以下、この発明の実施の形態を図を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の回路図である。図において、商用交流電源1から供給される電力は直流電源回路2によって直流電力に変換されるようになっている。
直流電源回路2は、交流電力を整流する整流ダイオードブリッジ3とリアクトル4と平滑コンデンサ5とを用いて構成される。そして、直流電源回路2へ入力される入力電流は入力電流検出回路6によって検出される。直流電源回路2で直流電力に変換された電力は図において破線で囲まれた領域として示されるインバータ回路7に供給される。
インバータ回路7は、直流電源回路2の直流母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(IGBT)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオードとによって構成される3組のアーム8、9、10からなっている。
アーム8は、内コイル負荷回路と外コイル負荷回路に接続された内コイルと外コイル共通のアームである。共通アーム8には、高電位側にスイッチング素子11(上スイッチ11)、低電位側にスイッチング素子12(下スイッチ12)がそれぞれ配置されている。上スイッチ11にはダイオード13が逆並列に接続され、下スイッチ12にはダイオード14が逆並列に接続されている。上スイッチ11および下スイッチ12の接続点は共通アーム8の出力点となっていて、下スイッチ12にはスナバコンデンサ15が並列に接続される。
アーム9は、内コイル用に設けられたもので、内コイル負荷回路29が接続されている。内コイル用アーム9には、高電位側にスイッチング素子16(上スイッチ16)、低電位側にスイッチング素子17(下スイッチ17)がそれぞれ配置されている。スイッチング素子16にはダイオード18が逆並列に接続され、スイッチング素子17にはダイオード19が逆並列に接続されている。下スイッチ17にはスナバコンデンサ20が並列に接続される。
また、アーム10は外コイル用に設けられたもので、外コイル負荷回路30が接続されている。外コイル用アーム10には、高電位側にスイッチング素子21、低電位側にスイッチング素子22がそれぞれ配置されている。スイッチング素子21にはダイオード23が逆並列に接続され、スイッチング素子22にはダイオード24が逆並列に接続されている。下スイッチ22にはスナバコンデンサ25が並列に接続されている。
共通アーム8の上スイッチ11と下スイッチ12は、共通アーム駆動回路26から出力される駆動信号によりオンオフ駆動され、内コイル用アーム9の上スイッチ16と下スイッチ17は内コイル用アーム駆動回路27から出力される駆動信号によりオンオフ駆動され、外コイル用アーム10の上スイッチ21と下スイッチ22は外コイル用アーム駆動回路28から出力される駆動信号によりオンオフ駆動される。
共通アーム駆動回路26は、共通アーム8の上スイッチ11をオンさせている間は下スイッチ12をオフ状態にし、上スイッチ11をオフさせている間は下スイッチ12をオン状態にし、交互にオンオフする駆動信号を出力する.内コイル用アーム駆動回路27も同様に、内コイル用アーム9の上スイッチ16と下スイッチ17を交互にオンオフする駆動信号を出力するものであり、外コイル用アーム駆動回路28も同様に、外コイル用アーム10の上スイッチ21と下スイッチ22を交互にオンオフする駆動信号を出力する。
なお、スナバコンデンサ15、20、25はそれぞれ、共通アーム8、内コイル用アーム9、外コイル用アーム10におけるスイッチ11、12、16、17、21、22のターンオフ時の出力電圧の変動を遅延させてスイッチング素子のターンオフ損失を低減するために設けられている。
内コイル負荷回路29は、内コイル31と共振コンデンサ32とによって構成される直列共振回路であり、共通アーム8の出力点(上スイッチ11と下スイッチ12の接続点)と内コイル用アーム9の出力点(上スイッチ16と下スイッチ17の接続点)との間に接続される。
外コイル負荷回路30は、外コイル33と共振コンデンサ34とで構成される直列共振回路であり、共通アーム8の出力点と外コイル用アーム10の出力点(上スイッチ21と下スイッチ22の接続点)との間に接続されている。
内コイル31は、略円形に巻回された外形の小なる加熱用のコイルであり、その外周に環状の外コイル33が巻回されており、内コイル31と外コイル33の中心位置が略一致するように、あるいは同心円状に配設されている。また、内コイル31と外コイル33は、共通アーム8から見て、同一周回方向に巻回されて接続されており、内コイル31および外コイル33に流れる電流は、出力電流検出回路35により検出される。
制御回路36は、この発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器を制御するもので、内部に制御タイマ36aを有し、操作入力手段37からの入力指示により、表示部38に動作状態を表示するとともに、入力電流検出回路6や出力電流検出回路35の検出値を取り込みながら各アーム駆動回路26〜28を制御し、加熱出力を調整する。
アーム8〜10に出力される駆動信号は、内コイル負荷回路29および外コイル負荷回路30の共振周波数よりも高い駆動周波数を有し、負荷回路に印加される電圧と比較して位相が遅れた電流が負荷回路に流れるように制御する。
操作入力手段37は、内コイル31と外コイル33に交互に高周波電流を出力するように指示する手段(例えば煮込みキー)37aを有している。指示手段37aの操作に基づいて、制御回路36はアーム駆動回路26〜28を制御して内コイル31と外コイル33に交互に高周波電流を出力する。
図2は、この発明の実施の形態1の誘導加熱調理器の内外コイル交互出力状態における内コイル負荷回路29および外コイル負荷回路30へ出力する設定電力のタイムチャートである。図に示すように、内外コイル交互出力状態では、内コイル負荷回路への高周波電力の出力状態と、外コイル負荷回路への高周波電力の出力状態とが、交互に切り替えられる。
ここで、内コイル負荷回路29への高周波電力出力状態の設定電力に比較して、外コイル負荷回路30への高周波電力出力状態における設定電力をより小さい値となるようにしている。図2の例では、内コイル通電時の入力電力が500W、外コイル通電時の入力電力が300Wとなっている。
