〔放送衛星による伝送システムの概要〕
まず、放送衛星による伝送システムについて説明する。図1は、放送衛星による伝送システムの構成を示す図である。放送衛星に向けて電波を発射する設備として、アップリンク地球局および管制地球局があり、それぞれ主局の他にバックアップ機能を持つ副局が用意されている。すなわち、アップリンク地球局の主局としてアップリンクセンターがあり、そのバックアップとしてアップリンク副局が用意されている。一方、管制地球局については、主局として川口衛星管制センターがあり、副局として君津衛星管制所が用意されている。
アップリンク地球局は、17GHz帯の周波数の衛星放送波を使い、放送衛星へ向けて放送波信号のアップリンクを行う。放送衛星は、アップリンクされた17GHz帯の放送波信号を12GHz帯の周波数の放送波に変換し、地球上の受信者へ向けて放送波の電波を放射する。また、放送衛星は、アップリンク受信信号レベルや温度などの状態をテレメトリ信号として、管制地球局へ向けて送信する。その際使用する周波数は、通常12GHz帯の放送波のBS−1chよりも低い周波数に配置され、衛星固有の周波数が割り当てられる。また、放送衛星は、放送衛星を制御するためのコマンド信号が管制地球局から送信されてくるため、これを受信し、放送衛星本体の姿勢制御や送信出力電力の制御などのコマンドの内容を実行する機能も備えている。
管制地球局は、放送衛星から常時送られてくるテレメトリ信号を受信して解析し、放送衛星の状態を把握し、必要に応じてコマンド信号を衛星へ向けて発射し、衛星の制御を行う。放送衛星のコマンド信号およびテレメトリ信号の主な項目例を、それぞれ表1および表2に示す。
前述のように、アップリンク地球局および管制地球局にはそれぞれ副局が存在する。これは、主局の機器トラブルに備えることが第1の目的である。また、放送衛星へのアップリンク周波数が17GHz帯であり、降雨による電波の減衰(降雨減衰)が大きい周波数帯であることから、降雨減衰が発生して、放送衛星での受信レベルに十分なマージンが取れなくなったときに副局に切り替える運用を行う(これをサイトダイバーシティ運用という)。このような降雨減衰に備えることが第2の目的である。
放送衛星における受信電力レベルは、テレメトリ信号に含まれる「受信装置入力レベル(受信レベル)」から検出することができる(表2−番号3を参照)。また、放送衛星におけるコマンドの受信レベルは、テレメトリ信号に含まれる「コマンドの折り返し」などから検出することができる(表2−番号8を参照)。
次に、管制地球局およびアップリンク地球局の機能の詳細について説明する。なお、本発明とは直接関係しないため、副局についての説明は省略する。
〔管制地球局の機能〕
まず、管制地球局の機能について説明する。図2は、従来の管制地球局の構成を示すブロック図である。従来の管制地球局の系統は、衛星追尾アンテナ110、放送波受信用アンテナ120、監視系130、コマンド信号送信装置200およびテレメトリ信号受信装置300から構成される。
テレメトリ信号受信装置300は、周波数変換部301、復調復号部302およびテレメトリ信号解析部303から構成される。テレメトリ信号受信装置300は、放送衛星により送信された表2の情報を含むテレメトリ信号(12GHz帯の信号)を、衛星追尾アンテナ110を介して受信する。周波数変換部301は、テレメトリ信号を入力すると、伝送損失が小さく復調処理が容易な数十MHz程度のIF(中間周波数)信号に周波数変換する。復調復号部302は、周波数変換部301により周波数変換されたIF信号を入力し、復調および誤り訂正などの処理を行い、デジタルデータストリームを生成する。
テレメトリ信号解析部303は、復調復号部302により生成されたデジタルデータストリームを入力し、このデジタルデータストリームに配置されたデータ(表2の例に示した内容のデータ)を抽出し、この抽出したテレメトリ信号を図示しない送信装置からアップリンク地球局へ送出するとともに、監視系130の監視モニタ132にも送出する。
監視系130は、ダウンリンク監視用受信装置131および監視モニタ132から構成される。ダウンリンク監視用受信装置131は、アップリンク地球局からアップリンクされた映像や音声などを含む放送波を、放送衛星から放送波受信用アンテナ120を介して受信する。監視モニタ132は、テレメトリ信号受信装置300のテレメトリ信号解析部303からテレメトリ信号を入力し、このテレメトリ信号のデータを、人間に理解しやすい形式で表示し、異常を知らせるためのアラーム音を出力する。これにより、監視員は、目視やアラーム音により異常を監視することができる。また、監視モニタ132は、ダウンリンク監視用受信装置131により受信された放送波から、放送中の映像を表示し、音声を出力する。これにより、監視員は、放送中の映像や音声も同時に監視することができる。
コマンド信号送信装置200は、定期的な姿勢制御を行う場合、またはテレメトリ信号の内容などによって必要な場合に、放送衛星へ向けてコマンド信号を発射するものであり、制御盤201、コマンド信号生成部202、符号化変調部203および周波数変換部204から構成される。コマンド信号生成部202は、制御盤201から所望の動作を行うための指示を入力し、その指示に対応する符号に変換し、コマンド信号を生成する。符号化変調部203は、コマンド信号生成部202により生成されたコマンド信号を入力し、誤り訂正などの符号化処理および変調を行う。周波数変換部204は、符号化変調部203により符号化変調されたコマンド信号を入力し、17GHz帯に周波数変換し、衛星追尾アンテナ110から放送衛星へ向けてコマンド信号を発射する。
〔アップリンク地球局の機能〕
次に、アップリンク地球局の機能について説明する。図3は、従来のアップリンク地球局の構成を示すブロック図である。このアップリンク地球局は、現在、NHK放送センター内に設置されている。従来のアップリンク地球局は、BSデジタル放送に限ると、放送に供されている放送チャンネルであるBS−1ch、BS−3ch、BS−13ch、BS−15chそれぞれに対して設置されているアップリンクアンテナ510、このアップリンクアンテナ510に対応するそれぞれのアップリンク設備600、放送波受信用アンテナ520、ダウンリンク監視用受信装置531および監視モニタ532から構成される。また、アップリンク設備600は、TS合成部601、送信装置602、周波数変換部603、電力増幅部604、周波数変換部605およびアップリンク監視用受信装置606から構成される。
BSデジタル放送では、放送衛星に備えた一つの衛星中継器を使って、複数の放送事業者が独立したMPEG−2 TS(トランスポートストリーム)を伝送できる仕組みとなっている。アップリンク設備600のTS合成部601は、一つの衛星中継器を占有する複数の放送事業者から送られてきたMPEG−2 TSを多重化し、所定のフレームを構成する。
図4は、BSデジタル放送の多重化フレーム構成を示す図である。BSデジタル放送の多重フレームにおいては、8つのフレーム#1〜#8により1つのスーパーフレームが構成される。フレーム#1〜#8は、それぞれ48個のスロット#1〜#48により構成される。ここで、「スロット」は、MPEG−2 TSのパケット(188バイト)のうち先頭の同期バイト(1バイト)を除いた部分、およびRS(リードソロモン)符号のパリティ(16バイト)をデータとして格納できるメモリ上の領域である。また、各スロットの手前の先頭バイトには、フレーム同期信号、TMCC(Transmission & Multiplexing Configuration Control:伝送多重構成制御)信号、スーパーフレーム同期信号などが付加される。
TMCC信号には、伝送の制御を行う情報などが書き込まれており、1つのスーパーフレームに多重されたTMCC信号を1まとまりとして1セットの制御内容が書き込まれており、この制御内容によって、時間軸において2つ後のスーパーフレームの伝送制御を行う。
図3に戻って、アップリンク設備600の送信装置602は、図4に示した多重フレーム構成を持つデータから、変調波を生成する。
図5は、従来の送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置602−1は、フレーム生成部621、エネルギー拡散部622、インターリーブ部623、畳み込み符号化部624、マッパ部625、時分割多重/直交変調部626、RS(68,48)符号化部627およびエネルギー拡散部628から構成され、データストリームを送信する場合における、図4に示した1つのスーパーフレームを構成する多重フレームの信号を生成してから変調波信号を生成するまでの一連の処理を行う。
フレーム生成部621は、第n番目のスーパーフレームに対応する第n−2番目(2つ手前)のTMCC信号として、各信号の変調方式および内符号符号化率などを指定し、フレームを生成し、スーパーフレームを生成する。図5に示した例では、スロット#1〜#46にはTC8PSK変調(内符号符号化率r=2/3)が指定され、スロット#47にはQPSK変調(内符号符号化率r=1/2)が指定されている。また、TC8PSK変調とQPSK変調とを比較すると、同じ変調シンボル数を使った場合に伝送できるビット数は、QPSK変調がTC8PSK変調の半分しかない。このため、スロット#48をダミースロットとして、フレームを多重伝送する決まりになっている。このように、フレーム生成部621は、使用する変調方式と内符号符号化率との組み合わせの効率に応じて、ダミースロットを挿入する。これにより、利用する変調方式と内符号符号化率との組み合わせの効率によらず、フレームあたりのスロット数を変える必要が無くなり、多重フレームのクロックレートを常に一定にすることができる。
また、フレーム生成部621は、生成したフレーム#1〜#8におけるスロットのうち、データおよびRS符号のパリティ部分をエネルギー拡散部622に出力し、各スロットの手前の先頭バイトに多重されている同期とTMCC信号をRS符号化部627に出力する。
エネルギー拡散部622は、フレーム生成部621により生成されたフレーム#1〜#8におけるスロットのうちデータおよびRS符号のパリティ部分が入力され、スーパーフレームにおけるこれらのデータなど全体に対して、エネルギー拡散(ビットランダム化)を行う。これは、擬似ランダムな「1」および「0」のパターンをM系列を使って発生させ、これとスロット内のデータとでMOD2加算することにより実現する。これにより、「1」または「0」が連続することがなくなることから、後述する受信装置において、同期再生の安定化を図ることができる。
インターリーブ部623は、エネルギー拡散部622によりエネルギー拡散されたデータなどが入力され、スロット毎にインターリーブを行う。これは、ビットの並び順を擬似ランダムに入れ替えるものであり、各スロットの左から右に書き込まれたデータを、奥行き方向(フレームが並んでいる方向)に読み出すことにより実現する。これにより、伝送中に連続したビット誤りが発生しても、後述する受信装置が、元の順番に並び替えるデインターリーブ処理を行うことで、ランダムなビット誤りに変換するため、誤り訂正符号の効果を高めることができる。
畳み込み符号化部624は、インターリーブ部623によりインターリーブされたデータなどに対し、各スロットに指定された符号化率で畳み込み符号(内符号)による符号化を行い、マッパ部625に出力する。
