本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
まず、本発明が適用される射出成形機の型締装置について図1乃至図3を参照しながら説明する。図1は本発明が適用される型締装置の一例を示す側面図であり、金型が閉じた状態を示している。図2は図1に示す型締装置の側面図であり、金型が開いた状態を示している。図3は図1に示すリヤプラテンを吸着板側から見た正面図である。
図1及び図2に示す型締装置10は、射出成形機のフレームFr上に設けられた2本のレールよりなるガイドGd上に支持される。固定プラテン11は、ガイドGd上に載置され、フレームFr及びガイドGdに対して固定されている。固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させてリヤプラテン13が配設されている。固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、2本だけを示す)が架設される。可動プラテン12が、タイバー14に沿って固定プラテン11と対向した状態でタイバー14に沿って型開閉方向に進退自在(図において左右方向に移動自在)に配設される。そのために、可動プラテン12には、タイバー14が貫通するガイド穴(図示せず)が形成される。
タイバー14の前端部(図において右端部)には、第1のねじ部(図示せず)が形成され、タイバー14は、第1のねじ部にナットn1を螺合して締め付けることによって固定プラテン11に固定される。各タイバー14の後端部(図において左端部)には、タイバー14より外径が小さいガイドポスト21が一体に形成されている。ガイドポスト21は、リヤプラテン13の後端面(図において左端面)から後方に向けて突出して延在する。各ガイドポスト21の、リヤプラテン13の後端面の近傍に、第2のねじ部(図示せず)が形成され、固定プラテン11とリヤプラテン13とは、第2のねじ部にナットn2を螺合して締め付けることによって固定される。ガイドポスト21をタイバー14と一体に形成しているが、ガイドポスト21をタイバー14とは別体として形成してもよい。
なお、リヤプラテン13は、タイバー14が伸縮するのに伴って、ガイドGdに対してわずかに移動することができるようにガイドGd上に載置される。したがって、固定プラテン11はフレームFr及びガイドGdに対して固定され、リヤプラテン13はガイドGdに対してわずかに移動することができるようになっている。リヤプラテン13をフレームFr及びガイドGdに対して固定し、固定プラテン11をガイドGdに対してわずかに移動することができるように構成してもよい。
また、固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ固定される。固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。可動プラテン12の進退によって可動金型16を固定金型15に対して移動し、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、型締めが行われると、固定金型15と可動金型16との間にキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された成形材料としての樹脂がキャビティ空間に充填される。
可動プラテン12と平行に配設された磁性体としての吸着板22が、リヤプラテン13より後方において各ガイドポスト21に沿って進退自在に配設され、ガイドポスト21によって案内される。なお、吸着板22には、各ガイドポスト21と対応する箇所に、ガイドポスト21が貫通するガイド穴23が形成される。ガイド穴23は、前端面(図において右端面)に開口した大径部24とこれに繋がる小径部25とを含む。大径部24はナットn2を収容する。小径部25は吸着板22の後端面に開口し、ガイドポスト21が摺動する摺動面を有している。吸着板22は、ガイドポスト21によって案内されるようになっているが、吸着板22を、ガイドポスト21だけでなく、ガイドGdによって案内することもできる。
可動プラテン12を進退させるために、型開閉用の駆動部としてリニアモータ28が、可動プラテン12に連結された吸着板22とフレームFrとの間に配設される。リニアモータ28は、フレームFr上に、ガイドGdと平行に、かつ、吸着板22の移動範囲に対応して配置された固定子29と、吸着板22の下端が固定されたスライドベースSbに固定され、固定子29と対向し、かつ、所定の範囲にわたって形成された可動子31とを備える。スライドベースSbは、図3に示すように、その両側においてガイドGd上に支持されており、可動子31を固定子29に沿って移動可能に支持する。スライドベースSbは、可動子31の上面を覆ってガイドGdの延在方向に延在する。そのために、リヤプラテン13の下端には、ガイドベースGb及びスライドベースSbが通過する空間33を形成する脚部13aが両側に設けられる。
