JP4917170B2 - カーボンナノチューブ支持体及びその製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ支持体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、カーボンナノチューブ(以下、CNTで表記する)を素材に用いたナノデバイスやその製作過程に必要なCNT担持体などのCNT支持体及びその製造方法に関する。
近年,ナノテクノロジーを飛躍的に発展させる新素材としてカーボンナノチューブ(CNT)が注目を集めている。CNTを素材に用いたナノデバイスとしては、例えば、原子間力顕微鏡用のCNT探針、CNTを回路素子として用いる量子効果トランジスタ等がある。
以下、CNTナノデバイスの一例としてCNT探針を説明する。試料表面の物性情報を原子レベルで検出できるトンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)などの走査型プローブ顕微鏡(SPM)が開発されている。SPMを用いて試料表面の物性情報を得るには、試料表面に直接接触して情報を検出する探針が必要となる。なお、SPMの一種であるAFMは、CNTプローブを用いてDVDディスクの表面凹凸を高分解能で測定でき、DVDディスクの表面物性測定に不可欠な測定装置である。また、CNTプローブを用いたSPMは、試料の表面形状だけでなく、電気的物性や磁気的物性等の測定にも利用することができる。例えば、SPMの一種である磁気力顕微鏡(MFM)は、強磁性探針と試料間の磁気力から試料の磁区構造を測定するのに用いられている。
従来、CNT探針はカンチレバー部に突出部を形成し、この突出部先端を先鋭加工したシリコンカンチレバーにより構成されていた。この突出部の先鋭な先端が探針点となり、この先端を試料表面に接触させて試料表面との物理的・化学的相互作用を検出し、原子構造情報・磁性情報・官能基情報・電子情報などの物性情報を得ている。
物性情報の分解能は探針点が先鋭なほど高くなることは当然である。しかし、突出部の先端を半導体技術により先鋭加工しても、先端の直径を数十nm以下にすることは現在の技術レベルでは困難であった。このような中で、カーボンナノチューブが発見され、H.Dai等はNATURE(Vol.384,pp. 147−150 (14 November 1996))(非特許文献1)において、カーボンナノチューブを前記突出部に付着させたカーボンナノチューブ探針を提案するに到った。
カーボンナノチューブの直径Dは約1nmから数十nmであり、軸長Lは数μmもある。そのアスペクト比(L/D)は数百から数千に達し、SPM用の探針として最適の性質を備えており、カンチレバー突出部にCNTを固着したCNTプローブとして実用化されている。
本発明者等は、既に、CNTプローブの製造に不可欠な、CNTをより強固に前記カンチレバー突出部に固定させる二つの方法を発明し、公表している。第1には、コーティング被膜によりカーボンナノチューブを突出部表面に被覆固定する方法で、特開2000−227435公報(特許文献1)として公開されている。第2には、カーボンナノチューブの基端部を電子ビーム照射又は電流通電により突出部表面に融着させる方法で、特開2000−249712公報(特許文献2)として公開されている。
特開2000−227435公報 特開2000−249712公報 H.Dai et al., NATURE, Vol. 384, pp. 147−150 (14 November 1996)
ナノデバイスの創製には、例えば、CNTプローブのように、力学的負荷下での機能が想定される場合、ナノサイズの選択的局所領域への高精度かつ強固な部材固定技術が不可欠である。操作プローブ顕微鏡用探針材料には、先端曲率ができるだけ小さく、磨耗等の損傷ができるだけ少ない性質のものが望まれるが、CNTは、ナノメートルサイズの直径を有し、機械的強度にも優れているので、従来のシリコンカンチレバーよりはるかに優れた性能を付与することができる。
ところで、CNTを装着する際には、プローブ使用における走査時あるいは雰囲気暴露時の応力印加によってプローブからCNTが脱離しないようにしっかりと固定される必要がある。CNTの固定処理は、例えば、上記特許文献2に示したように、走査型電子顕微鏡(SEM)内部でCNTを載置した固定部位に電子線をビーム照射して雰囲気中の残留炭化水素を分解して、CNT根元付近にアモルファス炭素(a−C)を堆積させることによりCNTを固定して行われている。
しかし、アモルファス炭素をCNTの固定に使用する際に、アモルファス炭素の低導電性が重要な欠点となる。CNTを使用するナノデバイスとしては、高導電性が要求されるものが多く存在する。例としては、前記SPMの1種である走査型トンネル顕微鏡(STM)、及びCNTをナノトランジスタ等のナノ電子部品として使用する電子回路が挙げられる。しかし、アモルファス炭素は無結晶性であり、しかもアモルファス炭素を形成する炭素原子として、電子構造がspであるものが多数存在するので、多数の電子が局在化され、電流に貢献しない。従って、アモルファス炭素は低導電性を有し、前記された高導電性を必要とする用途には不適である。前記されたナノデバイスの性能を高くする為には、CNTとの結合部を高導電性にする必要がある。
又、上記固定方法により固定処理可能なCNTは、SEMの分解能から、直径数nmの多層CNTが限界であった。即ち、上記固定方法では単層又は2層などの細径CNTを用いた探針を製造することができなかった。また、透過型電子顕微鏡(TEM)は、一般のSEMと比べて、高分解能観察が可能であるが、高真空中(〜10−5 Pa)での観察となるため、電子ビーム照射してもアモルファス炭素がCNT根元付近に堆積せず、CNTを固定することができなかった。
従って、本発明の目的は、上記問題を解消して、雰囲気中の残留炭化水素が極めて少ない高真空状態下において、強固なCNT固定処理を可能にして、単層又は2層などの細径CNTを用いたCNTナノデバイスや、その製作過程に必要なCNT担持体などのCNT支持体及びその製造方法を提供することである。
本発明の第1の形態は、支持体の支持部にCNTを固定したCNT支持体において、前記支持部の表面に下側グラファイト層が形成され、前記下側グラファイト層の表面にCNTの固定部が接触して配置され、更に上側グラファイト層が前記固定部を被覆することにより前記CNTが前記支持部に固定されているCNT支持体である。
本発明の第2の形態は、支持体の支持部にCNTを固定したCNT支持体において、前記支持部の表面にCNTの固定部が配置され、前記固定部及びその近傍の前記支持部表面に上側グラファイト層を形成し、前記上側グラファイト層が前記固定部を被覆することにより前記CNTが前記支持部に固定されているCNT支持体である。
本発明の第3の形態は、第1又は2の形態において、少なくとも前記上側グラファイト層の外面にアモルファス炭素層が形成されたCNT支持体である。
本発明の第4の形態は、第1〜3の形態において、前記支持体がカンチレバーであり、前記支持部が前記カンチレバーに突出形成された突出部であり、前記固定部が前記CNTの基端部であり、前記CNT支持体は、前記突出部に前記CNTの基端部が固定され、前記CNTの先端部が前記突出部から突設されるCNTプローブとなるCNT支持体である。
本発明の第5の形態は、第1〜3の形態のいずれかにおいて、前記支持体が回路基板であり、前記CNTは回路素子であり、前記支持部が前記CNTが接合される接合位置であり、前記固定部が前記CNTの端部であり、前記CNT支持体は、前記接合部に前記CNTの端部が固定されたCNT回路基板となるCNT支持体である。