ここで、マッパとは、「1」「0」からなるデジタルデータ列を、I軸とQ軸からなる直交座標系の信号点座標に変換するテーブルである。図6は、BPSK、QPSK、8PSKのマッパの例を示す。同図(a)(b)(c)は、それぞれ図5のBPSKマッパ、QPSKマッパ、8PSKマッパに対応している。図6(b)QPSKの場合を例にとると、デジタルデータ列「00」は、座標(I,Q)=(1/√2,1/√2)の信号点座標に、また、デジタルデータ列「01」は、座標(I,Q)=(1/√2,−1/√2)の信号点座標に変換されることを示している。
図5に戻って、マッパ部625は、畳み込み符号化部624により畳み込み符号化されたデータなどを、指定された変調方式による信号点座標に変換し、時分割多重/直交変調部626は、時分割多重および直交変調を行い、変調波信号を生成する。
一方、RS符号化部627は、フレーム生成部621により生成されたフレーム#1〜#8におけるスロットの手前の先頭バイトに多重された同期とTMCC信号が入力され、TMCC信号部分についてリードソロモン符号(RS[64,48])で誤り訂正符号パリティを付加する。エネルギー拡散部628は、RS符号化部627により誤り符号パリティが付加されたTMCC信号に対してエネルギー拡散を行い、畳み込み符号化部624は畳み込み符号により符号化率r=1/2で符号化し、マッパ部625はBPSK変調による信号点座標に変換し、時分割多重/直交変調部626は直交変調を行い、変調波信号を生成する。そして、送信装置602−1は、このように生成した変調波信号を伝送する。
図7は、図5に示した送信装置602−1により生成される変調波信号の構成例を示す図である。図7に示すように、変調波信号は、フレーム単位に、各フレームに対して、まずフレーム同期W1(32シンボル)、TMCC信号(またはその誤り訂正パリティ/128シンボル)、スーパーフレーム同期(先頭フレームではW2、それ以外のフレームではW2の反転パターンW3/32シンボル)の計192シンボルがBPSK変調されて伝送される。その後、TMCC信号で指定されたデジタル変調方式により、映像・音声・データ放送などが多重された主信号が伝送される。主信号の伝送に際しては、周期的に同期補強用のバースト信号(ランダムなデジタル信号をBPSK変調したもの)が多重される。このような処理を8フレーム分繰り返して行うことにより、TMCC信号に書き込まれた情報が後述する受信装置に伝送される。受信装置は、TMCC信号の情報を絶えず監視することにより、送信装置602−1において様々な伝送制御が行われたとしても、それに追従して受信方式などを切り替えることができる。
以上の例では、現在BSデジタル放送で採用されているISDB−S規格に基づき、送信装置602−1の構成について図5を用いて説明した。しかしながら、衛星放送の規格は、他に、近年規格化されたDVB−S2などもある。そこで、これらの規格も含め、統一した表現が可能なように、一般化した送信装置の構成について説明する。
図8は、従来の一般化した送信装置の構成を示すブロック図である。この一般化した送信装置602−2は、伝送制御部631、符号化部632、スイッチ633、スイッチ634、マッパ部635、スイッチ636および直交変調部637から構成される。図5では、RS符号化、エネルギー拡散、インターリーブおよび畳み込み符号化を個別に示したが、図8では、これら全てが符号化部632に包含されるものとする。また、ここで扱う多重化信号は、スロット#1〜スロット#N(Nは正の整数)で1フレームを構成し、フレーム#1〜フレーム#M(Mは正の整数)で1スーパーフレームを構成し、さらに、伝送方式などを規定する伝送制御信号、および同期補強用のバーストを周期的に多重するための元となる同期補強信号からなる。
伝送制御部631は、伝送制御信号(ISDB−S規格ではTMCC信号)の内容に基づいてスイッチ633(SW#1)を切り替え、特定の信号を抽出する。また、抽出する信号に対して、指定された誤り訂正符号、インターリーブ、エネルギー拡散などの符号化の組み合わせを、符号化部632に指定する。符号化部632は、伝送制御部631により指定された符号化の組み合わせに従い、符号化を行なう。また、伝送制御部631は、符号化部632により符号化された信号に対し、伝送制御信号により指定された変調方式をマッパ部635のマッパ#1〜マッパ#Sから選択するために、スイッチ634(SW#2)を切り替える。また、伝送制御部631は、スイッチ634(SW#2)を切り替えて選択されたマッパを選択するように、スイッチ636(SW#3)を制御する。
マッパ部635によりマッピングされた信号点座標は、直交変調部637に入力される。直交変調部637は、この信号点座標を直交変調し、TMCC信号により指定された変調方式に対応した変調波信号を生成する。
なお、DVB−S2では、図5には記載されていない変調方式16APSKおよび32APSKにも対応しているため、図8の送信装置602−2のマッパ部635には、これらの変調方式のマッパも含まれる。BPSK、QPSKおよび8PSKのマッパの例は、図6に示したとおりである。また、16APSKおよび32APSKのマッパの例を図9に示す。
図8に示した送信装置602−2において、N=48,M=8,伝送制御信号=TMCC信号とすることにより、ISDB−S方式を表現することができる。また、N=1,M=1,伝送制御信号=PLヘッダー(物理レイヤの諸元情報。DVB−S2方式ではこの信号はフレームの先頭に付加される。)とすることにより、DVB−S2方式を表現することができる。
図3に戻って、アップリンク設備600の送信装置602により生成された変調波信号は、周波数変換部603に入力される。周波数変換部603は、入力した変調波信号を、百数十MHzのIF周波数から17GHz帯のアップリンク周波数に周波数変換し、電力増幅部604で電力増幅する。このように周波数変換され増幅された信号は、アップリンクアンテナ510を介して放送衛星へアップリンクされる。
また、電力増幅部604により電力増幅された信号の一部は分岐され、周波数変換部605に入力される。周波数変換部605は、入力した信号を、アップリンク監視用受信装置606が受信処理するためのIF周波数に周波数変換し、アップリンク監視用受信装置606に出力する。アップリンク監視用受信装置606は、映像および音声などの信号を監視モニタ532に出力する。
ダウンリンク監視用受信装置531は、放送衛星から放送波受信用アンテナ520を介して放送波を受信する。監視モニタ532は、ダウンリンク監視用受信装置531およびアップリンク監視用受信装置606からの映像および音声などの信号を入力し、これらを表示および出力する。また、管制地球局から送られてくるテレメトリ信号も入力し、表示および出力する。これにより、監視員は、映像や音声などを監視することができる。
〔ダウンリンク監視用受信装置の機能〕
次に、図2に示した管制地球局のダウンリンク監視用受信装置131および図3に示したアップリンク地球局のダウンリンク監視用受信装置531について説明する。
図10は、図5に示した送信装置602−1に対応した従来のダウンリンク監視用受信装置の構成を示すブロック図である。このダウンリンク監視用受信装置131−1,531−1と民生用受信装置とを比較すると、両装置の構成はほぼ同じであるが、ダウンリンク監視用受信装置131−1,531−1は、民生用受信装置よりも信頼性の高い部材を使用している点で異なる。
図10において、ダウンリンク監視用受信装置131−1,531−1は、AGC(Automatic Gain Control:自動利得制御)増幅器141、チャンネル選択部142、直交検波部143、レベル検出部144、伝送制御信号復号部145、デマッピングまたは尤度検出部146、内符号復号部147、デインターリーブ部148、エネルギー逆拡散部149、RS復号部150、位相誤差テーブル161およびデマッピングまたは尤度情報テーブル162から構成される。
図2および図3に示した放送波受信用アンテナ120,520は、周波数コンバータにより、受信した12GHz帯の放送波を1GHz帯のBS−IF信号に変換する。このように変換されたBS−IF信号は、ダウンリンク監視用受信装置131−1,531−1に入力される。
AGC増幅器141は、このBS−IF信号を増幅し、チャンネル選択部142は、受信しようとするチャンネルの中心周波数が所定の第2IF周波数となるように周波数変換し、直交検波部143は同期ベースバンド信号に変換する。レベル検出部144は、この同期ベースバンド信号からレベル検出を行い、AGC増幅器141に対し、その利得が適切な値になるように制御する。
伝送制御信号復号部145は、まず、同期ベースバンド信号からフレーム同期信号を検出し、このフレーム同期信号を時間基準として、周期的に多重されているBPSK変調波である同期補強信号の位置も検出する。次に、直交検波部143は、伝送制御信号復号部145により検出されたBPSK変調波である同期補強信号の位置を用いて、同期検波のために必要な無変調搬送波の再生を行う。
この再生処理には、受信信号点から位相誤差情報を抽出するために、図23に示す位相誤差テーブルが用いられる。この位相誤差テーブル161は、直交検波されて得られた信号点の位置が、理想的に受信された場合の信号点に比べ位相が進んでいれば負の値を、遅れていれば正の値を出力するテーブルである。例えば、図23(b)に示すQPSKの例では、I信号,Q信号がI軸から反時計回りに22.5度の位置の点として受信されたとすれば、位相誤差テーブルは正の値“+”を出力する。このように、直交検波部143は、位相基準バースト信号部分を使い、BPSK用位相誤差テーブル161を参照しながら、無変調搬送波の再生を行う。この時点では、再生された無変調搬送波は、ジッタが多く不安定である。このため、BPSK変調されたTMCC信号の同期検波は安定に受信できるが、それ以外の例えば8PSK変調された主信号部分の受信では、所要C/Nが高くなり、安定な受信は困難である。そこで、この時点では、伝送制御信号復号部145は、TMCC信号から変調方式・誤り訂正についての情報の検出を行うが、主信号部分の受信は行なわない。
直交検波部143は、伝送制御信号復号部145により検出された変調方式・誤り訂正の情報に基づいて、複数の変調方式がどのように多重されているかを検出する。すなわち、この情報から、位相基準バースト信号だけでなく、変調波全てについて、多重されている各変調方式(BPSK、QPSKおよび8PSK)に対応した図23の位相誤差テーブル161を参照しながら搬送波再生を行う。これにより、安定な搬送波の再生が可能となり、主信号部分に時分割多重された全ての変調方式に対して、安定な受信が可能となる。
デマッピングまたは尤度検出部146は、伝送制御信号復号部145により検出された各変調方式に対応したデマッピングテーブル162または尤度情報テーブルを参照しながら、直交検波された受信信号点から、デマッピングと呼ばれる情報ビット列を抽出する処理、または、情報ビット列の尤度情報列を抽出する処理を行う。また、内符号復号部147は、伝送制御信号復号部145により検出された各符号化方式に対応した内符号の復号処理を行う。なお、デマッピングまたは尤度検出部146は、内符号復号部147が硬判定を行う場合にはデマッピングテーブル162を使用し、軟判定を行う場合には尤度情報テーブルを使用する。
