JP4905461B2 - 多入力多出力通信のためのアンテナを選択する制御装置 - Google Patents

多入力多出力通信のためのアンテナを選択する制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、送受信に複数のアンテナを用いて移動無線通信を行う多入力多出力(MIMO:Multiple-Input Multiple-Output)伝送システムにおいて、通信に用いるアンテナを選択する制御装置に関する。
MIMO伝送は、限られた周波数資源の中で伝送速度を向上させるために用いられ、相関のある複数のアンテナから異なるデータを送信することで、空間多重が行われる。これにより、周波数帯域を増加させることなく、伝送速度を向上させることが可能になる。このMIMO技術は、LTE(Long Term Evolution )、WiMax(Worldwide Interoperability for Microwave Access )等の高速データ通信を主目的とした、次世代移動無線通信システムへの適用が見込まれている。
図1は、従来のMIMO伝送システムの構成例(2×2MIMO)を示している。基地局装置101が担当するセル103は、3つのセクタ1〜3からなり、基地局装置101は、図2に示すような構成を有する。
図2の基地局装置は、アンテナ111〜116、送受信部(TRX)201〜206、ベースバンド処理部(BB)211〜213、およびインタフェース(INT)221を備える。このうち、送受信部201〜206およびベースバンド処理部211〜213は、バス231により互いに接続されている。バス231の代わりに、メッシュ接続が採用される場合もある。インタフェース221は、有線伝送路を介して基地局制御装置と通信を行う。
セクタ1〜3の各ブランチは、以下のアンテナおよび送受信部の組み合わせにより構成される。
1.セクタ1のブランチBr1:アンテナ111および送受信部201
2.セクタ1のブランチBr2:アンテナ112および送受信部202
3.セクタ2のブランチBr1:アンテナ113および送受信部203
4.セクタ2のブランチBr2:アンテナ114および送受信部204
5.セクタ3のブランチBr1:アンテナ115および送受信部205
6.セクタ3のブランチBr2:アンテナ116および送受信部206
MIMO伝送は、複数のアンテナが受信可能なエリアにおいて成立するシステムであるため、セル103内において基地局装置101と移動局102のMIMO伝送が成立しない条件として、以下のようなものが考えられる。
(1)セル端
移動局102が基地局装置101から離れることにより、アンテナ相関が見えなくなる。
(2)セクタ境界
移動局102がセクタ間の境界に近づくことにより、ハンドオーバのためにMIMO伝送が選択されなくなる。
移動局102は、通常、受信状態の良い複数のアンテナを選択して、MIMO伝送を行う。しかし、選択されたアンテナがそれぞれ異なるセクタに属している場合には、MIMO伝送は選択されずに、高速セル選択(FCS)またはソフトハンドオーバ(SHO)が選択される。その理由は、従来のスケジューリングにおける制御対象がセクタ括り付けとなっており、セクタ間をまたがるMIMO伝送が定義されていないためである。
例えば、移動局102がセクタ1の中央付近に存在する場合は、図3のケースC1に示すように、セクタ1のブランチBr1およびBr2の信号対干渉比(SIR)が十分大きく、受信状態は良好である。そこで、アンテナ111および112を用いて2×2MIMO伝送が行われる。
次に、移動局102がセクタ1とセクタ2の境界付近に移動した場合、ケースC2に示すように、セクタ1のブランチBr2およびセクタ2のブランチBr1のSIRは大きいが、セクタ1のブランチBr1およびセクタ2のBr2のSIRは小さくなる。このため、2×2MIMO伝送を行うことが難しい。そこで、通常は、FCSまたはSHOが適用される。
次に、移動局102がセクタ2の中央付近に移動した場合、ケースC3に示すように、セクタ2のブランチBr1およびBr2のSIRが大きくなるため、アンテナ113および114を用いて2×2MIMO伝送が行われる。
