JP4901397B2 - フィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法、該組成物で表面を被覆された透明樹脂成形体 - Google Patents

フィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法、該組成物で表面を被覆された透明樹脂成形体 Download PDF

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本発明は、フィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法、該組成物で表面を被覆された透明樹脂成形体、特に、密着性ならびに耐摩耗性に優れた被覆膜が形成可能なフィラー分散アクリル系樹脂組成物およびその製造方法、該組成物で表面を被覆された透明樹脂成形体に関する。
近年、例えば、ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、軽量性、加工性、成型時の寸法安定性等に優れるため、機械部品、電子絶縁材料、自動車部品などの多岐に亘る用途に、無機ガラスの代替として利用されてきている。一方、ポリカーボネート樹脂自体では、耐溶剤性、耐摩耗性や耐候性にやや劣る。このため、例えば屋外にて長時間使用した場合には、劣化が進むため、物性、外観が損なわれる場合があった。
一方、ポリカーボネート樹脂は、上述したように、透明性、耐衝撃性、軽量性、加工性、成型時の寸法安定性等に優れるため、この特徴を活かして、近年、窓ガラス、特に自動車の窓ガラスにポリカーボネート樹脂成形体を使用しようとする動きがある。しかしながら、この用途において、ワイパーの使用やウィンドウ自体の昇降が前提であるため、非常に優れた耐摩耗性が要求されることとなる。また、厳しい使用環境、特に高温環境や連続して強い直射日光に曝される状況が想定されるため、無機ガラス並の高い耐候性が求められている。
これらの要求を満足させるべく、ポリカーボネート樹脂表面にアクリルプライマー層を形成させ、その上にコロイダルシリカ及びトリアルコキシシラン加水分解縮合物を熱硬化させてなるハードコート層を順次積層させ、さらにこの2層コートを特定の加熱硬化条件で行うことにより、耐摩耗性を付与する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、上記2層コートが必要となるため、生産上作業が煩雑になり、コスト高になるおそれがある。
そこで、特許文献2には、カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)と、グリシドールとメトキシシラン部分縮合物との脱メタノール反応によって得られるグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)とを、エポキシ開環エステル化反応させてなるメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂と、媒体とを含有するアクリル系樹脂組成物を含むコーティング組成物が提案され、このコーティング組成物は、ポリカーボネート樹脂表面に1層コートするタイプのシロキサン系ハードコート剤である。
特開2004−27110号公報 特開2004−300238号公報
しかしながら、上述した1層コートするタイプのシロキサン系ハードコート剤であっても、近年さらに要求度が高くなったポリカーボネート樹脂との十分な密着性が得られないという問題を抱えている。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、従来のようなプライマーを必要とせず、1層コートでも基材樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)との密着性に優れ、耐摩耗性、耐候性に優れた表面被覆材料及び自動車プラスチックガラスとして使用可能な表面が被覆された透明樹脂成形体を提供する。
本発明のフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法、該組成物で表面を被覆された透明樹脂成形体は、以下の特徴を有する。
(1)被覆硬化膜厚10μmにおいて測定したヘイズ値が1.5%以下となる条件にて、(A)カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)と、グリシドールとメトキシシラン部分縮合物との脱メタノール反応によって得られるグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)とを、エポキシ開環エステル化反応させてなるメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂と、(B)メトキシシラン部分縮合物と、(C)溶媒とからなる混合液中に、平均粒径が50nm以下のシリカフィラーを全固形分の1〜10重量%になるよう添加し、分散温度が30℃〜80℃の範囲で、混合分散時間が60分〜120分の範囲で、かつ、遊星ボールミルを用いて公転の回転数800rpmの条件にて分散させるフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法である。
上記ヘイズ(Haze)は曇価とも呼ばれ、曇度合い、光の拡散度合いを表す。例えば透明な基材樹脂に塗布する場合には、基材樹脂の透明性を損なわない程度のヘイズを有する必要があり、上記条件であれば、上記フィラー分散アクリル系樹脂組成物が被覆された基材樹脂自体の透明性を損なうことなく、透明樹脂成形体を得ることができる。
(2)上記(1)に記載のフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法において、前記カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)が、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、炭素数3〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、エチレン性不飽和カルボン酸とを含有するモノマー成分の共重合体である。