図3は内コイル負荷回路29に高周波電力を出力する場合に、アーム駆動回路26〜28からアーム8〜10の上スイッチおよび下スイッチに出力される駆動信号のタイミングチャートである。このように、共通アーム8の上スイッチ11および下スイッチ12には、高周波の駆動信号が出力されるとともに、その駆動信号より位相の進んだ駆動信号が内コイル用アーム9の上スイッチ16と下スイッチ17に出力され、外コイル用アーム10の上スイッチ21と下スイッチ22はオフ状態となる。
この場合、共通アーム8と内コイル用アーム9の出力点には、上スイッチと下スイッチのオンオフ状態に応じて高周波で変動する電位がかけられ、その電位差が内コイル負荷回路29に印加される。
外コイル用アーム10の出力点電位は、上スイッチ21および下スイッチ22がオフ状態のため不定(但し、上ダイオード23と下ダイオード24でクランプされているため、直流電源回路2の出力である負母線電位以上、正母線電位以下の範囲の電位)となり、外コイル負荷回路30には高周波電圧は印加されない。
したがって、共通アーム8への駆動信号と内コイル用アーム9への駆動信号の位相差を増減することにより、内コイル負荷回路29に印加する高周波電圧を調整することができ、内コイル31に流れる高周波出力電流と入力電流を制御することができる。
一方、図4は外コイル負荷回路30に高周波電力を出力する場合に、アーム駆動回路26〜28からアーム8〜10の上スイッチおよび下スイッチに出力される駆動信号の例を示すタイミングチャートである。このように、共通アーム8の上スイッチ11と下スイッチ12には高周波の駆動信号が出力されるとともに、その駆動信号より位相の進んだ駆動信号が外コイル用アーム10の上スイッチ21と下スイッチ22に出力され、内コイル用アーム9の上スイッチ16と下スイッチ17はオフ状態となる。
この場合、共通アーム8と外コイル用アーム10の出力点には、上スイッチと下スイッチのオンオフ状態に応じて高周波で変動する電位が出力され、その電位差が外コイル負荷回路30に印加される。内コイル用アーム9の出力点電位は、上スイッチ16および下スイッチ17がオフ状態のため不定(但し、上ダイオード18と下ダイオード19でクランプされているため、直流電源回路2の出力である負母線電位以上、正母線電位以下の範囲)となり、内コイル負荷回路29には高周波電圧は印加されない。
したがって、共通アーム8への駆動信号と外コイル用アーム10への駆動信号の位相差を増減することにより、外コイル負荷回路30に印加する高周波電圧を調整することができ、外コイル33に流れる高周波出力電流と入力電流を制御することができる。
図5は、内コイル31あるいは外コイル33に高周波電流を流した状態で発生する磁束と鍋の中で発生する被調理物の気泡や飛沫の様子を示す概念図である。図5(a)は内コイル31に高周波電流を流した状態を示しており、内コイル31の回りに周回している矢印は、内コイル31に流れる高周波電流により生ずる磁束の様子を表している。
図の40は、内コイル31および外コイル33の下面を磁気シールドする板状のフェライトである。41は鍋等の被加熱物を載置するためのトッププレートであり、大径鍋39が載置されている。42は内コイル31、外コイル33、フェライト40等を固定するコイルベースである。内コイル31に流れる高周波電流により生じた磁束の多くは、大径鍋39の鍋底と中央付近で鎖交して、鍋底中央付近に渦電流を誘導し加熱して鍋内の被調理物の水分を沸騰させて気泡43を発生させる。その気泡43が弾ける際に、被調理物の一部が飛沫44として飛散する。
図5(b)は、外コイル33に高周波電流を流した状態を示しており、外コイル33の回りに周回している矢印は、外コイル33に流れる高周波電流により生ずる磁束の様子を表したものである。外コイル33に流れる高周波電流により生じた磁束は、大径鍋39と鍋底外周部で鎖交して、鍋底外周部に渦電流を誘導し加熱して鍋内の被調理物の水分を沸騰させる。その結果、発生した気泡が弾ける際に、被調理物の一部が飛沫として飛散する。
図6は、制御手段36による内外コイル交互出力制御処理のフローチャートである。まず、操作入力手段37の煮込みキー37aによって内外コイル交互出力の加熱開始指示の入力が行われると、タイマ36aのカウンタをクリアしてスタートする(ステップS1)。制御手段36は、共通アーム駆動回路26、および、内コイル用アーム駆動回路27を制御して、図3に示したような駆動信号を共通アーム8の上下スイッチ11、12、および、内コイル用アーム9の上下スイッチ16、17に出力して、内コイル負荷回路29への高周波電圧の印加を開始する(ステップS2)。
次いで、入力電流検出回路6や出力電流検出回路35を用いてそれぞれの電流を検出し(ステップS3)、出力電流が過大でないか判断する(ステップS4)。出力電流が過大であった場合(ステップS4:Yes)、出力電流を抑制するためにステップS7に移行する。ステップS7の処理については後述する。
一方、出力電流が過大でなければ(ステップS4:No)、検出した入力電流から換算した入力電力(電源電圧一定値、例えば100Vとして換算する)と内コイル通電時の設定電力P1(図2参照)を比較する(ステップS5)。P1は図2の例では500Wである。
この結果、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、共通アーム8への駆動信号と、内コイル用アーム9への駆動信号の位相差を大きくし(ステップS6)、ステップS8に進む。一方、入力電力の方が設定電力P1より大きい場合には、出力電流が過大であった場合(ステップS4:Yes)と同様に、入力電力を減少させるべく、ステップS7に進む。
ステップS7では、共通アーム8への駆動信号と内コイル用アーム9への駆動信号の位相差を小さくし(ステップS7)、ステップS8に進む。
なお、入力電力と設定電力P1が等しい場合には、駆動信号の位相差を変更しないまま直接ステップS8に進む。
ステップS8において、タイマ36aを確認し、カウンタ値が所定の時間T1に達しているかどうかを調べる。そしてT1に達していない場合(ステップS8:No)には、ステップS3〜S7の処理を再度実行する。所定時間T1に達していた場合(ステップS8:Yes)には、ステップS9に進む。