図24は、BPSK、QPSKおよび8PSKのデマッピングテーブルの構成を示す。このデマッピングテーブル162を用いて、直交検波して得られたI信号,Q信号の値に対する符号の判定が行なわれる。例えば、図24(b)に示すQPSKの例では、第1象限のI信号,Q信号が受信された場合、デマッピング部146(デマッパ)は、符号“00”が受信されたものと判定し、当該符号を出力する。一方、尤度情報テーブルについては、複雑なものになるためここでは図示を省略する。尤度検出部146は、受信信号点に対し、1シンボルで伝送されるビット(32APSKの場合は5ビット)それぞれについて、そのビットが「1」である確率と「0」である確率の比の対数を出力する。
図10に戻って、デインターリーブ部148は、内符号復号部147により内符号の復号が行われた後、図5に示した送信装置602−1のインターリーブ部623においてインターリーブで入れ替えられたバイト並びを元に戻す。すなわち、伝送制御信号復号部145により検出された各符号化方式に対応したバイトデインターリーブ処理を行う。また、エネルギー逆拡散部149は、送信装置602−1のエネルギー拡散部622において擬似ランダム符号とMOD2で加算された処理を元に戻すため、再度同じ擬似ランダム符号とMOD2で加算する。すなわち、伝送制御信号復号部145により検出された各符号化方式に対応したエネルギー逆拡散処理を行う。最後に、RS復号部150は、伝送制御信号復号部145により検出された各符号化方式に対応したリードソロモン符号の復号を行う。
次に、一般化したダウンリンク監視用受信装置の構成について説明する。図11は、図8に示した一般化した送信装置に対応したダウンリンク監視用受信装置の構成を示すブロック図である。この一般化したダウンリンク監視用受信装置131−2,531−2は、AGC増幅器141、チャンネル選択部142、直交検波部143、レベル検出部144、伝送制御信号復号部145、デマッピングまたは尤度検出部146、符号化復号部165、位相誤差テーブル163およびデマッピングまたは尤度情報テーブル164から構成される。この一般化したダウンリンク監視用受信装置131−2,531−2と図10に示したダウンリンク監視用受信装置131−1,531−1とを比較すると、一般化したダウンリンク監視用受信装置131−2,531−2には、16APSK、32APSKおよびその他の変調方式に対応した位相誤差テーブル163およびデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル164が追加されている点で相違する。16APSKおよび32APSKの位相誤差テーブルの構成を図25に、デマッピングテーブルを図26に示す。なお、尤度情報テーブルについてはここでは図示を省略する。また、図10では、内符号復号、デインターリーブ、エネルギー逆拡散およびRS復号を個別に示したが、図11では、これら全てが符号化復号部165に包含されるものとする。
AGC増幅器141は、入力したIF信号を増幅し、チャンネル選択部142は、受信しようとするチャンネルの中心周波数が所定の第2IF周波数となるように周波数変換し、直交検波部143は同期ベースバンド信号に変換する。レベル検出部144は、この同期ベースバンド信号からレベル検出を行い、AGC増幅器141に対し、その利得が適切な値になるように制御する。
伝送制御信号復号部145は、まず、同期ベースバンド信号からフレーム同期信号を検出し、このフレーム同期信号を時間基準として、周期的に多重されている同期補強信号の位置も検出する。次に、直交検波部143は、伝送制御信号復号部145により検出された同期補強信号の位置を用いて、同期補強信号に対応した位相誤差テーブル163を参照しながら、同期検波のために必要な無変調搬送波の再生を行う。
この時点では、再生された無変調搬送波は、ジッタが多く不安定である。このため、伝送制御信号は安定に受信できるが、それ以外の例えば32APSK変調された主信号部分の受信では、所要C/Nが高くなり、安定な受信は困難である。そこで、この時点では、伝送制御信号復号部145は、伝送制御信号から変調方式・誤り訂正についての情報の検出を行うが、主信号部分の受信は行なわない。
直交検波部143は、伝送制御信号復号部145により検出された変調方式・誤り訂正の情報に基づいて、複数の変調方式がどのように多重されているかを検出する。すなわち、この情報から、同期補強信号だけでなく、変調波全てについて、多重されている各変調方式に対応した位相誤差テーブル163を参照しながら搬送波再生を行う。これにより、安定な搬送波の再生が可能となり、主信号部分に時分割多重された全ての変調方式に対して、安定な受信が可能となる。
デマッピングまたは尤度検出部146は、伝送制御信号復号部145により検出された各変調方式に対応したデマッピングまたは尤度情報テーブル164を参照しながら、直交検波された受信信号点から、デマッピングと呼ばれる情報ビット列を抽出する処理、または、情報ビット列の尤度情報列を抽出する処理を行う。また、符号化復号部165は、伝送制御信号復号部145により検出された各符号化方式に対応した内符号復号、デインターリーブ、エネルギー逆拡散および外符号復号などの復号処理を行う。
〔放送衛星の中継器の機能〕
次に、放送衛星の中継器(衛星中継器)の機能について説明する。図12は、放送衛星の中継器の構成を示すブロック図である。この中継器800は、送受信アンテナ801、ダイプレクサ802、帯域通過フィルタBPF803、周波数変換部804、分波器805、IMUXフィルタ806、減衰器ATT807、励振用増幅器DLA808、進行波管増幅器TWTA809、OMUXフィルタ810、コマンド受信部811、コマンド復号部812、レベル設定部813、入力レベル測定部814、出力レベル測定部815、テレメトリ符号部816、テレメトリ送信部817、合成器818、ハーモニックフィルタHF819および受信機入力レベル測定部820から構成される。
図3に示したアップリンク地球局のアップリンクアンテナ510から、17GHz帯の周波数を使ってアップリンクされた放送波信号は、図12に示す放送衛星における中継器800の送受信アンテナ801で受信される。
ダイプレクサ802は、送受信アンテナ801で受信された放送波信号と送信信号との間の混合を防ぐ。帯域通過フィルタBPF803は、ダイプレクサ802を通過した信号に対しフィルタ処理を行い、BS放送チャンネル以外の不要周波数成分を抑圧する。周波数変換部804は、帯域通過フィルタBPF803を通過した信号に対し、17GHz帯から12GHz帯に周波数変換する。
分波器805は、周波数変換部804により周波数変換された放送波信号を、当該放送衛星で中継するBSチャンネル数分の系統に分波する。IMUXフィルタ806は、各BSチャンネル周波数に対応した帯域通過フィルタであり、分波された放送波信号から1チャンネル分の帯域成分のみをそれぞれ抽出する。減衰器ATT807は、抽出された1チャンネル分の放送波信号を所定のレベルに合わせ、励振用増幅器DLA808は、所定のレベルの放送波信号を線形増幅し、進行波管増幅器TWTA809は、さらに電力増幅する。
進行波管増幅器TWTA809においては、入力レベルと出力レベルとの間の関係が比例関係となるように電力増幅処理することが望ましい。しかし、入出力特性は、実際には入力レベルが大きくなると利得が低下する非線形性を示す。また、このとき同時に入力信号に対する出力信号の位相も回転する。したがって、入力レベルを徐々に上げると、あるレベルまでは出力レベルも上がるが、ある入力レベルを超えると、出力レベルは逆に低下する現象となる。このような出力レベルの低下が起こる直前の動作点を、一般に、出力飽和点という。また、この出力飽和点から入力レベルをX[dB]下げて運用する場合を「入力バックオフX[dB]」といい、同様に、入力レベルを絞って、出力レベルをY[dB]下げた状態で運用する場合を「出力バックオフY[dB]」という。
現在のBSデジタル放送では、3種類のデジタル変調方式、すなわち、BPSK、QPSKおよび8PSKが時分割多重されて伝送される。これらの変調方式については、進行波管増幅器TWTA809の飽和点で最も効率の良い伝送が可能となるため、進行波管増幅器TWTA809の入力信号が、入力バックオフが0dBとなるようなレベルで入力されるように、減衰器ATT807の値が自動的に調整される。
放送衛星では、このような動作は、ALC(自動レベル制御)モードを選択して運用することにより実現されている。また、ALCモードの他に、固定利得モードも選択可能となっている。固定利得モードの場合は、入力レベルにかかわらず減衰器ATT807の値を固定して運用する。
いずれのモードで運用するかは、表1に示したコマンド信号のうち、番号−11「固定利得モード/ALCモード切り替え」により選択することができる。また、固定利得モード時の利得およびALCモード時の励振用増幅器DLA808出力レベルはそれぞれ、表1の番号−12「固定利得モードの利得」および番号−13「ALCモードのTWTA入力レベル(または入力バックオフ)」により設定することができる。
これらの制御を行うため、分波器805は、放送波信号をコマンド受信部811にも分波する。コマンド受信部811は、管制地球局から送られてくるコマンド信号を受信し、コマンド復号部812は、コマンド受信部811により受信されたコマンド信号の内容を解析し、解析結果をレベル設定部813に出力する。
例えば、コマンド信号の「固定利得モード/ALCモード切り替え」により固定利得モードの選択が指定された場合、同時に指定された「固定利得モードの利得」となるように、レベル設定部813は、減衰器ATT807の値を調整し、固定する。一方、ALCモードの選択が指定された場合、入力レベル測定部814により測定される進行波管増幅器TWTA809の入力電力のレベルが、同時に指定された「ALCモードのTWTA入力レベル(または入力バックオフ)」となるように、レベル設定部813は、減衰器ATT807の値を常時調整する。
また、受信機入力レベル測定部820は、各チャンネルの受信機入力電力を測定し、レベル設定部813およびテレメトリ符号部816に出力する。入力レベル測定部814は、進行波管増幅器TWTA809の入力電力を測定し、レベル設定部813およびテレメトリ符号部816に出力する。出力レベル測定部815は、進行波管増幅器TWTA809の出力電力を測定し、テレメトリ符号部816に出力する。テレメトリ符号部816は、入力した受信機入力電力、TWTAの入力電力およびTWTAの出力電力の値を所定の規則で符号に置き換える。テレメトリ送信部817は、テレメトリ符号部816により符号処理された値を、送信信号であるテレメトリ信号に変換する。また、ALCモードのレベル設定が「ALCモードのTWTA入力レベル」で指定される場合には、レベル設定部813は、入力レベル測定部814から入力した進行波管増幅器TWTA809の入力電力の値と、コマンド復号部812から入力した「ALCモードのTWTA入力レベル」の値とを比較し、これらが一致するように、減衰器ATT807の値を調整する。これに対し、ALCモードのレベル設定が「ALCモードのTWTA入力バックオフ」で指定される場合には、レベル設定部813は、受信機入力レベル測定部820から入力した受信機入力電力の値と、コマンド復号部812から入力した「ALCモードのTWTA入力バックオフ」の値とを用いて減衰器ATT807の値を算出し、調整する。
