JP4904514B2 - 超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素による固液混合物の高効率分離法及び装置 - Google Patents

超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素による固液混合物の高効率分離法及び装置 Download PDF

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Description

本発明は、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素による固液混合物質の高効率分離法及び装置に関するものであり、更に詳しくは、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を用いて、スラリー廃液等の固液混合物質を比重差分離により、あるいは比重差分離と抽出分離により、高い分離効率で分離し、回収することを可能とする超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を分離溶媒として用いた固液混合物質の新しい分離方法及びその装置に関するものである。
固液混合物を、例えば、半導体、太陽電池産業で排出される廃棄シリコンスラリーと仮定した場合、この廃棄スラリーは、シリコンインゴットをスライス加工する際に、クーラント(鉱油、ポリエチレングリコール、水等)と砥粒(SiC、ダイヤモンド、アルミナ等)を混合させたスラリー(研削剤)を用いることで発生する。スライス加工に使用したスラリーには、切削加工の際に発生したシリコン屑が多く含まれ、加工精度を劣化させることから、やがて廃棄される。この廃棄スラリーには、使用可能なクーラントや砥粒が含まれているため、廃棄スラリーからそれらの分離回収が望まれ、従来、様々なアイディアが提案されているが(特許文献1〜6)、何れも実用に至らない状況にある。また、近年、半導体や太陽電池の需要が大幅に増加しており、シリコンそのものも逼迫しつつあり、シリコン回収と言う観点からも効率的な分離が求められている。
先行文献には、油系スラリー廃液を灯油などの抽出剤で希釈し、比重差で沈殿する砥粒(SiC)を回収する方法が開示されている(特許文献7)。また、他の先行文献には、フィルタープレスなどにより分離したスラリー廃液に、アルキルスルホン酸ナトリウムなどの捕集剤と起泡剤を配合して、微細気泡を上昇させることによって、SiC粒子を分離することが開示されている(特許文献8)。
これらの方法では、分散剤新液の添加が必要であることや、スラリー廃液の有用成分を分離することで新たな廃棄物が発生する。そのため、溶媒の後処理を必要としない、超臨界二酸化炭素を用いた抽出分離方法が注目されている。先行文献では、亜臨界もしくは超臨界二酸化炭素を用いて、有機物を抽出分離した後、温度、圧力を下げて、二酸化炭素と有機物を分離し、更に、二酸化炭素を回収し、再度、亜臨界もしくは超臨界二酸化炭素にして抽出剤として使用する方法が開示されている(特許文献9)。このような超臨界二酸化炭素を利用したものとしては、その他、数多くの有機物溶解抽出技術が提案されているが、この種の方法では、目的抽出物質が超臨界二酸化炭素に溶解する物質に限定されるという問題があった。
特許第3199159号公報 特開平11−48146号公報 特開2002−28866号公報 特開2003−225700号公報 特開2000−254543号公報 特開平11−172237号公報 特開平9−109144号公報 特開2004−223321号公報 特開平8−183989号公報
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を用いた新しい固液混合物質の高効率分離技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒として使用し、かつ該溶媒により流体の密度及び粘性を調整する手法を用いた新しい固液混合物質の分離技術を確立することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を用いて、スラリー廃液等の固液混合物質を高い分離効率で分離することを可能とする新しい固液混合物質の分離方法及びその装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を用いた比重差分離と抽出分離を組み合わせて、また、該溶媒により流体の密度と粘性を制御して、高い分離効率で固液混合物質を分離し、回収することを可能とする新しい固液混合物質の分離方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段より構成される。
(1)超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒として用いて、固液混合物質の固液を比重差を利用して分離する比重差分離工程と、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を抽出分離溶媒として用いた抽出分離工程を比重差分離−抽出分離の順に垂直方向に組み合わせて、比重差分離溶媒及び/又は抽出分離溶媒の密度を、温度条件を変えることにより調節して比重差分離及び/又は抽出分離による分離効率を制御し、かつ、その際に、分離工程における温度を垂直方向の所定の部分で個別に制御し、固液混合物質の固液を比重差分離及び抽出分離を利用して分離することを特徴とする固液混合物質の分離方法。
(2)上記固液混合物質が、スラリー廃液である前記(1)に記載の固液混合物質の分離方法。
(3)上記スラリー廃液が、シリコンウエハ製造工程で発生するスラリー廃液である前記(2)に記載の固液混合物質の分離方法。
(4)上記比重差分離と抽出分離を同一系内で同時的に行う前記(1)に記載の固液混合物質の分離方法。
(5)比重差分離溶媒及び/又は抽出分離溶媒の密度を、圧力条件を変えることにより調節して比重差分離及び/又は抽出分離による分離効率を制御し、及び/又は比重差分離溶媒及び/又は抽出分離溶媒の流速を調節して比重差分離及び/又は抽出分離による分離効率を制御する前記(1)に記載の固液混合物質の分離方法。
(6)上記比重差分離と抽出分離を同一系内で連続的に行う前記(1)に記載の固液混合物質の分離方法。