ステップS9では、入力電流と出力電流の値から鍋の有無を判別する。ここでは、例えば出力電流に対し入力電流が所定割合以下であれば鍋無しと判断する。なお、鍋の有無の判別にはその他公知の負荷検知方式が適用できる。この結果、鍋がある状態であると判断した場合(ステップS9:Yes)には、ステップS10に進む。また、鍋がない状態であると判断した場合(ステップS9:No)はステップS21に進む。ステップS21以降の処理については後述する。
ステップS10において、操作入力手段37から加熱停止の指示入力があるか否か判断する。加熱停止指示入力がある場合(ステップS10:Yes)もステップS21に進む。
また、加熱停止指示入力がない場合(ステップS10:No)には、共通アーム駆動回路26および内コイル用アーム駆動回路27からの駆動信号出力を停止して内コイル負荷回路29への高周波電流の出力を停止し(ステップS11)、タイマ36aのカウンタをクリアして再スタートする(ステップS12)。そして、図4に示したような駆動信号を共通アーム8の上下スイッチ11、12、および、外コイル用アーム10の上下スイッチ21、22に出力して、外コイル負荷回路30への高周波電圧の印加を開始する(ステップS13)。
次いで、入力電流検出回路6や出力電流検出回路35を用いてそれぞれの電流を検出し(ステップS14)、出力電流が過大か否かを判断するステップS15)。出力電流が過大である場合(ステップS15:Yes)には、出力電流を抑制するためにステップ18に移行して駆動信号の位相差を小さくする。ステップS18以降の処理については後述する。
出力電流が過大でない場合(ステップS15:No)、検出した入力電流から換算した入力電力と外コイル通電時の設定電力P2を比較する(ステップS16)。なお、図2の示した例では設定電力P2は300Wである。
この結果、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、共通アーム8への駆動信号と、外コイル用アーム10への駆動信号の位相差を大きくして(ステップS17)、ステップS19に進む。逆に入力電力の方が設定電力P2より大きい場合には、出力電力が過大であった場合(ステップS15:Yes)と同様に、入力電力を減少させるべくステップS18に進む。
ステップS18では、共通アーム8への駆動信号と外コイル用アーム10への駆動信号の位相差を小さくし(ステップS18)、ステップS19に進む。
なお、入力電力と設定電力P2が等しい場合には、駆動信号の位相差を変更しないまま直接ステップS19に進む。
ステップS19において、タイマ36aを確認し、カウンタ値が所定の時間T2に達していない場合(ステップS19:No)にはステップS14からの処理を繰り返す。一方、所定時間T2に達している場合(ステップS19:Yes)には、共通アーム駆動回路26および外コイル用アーム駆動回路28からの駆動信号出力を停止して外コイル負荷回路30への高周波電流の出力を停止し(ステップS20)、ステップS1に戻って内コイル負荷回路29への高周波電力の出力に移行する。
なお、ステップS9で鍋なしと判断した場合や、ステップS10で加熱停止の指示入力があった場合には、ステップS21からの処理が実行されるが、ここでは共通アーム駆動回路26および内コイル用アーム駆動回路27からの駆動信号出力を停止して内コイル負荷回路29への高周波電流の出力を停止し(ステップS21)、タイマ36aのカウントを停止して(ステップS22)、内外コイル交互出力制御処理を終了する。
以上のようにこの発明の実施の形態1による誘導加熱調理器では、内コイル31と外コイル33に交互に高周波電流を流して加熱することにより、鍋の中心部と外周部を交互に加熱し沸騰させて被調理物を攪拌することができる。
また、内コイル31に高周波電流を流す中心部加熱状態より、外コイル33に高周波電流を流す外周部加熱状態の加熱量を抑えることにより、鍋壁に近い外周部で発生する沸騰の気泡が弾けることにより飛散する飛沫発生を抑え、鍋壁外に飛沫が飛び散って鍋周辺のトッププレート等が汚れるのを低減することができる。
なお、ここまでの説明では、加熱コイルが内コイルと外コイルの2つのコイルを含む場合について記載したが、コイルの個数に制約があるわけではない。すなわち、同心円状に3つ以上のコイルを配置してもよく、その場合には各コイルへの通電を異なる時間帯に行うサイクルを繰り返すようにすれば、この発明の適用範囲を拡張することが可能であることが容易に想像できよう。
実施の形態2.
鍋を加熱して鍋内の被調理物の水分を沸騰させる場合、加熱密度が高いほど激しく気泡が発生し、その気泡が弾ける際により高くより遠くに被調理物の飛沫が飛散する性質がある。そこで、この発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成に加えて、内コイルに流れる高周波電流による加熱密度より外コイルに流れる高周波電流による加熱密度を小さくすることによって、鍋壁から離れた鍋中心部における飛沫の発生と比べて鍋壁近傍の鍋外周部における飛沫の発生をさらに少なくし、鍋外への飛沫の飛散を抑制することができる。
この発明の実施の形態2の誘導加熱調理器はかかる特徴を有するものである。なお、この発明の実施の形態2による誘導加熱調理器は加熱コイル部分を除いて実施の形態1による誘導加熱調理器と同じであるので、構成要素に関する詳細な説明は省略することとする。
図7は、この発明の実施の形態2による誘導加熱調理器の加熱コイルの正面図である。この誘導加熱調理器の加熱コイルは内コイル31と外コイル33から構成されており、加熱する鍋底と対向する加熱コイルの面積(鍋底面に垂直に投影する加熱コイルの面積)は、内コイル31がS1、外コイル33がS2となっている。
図8は、この発明の実施の形態2による誘導加熱調理器において、内コイル負荷回路29へ出力する設定電力と外コイル負荷回路30へ出力する設定電力の関係を示すタイムチャートである。この誘導加熱調理器においても、実施の形態1と同様に内コイル負荷回路29への高周波電力の出力状態と、外コイル負荷回路への高周波電力の出力状態が交互に切り替えられる。
その際、外コイル負荷回路30への高周波電流出力状態における設定電力P20は、内コイル負荷回路29への高周波電力出力状態における設定電力P10に対して、鍋底の加熱密度が小さく(P20/S2<P10/S1)なるように設定されている。
