JP4925517B2 - アミド酸エステル類の製造法 - Google Patents
アミド酸エステル類の製造法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アミノ酸からのアミド酸エステルの製造法の改良に関する。詳しくは農薬の製造中間体として有用なアミド酸エステルを、アミノ酸を原料として安価、簡便且つ工業的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでに、アミノ酸を原料として得られるアミド酸の酸部と、別のアミンとを反応させる方法として、混合酸無水物法が知られている(泉屋信夫ら、「合成化学シリーズ ペプチド合成」、第126〜129頁、昭和50年10月30日、丸善株式会社)。
【0003】
この方法は、先ずアミノ酸のアミノ基にクロロ炭酸エステルを反応させてアミド体を合成し、次に、合成したアミド体のカルボン酸部にクロロ炭酸エステルを反応させて混合酸無水物を生成させ、この混合酸無水物に、対応するアミンを反応させて目的物を合成するものである。
【0004】
しかしながら、この方法では、水存在下では酸無水物の生成が遅いので、2番目の反応は無水溶媒を用いる非水系で行わなければならず、従って、最初の反応において水溶媒系で合成したアミド体はこれを脱水する必要があり、且つ、前述の通り非水系で2番目の反応を行わなければならないことと相俟って、この方法は工業的には操作が煩雑であるという欠点を有している。
【0005】
更に、アミド体の脱水工程が必要になると云うことは、単位時間当たりの生産性等を低下させると共に、反応系を加熱する時間が増加するために目的物等の分解により収率を低下させることになり、従って上記の従来方法にはコスト的な難点もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、農薬の製造中間体として有用なアミド酸エステルを、アミノ酸を原料として安価、簡便且つ工業的に製造する方法を提供することを課題としてなされた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意研究を行ったところ、意外にも、アミノ酸をアルカリ塩水溶液とし、更にこれにクロロ炭酸エステルを加えアミド化合物を生成させた後、必要に応じ過剰のアルカリを酸で中和し、トルエン等の有機溶媒及び触媒量の第3級アミンを加え反応系を2相系とし、水存在下でクロロ炭酸エステルを更に反応させて、水の存在下に反応系内で混合酸無水物を生成せしめ、これを目的物に対応するアミン化合物(このアミン化合物が塩酸あるいはスルホン酸等の塩の場合はアルカリも加える)と反応させることにより、水の存在下に1ポット(同一反応容器内)でアミド酸エステルを製造することができ、しかも原料として用いた試剤(一般式(1)で表されるアミノ酸や一般式(6)で表されるアミン化合物等)が光学活性体である場合には、その光学純度の低下を殆ど起こすことなく原料に用いた試剤の光学純度を維持したまま、光学活性なアミド酸エステルをも合成できることを見出し、これらの知見に基づき本発明を完成するに至ったのである。
【0008】
【発明の実施の態様】
すなわち本発明は、下記〔1〕〜〔6〕項に記載の発明を提供することにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
〔1〕一般式(1)
【0010】
【化8】
【0011】
(式中、Aはハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいC1−C6アルキレン基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいC3−C6シクロアルキレン基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいアリーレン基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいC3−C6シクロアルキルC1−C6アルキレン基、又はハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいアラルキレン基を示す。)
【0012】
で表されると共に、光学活性体であるアミノ酸をアルカリ金属の塩として水に溶解し、当該水の存在下で、一般式(2)
【0013】
【化9】
【0014】
(式中、R1はハロゲン原子、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいC1−C6アルキル基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいC3−C6シクロアルキル基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいアリール基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいC3−C6シクロアルキルC1−C6アルキル基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいアラルキル基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよい複素環基、又はハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよい複素環アルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【0015】
で表されるハロゲン化炭酸エステルを反応させて、一般式(3)
【0016】
【化10】
【0017】
(式中、A、R1は前記と同じ意味を示す。)
【0018】
で表されるアミド化合物とした後、過剰のアルカリを酸で中和し、更にこのアミド化合物と、一般式(4)
【0019】
【化11】
【0020】
