重合法により小径トナーを作製すると粗大粒子が一部形成され、粗大粒子を含まないトナーの製造方法は未だ開発されていないのが現状である。
本発明者は、重合法により小径トナーを作製時に、反応装置内の液粘度が上昇するのに着目し、その液粘度上昇を抑えることで反応装置内の液流れを均一化し、重合体一次粒子の接触確率を均一化することにより粒度分布がシャープで粗大粒子の少ないトナーの製造方法について検討を行った。
検討の結果、トナーの製造方法において、重合体一次粒子と着色剤粒子を凝集して粒子凝集体を形成する着色粒子形成工程でナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物を添加することにより反応装置内の液粘度の上昇が抑えられ、粗大粒子の生成量が少なく、シャープな粒度分布を有する小径トナーが得られることを見出した。
具体的には、重合体一次粒子と着色剤分散液を混合し、凝集剤として金属塩を添加した後にナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物を添加すると、混合液の粘度上昇を抑えることができることを見出したのである。混合液の粘度上昇を抑えられるようになった理由は、おそらく、上記ナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物を添加することで、重合体一次粒子間に働く束縛力を低減できたためと推測している。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のトナーの製造方法は、重合体一次粒子と着色剤分散液を混合し、凝集剤として金属塩を添加した後にナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物を添加することを特徴としている。
ナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物を縮合工程で添加すると、凝集剤として金属塩を添加した混合液の粘度上昇が抑えられ、反応装置内の流れを均一化できるので、重合体一次粒子接触確率の不均一による粗大粒子の形成が抑えられる。その結果粗大粒子が少なく、より粒度分布がよりシャープなトナーが得られる。
本発明で用いられるナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物としては、特に限定されるものではなく公知の化合物を用いることができる。具体的には、クレオソート油スルホン酸ナトリウムのホルマリン重縮合物(デモールC(花王社製))、クレゾールスルホン酸ナトリウムと2−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウムのホルマリン重縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムのホルマリン重縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルマリン重縮合物、β−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン重縮合物、β−ナフタレンスルホン酸ナトリウム(デモールN(花王社製))のホルマリン重縮合物等を挙げることができる。
これらのナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物は単独で使用してもよいが、併用しても良い。
ナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物の添加量は、重合体一次粒子に対して2〜20質量%が好ましい。
この添加量とすることで、粘度上昇が抑えられ、その結果粗大粒子の生成を抑えることができる。
本発明で用いられる反応装置について説明する。
図1は、本発明のトナーを製造するのに用いられる反応装置の一例を示す斜視図である。
図1において、1は熱交換用ジャケット、2は撹拌槽、3は回転軸、4a、4bは撹拌翼、7は上部材料投入口、8は下部材料投入口、αは交差角を示す。
図1に示す反応装置は、上段の撹拌翼が下段の撹拌翼に対して回転方向に先行した交差角αを持って配設された、多段の構成とされた撹拌翼を備え、撹拌槽内には乱流を形成させるような邪魔板などの障害物を設けない特徴を有する。
図1に示す反応装置においては、熱交換用のジャケット1を外周部に装着した縦型円筒状の撹拌槽2内の中心部に回転軸3が垂設され、この回転軸3に、撹拌槽2の底面に近接された下段に位置する撹拌翼4bと、より上段に位置する撹拌翼4aとが設けられている。上段の撹拌翼4aは、下段に位置する撹拌翼4bに対して回転方向に先行した交差角αを持った状態とされている。尚、図1中、矢印は回転方向を示す。
本発明のトナーの製造方法においては、撹拌翼4a、4bの交差角αは90°未満であることが好ましい。この交差角αの下限は特に限定されるものではないが、5°以上90°未満であることが好ましく、更に好ましくは10°以上90°未満である。
このような構成とすることで、上段に配設されている撹拌翼4aによりまず凝集用分散液が撹拌され、下側への流れが形成される。次いで、下段に配設された撹拌翼4bにより、上段の撹拌翼4aで形成された流れが更に下方へ加速されると共にこの撹拌翼4a自体でも下方への流れが別途形成され、全体として流れが加速されて進行するものと推定される。
撹拌翼の形状については、乱流を形成させないものであれば特に限定されないが、図1に示した方形板状のものなど、貫通孔などを有さない連続した面を有するものより形成されるものが好ましく、曲面を有していてもよい。
撹拌翼が乱流を形成させないものであることによって、重合工程においては重合体一次粒子同士の合一が発生せず、更に、粒子の破壊による再分散も発生しない。又、凝集工程においては過度な粒子同士の衝突を抑制することができ、粒径分布の均一性を高めることができ、更に、均一な粒径分布のトナーを得ることができる。又、粒子の過度な合一を抑制することができるため、均一な形状のトナーを得ることができる。