このように、移動局102がセクタ1からセクタ2へ移動する場合、ハンドオーバによりユーザデータの接続を切り替える必要がある。図4に示すように、移動局102がセクタ1に存在する間は、ベースバンド処理部211が送受信部201および202に接続され、ユーザデータ401の信号処理を行う。
ここで、図2に示したように、送受信部201〜204とベースバンド処理部211がバス231またはメッシュで接続されているとすると、移動局102がセクタ2へ移動したとき、図5に示すように接続が切り替えられる。この場合、ベースバンド処理部211が送受信部203および204に接続される。
これに対して、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access )に見られるように、ベースバンド処理部211および212がそれぞれセクタ1および2に括り付けられているとすると、移動局102がセクタ2へ移動したとき、図6に示すように、ユーザデータ401がベースバンド処理部212へ移される。この場合、ベースバンド処理部212が送受信部203および204に接続される。
また、移動局102がセクタ1とセクタ2の境界付近に存在する間は、図7に示すように、FCSが適用される。この場合、ベースバンド処理部211が送受信部201〜204に接続され、セクタ1および2に同じデータが送信される。
上述したように、移動局102がセクタ1またはセクタ2の中央付近に存在する間は、2×2MIMO伝送により高速にユーザデータを伝送することができる。しかしながら、移動局102がセクタ1とセクタ2の境界付近に存在する間は、FCS/SHOに移行するため、伝送速度は低下し、最大伝送速度を出せない可能性がある。
下記の特許文献1は、複数のアンテナを用いて選択ダイバーシチ/MIMO送信を切り替え可能な通信システムに関し、特許文献2は、基地局アンテナを複数アレー群に分割して、各アレー群で指向性ビーム制御を行うシステムに関する。また、特許文献3は、多くのダイバーシチ・トランスミッション・モードを用いてデータを伝送するシステムに関する。
特開2005−333443号公報 特開2003−338781号公報 特表2005−531219号公報
本発明の課題は、移動無線通信システムのセル内において、MIMO伝送が成立するエリアを増加させることにより、セル内における平均的なスループットを向上させることである。
本発明の第1の基地局装置は、複数のセクタからなるセル内の移動局とMIMO伝送により無線通信を行う基地局装置であって、各セクタに対応して設けられた1つ以上のアンテナと制御部を備える。制御部は、移動局が2つのセクタの境界付近に移動したとき、それらのセクタ各々に設けられたアンテナの中からアンテナを選択し、選択されたアンテナを用いたMIMO伝送を選択する。
このような構成によれば、セクタ境界においてもMIMO伝送が可能となり、セル内におけるMIMO伝送が可能なエリアが増加する。第1の基地局装置の制御部は、例えば、後述する図9のスケジューラ951または図13のスケジューラ1301に対応する。
本発明の第2の基地局装置は、セクタ構成を持たないセル内の移動局とMIMO伝送により無線通信を行う基地局装置であって、セルに対応して設けられた複数のアンテナと制御部を備える。制御部は、移動局が移動したとき、複数のアンテナの中から2つ以上のアンテナを選択し、選択されたアンテナを用いたMIMO伝送を選択する。
このような構成によれば、セル内の任意の位置においてMIMO伝送が可能となり、セル内におけるMIMO伝送が可能なエリアが増加する。第2の基地局装置の制御部は、例えば、後述する図19のスケジューラ1951に対応する。
従来のMIMO伝送システムの構成図である。 従来の基地局装置の構成図である。 従来のMIMO伝送システムにおけるSIRを示す図である。 ハンドオーバ前の状態を示す図である。 第1のハンドオーバを示す図である。 第2のハンドオーバを示す図である。 高速セル選択を示す図である。 第1のMIMO伝送システムの構成図である。 第1の基地局装置の構成図である。 第1のMIMO伝送システムにおけるSIRを示す図である。 第1のMIMO伝送を示す図である。 第2のMIMO伝送を示す図である。 集中型スケジューラを示す図である。 スケジューリング制御を示す図である。 第1のスケジューリング制御シーケンスを示す図である。 第1のMIMO伝送システムにおけるSIRと閾値の関係を示す図である。 閾値の調整を示す図である。 第2のMIMO伝送システムの構成図である。 第2の基地局装置の構成図である。 第2のMIMO伝送システムにおけるSIRを示す図である。 第2のスケジューリング制御シーケンスを示す図である。 第2のMIMO伝送システムにおけるSIRと閾値の関係を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図8は、本発明のMIMO伝送システムの構成例(2×2MIMO)を示している。基地局装置801が担当するセル803は、図1と同様に、3つのセクタ1〜3からなり、基地局装置801は、図9に示すような構成を有する。
図9の基地局装置は、アンテナ811〜816、送受信部(TRX)901〜906、およびベースバンド処理部(BB)911〜913を備える。このうち、送受信部901〜906およびベースバンド処理部911〜913は、バス961により互いに接続されている。バス961の代わりに、メッシュ接続を採用してもよい。
セクタ1〜3の各ブランチは、以下のアンテナおよび送受信部の組み合わせにより構成される。
1.セクタ1のブランチBr1:アンテナ811および送受信部901
2.セクタ1のブランチBr2:アンテナ812および送受信部902
3.セクタ2のブランチBr1:アンテナ813および送受信部903
4.セクタ2のブランチBr2:アンテナ814および送受信部904
5.セクタ3のブランチBr1:アンテナ815および送受信部905
6.セクタ3のブランチBr2:アンテナ816および送受信部906
送受信部901〜906は、アンテナ毎(ブランチ毎)の信号処理を行う。送受信部901は、無線部(RF)921および変復調部(Mod/Dem)931を含む。同様に、送受信部902〜906は、それぞれ無線部922〜926および変復調部932〜936を含む。
ベースバンド処理部911〜913は、ユーザ毎の信号処理を行う。ベースバンド処理部911は、符号化/復号部(Coder/Decoder)941およびスケジューラ951を含む。同様に、ベースバンド処理部912および913は、それぞれ符号化/復号部941および942とスケジューラ952および953を含む。
スケジューラ951〜953は、例えば、CPU(中央処理装置)およびメモリを用いて実装され、アンテナ811〜816により送受信される信号の品質情報に基づいてスケジューリング制御を行うことで、MIMO伝送に用いるアンテナ、変調方式等を選択する。
このような構成によれば、移動局802が移動しても、ユーザデータを処理しているベースバンド処理部を、任意のセクタの任意のアンテナへ接続することが可能になる。
なお、図9では、CDMA(Code Division Multiple Access )なしの共通チャネル(shared channel)を用いた伝送システムを想定しているため、変復調部が送受信部内に設けられている。これに対して、CDMAを用いた伝送システム等では、変復調部をベースバンド処理部内に設けても構わない。
図8において、移動局802がセクタ1の中央付近に存在する場合は、図10のケースC1に示すように、セクタ1のブランチBr1およびBr2のSIRが大きいため、アンテナ811および812を用いて2×2MIMO伝送が行われる。この場合、図11に示すように、ベースバンド処理部911の符号化/復号部941が送受信部901および902に接続され、ユーザデータの符号化/復号を行う。
次に、移動局802がセクタ1とセクタ2の境界付近に移動した場合、ケースC2に示すように、セクタ1のブランチBr2およびセクタ2のブランチBr1のSIRが大きくなるため、アンテナ812および813を用いて2×2MIMO伝送が行われる。この場合、図12に示すように、ベースバンド処理部911の符号化/復号部941が送受信部902および903に接続され、ユーザデータの符号化/復号を行う。
次に、移動局802がセクタ2の中央付近に移動した場合、ケースC3に示すように、セクタ2のブランチBr1およびBr2のSIRが大きくなるため、アンテナ813および814を用いて2×2MIMO伝送が行われる。
このように、セクタ括り付けの信号処理をなくして、MIMO伝送に使用するアンテナをフレキシブルに選択することで、セクタ境界においても最大伝送速度でMIMO伝送を行うことが可能になる。したがって、移動局802の接続状況に応じて、下りリンクにおけるFCSまたはMIMO伝送の選択や、上りリンクにおけるSHO(選択セクタ数を含む)またはMIMO伝送の選択が可能になる。