OMUXフィルタ810は、各BSチャンネル周波数に対応した帯域通過フィルタであり、進行波管増幅器TWTA809により増幅された放送波信号に対し、1チャンネル分の帯域成分のみを抽出し、不要周波数成分を抑圧する。合成器818は、OMUXフィルタ810から全チャンネル分の放送波信号を入力し、テレメトリ送信部817からテレメトリ信号を入力し、入力したこれらの信号を合成する。このようにして合成された信号は、ハーモニックフィルタHF819およびダイプレクサ802を経由して、送受信アンテナ801から一般の受信者に向けて送信される。
なお、このような伝送システムに用いる送信装置および受信装置の例として、特許文献1,2に記載のものが知られている。
特開2003−179657号公報
特開2006−254273号公報
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔アップリンク地球局の送信装置〕
まず、アップリンク地球局の送信装置について説明する。送信装置の構成は、図8に示した送信装置602−2とほぼ同一である。図8に示した従来の送信装置602−2とこの送信装置とは、両装置ともに、伝送制御部631、符号化部632、スイッチ633,634,636および直交変調部637が同一の構成であるが、この送信装置は、従来のマッパ部635とは異なる構成内容のマッパ部を備えている点で相違する。
図14は、送信装置のマッパ部について、マッパの構成を示す図である。このマッパの構成と図6および図9に示した従来のマッパの構成とを比較すると、16APSK用マッパにおいて、所望の最適な出力バックオフ(1dBと想定)に対応する入力バックオフ(図13において、入力バックオフ1dBに対応する出力バックオフを参照すると5dBとなる)だけ振幅値を抑圧(振幅の自乗を1/√10倍することと等価)した点、および、32APSK用マッパにおいて、所望の最適な出力バックオフ(3dBと想定)に対応する入力バックオフ(図13において、入力バックオフ3dBに対応する出力バックオフを参照すると9dBとなる)だけ振幅値を抑圧(振幅の自乗を1/8倍することと等価)した点で相違する。この送信装置についての説明は、図8を用いてすでに説明済みなので、ここでは説明を省略する。
これにより、例えば、バックオフ0dBで運用されるBPSK、QPSK、8PSKまたはそれらの組み合わせによる信号、および16APSKや32APSKによる信号が時分割多重伝送される場合においても、BPSK、QPSK、8PSKまたはそれらの組み合わせの出力バックオフが0dBに保持される限りは、各変調方式について最適な出力バックオフが保持できるようになる。
〔管制地球局のダウンリンク監視用受信装置〕
次に、管制地球局のダウンリンク監視用受信装置について説明する。図15は、ダウンリンク監視用受信装置の構成を示す図である。このダウンリンク監視用受信装置10は、AGC増幅器11、チャンネル選択部142、直交検波部143、レベル検出部144、伝送制御信号復号部145、変調方式ゲート信号生成部13、レベル測定部14、デマッピングまたは尤度検出部146、符号化復号部165、位相誤差テーブル15およびデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル16から構成される。図11に示した従来のダウンリンク監視用受信装置131−2とこのダウンリンク監視用受信装置10とを比較すると、ダウンリンク監視用受信装置10は、16APSK用および32APSK用の位相誤差テーブル15およびデマッピングまたは尤度情報テーブル16による信号点レベルを、所定のバックオフ量だけ抑圧した点で相違する。また、ダウンリンク監視用受信装置10は、従来のダウンリンク監視用受信装置131−2のAGC増幅器141とは異なる機能を有するAGC増幅器11を備えている点、新たな変調方式ゲート信号生成部13およびレベル測定部14を備えている点で相違する。以下、図15において、図11と共通する部分には図11と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
AGC増幅器11は、後述する管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251からAGCレベルホールド指示信号を入力した時点で、AGC利得を固定し、その固定したAGC利得により入力したIF信号を増幅する。変調方式ゲート信号生成部13は、伝送制御信号復号部145により復号されたフレーム同期信号および伝送制御情報を入力し、後述する管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251から変調方式指示信号を入力し、これらの信号および情報に基づいて、指定された変調方式期間だけ有効となるゲート信号を発生する。レベル測定部14は、変調方式ゲート信号生成部13により生成されたゲート信号を入力し、このゲート信号期間について直交検波部143の直交検波出力の平均電力を測定し、測定結果を後述する管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251へ出力する。
〔管制地球局〕
次に、管制地球局について説明する。図18は、管制地球局の構成を示すブロック図である。この管制地球局は、衛星追尾アンテナ110、放送波受信用アンテナ120、監視系180、コマンド信号送信装置260およびテレメトリ信号受信装置300から構成される。図2に示した従来の管制地球局と図18の管制地球局とを比較すると、両局ともに、同一構成の衛星追尾アンテナ110、放送波受信用アンテナ120およびテレメトリ信号受信装置300を備えている点で同一であるが、図18の管制地球局は、図2に示した監視系130およびコマンド信号送信装置200とは異なる構成の監視系180およびコマンド信号送信装置260を備えている点で相違する。具体的には、図18の管制地球局は、コマンド信号送信装置260において新たな伝送制御信号解析制御部251およびコマンド信号生成部252、監視系180において新たなダウンリンク監視用受信装置10を備えている。
(変調方式の多重比率が変更になった場合1)
以下、最適なバックオフ量の異なる変調方式が時分割多重伝送されているときに、それらの変調方式の多重比率(割合)の変更を、各変調方式の動作点を最適に保ったまま行う方法について、まず各変調方式の最適動作点におけるTWTA入力レベルまたはその相対値が既知である場合について説明する。
多重割合が変更されるとき、放送波と同時に伝送される伝送制御信号には、変更の一定時間前、たとえばBSデジタル放送の場合2スーパーフレーム(約11ミリ秒×2)前に、変更後の設定値がセットされる。図18において、監視系180のダウンリンク監視用受信装置10における図15の伝送制御信号復号部145は、コマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251に伝送制御信号の内容(伝送制御情報)を送出する。伝送制御信号解析制御部251は、伝送制御信号復号部145から伝送制御情報を入力し、伝送制御情報が変更になり、バックオフ運用される変調方式の多重比率などが変更になると判断した場合、または、放送事業者などの外部より与えられる変調方式予告信号により、バックオフ運用される変調方式の多重比率などが変更になると判断した場合、衛星中継器のTWTAの動作点を変更する。なお、ここでいう動作点とは、見かけ上の動作点設定値であって、この動作点の変更により、飽和増幅させるBPSK、QPSKや8PSKなどの変調方式の動作点が、バックオフ運用される変調方式の多重比率などが変更になる前後で変わらないように動作点設定をおこなう。
変更前後のバックオフ運用される変調方式の多重比率や各変調方式のバックオフ量については既知であるものとし、これらについては、伝送制御信号により伝送しても良いし、放送事業者などの外部より与えられる変調方式予告信号の一つとして、伝送制御信号解析制御部251に与えても良い。
いま、多重割合変更前において、時分割多重信号のうちTWTAの入力バックオフ0dB(飽和増幅、1Wとする)で伝送される比率が50%、バックオフ9dB(0.125Wに対応)で伝送される比率が50%とし、多重割合変更後において、バックオフ0dBで伝送される比率が80%、バックオフ3dB(0.5Wに対応)で伝送される比率が20%とする。この時、多重割合変更前においては、平均電力=0.5×1W+0.5×0.125W=0.5625Wとなる。また、多重割合変更後においては、正しく動作点が設定された場合、平均電力=0.8×1W+0.2×0.5W=0.9Wとなる。
この場合、多重割合変更前後の電力の比は0.90/0.5625=1.6倍=+2.0dBである。従って、多重割合変更が行われた後に、伝送制御信号解析制御部251は、表1−番号13「ALCモードのTWTA入力レベル(または入力バックオフ)」のコマンドを発射させるための指示をコマンド信号生成部252に出力し、ALCモードのTWTA入力レベル設定値を2dB大きな値に設定し直すか、入力バックオフを2dB小さな値に設定し直す。
多重割合変更が行われた後に、ALCモードのTWTA入力レベル(または入力バックオフ)設定変更を行う理由は、設定変更を先に行ってしまうと、多重割合変更が行われるまでの間、ALCの働きで、TWTAへの入力が過入力となってしまい、大きな伝送特性劣化を招くためである。一方、設定変更を後に行えば、多重割合変更が行われた後、設定変更までの間、入力レベルが2dB絞られることになるが、伝送特性劣化は小さくなるので、実質、2dB以下の損失で済むことになり、設定変更前に行う場合に比べインパクトは小さいと考えられる。
逆に、多重割合変更前後の電力の比が、1以下(dBでマイナス値)の場合、同様の理屈で、多重割合変更が行われる前に、ALCモードのTWTA入力レベル(または入力バックオフ)設定変更を行う。
以上の処理により、多重割合変更前後において各変調方式について、最適動作点となるようにTWTAの動作点設定が可能となる。なお、以上の例においては、TWTA入力おける各変調方式の絶対電力が分かっている場合について説明したが、相対値であっても同様に計算可能である。
以上の方法の問題点として想定されるのは、各変調方式の最適バックオフは、通常出力バックオフOBOで規定されることが多く、その場合、TWTA入出力特性から入力バックオフに換算して上記計算を行うことになるが、TWTA入出力特性は、温度変化や経年変化の影響を受けるため、これらが原因で、各変調方式について最適動作点からずれてくる可能性がある点である。これらの問題が無視できる場合には、非常に簡易な衛星運用が可能となる。
(変調方式の多重比率が変更になった場合2)
次に、最適なバックオフ量の異なる変調方式が時分割多重伝送されているときに、それらの変調方式の多重比率(割合)の変更を、各変調方式の動作点を最適に保ったまま行う方法について、各変調方式の最適動作点におけるTWTA入力レベルまたはその相対値が未知である場合について説明する。