本発明において、凝集剤を添加した後の反応装置内の液粘度は、5〜20mPasが好ましい。
この粘度範囲にすることで、反応装置内の流れを均一化でき、粒子接触確率を均一化でき、粗大粒子の生成を抑制することができる。尚、液粘度はB型粘度計を使用し1号ロータ、回転数60rpmとし測定時間30秒にて測定することができる。
本発明に係るトナーは、38μm以上の粗大粒子の量がトナー1g当たり500ppm以下であるものが好ましい。500ppm以下とすることで、多数枚プリントしても高解像度で、ハーフトーン画像部に濃度ムラのないプリントを継続して得ることができる。
尚、トナー中の粗大粒子量の測定は下記の方法で測定して得られた値である。
トナー中の粗大粒子量は、着色粒子分散液をフィルター濾別し、フィルター上の濾別された量で評価する。具体的には、得られた着色粒子分散液を、金属製の目開き38μmのメッシュフィルターで濾別を行い、着色粒子全量に対するフィルター上に濾別された着色粒子量の割合を算出して求める。
又、本発明に係るトナーは、体積基準におけるメディアン径(D50)が3〜9μmのものが好ましく、4〜7μmのものがより好ましい。ここで、体積基準におけるメディアン径(D50)とは、一定体積のトナーを粒径の大きい順又は小さい順にカウントしたとき、カウント数(累積値)が全粒子数の50%に相当するトナーの粒径のことをいうものである。
又、本発明に係るトナーは、トナーの体積基準の粒度分布における変動係数(以下、CV値ともいう)が20%以下であることが好ましい。変動係数が20%以下の粒度分布がシャープなトナーを用いてプリントを行うと、高精細な文字画像を形成することができる。尚、トナーの体積基準の粒度分布における変動係数は、以下の式より算出される。
変動係数(CV値)(%)=(S2/Dn)×100
(式中、S2は体積基準の粒度分布における標準偏差を示し、Dnは体積基準におけるメディアン径(D50);μmを示す。)
本発明に係るトナーの体積基準におけるメディアン径(D50)や変動係数(CV値)は、コールターマルチサイザー3(コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステム(コールター社製)を接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内の電解液「ISOTONII(コールター社製)」の入ったビーカーに、測定濃度8%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを2500個に設定して測定する。尚、コールターマルチサイザーのアパチャー径は50μmのものを使用した。
本発明に係るトナーは、平均円形度が、0.916〜0.955のものが好ましい。ここで、トナーの円形度は、下記式より算出される。すなわち、
円形度=(粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
又、平均円形度は、個々のトナー粒子の円形度を足し合わせた値を全粒子数で除して算出した値である。
トナーの円形度を測定する装置としては、例えば、「FPIA−2100(Sysmex社製)」が挙げられる。FPIA−2100を用いた測定では、トナーを界面活性剤入りの水溶液でなじませ、超音波分散処理を1分間行ってトナーを分散させた後、FPIA−2100を用いて測定を行う。測定条件は、HPF(高倍率撮像)モードに設定してHPF検出数を3000〜10000個の適正濃度にして測定するものである。
本発明のトナーの製造方法により得られたトナーは、主に黒色トナーとして用いられる他にカラートナーとして用いることも可能である。すなわち、カラートナーを用いて画像を形成する場合においても、ハーフトーン画質が向上し、常に安定したカラー画像を提供することが可能である。
次に、本発明のトナーの製造方法について説明する。
(1)樹脂と着色剤を含有する着色粒子分散液を作製する工程
(2)着色粒子分散液を冷却する工程
(3)冷却された着色粒子分散液から着色粒子を固液分離し、着色粒子を洗浄する工程
(4)洗浄処理した着色粒子を乾燥する工程
(5)乾燥処理した着色粒子に外添剤を添加する工程
最初に、(1)の「樹脂と着色剤を含有する粒子を作製する工程」について説明する。この工程は、水系媒体中で重合体一次粒子と着色剤粒子とを凝集・融着させて樹脂と着色剤を含有する粒子を作製する工程であり、次のような工程から構成される。すなわち、
(a)ラジカル重合性モノマー中にワックスを溶解させ、モノマー溶液を調製する工程
(b)ラジカル重合性モノマー溶液を重合して重合体一次粒子を作製する重合工程
(c)重合工程で得られた重合体一次粒子と着色剤粒子を有する液に凝集剤を添加した後、ナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物を添加し、凝集・融着させて着色粒子を形成する工程
から構成される。
重合体一次粒子を作製する重合反応は、例えば、以下のような手順で行われる。臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体(界面活性剤及びラジカル重合開始剤の水溶液)中に、必要に応じワックスを溶解させたモノマー溶液を添加し、機械的エネルギーを加えてモノマー溶液の液滴を形成する。次いで、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して液滴中で重合反応を進行させる。尚、モノマー液滴中に油溶性の重合開始剤を含有して重合を行うことも可能である。又、上記モノマー溶液の液滴を形成するための機械的エネルギー付与手段として、ホモミキサー、マントンゴーリン、超音波振動装置などが挙げられる。
この重合工程によりワックスを含有する重合体一次粒子が形成される。この重合体一次粒子は着色されていても、着色されていなくてもいずれでもよい。着色された重合体一次粒子はモノマー溶液中に着色剤を含有させておき、これを重合することにより得られる。又、着色されていない重合体一次粒子の場合は次の凝集・融着による着色粒子形成工程で着色剤粒子の分散液を添加して、重合体一次粒子と着色剤粒子とを融着させることで着色されることになる。