本発明の第6の形態は、第1〜3の形態のいずれかにおいて、前記支持体がナイフエッジであり、前記支持部が前記CNTが突出されるエッジ部であり、前記固定部が前記CNTの端部であり、前記CNT支持体は、前記エッジ部に前記CNTの端部が固定されたCNTカートリッジとなるCNT支持体である。
本発明の第7の形態は、第1〜6の形態のいずれかにおいて、前記上側グラファイト層及び/又は前記下側グラファイト層により前記CNTを前記支持部に固定する部位が1箇所以上存在するCNT支持体である。
本発明の第8の形態は、支持体の支持部にCNTを固定したCNT支持体の製造方法において、前記支持部の表面に炭素分子又は有機物からなる炭素物質を堆積した炭素物質層を形成し、前記炭素物質層の表面にCNTの固定部を接触させて配置し、前記固定部及び/又は固定部近傍の被照射領域に電子ビーム又はイオンビームを照射して前記炭素物質層を分解し、前記分解により形成された炭素膜により前記固定部を被覆して前記CNTを前記支持部に固定するCNT支持体の製造方法である。
本発明の第9の形態は、支持体の支持部にCNTを固定したCNT支持体の製造方法において、前記支持部の表面にCNTの固定部を配置し、前記固定部及び/又はその近傍の前記支持部表面に炭素分子又は有機物からなる炭素物質を堆積した炭素物質層を形成し、前記固定部及び/又は固定部近傍の被照射領域に電子ビーム又はイオンビームを照射して前記炭素物質層を分解し、前記分解により形成された炭素膜により前記固定部を被覆して前記CNTを前記支持部に固定することを特徴とするCNT支持体の製造方法である。
本発明の第10の形態は、第8又は9の形態において、所定質量の前記炭素物質を容器内に配置し、前記容器内に前記支持体を投入して前記容器を封止し、前記容器を加熱して前記炭素物質を蒸発させて前記炭素物質を前記支持部を含む前記支持体の表面に堆積させて前記炭素物質層を形成するCNT支持体の製造方法である。
本発明の第11の形態は、第10の形態において、前記炭素物質を溶媒に混合した所定濃度の炭素物質溶液を調製し、前記炭素物質溶液の所定容量を前記容器中に注入し、加熱により前記容器から溶媒を除去して前記所定質量の炭素物質を前記容器内に残留配置させるCNT支持体の製造方法である。
本発明の第12の形態は、第10又は11の形態において、前記炭素膜により前記CNTの前記固定部を前記支持部に被覆固定した後、前記CNT支持体を洗浄溶媒により洗浄するか、又は前記支持体を加熱して、前記CNT支持体の表面に付着している前記炭素物質を除去するCNT支持体の製造方法である。
本発明の第13の形態は、第8〜11の形態のいずれかにおいて、前記炭素膜が、アモルファス炭素膜、又はグラファイト膜であるCNT支持体の製造方法である。
本発明の第14の形態は、第8〜13の形態のいずれかにおいて、前記炭素分子が、フラーレン又は金属内包フラーレンであるCNT支持体の製造方法である。
本発明の第15の形態は、第8〜13の形態のいずれかにおいて、前記有機物は炭素以外の成分を含有し、前記分解により前記炭素以外の成分が気散して前記炭素膜が形成されるCNT支持体の製造方法である。
本発明の第16の形態は、第8〜15の形態のいずれかにおいて、前記支持体がカンチレバーであり、前記支持部が前記カンチレバーに突出形成された突出部であり、前記固定部が前記CNTの基端部であり、前記CNT支持体は、前記突出部に前記CNTの基端部が固定され、前記CNTの先端部が前記突出部から突設されるCNTプローブであるCNT支持体の製造方法である。
本発明の第17の形態は、第8〜15の形態のいずれかにおいて、前記支持体が回路基板であり、前記CNTは回路素子であり、前記支持部が前記CNTが接合される接合位置であり、前記固定部が前記CNTの端部であり、前記CNT支持体は、前記接合部に前記CNTの端部が固定されたCNT回路基板であるCNT支持体の製造方法である。
本発明の第18の形態は、第8〜16の形態のいずれかにおいて、前記支持体がナイフエッジであり、前記支持部が前記CNTが突出されるエッジ部であり、前記固定部が前記CNTの端部であり、前記CNT支持体は、前記エッジ部に前記CNTの端部が固定されたCNTカートリッジであるCNT支持体の製造方法である。
本発明の第1の形態によれば、支持部の表面に下側グラファイト層が形成され、更に上側グラファイト層が前記CNTの固定部を被覆することにより前記CNTが固定される。従って、前記CNT及び前記支持部が、高導電性を有するグラファイト層を通じて、電気的に導通状態になる。これにより、電子の導通を必要とする用途において、高効率な部品を提供することができ、この部品を高感度且つ高性能な電子及び電気装置を製造するのに使用することができる。
グラファイトは、sp電子構造を有する炭素原子のみにより形成されているので、自由電子が高密度に存在する。又、アモルファス炭素などと比較して、結晶性が高く、従って前記自由電子の移動性が高い。更に、グラファイトの構造は、CNTの構造と類似しているので、グラファイトがCNTと結合する際に、グラファイトとCNTの親和性により高密着状態を得ることかでき、従って、前記結合の界面における電子移動の阻害を低くすることができる。これらの理由により、グラファイト層及びCNTとグラファイト層の界面においては、導電性が高い。この高導電性は、前記CNTを電子導通材料即ち電気導通材料として使用する際に、導通された電子即ち電気を、前記支持部へ誘導する際に、前記電子の損失を低めるのに有用である。
例えば、前記CNTを走査型トンネル顕微鏡(STM)の探針として使用する際には、前記探針を導通するトンネル電流が探知されるためには、前記トンネル電流が前記探針の支持部へ誘導されことが必要になる。もし前記探針と前記支持部との接合部における導電性が低い場合には、前記トンネル電流の損失が高くなり、従って前記STMの感度が低くなってしまう。前記接合部をグラファイト層とすることにより、前記トンネル電流の損失を低くすることができ、従って高感度なSTMを提供することができる。
又、CNTを電気回路における回路素子として使用する場合においては、前記電気回路が作動する為には、前記CNTを導通する電流が、前記CNTを支持する支持部へ誘導されることが必要になる。前記CNTと前記支持部における結合部の電気抵抗が高い場合においては、前記支持部へ誘導される電流が低くなり、従って前記電気回路の性能が低くなる。前記接合部をグラファイト層とすることにより、前記接合部における電流の低下を防止することができ、従って高性能な電気回路を提供することができる。
本発明の第2の形態によれば、CNTの固定部表面及びその近傍の支持部表面に亘って、上側グラファイト層が被覆され、前記グラファイト層により前記CNTが前記支持部に固定されるので、簡易化された構造を用いて、前記CNT及び前記支持部の結合部における導電性が高いCNT支持体を得ることができる。
第1の形態においては、下側グラファイト層及び上側グラファイト層が存在し、前記CNT及び前記支持部の導電及び接着は、両グラファイト層に依存する。しかし、上側グラファイト層が直接に支持部と接触し、且つCNTとも接触している場合には、前記上側グラファイト層のみにより前記導電及び接着が確保でき、従って下側グラファイト層は必要としない。従って、本形態においては、前記上側グラファイト層が前記CNT及び前記支持部と直接に接触し、前記CNT支持体の構造が単純化されている。
本形態においては、前記CNT及び前記支持部が必ずしも直接に接触している必要は無く、例えば前記CNT及び前記支持部の中間にアモルファス炭素が存在しても良い。この状態においては、前記アモルファス炭素が低導電性であるため、前記CNT及び前記支持部との導電は、前記上側グラファイト層に依存することになり、従って前記上側グラファイト層の高導電性が更に重要となる。