(式中、R2はハロゲン原子、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいC1−C6アルキル基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいC3−C6シクロアルキル基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいアリール基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいC3−C6シクロアルキルC1−C6アルキル基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよいアラルキル基、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよい複素環基、又はハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよい複素環アルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【0021】
で表されるハロゲン化炭酸エステルを、水の存在下で、且つ、反応開始前に水と混和しない有機溶媒を添加し、触媒量の第3級アミンの存在下で反応させることにより、系内で形成される一般式(5)
【0022】
【化12】
【0023】
(式中、A、R1、R2は前記と同じ意味を示す。)
【0024】
で表される混合酸無水物に、一般式(6)
【0025】
【化13】
【0026】
(式中、R3は水素原子又はC1−C6アルキル基を示し、Hetはハロゲン原子、C1−C6アルキル基、水酸基、C1−C6アルコキシ基、C1−C6アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はC1−C6アルキルカルバモイル基で置換されてもよい複素環基を示す。)
【0027】
で表される光学活性体であると共に、アミン化合物又はその塩を、水又は水と有機溶媒とからなる反応系で反応させ、一般式(7)
【0028】
【化14】
【0029】
(式中、A、R1、R3は前記と同じ意味を示す。)
【0030】
で表されると共に、光学活性体であるアミド酸エステルを製造する方法。
【0034】
〔2〕全工程を1ポット(同一反応器内)で行うものである、〔1〕項に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
【0035】
〔3〕一般式(1)で表されるアミノ酸がバリンであり、一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルがクロロ炭酸イソプルピルである、〔1〕項に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
【0036】
〔4〕全工程を1ポット(同一反応器内)で行うものである、〔3〕項に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
【0037】
〔5〕一般式(1)で表されるアミノ酸が光学活性なバリンであり、一般式(6)で表されるアミンが、光学活性な1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチルアミンである、〔1〕項に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
【0038】
〔6〕全工程を1ポット(同一反応器内)で行うものである、〔5〕項に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
【0039】
以下、本発明方法について詳細に説明する。
【0040】
まず、本明細書において用いる用語について説明する。
【0041】
本明細書において云う「置換されてもよい」と云う語は、この語に続く基が、無置換のものであっても良いし、あるいは、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を包含するハロゲン原子(以下、特に定義をしないかぎり「ハロゲン原子」は同意であり、他の置換基についても同様である。);メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基を包含する炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖の低級アルキル基;水酸基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトシキ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基を包含する、アルキル部分が前記低級アルキル基である低級アルコキシ基〔(低級アルキル)−O−基〕;アルコキシ部分が前記低級アルコキシ基である低級アルコキシカルボニル基〔(低級アルコキシ)−CO−基〕;カルバモイル基〔H2N−CO−〕;アルキル部分が前記低級アルキル基である、低級アルキルカルバモイル基〔(低級アルキル)−NH−CO−基〕等で置換されていても良いことを意味する。
【0042】
置換されてもよい低級アルキレン基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基等を例示することができる。
【0043】
置換されてもよいシクロアルキレン基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、炭素数3〜6のシクロアルキレン基を意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはシクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等を例示することができる。
【0044】
置換されてもよいアリーレン基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、フェニレン、ナフチレン、アントラニレン等のアリーレン基を意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはフェニレン基、1−ナフチレン基、2−ナフチレン基、1−アントラニレン基等を例示することができる。
【0045】
置換されてもよいシクロアルキルアルキレン基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、炭素数3〜6のシクロアルキル基で置換された、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはシクロプロピルメチレン基、シクロプロピルエチレン基、シクロヘキシルメチレン基、シクロプロピルヘキシレン基等を例示することができる。