尚、この工程で重合体一次粒子作製に使用可能なワックスとしては、特に限定されるものではなく、具体的には低分子量のポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンと他のオレフィン系ポリマーとの共重合体等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス、ベヘン酸ベヘニルやモンタン酸エステル、グリセリンエステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス、水添ひまし油やカルバウバワックス等の植物系ワックス、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン系ワックス、アルキル基を有するシリコーン系ワックス、ステアリン酸等の高級脂肪酸系ワックス、長鎖脂肪酸アルコール系ワックス、ペンタエリスリトール(例えば、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル)等の長鎖脂肪酸多価アルコール系ワックス及びその部分エステル体系ワックス、オレイン酸アミドやステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド系ワックス、等が挙げられる。これらの中で、融点が100℃以下のワックスを用いることで良好な定着性が得られ、40℃乃至90℃のものがより好ましく、50℃乃至80℃のものが特に好ましい。
又、モノマー溶液の液滴を作製する際に使用する乳化剤には、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が用いられ、これらを単独もしくは2種以上併用することが可能である。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
又、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪族石鹸や、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
更に、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、N−アルキルニトリロトリ酢酸、N−アルキルジメチルベタイン、α−トリメチルアンモニオ脂肪酸、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノプロピオン酸塩、N−アルキル−オキシメチル−N,N−ジエチルベタイン、N−アルキル−N,N−ジアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキルイミダゾリン誘導体、アミノエチルイミダゾリン有機酸塩、N−アルキルスルホベタイン、N−アルキルタウリン塩を挙げることができる。
《モノマー》
次に、重合体一次粒子の作製に用いられるモノマーについて説明する。本発明では極性基を有するモノマーとその他のモノマーとを添加して重合を進行させることにより、ワックスを含有する重合体一次粒子を作製する。複数種類のモノマーを用いて重合体一次粒子を作製する際、モノマー同士を別々に添加したり、複数のモノマーを予め混合しておいてから添加してもよい。更に、モノマー添加中にモノマー組成を変更することも可能である。
重合体一次粒子の作製にあたり、重合反応をより確実に進行させるために一定量の乳化剤を添加することも可能である。又、重合開始剤を添加する時期は、モノマーの添加前、モノマーと同時に添加、モノマー添加後のいずれの場合でもよく、これらを組み合わせた添加方法でもよい。
又、着色剤や帯電制御剤等のワックス以外の成分を添加し、これらの成分を含有した重合体一次粒子を作製することも可能であり、着色剤をモノマーやワックスに溶解させてから重合反応を行うことも可能である。
酸性の極性基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸ブチル(n−ブチルアクリレート)、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有するモノマーや、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー等が挙げられる。
又、塩基性の極性基を有するモノマーとしては、例えば、アミノスチレン及びその4級塩、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環を含有するモノマーや、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、及び、これらのアミノ基を4級化したアンモニウム塩を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、アクリル酸アミド等が挙げられる。
更に、その他のモノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
本発明では、極性基を有するモノマーとしてメタクリル酸が、又、その他のモノマーとしてスチレン、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルが好適に用いられる。
これらのモノマーは、単独又は併用して用いることが可能であるが、重合体のガラス転移温度が40℃乃至80℃となるようにモノマーを選択することが好ましい。重合体のガラス転移温度が上記範囲とすることにより、トナーの保存安定性が確保されるとともに定着温度を広範に設定することが可能である。