このように設定した結果、この誘導加熱調理器で鍋壁(鍋側面あるいは鍋肌)に近い外周部の加熱密度が抑制される。
すでに述べたように、加熱密度が高いと被加熱物の水分の沸騰が激しくなり、気泡の発生が盛んとなって、その気泡が弾ける際に、より高くより遠くに飛沫が飛散する。そこで、この発明の実施の形態2の誘導加熱調理器では鍋壁に近い外周部の加熱密度を抑えることにより鍋壁近傍での飛沫発生を抑え、鍋壁外に被調理物の飛沫が飛び散って鍋周辺のトッププレート等が汚れるのを抑えることができる。
なお、この場合も、コイルは内コイルと外コイルの2つに限定されるわけではなく、3つ以上のコイルを同心円状に配置するようにしてもよい。その場合には面積に基づいて出力設定を選択すればよいのである。
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3に係る誘導加熱調理器の回路図である。図において、実施の形態1の図1と同一部分または相当部分には同一の符号を付している。
図において、商用交流電源1から供給される電力は直流電源回路2aおよび2bで直流電力に変換される。直流電源回路2aが変換した直流電力は内コイル用インバータ回路45に供給され、直流電源回路2bが変換した直流電力は外コイル用インバータ回路46に供給される。
直流電源回路2aと2bは、それぞれ交流電力を整流する整流ダイオードブリッジ3a、3bとリアクトル4a、4b、平滑コンデンサ5a、5bとから構成されており、その入力電流は入力電流検出回路6a、6bによって、また、入力電圧は入力電圧検出回路59a、59bによって個別に検出される。
内コイル用インバータ回路45は、直流電源回路2aの直流母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(高電位側のスイッチング素子の上スイッチ47、低電位側のスイッチング素子の下スイッチ48)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード(高電位側逆並列ダイオードの上ダイオード49、低電位側逆並列ダイオードの下ダイオード50)とによって構成されており、上スイッチ47と下スイッチ48の接続点が出力点となっている。
下スイッチ48にはスナバコンデンサ51が並列に接続されており、上スイッチ47および下スイッチ48のターンオフ時における出力電圧の変動を遅延させて、スイッチング素子の損失を低減する。
外コイル用インバータ回路46も内コイル用インバータ回路45と同様に、直流電源回路2bの直流母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(高電位側のスイッチング素子の上スイッチ52、低電位側のスイッチング素子の下スイッチ53)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード(高電位側逆並列ダイオードの上ダイオード54、低電位側逆並列ダイオードの下ダイオード55)とによって構成されており、上スイッチ52と下スイッチ53の接続点が出力点となっている。
下スイッチ53にはスナバコンデンサ56が並列に接続されており、上スイッチ52および下スイッチ53のターンオフ時における出力電圧の変動を遅延させて、スイッチング素子の損失を低減する。
内コイル用インバータ回路45の上スイッチ47と下スイッチ48は、内コイル用インバータ駆動回路60から出力される駆動信号により交互にオンオフ駆動され、外コイル用インバータ回路46の上スイッチ52と下スイッチ53は外コイル用インバータ駆動回路61から出力される駆動信号により交互にオンオフ駆動される。
内コイル負荷回路29は、内コイル31と共振コンデンサ32とで構成される直列共振回路であり、内コイル用インバータ回路45の出力点(上スイッチ47と下スイッチ48の接続点)と直流電源回路2aの低電位側母線との間に接続されている。
外コイル負荷回路30も外コイル33と共振コンデンサ34とで構成される直列共振回路であり、外コイル用インバータ回路46の出力点(上スイッチ52と下スイッチ53の接続点)と直流電源回路2bの低電位側母線との間に接続されている。
内コイル負荷回路29に流れる電流は、内コイル電流検出回路57により検出され、外コイル負荷回路30に流れる電流は、外コイル電流検出回路58により検出される。
制御回路36は、誘導加熱調理器全体を制御するもので、内部に制御タイマ36aを有し、操作入力手段37からの入力指示により、表示部38に動作状態を表示するとともに、入力電流検出回路6a、6bや入力電圧検出回路59a、59b、内コイル電流検出回路57や外コイル電流検出回路58の検出値を取り込みながら、内コイル用インバータ駆動回路60および外コイル用インバータ駆動回路61を制御し、加熱出力を調整する。
内コイル用インバータ回路45および外コイル用インバータ回路46に出力される駆動信号は、内コイル負荷回路29および外コイル負荷回路30の共振周波数よりも高い駆動周波数を有し、負荷回路に流れる電流が負荷回路に印加される電圧と比較して遅れ位相で流れるように制御される。
また、内コイル負荷回路29と外コイル負荷回路30に同時に高周波電力を出力する場合には、内コイル用インバータ駆動回路60および外コイル用インバータ駆動回路61から出力する駆動信号を同一の周波数とするとともに、内コイル31に流れる高周波電流と外コイル33に流れる高周波電流が同一周回方向に流れるように同期を取りながら上スイッチと下スイッチの通電比率を制御し、加熱出力を調整する。
操作入力手段37は、煮込みキー37aを有する。煮込みキー37aが操作されると、制御回路36は駆動回路60、61を制御して内コイル負荷回路29と外コイル負荷回路30に同時に高周波電力を周期的に変動させながら出力する。
図10は、内コイル用インバータ回路45と外コイル用インバータ回路46の設定電力の変動状態を示すタイムチャートである。このようにして内コイル用インバータ回路45と外コイル用インバータ回路46は同時に駆動され、インバータ回路45、46に入力する電力はそれぞれ周期的に変動する。
