JP4901397B2 - フィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法、該組成物で表面を被覆された透明樹脂成形体 - Google Patents
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[フィラー分散アクリル系樹脂組成物]
本実施の形態のフィラー分散アクリル系樹脂組成物は、(A)カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)と、グリシドールとメトキシシラン部分縮合物との脱メタノール反応によって得られるグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)とを、エポキシ開環エステル化反応させてなるメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂と、(B)メトキシシラン部分縮合物と、(C)溶媒と、(D)微分散されたシリカフィラーと、を含む。
<カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)>
メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)を構成するカルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)としては、カルボキシル基を有するモノマーとその他のモノマーとからなり、これらのモノマーの少なくとも1種がアクリル系モノマーであるモノマー成分の共重合体であればよく、これらのモノマーの種類、それらの使用量については格別制限されない。
本実施の形態で使用されるグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)は、グリシドールとメトキシシラン部分縮合物とを脱メタノール反応させて得られるものである。
RmSi(OCH3)4-m
(式中、mは0または1の整数を示し、Rは炭素数8以下のアルキル基またはアリール基を表す)で表される加水分解性メトキシシランモノマーを、酸または塩基触媒、およびミスの存在下において加水分解させ、部分的に縮合させて得られるものが用いられる。
本実施の形態の組成物の必須成分であるメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)は、前記カルボキシル基含有アクリルポリマー(1)と前記グリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)をエポキシ開環エステル化反応させて得られる。カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)とグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)の使用割合は、特に限定されないが、(グリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)のグリシジル基の当量)/(カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)のカルボキシル基の当量)が0.5〜10の範囲となる割合とするのが好ましい。この当量比が0.5未満であると本発明の効果(例えば、基材樹脂との密着性)が得られにくく、上記当量比が10を超えると上記硬化膜が不透明になる場合があるため好ましくない。
上述したように、メトキシシラン部分縮合物としては、一般式
RmSi(OCH3)4-m
(式中、mは0または1の整数を示し、Rは炭素数8以下のアルキル基またはアリール基を表す)で表される加水分解性メトキシシランモノマーを、酸または塩基触媒、およびミスの存在下において加水分解させ、部分的に縮合させて得られるものが用いられる。
本実施の形態で使用されるシリカフィラーとしてはナノシリカフィラーが好ましく、特に製造方法に制限はないが、平均粒径が50nm以下であることが好ましい。平均粒径が50nmを超えて大き過ぎると、超微細分散状態が得られたとしても、上記硬化膜の透明性が損なわれるため好ましくない。
溶媒として、具体的には、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;セロソルブアセテート、ジメチルジグルコール等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤などが挙げられる。これらは単独または混合して使用することができる。
本実施の液体のメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)、メトキシシラン部分縮合物(B)、溶媒(C)および微細分散されるシリカフィラー(D)からなる組成については、特に制限されないが、上記硬化膜の物性、組成物としての安定性、取り扱い性などを考慮して設定される。本実施の形態のシリカフィラー成分は、全固形物の0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であり、多すぎると分散が困難となり、透明性、耐摩耗性が低下するため好ましくない。
本実施の形態では、凝集しているシリカフィラーのナノ微粒子を分散基の強剪断、破砕力により再分散させている。このような方法で、シリカフィラーを超微分散した場合でも、そのままでは、微粒子間の相互作用により再び凝集が生じてしまう。透明性と耐摩耗性を発現させるためには、分散処理によりナノサイズの1次粒子径まで再分散したシリカフィラー微粒子表面を効率的に被覆して、この再凝集を抑制する必要がある。
本実施の形態の分散を行うための装置としては、最終的に目的の分散状態を達成できれば特に制限を受けないが、ボールミル、振動ミル、遊星粉砕機等を例示することができ、特に操作性、生産性を考慮してボールミルを選択することが好ましい。この際使用される分散用のボール材料、大きさとしては目的レベルの超微細分散が達成でき、工程を消耗してしまうことのないものであれば特に制限されず使用でき、特に、ジルコニアが好ましく選択される。
特に耐光性を確保するためには、紫外線吸収剤を使用する必要がある。かかる場合には、樹脂組成物に紫外線吸収剤を添加する必要がある。
通常、分散後分散ボールを濾過等の方法により分離して使用される。その後、希釈しても構わない。
−塗工方法−
その後、樹脂基材表面に塗布することになるが、塗布の方法は特に制限を受けない。スピンコート、ディッピング、バーコーターやアプリケーターを用いて塗布することができる。縮合硬化が常温において進行してしまうため、塗工条件にも配慮が必要である。塗布後、フィラー分散アクリル系樹脂組成物を加熱することによって、乾燥により溶媒を留去させゾル−ゲル硬化反応を進行させることにより、アクリル樹脂−シリカハイブリッド硬化物であるハードコーティング層が基材樹脂である例えばポリカーボネート樹脂成形体上に形成される。なお、本明細書中の「ポリカーボネート」はポリカーボナートともいう。この溶剤留去、硬化条件は、必要な硬化膜厚、組成物組成等に応じて適宜選択すればよく、通常50℃〜140℃、1時間〜4時間の条件で行われる。50℃未満では乾燥が不完全となり140℃を超えると基材樹脂、例えばポリカーボネート樹脂の耐熱性を超えるため好ましくない。また、低温で予備硬化を行った後で温度を上げて硬化させる方法等を硬化膜の物性を考慮して任意に選択することができる。
基材(実施例中では、ポリカーボネート樹脂からなる基材、以下同様)の被覆面にカッターナイフで1mm間隔で100個の碁盤目を作り、ニチバン製粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標))を圧着したのち、垂直に引き剥がし基材上に残った碁盤目の数から評価した。
