図4に本発明のCL−LCDの模式的断面図を示す。ガラス基板1A、1B、電極2A、2B、高分子薄膜3A、3B、液晶組成物4、および裏面側に黒色の光吸収体5が配置され、FC状態とPL状態を安定に表示するCL−LCDである。
高分子薄膜3A、3Bの代わりにシリカなどの無機薄膜を形成してもよい。しかし、CL−LCに接する薄膜の表面をラビング処理すると、薄膜の種類によってはCL−LCのFC状態の安定性が失われてしまうことがある。よって、ラビング無しの薄膜を設けるか、または、電極と液晶組成物が直接接するように設ける。
電極間間隙はスペーサー等で保持し、2〜15μmが好ましい。さらには、3〜6μmが好ましい。電極間隙が小さすぎると表示のコントラスト比が低下し、大きすぎると駆動電圧が上昇するからである。
表示の態様は、セグメント表示などの非フルドットマトリックス表示でも、ドットマトリックス表示でもよい。基板は、ガラス基板でも樹脂基板でもよく、また、ガラス基板と樹脂基板の組み合わせでもよい。反射表示素子として用いる場合には、どちらか一方の基板の内面または外面に光吸収体を設置するか、または、基板として光吸収機能を有するものを用いてもよい。
電極面内に微量のスペーサーを散布し、対向させた基板の四辺を注入孔を除いてエポキシ樹脂等のシール材で封止し、真空注入によって液晶組成物をセルに満たす。
そして、CL−LCDについて、印加電圧と電圧消去後の光学特性を調べるために、液晶パネルに電圧パルスを印加し、次いで消去して、表示状態を確認する実験を繰り返した。電圧処理を行う前の状態として、PL状態とFC状態のそれぞれを用いた。図5、図6および図7は、実験結果の概略を示す説明図である。図5には、13.2msの電圧パルスを印加し、電圧消去してから10秒後の反射率を測定した場合の電圧振幅と反射率との関係の一例を示した。図5において、菱形(◆)は初期状態がPL状態であった場合を示し、四角形(■)は初期状態がFC状態であった場合を示す。図6および図7には、電圧パルスの幅をより短くした場合の実験結果を示す。
実験結果から、反射率が高い安定状態であるPL状態にするには、その前の状態によらず、35V以上の振幅をもつ電圧を印加することよって実現できることがわかる。言い換えると、電圧印加時に充分に垂直配向するようなパルス電圧処理を行えば、電圧を消去することによってPL状態に変化させ得ることを意味している。また、反射率が低い安定状態であるFC状態は、23Vの振幅をもつ電圧を印加する処理によって形成できる。
つまり、実験に用いたCL−LCでは、初期状態がいずれの状態であっても、CL−LCDに35V以上の振幅をもつ電圧を13.2ms印加すれば、CL−LCDをPL状態にすることができる。また、反射率が低い安定状態であるFC状態は、23Vの振幅をもつ電圧を印加する処理によって形成できる。これは、従来技術では困難であった短時間でのリセットを可能にさせるものである。
なお、図5〜図7に示すような実験結果から求められる条件にしたがって、HO状態に対応する電圧処理を施し、連続してFC状態に対応する電圧処理を実施した場合に、最初の電圧処理時には垂直配向状態を取るが、次の電圧処理を施した後は、必ずしも所定のFC状態にならないことがある。
そこで、この実施の形態では、第1の段階である比較的高い電圧を印加する処理を施した後、電圧を印加しない状態すなわち電位差0Vの状態である第2の段階を設ける。その後、FC状態に対応する電圧処理(第3の段階)を実施して、個々の表示データに応じた書き込みを行う。電圧を印加しない状態すなわち電位差0Vの状態の期間(第2段階の期間)は、HO状態からHG状態またはHG状態とPL状態の混在状態になるまでの時間である。ここで、電位差0Vとは、実効的にゼロとして作用し得る、電圧値の小さい電圧パルスであってもよい。
以上のような電圧処理において、最初の電圧処理によって、それ以前に書き込まれた状態が完全に消去される。すなわち、CL−LCDは、コレステリック液晶の配向が電圧印加方向にほぼ平行(完全な平行も含む概念)になる垂直配向状態になる。そして、最初の電圧処理における電位差0Vの期間でCL−LCDの配向状態は、HG状態またはHG状態とPL状態の混在状態に変化する。また、次の電圧処理によって、FC状態またはFC状態とPL状態の混在状態に書き込まれる。
また、FC状態への書き込みに対応する次の電圧処理(第3の段階)において印加時間を短くしていくと、FC状態とPL状態の混在状態が得られる。その後、個々の表示データの書き込みによって、オン時には、混在状態からPL状態における表示が得られ、オフ時には、混在状態から完全なFC状態が得られる。したがって、その場合にも、高速で高コントラスト比の表示を実現できる。
すなわち、第3の段階において、CL−LCDの状態を充分にFC状態、すなわち選択反射の残留がほとんどない配向状態にせしめる、電圧振幅を印加しなくてもよい。つまり、CL−LCDをPL状態とFC状態の混在状態にするような振幅の電圧を印加してもよい。言い換えれば、選択反射の残留がほとんどないFC状態にする場合に比べて、より低い電圧を印加したり、電圧印加期間を短くすることができる。
以上、説明した第1〜第3の段階に続く線順次駆動期間において、選択時にオフ表示するとき、すなわち、FC状態にするときの印加電圧が与えられた後、選択反射の残留がほとんどないFC状態とすることができれば、コントラスト比のよい表示を得ることができる。
(実施の形態1)以下、本発明の実施の形態1について図8を参照して説明する。この駆動回路において、コントローラ11から制御信号としてフレーム信号(FR)、行切替を行うラッチパルス信号(LP)、交流化信号または出力反転信号(M)および、非表示信号である/DOFF信号(/DOFF)が行ドライバ12に入力される。列ドライバ13には、コントローラ11から制御信号としてLP信号、クロックパルス信号(CP)、M信号および/DOFF信号と表示データとが入力される。
行ドライバ12は、FR信号がハイレベルになると先頭行を選択する。LP信号は選択行を1行ずつシフトすることを示す信号に相当する。M信号は、交流化のための信号である。CP信号は、コントローラ11から表示データを列ドライバ13に転送するためのクロックとして用いられる。/DOFF信号がローレベルになると、行ドライバ12および列ドライバ13は、CL−LCD100に印加する電圧レベルをそれぞれ所定のレベル(消去時のレベルV0)にする。/DOFF信号がハイレベルになっているときは通常書き込みの状態である。
(例1−1)ストライプ状の透明電極を有するガラス基板の液晶層と接する面にスピナーコーティングによってポリイミド薄膜を形成した。その後、上下基板面に直径4μmの樹脂性のスペーサーを散布した。注入孔を除く四辺に、幅約0.4mmで印刷したエポキシ樹脂を介してストライプ状電極が交差するように、ガラス基板を重ね合わせて、空セルを形成した。
Tc=87℃、Δn=0.231、Δε=16.5、粘度η=32mPa・s、比抵抗2×1011Ω・cmのネマチック液晶84.7部、化学式1に示すカイラル剤5.1部、化学式2に示すカイラル剤5.1部、化学式3に示すカイラル剤5.1部、とを溶解混合し、ヘリカルピッチ約0.34μmのカイラルネマチック液晶(以下、液晶Aという。)を調整した。
空セルに液晶Aを真空注入法で注入し、注入孔を紫外線硬化材で封止して液晶パネルを作製した。電極数は、行電極240ライン、列電極320ラインであり、解像度は約100dpiである。この液晶パネルの片方の基板を艶消し用の黒色塗料をスプレーすることで均一に塗装した。
次に、この液晶パネルの行と列各1本ずつの電極を選び、その交点に40Vの電圧を20msec間印加したところ、印加後に黒塗装していない基板側から見ると交点部分は緑色の反射色を呈した。次に、20Vの電圧を20ms印加したところ、印加後に黒塗装していない基板側から見ると交点部分がほぼ黒色を呈した。
液晶パネル10の全画面を初期化するために、表示シーケンスの開始時に、パネル全体に40Vの電圧を13.2ms間印加した。それに続いて、液晶パネル10に印加される電圧が0になる無印加時間を1ms設けた。その後、FC状態にするための電圧条件として23Vの電圧を3.3ms間全画素に印加した。そして、線順次駆動を実施した。
具体的な駆動手順について図9(A)のタイミング図を用いて説明する。例えば、行ドライバ12が全行電極にVrを印加し、列ドライバ13が全列電極にVcを印加する状態にする。たとえば、Vrは35V、Vcは−5Vである。すると、液晶パネル10の全画素に40Vの電圧が印加される。図9(A)において、40Vの電圧が印加される期間がリセット部として示されている。また、リセット部は第1の期間に相当する。
その後、印加電圧が0Vになる無印加状態を1ms続けた後、23Vの電圧が3.3msec間全画素に印加されるようにする。具体的には、行ドライバ12および列ドライバ13によってVr−Vcの電圧を印加する。図9(A)において、それらの期間が無印加部およびフォーカルコニック部として示されている。無印加部は第2の期間に相当し、フォーカルコニック部は第3の期間に相当する。
続いて、表示データの書き込みすなわち線順次駆動が始まる。線順次駆動では、選択行が順番に入れ替わり、それに同期して列電極に表示データに応じた列電圧が出力される。駆動電圧波形は適当な周期で極性反転され交流化される。線順次駆動期間において、選択時にはオン表示(PL状態)ではVr+Vcの電圧が印加され、オフ表示(FC状態)ではVr−Vcの電圧振幅が印加される。