図11および図12に示したように、移動局802が移動しても、ユーザデータを処理するベースバンド処理部は変更されないので、瞬断等の不具合は発生しない。
図1に示した従来のシステムでは、セクタ境界においてMIMO伝送が不可能になる可能性があり、セル内にMIMO伝送を適用できないエリアが存在するが、図8に示したシステムでは、セクタ境界においてMIMO伝送が可能となり、セル内におけるMIMO伝送が可能なエリアが増加する。また、MIMO/FCS/SHOの選択が可能な接続構成およびスケジューラを採用することで、基地局近傍のセクタ境界ではMIMO伝送を選択し、セル端のセクタ境界ではFCS/SHOを選択するというように、セル内の環境に応じて適切な制御を行うことが可能になる。
次に、図13から図17までを参照しながら、基地局装置801におけるスケジューリング制御について説明する。
スケジューリング制御の構成としては、図9に示したように、ベースバンド処理部911〜913のそれぞれにスケジューラ951〜953を実装する分散型と、図13に示すように、スケジューラ1301をベースバンド処理部911〜913から分離して実装する集中型が考えられる。
分散型構成では、基地局装置801内のすべてのブランチの割り当てが、ベースバンド処理部毎に分散して管理される。管理方法としては、ベースバンド処理部毎に管理するブランチ数を制限する方法や、いずれかのベースバンド処理部にマスタスケジューラを設ける方法等が考えられる。
集中型構成では、基地局装置801内のすべてのブランチの割り当てが、スケジューラ1301により管理される。スケジューラ1301は、すべてのブランチの割り当て状況を管理しているため、移動先ブランチの割り当てを迅速に行うことができる。
図14は、分散型構成におけるスケジューリング制御の例を示している。この例では、主としてセクタ1を管理するベースバンド処理部911のスケジューラ951が、通信中の移動局802の管理を行っており、移動局802と通信中のリソース(セクタ1のブランチBr1およびBr2)は、ベースバンド処理部911に割り当てられている。
下りリンクにおいて、各セクタの各アンテナからは共通チャネルの信号(Pilot信号)が常時送信されている。移動局802は、これらの信号を受信することで、どの基地局のどのセクタに存在しているかを認識するとともに、各ブランチの信号の受信状態を観測し、受信状態を示すCQI(Channel Quality Indicator )情報を収集する。CQI情報としては、例えば、SIR、ドップラ周波数、遅延スプレッド等が用いられる。
移動局802が接続中の場合、上りリンクの信号にこのCQI情報を含めて、基地局装置801にフィードバックする。フィードバック情報を受信した基地局装置801では、スケジューラ951が、移動局802の受信状態を認識した上で、下りリンクの伝送に使用するセクタ、アンテナ、および伝送方法(MIMO、FCS、変調方式、符号化率等)を選択する。これらの選択項目を決定するための要因として、CQI情報以外に、下り伝送量、セクタ内のユーザ数等を考慮してもよい。
一般に、MIMO伝送を適用する場合はある程度のSIRが必要とされ、SIRが一定値未満の場合は、誤り率および再送回数を考慮すると、FCSを選択した方が有利になる可能性もある。そこで、スケジューラ951は、下りリンクにて高速伝送を行いたい場合で、かつ、ケースC2に示すように、SIRが閾値x以上(比較的高品質)のアンテナが2つ以上ある場合は、MIMO伝送を選択する。一方、ケースC4に示すように、SIRが閾値y以上かつ閾値x未満の場合は、FCSを選択する。
決定された伝送方法においてセクタ2のアンテナを使用する場合は、セクタ2のリソース割り当て状況を確認する必要があるため、スケジューラ951とスケジューラ952の間で、スケジューリングに関する制御信号の送受信が発生する。そして、スケジューラ間でリソース割り当てと送信タイミングの調整が完了した後に、MIMO伝送が開始される。
図15は、このようなスケジューリング制御のシーケンスを示している。まず、ベースバンド処理部911は、セクタ1の送受信部901および902を介して、ユーザデータを移動局802にMIMO送信し(手順1501)、移動局802は、ユーザデータを受信するとともにPilot信号を受信する(手順1502)。