多重割合が変更されるとき、放送波と同時に伝送される伝送制御信号には、変更の一定時間前、たとえばBSデジタル放送の場合2スーパーフレーム(約11ミリ秒×2)前に、変更後の設定値がセットされる。図18において、監視系180のダウンリンク監視用受信装置10における図15の伝送制御信号復号部145は、コマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251に伝送制御信号の内容(伝送制御情報)を送出する。伝送制御信号解析制御部251は、伝送制御信号復号部145から伝送制御情報を入力し、伝送制御情報が変更になり、バックオフ運用される変調方式の多重比率などが変更になると判断した場合、または、放送事業者などの外部より与えられる変調方式予告信号により、バックオフ運用される変調方式の多重比率などが変更になると判断した場合、ダウンリンク監視用受信装置10における図15のAGC増幅器11にAGCレベルホールド指示信号を送出する。AGC増幅器11は、伝送制御信号解析制御部251からAGCレベルホールド指示信号を入力すると、AGCの利得をその時点の値に固定する。
また、伝送制御信号解析制御部251は、テレメトリ信号解析部303より、図12の衛星中継器800の受信機入力レベル測定部820の測定値P0を取得し(表2−番号3を参照)、この測定値P0と衛星中継器のALCモードにおけるTWTA入力バックオフの設定値から、衛星中継器の利得を算出する。さらに、この利得を固定利得モードの利得にセットし、放送衛星の中継器800における進行波管増幅器TWTA809の動作モードを通常のALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させるための指示をコマンド信号生成部252に出力する。これにより、図12に示した放送衛星の中継器800における減衰器ATT807の値が、レベル設定部813により固定され、固定利得モードに移行する。これらは、以下のレベル制御プロセスを実行している間、レベル制御機能が働き正確な測定ができなくなるのを防止するための処理である。
伝送制御信号が変更され、更にその変更が実際に伝送方式に反映された後、伝送制御信号解析制御部251は、テレメトリ信号解析部303より、図12の衛星中継器800の受信機入力レベル測定部820の測定値P1を取得する(表2−番号3を参照)。測定値の比率P1/P0がバックオフの異なる変調方式の多重比率の変化によるレベル変動になるので、次に、ALCモードのTWTA入力レベルの現在の設定値PiをP1/P0×Piに、またはALCモードのTWTA入力バックオフの現在の設定値OBO1をP1/P0×OBO1に設定するコマンドを発射させるための指示をコマンド信号生成部252に出力する。
続いて、伝送制御信号解析制御部251は、固定利得モードからALCモードに切り替えるコマンドを発射させるための指示をコマンド信号生成部252に出力する。これにより、図12に示した放送衛星の中継器800は、ALCモードに移行する。以上の処理により、バックオフの異なる変調方式の多重比率が変化する伝送制御を行った場合にも、伝送制御が行われる前から伝送されていた変調方式に対する動作点を変えずに、運用を継続することができる。
(変調方式の多重比率が変更になった場合3)
前述した処理では、ALCモードのTWTA入力レベルまたはALCモードのTWTA入力バックオフに測定値から計算した比率P1/P0を乗算して、新たな設定値とすることにした。しかしながら、測定値の比率P1/P0に誤差がある場合には、その影響が累積してしまい、動作点が想定した値から徐々にずれていくことが考えられる。このような動作点のずれは、測定値P0,P1の測定精度が原因となることに加え、P0測定からP1測定時までの間に、姿勢変動や降雨減衰量の変動などの、変調方式の多重比率の変化によるものでないレベル変動が原因となる。そこで、所定の割合(例えば、数回に1回の割合)で、以下の手順により、ALCモードのTWTA入力レベルまたはALCモードのTWTA入力バックオフの設定値を更新する必要がある。
伝送制御信号解析制御部251は、テレメトリ信号解析部303より、図12の衛星中継器800の受信機入力レベル測定部820の測定値P0を取得し、この測定値P0と衛星中継器のALCモードにおけるTWTA入力バックオフの設定値から、衛星中継器の利得を算出する。さらに、この利得を固定利得モードの利得にセットし、放送衛星の中継器800における進行波管増幅器TWTA809の動作モードを通常のALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させるための指示をコマンド信号生成部252に出力する。これにより、図12に示した放送衛星の中継器800における減衰器ATT807の値が、レベル設定部813により固定され、固定利得モードに移行する。
次に、伝送制御信号解析制御部251は、ダウンリンク監視用受信装置10の変調方式ゲート信号生成部13に対し、変調方式指示信号を送出し、レベル測定部14が測定すべき変調方式を指定する。例えば、BPSK(出力バックオフ0dB)、QPSK(出力バックオフ0dB)、8PSK(出力バックオフ0dB)および32APSK(出力バックオフ3dB)により時分割多重された信号について、変調方式の組み合わせはそのままにして多重割合が変更される場合を想定すると、伝送制御信号解析制御部251は、変調方式ゲート信号生成部13に対し、バックオフ0dBで運用されているBPSK、QPSKおよび8PSKのうちの一つ以上の変調方式を指定する変調方式指示信号を送出する。この場合、伝送制御信号解析制御部251は、ダウンリンク監視用受信装置20から入力する伝送制御情報により、変調方式を特定し、変調方式指示信号を出力する。
図15において、ダウンリンク監視用受信装置10の変調方式ゲート信号生成部13は、伝送制御信号復号部145から、時分割多重されている変調方式の配列情報、および時分割多重変調波が構成されるフレームの先頭を示すフレーム同期信号を入力し、また、伝送制御信号解析制御部251から変調方式指示信号を入力する。そして、これらの配列情報およびフレーム同期信号に基づいて、変調方式指示信号が示す変調方式で伝送された変調信号の検波結果が直交検波部143から出力されている期間のみ有効となるゲート信号を生成し、レベル測定部14に出力する。レベル測定部14は、変調方式ゲート信号生成部13からゲート信号を入力し、このゲート信号が有効な期間のみ(ゲート信号を入力している期間のみ)直交検波部143の出力の平均電力を測定し、その測定結果を図18の伝送制御信号解析制御部251に出力する。
図18に戻って、伝送制御信号解析制御部251は、レベル測定部14から測定結果である測定レベルを入力し、その測定レベルを監視しながら、進行波管増幅器TWTA809の入力レベルを上下させて変更を繰り返し、測定レベルを最大にするためのTWTA入力レベルを探索するため、固定利得モードの利得値を設定するためのコマンド「固定利得モードの利得」(表1−番号12を参照)を発射するための指示を設定値を変えて複数回、コマンド信号生成部252に出力する。固定利得モードの利得の設定値を上下に変更することで、等価的にTWTA入力レベルまたはTWTA入力バックオフを変更することになるため、測定レベルが最大になるような固定利得モードの利得設定値が、指定された変調方式のバックオフ0dBの動作点となる。
次に、管制地球局のテレメトリ信号受信装置300は、このときの受信機入力レベルまたはTWTA入力レベルをテレメトリ信号の「受信装置入力レベル(受信レベル)」(表2−番号3を参照)または「大電力TWTA駆動入力レベル」(表2−番号2を参照)から取得し、その受信機入力値またはTWTA入力値を伝送制御信号解析制御部251に出力する。伝送制御信号解析制御部251は、この入力した受信機入力値と固定利得モードの利得設定値から同じ動作点となるALCモードのTWTA入力バックオフを算出し、ALCモードのTWTA入力値に設定するコマンド「ALCモードのTWTA入力バックオフ」を発射するための指示を、コマンド信号生成部252に出力するか、または、入力したTWTA入力値をALCモードのTWTA入力値に設定するコマンド「ALCモードのTWTA入力レベル」を発射するための指示を、コマンド信号生成部252に出力する。
放送衛星の中継器800にALCモードのTWTA入力バックオフまたはALCモードのTWTA入力値をセットした後、さらに、伝送制御信号解析制御部251は、中継器800を固定利得モードからALCモードに戻すコマンド「固定モード/ALCモード切り替え」を発射するための指示を、コマンド信号生成部252に出力する。これにより、放送衛星の中継器800における進行波管増幅器TWTA809はALCモードに移行する。最後に、伝送制御信号解析制御部251は、AGCレベルホールド指示信号の出力を停止し、ダウンリンク監視用受信装置10のAGC増幅器11が固定利得動作ではなく通常のAGC動作を行うようにする。
これにより、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809において、指定された変調方式に対して出力バックオフ0dBとなるようにレベル設定が完了する。また、同時に時分割多重されている出力バックオフにより運用する変調方式においても、アップリンク地上局において、適切なバックオフによる変調波を生成していれば、自動的に最適な出力バックオフで運用されることになる。
以上の説明において、変調方式の多重比率が変更になった場合1では、変調方式切り替え時に衛星中継器のALCレベル設定を簡易的に行う方法について説明し、更に、変調方式の多重比率が変更になった場合2では、定常状態で飽和運用される変調方式についてより正確なレベル設定を行う方法について説明した。これらの一連の処理を行うことにより、変調方式切り替え時に、衛星中継器のALCレベル設定を一層精度良く行うことが可能となる。
なお、管制地球局における監視系180のダウンリンク監視用受信装置10本来の機能である放送波を受信する場合には、各変調波のバックオフ量の切り替えに追従してAGCさせることは困難である。このため、図15に示したダウンリンク監視用受信装置10においては、直交検波部143の無変調搬送波再生のために使用する位相誤差テーブル15として、時分割多重される変調方式、すなわちBPSK、QPSK、8PSK、16APSKおよび32APSKそれぞれについて専用のものを備える。その位相誤差テーブル15の基準となる信号点配置は、各変調方式の最適出力バックオフ量に対応させて、それぞれ平均電力を、0dB、0dB、0dB、−1dB、−3dBとすることにより、同期再生の安定化を図ることができる。各変調方式の位相誤差テーブル15を図27に示す。また、同様に、デマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル16には、時分割多重される変調方式、すなわちBPSK、QPSK、8PSK、16APSK、32APSKそれぞれについて専用のものを備える。そのデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル16の基準となる信号点配置は、各変調方式の最適出力バックオフ量に対応させて、それぞれ平均電力を、0dB、0dB、0dB、−1dB、−3dBとすることにより、受信特性の改善を図ることができる。各変調方式のデマッピングテーブル16を図28に示す。
〔アップリンク地球局のダウンリンク監視用受信装置〕