この例では、Vrを35V、Vcを5Vとした。また1回あたり行電極が選択される期間を3.3msとした。図9(A)において、線順次駆動期間はアドレッシング部として示されている。フォーカルコニック部とアドレッシング部との間には無印加部を設けても設けなくてもよく、図9(A)には、無印加部を設けた場合が例示されている。
表示データを書き込む前の一連の電圧処理によって、CL−LCD100が若干の残留反射が残るFC状態になったことが確かめられた。また、引き続き線順次駆動によって表示書き込みを行うことによって、以上の条件でテストパターンを表示したところ、残像もなく、高コントラスト比の表示が得られた。
(例1−2)例1−1の駆動条件のうち、CL−LCD100の全体に40Vの電圧を13.2ms間印加し、それに続いて、印加電圧が0Vである無印加時間を1ms設けた。次の電圧処理期間すなわちフォーカルコニック部において印加電圧を24Vとして2.0ms間印加し、線順次駆動を開始しテストパターンを表示するようにした。
すると、線順次駆動が開始される前の配向状態が、FC状態とPL状態の混在状態であるにも関わらず、線順次駆動による表示状態は、残像もなく、例1−1よりやや劣るがコントラストの高い表示状態であった。また、表示シーケンスに要する時間を例1−1に比べて短縮できた。
以上のように、以前に書込まれた表示状態を完全に消去するには全画素を一旦垂直配向にする必要がある。そのために、例えば40Vの電圧をCL−LCD100の全画素に所定期間(図9(A)におけるリセット部)印加する。ただし、実用上は、印加電圧を低減するために印加時間をより長く設定することもあり得る。
本例の結果から、第3の段階であるフォーカルコニック部を短縮しても、コントラスト比が比較的高い表示状態が得られることがわかる。フォーカルコニック部を短縮すると、線順次駆動が開始される前の配向状態がPL状態の選択反射が残留する不充分なFC状態、すなわち、FC状態とPL状態の混在状態になっている。しかし、線順次駆動時にオフ表示としてFC状態が書き込まれるので、比較的高いコントラスト比が得られる。
したがって、HO状態にするための電圧条件をV1(リセット部の電圧値)およびτ1(リセット部の期間)、FC状態に書き込むための電圧条件をV3(フォーカルコニック部の電圧値)およびτ3(フォーカルコニック部の期間)とすると、V1>V3かつτ1>τ3であってもよい。
(比較例1−1)例1−1の駆動条件において、無印加部の時間を0〜0.3msの間で変化させたところ、線順次駆動の駆動条件をどのように変えても、例1−1と同様のコントラスト比の表示を得ることができなかった。
(比較例1−2)τ2がτHの40倍である20msの場合、リセット時にちらつきが発生した。また、初期化(リセット)の所要時間が相対的に長くなる。この程度の所要時間は1表示シーケンスの構成に大きな影響を与えることになる。
(例1−3)例1−1の駆動条件において、線順次駆動による表示データの書き込み時に、選択期間に対して列電極の印加時間を均等に10分割し、分割された各期間に階調データに応じたオンとオフに相当する電圧を列電極に印加した。そして、そのような電圧印加方法によってテストパターンを表示したところ、表示データに応じた均一な階調表示が得られた。
(比較例1−3)例1−1の駆動条件において、列電極の印加電圧をオンのときにVc、オフのときに−Vcとし、階調データに応じてn・Vc(−1<n<1)の電圧値を列電極に印加した。電圧値を変えることによって10階調表示を行った。様々なテストパターンを表示させたところ、列電極に平行な表示むらが発生し不均一な階調表示になった。
したがって、中間調表示を行う場合、パルス幅変調を使用すれば良好な階調表示を得ることができるが、振幅変調を使用した場合には良好な階調表示を得ることができないことがわかった。
次に、CL−LCDを駆動する駆動回路について説明する。単純マトリックス型STN液晶表示素子の基本的な駆動方式である線順次選択法(例えば、APT:Alto Pleshko Techniqueやそれを改良したIAPT:Improved APT)を実現する駆動ドライバが専用ICとして広く用いられている。
単純マトリックス型STN液晶表示素子を駆動するためのIAPT駆動ドライバは、一つの行電極ずつにしか選択電圧を印加できない。したがって、それを用いてCL−LCDの全面の初期状態をFC状態に揃えるには、HO状態への遷移に少なくとも1フレーム期間がかかる。さらに、FC状態への遷移に少なくとも1フレーム期間がかかる。ただし、HO状態への遷移を1フレーム期間で行うには、アドレッシング時の1選択時間で行わなければならないので、オン電圧よりも高い電圧を印加する必要が生ずる。
それを実現するには高耐圧のドライバが必要となり、困難である。逆に、オン電圧と等しい印加電圧で十分な垂直配向を得ようとすると、1選択時間を長くしなければならず、初期化に要する時間が書き込み時間よりも長くなる。
すなわち、IAPT駆動ドライバをCL−LCDにそのまま適用しようとすると、上述した電圧印加処理(第1の段階〜第3の段階)を実現できず、初期化に要する時間が1画面を選択する時間の数倍程度になってしまう。すなわち、初期化を含めた1画面の書き換えに必要な時間が長くなってしまう。そこで、利用しやすいIAPT駆動ドライバを用いた本発明の駆動装置を提案する。
図10および図11は、IAPT駆動ドライバの機能を説明するための説明図である。図10に示すように、列ドライバ(COL−DRV)と行ドライバ(ROW−DRV)はそれぞれ4レベルの液晶駆動電圧を必要とするが、システム全体では6レベルの電圧が必要になる。ここで、Vrは選択時に行電極に印加される電圧であり、Vcは行電極に印加されるオン電圧とオフ電圧の差の1/2である。
図11に示すように、出力電圧はレベル信号である極性反転信号(M信号)と非表示指示信号(/DOFF信号)に応じて、行ドライバおよび列ドライバでそれぞれ決定される。ただし、/DOFF信号がローレベルである場合には行ドライバおよび列ドライバの全出力は、他の入力信号に関わらずV0レベルを出力する。
図12は、駆動装置の実施の形態1−Aを示すブロック図である。この場合、図8に示す一般的な駆動回路に対して、信号変換回路14がさらに設けられている。信号変換回路14は、コントローラ11と行ドライバ12および列ドライバ13との間に設置され、コントローラ11からの各信号にもとづいて、上述した第1段階(リセット部)、第2の段階(無印加部)および第3の段階(フォーカルコニック部)を作成するための信号を作成し、行ドライバ12および列ドライバ13に供給する。
なお、ここでは、信号変換回路14は信号制御回路11と独立したものとして説明を進めるが、それらは一体化されていてもよい。一体化されている場合には、信号のタイミングを最適化できるので、初期化に要する時間を短くすることができる。
また、M信号は信号変換回路14が作成した極性反転信号であり、DATAは信号変換回路14が作成した表示データである。DATAは、アドレッシング部では信号制御回路11が出力する表示データと同じになる。/DOFF1信号は信号変換回路14が作成し、列ドライバ13に供給される/DOFF信号であり、/DOFF2信号は信号変換回路14が作成し行ドライバ12に供給される/DOFF信号である。
メモリ性のCL−LCDは一度データが書き込まれると、その表示状態を保持するのでフレーム周期毎に書き込みを行う必要はないが、データの書き換えを必要とするタイミングを外部から指示する必要がある。そのための信号が図12に示すスタート信号(START)である。START信号はタイマによって生成した、ある一定期間毎に有効になる信号でもよいし、表示データの発生源であるMPUや外部スイッチからの表示書き換え指示信号であってもよい。図12には、MPUから出力される例が示されている。
図13は、実施の形態1−Aにおける信号変換回路14の構成例を示すブロック図である。図13に示す信号変換回路14において、0.5ライン検出回路21は、LP信号をトリガとして選択期間の1/2のタイミングを決定し、そのタイミングでレベルが反転するような信号を論理和回路22に出力する。ダウンカウンタ24は、FR信号が入力されたら、(N−1)をプリセットし、LP信号の入力に応じてカウント値を1減ずるカウンタである。ここで、Nは表示行数である。第1〜第5の比較器(以下、比較器という。)25,26,27,28,29は、それぞれ、ダウンカウンタ24のカウント値を所定値と比較する。
論理和回路22は、DOFF制御回路31からのマスク信号がローレベル状態であれば、0.5ライン検出回路21の出力信号をM信号として行ドライバ12および列ドライバ13に出力し、マスク信号がハイレベル状態であれば、ハイレベルのM信号を行ドライバ12および列ドライバ13に出力する。
また、セレクタ23は、選択信号の状態に応じて、DATA信号として、信号制御回路11からの表示データ、ハイレベルのデータまたはローレベルのデータのいずれかを列ドライバ13に出力する。