上記組み合わせにより、基材樹脂との十分な密着性を確保することができる。
)上記(1)または(2)に記載のフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法で得られるフィラー分散アクリル系樹脂組成物の硬化膜により表面が被覆されている透明樹脂成形体である。
上記フィラー分散アクリル系樹脂組成物の硬化膜は、樹脂基材への密着性が優れ、且つ耐摩耗性にも優れ、さらにシリカフィラーが微細分散されているため、ヘイズ値も低く透明性の高い硬化膜である。したがって、この硬化膜により表面被覆された基材樹脂の透明性は損なわれず、得られた樹脂成形体も透明となる。
)上記()に記載の透明樹脂成形体において、前記透明樹脂成形体が、自動車用プラスチックガラスである。
耐摩耗性に優れハードコート層が形成された透明樹脂成形体であるため、この透明樹脂成形体は、特に、ワイパーの使用やウィンドウの昇降による摩耗が発生する自動車用プラスチックガラスに好適である。
本発明によれば、従来のようなプライマーを必要とせず、組成物を塗布して熱硬化させることによって、1層コートでも基材樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)との密着性に優れ、耐摩耗性、耐候性に優れた表面被覆組成物、および自動車用プラスチックガラスとして使用可能な表面被覆された透明樹脂成形体を得ることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
[フィラー分散アクリル系樹脂組成物]
本実施の形態のフィラー分散アクリル系樹脂組成物は、(A)カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)と、グリシドールとメトキシシラン部分縮合物との脱メタノール反応によって得られるグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)とを、エポキシ開環エステル化反応させてなるメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂と、(B)メトキシシラン部分縮合物と、(C)溶媒と、(D)微分散されたシリカフィラーと、を含む。
−メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)−
<カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)>
メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)を構成するカルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)としては、カルボキシル基を有するモノマーとその他のモノマーとからなり、これらのモノマーの少なくとも1種がアクリル系モノマーであるモノマー成分の共重合体であればよく、これらのモノマーの種類、それらの使用量については格別制限されない。
さらに詳細に説明すると、上記カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)は、炭素数1〜2(以下「C1〜C2」ともいう)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、炭素数3〜22(以下「C3〜C22」ともいう)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、エチレン性不飽和カルボン酸とを含有するモノマー成分の共重合体である。
上記C1〜C2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記C3〜C22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレートなどのC3〜C22のアルキル基を有する脂肪族アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
1〜C2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとC3〜C22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとは、前者/後者の使用モル比0.2〜2.0の範囲で使用することが好ましい。上記使用モル比が0.2未満では、基材樹脂表面にフィラー分散アクリル系樹脂組成物を塗布し熱硬化させることにより得られる硬化膜の耐摩耗性が十分でなく、一方、上記使用モル比が2.0を超える場合には硬化膜が脆く割れやすい傾向がある。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を挙げることができる。このエチレン性不飽和カルボン酸の使用割合は、カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)の酸価が10〜150mgKOH/gになるように調整することが好ましい。酸価が150mgKOH/gを超えると、上記硬化膜の耐水性が低下し、一方酸価が10mgKOH/g未満では、上記硬化膜中のシリカフィラーの分散性が劣化するためシリカフィラーの割合が低下して、上述した本発明の効果が得られない。
本実施の形態のカルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)では、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、前記以外の構成モノマーも特に制限なく使用することができる。当該任意モノマーとしては、スチレン、メチルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエンなどが挙げられる。当該任意モノマーの使用量は、カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)に用いる総モノマーの内、通常30重量%未満である。
カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)の製造は、従来公知の重合法を採用して、上記のモノマー成分を共重合させることにより行う。具体的には、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物や2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾビス系化合物などのラジカル重合開始剤と有機溶媒を用いた溶液重合法が挙げられる。重合温度および重合時間は、特に限定されず、用いる開始剤のラジカル発生温度、半減期によって適宜決定される。当該有機溶媒としては、生成するカルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)を溶解して、重合温度よりも高い沸点を有し、カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)および後述するグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)に対して、非反応性のものであれば、特に限定されず使用することができる。当該有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、セロソルブアセテート、ジメチルジグルコール等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤などが挙げられ、これらの単独または混合して使用することができる。
カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)の分子量は、特に限定されないが、通常数平均分子量が5,000〜200,000程度であることが好ましい。数平均分子量が5,000未満では、上述した硬化膜の物性(例えば、基材樹脂との密着性)が不十分であり、200,000を超えるとポリマーの溶液粘度が高くなりすぎるため、分散、塗布の効率、取り扱い性が悪くなるため好ましくない。
<グリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)>
本実施の形態で使用されるグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)は、グリシドールとメトキシシラン部分縮合物とを脱メタノール反応させて得られるものである。
メトキシシラン部分縮合物としては、一般式
mSi(OCH34-m
(式中、mは0または1の整数を示し、Rは炭素数8以下のアルキル基またはアリール基を表す)で表される加水分解性メトキシシランモノマーを、酸または塩基触媒、およびミスの存在下において加水分解させ、部分的に縮合させて得られるものが用いられる。
原料となる加水分解性メトキシシランモノマーとしては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のテトラまたはトリメトキシシラン類等が例示される。通常、これらの中でも、特に、グリシドールとの反応性が高いことから、メトキシシラン部分縮合物としては、テトラメトキシシランまたはメチルメトキシシランを70%以上用いて合成されるものが好ましい。これら例示物の内の2種以上を混合使用する場合には、メトキシシラン部分縮合物の総量中でテトラメトキシシラン部分縮合物またはメチルメトキシシラン部分縮合物を70%以上用いることが好ましい。
当該メトキシシラン部分縮合物の数平均分子量は230〜2,000、1分子中のSiの平均個数は2〜11程度であることが好ましい。Siの平均個数が2未満であると、グリシドールとの脱メタノール反応の際、反応せずにアルコールと一緒に系外に流出するメトキシシラン類の量が増え、またSiの平均個数が11を超えると、グリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)のカルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)との反応性が低下し、目的とするメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)が得られにくい。
グリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)は、グリシドールとメトキシシラン部分縮合物を脱メタノール反応させることにより得られる。グリシドールとメトキシシラン部分縮合物との使用割合は、メトキシ基が実質的に残留するような割合であれば特に制限されないが、得られるグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)中のグリシジル基の割合が通常はグリシドールの水酸基の当量/メトキシシラン部分縮合物のメトキシ基の当量=0.01/1〜0.5/1となる仕込み比率で、該メトキシシラン部分縮合物(2)とグリシドールを脱メタノール反応させることが好ましい。前記仕込み比率が少ないとグリシドールとの反応しないメトキシシラン部分縮合物の割合が増加し、このメトキシシラン部分縮合物が自己縮合して得られる樹脂組成物の硬化物が不透明化する傾向があるため、前記仕込み比率は、グリシドールの水酸基の当量/メトキシシラン部分縮合物のメトキシ基の当量=0.03/1以上とすることがより好ましい。また、前記仕込み比率が大きくなると、グリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)のグリシジル基が多環能化し、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)の合成時にゲル化し易くなるため、前記仕込み比率は、グリシドールの水酸基の当量/メトキシシラン部分縮合物のメトキシ基の当量=0.4/1以下とすることがより好ましい。
