JP4913686B2 - 光ファイバの接続方法 - Google Patents

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本発明は、光ファイバの接続、特にホーリーファイバの接続に関するものである。
近年、大きな構造分散や低い曲げ損失特性など、従来の構造の光ファイバでは実現できなかった特性を可能にする光ファイバとして、ホーリーファイバが注目されている。ホーリーファイバとは、図1(a)、(b)に示すような、軸方向に連続するエアホール1(空孔)が複数個、規則正しく配列された構造のクラッド2を具備する光ファイバのことである。また、エアホールが規則正しく配列されていることを捉えてフォトニッククリスタルファイバ(Photonic Crystal Fiber)と呼ばれることもある。
本明細書では、特に、従来の光ファイバと同様、クラッド2よりも屈折率の高いコア3を有し、その周りのクラッド2の中にエアホール1を設けたホーリーファイバを空孔アシストファイバ(HAF:Hole−assisted fiber)と呼び(図1(a))、また、前述の屈折率分布は持たないが、多数のエアホール1をクラッド2に規則正しく配列し、クラッド2の実効的な屈折率を下げて、コア3(に該当する部分)との屈折率差を持たせたホーリーファイバをエアクラッドファイバ(Air−clad fiber)と呼ぶ(図1(b))。
従来、これらのファイバを接続するには、特許文献1に開示されているような融着接続技術、もしくはメカニカルスプライス技術が用いられてきた。
特開2004−53625号公報 D. MARCUSE, "Loss Analysis of Single-Mode Fiber Splices", THE BELL SYSTEM TECHNICAL JOURNAL, Vol.56, No.5, 1977, American Telephone and Telegraph Company, pp.703-718
しかし、融着接続を行うためには、アーク放電を行い、高温下で光ファイバの先端部を融解させる必要がある。それに伴い、接続点の近傍でエアホールがつぶれてしまうため、HAFであれば、接続点の近傍がSMFなどの従来のファイバと同様な構造になってしまい、またエアクラッドファイバでは、接続点の近傍が均質なガラスになってしまう。これにより、HAFではモードフィールド径(MFD)の変動に伴う接続損失の発生や曲げ損失特性の劣化が生じ、エアクラッドファイバでは接続部分でコアとクラッドとの屈折率差がなくなってしまうことによって接続損失の増加などの性能劣化が生じていた。
また、接続にメカニカルスプライスを用いる場合、一般に、接続点での損失及び反射を抑制するため、接続するファイバ端面間に、伝送波長においてコアガラスとほぼ同等の屈折率を有する液体状の屈折率整合剤を塗布していた。これにより、ホーリーファイバでは微細なエアホール内に屈折率整合剤が毛細管現象によって浸潤し、エアホールによる屈折率差が接続部で失われてしまい、融着接続と同様な性能劣化が生じていた。さらに、時間の経過とともに屈折率整合剤がエアホール内部に浸潤することで、接続点での損失及び反射特性について、耐環境特性や経時的な特性の変化といった問題が生じていた。
また、毛細管現象による屈折率整合剤のファイバ内部への浸潤を防ぐための手段として、予め光硬化性樹脂をファイバの先端に浸潤させ、当該樹脂の硬化波長光を照射することで、以後の毛細管現象による屈折率整合剤のファイバ内部への浸潤を防ぐ方法があるが、手間がかかる上、浸潤部の性能劣化が発生するという問題があった。
従って、これらの問題点を解決できる低損失かつ簡易なホーリーファイバの接続技術の確立が急務となっている。
本発明では、前述した問題を解決するために、ホーリーファイバを接続する際にフィルムを用いたことを特徴とする。
具体的には、ホーリーファイバ同士もしくはホーリーファイバとそれ以外の種類の光ファイバ(以下、異種ファイバと呼ぶ。)とを、それぞれの一端が間隙を隔てて略対向するように配置し、均一の厚さを有し、その幅広面に直交する一の軸に対し高屈折率領域および低屈折率領域が該高屈折率領域を内側として同心円状に存在するフィルムを、前記各ファイバの一端同士の間に各ファイバの中心軸と前記一の軸とがほぼ一致しかつ各ファイバのそれぞれの端面とフィルムの表面とが隙間無く密着するよう配置したことを特徴とする。