(7)スラリー廃液からなる固液混合物質を比重差分離及び抽出分離を利用して分離した再利用可能な物質を回収するリサイクルプロセスを含む前記(1)に記載の固液混合物質の分離方法。
(8)超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒及び抽出分離溶媒として用いて、固液混合物質を比重差及び抽出分離を利用して分離する分離装置であって、比重差分離部、抽出分離部を垂直の同一の系内に含み、抽出分離部を下部、比重差分離部を上部に設置し、上記抽出分離部の所定の位置に超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を導入する手段及び上記比重差分離部の所定の位置に固液混合物質を導入する手段を有し、分離器の系内の温度を調節する手段、及び上記分離器内の温度を垂直方向の所定の部分で個別に制御する手段を具備していることを特徴とする固液混合物質の分離装置。
(9)上記抽出分離部の下部に液体二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を送るための液体二酸化炭素の加圧手段、超臨界二酸化炭素にあっては、加熱手段、上記比重差分離部の中間部に固液混合物質を送る手段、上記比重差分離部及び抽出分離部で分離した固形物質を分離器の最下部に貯蔵する手段、比重差分離部の最上部から流出した分離溶媒と液体物質をろ過する手段、系内の圧力を調節する手段、分離溶媒と液体物質を分離する気液分離手段を具備している前記(8)に記載の固液混合物質の分離装置。
(10)上記気液分離装置が分離溶媒の液体二酸化炭素の蒸発手段を有する前記(8)に記載の固液混合物質の分離装置。
(11)気体分離溶媒の二酸化炭素ガスを冷却凝縮することにより液体二酸化炭素とし、再循環させる溶媒の循環機構を有する前記(10)に記載の固液混合物質の分離装置。
(12)上記分離器下部に回収貯蔵された固形物質を連続的に排出する手段を有する前記(9)に記載の固液混合物質の分離装置。
(13)上記固形物質の連続排出手段が、高圧水注入による水スラリーの排出手段である前記(12)に記載の固液混合物質の分離装置。
(14)固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を混合し、固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素の混合後の流体の密度及び粘性を制御する前記(1)に記載の固液分離方法。
(15)固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を予め混合して流体の密度及び粘性を制御した後、比重差を利用して固液分離する前記(14)に記載の固液分離方法。
(16)固液混合物質と混合する超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素が、固形物分離後の流体を循環再利用したものである前記(15)に記載の固液分離方法。
(17)前記(14)に記載の固液分離方法で使用する手段であって、固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を予め混合し、その混合物を、流体の密度及び粘性を制御しながら比重差分離領域に供給する混合物供給手段を有する前記(8)に記載の固液混合物質の分離装置。
(18)固液分離後の流体を循環再利用するための流体循環手段を有する前記(17)に記載の固液混合物質の分離装置。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、スラリー廃液等の固液混合物質を高い分離効率で分離する方法であって、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒として用いて、上記固液混合物質を比重差を利用して固液分離することを特徴とするものである。また、本発明は、上記比重差分離と、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を抽出分離溶媒として用いた抽出分離とを組み合わせて、上記固液混合物質を比重差分離及び抽出分離を利用して分離することを特徴とするものである。
本発明では、上記比重差分離による固液混合物質の分離プロセスにおいて、比重差分離溶媒の密度を温度及び/又は圧力条件を変えることにより調節して、及び/又は比重差分離溶媒の流速を調節して、比重差分離による分離効率を制御することが可能である。また、上記比重差分離及び抽出分離による固液混合物質の分離プロセスにおいても、同様に、溶媒の密度を、温度及び/又は圧力条件を変えることにより調節して、及び/又は溶媒の流速を調節して、比重差分離及び/又は抽出分離による分離効率を制御することが可能である。
本発明においては、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を固液混合物質と効率的に接触混合することで、例えば、固液混合物質中に含まれる油系成分に超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素が溶解し、混合流体の密度及び粘性が低下する。これにより、固形物の限界流速が増大し、比重差により固液分離が効率的に行われる。
本発明では、上記比重差分離による固液混合物質の分離プロセスにおいて、混合流体の密度及び粘性を、温度及び/又は圧力を変えることにより調節して、比重差分離による分離効率を制御することが可能である。また、固液混合物質中の固形物の密度及び/又は粒径が異なる場合には、固形物の限界流速に対し、混合流体の分離機内上昇流速を制御することで固形物同士の分離が可能である。
ここで、固液混合物質が、例えば、油系のスラリー廃液の場合について説明すると、スラリー廃液は、スプレーノズルより比重差分離器に噴出供給され、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素と接触し、更に比重差分離器内で撹拌を行う。その結果、スラリー廃液中の油系成分に超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素が効率的に接触溶解し、溶解後の混合流体の密度及び粘性が低下するため、スラリー廃液に含まれる固形物を比重差により分離することを可能とする固液混合物質の分離プロセス及び分離装置を構築することができる。