メトキシシラン部分縮合物とグリシドールとの反応は、例えば、前記各成分を仕込み、加熱して生成するメタノールを留去しながら脱メタノールさせる。反応温度は50〜150℃程度、好ましくは70〜110℃であり、全反応時間は1〜15時間程度である。なお、110℃を超える温度で脱メタノール反応させると、反応系中でメトキシシランの縮合に伴って反応生成物の分子量が上がりすぎて、高粘度化やゲル化する傾向がある。このような場合には、脱メタノール反応を途中で停止させるなどの方法により高粘度化やゲル化を防止できる。
また、上記のメトキシシラン部分縮合物とグリシドールの脱メタノール反応に際しては、反応促進のために従来公知のエステルと水酸基のエステル交換反応触媒の内、エポキシ環を開環しないものを使用することができる。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、硼素、カドミウム、マンガンのような金属や、これらの酸化物、有機酸塩、ハロゲン化合物、メトキシド等が挙げられる。これらの中でも、特に有機錫、有機酸錫が好ましく、具体的にはジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫などが有効である。
また、上記反応は溶剤中で行うことができる。溶剤としては、メトキシシラン部分縮合物とグリシドールを溶解し、且つグリシドールのグリシジル基に対して不活性なものであれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトンなどの溶媒を用いることが好ましい。
<メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)の製造>
本実施の形態の組成物の必須成分であるメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)は、前記カルボキシル基含有アクリルポリマー(1)と前記グリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)をエポキシ開環エステル化反応させて得られる。カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)とグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)の使用割合は、特に限定されないが、(グリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)のグリシジル基の当量)/(カルボキシル基含有アクリル系ポリマー(1)のカルボキシル基の当量)が0.5〜10の範囲となる割合とするのが好ましい。この当量比が0.5未満であると本発明の効果(例えば、基材樹脂との密着性)が得られにくく、上記当量比が10を超えると上記硬化膜が不透明になる場合があるため好ましくない。
上記メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)の製造は、例えば、前記各成分を仕込み、実質的に無水状態で加熱して行う。本反応はカルボキシル基含有アクリルポリマー(1)のカルボキシル基と、グリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)のグリシジル基の反応を主目的にしており、本反応中にグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)のメトキシシリル部位のゾル−ゲル反応によるシリカの生成を抑える必要がある。そこで、反応温度は50〜120℃程度、好ましくは60〜100℃であり、全反応時間は1〜30時間程度で行うことが好ましい。
また、上記のエポキシ開環エステル化反応に際しては、反応促進のために従来公知のグリシジル基とカルボキシル基とを反応させる際に使用する触媒を用いることができる。かかる触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミンなどの三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類などを挙げることができる。反応触媒は、カルボキシル基含有アクリルポリマー(1)の固形分100重量部に対して0.01〜5重量部の割合で使用するのが好ましい。
なお、上記反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、カルボキシル基含有アクリルポリマー(1)およびグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)を溶解する溶剤であれば特に制限されない。このような溶媒としては、例えば、カルボキシル基含有アクリルポリマー(1)製造時に使用したものを例示できる。
こうして得られたメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)は、その分子中にメトキシシラン部分縮合物(2)に由来するメトキシ基を有している。当該メトキシ基の含有量は、特に限定されないが、このメトキシ基は溶剤の蒸発や加熱処理により、または水分(湿気)との反応によりゾル−ゲル反応や脱メタノール縮合により相互に結合した硬化物を形成するのに必要であるため、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)は通常、メトキシシラン部分縮合物のメトキシ基の50〜95モル%、好ましくは60〜90モル%を未反応のままで保持しておくことがよい。
−メトキシシラン部分縮合物(B)−
上述したように、メトキシシラン部分縮合物としては、一般式
mSi(OCH34-m
(式中、mは0または1の整数を示し、Rは炭素数8以下のアルキル基またはアリール基を表す)で表される加水分解性メトキシシランモノマーを、酸または塩基触媒、およびミスの存在下において加水分解させ、部分的に縮合させて得られるものが用いられる。
また、上述したように、原料となる加水分解性メトキシシランモノマーとしては、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のテトラまたはトリメトキシシラン類等が例示される。これら例示物の内の2種以上を混合使用する場合には、メトキシシラン部分縮合物の総量中でテトラメトキシシラン部分縮合物またはメチルメトキシシラン部分縮合物を70%以上用いることが好ましい。