なお、異種ファイバとは、シングルモードファイバ(SMF)、マルチモードファイバ(MMF)、分散シフトファイバ(DSF)など、エアホールが無く、材料の屈折率差による導波構造を有する光ファイバ全般を指す。
本発明による接続方法を用いることで、ホーリーファイバのエアホールが接続点の近傍でつぶれたり、屈折率整合剤で塞がれたりすることがなくなり、ホーリーファイバ同士もしくはホーリーファイバと異種ファイバとの接続を低損失かつ簡易に行うことが可能となる。
即ち、従来の融着技術や屈折率整合剤に対する毛細管現象によって発生していた接続特性劣化の問題をフィルム、例えば自己形成光導波路技術によって形成した樹脂フィルムを用いて接続することで回避できる。この理由は、フィルム状に硬化させた光硬化性樹脂は液体の屈折率整合剤と違い、固体であるために毛細管現象を引き起こさないことによる。また、使用する樹脂の硬化後の屈折率は広い値の範囲で比較的自由に制御できるという利点も併せ持つ。以上により、フィルム状に硬化させた光硬化性樹脂を用いることで毛細管現象によるファイバ内への浸潤を低減させ、樹脂が光学特性に影響を及ぼさない状態にファイバを保つことができる。
<実施の形態1>
図2は本発明の光ファイバの接続方法の実施の形態1(但し、特許請求の範囲には含まれない。)、ここではホーリーファイバ同士を均一なフィルムを用いて接続する場合の例を示すもので、図中、4−1,4−2はホーリーファイバ、5は樹脂フィルムである。
樹脂フィルム5は、均一の厚さと均一の屈折率を有する、正確には所望の接続損失の許容値を満足する所定の均一の厚さおよびファイバのコアに対する所定の均一の屈折率比を有するもので、以下に説明するように、光硬化性樹脂を用いて予め用意しておくものとする。
光硬化性樹脂を、その厚さを任意に設定し、硬化後の屈折率を任意に設定してフィルム状に硬化させると、前記設定した厚さおよび屈折率に応じて、接続損失はそれぞれ図3,4に示す計算結果のように変化する。
図3はmarcuseの式(非特許文献1参照)において各ファイバ間の間隙をフィルムの厚さとし、フィルム/コアの屈折率比を1として設定した結果である。図3より、接続点として用いるための許容損失値を0.5dBとすると、フィルムの厚さは60μm以下でなければならないことが分かる。
同様に、図4はmarcuseの式にファイバ端面間のフレネル損失を加味し、各ファイバ間の間隙(フィルム厚)を30μmとして計算した結果であるである。図4より、フィルムの厚さを30μmとした場合、フィルムと接続するファイバのコアの屈折率比は約1.9以下であることが望ましい。
以上より、(1)許容損失値、(2)フィルム厚、(3)屈折率比は相関関係があり、実行上は(1)、(2)、(3)の順に数値を決定し、作成する樹脂フィルムのパラメータを決定する。
前述の方法によりパラメータを決定した樹脂フィルムを均一な厚さで作成し、図2に示すようにホーリーファイバ4−1,4−2を、それぞれの一端が間隙を隔てて略対向するように配置し、前記樹脂フィルム5をホーリーファイバ4−1,4−2の一端同士の間に各ファイバのそれぞれの端面とフィルムの表面とが隙間無く密着するよう配置することにより、屈折率整合剤を用いた場合と同程度の損失により接続することが可能であり、かつ液体成分がないため毛細管現象によるエアホールへの液体浸潤が無くなり、懸案であった光学特性の劣化を引き起こさずに接続することができる。
なお、樹脂フィルム5は硬度が低く、かつ弾性変形するため、各ホーリーファイバ4−1,4−2をフィルムの両側から押さえつける、例えば周知の光コネクタを用いてホーリーファイバ4−1,4−2を接続する際にプラグ同士の端面間に樹脂フィルム5を挟むことによって、各ホーリーファイバ4−1,4−2と樹脂フィルム5との間を隙間無く密着させることが可能である。
<実施の形態2>
図5は本発明の光ファイバの接続方法の実施の形態2(但し、特許請求の範囲には含まれない。)、ここではホーリーファイバと異種ファイバとを均一なフィルムを用いて接続する場合の例を示すもので、図中、実施の形態1と同一構成部分は同一符号をもって表す。即ち、4はホーリーファイバ、5は樹脂フィルム、6は異種ファイバである。