また、上記固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を予め、ミキサー/又は高圧配管内部で混合し、混合後、比重差分離領域に混合流体を供給することで、上記比重差分離を達成することも可能である。また、固液混合物質と混合する超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素が、固形物分離後の流体を循環し再利用する方法を用いても上記比重差分離を達成できる。
本発明においては、液体二酸化炭素に加え、温度31.17℃以上で圧力7.386MPa以上の超臨界二酸化炭素が用いられる。この超臨界流体の密度は液体に近く、拡散係数は液体に比べて著しく高く、無極性、弱極性油脂を溶解する作用を有し、その溶解力は温度及び/又は圧力を変えることで変化する。また、二酸化炭素は、圧力条件のみで気化、除去及び液化、再利用が可能であり、これらの循環プロセスを容易に構築することが可能である。
本発明では、上記固液混合物質として、好適には、例えば、一般的な研磨・切削剤スラリー廃液、シリコンウエハ製造過程で発生するシリコンスラリー廃液等のスラリー廃液が例示される。これらのスラリー廃液中には、研削剤、研磨剤として使用される砥粒、クーラント等が含まれている。砥粒としては、例えば、微粒アルミナ、コロイダルシリカ、炭化ケイ素、酸化セリウム、酸化ケイ素、ボロンカーバイト、ボロンナイトライド、酸化ジルコニウム、微粒ダイヤモンド、微粒サファイヤが例示される。また、クーラントとしては、例えば、鉱物油等の油系クーラント、ポリ水溶性グリコール類、アミン類等の水系クーラント、及び潤滑剤等が例示される。また、クーラントには、界面活性剤、水、及び溶剤等が含まれている場合がある。
一般に、研削剤、研磨剤では、通常、上記砥粒は、クーラント、潤滑剤に分散されている。それらのスラリー廃液には、上記砥粒、シリコン等の切粉、研磨屑、ワイヤソーに由来する鉄屑、砕けた砥粒のかけら等の固形分が含まれている。スラリー廃液の組成として、例えば、シリコンウエハ製造工程で発生するスラリー廃液の場合、一般的には、SiC砥粒が48〜55w%、クーラントが30〜35wt%、Si屑が9〜10%、その他として、鉄屑の割合となる。本発明は、上記スラリー廃液に限らず、それらと同等ないし類似の性状及び組成を有するあらゆる種類の固液混合物質の分離手段として適用可能である。
超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒として用いて、固液混合物質を比重差を利用して分離する場合は、固液混合物質を、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を送り込んだ比重差分離器の中間部から投入し、比重差を利用して、固液分離を行い、例えば、上層部に油系成分、下層部に固形物質を分離させる。例えば、クーラントとして鉱物油を用いたシリコンスラリー廃液の場合、上層部にクーラントが分離し、下層部に固形物が沈殿する。この沈殿した固形物を外部へ排出した後、界面活性剤を含有する水溶液を回収した固形物に添加、混合、静置することにより、上澄みとして、シリコン切粉及び鉄屑が、また、沈殿として、SiCが分離する。必要に応じて、混合時に超音波を照射することや、上澄み部に磁石を入れることで、鉄屑が効率的に回収できる。上記の操作を繰り返し行なうことで、SiCが精製されて、砥粒として再使用が可能な状態となる。
本発明では、上記比重差分離において、比重差分離溶媒である超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素の温度及び/又は圧力を変えて密度を変化させることで、及び/又は分離溶媒の流速を調節することで、分離効率を高めることができる。例えば、固液混合物質を構成する液体成分(低密度ρ)と固体成分(高密度ρ)を分離するためには、比重差分離溶媒の密度ρCO2が、ρ<ρCO2<ρの関係にあることが必要であり、比重差分離溶媒の密度を調節することにより、高い分離効率を達成することができる。シリコンスラリー廃液の場合、液体成分であるクーラントの密度は約800kg/m、固体主成分であるSiCの密度は約3000kg/mであるから、比重差分離溶媒の密度は800kg/m以上3000kg/m以下であることが求められる。
分離溶媒の密度が800kg/m以上であれば、クーラントを上部に分離することが可能となり、3000kg/m以下であれば、SiCを下部に分離することができる。ただし、二酸化炭素の密度が3000kg/mを越えるということはないので、実質上は800kg/m以上であればよい(固体二酸化炭素ドライアイスでも1500kg/m程度)。この条件は、飽和の液体二酸化炭素であれば飽和温度17℃(その時の飽和圧力5.3MPa)以下で、加圧液体二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素であれば、20MPaの時47℃以下、30MPaの時67℃以下で達成される。
一方、固体粒子の沈降性は、ストークス式から計算される限界流速で評価され、この数値より小さな分離溶媒の上昇速度となるように流速が決定される。言い換えるならば、一定流速に対しては限界流速よりも分離溶媒の上昇速度が十分小さくなるように分離器の断面積(内径)が決定されることを意味する。SiCの粒径を10μmと仮定し、分離溶媒として、40℃・20MPaの超臨界二酸化炭素(密度840kg/m)を用いる場合、限界流速は5.4m/hと計算されるので、超臨界二酸化炭素の上昇速度は、これより十分に小さな数値となるように流速が調節されることが好ましい。
また、水系スラリーの場合には、液体成分は水であり、密度は1000kg/mであるので、比重差分離溶媒の密度は、それ以上大きな数値が求められる。この条件は、飽和の液体二酸化炭素であれば、飽和温度−14℃(その時の飽和圧力2.4MPa)以下で、加圧液体二酸化炭素であれば、20MPaの時5℃以下、30MPaの時15℃以下で、超臨界二酸化炭素であれば、50MPaの時36℃以下で達成される。本操作によれば、低温度の状態で脱水、乾燥が可能となる。いずれにしても、分離操作が終了した段階で、溶媒、液体成分及び固形物質のうち、再利用可能な物質を回収し、再使用することができる。