【0046】
置換されてもよいアラルキレン基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、ベンジレン基、フェニルエチレン基等のアラルキレン基を意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはベンジレン基、フェニルエチレン基等を例示することができる。
【0047】
置換されてもよい低級アルキル基とは、例えば、ハロゲン原子、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、メチルカルバモイルメチル基、エチルカルバモイルメチル基、メチルカルバモイルエチル基、エチルカルバモイルエチル基等を例示することができる。
【0048】
置換されてもよいシクロアルキル基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、炭素数3〜6のシクロアルキルを意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはシクロプロピル基、フルオロシクロプロピル基、クロロシクロプロピル基、ブロモシクロプロピル基、ヨードシクロプロピル基、メチルシクロプロピル基、エチルクロプロピル基、ヒドロキシシクロプロピル基、メトキシシクロプロピル基、エトキシシクロプロピル基、メトキシカルボニルシクロプロピル基、カルバモイルシクロプロピル基、メチルカルバモイルシクロプロピル基、シクロブチル基、フルオロシクロブチル基、クロロシクロブチル基、ブロモシクロブチル基、ヨードシクロブチル基、メチルシクロブチル基、エチルシクロブチル基、ヒドロキシシクロブチル基、メトキシシクロブチル基、エトキシシクロブチル基、メトキシカルボニルシクロブチル基、カルバモイルシクロブチル基、メチルカルバモイルシクロブチル基、シクロブテニル基、フルオロシクロブテニル基、クロロシクロブテニル基、ブロモシクロブテニル基、ヨードシクロブテニル基、メチルシクロブテニル基、エチルシクロブテニル基、ヒドロキシシクロブテニル基、メトキシシクロブテニル基、エトキシシクロブテニル基、メトキシカルボニルシクロブテニル基、カルバモイルシクロブテニル基、メチルカルバモイルシクロブテニル基、シクロペンチル基、フルオロシクロペンチル基、クロロシクロペンチル基、ブロモシクロペンチル基、ヨードシクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、ヒドロキシシクロペンチル基、メトキシシクロペンチル基、エトキシシクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示することができる。
【0049】
置換されてもよいアリール基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等のアリール基を意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはフェニル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−ブロモフェニル基、m−ブロモフェニル基、p−ブロモフェニル基、o−ヨードフェニル基、m−ヨードフェニル基、p−ヨードフェニル基、o−トルイル基、m−トルイル基、p−トルイル基、o−キシリル基、m−キシリル基、p−キシリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、o−ヒドロキシフェニル、m−ヒドロキシフェニル、p−ヒドロキシフェニル、o−メトキシフェニル、m−メトキシフェニル、p−メトキシフェニル、o−メトキシフェニル、m−メトキシフェニル、p−メトキシフェニル、o−カルバモイルフェニル、m−カルバモイルフェニル、p−カルバモイルフェニル、o−メチルカルバモイルフェニル、m−メチルカルバモイルフェニル、p−メチルカルバモイルフェニル、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラニル基等を例示することができる。
【0050】
置換されてもよいシクロアルキルアルキル基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、炭素数3〜6のシクロアルキルで置換された、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキルを意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはシクロプロピルメチル基、フルオロシクロプロピルメチル基、クロロシクロプロピルメチル基、ブロモシクロプロピルメチル基、ヨードシクロプロピルメチル基、メチルシクロプロピルメチル基、1,1−ジメチルシクロプロピルメチル基、1,2−ジメチルシクロプロピルメチル基、ヒドロキシシクロプロピルメチル基、メトキシシクロプロピルメチル基、エトキシシクロプロピルメチル基、メトキシカルボニルシクロプロピルメチル基、メチルカルバモイルシクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロプロピルヘキシル基等を例示することができる。
【0051】
置換されてもよいアラルキル基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基を意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良く、具体的にはベンジル基、o−フルオロフェニルメチル基、m−フルオロフェニルメチル基、p−フルオロフェニルメチル基、2,3−ジフルオロフェニルメチル基、2,4−ジフルオロフェニルメチル基、2,5−ジフルオロフェニルメチル基、3,4−ジフルオロフェニルメチル基、2,3,4−トリフルオロフェニルメチル基、2,3,5−トリフルオロフェニルメチル基、3,4,5−トリフルオロフェニルメチル基、o−クロロフェニルメチル基、m−クロロフェニルメチル基、p−クロロフェニルメチル基、2,3−ジクロロフェニルメチル基、2,4−ジクロロフェニルメチル基、2,5−ジクロロフェニルメチル基、3,4−ジクロロフェニルメチル基、2,3,4−トリクロロフェニルメチル基、2,3,5−トリクロロフェニルメチル基、3,4,5−トリクロロフェニルメチル基、o−ブロモフェニルメチル基、m−ブロモフェニルメチル基、p−ブロモフェニルメチル基、o−ヨードフェニルメチル基、m−ヨードフェニルメチル基、p−ヨードフェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルエチル基、o−メチルフェニルメチル基、m−メチルフェニルメチル基、p−メチルフェニルメチル基、2,3−ジメチルフェニルメチル基、2,4−ジメチルフェニルメチル基、2,5−ジメチルフェニルメチル基、2−エチルフェニルメチル基、3−エチルフェニルメチル基、4−エチルフェニルメチル基、o−(n−プロピル)フェニルメチル基、m−(n−プロピル)フェニルメチル基、p−(n−プロピル)フェニルメチル基、o−(イソプロピル)フェニルメチル基、m−(イソプロピル)フェニルメチル基、p−(イソプロピル)フェニルメチル基、o−ヒドロキシフェニルメチル基、m−ヒドロキシフェニルメチル基、p−ヒドロキシフェニルメチル基、メトキシフェニルメチル基、m−メトキシフェニルメチル基、p−メトキシフェニルメチル基、o−エトキシフェニルメチル基、m−エトキシフェニルメチル基、p−エトキシフェニルメチル基、o−メトキシカルボニルフェニルメチル基、m−メトキシカルボニルフェニルメチル基、p−メトキシカルボニルフェニルメチル基、o−カルバモイルフェニルメチル基、m−カルバモイルフェニルメチル基、p−カルバモイルフェニルメチル基、o−メトキシカルバモイルフェニルメチル基、m−メトキシカルバモイルフェニルメチル基、p−メトキシカルバモイルフェニルメチル基等を例示することができる。
【0052】
置換されてもよい複素環基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピラニル基、ジオキサニル基、チアニル基、ジチアニル基、フリル基、オキソラニル基、ジオキソフリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾフリル基、クマラニル基、ベンゾチエニル基、インドリジニル基、ベンズオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、クロメニル基、キノリニル基、キノゾリニル基、キノキサリニル基等の、ヘテロ原子として酸素、窒素、又は硫黄を少なくとも1つ環に有する5〜10員の、単環又は縮合環の複素環を意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良い。このような置換されてもよい複素環基として具体的にはピリジル基、2-フルオロピリジル基、4-クロロピリジル基、2,4-ジクロロピリジル基、4-ブロモピリジル基、4-ヨードピリジル基、2-メチルピリジル基、4-エチルピリジル基、2−ヒドロキシピリジル基、2−メトキシピリジル基、2−カルバモイルピリジル基、2−メチルカルバモイルピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、1,3,5−トリアジニル基、α―ピラニル基、β―ピラニル基、1,4−ジチアニル基、フリル基、オキソラニル基、ジオキソフリル基、ジオキソフリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾフリル基、クマラニル基、ベンゾチエニル基、インドリジニル基、ベンズオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、2−フルオロベンゾチアゾリル基、4−フルオロベンゾチアゾリル基、5−フルオロベンゾチアゾリル基、6−フルオロベンゾチアゾリル基、7−フルオロベンゾチアゾリル基、2H−クロメニル基、4H−クロメニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基等を例示することができる。
【0053】
置換されてもよい複素環アルキル基とは、例えばハロゲン原子、低級アルキル基、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、低級アルキルカルバモイル基等で置換されていても良い、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、ピラニル基、ジオキサニル基、チアニル基、ジチアニル基、フリル基、オキソラニル基、ジオキソフリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾフリル基、クマラニル基、ベンゾチエニル基、インドリジニル基、ベンズオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、クロメニル基、キノリニル基、キノゾリニル基、キノキサリニル基等の、ヘテロ原子として酸素、窒素、又は硫黄を少なくとも1つ環に有する、置換されてもよい5〜10員の複素環で置換された、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味し、置換基の置換位置及び結合手の位置は何れでも良い。このような置換されてもよい複素環アルキル基としては具体的には2−ピリジルメチル基、4−ピリジルメチル基、2−フルオロピリジルメチル基、2,4-ジフルオロピリジルメチル基、4-クロロピリジルメチル基、2-ブロモピリジルメチル基、2-ヨードピリジルメチル基、2-メチルピリジルメチル基、4-メチルピリジルメチル基、2−ヒドロキシピリジルメチル基、2−メトキシピリジルメチル基、2−カルバモイルピリジルメチル基、4−メチルカルバモイルピリジルメチル基、3−ピリダジルメチル基、2−ピリミジルメチル基、2−ピラジニル基、2−(1,3,5−トリアジニル)メチル基、α―ピラン−2−イル−メチル基、チアン−2−イル−メチル基、1,4−ジチアン−2−イル−メチル基、2−フリルメチル基、ジオキソフラン−2−イル−メチル基、2−チエニルメチル基、オキサゾール−2−イル−メチル基、イソオキサゾール−3−イル−メチル基、チアゾール−2−イル−メチル基、イソチアゾール−3−イル−メチル基、ベンゾフラン−2−イル−メチル基、クマラン−2−イル−メチル基、ベンゾチオフェン−2−イル−メチル基、ベンゾチオフェン−3−イル−メチル基、ベンゾチオフェン−4−イル−メチル基、ベンゾチオフェン−5−イル−メチル基、ベンゾチオフェン−6−イル−メチル基、ベンゾチオフェン−7−イル