本発明の第3の形態によれば、少なくとも上側グラファイト層の外面に、アモルファス炭素層が形成されているので、前記アモルファス炭素層により上記グラファイト層が補強され、従って機械的に強固で且つ導電性が高いCNTと支持部の接合部を得ることができる。
ここにおけるアモルファス炭素層は、上側グラファイト層において、支持部と接触している表面(内面)とは反対側の表面(外面)に形成されている。しかし、前記アモルファス炭素層が、前記グラファイト層の周辺を超えて連続的に形成されても良い。又、前記アモルファス炭素層が、前記支持部及び/又は前記固定部が直接に接触しても良く、この場合には、前記アモルファス炭素層は、前記グラファイト層の前記支持部及び/又は前記固定部との結合を補強する作用を有する。
本発明の第4の形態によれば、支持部がカンチレバーに突出形成された突出部であり、また固定部がCNTの基端部であり、更に前記CNTの先端部がCNTプローブであるので、高導電性物質であるグラファイトを前記CNT及び前記支持部の接合部として有し、従って高感度を有する走査型プローブ顕微鏡(SPM)を得ることができる。
前記SPMにおいて、電気特性により物性を検査するものとしては、走査型トンネル顕微鏡(STM)、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)及び静電気力顕微鏡(EFM)等が存在する。
これらのSPMにおいては、第1の形態の説明においても記述したように、高感度を得る為には、プローブ、カンチレバー及びそれらの接合部が高導電性を有することが必要となる。従って、本発明におけるグラファイト層は、前記接合部の高導電性を確保する為に使用することができ、更に前記プローブであるCNTとカンチレバーの突出部である支持部を強固に接合することができる。
本発明の第5の形態によれば、前記支持体が回路基板であり、前記CNTが回路素子であり、前記支持部が前記CNTが接合される接合位置であるので、使用する電流が微小であっても、高性能な電子回路を得ることができる。
CNTは、トランジスタ、ダイオード、コンデンサ及びインダクタ等の電子部品として使用することができ、これらの電子部品は微細であるため、シリコンのpn結合を使用した電子部品よりも、更に低い電流を使用して高性能性を発揮できることが期待されている。
しかし、これらのCNT回路素子と基板との接合部において、電流損失が生じた場合には、これらのCNT回路素子の高性能性を発揮することができない。本発明のグラファイト層を前記接合部として使用することにより、消費電流が微細であり、且つ高性能なCNT回路が得られる。
本発明の第6の形態によれば、前記支持体がナイフエッジであり、前記支持部がCNTが突出されるエッジ部であり、前記CNT支持体がCNTカートリッジであるので、前記CNTカートリッジにおいてCNTが安定に固定され、従って前記CNTをカンチレバーの突出部への移動を容易にする。
CNTカートリッジにおいては、通常はCNTがエッジ部上に無接着状態で設置されている。しかし、この状態では、ナイフエッジ移動時において前記CNTが脱落する可能性が存在する。前記CNTを前記エッジ部に固定することにより、前記CNTの他の支持部への移動を容易且つ確実にすることができる。移動後は、電子又はイオンビームにより前記CNTを切断することにより、両支持部を分離する
本発明の第7の形態によれば、CNTが支持部に固定される部位が1箇所又はそれ以上であるので、製造上における融通性を高めることができる。
CNTと支持部の間において高導電性が付加され、且つCNTが支持部に強固に固定されたCNT支持体を得る為には、必ずしも前記支持部の表面全体においてグラファイト層が形成される必要はなく、又CNTが前記支持部の表面直上に存在する区域全体おいてグラファイト層が形成される必要はない。即ち、本発明におけるCNT支持部を得る為には、前記表面及び前記区域のごく一部のみにおいて形成されてもよい。
又、前記グラファイト層は連続的に形成されている必要はなく、前記区域に前記グラファイト層が島状に形成されていても、高導電性を有し、且つ強固な接合部を得ることができる。このような島状グラファイト層は、例えば第8の形態のおいて、電子ビーム又はイオンビームを2箇所かそれ以上において照射することにより得られる。
本形態におけるグラファイト層は、前記表面全体又は前記区域全体において形成されたグラファイト層よりも簡単に製造でき、しかも高導電性を有し、且つ強固な固定を得ることができる。
本発明の第8の形態によれば、前記支持部の表面に炭素分子又は有機物からなる炭素物質を堆積した炭素物質層を形成し、前記炭素物質層の表面にCNTの固定部を接触させて配置し、前記固定部及び/又は固定部近傍の被照射領域に電子ビーム又はイオンビームを照射して前記炭素物質層を分解し、前記分解により形成された炭素膜により前記固定部を被覆して前記CNTを前記支持部に固定するので、前記CNTと同様に炭素からなる前記炭素物質層の分解により、炭素構造を再構築して前記固定部を被覆し、前記CNTを前記支持部に強固に固定することができる。従って、高真空(〜10−5 Pa)下で観察を行う透過型電子顕微鏡(TEM)内部において、高分解能観察を行いながら、雰囲気中の残留炭化水素が極めて少ない高真空状態下において、前記炭素物質層の分解を行うことにより、強固なCNT固定処理が可能となる。しかも、高分解能観察下でのCNT固定処理により、従来の固定方法では実現できなかった、単層又は2層などの細径CNTを用いたCNTナノデバイス等のCNT支持体の製造が可能となる。なお、固定処理に用いる電子顕微鏡は上記TEMのように、高分解能を具備するものが好ましく、TEMと同様の高真空下で観察可能な、高分解能を備えたSEMも使用することができる。
本発明の適用可能なCNT支持体は、カンチレバーの突出部にCNTの基端部が固定されるCNT探針からなるCNTプローブ、回路基板上に回路素子としてCNTが固定実装される量子効果トランジスタ等のCNTナノデバイスであり、また、本発明はデバイス製作過程で単一又は複数のCNTを担持して所定の位置に搬送するためのCNT担持体にも適用することができる。
本発明者達は、種々の炭素物質原料を検討した結果、前記炭素分子としてフラーレン(Cn:n≧60)が好ましいことの知見を得た。例えば、フラーレンC60の場合には、例えば、電子ビームの照射により電子線誘起反応を起こして、C60分子の球殻状構造は分解して層状のアモルファス構造に変化し、電子ビーム照射領域の中心部で炭素構造再構築を生じて、照射領域中の炭素原子が共有結合して、CNTの固定が可能となる。更に、電子ビーム照射を行うとグラファイト(黒鉛)構造に変化することも判明した。これらの知見から、フラーレンは前記固定部の堆積物に電気伝導性を持たせることも可能となりCNT支持体に好適である。また、電子ビーム照射量の調整により、照射領域をアモルファスやグラファイト構造に選択的に形成可能であり、特に、黒鉛層の形成により電気的コンタクト可能な領域に変性させることができ、ナノデバイス等において広範囲の応用展開が可能となる。
前記第8の形態においては、前記支持部の表面に前記炭素物質層を形成してから前記CNTの固定部を配置しているが、本発明は前記固定部の配置を行ってから前記炭素物質層を形成する形態も含む。即ち、本発明の第9の形態によれば、前記支持部の表面にCNTの固定部を配置し、前記固定部及び/又はその近傍の前記支持部表面に炭素分子又は有機物からなる炭素物質を堆積した炭素物質層を形成し、前記固定部及び/又は固定部近傍の被照射領域に電子ビーム又はイオンビームを照射して前記炭素物質層を分解し、前記分解により形成された炭素膜により前記固定部を被覆して前記CNTを前記支持部に固定するので、前記第8の形態と同様に、前記炭素物質層の分解により、炭素構造を再構築して、あらかじめ前記支持部の表面に配置した前記固定部を被覆し、前記CNTを前記支持部に強固に固定することができる。