次に、本発明では、上記比重差分離と、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を抽出分離溶媒として用いた抽出分離を組み合わせて、固液混合物質を比重差分離及び抽出分離を利用して分離することができる。この場合、上記抽出分離は、基本的には、固液混合物質を超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素と接触させ、例えば、油系成分を抽出分離溶媒に溶解抽出することで固液分離が行われる。この抽出分離工程においても、抽出分離溶媒の温度及び/又は圧力を調節すること、及び/又は抽出分離溶媒の流速を調節することで、分離効率を向上させることが可能である。
例えば、油系クーラントの場合、高圧条件下で超臨界二酸化炭素の溶媒効果で高い抽出効率が得られる。超臨界二酸化炭素は、高い拡散性、浸透性を有し、かつ低粘度であるので、固形物質の微細構造への進入が容易であり、高い抽出効率が期待できる。一般に、スラリー廃液の場合、溶解成分のうち98%wt%以上が回収され、また、ドライプロセスであることから、抽出されたクーラントは変性がなく、二酸化炭素の残留や、不純物の混入もない良質のクーラントを回収することができる。
本発明では、上記比重差分離と抽出分離を、同一の系内で行うことが可能である。これらの分離を、例えば、第一ステップで比重差分離を実施し、第二ステップで抽出分離を実施するように、分離装置の上段を比重差分離器とし、下段を抽出分離器として構成することが好ましい。また、上記プロセスにより固液分離させて得られた固形物質から、再利用可能な物質を回収することができる。例えば、シリコンスラリー廃液の場合、この沈殿した固形物を外部へ排出した後、界面活性剤を含有する水溶液を回収した固形物に添加、混合、静置することにより、上澄みとしてシリコン切粉及び鉄屑が、また、沈殿としてSiCが分離するので、再利用可能なSiCを効率良く回収することができる。
上述のように、比重差分離器と抽出分離器を一体的に構成することで、抽出分離工程における超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素による抽出効率を著しく高めることが可能となり、また、それにより、使用する溶媒の容量、抽出時間、装置の容量及び大きさを大幅に減少させることが可能となる。一方、本発明では、上記比重差分離と抽出分離を別の系内で行うことも適宜可能である。
また、本発明では、上記固液分離方法において、固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を混合し、固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素の混合後の流体の密度及び粘性を制御すること、また、固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を予め混合して流体の密度及び粘性を制御した後、比重差を利用して固液分離すること、また、固液混合物質と混合する超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素が、固形物分離後の流体を循環再利用したものであること、を好ましい実施の態様としている。
本発明では、上記二酸化炭素を排気することなく、蒸発、冷却、凝縮を通して、液体二酸化炭素として再循環させるクローズドシステムから構成される循環機構を設置することが可能であり、それにより、二酸化炭素を繰り回して使用することができる。また、本発明では、上記固液混合物質の投入、比重差分離と抽出分離、及び固液分離、回収の操作を、流通式装置で連続的に行うことで、固液混合物質の連続分離プロセス及び装置を構築することができる。
本発明では、固液混合物質の分離装置として、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒として用いて、固液混合物質を比重差分離を利用して分離する分離装置であって、分離器の所定の位置に超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を導入する手段及び固液混合物質を導入する手段を有し、分離器の系内の温度を調節する手段を具備していることを特徴とする固液混合物質の分離装置を構築することができる。
そして、本発明では、好適には、上記分離装置において、分離器の下部に液体二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を送るための液体二酸化炭素の加圧手段、超臨界二酸化炭素にあっては、加熱手段、上記分離器の中間部に固液混合物質を送る加圧手段、上記比重差分離した固形物質を分離器の最下部に貯蔵する手段、比重差分離器の最上部から流出した分離溶媒と液体物質をろ過する手段、系内の圧力を調節する手段、分離溶媒と液体物質を分離する気液分離手段を具備する装置を使用して、スラリー廃液等の固液混合物質の分離、回収及び再利用システムを構築することができる。
また、本発明では、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒及び抽出分離溶媒として用いて、固液混合物質を比重差及び抽出分離を利用して分離する分離装置であって、比重差分離部、抽出分離部を垂直の同一の系内に含み、抽出分離部を下部、比重差分離部を上部に設置し、上記抽出分離部の所定の位置に超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を導入する手段及び上記比重差分離部の所定の位置に固液混合物質を導入する手段を有し、分離器の系内の温度を調節する手段を具備していることを特徴とする固液混合物質の分離装置を構築することができる。
そして、本発明では、好適には、上記分離装置において、上記抽出分離部の下部に、液体二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を送るための液体二酸化炭素の加圧手段、超臨界二酸化炭素にあっては、加熱手段、上記比重差分離部の中間部に固液混合物質を送る手段、上記比重差分離部及び抽出分離部で分離した固形物質を分離器の最下部に貯蔵する手段、比重差分離部の最上部から流出した分離溶媒と液体物質をろ過する手段、系内の圧力を調節する手段、分離溶媒と液体物質を分離する気液分離手段を具備する装置を使用して、スラリー廃液等の固液混合物質の分離、回収及び再利用システムを構築することができる。