−メチル基、インドリン−1−イル−メチル基、ベンズオキサゾール−2−イル−メチル基、ベンゾチアゾール−2−イル−メチル基、4−フルオロベンゾチアゾール−2−イル−メチル基、5−フルオロベンゾチアゾール−2−イル−メチル基、6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル−メチル基、7−フルオロベンゾチアゾール−2−イル−メチル基、ベンゾチアゾール−4−イル−メチル基、ベンゾチアゾール−5−イル−メチル基、ベンゾチアゾール−6−イル−メチル基、ベンゾチアゾール−7−イル−メチル基、2H−クロメン−2−イル−メチル基、4H−クロメン−2−イル−メチル基、キノリン−2−イル−メチル基、キナゾリン−2−イル−メチル基、キノキサリン−2−イル−メチル基、1−(2―ピリジル)エチル基、1−(2-フルオロピリジル)エチル基、1−(2,4-ジフルオロピリジル)エチル基、1−(2-クロロピリジル)エチル基、1−(2-ブロモピリジル)エチル基、1−(2-ヨードピリジル)エチル基、1−(2-メチルピリジル)エチル基、1−(2-エチルピリジル)エチル基、1−(2,4-ジエチルピリジル)エチル基、1−(2−ヒドロキシピリジル)エチル基、1−(3−ヒドロキシピリジル)エチル基、1−(2−メトキシピリジル)エチル基、1−(4−エトキシカルボニルピリジル)エチル基、1−(2−カルバモイルピリジル)エチル基、1−(2−メチルカルバモイルピリジル)エチル基、1−(3−ピリダジル)エチル基、1−(2−ピリミジル)エチル基、1−(4−ピリミジル)エチル基、1−(2−ピラジニル)エチル基、1−(2−(1,3,5−トリアジニル))エチル基、1−(α―ピラン−2−イル)エチル基、1−(β―ピラン−2−イル)エチル基、1−(β―ピラン−3−イル)エチル基、1−(β―ピラン−4−イル)エチル基、1−(ジオキサン−2−イル)エチル基、1−(チアン−2−イル)エチル基、1−(1,4−ジチアン−2−イル)エチル基、1−(2−フリル)エチル基、1−(オキソラン−2−イル)エチル基、1−(ジオキソフラン−2−イル)エチル基、1−(2−チエニル)エチル基、1−(オキサゾール−2−イル)エチル基、1−(イソオキサゾール−3−イル)エチル基、1−(チアゾール−2−イル)エチル基、1−(イソチアゾール−3−イル)エチル基、1−(ベンゾフラン−2−イル)エチル基、1−(クマラン−2−イル)エチル基、1−(ベンゾチオフェン−2−イル)エチル基、1−(インドリジン−1−イル)エチル基、1−(ベンズオキサゾール−2−イル)エチル基、1−(ベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、1−(4−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、1−(5−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、1−(7−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、1−(ベンゾチアゾール−4−イル)エチル基、1−(ベンゾチアゾール−5−イル)エチル基、1−(ベンゾチアゾール−6−イル)エチル基、1−(ベンゾチアゾール−7−イル)エチル基、1−(2H−クロメン−2−イル)エチル基,1−(4H−クロメン−2−イル)エチル基、1−(キノリン−2−イル)エチル基、1−(キナゾリン−2−イル)エチル基、1−(キノキサリン−2−イル)エチル基、2−(2―ピリジル)エチル基、2−(2-フルオロピリジル)エチル基、2−(2,4-ジフルオロピリジル)エチル基、2−(2-クロロピリジル)エチル基、2−(2-ブロモピリジル)エチル基、2−(2-ヨードピリジル)エチル基、2−(2-メチルピリジル)エチル基、2−(4-エチルピリジル)エチル基、2−(2−ヒドロキシピリジル)エチル基、2−(2−メトキシピリジル)エチル基、2−(2−エトキシカルボニルピリジル)エチル基、2−(2−カルバモイルピリジル)エチル基、2−(2−メチルカルバモイルピリジル)エチル基、2−(3−ピリダジル)エチル基、2−(4−ピリダジル)エチル基、2−(4−ピリミジル)エチル基、2−(2−ピラジニル)エチル基、2−(2−(1,3,5−トリアジニル))エチル基、2−(α―ピラン−2−イル)エチル基、2−(β―ピラン−2−イル)エチル基、2−(β―ピラン−3−イル)エチル基、2−(β―ピラン−4−イル)エチル基、2−(チアン−2−イル)エチル基、2−(1,4−ジチアン−2−イル)エチル基、2−(2−フリル)エチル基、2−(オキソラン−2−イル)エチル基、2−(ジオキソラン−2−イル)エチル基、2−(2−チエニル)エチル基、2−(オキサゾール−2−イル)エチル基、2−(イソオキサゾール−3−イル)エチル基、2−(チアゾール−2−イル)エチル基、2−(イソチアゾール−3−イル)エチル基、2−(ベンゾフラン−2−イル)エチル基、2−(クマラン−2−イル)エチル基、2−(ベンゾチオフェン−2−イル)エチル基、2−(インドリジン−1−イル)エチル基、2−(ベンズオキサゾール−2−イル)エチル基、2−(ベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、2−(4−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、2−(5−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、2−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、2−(7−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチル基、2−(ベンゾチアゾール−4−イル)エチル基、2−(ベンゾチアゾール−5−イル)エチル基、2−(ベンゾチアゾール−6−イル)エチル基、2−(ベンゾチアゾール−7−イル)エチル基、2−(2H−クロメン−2−イル)エチル基、2−(4H−クロメン−2−イル)エチル基、2−(キノリン−2−イル)エチル基、2−(キナゾリン−2−イル)エチル基、2−(キノキサリン−2−イル)エチル基等を例示することができる。
【0054】
続いて、本発明方法について説明する。
【0055】