リニアモータ28の固定子29の長さをLpとし、可動子31の長さをLmとし、吸着板22(可動プラテン12)のストロークをLstとしたとき、長さLmは、リニアモータ28による最大の推進力に対応して設定される。また、長さLpは、Lp>Lm+Lstという関係を満足するように設定される。
可動子31は、固定子29に向けて突出し、かつ、所定のピッチで複数の磁極歯33が形成されたコア34と、各磁極歯33に巻装されたコイル35とを備える。なお、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。固定子29は、コア、及びコア上に延在させて形成された永久磁石(図示せず)を備える。永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に、かつ、磁極歯33と同じピッチで着磁させることによって形成されている。
したがって、コイル35に所定の電流を供給してリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられる。それに伴って、スライドベースSb、スライドベースSbに固定された吸着板22、及びロッド39により吸着板22に連結された可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きが行われる。
なお、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設しているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28を駆動する際にコイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
可動プラテン12が前進(図において右方向に移動)して可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが終了する。型閉じに続いて型締めを行うことができるように、リヤプラテン13と吸着板22との間に、型締め用の駆動部としての電磁石ユニット37が配設される。また、可動プラテン12と吸着板22とを連結するロッド39が、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延在する。ロッド39は、型閉じ時及び型開き時に、吸着板22の進退に連動して可動プラテン12を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生した型締力を可動プラテン12に伝達する。なお、フレームFr、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39等によって型締装置10が構成される。
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に配設された電磁石49、及び吸着板22側に配設された吸着部51を有する。リヤプラテン13の後端面の所定の部分、すなわちロッド39よりわずかに上方及び下方に、水平方向に延在した二つの溝45が互いに平行に形成されている。溝45の間には、矩形の断面形状を有するコア46が形成され、リヤプラテンのコア46以外の部分にヨーク47が形成される。コア46にコイル48が巻装される。
また、吸着板22の前端面の所定の部分として、吸着板22においてロッド39を包囲し、電磁石49と対向する部分に、吸着部51が設けられる。なお、リヤプラテン13のコア46及びヨーク47、並びに吸着板22は、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成された電磁積層鋼板により形成される。また、リヤプラテン13とは別に電磁石49が配設され、吸着板22とは別に吸着部51が配設されているが、リヤプラテン13の一部として電磁石を形成し、吸着板22の一部として吸着部を形成することもできる。
したがって、電磁石ユニット37において、溝45内のコイル48に電流を供給すると、電磁石49が励磁され、吸着部51が吸着されて型締力が発生する。