次に、アップリンク地球局のダウンリンク監視用受信装置について説明する。図16は、アップリンク地球局のダウンリンク監視用受信装置の構成を示すブロック図である。このダウンリンク監視用受信装置20は、AGC増幅器141、チャンネル選択部142、直交検波部143、レベル検出部144、伝送制御信号復号部145、デマッピングまたは尤度検出部146、符号化復号部165、位相誤差テーブル22およびデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル23から構成される。これは、図15に示したダウンリンク監視用受信装置10において、AGCレベルホールドおよび変調方式の指定を受けるレベル測定機能を削除した構成である。位相誤差テーブル22は位相誤差テーブル15に、デマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル23はデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル16にそれぞれ相当する。
このアップリンク地球局のダウンリンク監視用受信装置20においても、同様の理由から、直交検波部143の無変調搬送波再生のために使用する位相誤差テーブル22には、時分割多重される変調方式、すなわちBPSK、QPSK、8PSK、16APSKおよび32APSKそれぞれについて専用のものを備える。その位相誤差テーブル22の基準となる信号点配置は、各変調方式の最適出力バックオフ量に対応させて、それぞれ平均電力を0dB、0dB、0dB、−1dB、−3dBとすることにより、同期再生の安定化を図ることができる。また、同様に、デマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル23には、時分割多重される変調方式、すなわちBPSK、QPSK、8PSK、16APSKおよび32APSKそれぞれについて専用のものを備え、そのデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル23の基準となる信号点配置を、各変調方式の最適出力バックオフ量に対応させて、それぞれ平均電力を、0dB、0dB、0dB、−1dB、−3dBとすることにより、受信特性の改善を図ることができる。
〔アップリンク地球局のアップリンク監視用受信装置〕
次に、アップリンク地球局のアップリンク監視用受信装置について説明する。図17は、アップリンク地球局のアップリンク監視用受信装置の構成を示すブロック図である。このアップリンク監視用受信装置30は、AGC増幅器141、チャンネル選択部142、直交検波部143、レベル検出部144、伝送制御信号復号部145、デマッピングまたは尤度検出部146、符号化復号部165、位相誤差テーブル32およびデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル33から構成される。図16に示したダウンリンク監視用受信装置20とこのアップリンク監視用受信装置30とを比較すると、アップリンク監視用受信装置30は、テーブルの基準となる信号点レベルが出力バックオフに対応した位相誤差テーブル22およびデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル23とは異なり、入力バックオフに対応した位相誤差テーブル32およびデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル33を備えている点で相違する。
このアップリンク地球局のアップリンク監視用受信装置30においても、同様の理由から、直交検波部143の無変調搬送波再生のために使用する位相誤差テーブル32には、時分割多重される変調方式、すなわちBPSK、QPSK、8PSK、16APSKおよび32APSKそれぞれについて専用のものを備える。その位相誤差テーブル32の基準となる信号点配置は、各変調方式の最適入力バックオフ量に対応させて、それぞれ平均電力を0dB、0dB、0dB、−5dB、−9dBとすることにより、同期再生の安定化を図ることができる。また、同様に、デマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル33には、時分割多重される変調方式、すなわちBPSK、QPSK、8PSK、16APSKおよび32APSKそれぞれについて専用のものを備え、そのデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル33の基準となる信号点配置を、各変調方式の最適入力バックオフ量に対応させて、それぞれ平均電力を、0dB、0dB、0dB、−5dB、−9dBとすることにより、受信特性の改善を図ることができる。この位相誤差テーブル32を図29に、デマッピングテーブル33を図30に示す。
以上の説明では、変調方式が切り替えられる場合を想定したが、通常の運用時であっても全く同じ処理を行うことにより、バックオフ設定を行うことができる。
〔管制地球局の電力測定装置〕
次に、管制地球局の電力測定装置について説明する。図19は、管制地球局の電力測定装置の構成を示すブロック図である。この電力測定装置40は、AGC増幅器11、チャンネル選択部142、直交検波部143、レベル検出部144、伝送制御信号復号部145、変調方式ゲート信号生成部13、レベル測定部14および位相誤差テーブル15から構成される。図15に示したダウンリンク監視用受信装置10は、従来のダウンリンク監視用受信装置131−2,531−2に機能を追加して制御系を構成するようにしたが、この電力測定装置40は、ダウンリンク監視用受信装置10のうちの上記制御系に必要のない部分(デマッピングまたは尤度検出部146、符号化復号部165、デマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル16)を省略して構成される。
次に、複数の最適バックオフの異なる変調方式が時分割多重されている場合に、バックオフ運用している変調方式の多重レベルが、放送衛星の老朽化や交代に起因して、中継器800の進行波管増幅器TWTA809における非線形特性の変化によりずれてくることも想定される。以下、この場合の補償処理について説明する。
〔アップリンク地球局およびその送信装置〕
まず、アップリンク地球局の送信装置について説明する。図20は、送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置50は、伝送制御部631、符号化部632、スイッチ633、スイッチ634、マッパ部51、スイッチ636および直交変調部637から構成される。図8に示した従来の送信装置602−2とこの送信装置50とを比較すると、両装置は、同一構成の伝送制御部631、符号化部632、スイッチ633,634,636および直交変調部637を備えている点で同一であるが、送信装置50は、バックオフ運用する変調方式のマッパバンクを含むマッパ部51を備えている点で相違する。すなわち、マッパ部51は、マッパ部635を前述のマッパバンクを含むように置換したものである。
図21は、図20に示したマッパ部51におけるマッパバンクの構成を示す図である。このマッパバンクは、バックオフ運用する多値変調、すなわちここでは16APSKおよび32APSKについて、複数のバックオフ値に対応したマッパと切り替えスイッチとを備え、可変振幅のマッパとして利用できるようにしたものである。それぞれのマッパバンクには、想定される進行波管増幅器TWTA809の入力バックオフに対応する振幅値のマッパおよびその上下の振幅値のマッパが複数用意されている。
例えば、図21のマッパバンク#1については、16APSK用のマッパとしてバックオフの異なるマッパがP種類用意されており、スイッチSW_mb1−iおよびスイッチSW_mb1−oを同一マッパの入出力に接続されるように切り替えることにより、振幅の異なる16APSKマッピング信号を生成する。なお、スイッチの切り替え操作は、図18に示した管制地球局の伝送制御信号解析制御部251から送出されるマッパ切り替え指示信号によってなされる。この場合、伝送制御信号解析制御部251は、ダウンリンク監視用受信機10のレベル測定部14から入力した基準レベルとなる変調方式の平均電力およびバックオフ運用する変調方式の平均電力から、所望のバックオフより大きいか小さいかを判定して、マッパ書き換え指示信号を生成する。
また、マッパバンク#2については、32APSK用のマッパとしてバックオフの異なるマッパがQ種類用意されており、スイッチSW_mb2−iおよびスイッチSW_mb2−oを同一マッパの入出力に接続されるように切り替えることにより、振幅の異なる32APSKのマッピング信号を生成する。なお、スイッチの切り替え操作は、図18に示した管制地球局の伝送制御信号解析制御部251から送出されるマッパ切り替え指示信号によってなされる。
次に、アップリンク地球局の第2の送信装置について説明する。図31は、第2の送信装置の構成を示すブロック図である。この送信装置60は、伝送制御部631、符号化部632、スイッチ633、スイッチ634、マッパ部61、スイッチ636、直交変調部637およびマッパ書き換え制御部62から構成される。図8に示した従来の送信装置602−2とこの送信装置60とを比較すると、両装置は、同一構成の伝送制御部631、符号化部632、スイッチ633,634,636および直交変調部637を備えている点で同一であるが、送信装置60は、外部から書き換え可能なマッパ部61、およびマッパ部61の書き換えを行うマッパ書き換え制御部62を備えている点で相違する。すなわち、マッパ部61は、マッパ部635を外部から書き換えたものであり、この書き換え処理はマッパ書き換え制御部62により行われる。
マッパテーブルを書き換えることにより、可変振幅のマッパとして利用することができる。マッパテーブルの初期値には、通常想定される進行波管増幅器TWTA809の入力バックオフに対応する振幅値のマッパが書き込まれている。
例えば、マッパ#4(16APSK用)に、通常想定される進行波管増幅器TWTA809の入力バックオフに対応する振幅値のマッパが書き込まれている場合に、マッパ書き換え制御部62が、このマッパテーブルを振幅の異なるものに書き換えることにより、振幅の異なる16APSKマッピング信号を生成することができる。なお、マッパの書き換え操作は、図18に示した管制地球局の伝送制御信号解析制御部251から送出されるマッパ書き換え指示信号によってなされる。この場合、伝送制御信号解析制御部251は、ダウンリンク監視用受信機10のレベル測定部14から入力した基準レベルとなる変調方式の平均電力およびバックオフ運用する変調方式の平均電力から、所望のバックオフより大きいか小さいかを判定して、マッパ書き換え指示信号を生成する。
同様に、マッパ#5(32APSK用)に、通常想定される進行波管増幅器TWTA809の入力バックオフに対応する振幅値のマッパが書き込まれている場合に、マッパ書き換え制御部62が、このマッパテーブルを振幅の異なるものに書き換えることにより、振幅の異なる32APSKマッピング信号を生成することができる。なお、スイッチの切り替え操作は、図18に示した管制地球局の伝送制御信号解析制御部251から送出されるマッパ書き換え指示信号によってなされる。