スタートフラグ回路30は、START信号をFR信号で同期化し、スタートフラグをセットする。スタートフラグがセットされたことはDOFF制御回路31に通知される。また、スタートフラグは、DOFF制御回路31の指示に応じてリセットされる。DOFF制御回路31は、スタートフラグがセットされている状態において機能する。そして、比較器25,26,27,28,29の出力の状況に応じて、列ドライバ13に/DOFF1信号を与えるとともに、行ドライバ12に/DOFF2信号を与える。また、論理和回路22に対してマスク信号を与え、セレクタ23に対して選択信号を与える。
次に、図14のタイミングチャートを参照して動作を説明する。比較器25,26,27,29は、リセット部(第1の段階)の時間長をA、無印加部(第2の段階)の時間長をB、フォーカルコニック部(第3の段階)の時間長をCに設定するために設けられている。各比較器25〜29は、LP信号をダウンカウントするダウンカウンタ24のカウント値を導入して、カウント値と所定値とを比較し、それらが一致したら一致信号を出力する。
なお、この実施の形態では、リセット部の時間長Aを設定するための第1の期間設定手段は、ダウンカウンタ24および比較器25,26で実現される。無印加部の時間長Bを設定するための第2の期間設定手段は、ダウンカウンタ24および比較器26,27で実現される。フォーカルコニック部の時間長Cを設定するための第3の期間設定手段は、ダウンカウンタ24および比較器27,29で実現される。第1〜第3の段階において所定電圧を印加する電圧印加手段は、論理和回路22、セレクタ23およびDOFF制御回路31で実現される。
比較器25の比較のための所定値は(A+B+C)であり、比較器26の比較のための所定値は(A+B)である。また、比較器27の比較のための所定値はBであり、比較器28の比較のための所定値は1である。そして、比較器29の比較のための所定値は0である。なお、A+B+C<N(Nは表示行数)である。
スタートフラグがセットされていない状態では、DOFF制御回路31は、全ての列電極および行電極が電位V0である無印加状態になるように、列ドライバ13および行ドライバ12に対する非表示指示信号(/DOFF1信号および/DOFF2信号)をローレベルに固定する。
よって、CL−LCD100は、信号制御回路11からの信号状態に関わらず、電圧無印加状態となる。また、M信号およびDATA信号をハイレベルを固定するために、論理和回路22へのマスク信号をハイレベルに固定し、セレクタ23への選択信号をハイレベル(”1”)が選択されるように設定する。START信号が入力された後、FR信号が入力されると、スタートフラグ回路30において、スタートフラグがセットされる。FR信号はフレーム周期毎に入力される。
FR信号が入力されるとダウンカウンタ24に(N−1)がプリセットされる。以後、ダウンカウンタ24は、行切替信号(LP信号)をトリガにしてダウンカウントする。比較器25は、ダウンカウンタ24のカウント値が(A+B+C)に一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。DOFF制御回路31は、/DOFF1信号および/DOFF2信号がともにローレベルである状態のときに比較器25からの一致信号を受け、さらに、LP信号が入力されると、列ドライバ13への/DOFF1信号をハイレベルに固定する。
この結果、図11に示す関係にもとづいて、全ての列電極の電圧レベルがV5(Vr+Vc)となる。また、全ての行電極の電圧レベルはV0であるから、全ての画素に対する液晶印加電圧はVr+Vcとなる。例えば、Vr=35V,Vc=5Vであれば、液晶印加電圧は40Vである。
比較器26は、ダウンカウンタ24のカウント値が(B+C)に一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。DOFF制御回路31は、/DOFF1信号がハイレベルで、かつ、/DOFF2信号がローレベルである状態のときに比較器26からの一致信号を受ける。さらに、LP信号が入力されると、列ドライバ13への/DOFF1信号をローレベルに固定する。この結果、図11に示す関係にもとづいて、CL−LCD100は電圧無印加状態になる。
また、このとき、DOFF制御回路31は、セレクタ23への選択信号をローレベル(”0”)が選択されるように設定する。
液晶印加電圧がVr+Vcに変化した時点から電圧無印加状態になるまでの期間は、ダウンカウンタ24のカウント値が「A」進む間の期間であり、図14に示すように、この期間がリセット部となる。
比較器27は、ダウンカウンタ24のカウント値がCに一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。DOFF制御回路31は、/DOFF1信号および/DOFF2信号がともにローレベルである状態のときに比較器27からの一致信号を受ける。
さらに、LP信号が入力されると、列ドライバ13への/DOFF1信号をハイレベルに固定する。この結果、図11に示す関係にもとづいて、全ての列電極の電圧レベルはV3(Vr−Vc)となる。また、全ての行電極の電圧レベルはV0であるから、全ての画素に対する液晶印加電圧はVr−Vcとなる。例えば、Vr=35V,Vc=5Vであれば、液晶印加電圧は30Vである。
液晶印加電圧が電圧無印加状態に変化した時点からVr−Vcになるまでの期間は、ダウンカウンタ24のカウント値が「B」進む間の期間であり、図14に示すように、この期間が無印加部となる。
比較器28は、ダウンカウンタ24のカウント値が1に一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。DOFF制御回路31は、/DOFF1信号がハイレベルで、かつ、/DOFF2信号がローレベルである状態のときに比較器28からの一致信号を受ける。さらに、LP信号が入力されると、セレクタ23への選択信号を、DATA信号として表示データを選択させるように変化させる。
比較器29は、ダウンカウンタ24のカウント値が0に一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。DOFF制御回路31は、/DOFF1信号がハイレベルで、かつ、/DOFF2信号がローレベルである状態のときに比較器29からの一致信号を受け、さらに、LP信号が入力されると、列ドライバ13および行ドライバ12への/DOFF1信号および/DOFF2信号をハイレベルに固定する。
また、論理和回路22へのマスク信号をローレベルに固定し、0.5ライン検出回路21の出力がM信号となるようにする。従って、線順次駆動によってDATA信号とM信号に応じた表示がなされるアドレッシング部が開始される。このとき、オン電圧はVr+Vc、オフ電圧はVr−Vcとなる。
液晶印加電圧がVr−Vcに変化した時点からオン/オフに応じた電圧になるまでの期間は、ダウンカウンタ24のカウント値が「C」進む間の期間であり、図14に示すように、この期間がフォーカルコニック部となる。
さらに、列ドライバ13と行ドライバ12への非表示指示信号である/DOFF1信号と/DOFF2信号とがともにハイレベルである状態で、比較器29から一致信号が出力されると、DOFF制御回路31は、スタートフラグをリセットするとともに、/DOFF1信号と/DOFF2信号とをともにローレベルに固定して全画素に対する液晶印加電圧を0Vにする。
よって、CL−LCDは書き込み状態を記憶したままの状態になる。また、論理和回路22へのマスク信号をハイレベルに固定するとともに、セレクタ23の出力がハイレベルに固定されるように選択信号を切り替える。そして、次にSTART信号が入力されるまでその状態を保持する。
このように、実施の形態1−Aでは、従来の駆動装置が取り扱うことができるM信号と/DOFF信号とを利用することによって、第1の段階〜第3の段階、すなわち、リセット部、無印加部(または待機部)およびフォーカルコニック部を作成する。したがって、IAPT駆動ドライバを本発明に適用できる。
次に、実施の形態1−Bの構成を図15に示す。実施の形態1−Bでは信号変換回路14は、電圧切替指示信号であるSEL信号も出力する。また、電源装置15およびスイッチ回路16が設けられている。電源装置15は、液晶表示パネルを駆動するための通常の電圧であるVLCD1の他に、任意の電圧レベルであるVLCD2を供給可能である。この実施の形態1−Bでは、電源装置15およびスイッチ回路16も、第1〜第3の段階において所定電圧を印加する電圧印加手段の一部である。
なお、VLCD1は通常の書き込み時におけるオン電圧V5(Vr+Vc)に相当する電圧である。VLCD2も同様にV5(Vr+Vc)に相当する電圧であるが、VLCD1と異なる値である。たとえば、VLCD1が40Vである場合にVLCD2が24Vとなるような電圧値である。スイッチ回路16は、信号変換回路14からのSEL信号に応じて、VLCD1とVLCD2のうちのいずれかを行ドライバ12および列ドライバ13に必要な電圧レベルを分圧することによって供給する。
図16は実施の形態1−Bにおける信号変換回路14の構成例を示すブロック図である。図16に示す信号変換回路14において、0.5ライン検出回路21、論理和回路22、ダウンカウンタ24、比較器25〜29およびスタートフラグ回路30は、実施の形態1−Aのものと同様に動作する。DOFF制御回路31において電源電圧の切替を指示するSEL信号の制御が追加される。また、実施の形態1−Aで用いたセレクタ23を変更し、論理和回路23Aが設けられている。