その後、セクタ1の送受信部901および902を介して、ベースバンド処理部911と移動局802の間でMIMO伝送が継続される(手順1503)。この間、図16のケースC1に示すように、セクタ1のブランチBr1およびBr2のSIRは、閾値xを超えている。移動局802は、各セクタの各ブランチのSIR、ドップラ周波数、および遅延スプレッドを、CQI情報としてベースバンド処理部911に送信する(手順1504)。
次に、ベースバンド処理部911のスケジューラ951は、受信したCQI情報に含まれるSIRの閾値判定を行う(手順1505)。この例では、図16のケースC2に示すように、セクタ1のブランチBr1およびセクタ2のブランチBr2のSIRが閾値x未満であり、セクタ1のブランチBr2およびセクタ2のブランチBr1のSIRが閾値xを超えていることが分かる。
そこで、セクタ1のブランチBr2およびセクタ2のブランチBr1を用いたMIMO伝送を選択し、ベースバンド処理部912のスケジューラ952に、セクタ2のリソース割り当て状況を問い合わせる(手順1506)。そして、スケジューラ952は、セクタ2のブランチBr1に空きがある旨の応答メッセージを返信する(手順1507)。
次に、スケジューラ951は、設定変更予告メッセージを移動局802に送信し、指定数のフレーム送信後にアンテナを変更する旨を通知する(手順1508)。そして、移動局802は、応答メッセージを返信する(手順1509)。
次に、スケジューラ951は、接続解除メッセージを送受信部901に送信し(手順1510)、送受信部901は、応答メッセージを返信する(手順1511)。そして、スケジューラ951は、接続設定メッセージを送受信部903に送信し(手順1512)、送受信部903は、応答メッセージを返信する(手順1513)。
次に、スケジューラ951は、送信再開メッセージを移動局802に送信する(手順1514)。そして、ベースバンド処理部911は、セクタ1の送受信部902およびセクタ2の送受信部903を介して、ユーザデータを移動局802にMIMO送信し(手順1515)、移動局802は、ユーザデータを受信するとともにPilot信号を受信する(手順1516)。
その後、セクタ1の送受信部902およびセクタ2の送受信部903を介して、ベースバンド処理部911と移動局802の間でMIMO伝送が継続される(手順1517)。そして、移動局802は、各セクタの各ブランチのCQI情報をベースバンド処理部911に送信する(手順1518)。
移動局802がさらに移動して、図16のケースC3に示すような状態になれば、セクタ2の送受信部903および904を介して、ベースバンド処理部911と移動局802の間でMIMO伝送が行われる。
無線伝播環境は、移動局802の移動速度と、周囲の反射物によるマルチパスの影響により、常に変化している。このうち、移動速度については、移動局802においてドップラ周波数を測定することにより推定することができる。また、マルチパスの影響については、遅延スプレッドを求めることにより数値化することができる。
遅延スプレッドは、遅延時間に対する電力分布の広がりを示す電力遅延プロファイルの標準偏差である。時刻τにおける受信波(直接波または遅延波)の電力遅延プロファイルを関数p(τ)で表すと、遅延スプレッドTm は、次式により求められる。
Figure 0004905461
ただし、(2)式および(3)式の総和記号は、直接波と複数の遅延波に関する総和を表している。
スケジューラ951は、移動速度とマルチパスの影響を考慮するために、手順1505においては、必要に応じて、受信したCQI情報に含まれるドップラ周波数および/または遅延スプレッドを用いて、SIRの閾値を変動させる。
セクタ1のブランチBr2およびセクタ2のブランチBr1のSIRを、それぞれSIR12およびSIR21とすると、通常のアンテナ選択論理は以下のようになる。
1.SIR12≧x,SIR21≧x
→MIMO,セクタ1のブランチBr2およびセクタ2のブランチBr1
2.SIR12≧x,x>SIR21≧y
→下りリンク:FCS,セクタ1のブランチBr2またはセクタ2のブランチBr1
上りリンク:SHO,セクタ1のブランチBr2またはセクタ2のブランチBr1
3.x>SIR12≧y,SIR21≧x