図が示しているように、この実施の形態では、内コイル用インバータ回路45へ入力する設定電力と外コイル用インバータ回路46へ入力する設定電力をそれぞれP11(=500W)とP21(=200W)にするT1期間と、P12(=100W)とP22(=300W)にするT2期間を交互に繰り返すようになっている。
こうすることで、内コイル31に流れる高周波電流により加熱される鍋底中心部と、外コイル33に流れる高周波電流により加熱される鍋底外周部の加熱状態を変動させて、鍋内の被調理物の沸騰状態を変動させ、被調理物を攪拌する。
ここで、鍋底中心部の加熱電力となる内コイル用インバータ回路45へ入力する設定電力P11より、鍋底外周部の加熱電力となる外コイル用インバータ回路46へ入力する設定電力P22を小さくすることにより、鍋壁の近くで発生する沸騰の気泡が弾ける際の飛沫の飛散を抑え、鍋の周辺に被調理物の飛沫が飛び散って汚れるのを抑制する。
図10の例では、内外コイル出力変動状態において、内コイル用インバータ回路45へ入力する設定電力の最大値(P11=500W)より外コイル用インバータ回路46へ入力する設定電力の最大値(P22=300W)を小さい値としている。
図11は、内コイル用インバータ回路45と外コイル用インバータ回路46を同時に駆動する場合の内コイル用インバータ駆動回路60および外コイル用インバータ駆動回路61から出力する駆動信号のタイミングチャートである。内コイル31と外コイル33は磁気結合しているため、内コイルに流れる高周波電流と外コイルに流れる高周波電流について、その周波数が等しくなるように駆動周波数を同じにするとともに、流れる周回方向も同じになるように駆動位相も合わせている。
また、内コイル用インバータ回路45への入力電力を制御するために上スイッチ47と下スイッチ48の導通時間比率を調整し、外コイル用インバータ回路46への入力電力を制御するために上スイッチ52と下スイッチ53の導通時間比率を調整する。
なお、導通時間比率は、上スイッチと下スイッチの導通時間全体に対して上スイッチの導通時間の比率(内コイル用上スイッチ導通時間比率=T1a/(T1a+T1b)、外コイル用上スイッチ導通時間比率=T2a/(T2a+T2b)を0〜50%の範囲で調整するものとする。
図12及び図13は、実施の形態3の誘導加熱調理器の内外コイル変動加熱制御処理のフローチャートである。まず図12のステップS101において、操作入力手段37の煮込みキー37aによって内外コイル変動加熱が指示されると、内コイル用インバータ駆動回路60、および、外コイル用インバータ駆動回路61を制御して、図11に示したような駆動信号を内コイル用インバータ回路45の上下スイッチ47、48と外コイル用インバータ回路46の上下スイッチ52、53とに出力して、内コイル負荷回路29と外コイル負荷回路30に高周波電圧の印加を開始する。
高周波電圧の印加を開始した後、タイマ36aのカウンタをクリアしてスタートし(ステップS102)、内コイル用インバータ回路45の入力電流検出回路6aや入力電圧検出回路59a、内コイル電流検出回路57を用いてそれぞれの電流、電圧を検出する(ステップS103)。
次に、内コイル電流が過大か否かを判断する(ステップS104)。その結果、内コイル電流が過大である場合(ステップS104:Yes)は、内コイル電流を抑制するためにステップS107に移行する。ステップS107の処理については後述する。
内コイル電流が過大でない場合(ステップS104:No)、検出した内コイル用インバータ回路45の入力電流・入力電圧から入力電力を求め、T1期間の内コイル用インバータ回路の設定電力P11と比較し(ステップS105)、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、内コイル用インバータ回路45の上スイッチ47の導通時間比率を大きくして(ステップS106)、ステップS108に進む。逆に入力電力の方が設定入力電力P11より大きい場合には、入力電力を減少させるべく、ステップS107に進む。なお、入力電力と設定入力電力P11が等しい場合はステップS108に進む。
ステップS107では、内コイル用インバータ回路45の上スイッチ47の導通時間比率を小さくして(ステップS107)、ステップS108に進む。
ステップS108において、外コイル用インバータ回路46の入力電流検出回路6bや入力電圧検出回路59b、外コイル電流検出回路58を用いてそれぞれの電流、電圧を検出し、さらにステップS109において、外コイル電流が過大か否かを判断する。
その結果、外コイル電流が過大な場合(ステップS109:Yes)は、外コイル電流を抑制するためにステップS112に進む。ステップS112の処理については後述する。
外コイル電流が過大でない場合(ステップS109:No)、検出した外コイル用インバータ回路46の入力電流・入力電圧から入力電力を求め、T1期間の外コイル用インバータ回路の設定電力P21と比較する(ステップS110)。その結果、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、外コイル用インバータ回路46の上スイッチ52の導通時間比率を大きくする(ステップS111)。逆に入力電力の方が設定入力電力P21より大きい場合には、入力電力を減少させるべく、ステップS112に進む。なお、入力電力と設定電力P21とが等しい場合にはステップS113に進む。
ステップS112では、外コイル用インバータ回路46の上スイッチ52の導通時間比率を小さくし(ステップS112)、ステップS113に進む。タイマカウンタの値が所定の時間T1に達していない場合にはステップS103に戻って内コイル用インバータ回路への入力電力をP11に、外コイル用インバータ回路への入力電力をP21にする制御を継続する。
ステップS113でタイマカウンタが所定時間T1に達していた場合には、図13のステップS114に移行し、ここで内コイル用インバータ回路へ入力される設定電力をP12に、外コイル用インバータ回路へ入力される設定電力をP22に変更し、タイマ36aのカウンタをクリアして再スタートする。
そして、内コイル用インバータ回路45の入力電流検出回路6aや入力電圧検出回路59a、内コイル電流検出回路57を用いてそれぞれの電流、電圧を検出し(ステップS115)、内コイル電流が過大であるか否かを判断する(ステップS116)。
