JP4921057B2 - 放射温度測定装置 - Google Patents
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Description
従来の放射温度測定装置としては、温度測定に先立って物体(被測定物)に固有の放射率を求めて設定する煩雑さを解消するべく、すなわち、物体(物質)の放射率が分からなくても温度測定を行えるようにするべく、プランクの法則に基づいて、物体から放射される赤外線の放射エネルギを異なる複数の波長領域において測定し、それぞれの放射エネルギの比を求め、その値(赤外線センサの出力比)と温度の対応関係により物体の温度を求めるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、赤外線を照射する一つの発光源とその反射光を受光する赤外線センサとの配置関係が所定位置からずれた場合、あるいは、赤外線が照射される物体の照射面の面粗度が悪い場合には、前述同様に、出力値に基づいて算出される反射率、放射率、及び温度は、実際の値から大きく逸脱して(ずれて)しまう虞がある。
この構成によれば、赤外光源から環状に発せられた赤外線は、直接又はリフレクタにより反射されて被測定物の測定表面に照射され、放射光検出手段により、赤外光源をオフにした状態で被測定物からの放射光における複数の異なる波長領域での赤外線強度が検出され、又、重畳光検出手段により、赤外光源をオンにした状態で被測定物からの放射光及び反射光の重畳光における複数の異なる波長領域での赤外線強度が検出される。そして、演算手段により、プランクの法則及びキルヒホッフの法則に基づいて種々の換算処理及び補正処理を施して温度が算出される。
例えば、重畳光検出手段の出力から放射光検出手段の出力を差し引いて得られた赤外線強度から被測定物の反射率を求め、キルヒホッフの法則に基づいて反射率から放射率を求め、異なる波長領域で放射率が明確に異なる非灰色体等の被測定物に対して放射率の補正値を求め、算出された放射率又は補正された放射率に基づいて被測定物の温度を算出する。このように、反射率→放射率→温度を算出するため、波長領域によって放射率が変化する非灰色体等の被測定物においても高精度に温度を測定することができる。
また、温度を算出するに至る過程では、異なる複数の波長領域での赤外線強度を測定し、測定された複数の赤外線強度の比に基づいて温度を算出するため、経時変化等による影響を受けることなく高精度に温度を測定することができる。
さらに、赤外光源及びリフレクタは、放射光検出手段検出及び重畳光検出手段を取り囲むと共に被測定物に対して燃焼ガスを噴出するべく環状に形成されたバーナの中央領域に配置されるように形成されているため、赤外光源と放射光検出手段及び重畳光検出手段の位置関係を従来のスポット光源の如く高精度に位置決めする必要はなく、鍋底のような被測定物の面粗度及び反射率が悪くても鏡面反射光と拡散反射光を区別無く受光できるため、鍋底等の被測定物の測定表面が平面のみならず凸凹状の面であっても、高精度に温度を測定することができる。
この構成によれば、放射光検出手段及び重畳光検出手段は、それぞれ二組の赤外線センサにより形成されて、それぞれ二つの波長領域での赤外線強度を検出するため、温度を高精度に測定しつつも、装置を簡素化することができる。
この構成によれば、放射光検出手段及び重畳光検出手段の第1赤外線センサ及び第2赤外線センサは、それぞれフィルタ及び受光素子により形成されているため、温度を高精度に測定しつつも、構造の簡素化、装置の小型化を達成することができる。
この構成によれば、放射光検出手段及び重畳光検出手段が二つの赤外線センサを兼用するため、それぞれに二つの赤外線センサを設ける必要がなく、赤外光源をオン/オフして、二つの赤外線センサ(第1フィルタ及び第1受光素子、第2フィルタ及び第2受光素子)だけで、放射光の赤外線強度と重畳光(放射光及び反射光)の赤外線強度を測定することができる。これにより、部品点数を削減でき、装置をより簡素化、小型化することができる。
この構成によれば、被測定物から放射された放射光及び被測定物から放射及び反射された重畳光(放射光及び反射光)は、窓又はレンズから筒状部材の内部に進入し、放射光検出手段及び重畳光検出手段によりそれぞれ検出される。