本発明の第10の形態によれば、所定質量の前記炭素物質を容器内に配置し、前記容器内に前記支持体を投入して前記容器を封止し、前記容器を加熱して前記炭素物質を蒸発させて前記炭素物質を前記支持部を含む前記支持体の表面に堆積させて前記炭素物質層を形成するので、例えば、フラーレンC60を前記炭素物質として使用する場合には、400℃で加熱してC60が昇華し、この加熱温度を保持する時間(昇華時間)と、封入したC60量を変化させることにより,堆積C60分子膜厚を制御することが可能となる。従って、本実施形態によれば、種々のCNTナノデバイスに応じて、適用可能なCNT固定用前記炭素物質層を形成することができる。
本発明の第11の形態によれば、前記炭素物質を溶媒に混合した所定濃度の炭素物質溶液を調製し、前記炭素物質溶液の所定容量を前記容器中に注入し、加熱により前記容器から溶媒を除去して前記所定質量の炭素物質を前記容器内に残留配置させるので、溶液法に基づいて前記炭素物質溶液の濃度調製を行い、最小限の量で前記炭素物質を前記支持体の表面に堆積させることができ、CNT固定処理費用の低減を図ることができる。殊に、各種フラーレンは比較的高価な炭素素材であるから、本実施形態の実施によって材料コストの削減を実現することができる。
本発明の第12の形態によれば、前記炭素膜により前記CNTの前記固定部を前記支持部に被覆固定した後、前記CNT支持体を洗浄溶媒により洗浄するか、又は前記支持体を加熱して、前記CNT支持体の表面に付着している前記炭素物質を除去するので、前記洗浄又は前記除去により、固定処理に不要な炭素物質を回収し再利用することができ、CNT支持体の製造コストの低減を実現することができる。
本発明の第13の形態によれば、前記炭素膜に、CNT固定強度に優れたアモルファス炭素膜、又は固定強度に加え、電気伝導性を持つグラファイト膜を使用することにより、CNTプローブやCNTナノデバイス等に好適なCNT支持体製造方法を提供することができる。
本発明の第14の形態によれば、前記炭素分子に前記フラーレンCnを使用して、より強固なCNT固定を実現でき、また、金属内包フラーレンCn−M(M:金属元素)を使用して、内包金属元素により電気伝導性を具備させてCNT固定を行うことができる。
本発明の第15の形態によれば、前記有機物は炭素以外の成分を含有し、前記分解により前記炭素以外の成分が気散して前記炭素膜が形成されるので、前記炭素分子による炭素物質層と同様に、前記有機物から得られる前記炭素膜は、前記CNTと同様に炭素をからなる前記炭素物質層の分解により、炭素構造を再構築して前記固定部を被覆し、前記CNTを前記支持部に強固に固定することができる。前記有機物には、溶媒に混合して所定濃度の炭素物質溶液を調製し、加熱により溶媒を除去するとき、沸点が低いと余分に気散してしまうおそれがあるので、沸点の高いものが好ましく、液体としては、例えば、ベンゼンを使用することができる。また、有機物質としては、前記支持体表面にナノサイズで薄膜化されるものが好ましく、例えば、ジアミンやアントラセンなどの有機EL(エレクトロルミネッセンス)物質の他、ナフタレン、フェナントレセン、ピレン、ペリレン等の芳香族化合物、有機分子半導体、シアニン色素、ベータカロチン等の有機色素分子、ポリフィリン、セクシフェニル、セクシチエニル、テフロン(登録商標)、ペンタセン、パラフィン、ジアセチレン、フタロシアニンなどの有機薄膜材料を使用することができる。有機物質の薄膜化は、公知されている有機分子配向薄膜の形成技術や真空蒸着技術により行うことができる。
本発明の第16の形態によれば、前記カンチレバーに突出形成された前記突出部に前記CNTの基端部が固定され、前記CNTの先端部が前記突出部から突設されるCNTプローブの製造において、前記突出部に前記炭素物質層を形成して、より強固に細径CNTを固定することができ、AFMやMFM等のSPMに好適な、より微細で、かつ局所的な高精度測定が可能な高精度CNTプローブを提供することができる。
本発明は、量子効果トランジスタ等のナノデバイスの製造にも適用でき、本発明の第17の形態によれば、前記支持部の前記接合位置に前記炭素物質層を形成して、前記CNTを微細形態の回路素子として、前記回路基板の前記接合部に前記CNTの端部を強固に固定したCNT回路基板からなるナノデバイスを製造することができる。
本発明は、前記特許文献1又は2に示したCNTプローブ製造用CNT担持体(ナイフエッジ)にも適用することができる。即ち、本発明の第18の形態によれば、例えば、CNT先端部をナイフエッジに付着させてCNT基端部を前記ナイフエッジの刃先から延出させ、CNT基端部をカンチレバー突出部に固定する場合において、前記支持部の前記結合位置に前記炭素物質層を形成して、前記ナイフエッジの前記エッジ部に前記CNTの端部をより強固に固定したCNTカートリッジを製造することができる。
下側及び上側グラファイト層をCNTと略平行に形成する場合の概要工程図である。 下側及び上側グラファイト層をCNTと略垂直に形成する場合の概要工程図である。 上側グラファイト層のみをCNTと略平行に形成する場合の概要工程図である。 上側グラファイト層のみをCNTと略垂直に形成する場合の概要工程図である。 グラファイト層が支持部表面及びCNT表面に部分的に形成された場合の模式構造図である。 本発明の実施形態における炭素物質層の形成工程図である。 フラーレン分子層形成の一実験例を示すTEM写真である。 ナイフエッジ11への炭素物質層形成工程図である。 CNTカートリッジによるCNT転移処理を説明するための模式工程図である。 CNTカートリッジにおけるフラーレン分子層形成の実験例を示すTEM写真である。 図5の実験と混合濃度及び昇華時間を変えた別の実験例を示すTEM写真である。 フラーレン分子層の薄層化に成功した実験例を示すTEM写真である。 フラーレンC60分子の封入量Y(μM)と昇華時間X(分)に対する、分子膜厚Z(nm)の変化を示すグラフである。 支持部にフラーレン等の炭素物質層を形成した支持体の模式図である。 フラーレン分子及びその面心立方格子の模式分子構造図である。 カンチレバー突出部へのCNT固定工程を示す図である。 フラーレン分子膜に電子線を収束させた照射実験の2例におけるTEM写真及びビーム面積を示す写真である。 別の電子線照射実験例におけるTEM写真及びビーム面積を示す写真である。 電子線照射によりフラーレン分子膜がグラファイト膜に変化する過程を示すTEM写真である。 電子ビーム照射によるCNT固定実験例を示すTEM写真である。 グラファイト層形成による導電率の増加を示すグラフである。 グラファイト層が形成されたCNT支持体の機械強度評価を示すTEM写真である。 本実施形態に係るCNT支持体製造方法を用いて、固定されたCNT回路素子を含む量子効果トランジスタの概略構成図である。
符号の説明
1 石英管
2 フラーレン溶液
3 フラーレン
4 シリコンカンチレバー材
5 グラスウール材
6 吸引口
7 バーナー
8 真空封印
9 フラーレン分子層
10 堆積物
11 ナイフエッジ
12 電子顕微鏡室
13 カンチレバー
14 突出部
15 CNT
15a 基端部
16 フラーレン分子層
17 電子ビーム
18 支持体
18a 支持部
19 炭素物質層
100 シリコン基板
101 酸化膜
102 表面
103 炭素物質層
104 CNT
105 ソース電極層
106 ドレイン電極層
107 ゲート電極層
201 下側グラファイト層
202 上側グラファイト層
203 間隙層
204 補強層
301 電圧グラフ
302 電流グラフ
303 15秒時間帯
304 10秒時間帯
305 10秒時間帯