その結果、内コイル電流が過大である場合(ステップS116:Yes)には、内コイル電流を抑制するためにステップS119に移行する。ステップS119以降の処理については後述する。また、内コイル電流が過大でない場合(ステップS116:No)、検出した内コイル用インバータ回路45の入力電流・入力電圧から入力電力を求め、T2期間の内コイル用インバータ回路の設定電力P12と比較する(ステップS117)。
その結果、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、内コイル用インバータ回路45の上スイッチ47の導通時間比率を大きくし(ステップS118)、ステップS120に進む。逆に入力電力の方が設定電力P12より大きい場合には、入力電力を減少させるべく、ステップS119に進む。なお、入力電力と設定電力P12とが等しい場合はそのままステップS120に進む。
ステップS119では、内コイル用インバータ回路45の上スイッチ47の導通時間比率を小さくし、ステップS120に進む。
ステップS120において、外コイル用インバータ回路46の入力電流検出回路6bや入力電圧検出回路59b、外コイル電流検出回路58を用いてそれぞれの電流、電圧を検出し、ステップS121において外コイル電流が過大である否かを判断する。その結果、外コイル電流が過大である場合(ステップS121:Yes)には外コイル電流を抑制するためにステップS124に移行する。
外コイル電流が過大でない場合(ステップS121:No)には、検出した外コイル用インバータ回路46の入力電流・入力電圧から入力電力を求め、T2期間の外コイル用インバータ回路の設定電力P22と比較し(ステップS122)、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、外コイル用インバータ回路46の上スイッチ52の導通時間比率を大きくして(ステップS123)、ステップS125に進む。
また入力電力が設定電力P22に等しい場合はそのままステップS125に進む。逆に入力電力の方が設定電力P22より大きい場合には、入力電力を減少させるべく、ステップS124に進む。
ステップS124では、外コイル用インバータ回路46の上スイッチ52の導通時間比率を小さくして、ステップS125に進む。ステップS125において、タイマ36aを確認し、タイマカウンタの値が所定の時間T2に達していない場合にはステップS115に戻って内コイル用インバータ回路45への入力電力をP12に、外コイル用インバータ回路46への入力電力をP22にする制御を継続する。
またタイマカウンタの値が所定時間T2に達していた場合には、操作入力手段37から加熱停止指示の入力が有無を判断し(ステップS126)、加熱停止指示が無ければ(ステップS126:No)図12のステップS102に戻って内外コイル変動加熱制御処理を継続する。
加熱停止指示があった場合(S126:Yes)には、内コイル用インバータ駆動回路60および外コイル用インバータ駆動回路61からの駆動信号出力を停止して内コイル31および外コイル33への高周波電流の出力を停止し(ステップS127)、タイマ36aのカウントを停止して(ステップS128)、内外コイル変動加熱制御処理を終了する。
以上のように、この発明の実施の形態3の誘導加熱調理器では、内コイル31と外コイル33に同時に高周波電流を流すとともに、内コイル用インバータ回路45への入力電力(P11)が外コイル用インバータ回路46への入力電力(P21)より大きい状態(T1期間)と、外コイル用インバータ回路46への入力電力(P22)が内コイル用インバータ回路45への入力電力(P12)より大きい状態(T2期間)とを周期的に繰り返す。
これによって、鍋の中心部と外周部で交互に沸騰させて被調理物を攪拌することができるとともに、外コイル用インバータ回路46への最大入力電力(P22)を内コイル用インバータ回路45への最大入力電力(P11)より小さい値とすることにより、外コイル用インバータ回路46への最大入力電力を内コイル用インバータ回路45への最大入力電力と同等に制御する場合と比較して、鍋壁に近い外周部で発生する沸騰の気泡が弾けることにより飛散する飛沫発生を抑え、鍋壁外に飛沫が飛び散って鍋周辺のトッププレート等が汚れるのを抑えることができる。
なお、内コイルと外コイルの他に中間的なコイルを設ける場合は、実施の形態1の異なる時間帯に一部のコイルを通電する構成と組み合わせてもよい。
実施の形態4.
この発明の実施の形態3の誘導加熱調理器においても、実施の形態2で説明したように、鍋壁から離れた鍋中心部における加熱密度より鍋壁近傍の鍋外周部での加熱密度を小さくすることにより鍋外への飛沫の飛散をさらに抑制できる。この発明の実施の形態4による誘導加熱調理器はかかる特徴を有するものである。なお、この発明の実施の形態4による誘導加熱調理器は加熱コイル部分を除いて実施の形態3による誘導加熱調理器と同じであるので、構成要素に関する詳細な説明は省略することとする。
図14は、この発明の実施の形態4による誘導加熱調理器の内コイル用インバータ回路45へ入力する設定電力と外コイル用インバータ回路46へ入力する設定電力のタイムチャートである。実施の形態2と同様に内コイル用インバータ回路45へ入力する設定電力が外コイル用インバータ回路46へ入力する設定電力より各コイル面積当たりで大きい状態(P13/S1>P23/S2)と、外コイル用インバータ回路46へ入力する設定電力が内コイル用インバータ回路45への入力する設定電力より各コイル面積当たりで大きい状態(P24/S2>P14/S1)を交互に繰り返すように制御して、鍋の中心部と外周部で交互に沸騰させて被調理物を攪拌する。
その際、外コイル用インバータ回路46への最大入力電力P24を、内コイル用インバータ回路45への高周波電力出力状態における入力電力P13に対して、鍋底の加熱密度を小さくなる(P24/S2<P13/S1)ように設定している。
なお、加熱コイルは、実施の形態2の図7と同等のもので、内コイル31のコイル面積(鍋底面に垂直に投影する加熱コイルの面積)はS1、外コイル33のコイル面積はS2とする。
なお、内コイルと外コイルの他に中間的なコイルを設ける場合は、実施の形態1の異なる時間帯に一部のコイルを通電する構成と組み合わせてもよく、各コイルの面積に応じて出力を設定すればよいのである。
実施の形態5.