次に、図17のタイミング図を参照して動作について説明する。スタートフラグがセットされていない状態では、DOFF制御回路31は、全ての列電極および行電極が電位V0である無印加状態になるように、列ドライバ13および行ドライバ12に対する非表示指示信号(/DOFF1信号および/DOFF2信号)をローレベルに固定する。
よって、CL−LCD10は、信号制御回路11からの信号状態に関わらず電圧無印加状態となる。また、M信号およびDATA信号をハイレベルを固定するために、論理和回路22へのマスク信号および論理和回路23Aへのマスク信号をハイレベルに固定する。START信号が入力された後、FR信号が入力されると、スタートフラグ回路30において、スタートフラグがセットされる。FR信号はフレーム周期毎に入力される。
FR信号が入力されるとダウンカウンタ24に(N−1)がプリセットされる。以後、ダウンカウンタ24は、行切替信号(LP信号)をダウンカウントする。比較器25は、ダウンカウンタ24のカウント値が(A+B+C)に一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。
DOFF制御回路31は、/DOFF1信号および/DOFF2信号がともにローレベルである状態のときに比較器25からの一致信号を受け、さらに、LP信号が入力されると、列ドライバ13への/DOFF1信号をハイレベルに固定する。
この結果、図11に示す関係にもとづいて、全ての列電極の電圧レベルがV5(Vr+Vc)となる。また、全ての行電極の電圧レベルはV0であるから、全ての画素に対する液晶印加電圧はVr+Vcとなる。例えば、Vr=35V,Vc=5Vであれば、液晶印加電圧は40Vである。
比較器26は、ダウンカウンタ24のカウント値が(B+C)に一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。DOFF制御回路31は、/DOFF1信号がハイレベルで、かつ、/DOFF2信号がローレベルである状態のときに比較器26からの一致信号を受ける。
さらに、LP信号が入力されると、列ドライバ13への/DOFF1信号をローレベルに固定する。この結果、図11に示す関係にもとづいて、CL−LCD10は電圧無印加状態になる。
液晶印加電圧がVr+Vcに変化してから電圧無印加状態になるまでの期間は、ダウンカウンタ24のカウント値が「A」進む間の期間であり、図17に示すように、この期間がリセット部となる。
比較器27は、ダウンカウンタ24のカウント値がCに一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。DOFF制御回路31は、/DOFF1信号および/DOFF2信号がともにローレベルである状態のときに比較器27からの一致信号を受け、さらに、LP信号が入力されると、列ドライバ13への/DOFF1信号をハイレベルに固定する。
また、SEL信号をハイレベルに固定する。図15に示すスイッチ回路16は、SEL信号がハイレベルになったことに応じて、電源装置15からのVLCD2を選択して行ドライバ12および列ドライバ13に供給する状態になる。
この結果、図11に示す関係にもとづいて、全ての列電極の電圧レベルはV5(Vr+Vc)となる。また、全ての行電極の電圧レベルはV0であるから、全ての画素に対する液晶印加電圧はVr+Vcとなる。しかし、この段階では、SEL信号がハイレベルであるから液晶印加電圧はVLCD2であり、リセット部および線順次駆動で用いられる通常のVr+Vc(=VLCD1)とは異なる。例えば、Vr+Vc=24Vである。
液晶印加電圧が電圧無印加状態に変化した時点からVLCD2が供給開始されるまでの期間は、ダウンカウンタ24のカウント値が「B」進む間の期間であり、図17に示すように、この期間が無印加部となる。
比較器28は、ダウンカウンタ24のカウント値が1に一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。DOFF制御回路31は、/DOFF1信号がハイレベルで、かつ、/DOFF2信号がローレベルである状態のときに比較器28からの一致信号を受け、さらに、LP信号が入力されると、論理和回路23Aへのマスク信号をローレベルに固定して、DATA信号として表示データを出力させる。
比較器29は、ダウンカウンタ24のカウント値が0に一致するとDOFF制御回路31に一致信号を出力する。DOFF制御回路31は、/DOFF1信号がハイレベルで、かつ、/DOFF2信号がローレベルである状態のときに比較器29からの一致信号を受ける。
さらに、LP信号が入力されると、列ドライバ13および行ドライバ12への/DOFF1信号および/DOFF2信号をハイレベルに固定する。そして、SEL信号をローレベルに戻す。この結果、行ドライバ12および列ドライバ13には、電源装置15からVLCD1が供給される状態に戻る。また、論理和回路22へのマスク信号をローレベルに固定し、0.5ライン検出回路21の出力がM信号となるようにする。したがって、線順次駆動によってDATA信号とM信号に応じた表示がなされるアドレッシング部が開始される。このとき、オン電圧はVr+Vc、オフ電圧はVr−Vcとなる。
液晶印加電圧がVLCD2にもとづく電圧に変化した時点から通常のオン/オフに応じた電圧になるまでの期間は、ダウンカウンタ24のカウント値が「C」進む間の期間であり、図17に示すように、この期間がフォーカルコニック部となる。
さらに、列ドライバ13と行ドライバ12への非表示指示信号である/DOFF1信号と/DOFF2信号とがともにハイレベルである状態で、比較器29から一致信号が出力されると、DOFF制御回路31は、スタートフラグをリセットするとともに、/DOFF1信号と/DOFF2信号とをともにローレベルに固定して全画素に対する液晶印加電圧を0Vにする。よって、CL−LCDは書き込み状態を記憶したままの状態になる。
また、論理和回路22へのマスク信号と論理和回路23Aへのマスク信号とをハイレベルに固定し、M信号およびDATA信号をハイレベルに固定する。そして、次にSTART信号が入力されるまでその状態を保持する。
以上、説明したように、実施の形態1−Bでも、従来の駆動装置が取り扱うことができるM信号と/DOFF信号とを利用することによって、リセット部、無印加部およびフォーカルコニック部を作成できる。したがって、IAPT駆動ドライバを本発明に適用できる。
しかも、実施の形態1−Bでは、フォーカルコニック部における電圧の振幅を任意に設定できるので、フォーカルコニック部に求められる最適の電圧値を使用できる。なお、リセット部における電圧の振幅も任意の値に設定できるように構成してもよい。
なお、上記の各実施の形態では、LP信号を用いて第1〜第3の段階の長さを設定したが、LP信号以外のクロック信号にもとづいて第1〜第3の段階の長さを設定してもよい。その場合、より高周波のクロック信号を用いると、初期化の所要時間をより短縮できる。
また、上記の各実施の形態では、第1の段階(リセット部)および第3の段階(フォーカルコニック部)において、CL−LCに対して正のパルス電圧を印加したが、それぞれの段階において、電圧振幅の絶対値が等しい正のパルスと負のパルスとを印加するようにしてもよい。
(実施の形態2)次に、パルス幅変調方式を用いた実施の形態2−Aについて説明する。図19は、その実験結果を示す説明図である。印加時間1msでは、約5回の電圧印加で、CL−LCをほぼ完全なFC状態にすることができる。ところが、1回のみの電圧印加で同様な状態を実現するには、10msの印加時間が必要になる。以上のように、1回の電圧印加でFC状態を実現するよりも、短い印加時間で電圧を何度も印加する方がFC状態を実現するための合計の時間を小さくすることができることがわかる。
すなわち、表示データを書き込むための準備期間では、CL−LCに対して一旦、HO状態にする電圧を印加してそれ以前の表示状態をリセットした後、電圧を印加しない状態すなわち電位差0Vの期間を設ける。さらに、CL−LCをFC状態とPL状態の混在状態にするような電圧パルスを短い印加時間で断続的に印加する。この方法によって、CL−LCを選択反射の残留がほとんどないFC状態またはFC状態とPL状態の混在状態とし、その状態で表示データに対応する電圧書き込みを行うのがよい。
このような駆動法によれば、一連の画像を更新するシーケンスに要する時間をさらに短縮できる。また、電位差0Vの期間で、CL−LCはHG状態またはHG状態とPL状態の混在状態に移行するので、効率的にリセット時間の短縮を図ることができる。
さらには、初期状態がFC状態またはFC状態とPL状態の混在状態に設定されることから、PL状態で全画素が一時反射表示状態となるためにリセット時にちらつきが発生するということもない。
また、図5〜図7に示すように、印加時間を短くするとFC状態が書き込まれる最適電圧は上昇していく。従って、垂直配向にするための印加電圧をV1、印加時間τ1とし、FC状態またはFC状態とPL状態との混在状態を書き込むための1回あたりの印加電圧をV3、印加時間をτ3としたときに、V3およびτ3を適切に選択すれば、τ1>τ3という条件下で、V1とV3を共通化することができる。よって、駆動ドライバの回路構成を簡略化できる。
