以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
(展開構造体の概略構成)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る展開構造体の概略構成について説明する。
図1は第1の実施の形態に係る展開構造体の展開前の外観を示す斜視図である。図2は同じ展開構造体を表側(展開側)から見た平面図である。図3は同じ展開構造体の分解斜視図である。なお、図1及び図2では天板を省略したが、図3では天板を備える形態を例示する。
図1〜図3に示すように、展開構造体10は、複数の部材から組み立てられた円盤状の構造体であり、表側から見たときの形状は略円形である。本実施の形態では、展開構造体10の展開前の大きさは、厚さが数センチメートル(例えば2cm〜4cm)程度であり、外径が十数センチメートル(例えば10cm〜15cm)程度である。なお、展開構造体の大きさは、用途に応じて適宜変更することができる。
展開構造体10は、第2展開部としての上部プレート12、第1展開部としての下部プレート14、下部プレート14を回転させる回転プレート16、回転プレート16を駆動するモータ20、及び上部プレート12をモータ20に固定するリング状のモータブラケット18を備えている。回転プレート16及びモータ20が、展開駆動部として機能する。
上部プレート12及び下部プレート14の各々は、後述する通り、複数の連結梁を有している。上部プレート12と下部プレート14とは、互いの連結梁が織物のように交差すると共に、互いの連結梁の端部が繋がることで一体化されている。即ち、上部プレート12と下部プレート14とで、1つの展開部材が構成されている。
図4は下部プレートを裏側から見た平面図である。図5は展開構造体を展開させたときに形成される立体交差構造を示す斜視図である。上記の展開構造体10では、モータ20の駆動により回転プレート16が回転する。回転プレート16に取り付けられた下部プレート14は、回転プレート16と一緒に回転する。図4に示すように、固定配置された上部プレート12に対して、下部プレート14が矢印A方向に回転する。下部プレート14の回転により、上部プレート12と下部プレート14とが、図5に示すように、平面から立体に展開して、複数の梁が交差する立体交差構造11を形成する。図5においても、矢印Aは下部プレート14の回転方向を表す。回転方向Aは、裏側から見ると左回りだが、表側(展開側)から見ると右回りである。以下、本実施の形態では、単に「回転方向A」又は「右回り」という場合がある。
衝突等により、この立体交差構造11に表側から衝撃が加わると、複数の梁の各々が弾塑性変形して、衝突エネルギーを吸収する。展開後の構造は立体交差構造11であるため、真正面からの衝突だけではなく、斜め方向からの衝突においても、有効に衝突エネルギーを吸収することができる。図5に示すように、展開構造体10に天板13を設けることで、天板13によって衝撃を均一に受け止めることができる。これにより、衝突エネルギーを更に効率よく吸収することができる。
上部プレート12は、円筒部22、円筒部22の下端部に形成された所定幅のフランジ部24、及び円筒部22の上端部に形成された所定幅のフランジ部26を備えている。フランジ部24及びフランジ部26は、平面視が円環状、即ち、リング状である。フランジ部24は円筒部22の半径方向外側に延在し、フランジ部26は円筒部22の半径方向内側に延在している。フランジ部24には、複数のネジ孔34が設けられている。これら円筒部22、フランジ部24及びフランジ部26が、第2展開部の第2支持枠を構成する。なお、以下では、便宜上、フランジ部26を第2支持枠として説明する場合がある。
上部プレート12には、フランジ部26と後述する下部プレート14の連結梁40とを連結する複数の連結梁30が設けられている。複数の連結梁30の各々は、一端がフランジ部26と連結され、他端が連結梁40と連結されている。連結梁40と連結される連結梁30の端部が、連結部28である。天板13が設けられる場合には、連結部28は天板13とも連結される。
下部プレート14は、平板状に形成されている。下部プレート14は、その外径が円筒部22の内径より小さいリング状の支持枠36、及び支持枠36と上部プレート12の連結梁30とを連結する複数の連結梁40、及び支持枠36を回転プレート16に取り付けるための複数の係止部42を備えている。複数の連結梁40の各々は、一端が支持枠36と連結され、他端が連結梁30と連結されている。上述した通り、連結梁40と連結される連結梁30の端部が連結部28である。複数の係止部42は、支持枠36の内周側に、内側に突き出すように設けられる共に、一定の間隔で設けられている。係止部42の各々には、貫通孔44が設けられている。