以下に、本発明に係るCNT支持体及びその製造方法の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
本実施形態は、カンチレバーに突出形成された突出部にCNTの基端部が固定され、前記CNTの先端部が前記突出部から突設されるCNTプローブ及びそのの製造工程例である。
図1は、下側及び上側グラファイト層を、CNTと略平行に形成する場合の概要工程図である。支持部18a(1A)上に炭素物質層19を形成し(1B)、炭素物質層19の上側にCNT15を炭素物質層19の表面に対して略水平に配置する(1C)。次に、電子線を照射するか、又は電流を印加すると、炭素物質層19が下側グラファイト層201に変化すると共に、CNT15の上側に炭素物質が堆積してグラファイトに変化し、上側グラファイト層202を形成する(1D)。下側グラファイト層201及び上側グラファイト層202は、結晶学的には相違は無く、相違点はCNT15及び支持部18aに対する位置のみである。下側グラファイト層201及び上側グラファイト層202は、相互に少なくとも部分的に相互に接触していれば良いし、又CNT15に少なくとも部分的に接触していれば良い。従って、下側グラファイト層201と上側グラファイト層202との間、下側グラファイト層201とCNT15の間、及び/又は上側グラファイト層202とCNT15の間に間隙層203が存在しても良い(1E)。ここにおける間隙層203は、空間でも良いし、材料となる炭素物質又ははアモルファス炭素で形成されても良い。又、アモルファス炭素などで形成された補強層204を、上側グラファイト層202の更に上側に形成しても良い(1F)。
図2は下側及び上側グラファイト層を、CNTと略垂直に形成する場合の概要工程図である。支持部先端18b(2A)上に炭素物質層19を形成し(2B)、支持部18aの上側にCNT15を炭素物質層19の表面に対して略垂直に配置する(2C)。次に、CNT15の基端部15aに電子線を照射するか、又は電流を印加すると、炭素物質層19の基端部15a周辺に存在する部分が、下側グラファイト層201に変化すると共に、基端部15aの上側に炭素物質が堆積してグラファイトに変化し、上側グラファイト層202を形成する(2D)。又、(2B)に示される工程の代わりに、炭素物質層19を支持部先端18bに形成し(2E)、CNT15を支持部先端18bの上側に炭素物質層19の表面に対して略垂直に配置して(2F)、後に下側グラファイト層201及び上側グラファイト層202を形成しても(2G)、前記グラファイト層がCNT15と略垂直に形成される。下側グラファイト層201及び上側グラファイト層202は、結晶学的には相違は無く、相違点はCNT15及び支持部18aに対する位置のみである。下側グラファイト層201及び上側グラファイト層202は、相互に少なくとも部分的に相互に接触していれば良いし、又CNT15に少なくとも部分的に接触していれば良い。従って、下側グラファイト層201と上側グラファイト層202との間、下側グラファイト層201とCNT15の間、及び/又は上側グラファイト層202とCNT15の間に間隙層203が存在しても良い(2H)。ここにおける間隙層203は、空間でも良いし、材料となる炭素物質又ははアモルファス炭素で形成されても良い。又、ここにおいては、アモルファス炭素などから形成された補強層204が、上側グラファイト層202の更に上側に形成されても良い(2I)。
図3は、上側グラファイト層のみをCNTと略平行に形成する場合の概要工程図である。支持部18a(3A)上にCNT15を支持部18aの上側表面に対して略水平に配置する(3B)。次に、支持部18aの上側表面及びCNT15上に、炭素分子層19を形成する(3C)。その後、電子線を照射するか、又は電流を印加すると、炭素物質層19が上側グラファイト層202に変化する(3D)。上側グラファイト層202は、支持部18aと少なくとも部分的に接触していればよいし、又CNT15と少なくとも部分的に接触していればよい。従って、上側グラファイト層202と支持部18aの間、及び/又は上側グラファイト層202とCNT15の間に間隙層203が存在しても良い(3E)。ここにおける間隙層203は、空間でも良いし、材料となる炭素物質又ははアモルファス炭素で形成されても良い。又、アモルファス炭素などで形成された補強層204を、上側グラファイト層202の更に上側に形成しても良い(3F)。
図4は、上側グラファイト層のみをCNTと略垂直に形成する場合の概要工程図である。支持部18a(4A)の上側にCNT15を配置し(4B)、支持部先端18b上及びCNT15の基端部15a上に、炭素物質層19を、CNT15と略垂直になるよう形成する(4C)。次に、基端部15aに電子線を照射するか、又は電流を印加すると、炭素物質層19の基端部15a周辺に存在する部分が、上側グラファイト層202に変化する(4D)。又、(4B)に示される工程の代わりに、CNT15を支持部先端18b上に略垂直になるように設置して(4E)、支持部先端18b上に炭素物質層19を形成して(4F)、CNT15の基端部15a付近においてグラファイト形成を行っても(4G)、上側グラファイト層202がCNT15と略垂直に形成される。上側グラファイト層202は、支持部18aと少なくとも部分的に接触していればよいし、又CNT15と少なくとも部分的に接触していればよい。従って、上側グラファイト層202と支持部18aの間、及び/又は上側グラファイト層202とCNT15の間に間隙層203が存在しても良い(4H)。ここにおける間隙層203は、空間でも良いし、材料となる炭素物質又ははアモルファス炭素で形成されても良い。又、アモルファス炭素などで形成された補強層204を、上側グラファイト層202の更に上側に形成しても良い(4I)。
図5は、グラファイト層が支持部表面及びCNT表面に部分的に形成された場合の模式構造図である。同図(5A)は、上側グラファイト層202が1箇所のみに形成された構造図であり、同図(5B)は、上側グラファイト層202が2箇所において形成された構造図である。本発明においては、グラファイト層が3箇所以上存在しても良いし、前記グラファイト層が下側グラファイト層201及び上側グラファイト層202が存在しても良いし、グラファイト層がCNTに対して略水平、略垂直又はこれらの組み合わせでも良いことは言うまでもない。
図6は炭素物質層の形成工程を示す。まず、フラーレンC60の濃度調整を行う。同図(6A)に示すように、フラーレンC60の単分散した原料と溶媒(トルエン)を石英管1にて混合して、所定濃度のフラーレン溶液2を調製する。石英管1の加熱によりトルエンを揮発、除去して、(6B)に示すように、所定質量のフラーレン3を石英管1内壁に残留させる。あらかじめ、微細チップ状に製作したシリコンカンチレバー材4を製作しておき、シリコンカンチレバー材4をフラーレン3が残留配置した石英管1に投入する((6C)参照)。シリコンカンチレバー材4は片面にPt膜を蒸着したシリコンSi片からなる。(6D)に示すように、シリコンカンチレバー材4は石英管1内に、フィルタ用グラスウール材5で挟むようにして投入される。
次に、シリコンカンチレバー材4の封入処理を行う((6D)及び(6E)参照)。石英管1の開放口側を吸引口6に接続し、真空引きする。更に、バーナー7で石英管1の吸引口6付近を加熱、溶融して真空封入を行う。石英管1の開放口側を真空封印8した石英管1を400℃で加熱してフラーレン3を昇華させる。昇華したフラーレン3はグラスウール材5を通過してシリコンカンチレバー材4の表面に堆積し、炭素物質層を形成する。この堆積過程でフラーレン3に含有された不純物はグラスウール材5を通じて除去される。