図20は実施の形態2−Aのコントローラ11の構成例を示すブロック図である。発振器33は所定周波数のクロック信号(CLK)を発生する。基準カウンタ34は、CLKを入力してカウントする。ラインカウンタ35は、基準カウンタ34のカウント値が所定値になると、その値を+1する。比較器36は、基準カウンタ34のカウント値(DOT)、ラインカウンタ35のカウント値(LINE)および設定レジスタ37の設定値(N1〜N5)を入力し、CP信号、M信号、LP信号、/DOFF1信号、/DOFF2信号およびSEL信号を作成する。SEL信号はセレクタ39に出力される。
メモリ38には、MPU20からの表示データが格納されている。セレクタ39は、SEL信号に応じて、メモリ38内のデータ、”1”固定信号および”0”固定信号のうちのいずれかを選択し、選択したデータをDATA信号としてCL−LCDに出力する。
設定レジスタ37には、MPU20から電圧印加時間の設定のための設定値が書き込まれる。各時間は、発振器33から出力されるクロック数で換算された値である。ここでは、垂直配向のための高電圧印加時間(第1の段階の期間)をN1、無印加部の時間(第2の段階の期間)をN2、FC状態への転移のための電圧印加時間(第3の段階の期間)をN3、N2とN3との繰り返し回数をN4、線順次駆動における1選択時間をN5とする。
CL−LCDは一度データが書き込まれると、その表示状態を保持するのでフレーム周期毎に書き込みを行う必要はないが、データの書き換えを必要とするタイミングを外部から通知する必要がある。そのために、MPUから設定レジスタ37に表示書き換えの指示がなされる。設定レジスタ37に表示書き換え指示が設定されると、比較器36にSTART信号が出力される。
なお、この実施の形態2−Aでは、垂直配向のための高電圧印加期間を設定するための第1の期間設定手段、無印加部の時間を設定するための第2の期間設定手段およびFC状態への遷移のための電圧印加時間を設定するための第3の期間設定手段は、ともに、基準カウンタ34、ラインカウンタ35、設定レジスタ37および比較器36で実現される。第1〜第3の段階において所定電圧を印加する電圧印加手段は、メモリ38、セレクタ39および比較器36で実現される。また、第2の段階と第3の段階とを繰り返す回数制御手段は、設定レジスタ37および比較器36で実現される。
次に、図21のタイミング図を参照して動作の説明をする。ここでは、N4=2とし、線順次駆動におけるオン電圧をVr+Vc、オフ電圧をVr−Vcとする。
コントローラ11は、MPU20から表示開始が指示されるまで初期状態とする。すなわち、CP信号をローレベルに、LP信号をローレベルに、M信号をハイレベルに、DATAをハイレベルに、/DOFF1信号および/DOFF2信号をローレベルに維持する。/DOFF1信号と/DOFF2信号とがともにローレベルであるので、すべての行電極および列電極が電位V0である液晶無印加状態となる。また、基準カウンタ34およびラインカウンタ35はともに0を保持する。
MPU20から表示開始が指示されると、設定レジスタ37においてSTARTフラグがセットされ、START信号がハイレベルになる。START信号がハイレベルになと、比較器36は、基準カウンタ34を動作状態にする。基準カウンタ34は、発振器33からのクロック(CLK)に応じてカウント値を1ずつ増やす。ラインカウンタ35の値が0の場合には、基準カウンタ34は、その値がN5と一致するまでカウントアップする。
比較器36は、基準カウンタ34のカウント値が偶数の場合にCP信号をハイレベルにし、奇数の場合にはローレベルにして、表示素子のドット数に適合したパルス数分だけCP信号を出力する。この間、DATAはハイレベルであるから、列ドライバ13の内部レジスタの値は、全てハイレベルになる。
基準カウンタ34のカウント値がN5と一致すると、比較器36は、CNT信号を1クロック期間ハイレベルにする。このCNT信号に応じて、基準カウンタ34は値を0に戻し、ラインカウンタ35は値を+1する。また、このとき、LP信号を1クロック期間ハイレベルにする。よって、列ドライバ13の内部レジスタの値が列ドライバ13の出力に反映される。
ラインカウンタ35の値が1になると、比較器36は、/DOFF2信号をハイレベルにする。図11に示す関係から、全ての列電極の電圧レベルがV5(Vr+Vc)となる。また、全ての行電極の電圧レベルはV0であるから、全ての画素に対する液晶印加電圧はVr+Vcとなる。すなわち、液晶の垂直配向に必要な電圧が表示面の全面に印加される。
また、比較器36は、DATAをローレベルに固定するようなSEL信号を出力する。セレクタ39は、そのようなSEL信号に応じて”0”を選択する。そして、比較器36は、CP信号を順次出力して、列ドライバ13の内部レジスタの値を全てローレベルにする。基準カウンタ34は、カウント値がN1と一致するまでカウントアップし、カウント値がN1と一致するとカウント値を0に戻す。このとき、ラインカウンタ35の値が+1されて2になる。
ラインカウンタ35の値が2n(1≦n≦N4)になると、比較器36は、/DOFF2信号をローレベルにして、列ドライバ13の出力電位をすべてV0にする。よって、液晶印加電圧は0Vとなる。基準カウンタ34は、カウント値がN2と一致するまでカウントアップする。そして、カウント値がN2と一致すると、基準カウンタ34のカウント値を0に戻し、ラインカウンタ35の値を+1する。ラインカウンタ35の値が2から3に変化する場合に、比較器36は、LP信号を1クロック期間ハイレベルにする。その結果、列ドライバ13の内部レジスタの値が列ドライバ13の出力に反映される。
ラインカウンタ35の値が2n+1(1≦n≦N4)のときには、比較器36は、/DOFF2信号をハイレベルにする。このとき、M信号はハイレベルであり、列ドライバ13にラッチされているDATAはローレベルであるから、図11に示す関係にもとづいて全ての列電極に対する印加電圧はV3となり、全ての画素に対する液晶印加電圧はV3(Vr−Vc)となる。よって、FC状態を形成するのに必要な電圧が全面に印加される。基準カウンタ34は、カウント値がN3と一致するまでカウントアップし、カウント値がN3と一致すると基準カウンタ34のカウント値が0に戻り、ラインカウンタ35の値が+1される。
ラインカウンタ35の値が2n+1の場合に、その値が(2・N4+1)であるときには、比較器36は、DATAとしてメモリ38からの表示データを選択ようなSEL信号を出力する。セレクタ39は、そのようなSEL信号に応じてメモリ38からの表示データを選択する状態になる。そして、比較器36は、CP信号を順次出力して、列ドライバ13の内部レジスタに表示データを入れる。
基準カウンタ34は、カウント値がN3と一致するまでカウントアップし、カウント値がN3と一致すると基準カウンタ34のカウント値が0に戻り、ラインカウンタ35の値が+1される。この例では、この段階のラインカウンタ35の値は6である。比較器36は、LP信号を1クロック期間ハイレベルにして、列ドライバ13の内部レジスタの値を列ドライバ13の出力に反映させる。また、LP信号のパルスを包含するようにFR信号を一定期間ハイレベルにし、行ドライバ12に先頭行からの走査を指示する。
ラインカウンタの値が(2・N4+1)を越えている場合には、比較器36は、/DOFF1信号および/DOFF2信号をハイレベルに固定する。よって、列ドライバ12および行ドライバ13の出力として線順次駆動に必要な電圧が出力される。図10では、この期間がアドレッシング部として示されている。
比較器36は、アドレッシング部において、基準カウンタ34のカウント値が(N5/2)より小さい場合はM信号をローレベルにし、(N5/2)以上であればハイレベルにして、線順次駆動時の液晶印加電圧を交流化させる。また、次の選択行のためにDATAとしてメモリ38の表示データを出力する。DATAは、CP信号によって列ドライバ13の内部レジスタに取り込まれる。
基準カウンタ34はカウント値がN5と一致するまでカウントアップし、N5と一致すると基準カウンタ34のカウント値が0に戻され、ラインカウンタ35の値が+1される。比較器36は、ラインカウンタ35の値が+1される毎に、LP信号をパルス出力して、行ドライバ12に対して次の行の走査を指示するとともに、列ドライバ13に対して次の表示データの出力を指示する。
ラインカウンタ35の値が(2・N4+1+表示行数)になると、比較器36は、CP信号およびLP信号をローレベルにし、SEL信号でセレクタ39に対して「1」のDATAを出力するように指示し、M信号をハイレベルに固定するそして、基準カウンタ34のカウント値がN5と一致したら、CLR信号を1クロック期間ハイレベルにして、基準カウンタ34およびラインカウンタ35を0クリアする。また、/DOFF1信号および/DOFF2信号をローレベルにして液晶印加電圧を0Vにし、STARTフラグをクリアして初期状態に戻る。
以上、説明したように、例2−1では、M信号と/DOFF信号とを利用することによって、第1の段階〜第3の段階、すなわち、リセット部、無印加部およびフォーカルコニック促進部(FC状態への転移を促進する状態)を作成する。したがって、IAPT駆動ドライバを本発明に適用できる。