当該メトキシシラン部分縮合物の数平均分子量は230〜2000、1分子中のSiの平均個数は2〜11程度であることが好ましい。分子量が高くなると粘度が上昇してしまい、分子量が2000を超えると配合、分散が困難になるため好ましくない。
−シリカフィラー(D)−
本実施の形態で使用されるシリカフィラーとしてはナノシリカフィラーが好ましく、特に製造方法に制限はないが、平均粒径が50nm以下であることが好ましい。平均粒径が50nmを超えて大き過ぎると、超微細分散状態が得られたとしても、上記硬化膜の透明性が損なわれるため好ましくない。
−溶媒(C)−
溶媒として、具体的には、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;セロソルブアセテート、ジメチルジグルコール等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶剤などが挙げられる。これらは単独または混合して使用することができる。
−組成物−
本実施の液体のメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)、メトキシシラン部分縮合物(B)、溶媒(C)および微細分散されるシリカフィラー(D)からなる組成については、特に制限されないが、上記硬化膜の物性、組成物としての安定性、取り扱い性などを考慮して設定される。本実施の形態のシリカフィラー成分は、全固形物の0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であり、多すぎると分散が困難となり、透明性、耐摩耗性が低下するため好ましくない。
また、配合されるメトキシシラン部分縮合物(B)とナノシリカフィラー(D)は、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)の硬化時に加水分解、重縮合により一体化するが、分散処理工程においてシリカフィラー表面の活性点が、図1に示すように、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂12とメトキシシラン部分縮合物14と適度に結合(ゾル−ゲル反応)することにより、組成物全体として架橋密度が下がり、硬化収縮による内部応力が緩和されることによって発現されるため、シリカフィラー10成分が0.5%未満では基材樹脂に対する密着性が低下するとともに、耐摩耗性が低下する傾向となる。
本実施の形態の組成物は、通常、取り扱い性、塗布の作業性等を勘案して、固形分濃度が5〜50重量%程度であることが好ましい。また、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)とメトキシシラン部分縮合物(B)との重合比率は、特に制限を受けず、硬化物の物性、塗工の安定性、取り扱い作業性等を勘案して設定されるが、通常50/50〜90/10の範囲であり、好ましくは60/40〜80/20の範囲である。
本実施の形態の樹脂組成物には、任意成分として、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)の製造時に使用した原料成分であるカルボキシル基含有アクリル系ポリマー等を含有してもかまわない。
本実施の形態のフィラー分散アクリル系樹脂組成物をハードコーティング用途に使用する場合、本発明の効果を損なわない範囲において各種用途に応じて、各種添加剤(離型剤、表面処理剤、レベリング剤、安定剤、着色剤、カップリング剤等)を配合することができる。
[フィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法、フィラーの超分散方法]
本実施の形態では、凝集しているシリカフィラーのナノ微粒子を分散基の強剪断、破砕力により再分散させている。このような方法で、シリカフィラーを超微分散した場合でも、そのままでは、微粒子間の相互作用により再び凝集が生じてしまう。透明性と耐摩耗性を発現させるためには、分散処理によりナノサイズの1次粒子径まで再分散したシリカフィラー微粒子表面を効率的に被覆して、この再凝集を抑制する必要がある。
本実施の形態では、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)およびメトキシシラン部分縮合物(B)がシリカフィラー(D)微粒子の再凝集を抑制する役割を果たすことになるが、シリカフィラー微粒子の表面をこれらの物質により効率的に被覆するためには、シリカフィラー微粒子表面にメトキシシリル基と反応することができる反応点が存在していることが必要である。通常、シリカフィラーは凝集を抑制する目的で、表面の不活性化処理を施している。したがって、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂およびメトキシシラン部分縮合物と反応させることができる反応活性点が表面に存在しているフィラーを選択し、使用する必要がある。当該フィラーとしては、一般に無修飾シリカフィラーが好適であり、具体的には、旭化成 Wacker Silicone社の「HDKN−20」などを例示することができる。
分散方法としては、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)、メトキシシラン部分縮合物(B)、シリカフィラー(D)、溶媒(C)を事前に混合した後、分散機で分散する。この場合、塗工液の取り扱い性や硬化膜の物性等を考慮して、事前に機械混合、加熱処理等を行っても構わない。
−分散機−
本実施の形態の分散を行うための装置としては、最終的に目的の分散状態を達成できれば特に制限を受けないが、ボールミル、振動ミル、遊星粉砕機等を例示することができ、特に操作性、生産性を考慮してボールミルを選択することが好ましい。この際使用される分散用のボール材料、大きさとしては目的レベルの超微細分散が達成でき、工程を消耗してしまうことのないものであれば特に制限されず使用でき、特に、ジルコニアが好ましく選択される。