上記形成工程により炭素物質層をシリコンカンチレバー材4の表面に堆積、形成することができる。以下に、炭素物質層形成条件の検証実験を説明する。検証実験は、フラーレンC60のトルエンに対する混合濃度及び昇華(400℃の加熱)時間を変えて行った。
まず、上記形成工程により得られたフラーレン分子層(炭素物質層)の堆積を確認した。図7は、トルエン500μリットルに対して、0.15mMのフラーレンC60の混合濃度のフラーレン溶液を用い、昇華処理を400℃加熱、30分行った実験例のTEM写真を示す。この場合、フラーレン分子層9は約3層の堆積物10からなることがわかる。
更に、炭素物質層形成条件の検証を、炭素物質層の被形成対象をCNTカートリッジに用いるナイフエッジに上記フラーレンによる炭素物質層を形成して行った。
図8はナイフエッジ11への炭素物質層の形成工程を示す。ここで、ナイフエッジ11について説明をする。ナイフエッジ11のエッジ部に複数個のCNT15が配置されたCNTカートリッジが、いずれかのCNTの基端部をカンチレバー13の突出部14に転移させるCNT転移処理に使用される。カンチレバーへのCNT転移工程を簡単に説明する。図9はCNT転移工程を示す。カンチレバー13はカンチレバー部とその先端に形成された突出部14からなるシリコン製部材である。この突出部14にCNT15が対向するようにCNTカートリッジが配置される。カンチレバー13は、3次元移動機構(図示せず)によりXYZの3次元移動が調整でき、また、同様にCNTカートリッジもXYZの3次元移動が可能に配置されている。これらの移動調整により、CNT先端領域(基端部)が突出部14に付着するようにCNT15を転移させる。これらの転移操作は電子顕微鏡室12の中で拡大投影しながら行われる。なお、ナイフエッジ11には、先鋭な刃先を有し、本体表面にCNTを付着可能な構造の基材なら何でもよい。例えば、カミソリ刃やカッターナイフ刃、シリコン片の一辺を先鋭に研磨したもの等が掲げられる。
ナイフエッジ11への炭素物質層の形成工程を説明する。まず、フラーレンC60の濃度調整を行った後、図6の図(6A)及び(6B)の工程と同様に、フラーレンC60の単分散した原料と溶媒(トルエン)を石英管1にて混合して、所定濃度のフラーレン溶液を調製し((8A)参照)、加熱によりトルエンを除去して、(8B)に示すように、所定質量のフラーレン3を石英管1内壁に残留させる。ついで、あらかじめ、微細形状のナイフエッジ11をフラーレン3が残留配置した石英管1に投入する((8C)参照)。(6D)及び(6E)の工程と同様に、ナイフエッジ11の封入処理を行う((8D)及び(8E)参照)。その後、真空封印8した石英管1を400℃で加熱してフラーレン3を昇華させ、ナイフエッジ11の表面に堆積させて、炭素物質層を形成する。
上記形成工程によりシリコン片からなるナイフエッジ11表面に得られたフラーレン分子層(炭素物質層)の堆積状態を確認した。図10の(10A)及び(10B)には、トルエン500μリットルに対して、1.0mMのフラーレンC60の混合濃度のフラーレン溶液を用い、昇華処理を400℃加熱、2時間行った実験結果としてTEM写真を示す。図10の写真から厚さ約3nmのフラーレン分子層の形成が確認された。図10(10B)に示す(10A)のフラーレン分子層の拡大写真では、フラーレン分子層9が約4層の堆積物10からなることがわかる。また、図11は混合濃度及び昇華時間を変えた実験例を示す。同図(11A)はトルエン60μリットルに対して、図10の場合より多い3.0mMのフラーレンC60の混合濃度のフラーレン溶液を用い、昇華処理を400℃加熱、2時間行った実験結果を示す。同図(11B)はトルエン50μリットルに対して、3.0mMのフラーレンC60の混合濃度のフラーレン溶液を用い、昇華処理を400℃加熱、1時間行った実験結果を示す。(11A)及び(11B)の場合、それぞれのフラーレン分子層厚さは13nm、8.5nmであった。これらの実験から、フラーレン溶液の混合濃度と昇華時間の調整により、フラーレン分子層の厚さを制御することができることが判明した。
上記実験結果に基づき、炭素物質層形成条件を種々変えて、できるだけ薄いフラーレン分子層の製作を試みた。図12は薄層化に成功した実験例を示す。同図(12A)はトルエン50μリットルに対して、3.0mMのフラーレンC60の混合濃度のフラーレン溶液を用い、昇華処理を400℃加熱、30分間行った実験結果を示す。同図(12B)はトルエン30μリットルに対して、1.0mMのフラーレンC60の混合濃度のフラーレン溶液を用い、昇華処理を400℃加熱、1時間行った実験結果を示す。(12A)の場合は、比較的高い混合濃度のフラーレン溶液による比較的短い加熱処理である。この場合には、フラーレン分子層厚さは2.1nmであり、薄層化に成功したことが確認された。(12B)の場合は、(12A)の場合より薄い混合濃度のフラーレン溶液による加熱処理である。この場合にも、フラーレン分子層厚さは4.5nmであり、薄層化が可能となった。
図13は、本発明者達が行った種々の実験に基づいて得られた、フラーレンC60分子の封入量Y(μM)と昇華時間X(分)に対する、分子膜厚Z(nm)の変化をまとめたグラフを示す。分子膜厚はフラーレン封入量よりも昇華時間に敏感なことがわかった。また、最も薄膜化した実験例では昇華時間15分で平均膜厚が1.7nmであった。図15は、参考文献(篠原久典、斉藤弥八著、「フラーレンの化学と物理」、名古屋大学出版会発行、1997年1月)に記載されたフラーレン分子(15A)及びその面心立方格子(fcc)構造(15B)の模式図である。これらのフラーレン分子構造データから、上記最薄膜分子膜はわずかフラーレン分子2〜3個分の厚さに相当するものであることがわかる。
図14は、支持部18aにフラーレン3を積層した炭素物質層19を形成した支持体18の模式図である。前記支持体18はシリコン基板、ナイフエッジ、カンチレバーなどのCNTを固定する本体である。この支持体18のCNTを支持すべき支持部18aにフラーレン3を積層した炭素物質層19を形成する。フラーレン3は他の炭素物質で置換されてもよいことは云うまでもない。
次に、本発明に係る炭素物質層によるCNT固定処理を説明する。図12等で示したフラーレン分子層上にCNTを載置し、加速電圧90kVに調整したTEM内で、シリコン基板上のフラーレン分子膜に局所的に電子線を収束させて照射して固定処理を行う。収束電子線の電流密度はおよそ10―13A/nmであり、これは通常観察時の50〜300倍の値である。
図17は、2つの照射実験例である、電子ビーム照射前と照射後のTEM写真を示す。同図(17A)、(17B)及び(17C)は、それぞれ一照射実験例である、電子ビーム照射前と照射後のTEM写真及びビーム面積(1.0M、5秒)を示す。同図(17D)、(17E)及び(17F)は、別の照射実験例である、電子ビーム照射前と照射後のTEM写真及びビーム面積(1.0M、1秒)を示す。これらの照射実験は前記図11の(11B)のフラーレン溶液による炭素物質層形成条件により得られたフラーレン分子層を用いて行った。同図(17A)、(17B)、(17D)及び(17E)における左側の暗領域は基板であり、これらのTEM写真から、基板上のフラーレン分子層がアモルファス炭素層に変化していることがわかる。
上記実験結果と比較するために、別の炭素物質層形成条件によるフラーレン分子層を用いた照射実験を行った。図18は前記図12の(12A)のフラーレン溶液による炭素物質層形成条件により得られた、より薄いフラーレン分子層を用いて行った照射実験例を示す。同図(18A)、(18B)及び(18C)は、同照射実験例における、電子ビーム照射前と照射後のTEM写真及びビーム面積(1.0M、15秒)を示す。図18の(18B)の写真から、上記図17の実験結果と比べて、フラーレン分子層のアモルファス炭素化が穏やかに行われていることがわかる。