そして、無印加部およびフォーカルコニック促進部を複数回(N4回)繰り返す。したがって、1パルスでFC状態を実現する場合に比べて短時間で、CL−LCD10を十分なFC状態に初期化することができる。なお、ここでは、N4=2としたが、図20に示す構成で、N4の値を任意の値にして初期化を行うことができる。
次に、発明の実施の形態2−Bについて、図22のタイミング図を参照して説明する。なお、コントローラ11の構成は図20に示された構成(実施の形態2−A)と同じでよい。
実施の形態2−Bでは、ラインカウンタ35の値が1になると、比較器36は、/DOFF2信号をハイレベルし、比較器36は、DATAをローレベルに固定するようなSEL信号を出力する。しかし、比較器36はCP信号を出力しない。よって、列ドライバ13の内部レジスタの値はハイレベルのままである。基準カウンタ34は、カウント値がN1と一致するまでカウントアップし、カウント値がN1と一致するとカウント値を0に戻す。このとき、ラインカウンタ35の値が+1されて2になる。
実施の形態2−Bでは、ラインカウンタ35の値が2n+1(1≦n≦N4)のときには、比較器36は、/DOFF2信号をハイレベルにするのであるが、このとき、M信号はハイレベルであり、列ドライバ13にラッチされているDATAは全てハイレベルであるから、図11に示す関係にもとづいて列ドライバ13の出力電位は全てV5となり、液晶印加電圧はV5(Vr+Vc)となる。
その他の段階での動作は実施の形態2−Aの動作と同じである。実施の形態2−Bでは、第1の段階および第3の段階で同じ電圧がCL−LCD10に印加される。すなわち、CL−LCをHO状態に配向させるための印加電圧値と、FC状態にするための印加電圧値を共通化できた。
(例2−1)例1−1と同様にして液晶パネルを形成した。次に、この液晶パネルの行、列各1本ずつの電極を選び、その交点に40Vの電圧を20ms間印加したところ、印加後に黒塗装していない基板側から見ると交点部分は緑色の反射色を呈した。次に、20Vの電圧を20ms印加したところ、印加後に黒塗装していない基板側から見ると交点部分がほぼ黒色を呈した。
液晶パネルの全画面を初期化するために、表示面の全体に45Vの電圧を5ms印加した。それに続いて、液晶パネルに印加される電圧が0Vになる無印加部を0.3msを設けた。その後、FC状態にするための電圧として33Vの電圧を1ms間印加した。無印加部とFC状態にするための電圧印加期間とを計5回繰り返した後、線順次駆動を実施した。
行電極が選択される期間をそれぞれ0.1msとした。なお、0.3msの電圧無印加部では、CL−LCはHG状態またはHG状態とPL状態の混在状態に移行するので、効率的にリセット時間の短縮を図ることができる。
すると、表示データを書き込む前の一連の電圧処理によって十分FC状態が書き込まれ、コントラスト比の高い表示が得られた。すなわち、テストパターンを表示したところ、残像もなく、高コントラスト比の表示が得られた。なお、一連の表示書き込み動作に要する時間は17.5msであった。
(比較例2−1)例2−1の場合と同様に、全画面を初期化するために、パネル全体に45Vの電圧を5ms印加した。それに続いて、液晶パネルに印加される電圧が0Vになる無印加部を0.3msを設けた。その後、FC状態にするための電圧として23Vの電圧を10ms間印加し、その後、線順次駆動を実施した。行電極が選択される期間をそれぞれ0.1msとした。
テストパターンを表示したところ、残像もなく、高コントラストの表示が得られたが、一連の表示書き込み動作に要する時間は、21.3msと例2−1の場合に比べて長くかかった。
(例2−2)例2−1の場合と同様に、全画面を初期化するために、パネル全体に45Vの電圧を5ms印加した。それに続いて、液晶パネルに印加される電圧が0Vになる無印加部を0.3msを設けた。その後、FC状態にするための電圧として45Vの電圧を0.3ms間印加した。無印加部とFC状態とするための電圧印加期間とを計8回繰り返した後、線順次駆動を実施した。行電極が選択される期間をそれぞれ0.1msとした。
テストパターンを表示したところ、残像もなく、高コントラスト比の表示が得られたが、また一連の表示書き込み動作に要する時間は15.8msとなり、さらに所要時間を改善できた。また全画面を初期化するための工程のうち、垂直配向にするための電圧条件、すなわち、45V,5msを共通化できた。
このことは、電源回路の電圧レベルを削減することができるので、駆動回路の実用化の際に有利となる。また、無印加部とFC状態にするための電圧印加期間との繰り返し回数は10回程度以下であることが好ましい。
(比較例2−2)例2−2の場合と同様に、全画面を初期化するために、パネル全体に45Vの電圧を5ms印加した。それに続いて、液晶パネルに印加される電圧が0Vになる無印加部を0.3msを設けた。その後、FC状態にするための電圧として45Vの電圧を10ms間印加し、その後、線順次駆動を実施した。
行電極が選択される期間をそれぞれ0.1msとした。テストパターンを表示したところ、残像もなく、高コントラスト比の表示が得られたが、一連の表示書き込み動作に要する時間は、21.3msと例2−2の場合に比べて長くかかった。
(例2−3)例2−1の駆動条件において、線順次駆動による表示データの書き込み時に、選択期間に対して列電極の印加時間を均等に10分割し、分割された各期間に階調データに応じたオンとオフに相当する電圧を列電極に印加する。そして、そのような電圧印加方法によってテストパターンを表示したところ、表示データに応じた均一な階調表示が得られた。
(比較例2−3)例2−1の駆動条件において、列電極の印加電圧をオンのときにVc、オフのときに−Vcとし、階調データに応じてn・Vc(−1<n<1)の電圧値を列電極に印加した。電圧値を変えることによって10階調表示を行った。様々なテストパターンを表示させたところ、列電極に平行な表示むらが発生し、不均一な階調表示になった。
また、中間調表示を行う場合、パルス幅変調を使用すれば良好な階調表示を得ることができる。しかし、振幅変調を使用した場合には良好な階調表示を得ることができない。
(実施の形態3)次に、より広い温度範囲で駆動を行うことのできる、本発明の実施の形態3について説明する。図23は駆動装置の実施の一形態を示すブロック図である。コントローラ11から制御信号としてFR信号、LP信号、M信号および/DOFF1信号が行ドライバ12に入力される。列ドライバ13には、コントローラ11からLP信号、CP信号、M信号および/DOFF2信号と表示データ(DATA)とが入力される。/DOFF1信号はコントローラ11が作成し、列ドライバ13に供給される/DOFF信号であり、/DOFF2信号は制御装置11が作成し、行ドライバ12に供給される/DOFF信号である。また、行ドライバ12および列ドライバ13には、電源装置14から必要な電圧が供給される。
行ドライバ12は、FR信号がハイレベルになると先頭行を選択する。LP信号は選択行を1行ずつシフトすることを示す信号に相当する。M信号は、交流化のための信号である。CP信号は、コントローラ11から表示データを列ドライバ13に転送するためのクロックとして用いられる。/DOFF信号がローレベルになると、行ドライバ12および列ドライバ13は、液晶パネル10に印加する電圧レベルをそれぞれ所定のレベル(消去時のレベルV0)にする。/DOFF信号がハイレベルになっているときは通常書き込みの状態である。
データの書き換えのタイミングを指示するのがSTART信号である。START信号はタイマによるある一定期間毎に有効になる信号でもよいし、表示データの発生源であるMPUや外部スイッチからの表示書き換え指示信号であってもよい。図23では、MPU20から出力される例が示されている。
さらに、液晶パネル10の近傍には温度センサ81が設けられ、温度センサ81の検出出力は温度補償回路40に入力する。温度補償回路40は、温度センサ81の検出出力に応じた印加時間指示信号をコントローラ11に与える。
図24はコントローラ11の構成例を示すブロック図である。発振器33は、所定周波数のクロック信号(CLK)を発生する。基準カウンタ34は、CLKを入力してカウントする。ラインカウンタ35は、基準カウンタ34のカウント値が所定値になると、その値を+1する。比較器36は、基準カウンタ34のカウント値(DOT)、ラインカウンタ35のカウント値(LINE)および設定レジスタ37の設定値(N1〜N4)を入力し、CP信号、M信号、LP信号、/DOFF1信号、/DOFF2信号およびSEL信号を作成する。SEL信号はセレクタ39に出力される。
メモリ38には、MPU20からの表示データが格納されている。セレクタ39は、SEL信号に応じて、メモリ38内のデータ、”1”固定信号および”0”固定信号のうちのいずれかを選択し、選択したデータをDATA信号としてCL−LCD10に出力する。
設定レジスタ37には、温度補償回路40から電圧印加時間の設定のための印加時間指示信号(設定値)が書き込まれる。この実施の形態では、設定値は、発振器33から出力されるクロック数で換算された値であるとする。ここでは、垂直配向のための高電圧印加時間(第1の段階の期間)をN1、無印加部の時間(第2の段階の期間)をN2、FC状態への遷移のための電圧印加時間(第3の段階の期間)をN3、線順次駆動における1選択時間をN4とする。