図15は、この発明の実施の形態5の誘導加熱調理器の回路図である。図において、実施の形態1の図1、あるいは、実施の形態3の図9と同一部分または相当部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
図15において、直流電源回路2は商用交流電源1から供給される電力を直流電力に変換し、インバータ回路62に供給する。インバータ回路62は、直流電源回路2の直流母線間に直列に接続された2個のスイッチング素子(高電位側のスイッチング素子の上スイッチ63、低電位側のスイッチング素子の下スイッチ64)と、そのスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード(高電位側逆並列ダイオードの上ダイオード65、低電位側逆並列ダイオードの下ダイオード66)とによって構成されており、上スイッチ63と下スイッチ64の接続点が出力点となっている。
下スイッチ64にはスナバコンデンサ67が並列に接続されており、上スイッチ63および下スイッチ64のターンオフ時における出力電圧の変動を遅延させて、スイッチング素子の損失を低減する。また、インバータ回路62の上スイッチ63と下スイッチ64は、インバータ駆動回路68から出力される駆動信号により交互にオンオフ駆動される。インバータ回路62の出力は負荷回路切り替えリレー69により内コイル負荷回路29、あるいは、外コイル負荷回路30に接続され、その電流は出力電流検出回路35により検出される。
続いて、この発明の実施の形態5による誘導加熱調理器について説明する。図16は、この実施の形態5の誘導加熱調理器の加熱コイルの正面図である。図17は内コイルと外コイルに交互に高周波電流を流す内外コイル交互出力状態におけるインバータ回路62へ入力する設定電力のタイミングチャートである。
図16及び図17に示されるように、この発明の実施の形態5の誘導加熱調理器では、煮込み調理を行う際に、内コイル31aと外コイル33aを切り替えて高周波電流を流すとともに、第1のコイル面積(S2a)の小さい外コイル33aに高周波電流を流す状態(T2期間)の設定電力P2aより、第2のコイル面積(S1a)の大きい内コイル31aに高周波電流を流す状態(T1期間)の設定電力P1aを大きくしているという特徴を有している。
図18は、この発明の実施の形態5の誘導加熱調理器の内外コイル交互出力制御処理のフローチャートである。まず、操作入力手段37から内外コイルに交互に高周波電流を流す煮込みキー37a等の指示入力があると、制御回路36は負荷回路切り替えリレー69を制御して内コイル負荷回路29をインバータ回路62の出力に接続し(ステップS201)、タイマ36aのカウンタをクリアしてスタートし(ステップS202)、インバータ駆動回路62から駆動信号の出力を開始する(ステップS203)。
次いで、インバータ回路62の入力電流検出回路6や入力電圧検出回路59、出力電流検出回路35を用いてそれぞれの電流、電圧を検出し(ステップS204)、出力電流が過大であるか否かを判断する(ステップS205)。出力電流が過大である場合(ステップS205:Yes)には、出力電流を抑制するためにステップS208に移行する。S208以降の処理については後述する。
出力電流が過大でない場合(ステップS205:No)、検出したインバータ回路62の入力電流・入力電圧から入力電力を求め、T1期間のインバータ回路62の設定電力P1aと比較し(ステップS206)、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、インバータ回路62の上スイッチ63の導通時間比率を大きくして(ステップS207)、ステップS209に進む。入力電力と設定電力P1aが等しい場合はステップS209にそのまま進む。逆に入力電力の方が設定電力P1aより大きい場合には、入力電力を減少させるべく、ステップS208に進む。
ステップS208において、インバータ回路62の上スイッチ63の導通時間比率を小さくし、ステップS209に進む。
ステップS209において、タイマ36aのカウンタ値が所定の時間T1に達していないか否かを確認し、カウンタ値が所定の時間T1に達していない場合(ステップS209:No)には、ステップS204に戻って内コイル負荷回路29にインバータ回路62の出力を接続した状態で入力電力をP1aにする制御を継続する。
またステップS209でタイマカウンタの値が所定時間T1に達していた場合には、インバータ回路駆動回路68からの駆動信号出力を停止し(ステップS210)、負荷回路切り替えリレー69を制御してインバータ回路62の出力を外コイル負荷回路30に接続する(ステップS211)。
そして、タイマ36aのカウンタをクリアして再スタートし(ステップS212)、インバータ駆動回路62から駆動信号の出力を再び開始する(ステップS213)。続いて、インバータ回路62の入力電流検出回路6や入力電圧検出回路59、出力電流検出回路35を用いてそれぞれの電流、電圧を検出し(ステップS214)、出力電流が過大であるか否かを判断する(ステップS215)。
出力電流が過大である場合(ステップS215:Yes)は、出力電流を抑制するためにステップS218に進む。ステップS218以降の処理については後述する。
また出力電流が過大でなければ(ステップS215:No)、検出したインバータ回路62の入力電流・入力電圧から入力電力を求め、T2期間のインバータ回路62の設定電力P2aと比較する(ステップS216)。
その結果、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、インバータ回路62の上スイッチ63の導通時間比率を大きくして(ステップS217)、ステップS219に進む。また入力電力が設定電力P2aに等しい場合は、そのままステップS219に進む。逆に入力電力の方が設定入力電力P2aより大きい場合には、入力電力を減少させるべく、ステップS218に進む。
ステップS218において、インバータ回路62の上スイッチ63の導通時間比率を小さくして、ステップS219に進む。ステップS219において、タイマ36aのカウンタ値が所定の時間T2に達していないかを確認し(ステップS219)、カウンタ値が所定の時間T2を経過していない場合(ステップS219:No)にはステップS214に戻って外コイル負荷回路30にインバータ回路62の出力を接続した状態で入力電力をP2aにする制御を継続する。
ステップS219で、カウンタ値が所定の時間T2に達していた場合には、インバータ回路駆動回路68からの駆動信号出力を停止し(ステップS220)、操作入力手段37から加熱停止指示の入力が有無を判断し(ステップS221)、加熱停止指示がなければステップS201に戻って内外コイル交互出力制御処理を継続する。加熱停止指示があった場合には、タイマ36aのカウントを停止して(ステップS222)、内外コイル交互出力制御処理を終了する。
以上のように、この発明の実施の形態5の誘導加熱調理器によれば、煮込み調理を行う際に、高周波電流を流す加熱コイルを切り替えることにより被調理物の対流状態変化させて攪拌することができ、鍋全体への加熱量を変えることにより被調理物の温度を変動させて被調理物に出汁が染み込むように煮込むことができる。
また、加熱密度が高くなるほど激しく気泡が発生し、その気泡が弾ける際により高く、より遠くに飛沫が飛散するが、加熱量を変動させる場合に、大きな加熱量を加える際にコイル面積の大きいコイルに通電するように制御して、加熱密度の差を抑え、沸騰の気泡の発生を平準化したので、鍋の周囲への飛沫の飛散を抑制することができる。
なお、図16では内コイルの第2のコイル面積が外コイルの第1のコイル面積よりも大きい構成について示したが、図19に示すように外コイルの第1のコイル面積の方が内コイルの第2のコイル面積より大きくすることもできる。この場合には、図20に示されるタイミングチャートのように、内外コイル交互出力状態においてインバータ回路62に入力する設定電力を切り替える。
こうすることで、内コイル31bの第2のコイル面積(S1b)が外コイル33bの第1のコイル面積(S2b)より小さいので、内コイル通電時の設定電力P1bを外コイル通電時の設定電力P2bより小さい状態とすることにより、加熱密度の差を抑制し、沸騰の気泡の発生を平準化して、鍋の周囲への飛沫の飛散を低減することができる。
実施の形態6.