本実施の形態において、硬化膜に優れた透明性、耐久性と密着性を発現させるためには、分散条件の選定が重要となる。つまり、シリカフィラーの微細分散を果たすとともに、フィラー表面におけるメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)およびメトキシシラン部分縮合物(B)との反応を起こさせる必要がある。このため、ナノシリカフィラーに対して高剪断力を与える必要がある。
本実施の形態の微細分散を達成するための分散条件は、被分散組成物の性状、分散に使用する装置等を勘案して、適宜設定される。シリカフィラーの超微細分散が達成されることにより、硬化膜の透明性が向上するため、特定の厚さの硬化膜の光透過性からシリカフィラーの分散状況を判断することができる。具体的には、硬化膜厚10μmにおけるヘイズ値=Td/Tt(Td:散乱光線透過率/Tt:全光線透過率)が1.5%以下を達成できるように各条件を調整する。
例えば、遊星型ボールミルの場合、硬化膜厚10μmにおけるヘイズ値が1.5%以下を達成するためには、剪断力として20G以上、好ましくは25G以上の重力がかかるように設定することが必要となり、この条件が達成されるように、容器、公転半径、自転・公転比等を勘案して回数が設定される。これにより、剪断力が低い場合には十分な分散が達成されず、一方剪断力が高すぎる場合には実現的ではない。
本実施の形態における分散時の温度は、シリカフィラーの分散状態、硬化膜の物性、粘度等の取り扱い性を考慮して設定される。一般には、分散時の温度が高くなることにより、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(A)およびメトキシシラン部分縮合物(B)との反応が進み、硬化膜のヘイズ値も低下する傾向にあり、30℃〜80℃の範囲であることが好ましい。30℃未満では、分散を達成するために長時間を要する。80℃を超える場合には、溶媒の揮発などの問題があり好ましくない。分散処理に伴い摩擦熱等による温度の上昇がある場合には、必要に応じて冷却等を行うことができる。
本実施の形態における分散時間は、シリカフィラーの分散状態、硬化膜の物性、粘度等の取り扱い性を考慮して設定される。一般には、分散時間を長くすることでより微細に分散が進み、硬化膜のヘイズ値も低下する傾向にあり、10分〜150分程度とすることが好ましく、より好ましくは60分〜120分の範囲である。上記範囲を超えると非効率であり、摩擦熱等による発熱が顕著となり溶媒の揮発等の問題が生じる。
[紫外線吸収剤]
特に耐光性を確保するためには、紫外線吸収剤を使用する必要がある。かかる場合には、樹脂組成物に紫外線吸収剤を添加する必要がある。
紫外線吸収剤としては、添加型および/または反応型のものを用いることができ、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系などの有機系化合物、或いは、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などの金属酸化物微粒子類が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンとして、「Uvinul 400」(商品名、BASF社製)、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンとして、「スミソーブ 130」(商品名、住友化学社製)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとして、「RUVA−93」(商品名、大塚化学社製)、2,2’、4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンとして「Uvinul 3050」(商品名、BASF社製)などが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤には、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールとして、「Tinuvin 328」(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールとして「スミソーブ 200」(商品名、住友化学社製)などが挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤には、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ジデシルオキシプロピル)−オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)−オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの混合物として、「TINUVIN 400」(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。
これら紫外線吸収剤は、単独でも、2種以上を混合しても使用することができる。紫外線吸収剤の添加量は特に制限されないが、310nm以下の波長における透過率が10%以下であることが好ましく、360nm以下における透過率が10%以下であることがより好ましい。例えば、基材樹脂がポリカーボネート樹脂である場合、このポリカーボネート樹脂基材の劣化主波長は280〜310nmおよび330〜360nmであるからである。該特性を満足する前記紫外線吸収剤の添加量は、硬化膜厚および紫外線吸収剤の紫外線吸収特性、安定性により決定される。
紫外線吸収剤を必要以上に添加しても更なる耐候性向上は期待できないばかりでなく、密着性が低下したり、硬化膜特性が低下したりするので好ましくない。
また、フィラー分散アクリル系樹脂組成物を熱硬化させてなる硬化膜の表層へのブリードの問題がない、高分子タイプの紫外線吸収剤を添加することが好ましい態様として推奨される。該高分子タイプの紫外線吸収剤とは、紫外線吸収剤として有効な骨格を側鎖に有するポリマーをいう。また、フィラー分散アクリル系樹脂組成物との相溶性から主にアクリル系ポリマー紫外線吸収剤が好ましい。アクリル系ポリマー紫外線吸収剤には、例えば、ベンゾトリアゾール骨格を側鎖に有するアクリル系ポリマーとして、「UVA−1635」(商品名、BASF社製)、ベンゾフェノン骨格を側鎖に有するアクリル系ポリマーとして、「ULS−933LP」(商品名、一方社油脂工業製)が挙げられる。