本実施の形態では、上部プレート12の円筒部22、フランジ部24、フランジ部26、連結部28及び連結梁30と、下部プレート14の支持枠36、連結梁40、及び係止部42とが一体に形成されて、1つの展開部材が構成されている。天板13が設けられる場合には、更に天板13も一体に形成されて、1つの展開部材が構成される。なお、連結梁30と連結梁40との交差関係については後述する。
回転プレート16は、下部プレート14の支持枠36の外径より小径のディスク状の円板部48を備えている。円板部48の外周付近には、下部プレート14の複数の係止部42の各々に設けられた複数の貫通孔44に対応する位置に、複数の貫通孔58が設けられている。下部プレート14が回転プレート16に重ねられ、段部を有する回転伝達ピン78が、貫通孔58及び貫通孔44を挿通するように、円板部48の裏面側から差し込まれている。下部プレート14は、回転伝達ピン78により回転プレート16にピン留めされ、回転プレート16と共に回転可能とされている。
回転プレート16の円板部48の裏面側には、円筒状の軸受け部50が設けられている。軸受け部50は、円板部48と同軸の貫通孔52を備えている。モータ20は、円柱状のモータ支持体68と、回転軸71とを備えている。モータ20としては、展開構造体10のコンパクト化を図る上で、超音波モータやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)技術を用いた小型モータを用いることが好ましい。
軸受け部50の貫通孔52には、モータ20の回転軸71が嵌め込まれている。軸受け部50の側壁には、貫通孔54が設けられている。この貫通孔54には、軸固定ピン56が差し込まれている。軸固定ピン56により軸受け部50の軸方向の回転が抑止され、回転プレート16がモータ20により回転可能とされている。
モータブラケット18は、その外径が上部プレート12のフランジ部24の外径と略同じ大きさのリング状の板状体である。モータブラケット18の中央部には、その内径が回転プレート16の外径より大きい開口部60が、同軸状に設けられている。モータブラケット18の中央部分には、複数のネジ孔64が設けられている。また、モータブラケット18の外周付近には、上部プレート12のフランジ部24に設けられた複数のネジ孔34に対応する位置に、複数のネジ孔66が設けられている。
円柱状のモータ支持体68の上端部には、半径方向外側に延在するフランジ部80が設けられている。フランジ部80は、モータ支持体68を表側から見たときに、平面視が略矩形状となるように形成されている。フランジ部80には、モータブラケット18に設けられた複数のネジ孔64に対応する位置に、複数のネジ孔73が設けられている。
モータブラケット18は、モータ20の回転軸71と同軸となるようにモータ20上に載置されている。段部を有する締結ネジ76が、フランジ部80のネジ孔73及びモータブラケット18のネジ孔64を挿通するように、フランジ部80の裏面側から差し込まれている。この締結ネジ76により、モータブラケット18がモータ20上にねじ留めされている。回転プレート16は、モータブラケット18の開口部60内で回転するように、モータ20に取り付けられている。
また、モータブラケット18上には、モータブラケット18の外周端と上部プレート12の外周端とが揃えられて、一体化された上部プレート12及び下部プレート14が載置されている。天板13を有する場合には、天板13も共に載置されている。段部を有する締結ネジ74が、上部プレート12のフランジ部24のネジ孔34及びモータブラケット18のネジ孔66を挿通するように、フランジ部24の表面側から差し込まれている。この締結ネジ74により、上部プレート12がモータブラケット18上にねじ留めされている。上部プレート12とモータブラケット18との間には、上部プレート12の円筒部22の高さに応じたキャビティが形成されている。円筒部22の高さは、下部プレート14の支持枠36の最大厚さよりも僅かに大きい程度である。下部プレート14は、このキャビティ内に回転可能に収納されている。
(展開部材の詳細構成)