ここで、赤外光源から環状に発せられた赤外線は、直接又はリフレクタにより反射されて被測定物の測定表面に照射され、その照射光は測定表面により反射されて赤外光源の中心領域に配置された窓又はレンズから放射光検出手段及び重畳光検出手段に向けてそれぞれ進入する。したがって、被測定物により反射された鏡面反射光及び拡散反射光が区別無く受光され、又、筒状部材により窓又はレンズを通らない赤外線が検出されるのを防止でき、より高精度に温度測定を行うことができる。
この構成によれば、被測定物(の測定表面)に対して、赤外光源及びリフレクタの離隔距離を調整できるため、赤外光源から発せられる赤外線の照射範囲(立体角)を必要に応じて適宜調整することができる。
この構成によれば、断熱部材が、赤外光源が発する赤外線の放射エネルギがリフレクタから筒状部材に伝わるのを防止するため、放射光検出手段及び重畳光検出手段が受光作用以外に受ける熱の影響を防止でき、温度を高精度に検出することができる。
図1ないし図4は、本発明に係る放射温度測定装置をガス調理装置に適用した一実施形態を示すものであり、図1はガス調理装置の概略構成図、図2は放射温度測定装置の概略構成を示す縦断面図、図3は放射温度測定装置の一部を示す横断面図、図4は放射温度測定装置の一部をなす演算回路を示すブロック図である。
ここで、発熱体としては、複数の異なる波長領域を含む赤外線を発するものであれば、ニクロム線やカンタル線等の如き抵抗体、ハロゲンヒータ、カーボンヒータ、セラミックヒータ、白金ヒータ等が適用される。尚、赤外光源10としては、環状に離散的に複数配列した発光ダイオードを採用してもよい。
このように、赤外光源10として、発熱体又は発光ダイオードを採用することにより、上記の如き既存の発熱体を環状に成型し、又は、赤外線を発する既存の発光ダイオードを複数配列するだけで、赤外光源10を容易に形成することができる。
そして、リフレクタ20は、環状の赤外光源10を環状溝21内に非接触にて受け入れた状態で、赤外光源10が発した赤外線を、被測定物W(の測定表面Ws)に向けて反射するようになっている。これにより、赤外光源10が発した赤外線を、有効に利用して被測定物Wに照射することができる。
すなわち、赤外光源10から環状に発せられた赤外線は、直接又はリフレクタ20により反射されて被測定物Wの測定表面Wsに照射され、その照射光は測定表面Wsにより反射されて赤外光源10の中心領域に配置された窓70から第1赤外線センサ30及び第2赤外線センサ40に向けてそれぞれ進入する。したがって、被測定物Wにより反射された鏡面反射光及び拡散反射光が区別無く受光されることになり、より高精度に温度測定を行うことができる。
第2赤外線センサ40は、図2に示すように、第1波長領域λ1とは異なる所定の第2波長領域λ2の赤外線を通す第2フィルタ41、第2フィルタ41を通過した赤外線を受光する第2受光素子42を備えている。このように、第2赤外線センサ40は、第2フィルタ41及び第2受光素子42により形成されているため、温度を高精度に測定しつつも、構造の簡素化、装置の小型化を達成することができる。
また、第1赤外線センサ30及び第2赤外線センサ40は、赤外光源10をオンにした状態で、被測定物Wから放射される放射光L1及び反射される反射光L2が重なり合った重畳光における複数の異なる波長領域(ここでは、波長領域λ1と波長領域λ2)での赤外線強度を検出する重畳光検出手段として機能するようになっている。
そして、筒状部材50は、その内側に第1赤外線センサ30及び第2赤外線センサ40を収容し、その上端に(第1赤外線センサ30及び第2赤外線センサ40よりも被測定物W側寄りに)おいて窓70を保持し、その外周面において円筒状の断熱部材60を介してリフレクタ20を保持している。
そして、断熱部材60は、赤外光源10が発する赤外線の放射エネルギがリフレクタ20から筒状部材50に伝わるのを防止するようになっている。これにより、第1赤外線センサ30及び第2赤外線センサ40が窓70を通して赤外線を受光する以外に、周りから熱の影響を受けるのを防止できる。
このように、筒状部材50の上端に窓70を設けることにより、筒状部材50の内部に異物等が侵入して、第1赤外線センサ30及び第2赤外線センサ40へ影響を及ぼすのを防止することができる。
したがって、被測定物Wからの放射光L1及び反射光L2(鏡面反射光及び拡散反射光)が受光されると共に、筒状部材50により、窓70を通らない赤外線が検出されるのを防止できるため、より高精度に温度測定を行うことができる。
先ず、プランクの法則によれば、絶対温度をT(K)、放射定数をC1,C2、波長をλ(μm)、被測定物Wの放射率をεで表すと、波長λの赤外線による赤外線強度(放射エネルギ、分光放射発散度)E(λ)は、次式(1)で表される。