TABER INDUSTRIES社製テーバー摩耗試験機に摩耗輪「CS−10F」を装着し、荷重500g、500回転でテーバー摩耗試験を行い、摩耗試験前後のヘイズの差ΔH(%)を測定して評価した。ヘイズの測定は日本電色工業(株)製「NDH2000」を用いて行った。なお、テーバー摩耗試験前のヘイズ値から基材のヘイズ値を差し引いた値を硬化膜の初期透明性(ヘイズ%)としている(ヘイズ=Td/Tt×100、Td:散乱光線透過率、Tt:全光線透過率)。なお、耐摩耗性の評価における摩耗試験前後のヘイズの差ΔH(%)は、自動車用ガラスの認証規格に適合させるため、10%以下が望ましい。
メトキシ基含有シラン変性アクリル系樹脂組成物としてコンポセランAC601(荒川化学工業株式会社製)を使用した。
内容積45mLのジルコニウム製容器にジルコニアビーズ13.5mL(容器容量の30vol%)を入れ、ここに表1中のプレ分散で示す組成、つまり、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(荒川化学工業株式会社製、商品名:コンポセランAC)、メトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)社製、商品名:メチルシリケート51)を混合したものを投入した。これを遊星型ボールミル(FRITSCH社製P−7)を用いて、公転の回転数800rpm(公転半径6.7cm、自転/公転比=2.0、重力24.5G相当)にて50℃、120分間混合した後、表1中の最終組成で示す組成となるように、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂、シリカフィラー(旭化成WackerSilicone社製、商品名:HDKN−20)を混合したものを投入し、プレ分散と同じ分散条件にて混合し、ジルコニアビーズを濾別することにより、フィラー分散アクリル系樹脂組成物を調製した。
表1で示す組成(シリカフィラーを7.9%混合)に変更した以外は、実施例1と同様に処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。この硬化膜のテーバー摩耗試験前のヘイズ値は1.2%であり、シリカフィラーが超微分散されていることを確認した。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価して結果を表1に示した。
基材としてポリメタクリル酸メチルからなる樹脂板(PMMA:旭化成(株)製、商品名「デラグラス」、タイプ「K」)を用い、熱風式循環乾燥機で100℃で120分間加熱乾燥・硬化させた以外は実施例2と同様にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたメタクリル樹脂成形体を得た。
遊星型ボールミル(FRITSCH社製P−7)を用いて、公転の回転数を500rpmに変更した以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。この硬化膜のテーバー摩耗試験前のヘイズ値は7.3%であり、シリカフィラーが微分散されていない状態であった。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
遊星型ボールミル(FRITSCH社製P−7)を用いた、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂、メトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)社製、商品名:メチルシリケート51)の混合(分散)時間を30分にした以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
遊星型ボールミル(FRITSCH社製P−7)を用いた、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂、メトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)社製、商品名:メチルシリケート51)の混合(分散)温度を25℃にした以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
シリカフィラーの含有量が13.0重量%になるようにシリカフィラーを添加分散させた以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
シリカフィラーを無添加とした以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
表3に示す重量%の組成になるように、メトキシ基含有シラン変性アクリル系樹脂とシリカフィラーとを混合したものをプレ分散の組成とし、メトキシ基含有シラン変性アクリル系樹脂とメトキシラン部分縮合物を加え最終組成とした以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表3に示した。
表3に示す重量%の組成になるように添加し、プレ分散を実施しない以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表3に示した。
Claims (4)
- 被覆硬化膜厚10μmにおいて測定したヘイズ値が1.5%以下となる条件にて、
(A)カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)と、グリシドールとメトキシシラン部分縮合物との脱メタノール反応によって得られるグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)とを、エポキシ開環エステル化反応させてなるメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂と、(B)メトキシシラン部分縮合物と、(C)溶媒とからなる混合液中に、平均粒径が50nm以下のシリカフィラーを全固形分の1〜10重量%になるよう添加し、分散温度が30℃〜80℃の範囲で、混合分散時間が60分〜120分の範囲で、かつ、遊星ボールミルを用いて公転の回転数800rpmの条件にて分散させることを特徴とするフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1に記載のフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法において、
前記カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)が、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、炭素数3〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、エチレン性不飽和カルボン酸とを含有するモノマー成分の共重合体であることを特徴とするフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法で得られるフィラー分散アクリル系樹脂組成物の硬化膜により表面が被覆されていることを特徴とする透明樹脂成形体。
- 請求項3に記載の透明樹脂成形体において、
前記透明樹脂成形体が、自動車用プラスチックガラスであることを特徴とする透明樹脂成形体。
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