耐候性を向上させるため、必要に応じてヒンダードアミン系の光安定剤を塗料不揮発分に対して0〜3重量%の割合で配合させることが好ましい。ヒンダードアミン系の光安定剤としては、添加型および/または反応型のものを用いることができ、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとして「TINUVIN 292」(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ビス(1−オクタオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートとして「TINUVIN 123」(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレートとして「アデカスタブLA−87」(商品名、旭電化工業製)が挙げられる。
−添加方法−
通常、分散後分散ボールを濾過等の方法により分離して使用される。その後、希釈しても構わない。
[透明樹脂成形体]
−塗工方法−
その後、樹脂基材表面に塗布することになるが、塗布の方法は特に制限を受けない。スピンコート、ディッピング、バーコーターやアプリケーターを用いて塗布することができる。縮合硬化が常温において進行してしまうため、塗工条件にも配慮が必要である。塗布後、フィラー分散アクリル系樹脂組成物を加熱することによって、乾燥により溶媒を留去させゾル−ゲル硬化反応を進行させることにより、アクリル樹脂−シリカハイブリッド硬化物であるハードコーティング層が基材樹脂である例えばポリカーボネート樹脂成形体上に形成される。なお、本明細書中の「ポリカーボネート」はポリカーボナートともいう。この溶剤留去、硬化条件は、必要な硬化膜厚、組成物組成等に応じて適宜選択すればよく、通常50℃〜140℃、1時間〜4時間の条件で行われる。50℃未満では乾燥が不完全となり140℃を超えると基材樹脂、例えばポリカーボネート樹脂の耐熱性を超えるため好ましくない。また、低温で予備硬化を行った後で温度を上げて硬化させる方法等を硬化膜の物性を考慮して任意に選択することができる。
自動車用プラスチックガラスとしては、ポリカーボネート樹脂からなる基材に、上述した本実施の形態のフィラー分散アクリル系樹脂組成物を塗布し、溶媒を留去させて熱硬化させたハードコーティング層を形成した透明樹脂成形体が好適である。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限るものではない。なお、フィラー分散アクリル系樹脂組成物を用いて被覆されたポリカーボネート樹脂成形体は、以下の方法により評価した。
(密着性)
基材(実施例中では、ポリカーボネート樹脂からなる基材、以下同様)の被覆面にカッターナイフで1mm間隔で100個の碁盤目を作り、ニチバン製粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標))を圧着したのち、垂直に引き剥がし基材上に残った碁盤目の数から評価した。
(耐摩耗性)
TABER INDUSTRIES社製テーバー摩耗試験機に摩耗輪「CS−10F」を装着し、荷重500g、500回転でテーバー摩耗試験を行い、摩耗試験前後のヘイズの差ΔH(%)を測定して評価した。ヘイズの測定は日本電色工業(株)製「NDH2000」を用いて行った。なお、テーバー摩耗試験前のヘイズ値から基材のヘイズ値を差し引いた値を硬化膜の初期透明性(ヘイズ%)としている(ヘイズ=Td/Tt×100、Td:散乱光線透過率、Tt:全光線透過率)。なお、耐摩耗性の評価における摩耗試験前後のヘイズの差ΔH(%)は、自動車用ガラスの認証規格に適合させるため、10%以下が望ましい。
(製造例)
メトキシ基含有シラン変性アクリル系樹脂組成物としてコンポセランAC601(荒川化学工業株式会社製)を使用した。
実施例1.
内容積45mLのジルコニウム製容器にジルコニアビーズ13.5mL(容器容量の30vol%)を入れ、ここに表1中のプレ分散で示す組成、つまり、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂(荒川化学工業株式会社製、商品名:コンポセランAC)、メトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)社製、商品名:メチルシリケート51)を混合したものを投入した。これを遊星型ボールミル(FRITSCH社製P−7)を用いて、公転の回転数800rpm(公転半径6.7cm、自転/公転比=2.0、重力24.5G相当)にて50℃、120分間混合した後、表1中の最終組成で示す組成となるように、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂、シリカフィラー(旭化成WackerSilicone社製、商品名:HDKN−20)を混合したものを投入し、プレ分散と同じ分散条件にて混合し、ジルコニアビーズを濾別することにより、フィラー分散アクリル系樹脂組成物を調製した。
調製したフィラー分散アクリル系樹脂組成物をポリカーボネート樹脂板(PC:三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、商品名「ユーピロン・シート」、タイプ「NF−2000」)の片面にバーコーターを用いて塗布し、熱風式循環乾燥機で130℃で60分間加熱乾燥・硬化させて、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で、表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た(硬化膜厚10μm)。硬化膜のテーバー摩耗試験前のヘイズ値は1.5%であり、シリカフィラーが超微分散されていることを確認した。得られたフィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表1に示した。
実施例2.