この場合、上記システムに、分離溶媒と液体成分を分離する蒸発手段により分離溶媒を気体として回収し、冷却、凝縮を通して液体二酸化炭素として再循環させる溶媒の循環機構を設置することも適宜可能である。また、分離器下部に回収された固形物質を連続的に排出する手段を設けることもできる。この連続排出により、分離器内に固形物質の貯蔵が必要なくなるので、分離器の小型化に直結する。本発明では、上記装置を構成する各手段の具体的な構成については、特に制限されるものではなく、固液混合物質の種類、装置の使用目的等に応じて任意に設計することができる。
更に、本発明では、上記固液分離方法で使用する装置であって、固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を混合する手段、混合後の流体の密度及び粘性を制御する密度及び粘性調整手段を有する混合制御装置、また、固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を予め混合し、その混合物を流体の密度及び粘性を制御しながら比重差分離領域に供給する混合供給制御装置、更に、固液分離後の流体を循環再利用するための流体循環手段を有する循環装置、を構築することができる。
従来、シリコンウエハ製造工程で発生するスラリー廃液中に大量に含まれている使用可能なSiCやクーラントを回収、再利用する方法が種々試みられている。しかし、何れの方法も、大量の有機溶剤、強酸・強アルカリ、希アルカリ水溶液、界面活性剤等を用いたり、超音波照射等の特別な処理を併用する必要があること、そのために、新たにそれらの廃液の処理工程が必要となること等から、実際には、スラリーからの有価物の回収はほとんど行われていないのが実情であった。また、既存の有機溶剤による抽出法に代わる方法として、抽出溶媒として超臨界二酸化炭素を用いて、スラリー廃液中の有価物を回収する方法も提案されているが、抽出操作だけで高い抽出効率を達成するには大量の抽出溶媒が必要となり、装置の小型化、抽出効率や有価物の回収率の向上等には大きな制約があった。
また、従来の比重差分離方法では、遠心分離機等を使用したが、この種の方法では、分離効率が悪く、完全な分離ができない。また、分離効率を良くするために、溶媒希釈する方法もあるが、分離後、希釈溶媒を目的物質から分離することや、希釈溶媒の後処理が必要になる。これに対し、本発明では、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒として用いて、あるいは比重差分離溶媒及び抽出溶媒として用いて、固液混合物質を分離することを特徴とするものである。本発明では、比重差分離溶媒に、常温、常圧で気体となる二酸化炭素を使用するため、分離後の物質に溶媒は残留しない上に、後処理の必要もない。特に、超臨界二酸化炭素は、温度、圧力を変えることで容易に密度を変化させられる上に、従来の比重差分離で使用していた分離溶媒の水やアルコール、有機溶媒等より、圧倒的に粘度が低いため、高い分離効率が得られる。更に、超臨界二酸化炭素は、温度の可変で簡単に密度を変えられるので、例えば、同一系内で分離目的物質を比重差で粗く分離した後、比重差で分離しきれなかった目的物質を抽出分離することが可能であり、それにより、従来技術の超臨界二酸化炭素抽出を圧倒的に上まわる高い分離効率が得られる。
すなわち、本発明では、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒として用いること、あるいは比重差分離溶媒及び抽出溶媒として用いることにより、溶媒の使用量の大幅な低減及び装置の小型化と、有価物の分離効率の向上を同時に達成することを可能とするものである。本発明は、固液混合物中の有価物を、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒及び/又は抽出分離溶媒として用いて、比重差分離及び/又は抽出分離するための高効率分離法を提供するものとして有用である。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)超臨界二酸化炭素(SC−CO)及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒及び抽出溶媒として用いることで、効率良く固液分離及び抽出操作ができ、固形物から粒度分布が均一の粒子を効率良く分離回収できる。
(2)スラリー廃液から固液分離及び比重差分離により、再利用可能な有価成分を分離回収することができる。
(3)本発明により、例えば、シリコンスラリー廃液のリサイクルプロセスを構築することを実現できる。
(4)本発明では、SC−CO抽出による固液分離法の抽出効率と比べて3倍以上の高い抽出効率が得られる。
(5)比重差分離溶媒として、常温、常圧で気体となる二酸化炭素を使用するので、分離後の物質に溶媒が残留することがなく、後処理の必要もない、という利点が得られる。
(6)超臨界二酸化炭素の密度を、温度、圧力を変えることで容易に変化させることが可能であり、それにより、被処理物質の密度に対応した比重差分離及び/又は抽出分離の条件を任意に設定することが可能である。
(7)比重差分離溶媒である超臨界二酸化炭素は、水や有機溶媒等と比べて、粘度がきわめて低いため、非常に高い分離効率が得られる。
(8)比重差分離溶媒である二酸化炭素は、温度、圧力を変えることで容易に密度及び粘性を変化させることが可能であり、被処理物質に合わせた密度及び粘性条件を任意に設定することができる。
次に、添付図面を参照し、本発明の実施の形態を具体的に説明する。以下に、超臨界二酸化炭素による固液混合物の高効率分離装置の実施形態の一例を示す。
本装置は、本発明に係る固液混合物の高効率分離装置の実施形態の一例であって、図1は、本発明の比重差分離・抽出器と固形物回収装置の構成を示す断面図である。図中、比重差分離・抽出器本体1は、縦型連続式比重差分離・抽出装置であって、比重差分離と抽出を同時進行で行う分離装置である。図1に示すように、超臨界二酸化炭素は、比重差分離・抽出器本体1の最下部から送られ、比重差分離・抽出器の最上部から比重差分離・抽出器本体1の系外に排出される。
比重差分離・抽出器本体1の上層に比重差分離部2を有し、下層には、撹拌機10を設けた抽出部3を備えている。また、分離対象の固液混合物質を比重差分離部2の中央に供給する固液混合物質の移送用高圧定量ポンプ4及び固液混合物質貯槽5を備えている。更に、比重差分離・抽出器本体1の下には、分離した固形物を流水により連続回収する固形物回収装置11を備えている。固形物回収装置11では、高圧定量ポンプ8で水を供給し、連続排出される固形物を水スラリーとして連続回収する。水及び水スラリーが比重差分離・抽出器本体1に混入しないように、背圧弁9で液面レベルが一定になるように制御する。
比重差分離・抽出器本体1は、比重差分離部2と抽出部3を同一系内に有し、比重差分離部2の温度をヒーター6で制御し、抽出部の温度をヒーター7で制御することで、超臨界二酸化炭素の密度をそれぞれに設定することが可能であり、比重差分離部2では、比重差分離に適した超臨界二酸化炭素の密度を設定し、抽出部3を抽出に適した超臨界二酸化炭素の密度もしくは温度にそれぞれ設定することが可能である。
図2は、本実施形態の一例の全体のフロー図である。本実施形態の固液混合物の高効率分離装置は、二酸化炭素を比重差分離・抽出器に供給する二酸化炭素供給ラインと、比重差分離・抽出器本体1を備え、また、比重差分離・抽出器の下に、分離固形物を水スラリーで回収する固形物回収装置11、更には、比重差分離・抽出器の最上部から分離液体及び二酸化炭素を回収し、分離液体と二酸化炭素をそれぞれ分離回収する気液分離回収装置から構成される二酸化炭素循環型の連続式固液混合物の高効率分離装置である。凝縮器15は、気液分離器I23及び気液分離器II28から分離回収される気体の二酸化炭素及び液化炭酸ガスボンベ13から補給する液体二酸化炭素を冷却装置14で冷却し、貯槽する。更に、凝縮器15には、液面レベル計と温度計,圧力計が装備され、常に一定量の液体二酸化炭素を貯槽することが可能である。
二酸化炭素供給ラインは、凝縮器15に貯槽した液体二酸化炭素を予冷却器16で予冷却し、高圧定量ポンプ17で液体二酸化炭素を移送する。更に、高圧定量ポンプ17で移送された液体二酸化炭素は、流量計18及び加熱器19を経由し、比重差分離・抽出器本体1に供給される。また、高圧定量ポンプ17の吐出流量を可変させることで、超臨界二酸化炭素流速による固液混合物の分離効率を制御することが可能である。
固形物回収装置11は、比重差分離・抽出器本体1の下に配設され、高圧定量ポンプ8で水を供給し、分離固形物を連続で水スラリーとして回収する。回収する水スラリーの流量は、高圧定量ポンプ8で制御し、更に、水及び水スラリーが比重差分離・抽出器本体1に混入しないように、背圧弁9で液面レベルが一定になるように制御する。
比重差分離・抽出器本体1の最上部から移送された分離液体及び二酸化炭素は、高圧フィルター20でフィルタリングされ、分離液体及び二酸化炭素とともに移送されてきた僅かな固形物を捕集し、分離液体及び二酸化炭素だけを後段に排出する。高圧フィルター20を経由した分離液体及び二酸化炭素は、背圧弁21で減圧され、更に、背圧弁21に設置した加熱器及びラインヒーター24で加熱され、気液分離器I23に移送される。
気液分離器I23に移送された分離液体及び二酸化炭素は、加熱器30で再度加熱され、気体二酸化炭素は、活性炭31に移送され、分離液体は、気液分離器II28に移送される。気液分離器II28に移送された分離液体は、加熱器29で再加熱され、完全に二酸化炭素を気化させて、気体二酸化炭素を活性炭31に移送し、分離液体を気液分離器II28に捕集する。また、気液分離器II28に捕集された分離液体は、バルブ25,バルブ26,バルブ27を操作し、連続運転中に取り出すことも可能である。気液分離器I23及び気液分離器II28から移送された気体二酸化炭素は、活性炭31で気体二酸化炭素とともにベーパーになり移送された分離液体を捕集し、気体二酸化炭素だけを後段の凝縮器15に移送する。
次に、比較実験及び実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
比較実験
(1)SC−CO抽出試験装置
本比較例では、ヒーター及び撹拌機を備えた抽出器(容量75ml、SU316製)、背圧弁、気液分離器、COボンベ、COを冷却するための冷却器、定量ポンプから構成されるSC−CO抽出装置を使用した。図3に、該SC−CO抽出装置の概要を示した。この装置において、定量ポンプで移送された液体COは抽出器でSC−COになり、試料のスラリー廃液と接触し、クーラントはSC−COに溶解してSC−COとともに抽出器からでて行き、固形物質が残存する。抽出器を出たSC−COは、背圧弁以降で大気圧となり、気液分離器で、クーラントを分離し、COは系外に分離排出される。
(2)試料及び分離試験フロー
本比較例では、試料として、SiC:48wt%、シリコン切粉:9wt%、鉄屑:4wt%、クーラント(鉱物油):39wt%からなるスラリー廃液を用いた。また、本比較例における試験フローを図4に示した。
(3)SC−CO抽出試験
抽出器にスラリー廃液を26g仕込み、設定圧力(10〜34MPa)で液体COを抽出器に送った。抽出器を35℃あるいは150℃に加温し、抽出を開始した。抽出温度35℃では、SC−COを5.9g/minで60min流通させて抽出を行った。一方、150℃では、SC−COを5.9g/minで120min流通させて抽出を行った。
(4)SiC回収試験
SC−COで固液分離した固形物を外部へ取り出した後、界面活性剤を含有する水溶液を回収した固形物に添加、混合、静置することにより、シリコン切粉、鉄屑等は、上澄みに移行し、SiCは、下部に沈殿した。沈殿したSiCを残し、上澄みとして浮遊するシリコン切粉を分離し、鉄屑は同工程中で磁石により回収した。この操作を複数繰り返すことによりSiCを回収した。
(5)結果
図5に、クーラント回収率と操作圧力との関係を示した。クーラント回収率は、抽出したクーラント量×100/スラリー廃液中のクーラント量で表わされる。図に示されるように、35℃では20MPa以上で、150℃では34MPaでクーラント回収率90%以上を示した。しかしながら、また、図6(クーラント抽出率とCO密度の関係)に示したように、クーラント抽出率(抽出したクーラント量/使用したCO量)は、CO密度の増加の効果が顕著であるものの、最大でも0.03gクーラント/gCO以下と低く、単なる抽出分離では経済的ではないことが明らかとなった。