ロッド39は、後端部(図において左端部)において吸着板22と連結し、前端部において可動プラテン12と連結している。ロッド39は、型閉じ時に吸着板22が前進することにより前進し、これにより可動プラテン12が前進する。また、ロッド39は、型開き時に吸着板22が後退(図において左方向に移動)することにより後退し、これにより可動プラテン12が後退する。
そのために、リヤプラテン13の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴41が設けられる。また、吸着板22の中央部分に、ロッド39を貫通させるための穴42が形成される。さらに、穴41の前端部の開口に臨ませて、ロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。また、ロッド39の後端部にねじ43が形成され、吸着板22に対して回転自在に支持されたナット44がねじ43に螺合している。
型閉じが終了した時点で、吸着板22はリヤプラテン13に近接し、リヤプラテン13と吸着板22との間にギャップ(間隙)δが形成される。ギャップδが小さくなりすぎたり、大きくなりすぎたりすると、吸着部51を十分に吸着することができず、型締力が小さくなってしまう。ギャップδの最適な値(距離又は寸法)は、金型装置19の厚さが変化するのに伴って変化する。
そこで、ナット44の外周面に大径のギヤ(図示せず)が形成され、吸着板22に型厚調整用の駆動部として型厚調整用モータ(図示せず)が配設され、型厚調整用モータの出力軸に取り付けられた小径のギヤが、ナット44の外周面に形成されたギヤに噛合させられる。
金型装置19の厚さに対応して、型厚調整用モータを駆動し、ナット44をねじ43に対して所定量回転させると、吸着板22に対するロッド39の位置が調整され、固定プラテン11及び可動プラテン12に対する吸着板22の位置が調整されて、ギャップδを最適な値にすることができる。すなわち、可動プラテン12と吸着板22の相対的な位置を変えることによって、型厚の調整が行われる。
なお、型厚調整用モータ、ギヤ、ナット44、ロッド39等によって型厚調整装置が構成される。また、ギヤによって、型厚調整用モータの回転をナット44に伝達する回転伝達部が構成される。そして、ナット44及びねじ43によって運動方向変換部が構成され、運動方向変換部において、ナット44の回転運動がロッド39の直進運動に変換される。
次に、型締装置10の動作について説明する。
まず、型閉じ時に、図2に示す状態において、コイル35に電流を供給する。それにより、リニアモータ28が駆動され、吸着板22と共に可動プラテン12が前進させられ、図1に示すように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、目標型締力Fが得られるような最適なギャップ(間隙)δが形成される。なお、型閉じに必要とされる力は型締力と比較して十分に小さい。
続いて、コイル48に電流が供給され、磁性体である吸着板22の吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それにより、吸着板22及びロッド39を介して吸着力が型締力として可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22とが接触しないように、リヤプラテン13と吸着板22との間、例えば、リヤプラテン13における吸着板22と対向する面、又は吸着板22におけるリヤプラテン13と対向する面に、接触防止用ストッパ(図示せず)が配設されることが好ましい。さらに、ギャップδを形成するためのギャップ調整用ストッパ(図示せず)を配設してもよい。なお、接触防止用ストッパをフレームFrに配設してもよい。
また、型締力が目標設定値になるようにコイル48に供給する電流の値が決定され、電流がコイル48に供給されて型締めが行われる。型締めが行われている間、射出装置17において溶融した樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19のキャビティ空間に充填される。
そして、キャビティ空間内の樹脂が固化すると、図1に示す状態において、コイル48への電流供給が停止される。この場合、コイル48への電流供給を停止しても、吸着部51には磁気が残留するので、コイル48に型締めを行う際と逆の方向に電流が供給され、吸着部51に残留した磁気が取り除かれる。続いて、コイル35に逆方向の電流が供給される。それにより、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、図2に示されるように、可動金型16が後退限位置に移動し、型開きが行われる。