まず、一般式(1)で表されるアミノ酸と一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルとの反応について説明する。
【0056】
当反応は、一般式(1)で表されるアミノ酸をそのアルカリ金属塩として水に溶解しておき、この水存在下で、一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルを反応させて、一般式(1)で表されるアミノ酸のアミノ基をアミドとする反応である。
【0057】
当反応において原料として用いる一般式(1)で表されるアミノ酸としては、一般式(1)で表されるものであればいかなる化合物でも使用でき、それが一個以上の不斉炭素を有している場合には、個々の純粋な光学異性体であっても、各光学異性体の任意の割合での混合物(例えばラセミ体)でも、ジアステレオマー混合物でも使用可能であり、当反応においては、反応終了後もその立体は保持されている。このような一般式(1)で表されるアミノ酸としては、具体的には例えばグリシン、アラニン、β―アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、γ−アミノ酪酸、アントラニル酸、p−アミノ安息香酸等を例示することができる。尚、一般式(1)で表されるアミノ酸は公知であるか、又は例えば「日本化学会編 第4版 実験化学講座 第22巻 有機合成IV 酸・アミノ酸・ペプチド、193〜309頁」記載の方法で製造することができる。
【0058】
当反応において用いる一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルとしては、一般式(2)で表されるものであればいかなる化合物でも使用できる。このような一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルとしては、具体的にはクロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸ノルマルプロピル、クロロ炭酸イソプロピル、クロロ炭酸ノルマルブチル、クロロ炭酸イソブチル、クロロ炭酸ノルマルペンチル、クロロ炭酸イソペンチル、クロロ炭酸ネオペンチル、クロロ炭酸シクロヘキシル等のクロロ炭酸エステル類を例示することができる。尚、一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルは公知であるか、又は例えば「Lasurewskii;Forostjam et al,29<1959>3498;engl.Ausg.等」記載の方法で製造することができる。
【0059】
当反応における一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルの使用量は、一般式(1)で表されるアミノ酸1モルに対して0.8モル〜10モル、好ましくは1.0モル〜3.0モルであり、反応溶媒として水を用い、その使用量は一般式(1)で表されるアミノ酸1モルに対して0.01l〜10l、好ましくは0.1l〜5lである。
【0060】
実際に当反応では、予め、水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いて、一般式(1)で表されるアミノ酸をアルカリ金属塩の水溶液としておくのであり、具体的には、アルカリ金属水酸化物の水溶液に一般式(1)で表されるアミノ酸を加えて溶解すればよい。この際に用いられるアルカリ金属水酸化物の水溶液は、アルカリとして一般式(1)で表されるアミノ酸1モルに対して1モル〜10モル、好ましくは2モル〜3モルとなるように加える。
【0061】
当反応では、一般式(1)で表されるアミノ酸のアルカリ金属塩水溶液に、一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルを加えるが、ハロゲン化炭酸エステルの分解を抑制するために、−20℃〜80℃、好ましくは0℃〜50℃の範囲で、一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルを滴下することが好ましい。
【0062】
一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルの滴下を終了した後の反応は、反応温度は−20℃〜80℃、好ましくは0℃〜50℃で、反応時間10時間以内、好ましくは2時間以内で行うようにすればよい。
【0063】
次に、以上のようにして製造した一般式(3)で表されるアミド化合物と、一般式(4)で表されるハロゲン化炭酸エステルとの反応による、一般式(5)で表される混合酸無水物の製造について説明する。
【0064】
当反応は、水又は、水と有機溶媒からなる反応系で、一般式(3)で表されるアミド化合物と一般式(4)で表されるハロゲン化炭酸エステルとを反応させることにより一般式(5)で表される混合酸無水物を製造する反応である。
【0065】
当反応で原料となる一般式(3)で表されるアミド化合物は、前の反応(一般式(1)で表されるアミノ酸と一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルとの反応)で得られたものを単離することなく、同一反応容器内でそのまま使用することができる。
【0066】
当反応において用いる一般式(4)で表されるハロゲン化炭酸エステルとしては、一般式(4)で表されるものであればいかなる化合物でも使用できる。このような一般式(4)で表されるハロゲン化炭酸エステルとしては、具体的にはクロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸ノルマルプロピル、クロロ炭酸イソプロピル、クロロ炭酸ノルマルブチル、クロロ炭酸イソブチル、クロロ炭酸ノルマルペンチル、クロロ炭酸イソペンチル、クロロ炭酸ネオペンチル、クロロ炭酸シクロヘキシル等のクロロ炭酸エステル類;ブロモ炭酸メチル、ブロモ炭酸エチル、ブロモ炭酸ノルマルプロピル、ブロモ炭酸イソプロピル、ブロモ炭酸ノルマルブチル、ブロモ炭酸イソブチル、ブロモ炭酸ノルマルペンチル、ブロモ炭酸イソペンチル、ブロモ炭酸ネオペンチル、ブロモ炭酸シクロヘキシル等のブロモ炭酸エステル類等を例示することができる。その使用量は一般式(1)で表される原料のアミノ酸1モルに対して、0.5モル〜10モル、好ましくは0.8モル〜2.0モルの範囲であればよい。
【0067】