表1で示す組成(シリカフィラーを7.9%混合)に変更した以外は、実施例1と同様に処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。この硬化膜のテーバー摩耗試験前のヘイズ値は1.2%であり、シリカフィラーが超微分散されていることを確認した。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価して結果を表1に示した。
実施例3.
基材としてポリメタクリル酸メチルからなる樹脂板(PMMA:旭化成(株)製、商品名「デラグラス」、タイプ「K」)を用い、熱風式循環乾燥機で100℃で120分間加熱乾燥・硬化させた以外は実施例2と同様にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたメタクリル樹脂成形体を得た。
比較例1.
遊星型ボールミル(FRITSCH社製P−7)を用いて、公転の回転数を500rpmに変更した以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。この硬化膜のテーバー摩耗試験前のヘイズ値は7.3%であり、シリカフィラーが微分散されていない状態であった。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
比較例2.
遊星型ボールミル(FRITSCH社製P−7)を用いた、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂、メトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)社製、商品名:メチルシリケート51)の混合(分散)時間を30分にした以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
比較例3.
遊星型ボールミル(FRITSCH社製P−7)を用いた、メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂、メトキシシラン部分縮合物(多摩化学(株)社製、商品名:メチルシリケート51)の混合(分散)温度を25℃にした以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
比較例4.
シリカフィラーの含有量が13.0重量%になるようにシリカフィラーを添加分散させた以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
比較例5.
シリカフィラーを無添加とした以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表2に示した。
比較例6.
表3に示す重量%の組成になるように、メトキシ基含有シラン変性アクリル系樹脂とシリカフィラーとを混合したものをプレ分散の組成とし、メトキシ基含有シラン変性アクリル系樹脂とメトキシラン部分縮合物を加え最終組成とした以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表3に示した。
比較例7.
表3に示す重量%の組成になるように添加し、プレ分散を実施しない以外は、実施例2と同じ処方にて処理を行い、フィラー分散アクリル系樹脂組成物由来の硬化膜で表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を得た。得られた表面が被覆されたポリカーボネート樹脂成形体を評価した結果を表3に示した。
本発明のフィラー分散アクリル系樹脂組成物およびその製造方法、該組成物で表面を被覆された透明樹脂成形体は、透明樹脂成形体を用いる用途であれば、いかなる用途でも有効であるが、例えば摩擦の多い環境下で使用される樹脂成形体に供することができ、特に自動車用プラスチックガラスに供することができる。
本発明におけるフィラー分散アクリル系樹脂組成物の状態を模式化して説明する図である。
符号の説明
10 シリカフィラー、12 メトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂、14 メトキシシラン部分縮合物、20 フィラー分散アクリル系樹脂組成物。

Claims (4)

  1. 被覆硬化膜厚10μmにおいて測定したヘイズ値が1.5%以下となる条件にて、
    (A)カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)と、グリシドールとメトキシシラン部分縮合物との脱メタノール反応によって得られるグリシジルエーテル基含有メトキシシラン部分縮合物(2)とを、エポキシ開環エステル化反応させてなるメトキシ基含有シラン変性アクリル樹脂と、(B)メトキシシラン部分縮合物と、(C)溶媒とからなる混合液中に、平均粒径が50nm以下のシリカフィラーを全固形分の1〜10重量%になるよう添加し、分散温度が30℃〜80℃の範囲で、混合分散時間が60分〜120分の範囲で、かつ、遊星ボールミルを用いて公転の回転数800rpmの条件にて分散させることを特徴とするフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法。
  2. 請求項1に記載のフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法において、
    前記カルボキシ基含有アクリル系ポリマー(1)が、炭素数1〜2のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、炭素数3〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、エチレン性不飽和カルボン酸とを含有するモノマー成分の共重合体であることを特徴とするフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法
  3. 請求項1または請求項2に記載のフィラー分散アクリル系樹脂組成物の製造方法で得られるフィラー分散アクリル系樹脂組成物の硬化膜により表面が被覆されていることを特徴とする透明樹脂成形体。
  4. 請求項に記載の透明樹脂成形体において、
    前記透明樹脂成形体が、自動車用プラスチックガラスであることを特徴とする透明樹脂成形体。
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