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩や、これらの過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4′−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の水溶性重合開始剤、及び、これらの水溶性重合開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤、過酸化ベンゾイル、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
又、上記重合体一次粒子を作製する際に、連鎖移動剤を使用することも可能である。連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、ジイソプロピルキサントゲン等が挙げられる。連鎖移動剤は単独或いは2種以上併用することが可能である。又、連鎖移動剤の添加量は全モノマー量に対して5質量%以下が好ましい。
重合体一次粒子の大きさは、平均粒径で50nm〜3.0μmの範囲であり、好ましくは100nm〜1.0μm、100〜500nmが特に好ましい。その結果、トナー製造時における凝集速度の制御が行い易くなるので、均一なトナーを作製し易くなる。又、重合体一次粒子の大きさが上記範囲のときに小径のトナーが得られ易くなり、高解像度の画像形成を促進させる。尚、重合体一次粒子の大きさは、前述したワックス粒子の測定と同様、粒度分布測定装置を用いて測定することが可能で、例えば、レーザ回折散乱法を用いたマイクロトラック粒度分布測定装置UPA(日機装株式会社製)等の市販の粒度分布測定装置が挙げられる。
重合工程に続く着色粒子形成工程では、重合体一次粒子と着色剤粒子を有する液に凝集剤を添加し、その後ナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物を添加し、重合体一次粒子と着色剤粒子とを凝集・融着させることにより粒子が形成される。凝集・融着を行って粒子形成を行う代表的な方法の1つに「塩析/融着法」がある。この方法は、ワックスを溶解させたモノマーを重合して重合体一次粒子を形成して得られた重合体一次粒子を着色剤粒子と金属塩等を用いて凝集させて粒子成長させる。そして、所望の粒子径まで成長したところで凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、更に、必要に応じて粒子形状を制御するための加熱を継続して行うものである。
又、着色粒子形成工程では、重合体一次粒子や着色剤粒子の他に、ワックスや荷電制御剤などの内添剤も粒子にして凝集・融着させることができる。
着色粒子形成工程における「水系媒体」とは、主成分(50質量%以上)が水からなるものをいう。ここに、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
着色剤粒子は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われる。着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。又、使用可能な界面活性剤としては、前述の樹脂微粒子形成に使用される界面活性剤と同様のものを挙げることができるが、両性界面活性剤を使用することが好ましい。尚、本発明においては、着色剤(微粒子)は表面改質されていてもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散させ、その分子量液中に表面改質剤を添加し、この系を昇温することにより反応させる。反応終了後、着色剤を濾別し、同一の溶媒で洗浄濾過を繰り返した後、乾燥することにより、表面改質剤で処理された着色剤(顔料)が得られる。
次に、(2)の「着色粒子分散液を冷却する工程」について説明する。この工程は前述の工程で作製された着色粒子の分散液を冷却処理する工程で、1℃/分乃至20℃/分の冷却速度で急冷処理するものである。この工程で用いられる冷却処理方法としては、例えば、反応容器外部より冷媒を投入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法等が挙げられる。
次に、(3)の「冷却された着色粒子分散液から着色粒子を固液分離し、着色粒子を洗浄する工程」について説明する。この固液分離・洗浄工程では、前述の工程で所定温度まで冷却された着色粒子分散液から着色粒子を固液分離する処理と、固液分離によりトナーケーキと呼ばれる塊状の着色粒子集合体を洗浄処理する工程からなる。トナーケーキの洗浄により、着色粒子表面に付着している界面活性剤や凝集剤等の付着物が除去される。
着色粒子分散液の固液分離処理方法には、遠心分離法やヌッチェ等を使用する減圧濾過法、フィルタープレス等を使用する濾過法等が挙げられる。尚、固液分離・洗浄工程を複数回にわたり繰り返し行うことで、着色粒子表面の付着物をより確実に除去できる。
次に、(4)の「洗浄処理した着色粒子を乾燥する工程」について説明する。この工程は、最終の洗浄処理を行ったトナーケーキを乾燥処理する工程である。この工程で使用される具体的な乾燥装置としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機の他に、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機等が挙げられる。
乾燥処理後の着色粒子の水分量は、カールフィッシャー法による水分量測定で5質量%以下、好ましくは2質量%以下とすることが好ましい。カールフィッシャー法による水分測定装置としては、例えば、自動水分量測定装置「AQS−724」(平沼産業株式会社製)などが挙げられ、水分量測定時の条件は例えば気化温度を110℃、気化時間を25秒に設定して測定する。
次に、(5)の「乾燥処理した着色粒子に外添剤を添加する工程」について説明する。この工程は、乾燥させた着色粒子に必要に応じて外添剤を添加して、着色粒子を画像形成に使用可能なトナーにする工程である。外添剤を添加、混合させる装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置が挙げられる。