→下りリンク:FCS,セクタ1のブランチBr2またはセクタ2のブランチBr1
上りリンク:SHO,セクタ1のブランチBr2またはセクタ2のブランチBr1
4.x>SIR12≧y,x>SIR21≧y
→下りリンク:FCS,セクタ1のブランチBr2またはセクタ2のブランチBr1
上りリンク:SHO,セクタ1のブランチBr2またはセクタ2のブランチBr1
5.x>SIR12≧y,y>SIR21
→セクタ1のブランチBr2
6.y>SIR12,x>SIR21≧y
→セクタ2のブランチBr1
7.y>SIR12,y>SIR21
→伝送不可能
これに対して、ドップラ周波数fdおよび遅延スプレッドσを考慮した場合は、次式により閾値xおよびyを調整し、図17に示すように、調整後の閾値x’およびy’を用いて上記と同様の論理でアンテナが選択される。

x’=x+α+β (4)
y’=y+α+β (5)

(4)式および(5)式のαは、遅延スプレッドσの値に応じて設定されるパラメータであり、βは、ドップラ周波数fdの値に応じて設定されるパラメータである。σおよびαの対応関係と、fdおよびβの対応関係は、例えば、テーブル形式でスケジューラ951に与えられる。
この例では、各ブランチのSIRに基づいてアンテナを選択しているが、各ブランチの信号品質を示す別の品質情報に基づいてアンテナを選択しても構わない。その場合は、移動局802から別の品質情報がCQI情報として送信される。
また、図8および図9に示した構成では、セルを3つのセクタに分割し、各セクタに2つのブランチが設けられているが、一般には、セルを2つ以上のセクタに分割し、各セクタにN個(N≧2)のブランチを設けることが可能である。この場合、セクタ境界においては、それぞれのセクタに属する1つ以上のアンテナを選択して、MIMO伝送が行われる。
図8のMIMO伝送システムでは、セクタ構成のセルを前提としているが、図18に示すように、セクタ構成の概念をなくしたMIMO伝送システムも考えられる。この場合、基地局装置1801が担当するセル1803は、セクタに分割されておらず、スケジューリング制御は、セクタ単位ではなくアンテナ単位で行われる。基地局装置1801は、図19に示すような構成を有する。
図19の基地局装置は、アンテナ1811〜1816、送受信部(TRX)1901〜1906、およびベースバンド処理部(BB)1911〜1913を備える。このうち、送受信部1901〜1906およびベースバンド処理部1911〜1913は、バス1961により互いに接続されている。バス1961の代わりに、メッシュ接続を採用してもよい。
各ブランチは、以下のアンテナおよび送受信部の組み合わせにより構成される。
1.ブランチBr1:アンテナ1811および送受信部1901
2.ブランチBr2:アンテナ1812および送受信部1902
3.ブランチBr3:アンテナ1813および送受信部1903
4.ブランチBr4:アンテナ1814および送受信部1904
5.ブランチBr5:アンテナ1815および送受信部1905
6.ブランチBr6:アンテナ1816および送受信部1906
送受信部1901〜1906は、アンテナ毎(ブランチ毎)の信号処理を行う。送受信部1901は、無線部(RF)1921および変復調部(Mod/Dem)1931を含む。同様に、送受信部1902〜1906は、それぞれ無線部1922〜1926および変復調部1932〜1936を含む。
ベースバンド処理部1911〜1913は、ユーザ毎の信号処理を行う。ベースバンド処理部1911は、符号化/復号部(Coder/Decoder)1941およびスケジューラ1951、1952を含む。同様に、ベースバンド処理部1912は、符号化/復号部1942およびスケジューラ1953、1954を含み、ベースバンド処理部1913は、符号化/復号部1943およびスケジューラ1955、1956を含む。
スケジューラ1951〜1956は、それぞれブランチBr1〜Br6のリソースを管理し、ブランチ毎にスケジューリング制御を行う。
図18において、移動局1802が位置P1に存在する場合は、図20のケースC1に示すように、ブランチBr1およびBr2のSIRが大きいため、アンテナ1811および1812を用いて2×2MIMO伝送が行われる。
