過膜60と、第1ガスセンサ48と第3呼気排出部26との間に設けられ、選択透過膜60を通過した呼気を優先的に通過させる選択透過膜68と、第3呼気排出部26に設けられ、筐体18内部にガスが流入するのを阻止し、かつ選択透過膜60と第3呼気排出部26との間である第1センサ室72の内圧が、ばねの強さ等によって予め調整される押出し力を超えたときに、第1センサ室72内部から呼気を自動的に流出させる逆止弁78と、呼気導入部28と選択透過膜60との間である呼気導入室70に設けられ、呼気導入室70内部にガスが流入するのを阻止し、かつ、呼気導入室70の内圧がばねの強さ等によって予め調整される押出し力を超えたときに、呼気導入室70内部から呼気を自動的に流出させる逆止弁76とを備える。
このように、呼気中の一酸化窒素(NO)を優先的に通過させる選択透過膜60が設けられるので、カラム等を使用する従来の装置と比較して装置の小型化を達成できる。また、選択透過膜60を通過した呼気を優先的に通過させる選択透過膜68が設けられるので、選択透過膜60から選択透過膜68へと向かう呼気の流れを効率よく生じさせることができる。また、第1センサ室72の内圧が予め調整される押出し力を超えたときに、逆止弁78が自動的に第1センサ室72内部から呼気を流出させるので、呼気の流れをより一層効率よく生じさせることができる。更に、呼気導入室70の内圧が予め調整される押出し力を超えたときに、逆止弁76が自動的に呼気導入室70内部から呼気を流出させるので、呼気の流速が一定になるように制御することができる。したがって、呼気センシング装置10,200の検出感度を高め、応答速度を速くすることができるとともに、呼気の吐出の強さの違いに影響されることなく安定して呼気分析を行なうことができる。なお、ここでは、第1及び第2の実施の形態に共通な第1センサ室72の構成についてのみ述べているが、第1の実施の形態における第2センサ室74においても、上述と同様の効果を得ることができる。
上記実施の形態では、呼気導入部28の呼気導入口30にはマウスピース150が装着されたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、例えば、以下に示すマウスピース170が装着されてもよい。図11は、マウスピース170の構成を示す断面図である。図11(A)は、保管時におけるマウスピース170の状態を示す図であり、図11(B)及び図11(C)は、使用時におけるマウスピース170の状態を示す図である。図11(A)及び図11(C)を参照して、マウスピース170は、本体172と、装着部174と、上蓋176とを含む。本体172は、他端部158に凹部160が設けられない点、及び、他端部158が装着部174に装着される点以外は、マウスピース150と同一の構成である。マウスピース170において、マウスピース150と同一の機能を有する構成部には同一の参照符号及び名称を付し、それらについての詳細な説明は繰返さない。
装着部174は、先端部178が呼気導入口30に装着可能に構成される略円筒状部材であり、先端部178に対して反対側の他端部180は、本体172の他端部158を装着可能な形状に形成される。先端部178の形状としては、呼気導入口30から外れにくい形状であることが好ましい。装着部174の構成材料としては、当該分野で一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、プラスチック等を使用できる。他端部180には本体の他端部158が接着剤等により接着される。上蓋176は、他端部180の先端に接着剤等により接着される。上蓋176としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、アルミニウムからなる膜等を使用できる。
マウスピース170は、呼気分析を行なう場合には伸長状態にして使用し、保管する場合には短縮状態にして使用する。すなわち、保管時には上蓋が装着された短縮状態であり(図11(A)参照)、使用時には、まず上蓋176を取外した後に(図11(B)参照)、先端部156を引っ張る等して伸長状態にして使用する。
このように、マウスピース170は、上蓋176を有する構成であるので、保管時に内部に埃及び水等の呼気分析を妨害するおそれのある物質等が侵入して汚染されてしまうことを防ぐことができる。また、マウスピース170において、使用時に本体172の先端部156を引っ張る手間を省くために、骨組部154として、リング状部材の代わりにばね部材を使用してもよい。この場合においても上蓋176を有する構成であることにより、保管時に短縮状態のまま保管することが可能になる。
また上記実施の形態では、表示部20を呼気導入部28の上方に設けたが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、被験者が呼気導入時に表示部20の表示内容を確認しやすい位置に設けられればよい。
また上記実施の形態では、呼気導入部28としてT字型のパイプ状部材を使用したが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、例えば、Y字型のパイプ状部材等の分岐部分を有する他の形状の部材を使用してもよい。