当反応の実施に際しては、一般式(3)で表されるアミド化合物を含むアルカリ金属塩の水溶液を、必要に応じて塩酸、硫酸等の酸で中和した後、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;メチルイソブチルケトン等のケトン類;アセトニトリル等のニトリル類;スルホラン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒等の、水と混和する、あるいは水と混和しない有機溶媒を反応系に添加して行うこともできる。有機溶媒を使用する場合の該有機溶媒の使用量は、一般式(1)で表されるアミノ酸1モルに対して0.05l〜10l、好ましくは0.1l〜5lの範囲であればよい。
【0068】
当反応では一般式(3)で表されるアミド化合物を含む反応系に、一般式(4)で表されるハロゲン化炭酸エステルを加えるが、ハロゲン化炭酸エステルの分解を抑制するために、−20℃〜100℃、好ましくは−5℃〜30℃の範囲で、一般式(4)で表されるハロゲン化炭酸エステルを滴下するのが好ましい。
【0069】
一般式(4)で表されるハロゲン化炭酸エステルの滴下を終了した後の反応は、反応温度は−20℃〜100℃、好ましくは−5℃〜30℃で、反応時間は10時間以内、好ましくは3時間以内で行うようにすればよい。
【0070】
当反応においては、上記の如く第三級アミンなしの系で反応は進行するが、反応をより円滑に進行せしめるためには、触媒として第三級アミンを用いることが好ましい。使用できる第三級アミンとしては、具体的にはジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン等を例示でき、ジメチルベンジルアミンが好ましいものとして挙げられる。その使用量は、一般式(1)で表されるアミノ酸1モルに対して、0.001モル〜5モル、好ましくは0.05モル〜2モルの範囲であればよい。
【0071】
続いて、以上のようにして製造した一般式(5)で表される混合酸無水物と、一般式(6)で表されるアミン化合物との反応による、一般式(7)で表されるアミド酸エステルの製造について説明する。
【0072】
当反応は、水又は、水及び有機溶媒からなる系で、一般式(5)で表される混合酸無水物と一般式(6)で表されるアミン化合物とを反応させることにより、本発明方法の目的とする一般式(7)で表されるアミド酸エステルを製造する反応である。
【0073】
当反応で原料となる一般式(5)で表される混合酸無水物は、前の反応(一般式(3)で表されるアミド化合物と、一般式(4)で表されるハロゲン化炭酸エステルとの反応)で得られたものを単離することなく、同一反応容器内でそのまま使用することができる。
【0074】
また、前記反応において水と混和しない有機溶媒を用いた場合には、原料1モル当たりの反応缶の大きさを小さくする等の目的で、水層を分液し系外に除くことも可能であり、この場合、当反応は有機溶媒中で進行することになる。
【0075】
当反応において用いる一般式(6)で表されるアミン化合物としては、一般式(6)で表されるものであればいかなる化合物でも使用でき、それが1以上の不斉炭素を有している場合には、個々の純粋な光学異性体であっても、各光学異性体の任意の割合での混合物(例えばラセミ体)でも、ジアステレオマー混合物でも使用可能である。また、その酸付加塩も使用できる。このような一般式(6)で表されるアミン化合物あるいはその酸付加塩としては、具体的には(R)−1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチルアミン、(S)−1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチルアミン、(チオフェン−2−イル)メチルアミン、(R,S)−1−(4−メチルフラン−3−イル)エチルアミン、(R,S)−1−(5−メトキシイソベンゾフラン−6−イル)プロピルアミン、(R,S)−1−(4−クロロピリジン−2−イル)エチルアミン、(R,S)−1−ピラジニルエチルアミン、(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)メチルアミン、(R,S)−1−(2H−ピロール−3−イル)エチルアミン、ピラジニルメチルアミン、(インドール−1−イル)メチルアミン、(キノリジン−2−イル)メチルアミン、2−メトキシカルボニルベンジルアミン、4−エトキシカルバモイルベンジルアミン、4−カルバモイルベンジルアミン、あるいは、これら一般式(6)で表されるアミン化合物の塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素ナトリウム塩、リン酸塩、リン酸二水素ナトリウム塩、炭酸塩、炭酸水素ナトリウム塩等の無機酸塩;又は酢酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、p−クロロベンゼンスルホン酸塩等の有機酸塩を例示することができる。その使用量は、一般式(1)で表されるアミノ酸1モルに対して、0.5モル〜10モル、好ましくは0.5モル〜2モルの範囲であればよい。
【0076】
尚、例えば、前記(R)−1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチルアミンは、対応する2−アミノチオフェノール誘導体アルカリ金属塩を酸中に添加し、pHを6以下とした後、対応するアミノ酸−N−カルボキシ無水物と反応させることにより製造できる(特願2000−100466号参照)。
【0077】
当反応において、一般式(6)で表されるアミン化合物の酸付加塩を用いる場合には、アルカリを用いて反応系内で遊離の一般式(6)で表されるアミン化合物となるようにする。この目的で用いられるアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を例示することができる。このアルカリは1%〜100%、好ましくは10%〜50%の水溶液として反応系内に加えることもでき、その使用量は、一般式(6)で表されるアミン化合物の酸付加塩1モルに対してアルカリとして1モル以上、好ましくは1モル加える。
【0078】
