JP4917215B2 - 超音波アダプタを有する工具装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コアドリル装置又はグラインダ装置等の工具装置に関し、特に、建材、岩石、金属、木材等の被加工材を研削又は切削するための超音波アダプタを有する工具装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
ヨーロッパ特許第０２８０８３５号明細書は、硬質材料の端面の少なくとも部分的な回転運動により岩石を研削加工する円筒形状のドリルクラウンを記載している。この種のドリルクラウンでは、通常、洗浄／冷却用の液体として水を使用する。その際、超音波振動が、容量性電気音響変換器により超音波周波数領域内で励起される。電気音響変換器は、例えば、バイアス電圧を印加した圧電ディスクから構成されるものである。
【０００３】
超音波周波数領域における容量性電気音響変換器及び圧電ディスクは、コンデンサの誘電体として電歪材料から形成される。この誘電体は、電圧が印加されると寸法を変える。このように形成したコンデンサは、その機械的な特性に応じた固有共振周波数を有する。容量性電気音響変換器は、十分な変形を生じさせるために高い電圧を必要とする。
【０００４】
通常、圧電変換器の電気的特性（容量）をインダクタンスによって補完し、インダクタンスを適切に整合させることにより、電気側で発生する並列振動回路は、電機音響変換器の剛性および質量によって決定される機械的な振動回路と同一の共振周波数を有する。
【０００５】
ヨーロッパ特許第０７２０８９０号明細書は、回転運動により材料を切削する円筒形状の工具を具える手持ち式工具装置を記載している。この工具には、電歪材料からなる容量性電気音響変換器を介して、縦方向の超音波振動が軸線方向に重畳する。ドリルクラウンは、振幅共振周波数に応じて、超音波振動の周波数に整合するように設計される。
【０００６】
米国特許第３６１４４８４号明細書は、回転工具を駆動するボール盤のために、電歪材料からなる容量性電気音響変換器を工具と共に回転可能とした超音波アダプタを記載している。この変換器は、スリップリングを介して超音波周波の交流電圧電源に結合する。このようなエネルギ供給は、機械的接触に起因する摩耗が生じ、耐用寿命が限られる点で不利である。更に、水を使用することにより、電歪性変換器の作動に必要な高電圧に対する絶縁問題が生じて作業の安全性を脅かす惧れがある。
【０００７】
更に、ヨーロッパ特許第０６８００６０号明細書は、環状の回転可能な変圧器よりなる回転伝達手段を記載しており，この変圧器はステータおよびロータのための２個の変圧器コアを含み，これらの変圧器コアにそれぞれ巻き付けたコイルの交流磁界を介して、ステータからロータに回転エネルギを伝達するものである。
【０００８】
【発明の課題】
本発明の課題は、超音波振動を工具に印加する超音波アダプタを具えた工具装置を改良し、上述した従来技術の問題点を解消することである。さらに、工具の回転運動に超音波振動を重畳可能とすることである。
【０００９】
【課題の解決手段】
この課題を解決するため、本発明は、回転可能な工具に印加する超音波を発生するために容量性の電気音響変換器を超音波発生器に接続し、前記電気音響変換器を変圧器の二次巻線と接続し、超音波発生器を変圧器の一次巻線と接続した超音波アダプタを有する工具装置において、二次巻線を相対回転が生じないように工具に結合すると共に、該二次巻線を変圧器内で回動可能に配置したことを特徴とする。また、有利な実施形態については、従属請求項に記載されているとおりである。
【００１０】
本発明においては、非接触のエネルギ伝達を行うため、工具装置の超音波アダプタは、変圧器の二次巻線と結合した容量性電気音響変換器を具える。変圧器の一次巻線は、超音波領域に交流電圧を生じる電気的な超音波発生器と結合し、交流磁界を介して電力を容量性電気音響変換器に伝達する。その際、二次巻線は、同時に、容量性電気音響変換器と結合して並列共振回路を形成し、共振時に電圧超過を引き起こす。
【００１１】
非接触のエネルギ伝達により、機械的摩耗は著しく低減する。このことは、工具装置の耐用寿命にとって有利である。更に、水により洗浄／冷却を行いながら材料を加工する場合、エネルギ伝達に係る絶縁には何らの問題も生じない。並列インダクタンスとして二次巻線を使用することにより、従来は電気振動回路の同調に必要とされていた付加インダクタンスを省略することが可能である。
【００１２】
更に、容量性電気音響変換器と、二次振動回路と、一次振動回路と、ドリルクラウンのような工具の縦振動振幅との共振周波数は、超音波発生器の周波数と互いに同調させるのが有利である。
【００１３】