前述したように、光硬化性樹脂を、その厚さを任意に設定し、硬化後の屈折率を任意に設定してフィルム状に硬化させると、前記設定した厚さおよび屈折率に応じて、接続損失はそれぞれ図3,4に示した計算結果のように変化する。但し、本実施の形態では、樹脂フィルムとホーリーファイバのコアとの屈折率比、および樹脂フィルムと異種ファイバのコアとの屈折率比という2種類の屈折率比が存在し、図4の計算結果も実際には傾きの異なる2つの曲線となるため、両者を勘案して屈折率比を決定する必要がある。また、本実施の形態のように接続しようとする2本の光ファイバのモードフィールド径(MFD)が異なる場合、marcuseの式において結合損失が発生するため、実施の形態1の場合よりもフィルムの厚さや屈折率比における要求条件が厳しくなると考えられる。
実施の形態1の場合と同様に、(1)許容損失値、(2)フィルム厚、(3)屈折率比は相関関係があり、実行上は(1)、(2)、(3)の順に数値を決定し、作成する樹脂フィルムのパラメータを決定する。
前述の方法によりパラメータを決定した樹脂フィルムを均一な厚さで作成し、図5に示すようにホーリーファイバ4と異種ファイバ6とを、それぞれの一端が間隙を隔てて略対向するように配置し、前記樹脂フィルム5をホーリーファイバ4および異種ファイバ6の一端同士の間に各ファイバのそれぞれの端面とフィルムの表面とが隙間無く密着するよう配置することにより、屈折率整合剤を用いた場合と同程度の損失により接続することが可能であり、かつ液体成分がないため毛細管現象によるエアホールへの液体浸潤が無くなり、懸案であった光学特性の劣化を引き起こさずに接続することができる。
なお、樹脂フィルム5は硬度が低く、かつ弾性変形するため、ホーリーファイバ4および異種ファイバ6をフィルムの両側から押さえつける、例えば周知の光コネクタを用いてホーリーファイバ4および異種ファイバ6を接続する際にプラグ同士の端面間に樹脂フィルム5を挟むことによって、ホーリーファイバ4および異種ファイバ6と樹脂フィルム5との間を隙間無く密着させることが可能である。
<実施の形態3>
図6は本発明の光ファイバの接続方法の実施の形態3、ここではホーリーファイバ同士を屈折率構造が異なる領域を有するフィルムを用いて接続する場合の例を示すもので、図中、実施の形態1と同一構成部分は同一符号をもって表す。即ち、4−1,4−2はホーリーファイバ、7は樹脂フィルムである。
樹脂フィルム7は、均一の厚さを有し、図7に示すように、その幅広面に直交する一の軸に対し高屈折率領域7aおよび低屈折率領域7bが該高屈折率領域7aを内側として同心円状(但し、低屈折率領域7bは高屈折率領域7aの径に対して後述するようなMFDを実現可能な幅を備えていれば良く、その周囲の形状は任意(図示例では正方形)である。)に存在するもので、以下に説明するように、光硬化性樹脂を用いて予め用意しておくものとする。
即ち、硬化後の屈折率が異なる第1および第2の光硬化性樹脂を用いて周知の自己形成光導波路技術により、一の軸に対し高屈折率領域および低屈折率領域が該高屈折率領域を内側として同心円状に存在する樹脂ブロックを形成し、これを前記一の軸と直交する方向に均一の厚さにカットしてフィルム状とすることにより作成する。
このような構造により、光は樹脂フィルム7内を前記一の軸方向に全反射により導波されるが、この際、フィルム自体の損失を無視すれば、接続損失はフィルムの厚さに依存しない。さらに、それぞれの領域の屈折率、比屈折率差、高屈折率領域7aの径および低屈折率領域7bの幅は任意であるが、接続しようとするファイバ中を伝播する光の波長において、当該ファイバのMFDとフィルムのMFDを同程度にする必要がある。
本実施の形態の場合、ファイバ−フィルム−ファイバにおいて発生する損失は、図8に示すMFDの不整合が支配的な要因となる。図8より、フィルムおよびファイバのMFD比を1〜1.3の間にした場合、0.5dB以下の損失値で接続できることがわかる。なお、図8においてW1,W2は光ファイバおよびフィルムのMFD(但し、値の大きい方をW1、小さい方をW2とする。)である。
前述のMFDを調節した屈折率構造が異なる領域を有する樹脂フィルムを均一な厚さで作成し、図6に示すようにホーリーファイバ4−1,4−2を、それぞれの一端が間隙を隔てて略対向するように配置し、前記樹脂フィルム7をホーリーファイバ4−1,4−2の一端同士の間に各ファイバの中心軸と前記一の軸とがほぼ一致しかつ各ファイバのそれぞれの端面とフィルムの表面とが隙間無く密着するよう配置することにより、屈折率整合剤を用いた場合に比べて低損失で接続することが可能であり、かつ液体成分がないため毛細管現象によるエアホールへの液体浸潤が無くなり、懸案であった光学特性の劣化を引き起こさずに接続することができる。