図7に、回収SiCの粒度分布を示した。回収したSiCには、シリコン切粉や鉄屑の混入がないこと、更に、スラリー廃液中には砕けて不要なSiCの微粉末も多く混入しているが、本分離法では不要な微粉末のSiCも排除でき、粒度の整ったSiCが得られること、が明らかとなった。
本実施例では、比重差による分離器と抽出器を同一系内に設けた分離装置を用いて、スラリー廃液の分離を行った。スラリー廃液の組成は、SiCが48wt%、シリコン切粉が9wt%、鉄屑が4wt%、クーラント(鉱物油)が39wt%であった。図8に、本実施例で用いた分離装置の概略図を示す。図中、1は固液混合物分離装置本体(比重差分離・抽出器本体)であり、2は比重差分離による比重差分離部、3は溶媒抽出による抽出部、4はスラリーを圧入する高圧定量ポンプ、5はスラリーの貯槽(固液混合物質貯槽)、16、17は液体二酸化炭素を予冷却し、圧入する予冷却器、高圧ポンプ、19は予備加熱器、6、7は超臨界二酸化炭素流体の温度を調節するためのヒーター、20は高圧フィルター、21は圧力を制御する背圧弁、28は気液分離器IIを各々示す。
液体COを設定圧力(20MPa)になるまで分離装置本体1に送り、流量を設定値(1kg/h))に調節した後、加熱器19、ヒータ6、7の加熱を開始し、各部の温度が設定温度になるまで加熱を継続した。本実験では、比重差分離部2、抽出部3とも40℃とし、到達後はその温度を保持するように加熱を制御した。温度・圧力とも設定値に達し、安定したことを確認した後、スラリー廃液の供給を設定値(0.2kg/h)で開始した。運転直後からクーラントは上方に、SiCなど固形物は下方に移動し、クーラントは気液分離器II28下部に、固形物は抽出部3下部に保持された。
運転は、温度・圧力条件が安定してから1時間行い、スラリー廃液の供給を停止した。廃液供給停止後も分離器1への超臨界二酸化炭素の供給はしばらく継続し、分離器1内のクーラントを排出させた。その後、加熱を停止し、分離器1内の圧力が大気圧になるまで減圧した。分離器1内の圧力を確認後、抽出部3下部の固形物貯留部を解放し、固形物を採取した。抽出率は固形物中のクーラントの量を評価することにより、供給クーラント量からの引き算で求めた。使用した二酸化炭素量は、気液分離器II28以降に設けたマスフローメータの積算値を用いた。
上述の分離操作で、シリコンインゴットのスライス工程で発生する廃棄スラリーの固液分離を行い、超臨界二酸化炭素の抽出分離のみで固液分離した場合の抽出効率と、比重差分離と抽出分離を組み合わせた系で分離した場合の抽出効率を比較した。その結果を図9に示す。図に示されるように、比重差分離と抽出分離を組み合わせた系で固液分離した方が、3倍以上の抽出効率が得られることが分かった。
本実施例では、固液混合物質と超臨界二酸化炭素を高圧配管内で混合する系を設けた分離装置を用いて、スラリー廃液の分離を行った。スラリー廃液の組成は、SiC50%、シリコン切粉、Fe屑19%、クーラント31%であった。図10に、本実施例で用いた分離装置の概略図を示す。図中、1は固液分離装置本体(比重差分離・抽出器本体)であり、4はスラリーを圧入する高圧ポンプ(高圧定量ポンプ)、5はスラリーの貯槽(固液混合物質貯槽)、16、17は液体二酸化炭素を予冷却し、圧入する予冷却器、高圧定量ポンプ、19は予備加熱器、6、7は超臨界二酸化炭素流体の温度を調整するためのヒーター、20は高圧フィルター、21は圧力を制御する背圧弁、28は気液分離器IIを示す。
液体COを系内洗浄ライン36より設定圧力(29MPa)になるまで固液分離装置本体1に送りながら、予備加熱器19、ヒーター6、7の加熱を行い、設定温度(35℃)になるまで加熱を継続し、到達後はその温度を保持するように加熱を制御した。圧力と温度の制御とともにCOを設定流量(0.6kg/h)に調整し、更にCO導入口をバルブ32とバルブ33を切り替えてスラリーCO混合ライン35よりCOの供給を行った。その後、バルブ34を開放してスラリー廃液を設定量(0.14kg/h)供給した。クーラントは固液分離装置本体1の上方からCOに同伴されて流出し、気液分離器II28で捕集された。SiC,シリコン切粉,Fe屑の固形物は、下方の固形物回収装置11に捕集された。
運転は、スラリー廃液の供給開始から約4時間行い、スラリーの供給停止後、バルブ32を開けた後、バルブ33を閉め、COの供給を系内洗浄ラインに切り替えて、2時間30分運転し、固液分離装置本体(比重差分離・抽出器本体)1内のクーラントを排出させた。その後、加熱を停止し、固液分離装置本体1内の圧力が大気圧になるまで減圧した。減圧後、固形物回収装置11を開放し、固形物を採取した。固形物回収装置11、高圧フィルター20、気液分離器28の各箇所において、SiC、シリコン切粉,Fe屑、クーラントの各物質の総供給量に対する回収量を評価した。
上述の分離操作で、シリコンインゴットのスライス工程で発生するスラリー廃液と超臨界二酸化炭素を混合し、スラリー廃液中のクーラントを低密度化及び低粘性化することで、スラリー廃液中の固形物を効率的に沈降分離できることが分かった。図11に、各ポイントでの回収物質と回収率を示す。
以上詳述したように、本発明は、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素による抽出分離と比重差分離を組み合わせて、固液混合物質を高効率で分離する方法及び装置に係るものであり、本発明により、従来技術である超臨界二酸化炭素抽出法をはるかに上回る高い分離効率で固液混合物質から再利用可能な物質を分離回収することが実現できる。また、本発明により、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を用いて固液混合物質に含まれる媒体の密度及び粘性を制御することで、従来法の超臨界二酸化炭素抽出法をはるかに上回る分離効率で固液混合物質を分離でき、再利用可能な物質を回収することが実現できる。本発明は、例えば、シリコンスラリー廃液等のスラリー廃液の固液分離及び再利用可能な有用物質のリサイクルプロセスを構築すること、及び一般的な固液混合物の高効率分離法として適用することを可能とする新しい固液混合物の高効率分離技術を提供するものとして高い技術的意義を有する。