次に、本発明に係るトナーの構成材料について説明する。
《着色剤》
本発明に係るトナーへの使用が可能な着色剤としては、以下の様なものが挙げられる。
黒色の着色剤としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラックや、マグネタイトやフェライト等の磁性体も使用可能である。
又、マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.Iピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
グリーンもしくはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.Iピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは2種類以上併用することが可能である。又、着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲に設定するのがよい。
本発明に係るトナーには、必要に応じて荷電制御剤を添加することが可能である。荷電制御剤の具体的な例としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、ベンジル酸誘導体金属塩或いはその金属錯体、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩或いはその金属錯体等が挙げられる。含有される金属としては、Al、B、Ti、Fe、Co、Ni等が挙げられる。この中でも、ベンジル酸誘導体の金属錯体化合物が特に好ましい。
荷電制御剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜20.0質量%の範囲に設定するのがよい。
《外添剤》
本発明に係るトナーには、流動性、帯電性の改良及びクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加することが可能である。これら外添剤としては特に限定されるものではなく、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することが可能である。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては必要に応じて疎水化処理したものを用いてもよい。具体的なシリカ微粒子としては、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
チタニア微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
又、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
これら外添剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用することができる。
《滑剤》
本発明に係るトナーには、必要に応じてクリーニング性、転写性の向上の目的で滑剤を添加して用いても良い。滑剤としては、例えば、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
これら滑剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。滑剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用することができる。
《現像剤》
本発明に係るトナーは、一成分現像剤、二成分現像剤として用いることができる。一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤或いはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものが挙げられ、いずれにも使用することができる。又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の鉄含有磁性粒子に代表される従来から公知の材料を用いることができるが、特に好ましくはフェライト粒子もしくはマグネタイト粒子である。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは20〜80μmのものがよい。
キャリアの体積平均粒径の測定は、レーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているコーティングキャリア、或いは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。又、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
又、キャリアとトナーの混合比は、質量比でキャリア:トナー=1:1〜50:1の範囲とするのがよい。
《画像形成》
次に、本発明のトナーの製造方法により製造されたトナーを用いた画像形成方法について説明する。
本発明に係るトナーは、トナー像が形成された転写材を定着装置を構成する加熱部材間を通過させて定着する接触加熱定着方式の画像形成方法に好適に使用される。
図2は、本発明に係る画像形成方法に用いる画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像手段、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング手段、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体を示す。