なお、樹脂フィルム7は樹脂フィルム5と同様、硬度が低く、かつ弾性変形するため、各ホーリーファイバ4−1,4−2をフィルムの両側から前述した如くして押さえつけることによって、各ホーリーファイバ4−1,4−2と樹脂フィルム7との間を隙間無く密着させることが可能である。
<実施の形態4>
図9は本発明の光ファイバの接続方法の実施の形態4、ここではホーリーファイバと異種ファイバとを屈折率構造が異なる領域を有するフィルムを用いて接続する場合の例を示すもので、図中、実施の形態1と同一構成部分は同一符号をもって表す。即ち、4はホーリーファイバ、6は異種ファイバ、7は樹脂フィルムである。
実施の形態3の場合と同様にして、MFDを調節した屈折率構造が異なる領域を有する樹脂フィルムを均一な厚さで作成し、図9に示すようにホーリーファイバ4と異種ファイバ6とを、それぞれの一端が間隙を隔てて略対向するように配置し、前記樹脂フィルム7をホーリーファイバ4および異種ファイバ6の一端同士の間に各ファイバの中心軸と前記一の軸とがほぼ一致しかつ各ファイバのそれぞれの端面とフィルムの表面とが隙間無く密着するよう配置することにより、屈折率整合剤を用いた場合に比べて低損失で接続することが可能であり、かつ液体成分がないため毛細管現象によるエアホールへの液体浸潤が無くなり、懸案であった光学特性の劣化を引き起こさずに接続することができる。
但し、第2の実施の形態の場合と同様、本実施の形態では、樹脂フィルムとホーリーファイバのコアとのMFD比、および樹脂フィルムと異種ファイバのコアとのMFDという2種類のMFD比が存在し、図8の計算結果も実際には傾きの異なる2つの曲線となるため、両者を勘案してMFD比を調節する必要がある。
なお、樹脂フィルム7は樹脂フィルム5と同様、硬度が低く、かつ弾性変形するため、ホーリーファイバ4および異種ファイバ6をフィルムの両側から前述した如くして押さえつけることによって、ホーリーファイバ4および異種ファイバ6と樹脂フィルム7との間を隙間無く密着させることが可能である。
ホーリーファイバの断面図 本発明の光ファイバの接続方法の実施の形態1を示す構成図 フィルム厚と接続損失との関係を示す説明図 屈折率比と接続損失との関係を示す説明図 本発明の光ファイバの接続方法の実施の形態2を示す構成図 本発明の光ファイバの接続方法の実施の形態3を示す構成図 屈折率が異なる構造を有するフィルムを示す説明図 MFD比と接続損失との関係を示す説明図 本発明の光ファイバの接続方法の実施の形態4を示す構成図
符号の説明
1:エアホール、2:クラッド、3:コア、4,4−1,4−2:ホーリーファイバ、5,7:樹脂フィルム、6:異種ファイバ、7a:高屈折率領域、7b:低屈折率領域。

Claims (3)

  1. ホーリーファイバ同士もしくはホーリーファイバと異種ファイバとを接続する方法であって、
    ホーリーファイバ同士もしくはホーリーファイバと異種ファイバとを、それぞれの一端が間隙を隔てて略対向するように配置し、
    均一の厚さを有し、その幅広面に直交する一の軸に対し高屈折率領域および低屈折率領域が該高屈折率領域を内側として同心円状に存在するフィルムを、前記各ファイバの一端同士の間に各ファイバの中心軸と前記一の軸とがほぼ一致しかつ各ファイバのそれぞれの端面とフィルムの表面とが隙間無く密着するよう配置した
    ことを特徴とする光ファイバの接続方法。
  2. 請求項1に記載の光ファイバの接続方法において、
    前記フィルムは、接続しようとする光ファイバ中を伝播する光の波長におけるMFDが各ファイバと同程度である
    ことを特徴とする光ファイバの接続方法。
  3. 請求項1に記載の光ファイバの接続方法において、
    前記フィルムは、前記高屈折率領域および低屈折率領域を自己形成光導波路技術によって形成した樹脂ブロックを前記一の軸と直交する方向に均一の厚さにカットして形成した
    ことを特徴とする光ファイバの接続方法。
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