非接触のエネルギ伝達に供される変圧器部品において、二次巻線は電気的な共振回路と容量性電気音響変換器との同調に有用である。
【００１４】
非接触のエネルギ伝達に供される変圧器部品において、内側変圧器コアの質量は工具の機械的な共振回路の同調に有用である。
【００１５】
上述のように、非接触のエネルギ伝達に供される変圧器部品を十分に活用することにより、半径方向に互いに入り組んだ部品を配置すると共に、内側から外側に向けて、内側の変圧器コア、二次巻線、空隙、一次巻線、外側の変圧器コアを設け、非接触エネルギ伝達に係る変圧器のコンパクトな構造が実現可能となる点で有利である。
【００１６】
この場合、内側および外側変圧器コアを半径方向で互いに対向させて配置し、内側変圧器コアの外周側に開口を設けてその内部に二次巻線を配置すると共に、外側変圧器コアの内周側に開口を設けてその内部に一次巻線を配置し、一次巻線は相対回転を生じないように工具装置と結合して変圧器のステータを形成し、二次巻線は相対回転を生じないように工具と結合して変圧器のロータを形成するのが好適である。
【００１７】
代替案として、変圧器は、工具軸線方向で互いに対向させて配置した２個の変圧器コアを具え、その一方の変圧器コアの内部に一次巻線を配置すると共に、一次巻線の内周側で他方の変圧器コアの内部に二次巻線を配置し、一次巻線は相対回転を生じないように工具装置と結合して変圧器のステータを形成し、二次巻線は相対回転を生じないように工具と結合して変圧器のロータを形成する構成とすることも可能である。
【００１８】
上述した変圧器の構成によれば、一次巻線および対応する変圧器コアが半径方向外側に配置され、これらに対して半径方向の空隙を隔てて、二次巻線および対応する変圧器コアが半径方向内側に配置されるため、変圧器の一次巻線および二次巻線の間で工具軸線に対して平行な相対運動が可能である。その結果、例えば工具交換に際しては工具を、容量性電気音響変換器および変圧器の二次巻線側部分と一体的に取り外すことが可能である。
【００１９】
変圧器の構造サイズを減少するため、巻線比を１：１とするのが有利である。更に、２０〜３５ｋＨｚの給電周波数の場合にコイル巻数を減少することが可能である。
【００２０】
強磁性材料からなる内側変圧器コアの質量は振動質量として作用すると共に、機械振動系の平衡質量として使用することができる。
【００２１】
内側変圧器コアは、互いに電気的に絶縁して配置された積層板から構成されるのが有利である。磁力線に従う渦電流損失を回避するために、積層板は多数の板を合成するか、あるいは非切削で成形する。
【００２２】
容量性電気音響変換器は、工具軸線に沿って配置するのが有利であり、工具軸線の方向に生じる振動振幅は、局部的な軸線方向の圧力超過によって、研磨性の材料切削を高める。
【００２３】
工具の縦振動振幅に関連して、容量性電気音響変換器を振動ノードに配置するのが有利である。
【００２４】
【実施の形態】
以下、本発明を図示の好適な実施形態について説明する。
【００２５】
図１に示すように、超音波アダプタ１は、工具軸線Ａを中心として工具２の回転運動を生じる工具装置３（要部のみを図示した。）に適用されるものであり、回転可能な変圧器６の二次巻線５と結合した、回転可能な容量性電気音響変換器４を具える。変圧器６の一次巻線７は超音波領域における高性能の超音波発生器８と接続し、二次巻線５は容量性の電気音響変換器４に並列接続する。工具２は、円筒形状のコアドリル孔を岩石９内に切削加工するための中空クラウンドリルとし、工具軸線Ａに沿うドリル用液体チャネル１０において工具装置３と結合する。変圧器６は、それぞれＵ字形断面を有するシェル鉄心よりなる内側および外側変圧器コア１１，１３を両者間に空隙１２が形成されるように半径方向で互いに対向させて配置した構成とされている。内側変圧器コア１１の外周側に開いた開口の内部には二次巻線５が配置され、外側変圧器コア１３の内周側に開いた開口の内部には一次巻線７が配置されている。一次巻線（７）は、相対回転を生じないように工具装置３と結合して変圧器６のステータを形成する。また、二次巻線５は、相対回転を生じないように工具２と結合して変圧器６のロータを形成するものである。このようなコンパクト構造を有する変圧器６との関連において、上述した容量性電気音響変換器４は中空環状に形成されており、工具装置３の軸線方向で内側変圧器コア１１および二次巻線５に隣接するように配置されている。これにより、変圧器６の二次巻線側部分の質量も工具２の機械的振動回路に組み込まれるものである。
【００２６】