データの書き換えを必要とする場合には、MPUから設定レジスタ37に表示書き換えの指示がなされる。設定レジスタ37に表示書き換え指示が設定されると、比較器36にSTART信号が出力される。
図25は温度補償回路40の一構成例を示すブロック図である。温度センサ81の検出出力は、A−D変換器41でディジタル信号に変換され、アドレス変換器42に与えられる。レジスタ55には、各温度に対応した第1の段階の期間および第3の段階の期間に関する温度係数が格納されている。また、レジスタ56には、各温度に対応した第2の段階の期間に関する温度係数が格納されている。そして、レジスタ57には、各温度に対応したアドレッシング部の期間に関する温度係数が格納されている。各温度係数格納領域は、検出温度に対応したアドレスになっている。
例えば、検出温度が65℃を越えて75℃であれば、アドレス変換器42は、レジスタ55,56,57における70℃に対応した温度係数n1、n2、mが格納されているアドレスを出力する。図25において、70℃に対応した温度係数n1、n2、mは、n1(70)、n2(70)、m(70)として示されている。
ここで、n2≧n1であり、n2≧mである。そして、各レジスタ55,56,57において、温度が低い方の値がより大きな値である。この実施の形態では、最も高い温度に対応した温度係数を「1」としているので、レジスタ55,56,57に格納されている各値は、1以上の値である。
レジスタ51には、所定温度(この例では70℃)における第1の段階の長さを示すデータ(T10r)が格納されている。また、レジスタ52には、所定温度(この例では70℃)における第2の段階の長さを示すデータ(T11r)が格納されている。そして、レジスタ53には、所定温度(この例では70℃)における第3の段階の長さを示すデータ(T12r)が格納されている。また、レジスタ54には、所定温度(この例では70℃)におけるアドレッシング部の長さを示すデータ(T2r)が格納されている。なお、アドレッシング部の長さを示すデータは、1表示シーケンス全体の長さを示すデータでもよいし、1選択期間を示すデータでもよい。
乗算器61は、レジスタ55の出力とレジスタ51の出力とを乗算して印加時間指示信号を作成する。すなわち、n1・T10rの演算を行って印加時間指示信号を作成する。この印加時間指示信号は、図24に示す比較器36が用いるN1(第1の段階:リセット部の長さ)に相当する。乗算器62は、レジスタ55の出力とレジスタ53の出力とを乗算して印加時間指示信号を作成する。
すなわち、n1・T11rの演算を行って印加時間指示信号を作成する。この印加時間指示信号は、図24に示す比較器36が用いるN3(第3の段階:フォーカルコニック部の長さ)に相当する。
また、乗算器63は、レジスタ56の出力とレジスタ52の出力とを乗算して印加時間指示信号を作成する。すなわち、n2・T11rの演算を行って印加時間指示信号を作成する。この印加時間指示信号は、図24に示す比較器36が用いるN2(第2の段階:無印加部の長さ)に相当する。
そして、乗算器64は、レジスタ57の出力とレジスタ54の出力とを乗算して印加時間指示信号を作成する。すなわち、m・T2rの演算を行って印加時間指示信号を作成する。この印加時間指示信号は、アドレッシング部の期間の長さN4に相当する。ただし、この例では、N4は1選択期間を示す値であるとする。
次に、図26のタイミング図を参照して動作について説明する。ここでは、CL−LCを垂直配向させるために必要な液晶印加電圧および線順次駆動におけるオン電圧をVr+Vc、CL−LCをFC状態とPL状態の混在状態に移行させるために必要な液晶印加電圧および線順次駆動におけるオフ電圧をVr−Vcとする。
コントローラ11は、MPU20から表示開始が指示されるまで初期状態とする。すなわち、CP信号をローレベルに、LP信号をローレベルに、M信号をハイレベルに、DATAをハイレベルに、/DOFF1信号および/DOFF2信号をローレベルに維持する。/DOFF1信号と/DOFF2信号とがともにローレベルであるので、すべての行電極および列電極が電位V0である液晶無印加状態となる。また、基準カウンタ34およびラインカウンタ35はともに0を保持する。
MPU20から表示開始が指示されると、設定レジスタ37においてSTARTフラグがセットされ、START信号がハイレベルになる。START信号がハイレベルになと、比較器36は、基準カウンタ34を動作状態にする。基準カウンタ34は、発振器33からのクロック(CLK)に応じてカウント値を1ずつ増やす。
ラインカウンタ35の値が0の場合には、基準カウンタ34は、その値がN4と一致するまでカウントアップする。比較器36は、基準カウンタ34のカウント値が偶数の場合にCP信号をハイレベルにし、奇数の場合にはローレベルにして、表示素子のドット数に適合したパルス数分だけCP信号を出力する。この間、DATAはハイレベルであるから、列ドライバ13の内部レジスタの値は、全てハイレベルになる。
基準カウンタ34のカウント値がN4と一致すると、比較器36は、CNT信号を1クロック期間ハイレベルにする。このCNT信号に応じて、基準カウンタ34は値を0に戻し、ラインカウンタ35は値を+1する。また、このとき、LP信号を1クロック期間ハイレベルにする。よって、列ドライバ13の内部レジスタの値が列ドライバ13の出力に反映される。
ラインカウンタ35の値が1になると、比較器36は、/DOFF2信号をハイレベルにする。実施の形態1と同様であり、図11に示す関係から、全ての列電極の電圧レベルがV5(Vr+Vc)となる。また、全ての行電極の電圧レベルはV0であるから、全ての画素に対する液晶印加電圧は(Vr+Vc)となる。すなわち、垂直配向に必要な液晶電圧が全面に印加される。
また、比較器36は、DATAをローレベルに固定するようなSEL信号を出力する。セレクタ39は、そのようなSEL信号に応じて”0”を選択する。そして、比較器36は、CP信号を順次出力して、列ドライバ13の内部レジスタの値を全てローレベルにする。基準カウンタ34は、カウント値がN1と一致するまでカウントアップし、カウント値がN1と一致するとカウント値を0に戻す。このとき、ラインカウンタ35の値が+1されて2になる。
ラインカウンタ35の値が「2」になると、比較器36は、/DOFF2信号をローレベルにして、列ドライバ13の出力電位をすべてV0にする。よって、液晶印加電圧は0Vとなる。次に、基準カウンタ34は、カウント値がN2と一致するまでカウントアップする。
そして、カウント値がN2と一致すると、基準カウンタ34のカウント値を0に戻し、ラインカウンタ35の値を+1する。ラインカウンタ35の値が2から3に変化する場合に、比較器36は、LP信号を1クロック期間ハイレベルにする。その結果、列ドライバ13の内部レジスタの値が列ドライバ13の出力に反映される。
ラインカウンタ35の値が「3」のときには、比較器36は、/DOFF2信号をハイレベルにする。このとき、M信号はハイレベルであり、列ドライバ13にラッチされているDATAはローレベルであるから、図11に示す関係にもとづいて全ての列電極に対する印加電圧はV3となり、全ての画素に対する液晶印加電圧はV3(Vr−Vc)となる。よって、FC状態に必要な液晶印加電圧が全面に印加される。次いで、基準カウンタ34は、カウント値がN3と一致するまでカウントアップし、カウント値がN3と一致すると基準カウンタ34のカウント値が0に戻り、ラインカウンタ35の値が+1される。
なお、ラインカウンタ35の値が「3」の場合に、比較器36は、DATAとしてメモリ38からの表示データを選択ようなSEL信号を出力する。セレクタ39は、そのようなSEL信号に応じてメモリ38からの表示データを選択する状態になる。そして、比較器36は、CP信号を順次出力して、列ドライバ13の内部レジスタに表示データを入れる。
ラインカウンタ35の値が4になると、比較器36は、LP信号を1クロック期間ハイレベルにして、列ドライバ13の内部レジスタの値を列ドライバ13の出力に反映させる。また、LP信号のパルスを包含するようにFR信号を一定期間ハイレベルにし、行ドライバ12に先頭行からの走査を指示する。
また、比較器36は、/DOFF1信号をハイレベルに固定する。よって、列ドライバ12および行ドライバ13の出力として線順次駆動に必要な電圧が出力される。図26では、この期間がアドレッシング部として示されている。
比較器36は、アドレッシング部において、基準カウンタ34のカウント値が(N4/2)より小さい場合はM信号をローレベルにし、(N4/2)以上であればハイレベルにして、線順次駆動時の液晶印加電圧を交流化させる。また、次の選択行のためにDATAとしてメモリ38の表示データを出力する。DATAは、CP信号によって列ドライバ13の内部レジスタに取り込まれる。基準カウンタ34はカウント値がN4と一致するまでカウントアップし、N4と一致すると基準カウンタ34のカウント値が0に戻され、ラインカウンタ35の値が+1される。比較器36は、ラインカウンタ35の値が+1される毎に、LP信号をパルス出力して、行ドライバ12に対して次の行の走査を指示するとともに、列ドライバ13に対して次の表示データの出力を指示する。