上述の型締装置10において、リニアモータ28の固定子29はフレームFrに固定され、且つ可動子31はフレームFrに固定されたガイドGd上を移動するガイドベースGbにスライドベースSbを介して固定される。このような構成であると、リニアモータ28が駆動されて可動子31が移動したときに、固定子29にその反力が作用する。可動子31は、ガイドGd,スライドベースSb,吸着板22,ロッド39,可動プラテン12等の重量を有する部材と共に移動するため、固定子29に作用する反力は大きい。
上述の固定子29に作用する反力は、可動子31の加速度が大きいほど大きくなる。すなわち、可動子31の移動速度を急激に大きくしたり、可動子を急激に停止させたりする際に大きな反力が固定子29に作用する。上述のように、固定子29はフレームFrに固定されており、固定子29に作用する反力によりフレームFrに振動が生じることがある。
図4はリニアモータ28を駆動して型閉じを行う際の型開閉速度の変化を示す図である。図2に示す状態からリニアモータ28を駆動して可動プラテン12を固定プラテン11に向けて移動させる際、型開閉速度はゼロから増大して一定の速度となる。一定の速度となるまでが、可動子31と共に移動する構成部品(可動プラテン12、可動金型16,吸着板22等)が加速されている期間であり、このとき固定子29に反力が作用してフレームFrに振動が発生するおそれがある。可動プラテン12の速度が一定の期間は反力は作用しない。また、金型を停止する型タッチ位置に近づくと、可動子31の速度が減少し、型タッチ位置においてゼロとなる。
ここで、金型が上述の型タッチ位置に精度よく停止するように、可動子31を停止させる必要があり、この点で型閉じ動作における減速時に発生する振動が、固定金型11に伝播しないようにすることが重要である。可動子31を精度よく所定の位置に停止させるためにフィードバック制御が行われるが、フィードバック制御を行うと、上述のようにリニアモータ28に振動が発生する。特に、型締装置の場合には、可動プラテン12や可動金型16をともなってリニアモータが進退するため、加減速時には大きな慣性力が働き、その反力がフレームFrへ伝達される。この振動がフレームFrを伝播して固定プラテン11や他の構成部品に伝搬され、型締装置10の動作に悪影響を及ぼすおそれがある。また、型タッチ位置を検出するためにフレームFrに取り付けられた位置センサに振動が伝わり、センサの検出精度が悪くなるおそれがある。したがって、型閉じ動作における減速時に発生する振動の伝播を抑制する必要がある。また、電磁石によって型締力を精度よく発生させるには、吸着板22とリヤプラテン13との間のギャップδも精度よく調整する必要がある。
そこで、本発明では、リニアモータ28の固定子29を固定するフレームを、固定プラテン11が固定されるフレームFrとは別個に設け、固定子29に作用する反力に起因する振動が固定プラテン11やフレームFrに取り付けられた他の構成部品に伝播しないようにする。
次に、本発明の第1実施例による型締装置について、図5乃至図7を参照しながら説明する。図5は本発明の第1実施例による型締装置の側面図である。図6は図5におけるVI−VI線に沿った断面図である。図7は図5におけるVII−VII線に沿った断面図である。図5乃至図7において、図1乃至図3に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
本発明の第1実施例による型締装置は、上述の型締装置10と同様な構成であり、フレームFrが第1のフレームFr1と第2のフレームFr2とに分けられた点が異なる。
第1のフレームFr1は、ガイドレールよりなるガイドGdが固定されるメインフレームを構成する。したがって、固定プラテン11、可動プラテン12、及び吸着板22は、第1のフレームFr1に固定されたガイドGr上に載置される。固定プラテン11も可動プラテン12と同様に、ガイドGd上に載置される。可動プラテン12及び吸着板22は、ガイドGdに沿って移動可能である。また、リヤプラテン13は、図7に示すように、第1のフレームFr1に固定される。また、逆に固定プラテン11をフレームFrに固定し、リヤプラテン13をガイドGr上に載置するようにしてもよい。型締力を印加させるとタイバー14が引張されるので、固定プラテン11若しくはリヤプラテン13のいずれかを移動自在にする必要がある。