E(λ)=εC1[λ−5{exp(C2/λT)}−1]−1 ・・・(1)
また、キルヒホッフの法則によれば、被測定物Wの放射率εと反射率Rの関係は、次式(2)で表される。
ε=1−R ・・・(2)
すなわち、被測定物Wの温度を演算により求める際には、上記(1),(2)の式を用いて、所定の換算処理及び補正処理を施すものである。
すなわち、放射光L1と重畳光(放射光L1+反射光L2)における異なる2つの波長領域(λ1、λ2)での赤外線を、第1赤外線センサ30及び第2赤外線センサ40で受光し、各波長領域における放射光成分を差し引いた反射光成分の出力値(所定の増幅率で増幅した素子出力値)は、図5(a)に示す結果となる。
したがって、赤外光源10から発せられた赤外線強度と反射光の赤外線強度から、種々の被測定物Wの反射率Rに関する情報が得られる。
そこで、キルヒホッフの法則に基づいて、銅鍋の放射率を0.1として、図5(a)に示すデータから所定の換算処理を施して、種々の被測定物Wにおける放射率εを求めると、図5(b)に示す結果となる。
この結果によれば、有機塗料コーティング鍋及びアルマイト処理鍋の被測定物Wに関しては、2つの波長領域(λ1、λ2)において放射率εが大きく変化していることが理解される。
そして、プランクの法則に基づいて、出力比−温度の関係を予め求めておき、実際に得られた出力比から対応する温度Tを読み取り、すなわち、図6(b)に示すように、予め求められた種々の被測定物Wに関する出力比−温度の関係を示すグラフから温度Tを読み取り、その温度Tを測定温度として出力する。
これら図5及び図6に示すデータは、被測定物Wに関する情報として、予めROM82に格納されている。
ここで、赤外光源10のオン/オフは、駆動回路86から出力される切替信号に基づいて制御される。温度測定時には、赤外光源10を所定のタイミングでオン/オフして、放射光L1だけの場合、放射光L1及び反射光L2の重畳光の場合において、交互に温度測定が行われる。
この結果によれば、被測定物Wの測定表面Wsが平面の場合は、図7(a)に示すように、いずれの赤外光源であっても測定データのバラツキは小さいが、被測定物Wの測定表面Wsが凸凹面の場合は、図7(b)に示すように、リング状の赤外光源10の方が測定データのバラツキが小さく、高精度に温度を測定できることが理解される。
すなわち、この実施形態においては、図8に示すように、断熱部材60´は、筒状部材50と同一の軸心Sをもつ円筒状に形成されると共に、筒状部材50の全域を覆うように形成され、その外周面において軸心S方向に配列するように形成された複数の係合溝60a´を備えている。
さらに、赤外光源10は、リフレクタ20´の環状溝21(反射面21a)内に非接触にて配置されると共にリフレクタ20´と一体的に軸心S方向に移動し得るように保持されている。
これによれば、被測定物W(の測定表面Ws)に対して、赤外光源10及びリフレクタ20´の離隔距離を調整できるため、赤外光源10から発せられる赤外線の照射範囲(立体角)を必要に応じて適宜調整することができる。
すなわち、この実施形態においては、図9に示すように、リフレクタ20´´が、赤外光源10を覆うようにかつ径方向外側領域が被測定物Wに向けて環状に開口するように形成されている。
これによれば、リフレクタ20´´を適宜所望の形状にすることにより、赤外光源10から発せられた赤外線が被測定物Wに照射される照射範囲を適宜調整、例えば、赤外光源10の中心寄りに方向付けすることができる。
この放射温度測定装置M´は、操作者が指で掴むボデー100、ボデー100に対して軸心S方向に可動に形成された可動ボデー110、ボデー100に設けられた操作釦101、ボデー100の内部に設けられた第1赤外線センサ30及び第2赤外線センサ40、ボデー100に設けられると共に第1赤外線センサ30及び第2赤外線センサ40を収容する円筒状の筒状部材50、筒状部材50の先端に設けられたレンズ70´、筒状部材50の外周に設けられた円筒状の断熱部材60´、可動ボデー110の先端に設けられたリフレクタ20´、リフレクタ20´の環状溝21内に露出するようにかつ環状に離散的に配列された複数の発光ダイオードからなる赤外光源10´等を備えている。
この場合も、被測定物Wが黒体,灰色体,非灰色体のいずれであっても、その被測定物Wの放射率εを予め求めて設定する必要がなく、又、被測定物Wの測定表面Wsが平面あるいは凹凸面のいずれであっても、さらには、構成要素の経時変化等による影響を受けることなく、被測定物Wの温度Tを非接触にて容易にかつ高精度に測定することができる。