図２に示す等価回路において、交流電流ｉ２及び交流電圧ｕ２に係る電気振動回路は、コイルで構成されるインダクタンスＬｐ、容量性電気音響変換器で構成される容量Ｃｐ、並びに、損失により決定される抵抗Ｒｐとを有する。この電気振動回路は、カップリング１：Ａを介して、変位速度ｖおよび変位力Ｆに係る機械的振動回路と結合する。機械的振動回路は、固有減衰値ｄ、剛性（スチフネス）１／ｃ、質量ｍおよび減衰荷重ｄＬにより表わされる。インダクタンスＬｐは、電流ｉ１および電圧ｕ１をもって給電される変圧器の二次側を介して、誘電性のエネルギ伝達を行う。
【００２７】
周波数２０ｋＨｚ、出力２ｋＷの超音波アクタについて、レイアウトの寸法を決定する。その結果、伝達比u＝１の変圧器では、Ｕ２＝１０００Ｖ及びＩ２＝２Ａの給電電圧が生じた。飽和領域では作動しない高透磁率材料を使用する場合には、コイル巻数を１２０とするのが一次側及び二次側における所要面積の低減に関連して有利である。このような少ないコイル巻数は、２０ｋＨｚの供給電圧を採用したことに基づいて可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図１】 本発明による超音波アダプタを具える工具装置を示す縦断面図である。
【図２】 電気・機械振動回路の等価回路図である。
【符号の説明】
１ 超音波アダプタ
２ 工具
３ 工具装置
４ 電気音響変換器
５ 二次巻線
６ 変圧器
７ 一次巻線
８ 超音波発生器
９ 岩石
１０ 液体チャネル
１１，１３ 変圧器コア
１２ 空隙

Claims (12)

1. 回転可能な工具（２）に印加する超音波を発生するために容量性の電気音響変換器（４）を超音波発生器（８）に接続し、前記電気音響変換器（４）を変圧器（６）の二次巻線（５）と接続し、超音波発生器（８）を変圧器（６）の一次巻線（７）と接続した超音波アダプタ（１）を有する工具装置において、二次巻線（５）を相対回転が生じないように工具（２）に結合すると共に、該二次巻線（５）を変圧器（６）内で回動可能に配置したことを特徴とする工具装置。
2. 請求項１記載の工具装置において、前記電気音響変換器（４）及び／又は二次振動回路及び／又は工具（２）の縦振動振幅の共振周波数を、超音波発生器（８）の周波数に応じて設定したことを特徴とする工具装置。
3. 請求項１記載の工具装置において、超音波アダプタ（１）及び／又は工具（２）の共振周波数を、２０〜３５ｋＨｚとしたことを特徴とする工具装置。
4. 請求項１記載の工具装置において、前記電気音響変換器（４）を、工具装置（３）側で二次巻線（５）に隣接させて配置したことを特徴とする工具装置。
5. 請求項４記載の工具装置において、変圧器（６）の半径方向内側から外側に向けて、内側変圧器コア（１１）、二次巻線（５）、空隙（１２）、一次巻線（７）および外側変圧器コア（１３）を順次に配置したことを特徴とする工具装置。
6. 請求項５記載の工具装置において、内側および外側変圧器コア（１１，１３）を半径方向で互いに対向させて配置し、内側変圧器コア（１１）の外周側に開口を設けてその内部に二次巻線（５）を配置すると共に、外側変圧器コア（１３）の内周側に開口を設けてその内部に一次巻線（７）を配置し、一次巻線（７）は相対回転を生じないように工具装置（３）と結合して変圧器（６）のステータを形成し、二次巻線（５）は相対回転を生じないように工具（２）と結合して変圧器（６）のロータを形成したことを特徴とする工具装置。
7. 請求項１記載の工具装置において、変圧器（６）は、工具軸線方向（Ａ）で互いに対向させて配置した２個の変圧器コア（１１，１３）を具え、その一方の変圧器コア（１３）の内部に一次巻線（７）を配置すると共に、一次巻線（７）の内周側で他方の変圧器コア（１１）の内部に二次巻線（５）を配置し、一次巻線（７）は相対回転を生じないように工具装置（３）と結合して変圧器（６）のステータを形成し、二次巻線（５）は相対回転を生じないように工具（２）と結合して変圧器（６）のロータを形成したことを特徴とする工具装置。
8. 請求項１に記載の工具装置において、工具（２）を、容量性電気音響変換器（４）及び変圧器（６）の二次部分と交換可能に結合したことを特徴とする工具装置。
9. 請求項５記載の工具装置において、内側変圧器コア（１１）の質量を、機械振動系の平衡質量としたことを特徴とする工具装置。
10. 請求項５記載の工具装置において、内側変圧器コア（１１）を、互いに電気的に絶縁された積層板で構成したことを特徴とする工具装置。
11. 請求項２記載の工具装置において、容量性電気音響変換器（４）を、工具（２）の縦振動振幅に関連して、振動ノードに配置したことを特徴とする工具装置。
12. 請求項４記載の工具装置において、工具（２）及び／又は変圧器（６）及び／又は容量性電気音響変換器（４）を、工具軸線（Ａ）に沿って中空に形成したことを特徴とする工具装置。

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