一方、第2のフレームFr2には、リニアモータ28の固定子29だけが固定される。第2のフレームFr2は、第1のフレームFr1とは別のフレームとして分離されており、本実施例では第1のフレームFr1の中央部分に設けられた空間に配置される。本実施例では、第2のフレームFr2は第1のフレームFr1が設置された床面に設置されるだけであり、第2のフレームFr2が第1のフレームFr1に連結される部分は無い。
また、本実施例では、固定プラテン11に対する可動プラテン12の位置を検出するために、固定プラテン11が固定された第1のフレームFr1に対する可動プラテン12の位置を検出する位置検出器55が、第1のフレームFr1に取り付けられる。可動プラテン12の位置を検出することで、可動金型16の位置を知ることができ、型タッチ位置などの可動金型の位置を精度よく検出することができる。本実施例では、位置検出器55はリニアエンコーダであり、リニアスケール55aが可動プラテン12に取り付けられ、リニアスケール55aを読み取るエンコーダ55bが第1のフレームFr1に取り付けられる。ここで、可動プラテン12と共に進退する吸着板22に位置検出器55を取り付けて、吸着板22とフレームFr1との相対的な位置変動を検出するようにしてもよい。
上述の構成では、リニアモータ28の可動子31は第1のフレームFr1に支持されたスライドベースSbに固定される。スライドベースSbは吸着板22及びロッド39を介して可動プラテン12に接続され、可動プラテン12を移動させる。したがって、可動子31は可動プラテン12に取り付けられているということができる。なお、可動子31を直接可動プラテン12に取り付けて固定し、ロッド39を介して吸着板22を可動プラテン12と共に移動させる構成としてもよい。
一方、固定子29は第2のフレームFr2に支持され固定される。したがって、リニアモータ28が駆動されて固定子29に可動子31の反力が作用し、固定子29が固定された第2のフレームFr2に振動が発生しても、その振動は第1のフレームFr1には伝播しない。よって、第2のフレームFr2から分離している第1のフレームFr1に固定された固定プラテン11に振動が伝播することはなく、リニアモータ28の駆動に起因した振動の影響が抑制され、精度のよい型閉じ及び型締めを行うことができる。
また、第1のフレームFr1に取り付けられた位置検出器55にも振動が伝播しないため、振動の影響が抑制され、可動プラテン12の位置を精度よく検出することができる。このため、精度よく検出された位置に基づいて、精度のよい型閉じ及び型締めを行うことができる。
さらに、リヤプラテン13も第2のフレームFr2とは異なるフレームである第1のフレームFr1に設けられており、また、吸着板22も第2のフレームFr2から切り離されて第1のフレームFr1に沿って進退する。このように、電磁石を構成する部材が第2のフレームFr2から機械的に切り離されているので、リニアモータ装置の反力が電磁石に影響を及ぼすことがない。このため、急な加減速運動を行っても、電磁石のギャップ(間隙)δに悪影響を及ぼすことがないので、精度よく型締力を発生させることができる。また、リニアモータ減速時の振動を電磁石が受けることがないので、リニアモータの減速の途中から電磁石に電流を流し、電磁力を発生させることができるので、成形サイクルも短縮することができる。
なお、第1のフレームFr1は、第2のフレームFr2の両側に配置された2つの部分として設けられてもよく、あるいは、上から見ると枠状で中央部分の空間に第2のフレームFr2が設けられる構造としてもよい。また、第1のフレームFr1及び第2のフレームFr2は、図示のように中実の部材により構成する必要はなく、十分な剛性を有する構造であれば、骨組みを枠体として板を張り付けたような構造としてもよい。
また、上述の実施例では可動プラテン12は第1のフレームFr1に固定されたガイドGd上に支持されて移動可能であるが、可動プラテン12を第2のフレームFr2上に設けたガイド上に移動可能に支持することもできる。この場合、第2のフレームFr2の振動はリニアモータ28による振動であり、その振動方向は可動プラテン12の移動方向に一致しているので、第2のフレームFr2が振動しても、その方向に移動可能な可動プラテン12に伝播する振動は抑制されるので、リニアモータ28の駆動に起因した振動の影響はほとんど無い。
次に、本発明の第1実施例による型締装置の動作について説明する。
型開限においてリニアモータ28に電流が供給されると、リニアモータ28の加速が開始され、型開速度がゼロから増大し、可動プラテン12が前進する。この際、リニアモータ28の可動子31には前進する方向(固定プラテン11に向かう方向)に力が働き、この力と同じ大きさの力が反力として第2のフレームFr2に加わる。しかしながら、第2のフレームFr2と第1のフレームFr1とは機械的に分離されているので、可動プラテン12,吸着板22及びリヤプラテン13にも第2のフレームFr2の振動は伝達されない。このため、可動プラテン12と吸着板22とを滑らかに加速させることができる。その後、所定の時間が経過すると可動プラテン12の前進速度は一定となる。