次に、アップリンク地球局について説明する。図22は、アップリンク地球局の構成を示すブロック図である。このアップリンク地球局は、放送に供されている放送チャンネルであるBS−1ch、BS−3ch、BS−13ch、BS−15chそれぞれに対して設置されているアップリンクアンテナ510、このアップリンクアンテナ510に対応するそれぞれのアップリンク設備660、放送波受信用アンテナ520、ダウンリンク監視用受信装置20および監視モニタ532から構成される。また、アップリンク設備660は、TS合成部601、送信装置50または送信装置60、周波数変換部603、電力増幅部604、周波数変換部605およびアップリンク監視用受信装置30から構成される。図3に示した従来のアップリンク地球局と図22に示すアップリンク地球局とを比較すると、図22のアップリンク地球局は、従来のアップリンク地球局の送信装置602およびダウンリンク監視用受信装置531とは異なる構成の、図20に示した送信装置50または送信装置60および図16に示したダウンリンク監視用受信装置20を備えている点で相違する。また、その送信装置50にはマッパ切り替え信号が管制地球局の伝送制御信号解析制御部251から入力され、送信装置50のマッパ部51においてバックオフ量に対応したマッパが選択される点で相違する。また、その送信装置60にはマッパ書き換え信号が管制地球局の伝送制御信号解析制御部251から入力され、送信装置60のマッパ部61においてバックオフ量に対応したマッパに書き換えられる点で相違する。
以下、各変調方式の出力バックオフ量の補償処理について説明する。まず、図18に示した管制地球局の伝送制御信号解析制御部251は、図15に示したダウンリンク監視用受信装置10のAGC増幅器11にAGCレベルホールド指示信号を送出する。AGC増幅器11は、AGCレベルホールド指示信号を入力すると、利得を固定する。
また、図18に示した管制地球局の伝送制御信号解析制御部251は、テレメトリ信号解析部303より、図12の衛星中継器800の受信機入力レベル測定部820の測定値P0を取得し、この測定値P0と衛星中継器のALCモードにおけるTWTA入力バックオフの設定値から、衛星中継器の利得を算出する。さらに、この利得を固定利得モードの利得にセットし、放送衛星の中継器800における進行波管増幅器TWTA809の動作モードを通常のALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させるための指示をコマンド信号生成部252に出力する。これにより、図12に示した放送衛星の減衰器ATT807の値が固定され、固定利得モードに移行する。これらは、以下のレベル制御プロセスを実行している間、レベル制御機能が働き正確な測定ができなくなるのを防止するための処理である。
次に、図18に示した伝送制御信号解析制御部251は、図15に示したダウンリンク監視用受信装置10の変調方式ゲート信号生成部13に対し、変調方式指示信号を送出し、レベル測定部14が測定すべき変調方式を指定する。例えば、BPSK(出力バックオフ0dB)、QPSK(出力バックオフ0dB)、8PSK(出力バックオフ0dB)および32APSK(出力バックオフ3dB)により時分割多重された信号のうち32APSKのレベル設定を行う場合、伝送制御信号解析制御部251は、32APSKを指定する変調方式指示信号を送出する。
図15に示したダウンリンク監視用受信装置10の変調方式ゲート信号生成部13は、伝送制御信号復号部145から、時分割多重されている変調方式の配列情報、および時分割多重変調波が構成されるフレームの先頭を示すフレーム同期信号を入力し、これらの配列情報およびフレーム同期信号に基づいて、変調方式指示信号が示す32APSK変調方式で伝送された変調信号の検波結果が直交検波部143から出力されている期間のみ有効となるゲート信号を生成し、レベル測定部14に出力する。レベル測定部14は、変調方式ゲート信号生成部13からゲート信号を入力し、このゲート信号が有効な期間のみ(ゲート信号を入力している期間のみ)直交検波部143の出力の平均電力を測定し、その測定結果を図18の伝送制御信号解析制御部251に出力する。
伝送制御信号解析制御部251は、レベル測定部14から測定結果である測定レベルを入力し、その測定レベルを監視しながら、送信装置50におけるマッパ部51のマッパバンクに対してマッパ切り替えを指示することにより、または、送信装置60におけるマッパ書き換え制御部62に対してマッパ書き換えを指示することにより、32APSK信号の多重レベルを上下に変更を繰り返し、そのときの測定レベルを測定し、所定のバックオフ値に最も近くなるマッパを探索する。測定レベルが所定のバックオフ値になるようなマッパが求まると、それが指定された変調方式の動作点となる。
次に、伝送制御信号解析制御部251は、固定利得モードからALCモードへ戻すコマンドを発射するための指示をコマンド信号生成部252に出力する。これにより、放送衛星の中継器800における進行波管増幅器TWTA809はALCモードに移行する。最後に、伝送制御信号解析制御部251は、AGCレベルホールド指示信号の出力を停止し、ダウンリンク監視用受信装置10のAGC増幅器11が固定利得動作ではなく通常のAGC動作を行うようにする。
これにより、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809において、所定の出力バックオフとなるようにレベル設定が完了する。また、バックオフ運用される全ての変調方式について、上記の処理を実行すれば、放送衛星の中継器800における進行波管増幅器TWTA809は、所定の出力バックオフとなるようにレベル設定することができる。
以上のように、本発明の実施の形態によれば、アップリンク地球局の送信装置602は、時分割多重する変調方式群のうち、出力バックオフ運用する変調方式について、放送衛星の中継器800の特性から換算した入力バックオフを持たせた信号点マッパであるマッパ部(図14の構成を有するマッパ)を備えることにより、飽和点運用される変調方式のレベル設定を行なったとき、全ての変調方式について自動的に所望のバックオフ点で運用することが可能となる。
また、管制地球局のダウンリンク監視用受信装置10は、伝送制御信号復号部145から取得したフレーム同期信号および伝送制御情報、並びに伝送制御信号解析制御部251から入力した変調方式指示信号に基づいて、指定された変調方式期間だけ有効となるゲート信号を発生させる変調方式ゲート信号生成部13と、前記ゲート信号期間において直交検波部143の直交検波出力の平均電力を測定し、測定結果を伝送制御信号解析制御部251に出力するレベル測定部14とを備えることにより、伝送制御信号解析制御部251から指定した変調方式の相対電力の測定が可能となる。
また、管制地球局のダウンリンク監視用受信装置10は、AGCレベルホールド指示信号を伝送制御信号解析制御部251から入力してAGC利得を固定するAGC増幅器11と、伝送制御信号復号部145から取得したフレーム同期信号および伝送制御情報、並びに伝送制御信号解析制御部251から入力した変調方式指示信号に基づいて、指定された変調方式期間だけ有効となるゲート信号を発生させる変調方式ゲート信号生成部13と、前記ゲート信号期間において直交検波部143の直交検波出力の平均電力を測定し、測定結果を伝送制御信号解析制御部251に出力するレベル測定部14とを備えることにより、放送衛星の中継器800の出力が途中で変化しても、AGC動作の影響を受けることなく、伝送制御信号解析制御部251から指定した変調方式の相対電力の測定が可能となる。
また、管制地球局のダウンリンク監視用受信装置10は、出力バックオフ運用される変調方式について、所定のバックオフ量だけ抑圧した信号点に対応した位相誤差テーブル15およびデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル16を備えることにより、同期再生を安定化し、受信特性を改善することが可能となる。
また、管制地球局の電力測定装置40は、伝送制御信号復号部145から取得したフレーム同期信号および伝送制御情報、並びに伝送制御信号解析制御部251から入力した変調方式指示信号に基づいて、指定された変調方式期間だけ有効となるゲート信号を発生させる変調方式ゲート信号生成部13と、前記ゲート信号期間において直交検波部143の直交検波出力の平均電力を測定し、測定結果を伝送制御信号解析制御部251に出力するレベル測定部14とを備えることにより、外部から指定した変調方式の相対電力の測定が可能となる。
また、管制地球局の電力測定装置40は、AGCレベルホールド指示信号を伝送制御信号解析制御部251から入力してAGC利得を固定するAGC増幅器11と、伝送制御信号復号部145から取得したフレーム同期信号および伝送制御情報、並びに伝送制御信号解析制御部251から入力した変調方式指示信号に基づいて、指定された変調方式期間だけ有効となるゲート信号を発生させる変調方式ゲート信号生成部13と、前記ゲート信号期間において直交検波部143の直交検波出力の平均電力を測定し、測定結果を伝送制御信号解析制御部251に出力するレベル測定部14とを備えることにより、放送衛星の中継器800の出力が途中で変化しても、AGC動作の影響を受けず、外部から指定した変調方式の相対電力の測定が可能となる。
また、管制地球局の電力測定装置40は、出力バックオフ運用される変調方式について、所定のバックオフ量だけ抑圧した信号点に対応した位相誤差テーブル15を備えることにより、同期再生を安定化することが可能となる。
また、管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251は、バックオフ運用される変調方式の占有割合が変更される前に、各変調方式の時間占有割合が変更される前後の平均電力の比に対応した、ALCの設定値に変更する機能を備えたことにより、バックオフ運用される変調方式の占有割合が変更された場合にも、衛星中継器の運用レベルを適正に設定することが可能となる。
また、管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251は、バックオフ運用される変調方式の占有割合変更において、各変調方式の時間占有割合が変更される前後のTWTA入力の平均電力の比が1を超える(変更前よりも変更後のほうが大)場合、時間占有割合が変更された後に、ALCの設定値を変更し、1を下回る場合、時間占有割合が変更される前に、ALCの設定値を変更する機能を備えたことにより、バックオフ運用される変調方式の占有割合が変更された場合にも、衛星中継器の運用レベルを適正に設定することが可能となる。
また、管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251は、バックオフ運用される変調方式の占有割合が変更される前に放送衛星における中継器800の受信機入力測定値(P0)をテレメトリ信号から取得する機能と、進行波管増幅器TWTA809の動作モードをALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させる機能と、バックオフ運用される変調方式の占有割合が変更された後に前記衛星中継器の受信機入力測定値(P1)をテレメトリ信号から取得する機能と、進行波管増幅器TWTA809のALCモードの入力バックオフをP1/P0倍した設定値に書き換えるコマンドを発射させる機能と、前記進行波管増幅器TWTA809の動作モードを固定利得モードからALCモードに切り替えるコマンドを発射させる機能とを備えたことにより、バックオフ運用される変調方式の占有割合が変更された場合にも、衛星中継器の運用レベルを適正に設定することが可能となる。