次に、移動局1802が位置P2に移動した場合、ケースC2に示すように、ブランチBr2およびBr3のSIRが大きくなるため、アンテナ1812および1813を用いて2×2MIMO伝送が行われる。
次に、移動局1802がさらに先に移動した場合、ケースC3に示すように、ブランチBr3およびBr4のSIRが大きくなるため、アンテナ1813および1814を用いて2×2MIMO伝送が行われる。
このような構成によれば、セクタ境界におけるFCS/SHOがなくなるため、セクタ構成の場合よりもスケジューリング制御の負荷が軽くなる。
図21は、図18のシステムにおけるスケジューリング制御のシーケンスを示している。まず、ベースバンド処理部1911は、送受信部1901および1902を介して、ユーザデータを移動局1802にMIMO送信し(手順2101)、移動局1802は、ユーザデータを受信するとともにPilot信号を受信する(手順2102)。
その後、送受信部1901および1902を介して、ベースバンド処理部1911と移動局1802の間でMIMO伝送が継続される(手順2103)。この間、図22のケースC1に示すように、ブランチBr1およびBr2のSIRは、閾値xを超えている。移動局1802は、各ブランチのCQI情報をベースバンド処理部1911に送信する(手順2104)。
次に、ベースバンド処理部1911のスケジューラ1951は、受信したCQI情報に含まれるSIRの閾値判定を行う(手順2105)。この例では、図22のケースC2に示すように、ブランチBr1およびBr4のSIRが閾値x未満であり、ブランチBr2およびBr3のSIRが閾値xを超えていることが分かる。
そこで、ブランチBr2およびBr3を用いたMIMO伝送を選択し、ベースバンド処理部1912のスケジューラ1953に、ブランチBr3のリソース割り当て状況を問い合わせる(手順2106)。そして、スケジューラ1953は、ブランチBr3に空きがある旨の応答メッセージを返信する(手順2107)。
次に、スケジューラ1951は、図15と同様の設定変更予告メッセージを移動局1802に送信し(手順2108)、移動局802は、応答メッセージを返信する(手順2109)。
次に、スケジューラ1951は、接続解除メッセージを送受信部1901に送信し(手順2110)、送受信部1901は、応答メッセージを返信する(手順2111)。そして、スケジューラ1951は、ユーザデータの管理元をブランチBr1(スケジューラ1951)からブランチBr2(スケジューラ1952)に変更する旨を、スケジューラ1952に通知する(手順2112)。
次に、スケジューラ1952は、接続設定メッセージを送受信部1903に送信し(手順2113)、送受信部1903は、応答メッセージを返信する(手順2114)。
次に、スケジューラ1952は、送信再開メッセージを移動局1802に送信する(手順2115)。そして、ベースバンド処理部1911は、送受信部1902および送受信部1903を介して、ユーザデータを移動局1802にMIMO送信し(手順2116)、移動局1802は、ユーザデータを受信するとともにPilot信号を受信する(手順2117)。
その後、送受信部1902および送受信部1903を介して、ベースバンド処理部1911と移動局1802の間でMIMO伝送が継続される(手順2118)。そして、移動局1802は、各ブランチのCQI情報をベースバンド処理部1911に送信する(手順2119)。
移動局1802がさらに移動して、図22のケースC3に示すような状態になれば、送受信部1903および1904を介して、ベースバンド処理部1911と移動局1802の間でMIMO伝送が行われる。
このようなスケジューリング制御では、図15の場合よりもスケジューラの数が増加するため、処理が煩雑になるように見える。しかし、各スケジューラの規模は、図15の場合よりも減少するとともに、1つのベースバンド処理部に複数のブランチをフレキシブルに組み合わせることができる、という利点がある。このため、装置が故障したときの切り替え動作や、アンテナの増設が容易になると考えられる。
ブランチBr2およびBr3のSIRを、それぞれSIR2およびSIR3とすると、手順2105において、スケジューラ1951は、以下の論理でアンテナを選択する。
1.SIR2≧x,SIR3≧x
→MIMO,ブランチBr2およびBr3
2.SIR2≧x,x>SIR3≧y
→ブランチBr2またはBr3
3.x>SIR2≧y,SIR3≧x