続いて、この発明の実施の形態6の誘導加熱調理器について説明する。図21は、この発明の実施の形態6の誘導加熱調理器の回路図である。図において、実施の形態5の図15と同一部分、あるいは、相当部分については同一符号を付し、説明を省略する。
図において、加熱コイルはインバータ回路62の出力に接続される内コイル31と、その外周に直列に接続される外コイル33cからなる。内コイル31と外コイル33cの直列回路は共振コンデンサ34cと直列共振の内外コイル負荷回路を構成し、内コイル31は共振コンデンサ32と内コイル負荷回路を構成する。
そして、負荷切り替えリレー70によって、内外コイル負荷回路か内コイル負荷回路がインバータ回路62の出力と直流低電位側母線間に接続される。
図22は、この発明の実施の形態6における誘導加熱調理器の内外コイル低出力制御処理のフローチャートである。ステップS301において、操作入力手段37から煮込みキー37a等の指示入力があると、制御回路36は負荷回路切り替えリレー70を制御して内外コイル負荷回路を直流低電位側母線に接続し、タイマ36aのカウンタをクリアしてスタートして(ステップS302)、インバータ駆動回路62から駆動信号の出力を開始する(ステップS303)。
次いで、インバータ回路62の入力電流検出回路6や入力電圧検出回路59、出力電流検出回路35を用いてそれぞれの電流、電圧を検出し(ステップS304)、出力電流が過大であるか否かを判断する(ステップS305)。出力電流が過大である場合(ステップS305:Yes)には、出力電流を抑制するためにステップS308に移行する。ステップS308以降の処理については後述する。
出力電流が過大でない場合(ステップS305:No)は、ステップS306に進んで、検出したインバータ回路62の入力電流・入力電圧から入力電力を求め、設定電力と比較する。その結果、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、インバータ回路62の上スイッチ63の導通時間比率を大きくして(ステップS307)、ステップS309に進む。
また入力電力と設定電力が等しい場合はステップS309にそのまま進む。入力電力の方が設定電力より大きい場合には、入力電力を減少させるべく、ステップS308に進む。
ステップS308において、インバータ回路62の上スイッチ63の導通時間比率を小さくし、ステップS309に進む。ステップS309において、タイマ36aのカウンタ値が所定の時間T1を経過していないかを確認し、カウンタ値が所定の時間T1に達していない場合(ステップS309:No)にはステップS304に戻って内外コイル負荷回路にインバータ回路62の出力を印加する状態で入力電力の制御を継続する。
ステップS309でタイマカウンタが所定時間T1に達していた場合には、インバータ回路駆動回路68からの駆動信号出力を停止し(ステップS310)、負荷回路切り替えリレー70を制御して内コイル負荷回路を直流低電位側母線に接続し(ステップS311)、タイマ36aのカウンタをクリアして再スタートし(ステップS312)、インバータ駆動回路62から駆動信号の出力を再び開始する(ステップS313)。
そして、インバータ回路62の入力電流検出回路6や入力電圧検出回路59、出力電流検出回路35を用いてそれぞれの電流、電圧を検出し(ステップS314)、出力電流が過大であるか否かを判断する(ステップS315)。出力電流が過大である場合(ステップS315:Yes)出力電流を抑制するためにステップS318に移行する。
また、出力電流が過大でない場合は(ステップS315:No)、検出したインバータ回路62の入力電流・入力電圧から入力電力を求め、ステップS316に進んで、T2期間のインバータ回路62の設定電力と比較する。
その結果、入力電力の方が小さい場合には入力電力を増加させるべく、インバータ回路62の上スイッチ63の導通時間比率を大きくして(ステップS317)、ステップS319に進む。また入力電力と設定電力が等しい場合はステップS319にそのまま進む。逆に入力電力の方が設定電力より大きい場合には、入力電力を減少させるべく、ステップS318に進む。
ステップS318において、インバータ回路62の上スイッチ63の導通時間比率を小さくして、ステップS319に進む。ステップS319において、タイマ36aのカウンタ値が所定の時間T2を経過していないかを確認し、カウンタ値が所定の時間T2に達していない場合(ステップS319:No)にはステップS314に戻って内コイル負荷回路にインバータ回路62の出力を印加する状態で入力電力の制御を継続する。
また、カウンタ値が所定の時間T2に達していた場合(ステップS319:Yes)には、インバータ回路駆動回路68からの駆動信号出力を停止し(ステップS320)、操作入力手段37から加熱停止指示の入力が有無を判断し(ステップS321)、加熱停止指示がなければステップS301に戻って内外コイル低出力制御処理を継続する。加熱停止指示があった場合には、タイマ36aのカウントを停止して(ステップS322)、内外コイル低出力制御処理を終了する。
この発明の実施の形態6の誘導加熱調理器では、タイマカウンタがT1に達するまでの工程(第1の時間帯)において一定の低出力で煮込み調理等を行う際に、内コイルと外コイルに同時に通電して鍋底全体を加熱することにより被調理物全体を暖め、その後(第2の時間帯)に、周期的に、あるいは間欠的に内コイルのみに通電して鍋中心部を集中的に加熱して沸騰あるいは対流を起こさせて被調理物を攪拌するとともに、沸騰により発生する気泡が弾けて被調理物の飛沫が飛散する箇所を鍋壁から離れた鍋中心部としたので、鍋の周辺に飛び散る被調理物の飛沫を抑制して、誘導加熱調理器のトッププレート等の汚れを低減することができる。
なお、実施の形態1〜5で開示された構成に基づくならば、タイマカウンタがT1に達するまでの工程(第1の時間帯)において内コイルと外コイルに同時に通電する処理に替えて、内コイルと外コイルとを異なる時間帯に通電するサイクルを繰り返すような処理に置き換えることは容易に理解できるであろう。このような構成にしても効果はほぼ同一であり、この発明の趣旨を逸脱するものではない。
さらに、タイマカウンタを用いて第1の時間帯や第2の時間帯の経過を検知する方法に替えて、外コイルの近傍温度や外コイルに対抗する鍋底面の温度を測定するサーミスタや赤外線センサなどの温度検知手段を配置してこれらの温度を計測しておき、所定の上限温度に達するまでは内コイルと外コイルに同時ないしは時分割で通電し、所定の上限温度を超えた場合は外コイルの近傍温度や外コイルに対抗する鍋底面の温度が所定の下限温度まで下がるまでの間内コイルのみに間欠的に通電するようにしてもよいのである。