そして、可動プラテン12と固定プラテンとの間の距離が予め定められた距離以下になると、リニアモータ28は減速動作を開始する。減速開始のタイミングは、プラテン間の距離に基づいて設定する必要はなく、型閉動作中の時間を管理して減速動作の開始タイミングを規定してもよい。減速動作が開始されると、可動子31には加速するときに働いた力とは逆方向の力が加わる。これと同時に、第2の第2のフレームFr2に対してもその力の反力が加わり、第2のフレームFr2は振動する。しかし、第2のフレームFr2と第1のフレームFr1とは機械的に分離されているため、可動プラテン12、吸着板22及びリヤプラテン13にも第2のフレームFr2の振動は伝達されない。このため、可動プラテン12と吸着板22とを滑らかに減速させることができる。
その後、リニアモータ28の可動子31の第1のフレームFr1に対する速度がゼロになる直前で、制御部(図示せず)は電磁石のコイル48への電流の供給を開始する。この際、減速時に第2のフレームFr2に発生する振動が、吸着板22及びリヤプラテン13に伝達されないので、電磁力を精度よく制御することができる。これにより、リニアモータ28の速度がゼロになる時点において、吸着板22とリヤプラテン13との間には電磁力が発生し、金型19に型締力を発生させることができ、型締力を精度よく制御することができる。さらに、リニアモータ28が完全に停止する前に電磁力を発生させることができ、型締力を制御することができるので、成形サイクルを短縮することができ、成形品の生産性を向上させることができる。
次に、本発明の第2実施例による型締装置について、図8乃至図10を参照しながら説明する。図8は本発明の第2実施例による型締装置の側面図である。図9は図8におけるIX−IX線に沿った断面図である。図10は図8におけるX−X線に沿った断面図である。図8乃至図10において、図1乃至図3に示す構成部品と同等な部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
本発明の第2実施例による型締装置は、上述の型締装置10と同様な構成であり、フレームFrが第1のフレームFr1と第2のフレームFr2とに分けられた点が異なる。この点は上述の第1実施例と同様であるが、本実施例では、第2のフレームFr2が第1のフレームFr1に制振装置を介して連結されている。
本実施例において、第1のフレームFr1は、ガイドレールよりなるガイドGdが固定されるメインフレームを構成する。したがって、固定プラテン11、可動プラテン12、及び吸着板22は、第1のフレームFr1に固定されたガイドGr上に載置される。固定プラテン11は第1のフレームFr1対して固定される。可動プラテン12及び吸着板22は、ガイドGdに沿って移動可能である。また、リヤプラテン13は、図10に示すように、第1のフレームFr1に固定される。
一方、第2のフレームFr2には、リニアモータ28の固定子29だけが固定される。第2のフレームFr2は、第1のフレームFr1とは別のフレームとして分離されており、本実施例では第1のフレームFr1の中央部分に設けられた空間に配置される。本実施例では、第2のフレームFr2は第1のフレームFr1に設けられた空間において、第1のフレームFr1上に載置された状態で配置される。
第2のフレームFr2と第1のフレームFr1との間には、移動案内機構として複数のローラ60が設けられ、第2のフレームFr2は第1のフレームFr1に対して可動プラテン12の移動方向に移動可能となっている。本実施例では、移動案内機構としてローラ60を用いているが、リニアガイド等の直動案内機構やレール等の摺動機構を用いることとしてもよい。
本実施例において、第2のフレームFr2は、制振装置62を介して第1のフレームFr1に接続される。制振装置62は、第2のフレームFr2の振動を減衰させて第1のフレームFr1に伝播しないように抑制するために設けられる。一般的な制振装置の構成として、制振装置62は、弾性部材であるバネ64と減衰器であるダンパ66とにより構成される。なお、制振装置62は第2のフレームFr2の振動を完全に減衰する必要はなく、型締装置の動作に影響の無い程度まで減衰すればよい。