上記実施形態においては、放射光検出手段及び重畳光検出手段として、共通の赤外線センサ30,40を適用したが、これに限定されるものではなく、別々に専用の赤外線センサを採用してもよい。
上記実施形態においては、放射温度測定装置を適用したものとして、ガス調理装置を示したが、これに限定されるものではなく、温度測定を要するその他の機器に組み込まれてもよい。
1a 加熱口
2 五徳
3 バーナ
3a ケーシング
3b 炎口
4 供給管
5 ガスノズル
6 調整弁
7 燃焼制御回路
8 温度表示器
10,10´ 赤外光源
20,20´,20´´ リフレクタ
21 環状溝
21a 反射面
22 結合孔
22´ 嵌合孔
23´ 係合片
30 第1赤外線センサ(放射光検出手段、重畳光検出手段)
31 第1フィルタ
32 第1受光素子
40 第2赤外線センサ(放射光検出手段、重畳光検出手段)
41 第2フィルタ
42 第2受光素子
50 筒状部材
60,60´ 断熱部材
60a´ 係合溝
70 窓
70´ レンズ
80 演算制御回路(演算手段)
81 CPU
82 ROM
83 AMP(増幅回路)
84 A/D変換回路
85 RAM
86 駆動回路
87 入力回路
88 出力インタフェース
90 回路基板
100 ボデー
101 操作釦
110 可動ボデー
M,M´ 放射温度測定装置
S 軸心
L1 放射光
L2 反射光
Claims (7)
- 被測定物に対して複数の異なる波長領域を含む赤外線を照射するべく環状に連続して形成された発熱体からなる赤外光源と、
前記赤外光源から発せられる赤外線を被測定物に向けて反射するべく環状に連続して形成されたリフレクタと、
前記赤外光源をオフにした状態で被測定物からの放射光における複数の異なる波長領域での赤外線強度を検出する放射光検出手段と、
前記赤外光源をオンにした状態で被測定物からの放射光及び反射光の重畳光における複数の異なる波長領域での赤外線強度を検出する重畳光検出手段と、
前記放射光検出手段及び重畳光検出手段の検出情報に基づいて被測定物の温度を演算する演算手段と、を備え、
前記赤外光源及びリフレクタは、被測定物の測定表面側から観て、前記放射光検出手段及び重畳光検出手段を取り囲むと共に被測定物に対して燃焼ガスを噴出するべく環状に形成されたバーナの中央領域に配置されるように形成されている、
ことを特徴とする放射温度測定装置。 - 前記放射光検出手段は、所定の第1波長領域の赤外線を受光して検出する第1赤外線センサと、前記第1波長領域とは異なる所定の第2波長領域の赤外線を受光して検出する第2赤外線センサと、を含み、
前記重畳光検出手段は、前記第1波長領域の赤外線を受光して検出する第1赤外線センサと、前記第2波長領域の赤外線を受光して検出する第2赤外線センサと、を含む、
ことを特徴とする請求項1記載の放射温度測定装置。 - 前記第1赤外線センサは、前記第1波長領域の赤外線を通す第1フィルタと、前記第1フィルタを通過した赤外線を受光する第1受光素子と、を含み、
前記第2赤外線センサは、前記第2波長領域の赤外線を通す第2フィルタと、前記第2フィルタを通過した赤外線を受光する第2受光素子と、含む、
ことを特徴とする請求項2記載の放射温度測定装置。 - 前記放射光検出手段の第1赤外線センサ及び第2赤外線センサは、前記重畳光検出手段の第1赤外線センサ及び第2赤外線センサをそれぞれ兼ねる、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の放射温度測定装置。 - 前記放射光検出手段及び重畳光検出手段は、前記赤外光源の中心と略同軸に軸心をもつ筒状部材の内側に配置され、
前記筒状部材には、前記放射光検出手段及び重畳光検出手段よりも被測定物側寄りにおいて、窓又はレンズが配置され、
前記筒状部材の外側には、前記赤外光源及びリフレクタが配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載の放射温度測定装置。 - 前記リフレクタ及び赤外光源は、前記筒状部材の軸心方向における位置を調整可能に形成されている、
ことを特徴とする請求項5記載の放射温度測定装置。 - 前記筒状部材と前記リフレクタの間には、断熱部材が介在されている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の放射温度測定装置。
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