電子ビームの照射条件を変えて、構造変化過程を観察した実験からは、フラーレン分子膜に電子線照射したとき、大きく分けて3段階(フラーレン分子の移動、構造破壊、構造再構築)の形態変化が観察された。フラーレン分子層上直径15nmの領域に電流密度5×10―13A/nmの電子線を照射した場合には、約60秒照射後(注入量(dose量):2×10electorns/nm)には,照射領域の端で膜厚の増加が確認された。つまり,照射領域外のフラーレンC60分子がエネルギーの高い領域へ凝集してきたことがわかる。このとき,照射領域の中心部分ではC60分子の球殻状構造が壊れ始めアモルファス状態になった。開始から120秒後には,照射領域の中心部で炭素構造再構築が生じた。アモルファス炭素が堆積していた部分には層状構造が観察された。結晶性は不完全なものの、面間隔からグラファイト構造に相当することが確かめられた。この結果から電子線を120秒照射後(dose量は4×10electrons/nm)の堆積物は電気伝導性を持つと考えられ、この状態でCNTを固定することが可能となる。
図19は、電子線照射によりフラーレン分子膜がグラファイト膜に変化する過程を示すTEM写真である。電子線の直径は15nmである。同図における(19A)は、照射前のフラーレン分子膜であり、(19G)は電子線120秒照射後である。ここにおいては、フラーレンの中心部への凝集、アモルファス炭素の形成、及びグラファイトの形成の3段階のプロセスが発生している。
図19における(19B)及び(19C)は、照射領域から10nmほど離れた位置の拡大TEM写真である。(19B)は照射前、(19C)は60秒照射後の写真であり、照射前後を比較すると、60秒照射後において分子膜が1分子層ほど増加したことが分かる。これは、照射領域内が構造変化するにつれて、照射領域外から徐々にフラーレン分子が移動することを示す。
図19における(19D)、(19E)及び(19F)は、照射領域の拡大TEM写真である。(19D)は照射前、(19E)は60秒照射後、(16F)は90秒照射後の写真である。60秒照射後においては、粒状物質の構造が崩壊しているのが確認でき、アモルファス炭素が形成されていることを示す。90秒照射後においては、新たに層状構造が形成されているのが確認できる。この構造の面間隔を測定した結果、間隔が0.34nmであり、層状構造がグラファイトであることが確認できた。グラファイトはアモルファス炭素に比べて高い導電率及びCNTとの親和性を有し、CNTと支持部の結合部を形成するのに最適である。
上記のように、フラーレンC60の分子層を炭素物質層に用いることにより、電子ビームの照射により電子線誘起反応を起こして、C60分子の球殻状構造は分解して層状のアモルファス構造に変化する。電子ビーム照射領域の中心部で炭素構造再構築を生じて、照射領域中の炭素原子が共有結合して、CNTの固定が可能となる。更に、電子ビーム照射を行うとグラファイト(黒鉛)構造に変化することも判明したので、フラーレンは前記固定部の堆積物に電気伝導性を持たせることも可能となりCNT支持体に好適である。また、電子ビーム照射量の調整により、照射領域をアモルファスやグラファイト構造に選択的に形成可能である。特に、黒鉛層の形成により電気的コンタクト可能な領域に変性させることができ、ナノデバイス等において広範囲の応用展開が可能となる。
以下に、本実施形態によるCNT固定方法を用いた、カンチレバー突出部へのCNT固定工程を説明する。
図16はカンチレバー突出部へのCNT固定工程を示す。図16の(16A)は、CNT15をカンチレバー突出部14に転移させた直後を示す。カンチレバー部13及びカンチレバー突出部14の表面にはフラーレン分子層16が上記炭素物質層形工程において膜形成されている。次に、CNT15の基端部15aをカンチレバー突出部14にナイフエッジ11から転移させて、CNT先端部をカンチレバー突出部14から延出させた付着状態において、CNT15の基端部15aに向けて電子ビーム17又はイオンビームを照射する。このビーム照射はTEM内の高真空下で行われる。上記の電子線誘起反応に基づくCNT固定メカニズムにより、高真空(〜10−5 Pa)下で観察を行う透過型電子顕微鏡(TEM)内部において、高分解能観察を行いながら、雰囲気中の残留炭化水素が極めて少ない高真空状態下において、前記炭素物質層の分解を行うことにより、強固なCNT固定処理を行うことができる。
CNT15の基端部15aをカンチレバー突出部14先端に固定した後、図16の(16B)に示すように、ナイフエッジ11を下方に静的に移動させる。この移動により刃先に付着していたCNT先端部が分離し、CNT先端部がカンチレバー突出部14から延出させたCNTプローブ原型が完成する。上記CNT固定処理により、ナイフエッジ11のエッジ部にCNTの端部をより強固に固定したCNTカートリッジを製造することができる。特に、SEM内で前記特許文献2で示されたCNTの基端部を電子ビーム照射又は電流通電により突出部表面に融着させる方法では実現できなかった、高分解能観察下でのCNT固定処理により、単層又は2層などの5nm以下の細径CNTを用いたCNT支持体の製造が可能となる。
図20は、図7等で示したフラーレン分子層(2〜3層)を形成した、Pt被覆のシリコンナイフエッジ上にCNTを担持させて、電子ビーム照射した固定実験例を示すTEM写真である。使用したCNTはアーク放電により合成した多層CNTである。図20の(20A)は、シリコン基板上に堆積したフラーレン分子層とCNTのビーム照射領域を模式的に示す。同図(20B)、(20C)及び(20D)はそれぞれ、同領域近傍のCNT配置前の状態のTEM写真、同領域近傍のCNT配置後且つ電子線照射前の状態のTEM写真、直径20nm及びdose量3.5×10electrons/nmの電子線を120秒照射した後のTEM写真を示す。(20C)及び(20D)の白丸で示す箇所を比較すると、CNTの付け根付近に電子ビーム照射することにより、分子膜内の球殻状構造が見えなくなり、層状構造が観察された。また、層状構造の上にCNT付け根部分を覆うようにアモルファス炭素が堆積するのが観察された。
同図(20E)及び(20F)は拡大写真であり、それぞれ照射領域近傍のCNT配置後且つ電子線照射前のTEM写真、及び同領域近傍の120秒電子線照射後のTEM写真である。照射前におけるフラーレンが、照射後において層状構造を有する物質に変化しているのが観察された。この層状構造における面間隔は、グラファイトにおける面間隔と一致している。このように、グラファイト層の上にCNT付け根部分を覆うようにアモルファス炭素が堆積されることにより、導電性を損なうことなく、CNTをしっかりと固定することができる。
図21は、グラファイト層形成による導電率の増加を示すグラフである。探針先端にナノチューブを接触した状態で、電圧グラフ301に示される電圧1Vが印加された。電流グラフ302は、電子線照射前においては、電流は0であることを示している。この状態で、実線内に示される時間帯303、304及び305において、それぞれ15秒、10秒及び10秒の電子照射を行った。最初の照射においては、10秒のタイムラグの後に、電流値が急激に上昇した。ここにおけるタイムラグは、電子線照射によりフラーレンの構造変化が起こるのに十分な活性化エネルギーを得るのに必要な時間であると考えられる。この照射により、層状構造の形成が始まり、導電性が向上した。前記電子線を通常観察時のdose量に戻すと、電流値が一定に保たれることから、このdose量においては導電性が変化するような構造変化は起こらないことが分かった。2回目及び3回目の照射においても、フラーレンのグラファイト化が進行することにより、電流値が増加したと考えられる。