当反応は、水又は水及び有機溶媒からなる系で、あるいは前記反応において水と混和しない有機溶媒を用い、前反応終了後、水層を分液し系外に除去した場合には有機溶媒からなる系で、一般式(5)で表される混合酸無水物を含む系に、一般式(6)で表されるアミン化合物を加えて攪拌し反応させればよく、反応温度は−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃で、反応時間は10時間以内、好ましくは0.5時間〜5時間で行うようにすればよい。
【0079】
当反応終了後は、本発明方法の目的物たる一般式(7)で表されるアミド酸エステルは有機相に溶解しているので、常法により反応終了後の反応液を分液して有機相を分取し、分取した有機相を必要に応じて水洗、乾燥した後、有機溶媒を留去することにより目的物を取り出すことができるし、又、反応終了後の反応液を分液することなく有機溶媒を留去することにより目的物を水に懸濁した状態としたのち、濾過することによって目的物を取り出すこともできる。
【0080】
【発明の効果】
本発明方法により、農薬の製造中間体として有用なアミド酸エステルを、安価、簡便且つ工業的に製造する方法が提供される。本発明方法は、水存在下でも進行し、必要に応じ1ポット(同一反応容器内)で実施することができる。
【0081】
しかも原料として用いた試剤(上記一般式(1)で表されるアミノ酸や上記一般式(6)で表されるアミン化合物等)が光学活性体である場合には、その光学純度の低下を殆ど起こすことなく原料に用いた試剤の光学純度を維持したまま、光学活性なアミド酸エステルをも合成できるなど、光学活性な農薬の製造中間体の製造にも適用できる点で、工業的価値が非常に高い。
【0082】
【実施例】
以下、参考例及び実施例により本発明方法をより具体的に説明する。
【0083】
参考例
300mlの反応フラスコに水40ml、36%塩酸30g(0.296モル)を入れて3℃に冷却した。これに、攪拌しながら2−アミノ−5−フルオロチオフェノールカリウム金属塩水溶液48.0g(0.056モル)を、2〜5℃で滴下し、1時間攪拌した。pHは5.23であった。これに、p−トルエンスルホン酸一水和物9.7g(0.051モル)、テトラヒドロフラン15mlを入れて30分攪拌し、D−アラニン−N−カルボキシ無水物8.1g(純度78.3%、0.055モル)を0℃で投入した。15〜20℃で18時間熟成した後、結晶を濾集し、これを60℃で乾燥し、純度93.5%の[2−(6−フルオロベンゾチアゾリル)]エチルアミン・4−メチルベンゼンスルホン酸塩を16.6g得た(収率82.8%、2−アミノ−5−フルオロチオフェノールカリウム金属塩基準)。
【0084】
実施例1
300mlの反応フラスコに23%水酸化ナトリウム16.1g(0.092mol)、水10ml、L−バリン4.7g(0.04mol)を入れ、室温で30分間攪拌した。次に、クロロ炭酸イソプロピル5.9g(0.048mol)を室温で滴下し、1時間攪拌した。濃塩酸で中和後、トルエン100ml、N,N−ジメチルアミノベンジルアミン0.06g(0.0004mol)を加え、クロロ炭酸イソプロピル4.7g(0.038mol)を室温で滴下し、1時間攪拌した。次に、上記参考例に従って製造した(R)−1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチルアミン・4−メチルベンゼンスルホン酸塩14.0g(0.038mol)(純度97.4%、光学純度99.2%ee)を加え、10%水酸化ナトリウム15.2g(0.038mol)を室温で滴下した。2時間攪拌後、水50mlを加え70℃に加温後、分液し、トルエン層を温水50mlで洗浄、溶媒を濃縮除去し、イソプロピル[(S)−1−[(R)−1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチルカルバモイル]−2−メチルプロピル]カーバメイトを、13.0g(純度97.2%、ジアステレオマー4化合物の内、目的物質の生成割合99.2%)得た(収率89.7%)。
【0085】
実施例2
300mlの反応フラスコに23%水酸化ナトリウム16.1g(0.092mol)、水10ml、L−バリン4.7g(0.04mol)を入れ、室温で30分間攪拌した。次に、クロロ炭酸イソプロピル5.9g(0.048mol)を室温で滴下し、1時間攪拌した。濃塩酸で中和後、トルエン50ml、N,N−ジメチルアミノベンジルアミン0.06g(0.0004mol)を加え、クロロ炭酸イソプロピル4.7g(0.038mol)を室温で滴下し、1時間攪拌した。次に、上記参考例に従って製造した(R)−1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチルアミン7.5g(0.038mol)(純度98.3%、光学純度99.0%ee)をトルエン50mlに溶解した溶液を滴下し、室温で2時間攪拌した。水50mlを加え70℃に加温後、分液し、トルエン層を温水50mlで洗浄、溶媒を濃縮除去し、イソプロピル[(S)−1−[(R)−1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチルカルバモイル]−2−メチルプロピル]カーバメイトを、13.4g(純度96.3%、ジアステレオマー4化合物の内、目的物質の生成割合98.5%)得た。(収率92.4%)
Claims (6)
- 一般式(1)
- 全工程を1ポット(同一反応器内)で行うものである、請求項1に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
- 一般式(1)で表されるアミノ酸がバリンであり、一般式(2)で表されるハロゲン化炭酸エステルがクロロ炭酸イソプルピルである、請求項1に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
- 全工程を1ポット(同一反応器内)で行うものである、請求項3に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
- 一般式(1)で表されるアミノ酸が光学活性なバリンであり、一般式(6)で表されるアミンが、光学活性な1−(6−フルオロベンゾチアゾール−2−イル)エチルアミンである、請求項1に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
- 全工程を1ポット(同一反応器内)で行うものである、請求項5に記載のアミド酸エステルを製造する方法。
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