好ましい実施態様(比重差・抽出分離器)を示す。 好ましい実施態様(全体構成)を示す。 比較例で用いたSC−CO抽出試験装置の概略図を示す。 比較例における試験フローを示す。 クーラント回収率と操作圧力の関係を示す。 クーラント抽出率とCO密度の関係を示す。 回収SiCの粒度分布を示す。 比重差分離と抽出分離を同一系内で同時に行う分離装置の概略図を示す。 SC−COによる廃スラリーの分離効率の比較結果を示す。 実施例2で用いた分離装置の概略図を示す。 上記分離装置を用いて分離操作を実施したときの各ポイントにおける回収物質と回収率を示す。
符号の説明
1 比重差分離・抽出器本体
2 比重差分離部
3 抽出部
4 高圧定量ポンプ
5 固液混合物質貯槽
6 ヒーター
7 ヒーター
8 高圧定量ポンプ
9 背圧弁
10 撹拌機
11 固形物回収装置
12 安全弁
13 液化炭酸ガスボンベ
14 冷却装置
15 凝縮器
16 予冷却器
17 高圧定量ポンプ
18 流量計
19 加熱器
20 高圧フィルター
21 背圧弁
22 安全弁
23 気液分離器I
24 ラインヒーター
25 バルブ
26 バルブ
27 バルブ
28 気液分離器II
30 加熱器
31 活性炭
32 バルブ
33 バルブ
34 バルブ
35 スラリーCO混合ライン
36 系内洗浄ライン

Claims (18)

  1. 超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒として用いて、固液混合物質の固液を比重差を利用して分離する比重差分離工程と、超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を抽出分離溶媒として用いた抽出分離工程を比重差分離−抽出分離の順に垂直方向に組み合わせて、比重差分離溶媒及び/又は抽出分離溶媒の密度を、温度条件を変えることにより調節して比重差分離及び/又は抽出分離による分離効率を制御し、かつ、その際に、分離工程における温度を垂直方向の所定の部分で個別に制御し、固液混合物質の固液を比重差分離及び抽出分離を利用して分離することを特徴とする固液混合物質の分離方法。
  2. 上記固液混合物質が、スラリー廃液である請求項1に記載の固液混合物質の分離方法。
  3. 上記スラリー廃液が、シリコンウエハ製造工程で発生するスラリー廃液である請求項2に記載の固液混合物質の分離方法。
  4. 上記比重差分離と抽出分離を同一系内で同時的に行う請求項1に記載の固液混合物質の分離方法。
  5. 比重差分離溶媒及び/又は抽出分離溶媒の密度を、圧力条件を変えることにより調節して比重差分離及び/又は抽出分離による分離効率を制御し、及び/又は比重差分離溶媒及び/又は抽出分離溶媒の流速を調節して比重差分離及び/又は抽出分離による分離効率を制御する請求項1に記載の固液混合物質の分離方法。
  6. 上記比重差分離と抽出分離を同一系内で連続的に行う請求項1に記載の固液混合物質の分離方法。
  7. スラリー廃液からなる固液混合物質を比重差分離及び抽出分離を利用して分離した再利用可能な物質を回収するリサイクルプロセスを含む請求項1に記載の固液混合物質の分離方法。
  8. 超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を比重差分離溶媒及び抽出分離溶媒として用いて、固液混合物質を比重差及び抽出分離を利用して分離する分離装置であって、比重差分離部、抽出分離部を垂直の同一の系内に含み、抽出分離部を下部、比重差分離部を上部に設置し、上記抽出分離部の所定の位置に超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を導入する手段及び上記比重差分離部の所定の位置に固液混合物質を導入する手段を有し、分離器の系内の温度を調節する手段、及び上記分離器内の温度を垂直方向の所定の部分で個別に制御する手段を具備していることを特徴とする固液混合物質の分離装置。
  9. 上記抽出分離部の下部に液体二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素を送るための液体二酸化炭素の加圧手段、超臨界二酸化炭素にあっては、加熱手段、上記比重差分離部の中間部に固液混合物質を送る手段、上記比重差分離部及び抽出分離部で分離した固形物質を分離器の最下部に貯蔵する手段、比重差分離部の最上部から流出した分離溶媒と液体物質をろ過する手段、系内の圧力を調節する手段、分離溶媒と液体物質を分離する気液分離手段を具備している請求項8に記載の固液混合物質の分離装置。
  10. 上記気液分離装置が分離溶媒の液体二酸化炭素の蒸発手段を有する請求項8に記載の固液混合物質の分離装置。
  11. 気体分離溶媒の二酸化炭素ガスを冷却凝縮することにより液体二酸化炭素とし、再循環させる溶媒の循環機構を有する請求項10に記載の固液混合物質の分離装置。
  12. 上記分離器下部に回収貯蔵された固形物質を連続的に排出する手段を有する請求項9に記載の固液混合物質の分離装置。
  13. 上記固形物質の連続排出手段が、高圧水注入による水スラリーの排出手段である請求項12に記載の固液混合物質の分離装置。
  14. 固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を混合し、固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素の混合後の流体の密度及び粘性を制御する請求項1に記載の固液分離方法。
  15. 固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を予め混合して流体の密度及び粘性を制御した後、比重差を利用して固液分離する請求項14に記載の固液分離方法。
  16. 固液混合物質と混合する超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素が、固形物分離後の流体を循環再利用したものである請求項15に記載の固液分離方法。
  17. 請求項14に記載の固液分離方法で使用する手段であって、固液混合物質と超臨界二酸化炭素及び/又は液体二酸化炭素を予め混合し、その混合物を、流体の密度及び粘性を制御しながら比重差分離領域に供給する混合物供給手段を有する請求項8に記載の固液混合物質の分離装置。
  18. 固液分離後の流体を循環再利用するための流体循環手段を有する請求項17に記載の固液混合物質の分離装置。
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