→ブランチBr2またはBr3
4.x>SIR2≧y,x>SIR3≧y
→ブランチBr2またはBr3
5.x>SIR2≧y,y>SIR3
→ブランチBr2
6.y>SIR2,x>SIR3≧y
→ブランチBr3
7.y>SIR2,y>SIR3
→伝送不可能
なお、閾値xおよびyは、上述した調整方法により閾値x’およびy’に変更することもできる。また、図18および図19に示した構成では、6個のブランチが設けられているが、一般には、N個(N≧2)のブランチを設けることが可能である。この場合、N個のアンテナのうち2つ以上を選択して、MIMO伝送が行われる。

Claims (9)

  1. 複数のセクタからなるセル内の移動局と多入力多出力伝送により無線通信を行う基地局装置であって、
    前記複数のセクタの各々に対応して設けられた1つ以上のアンテナと、
    前記移動局が2つのセクタの境界付近に移動したとき、それぞれのアンテナから該移動局が受信する信号の品質情報を閾値と比較し、該2つのセクタ各々において該閾値を超える品質情報を有するアンテナの中からアンテナを選択し、選択されたアンテナを用いた多入力多出力伝送を選択する制御部と
    を備えることを特徴とする基地局装置。
  2. 前記制御部は、前記閾値を超える品質情報を有する複数のアンテナが存在しなければ、高速セル選択またはソフトハンドオーバによる伝送を選択することを特徴とする請求項1記載の基地局装置。
  3. 前記制御部は、それぞれのアンテナから前記移動局が受信する信号のドップラ周波数または遅延スプレッドの情報に基づいて、前記閾値を調整することを特徴とする請求項2記載の基地局装置。
  4. 前記制御部は、前記2つのセクタのうち、前記移動局の移動元であるセクタのアンテナを管理する第1のスケジューラと、該移動局の移動先であるセクタのアンテナを管理する第2のスケジューラを含み、該第1のスケジューラは、該移動先のセクタのアンテナが空いているか否かを該第2のスケジューラに問い合わせ、該移動先のセクタのアンテナが空いていれば、該移動先のセクタのアンテナを用いた多入力多出力伝送を選択することを特徴とする請求項1、2、または3記載の基地局装置。
  5. セクタ構成を持たないセル内の移動局と多入力多出力伝送により無線通信を行う基地局装置であって、
    前記セルに対応して設けられた複数のアンテナであって、複数のブランチの各々に対応して設けられた1つ以上のアンテナを含む該複数のアンテナと、
    前記移動局が移動したとき、それぞれのアンテナから該移動局が受信する信号の品質情報を閾値と比較し、前記複数のブランチのうち2つのブランチ各々において該閾値を超える品質情報を有するアンテナの中から2つ以上のアンテナを選択し、選択されたアンテナを用いた多入力多出力伝送を選択する制御部と
    を備えることを特徴とする基地局装置。
  6. 前記制御部は、前記閾値を超える品質情報を有するアンテナの中から前記多入力多出力伝送に用いるアンテナを選択することを特徴とする請求項5記載の基地局装置。
  7. 前記制御部は、それぞれのアンテナから前記移動局が受信する信号のドップラ周波数または遅延スプレッドの情報に基づいて、前記閾値を調整することを特徴とする請求項6記載の基地局装置。
  8. 前記制御部は、前記複数のアンテナのうち、前記移動局と通信中のアンテナを管理する第1のスケジューラと、新たに選択されたアンテナを管理する第2のスケジューラを含み、該第1のスケジューラは、該新たに選択されたアンテナが空いているか否かを該第2のスケジューラに問い合わせ、該新たに選択されたアンテナが空いていれば、該新たに選択されたアンテナを用いた多入力多出力伝送を選択することを特徴とする請求項5、6、または7記載の基地局装置。
  9. 複数のセクタからなるセル内の移動局と多入力多出力伝送により無線通信を行う通信方法であって、
    前記移動局が2つのセクタの境界付近に移動したとき、それぞれのアンテナから該移動局が受信する信号の品質情報を閾値と比較し、該2つのセクタ各々において該閾値を超える品質情報を有するアンテナの中からアンテナを選択し、
    選択されたアンテナを用いて多入力多出力伝送を行う
    ことを特徴とする通信方法。
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