また、管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251は、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードをALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させる機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40に対して測定すべき飽和レベルで運用される変調方式を指定する機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40による測定レベルを監視しながら、進行波管増幅器TWTA809のTWTA入力レベルまたはTWTA入力バックオフを上下に変更を繰り返し、測定レベルが最大になるようなTWTA入力レベルまたはTWTA入力バックオフを探索するため、固定利得モードの利得値を設定するコマンドを発射させる機能と、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードを固定利得モードからALCモードに切り替えるコマンドを発射させる機能とを備えることにより、特定の変調方式による変調信号に対する運用レベルを、放送衛星の中継器800の飽和点に設定することが可能となる。
また、管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251は、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40のAGC増幅器11にAGCレベルホールド指示信号を送出する機能と、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードをALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させる機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40に対して測定すべき飽和レベルで運用される変調方式を指定する機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40による測定レベルを監視しながら、進行波管増幅器TWTA809のTWTA入力レベルを上下に変更を繰り返し、測定レベルが最大になるようなTWTA入力レベルを探索するため、固定利得モードの利得値を設定するコマンドを発射させる機能と、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードを固定利得モードからALCモードに切り替えるコマンドを発射させる機能と、AGCレベルホールド指示信号の出力を停止する機能とを備えることにより、特定の変調方式による変調信号に対する運用レベルを、放送衛星の中継器800の飽和点に設定することが可能となる。
また、アップリンク地球局のダウンリンク監視用受信装置20は、出力バックオフ運用される変調方式について、放送衛星の中継器800において所定の出力バックオフ量だけ抑圧した信号点に対応した位相誤差テーブル22およびデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル23を備えることにより、同期再生を安定化し、受信特性が改善される。
また、アップリンク地球局のアップリンク監視用受信装置30は、出力バックオフ運用される変調方式について、放送衛星の中継器800において所定の出力バックオフ量を換算した入力バックオフだけ抑圧した信号点に対応した位相誤差テーブル32およびデマッピングテーブルまたは尤度情報テーブル33を備えることにより、同期再生を安定化し、受信特性を改善することが可能となる。
また、アップリンク地球局の送信装置50は、時分割多重する変調方式群のうち、出力バックオフ運用する変調方式について、複数のバックオフに対応した信号点マッパであるマッパ部51を備えることにより、伝送制御信号解析制御部251からの指示による変調方式毎にバックオフ量の変更が可能となる。
また、管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251は、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードをALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させる機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40に対して測定すべき基準レベルとなる変調方式およびレベル調整対象となるバックオフ運用する変調方式を指定する機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40における変調方式による変調信号の測定レベルを監視しながら、アップリンク地球局の送信装置50に対しバックオフ運用する変調方式のマッパ切り替えを指示する機能または送信装置60に対しバックオフ運用する変調方式のマッパ書き換えを指示する機能と、その変調方式による変調信号の多重レベルを上下に変更を繰り返し、そのときの測定レベルを測定し、所定のバックオフ値に最も近くなるマッパを探索する機能と、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードを固定利得モードからALCモードに切り替えるコマンドを発射させる機能とを備えることにより、特定の変調方式に対する放送衛星の中継器800の運用レベルを所定のバックオフに設定することが可能となる。
また、管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251は、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40のAGC増幅器11にAGCレベルホールド指示信号を送出する機能と、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードをALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させる機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40に対して測定すべき基準レベルとなる変調方式およびレベル調整対象となるバックオフ運用する変調方式を指定する機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40における変調方式による変調信号の測定レベルを監視しながら、アップリンク地球局の送信装置50に対しバックオフ運用する変調方式のマッパ切り替えを指示する機能または送信装置60に対しバックオフ運用する変調方式のマッパ書き換えを指示する機能と、その変調方式による変調信号の多重レベルを上下に変更を繰り返し、そのときの測定レベルを測定し、所定のバックオフ値に最も近くなるマッパを探索する機能と、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードを固定利得モードからALCモードに切り替えるコマンドを発射させる機能、AGCレベルホールド指示信号の出力を停止する機能とを備えることにより、特定の変調方式に対する放送衛星の中継器800の運用レベルを所定のバックオフに設定することが可能となる。
また、アップリンク地球局の送信装置50は、時分割多重する変調方式群のうち、出力バックオフ運用する変調方式について、変調方式ごとに、バックオフに対応した信号点に書き換えられるマッパ部51を備えることにより、伝送制御信号解析制御部251からの指示による変調方式毎にバックオフ量の変更が可能となる。
また、管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251は、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードをALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させる機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40に対して測定すべき基準レベルとなる変調方式およびレベル調整対象となるバックオフ運用する変調方式を指定する機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40における変調方式による変調信号の測定レベルを監視しながら、アップリンク地球局の送信装置50に対しバックオフ運用する変調方式のマッパ書き換えを指示する機能または送信装置60に対しバックオフ運用する変調方式のマッパ書き換えを指示する機能と、その変調方式による変調信号の多重レベルを上下に変更を繰り返し、そのときの測定レベルを測定し、所定のバックオフ値に最も近くなるマッパを探索する機能と、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードを固定利得モードからALCモードに切り替えるコマンドを発射させる機能とを備えることにより、特定の変調方式に対する放送衛星の中継器800の運用レベルを所定のバックオフに設定することが可能となる。
また、管制地球局におけるコマンド信号送信装置260の伝送制御信号解析制御部251は、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40のAGC増幅器11にAGCレベルホールド指示信号を送出する機能と、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードをALCモードから固定利得モードに切り替えるコマンドを発射させる機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40に対して測定すべき基準レベルとなる変調方式およびレベル調整対象となるバックオフ運用する変調方式を指定する機能と、ダウンリンク監視用受信装置10または電力測定装置40における変調方式による変調信号の測定レベルを監視しながら、アップリンク地球局の送信装置50に対しバックオフ運用する変調方式のマッパ切り替えを指示する機能または送信装置60に対しバックオフ運用する変調方式のマッパ書き換えを指示する機能と、その変調方式による変調信号の多重レベルを上下に変更を繰り返し、そのときの測定レベルを測定し、所定のバックオフ値に最も近くなるマッパを探索する機能と、放送衛星における中継器800の進行波管増幅器TWTA809の動作モードを固定利得モードからALCモードに切り替えるコマンドを発射させる機能、AGCレベルホールド指示信号の出力を停止する機能とを備えることにより、特定の変調方式に対する放送衛星の中継器800の運用レベルを所定のバックオフに設定することが可能となる。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、図18に示した管制地球局におけるコマンド信号送信装置260は伝送制御信号解析制御部251を備えるようにしたが、これに限定されるものではなく、伝送制御信号解析制御部251はコマンド信号送信装置260に内蔵する必要はなく、監視系180やテレメトリ信号受信装置300に内蔵するようにしてもよいし、場合によってはアップリンク地球局内に設置するようにしてもよい。