また上記実施の形態では、呼気の流路を変更する反射手段として反射板38を使用したが、本発明はそのような実施の形態には限定されず、例えば、平板状の部材を使用してもよい。
また上記実施の形態では、切替弁64は、制御部32から入力される切替制御信号に従って切替えられる構成であったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、切替弁64として手動式切替弁を使用し、被験者が、流量センサ66の測定結果に基づいて、例えば表示部20等に表示される自己の呼気導入量の状態を確認しながら切替のタイミングを判断し、手動により呼気導入路44と死腔排出路46とを切替える構成であってもよい。
また上記実施の形態では、第1開口部56及び第2開口部58はそれぞれ1つの貫通孔であったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。図12は、第1仕切部材52の他の一例を示す部分拡大図(円53で囲む部分)である。図12(a)は、第1仕切部材52を呼気センシング装置10の背面側から透視して見たときの図であり、図12(b)は、水平断面図である。図12を参照して、第1仕切部材52は、板状部材52aの構成が異なる以外は上記実施の形態と同一の構成である。板状部材52aにおける選択透過膜60を挟む面とは反対側の面側に位置する層において、第1開口部56に相当する部分は、開口径が1mm〜5mmの細孔210が設けられるメッシュ状に形成される。第2仕切部材54は、第1仕切部材52と同一の構成であり、板状部材54bにおける選択透過膜62を挟む面とは反対側の面側に位置する層において、第2開口部58に相当する部分は、開口径が1mm〜5mmの細孔210が設けられるメッシュ状に形成される。このように、第1開口部56内部及び第2開口部58内部がメッシュ状に形成されることによって、呼気導入時に選択透過膜60,62が第1センサ室72側又は第2センサ74室側に膨れることを防ぐことができる。
また上記実施の形態では、逆止弁75,76,77,78は、自動的に開閉動作が制御される構成であったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、呼気導入室70の内部に呼気導入室70の内圧を測定するための、例えば半導体圧力センサ等の圧力センサが設けられ、逆止弁75,76,77,78は、上述の圧力センサの検知結果に基づいて制御部32から入力される開閉制御信号に従って、その開閉動作が制御される構成であってもよい。
また上記実施の形態では、流量センサ66は、呼気流量の測定のみを行なうセンサであったが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、呼気流量の測定とともに、呼気中の妨害成分を選択的に検出し、この検出結果に基づいて、第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50により検出される値の補正を行なう補正センサとしての機能を有していてもよい。この場合、流量センサ66は、妨害成分を選択的に吸着する物質によって表面修飾されたカーボンナノ構造体88であることが好ましく、更には、妨害成分を選択的に吸着する物質によって表面修飾されたCNTからなるセンサであることが好ましい。これにより、呼気中に含まれる、妨害成分の影響を排除することができるので、より信頼性の高い呼気分析を行なうことができる。
また上記第1の実施の形態では、第1ガスセンサ48及び第2ガスセンサ50は、呼気中の異なるマーカを検出する構成であったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、第1ガスセンサ48において呼気中のマーカを検出し、第2ガスセンサ50において、マーカの検出に影響を与える可能性のある呼気中の妨害成分を検出し、第2ガスセンサ50の検出値に基づいて、第1ガスセンサ48の検出値の補正を行なう構成としてもよい。
上記第2の実施の形態では、大気中の一酸化窒素(NO)を検出する補正用ガスセンサ202の検出値に基づいて、呼気中の一酸化窒素(NO)を選択的に検出する第1ガスセンサ48の検出値の補正を行なったが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。
例えば、補正用ガスセンサ202によって、センサに対する通電開始に伴って少しずつ電圧値が上昇又は減少する現象の結果生じる抵抗変化を検出し、得られた検出値に基づいて第1ガスセンサ48の検出値の補正を行なう構成であってもよい。このように補正することによって、ガスセンサを窒素ガス(N2)及び酸素ガス(O2)等の、ガスセンサと反応しにくいガス雰囲気下に設置した場合においても生じるベースラインのずれを補正することができるので、より一層正確な呼気分析を行うことができる。また、埃及び気温変化等による影響もなくすことができる。
今回開示された実施の形態は単に例示であって、この発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。この発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。