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、記録部材Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。又、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。又、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。又、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング手段6Kを有する。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として転写紙等の記録部材Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、接触加熱定着方式の熱ロール式定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
一方、2次転写ロール5Aにより記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
2次転写ロール5Aは、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
又、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とを有する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ロール71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、1次転写ロール5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとからなる。
筐体8の引き出し操作により、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
このように感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写し、熱ロール式定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を記録部材Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
本発明に係るトナーを用いて形成されるトナー画像を保持する転写材Pは、通常画像支持体、転写材或いは転写紙と呼ばれるもので、トナー画像を形成可能なものであれば特に限定されるものではない。具体的には、薄紙から厚紙にいたるまでの普通紙、アート紙やコート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
《トナーの作製》
以下の様にしてトナーを作製した。
〈重合体一次粒子分散液1の作製〉
スチレン175質量部、n−ブチルアクリレート60質量部、メタクリル酸15質量部、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート7質量部からなる単量体混合液を、撹拌装置を取り付けたステンレス釜に入れ、そこにペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル100質量部を添加し、70℃に加温、溶解させて単量体混合液を調製した。
一方、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部をイオン交換水1350質量部に溶解させた界面活性剤溶液を70℃に加熱し、前記単量体混合液を添加、混合した後、循環経路を有する機械式分散機CLEARMIX(エム・テクニック株式会社製)により30分間分散を行うことにより乳化分散液を調製した。
次いで、この分散液に過硫酸カリウム7.5質量部をイオン交換水150質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を78℃で1.5時間加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子に対し、更に過硫酸カリウム12質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン320質量部、n−ブチルアクリレート100質量部、メタクリル酸35質量部、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート7.5質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って重合を進行させた後、28℃まで冷却して重合体一次粒子分散液を得た。この重合体一次粒子分散液を「重合体一次粒子分散液1」とする。
〈着色剤粒子分散液1の作製〉
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に投入して撹拌溶解させた。この液を撹拌しながら、カーボンブラック(リーガル330R(キャボット社製))420質量部を徐々に添加し、次いで、機械式分散機CLEARMIX(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子分散液を調製した。これを「着色剤粒子分散液1」とする。「着色剤粒子分散液1」における着色剤粒子の粒子径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、115nmであった。
〈着色粒子の作製〉
(着色粒子1の作製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、前述の「重合体一次粒子分散液1」を固形分換算で392質量部、イオン交換水1100質量部、「着色剤分散液1」200質量部を投入し、液温を30℃に調整した後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