ラインカウンタ35の値が(3+表示行数)になると、比較器36は、CP信号およびLP信号をローレベルにし、SEL信号でセレクタ39に対して「1」のDATAを出力するように指示し、M信号をハイレベルに固定するそして、基準カウンタ34のカウント値がN4と一致したら、CLR信号を1クロック期間ハイレベルにして、基準カウンタ34およびラインカウンタ35を0クリアする。また、/DOFF1信号および/DOFF2信号をローレベルにして液晶印加電圧を0Vにし、STARTフラグをクリアして初期状態に戻る。なお、実施の形態3での表示行数は60行である。
以上に説明したように、実施の形態3では、従来の液晶駆動装置が取り扱うことができるM信号と/DOFF信号とを利用することによって、第1の段階〜第3の段階、すなわち、リセット部、無印加部およびフォーカルコニック部を作成する。したがって、IAPT駆動ドライバを本発明に適用できる。
そして、温度補償回路40が、温度センサ81の検出温度に応じた電圧印加時間を決定し、決定された電圧印加時間にもとづいて液晶パネル10のリセットおよび表示データの書き込みが行われるので、低温時でも、良好な表示品位を維持することができる。
さらに、第2の段階(無印加部)は、第1および第3の段階に比べて、温度低下に応じた電圧印加時間の増加割合を大きくする必要があるが、図25に示すように、第1および第3の段階に関するレジスタ55と第2の段階に関するレジスタ56とを別に設けることによって、第1〜第3の段階の長さを温度に応じた適切な長さに制御することができる。
(例3−1)室温を25℃にして、液晶パネル10の全画面を初期化するために、表示シーケンスの開始時に、パネル全体に40Vの電圧を13.2ms間印加した。それに続いて、液晶パネル10に印加される電圧が0Vになる無印加時間を1ms設けた。その後、FC状態にするための電圧条件として23Vの電圧を3.3ms間全画素に印加した。そして、線順次駆動を実施した。駆動波形は図9(B)に示すものを用いた。
表示データを書き込む前の一連の電圧処理によって、液晶パネル10が若干の残留反射が残るFC状態になったことが確かめられた。また、引き続き線順次駆動によって表示書き込みを行うことによって、以上の条件でテストパターンを表示したところ、残像もなく、高コントラスト比の表示が得られた。
さらに、室温を0℃とした場合に、各電圧印加時間をそれぞれ4倍にした。その場合にも、テストパターンを表示したところ、残像もなく、高コントラスト比の表示が得られた。
(比較例3−1)室温0℃で、例3−1と同じ電圧印加条件(40V,13.2ms、0V,1ms、23V,3.3ms)で液晶パネル10を駆動した。テストパターンを表示したところ残像が発生した。すなわち、例3−1と同一の駆動条件では、0℃において、残像が多く良好が表示が得られない。また、それぞれの電圧印加時間を例1の場合と同じにして、それぞれの印加電圧値を上げると、所望の表示が得られたが、コントラストが低い表示になってしまった。
(例3−2)室温25℃で、例3−1における電圧印加条件(40V,13.2ms、0V,1ms、23V,3.3ms)のうち、第1の段階、第3の段階および線順次駆動期間において電圧印加時間を2倍にし、また、第2の段階の電圧印加時間を4倍にし、かつ、それぞれの期間における印加電圧値を例3−1の場合よりも高くした。テストパターンを表示したところ、残像もなく、高コントラストの表示が得られた。さらに、例3−1の0℃の場合の電圧印加条件に比べて書き込み時間を短くすることができた。
(比較例3−2)室温0℃で、例3−1における電圧印加条件(40V,13.2ms、0V,1ms、23V,3.3ms)のうち各電圧印加時間を2倍にした。テストパターンを表示したところ、残像はないもののコントラストの低い表示になってしまった。
上述したように、第1の段階で、それ以前に書き込まれた表示状態を消去するために、CL−LCの配向状態をHO状態にする。また、第2の段階で、CL−LCの配向状態をHO状態からHG状態またはHG状態とPL状態の混在状態にする。さらに、第3の段階で、HG状態またはHG状態とPL状態の混在状態からFC状態またはFC状態とPL状態の混在状態にする。そして、線順次駆動期間で、FC状態またはFC状態とPL状態の混在状態から所望の表示状態を書き込む。
例3−1より、CL−LCの温度が低下した場合には、各段階の電圧印加時間を長くすればよいことがわかる。例えば、25℃から0℃に低下した場合には、電圧印加時間を数倍すれば良好な表示品位を維持することができる。
しかし、各配向状態に変化させるために必要な電圧印加時間は、各段階の間で異なっている。例3−2および比較例3−2から、CL−LCをHO状態からHG状態またはHG状態とPL状態の混在状態にする第2の段階は、それ以外の段階に比べて、温度低下に応じた電圧印加時間の増加割合を大きくする必要があることがわかる。
第2の段階において、HO状態から、充分にHG状態またはHG状態とPL状態の混在状態にすることができない場合には、第3の段階において、所望のFC状態またはFC状態とPL状態の混在状態にすることができず、その結果、線順次駆動期間において、本来FC状態に設定したいオフ時の反射率が上昇しコントラスト比が低下する。
(例3−3)室温50℃で、例3−1における電圧印加条件(40V,13.2ms、0V,1ms、23V,3.3ms)に対して、それぞれの期間における印加電圧をやや低めに設定して液晶パネル10を駆動した。テストパターンを表示させたところ、残像もなく、高コントラスト比の表示が得られた。
(例3−4)室温50℃で、例3−1における電圧印加条件(40V,13.2ms、0V,1ms、23V,3.3ms)に対して、それぞれの電圧印加期間を1/2に設定して液晶パネル10を駆動した。また、それぞれの期間における印加電圧を例3−1の場合よりもやや低めに設定した、テストパターンを表示させたところ、残像もなく、高コントラスト比の表示が得られた。
以上より、25℃のときの電圧印加条件を基準に、0℃ときは電圧印加時間を2倍にして、50℃のときには電圧印加時間を1/2にすれば、25℃に対して高温または低温になっても良好な表示が得られることがわかる。
なお、表示データを書き込む前の一連の電圧処理(表示リセット)のうち、第1の段階の期間と第3の段階の期間に関して、温度変化に応じた期間増減の倍率は表示データを書き込むときの期間の増減の倍率と同じである。しかし、第2の期間に関しては、温度が低くなった場合、それらの倍率よりも電圧印加期間(0Vの電圧印加期間)の倍率を大きくとることが好ましい。
具体的な温度設定については、表示リセットにおける第2の段階の期間を除いた全ての期間(表示リセットと表示データの書き込みの期間)に関して、倍率n(tp)は(tp=温度)、5〜50の範囲の定数であるKAを、下記式3を満たすように設定するとコントラストの高い表示を得ることができた。下記式3において、「^」の右側は指数を示す。
n(tp)=n(25)×2^((25−tp)/KA) ・・・(3)
また、所定温度を25℃とすると、任意の温度tpにおける表示データに対応した電圧条件にもとづいて各画素に電圧を印加する期間(アドレッシング期間)の長さをT2(tp)としたときに、下記式4の関係を満たすことが好ましい。
T2(tp)=T2(25)×2^((25−tp)/KB) ・・・(4)
KBは使用するCL−LCに応じて設定される定数であり。5〜50の範囲に設定することが好ましい。KAとKBはおよそ25にすることが好ましい。
さらに、第2の段階は印加電圧0Vの状態であるから、所定の温度でその期間をあらかじめ長い期間に設定しておけば、温度によって、全ての段階の期間を一律に設定することができる。かつ、電圧振幅を調整することもなく、各温度において高速の表示を行うことができた。
次に、CL−LCDをHG状態またはPL状態でリセットを行う参考例について説明する。図27に駆動波形のタイミングチャートを、図28に駆動回路のうちの信号変換回路のブロック図を、図29に信号変換回路の動作のタイミングチャートを示す。回路構成と動作に関し、上記の発明の実施の形態1、2および3と多くの点で共通する。本参考例で必要とする電圧パルスを発生するように、図16の回路構成および図17の動作タイミングを変更することで達成できる。
すなわち、例1−1の液晶パネルに図27の駆動波形で表示を行った。液晶パネル全体に40Vの電圧を13.3ms印加し、それに引き続いて、無電圧時間を1ms設けた。続いて、線順次駆動を行ったv。選択時には、オン表示(PL状態)では、Vr+Vcの電圧が印加され、オフ表示(FC状態)では、Vr−Vcの電圧が印加された。Vr=35V,Vc=5Vとした。また、行電極の選択時間を3.3msにした。テストパターンを表示した結果、残像もなく高コントラスト比の表示が得られた。
(例4)上記の発明の実施の形態1、2、3および参考例のそれぞれを用いて、携帯型の表示装置の一種である電子ブック、ページャーやモバイル型表示装置に使用できる液晶パネルを作成した。行電極と列電極を備えた高精彩なフルドットマトリックスの表示が鮮明に行うことができた。図30にその表示の一態様を示す。文字が細かくても、充分に読み取ることができた。また、視野角が広く、表示画面の書き換えが違和感なく実行され、見やすい表示品位を達成できた。また、比較的大型の表示画面を用いる公衆表示装置や、電子写真表示装置にも適用できるものであった。