本実施例では、第2のフレームFr2は制振装置62を介して第1のフレームFr1に連結されており且つ移動案内機構を介して第1のフレームFr1上に移動可能に支持されているので、第2のフレームFr2は第1のフレームFr1の一部として扱うことができる。
また、本実施例においても、上述の第1実施例と同様に、固定プラテン11に対する可動プラテン12の位置を検出するために、固定プラテン11が固定された第1のフレームFr1に対する可動プラテン12の位置を検出する位置検出器を、第1のフレームFr1に取り付けることとしてもよい。可動プラテン12の位置を検出することで、可動金型16の位置を知ることができ、型タッチ位置などの可動金型の位置を精度よく検出することができる。
上述の構成では、リニアモータ28の可動子31は第1のフレームFr1に支持され、一方、固定子29は第2のフレームFr2に支持され固定される。したがって、リニアモータ28が駆動されて固定子29に可動子31の反力が作用し、固定子29が固定された第2のフレームFr2に振動が発生しても、その振動は制振装置62により抑制され第1のフレームFr1には伝播しない。よって、第1のフレームFr1に固定された固定プラテン11に振動が伝播することはなく、リニアモータ28の駆動に起因した振動の影響が抑制され、精度のよい型閉じ及び型締めを行うことができる。
なお、また、第1のフレームFr1及び第2のフレームFr2は、図示のように中実の部材により構成する必要はなく、十分な剛性を有する構造であれば、骨組みを枠体として板を張り付けたような構造としてもよい。
また、本実施例では可動プラテン12は第1のフレームFr1に固定されたガイドGd上に支持されて移動可能であるが、可動プラテン12を第2のフレームFr2上に設けたガイド上に移動可能に支持することもできる。この場合、第2のフレームFr2の振動はリニアモータ28による振動であり、その振動方向は可動プラテン12の移動方向に一致しているので、第2のフレームFr2が振動しても、その方向に移動可能な可動プラテン12に伝播する振動は抑制されるので、リニアモータ28の駆動に起因した振動の影響はほとんど無い。
次に、本発明の第2実施例による型締装置の動作について説明する。
型開限においてリニアモータ28に電流が供給されると、リニアモータ28の加速が開始され、型開速度がゼロから増大し、可動プラテン12が前進する。この際、リニアモータ28の可動子31には前進する方向(固定プラテン11に向かう方向)に力が働き、この力と同じ大きさの力が反力として第2のフレームFr2に加わる。しかしながら、第2のフレームFr2と第1のフレームFr1とは制振装置62を介して機械的に連結されているので、第2のフレームFr2から可動プラテン12,吸着板22及びリヤプラテン13に伝達される振動は十分に抑制されている。このため、可動プラテン12と吸着板22とを滑らかに加速させることができる。その後、所定の時間が経過すると可動プラテン12の前進速度は一定となる。この状態では、第2のフレームFr2に加わる力も一定となるので、大きな振動が発生することはない。
そして、可動プラテン12と固定プラテンとの間の距離が予め定められた距離以下になると、リニアモータ28は減速動作を開始する。減速開始のタイミングは、プラテン間の距離に基づいて設定する必要はなく、型閉動作中の時間を管理して減速動作の開始タイミングを規定してもよい。減速動作が開始されると、可動子31には加速するときに働いた力とは逆方向の力が加わる。これと同時に、第2の第2のフレームFr2に対してもその力の反力が加わり、第2のフレームFr2は振動する。しかし、第2のフレームFr2と第1のフレームFr1とは制振装置62を介して機械的に連結されているので、可動プラテン12、吸着板22及びリヤプラテン13に伝達される第2のフレームFr2の振動は抑制されている。このため、可動プラテン12と吸着板22とを滑らかに減速させることができる。
その後、リニアモータ28の可動子31の第1のフレームFr1に対する速度がゼロになる直前で、制御部(図示せず)は電磁石のコイル48への電流の供給を開始する。この際、減速時に第2のフレームFr2に発生する振動が、吸着板22及びリヤプラテン13にほとんど伝達されないので、電磁力を精度よく制御することができる。これにより、リニアモータ28の速度がゼロになる時点において、吸着板22とリヤプラテン13との間には電磁力が発生し、金型19に型締力を発生させることができ、型締力を精度よく制御することができる。さらに、リニアモータ28が完全に停止する前に電磁力を発生させることができ、型締力を制御することができるので、成形サイクルを短縮することができ、成形品の生産性を向上させることができる。