図22は、グラファイト層が形成されたCNT支持体の機械強度評価を示すTEM写真である。CNTを固定し、引っ張ることで生じるカンチレバーの撓みから、固定部にかかる力を測定した。同図(22A)は測定前のTEM写真であり、(22B)は測定中の写真であり、(22C)は100nNの力が掛かった後のTEM写真である。(22C)においては、ナノチューブ同士又はナノチューブと基板が滑ってしまい、固定部そのものの強度は測定できていないが、最小限として100nNの力に耐えられる強度を有すると言える。この力は、パスカルに換算すると、約100GPaとなり、ナノチューブの引っ張り強度に相当する、非常に強固な固定である。
本実施形態に係るCNT支持体製造方法は、CNTプローブの他に、量子効果トランジスタ等のナノデバイスの製造にも適用することができる。図23は同製造方法を用いて固定されたCNT回路素子からなる量子効果トランジスタの概略構成を示す。同図において、シリコン基板100の表面に酸化膜101が形成されている。酸化膜101の表面102に予め、フラーレン等の炭素物質層103を形成した後、CNT104を載置する。ついで、TEM内において、高分解能観察を行いながら、前記炭素物質層の分解を行うことにより、CNT104を基板上に固定配置することができる。次に、CNT両端側にソース電極層105、ドレイン電極層106を積層形成し、更に、CNT104の中央にゲート電極層107を積層することにより、CNT回路素子からなる量子効果トランジスタが完成する。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的逸脱しない範囲における種々の変形例や設計変更なども本発明の技術的範囲に包含されるのは言うまでもない。
本発明によれば、微細CNTを実装して組み込んだ、高精度なCNTプローブ、量子効果トランジスタ等のCNTナノデバイス、また、デバイス製作のためのCNT担持体を提供することができるので、CNTの微細性及び高導電性を利用した高性能な電気及び電子装置を提供することができる。従って、これらの装置の汎用化及び高機能化が期待できる。

Claims (18)

  1. 支持体の支持部にカーボンナノチューブ(以下、CNTと称する)を固定したCNT支持体において、前記支持部の表面に下側グラファイト層が形成され、前記下側グラファイト層の表面にCNTの固定部が接触して配置され、更に上側グラファイト層が前記固定部を被覆することにより前記CNTが前記支持部に固定されていることを特徴とするCNT支持体。
  2. 支持体の支持部にCNTを固定したCNT支持体において、前記支持部の表面にCNTの固定部が配置され、前記固定部及びその近傍の前記支持部表面に上側グラファイト層を形成し、前記上側グラファイト層が前記固定部を被覆することにより前記CNTが前記支持部に固定されていることを特徴とするCNT支持体。
  3. 少なくとも前記上側グラファイト層の外面にアモルファス炭素層が形成された請求項1又は2に記載のCNT支持体。
  4. 前記支持体がカンチレバーであり、前記支持部が前記カンチレバーに突出形成された突出部であり、前記固定部が前記CNTの基端部であり、前記CNT支持体は、前記突出部に前記CNTの基端部が固定され、前記CNTの先端部が前記突出部から突設されるCNTプローブである請求項1〜3のいずれかに記載のCNT支持体。
  5. 前記支持体が回路基板であり、前記CNTは回路素子であり、前記支持部が前記CNTが接合される接合位置であり、前記固定部が前記CNTの端部であり、前記CNT支持体は、前記接合部に前記CNTの端部が固定されたCNT回路基板である請求項1〜3のいずれかに記載のCNT支持体。
  6. 前記支持体がナイフエッジであり、前記支持部が前記CNTが突出されるエッジ部であり、前記固定部が前記CNTの端部であり、前記CNT支持体は、前記エッジ部に前記CNTの端部が固定されたCNTカートリッジである請求項1〜3のいずれかに記載のCNT支持体。
  7. 前記上側グラファイト層及び/又は前記下側グラファイト層により前記CNTを前記支持部に固定する部位が1箇所以上である請求項1〜6のいずれかに記載のCNT支持体。
  8. 支持体の支持部にCNTを固定したCNT支持体の製造方法において、前記支持部の表面に炭素分子又は有機物からなる炭素物質を堆積した炭素物質層を形成し、前記炭素物質層の表面にCNTの固定部を接触させて配置し、前記固定部及び/又は固定部近傍の被照射領域に電子ビーム又はイオンビームを照射して前記炭素物質層を分解し、前記分解により形成された炭素膜により前記固定部を被覆して前記CNTを前記支持部に固定することを特徴とするCNT支持体の製造方法。
  9. 支持体の支持部にCNTを固定したCNT支持体の製造方法において、前記支持部の表面にCNTの固定部を配置し、前記固定部及び/又はその近傍の前記支持部表面に炭素分子又は有機物からなる炭素物質を堆積した炭素物質層を形成し、前記固定部及び/又は固定部近傍の被照射領域に電子ビーム又はイオンビームを照射して前記炭素物質層を分解し、前記分解により形成された炭素膜により前記固定部を被覆して前記CNTを前記支持部に固定することを特徴とするCNT支持体の製造方法。
  10. 所定質量の前記炭素物質を容器内に配置し、前記容器内に前記支持体を投入して前記容器を封止し、前記容器を加熱して前記炭素物質を蒸発させて前記炭素物質を前記支持部を含む前記支持体の表面に堆積させて前記炭素物質層を形成する請求項8又は9に記載のCNT支持体の製造方法。
  11. 前記炭素物質を溶媒に混合した所定濃度の炭素物質溶液を調製し、前記炭素物質溶液の所定容量を前記容器中に注入し、加熱により前記容器から溶媒を除去して前記所定質量の炭素物質を前記容器内に残留配置させる請求項10に記載のCNT支持体の製造方法。
  12. 前記炭素膜により前記CNTの前記固定部を前記支持部に被覆固定した後、前記CNT支持体を洗浄溶媒により洗浄するか、又は前記支持体を加熱して、前記CNT支持体の表面に付着している前記炭素物質を除去する請求項10又は11に記載のCNT支持体の製造方法。
  13. 前記炭素膜が、アモルファス炭素膜、又はグラファイト膜である請求項8〜11のいずれかに記載のCNT支持体の製造方法。
  14. 前記炭素分子が、フラーレン又は金属内包フラーレンである請求項8〜13のいずれかに記載のCNT支持体の製造方法。
  15. 前記有機物は炭素以外の成分を含有し、前記分解により前記炭素以外の成分が気散して前記炭素膜が形成される請求項8〜13のいずれかに記載のCNT支持体の製造方法。
  16. 前記支持体がカンチレバーであり、前記支持部が前記カンチレバーに突出形成された突出部であり、前記固定部が前記CNTの基端部であり、前記CNT支持体は、前記突出部に前記CNTの基端部が固定され、前記CNTの先端部が前記突出部から突設されるCNTプローブである請求項8〜15のいずれかに記載のCNT支持体の製造方法。
  17. 前記支持体が回路基板であり、前記CNTは回路素子であり、前記支持部が前記CNTが接合される接合位置であり、前記固定部が前記CNTの端部であり、前記CNT支持体は、前記接合部に前記CNTの端部が固定されたCNT回路基板である請求項8〜15のいずれかに記載のCNT支持体の製造方法。
  18. 前記支持体がナイフエッジであり、前記支持部が前記CNTが突出されるエッジ部であり、前記固定部が前記CNTの端部であり、前記CNT支持体は、前記エッジ部に前記CNTの端部が固定されたCNTカートリッジである請求項8〜15のいずれかに記載のCNT支持体の製造方法。
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