次に、塩化マグネシウム60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。この時の液粘度は、45mPasであった。
その後、ナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物としてβ−ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン重縮合物の20%水溶液を37.5質量部(固形分換算で7.5質量部)添加し、3分間保持した。この液の粘度を測定したとところ20mPasであった。尚、液粘度はB型粘度計を使用し1号ロータ、回転数60rpmとし測定時間30秒にて測定した。
その後、昇温を開始して60分間かけて90℃まで昇温させた。昇温後、90℃に保持させたまま凝集反応を継続させた。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター社製)を用いて凝集粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメディアン径(D50)が6.6μmになった時点で塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水160質量部に溶解させた溶液を添加して、粒子成長を停止させた。更に、液温度を90℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、前述のFPIA−2100を用いて(HPF検出数を4000個)、平均円形度が0.925になった時点で30℃に冷却し、「着色粒子分散液1」を作製した。作製した「着色粒子分散液1」をバスケット型遠心分離機「MARK III型(型式番号60×40)(松本機械製作所株式会社製)」で固液分離し「着色粒子1」のウェットケーキを作製した。
作製したウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで40℃のイオン交換水で洗浄処理し、その後、気流式乾燥機「フラッシュジェットドライヤー(株式会社 セイシン企業製)」に移して、水分量が0.5質量%になるまで乾燥して「着色粒子1」を作製した。得られた「着色粒子1」の体積基準におけるメディアン径(D50)は6.5μmであった。
(着色粒子2の作製)
着色粒子1の作製において、β−ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン重縮合物37.5質量部を、β−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物187.5質量部に変更した以外は同様にして「着色粒子2」を作製した。
(着色粒子3の作製)
着色粒子1の作製において、β−ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン重縮合物37.5質量部を、375質量部に変更した以外は同様にして「着色粒子3」を作製した。
(着色粒子4の作製)
着色粒子1の作製において、β−ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン重縮合物を、添加しなかった以外は同様にして「着色粒子4」を作製した。
〈トナーの作製〉
上記で作製した「着色粒子1〜4」の各々に、数平均1次粒子径が12nm、疎水化度が68の疎水性シリカを1質量%、及び、数平均一次粒子径が20nm、疎水化度が63の疎水性酸化チタンを1質量%となるように添加し、「ヘンシェルミキミキサー(三井三池化学工業株式会社製)」を用いて混合した。その後、目開き70μmのフルイを用いて異物を除去して「トナー1〜4」を得た。尚、得られた「トナー1〜4」はいずれも体積基準におけるメディアン径(D50)が6.5μmであった。
表1に、トナーの作製に用いたナフタレン・スルホネートのホルマリン重縮合物の種類、添加量、添加前と添加後の液粘度、トナーの体積基準におけるメディアン径(D50)、トナー1g当たりの粗大粒子量、トナー粒子の変動係数(CV値)を示す。
尚、体積基準におけるメディアン径(D50)、トナー1g当たりの粗大粒子量、トナー粒子の変動係数(CV値)は前記の方法で測定した値である。
《現像剤の調製》
「トナー1〜4」の各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合して、トナー濃度が6%の「現像剤1〜4」を調製した。
《評価》
評価装置として、市販のモノクロ画像形成装置「bizhub PRO 1050(コニカミノルタビジネステクノロジー(株)製)」を用い、上記で作製したトナーと現像剤を順次装填して1万枚のプリントを行った。
(ハーフトーン画像の濃度ムラの評価)
プリント初期と1万枚プリント修了後、常温常湿環境下(20℃、50%RH)で、画像濃度0.5のハーフトーンをプリントし、評価用のプリント画像を作成した。得られたプリント画像を目視観察し、下記基準で評価を行った。
評価基準
◎:ハーフトーン画像に濃度ムラが全くなく均一な画像
○:ハーフトーン画像に濃度ムラが若干見られるが、実用上全く問題がないレベル
×:ハーフトーン画像に濃度ムラが見られ、実用上問題となるレベル。
(解像度の評価)
1万枚プリント修了後、常温常湿環境下(20℃、50%RH)で、縦横8本/mmの細線原稿をプリントし、評価用のプリント画像を作成した。得られたプリント画像を10倍のルーペで拡大し、細線のつぶれ具合で評価した。
評価基準
◎:細線のつぶれが無く良好
○:細線のつぶれが数カ所見られるが実用上問題なし
×:細線のつぶれが数多く見られ、実用上問題有り。
表2に評価結果を示す。
表2に示す様に、本発明に該当する実施例1〜3の「トナー1〜3」は、粗大粒子の量が500pp以下、変動係数が20以下で、ハーフトーン画像の濃度ムラ及び解像度の評価結果が良好であったのに対し、本発明外の比較例1の「トナー4」は粗大粒子の量が500ppを越え、変動係数が20を越え、ハーフトーン画像の濃度ムラ及び解像度の評価結果に問題が見られ、本発明の効果が発現されていないことが確認された。