ここで、図1〜図5を参照して、上部プレート12及び下部プレート14からなる展開部材の構造について更に詳しく説明する。上述した通り、上部プレート12は、円筒部22、フランジ部24、フランジ部26、連結部28及び連結梁30を備えている。下部プレート14は、支持枠36、連結梁40、及び係止部42を備えている。これら展開部材の各部は、金属や樹脂など弾塑性を有する材料(弾塑性体)で一体に形成されている。
弾塑性を有する樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)などの汎用樹脂や、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。また、繊維強化された複合材料や、金属と繊維材料と樹脂との結合構造体なども、材料として好適である。
また、衝突時に梁がすぐ破断したのでは、衝撃の緩和が不十分となり、破断面が露出する等の不具合を生じる。従って、破断しやすい材料を使用する場合、破断しやすい箇所がある場合には、表面に補強布や補強テープを貼り付けるなど、上部プレート12と下部プレート14の各々を補強部材により補強することが好ましい。補強により脆化や破断を回避しながら、弾塑性変形によって衝突エネルギーを有効に吸収することができる。
展開部材の各部を、弾塑性体で一体に(即ち、複数の部品が組み合わされているアッセンブリ状態の部品として)形成する方法としては、三次元造形装置を用いる方法が好適である。三次元造形装置は、造形対象物を平行な複数の面で切断した各断面毎に樹脂を順次積層することよって、積層造形を行い、三次元造形物を製造する装置である。造形方法としては、一般に、光造形や粉末造形が用いられる。
近時、三次元CAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援による設計)で得られた三次元形状モデルのデータから、積層造形(モデリング)を簡単に行える「3Dプリンタ」と称される三次元造形装置が利用されている。この3Dプリンタでは、樹脂を液体又は流体状態で液滴吐出方式によって吐出して硬化させる等し、硬化させた層を積層することによって、任意の造形物を製造することができる。
この手法でモデリングを行う場合には、種々の弾塑性材料を用いことができる。また、複数種類の異なる弾塑性材料を用いて造形を行うことができる。例えば、支持枠には剛性の高い樹脂材料を用い、連結梁には弾性の高い樹脂材料を用いる等、各部分に要求される特性に応じて、部分毎に好適な弾塑性材料を用いることができる。即ち、展開構造のマルチマテリアル化が可能となる。
例えば、三次元CADソフトウエア上で設計した展開部材の三次元形状モデルの形状データから、複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを取得する。光造形や粉末造形等でモデリングを行う場合には、STL形式のデータファイルを取得する。STL(Stadard Triangulation Language:標準三角パッチ言語)は、ラピッドプロトタイピング(RP)の標準ファイル形式である。このSTL形式のデータファイルを、3Dプリンタ等の三次元造形装置に入力して、展開部材を積層造形する。なお、三次元CADソフトウエアとしては、ダッソー・システムズ社製の「キャティア(CATIA)」等の汎用ソフトウエアを使用することができる。
展開部材、即ち、上部プレート12と下部プレート14とは、連結梁30と連結梁40とが織物のように交差すると共に、連結梁30と連結梁40の端部同士が繋がることで一体化されている。上部プレート12と下部プレート14とを、別々に作製することもできる。この場合は、竹篭を編むように連結梁30と連結梁40とを編み合わせた後に、連結梁30と連結梁40の端部を接合、接着等により連結する必要がある。
一方、上記の三次元造形装置によれば、織物のような複雑な構造の展開部材を、アッセンブリ状態の1部品として1工程で造形することができる。これにより、展開部材の作製工数が大幅に削減でき、展開部材の作製工程が顕著に簡略化される。また、上部プレート12と下部プレート14の各々を1枚の板状体から作製する場合と比べると、連結梁の端部が支持枠に重なるように連結梁を延在させることができる等、展開部材における設計の自由度が顕著に向上する。即ち、三次元造形により一体成形することで、連結梁を長くして展開構造体の展開時のストロークを大きくし、衝突エネルギーの吸収機能を向上させることができる。
また、織物のような構造の展開部材とすることで、展開構造体やこれを展開させた立体交差構造に、衝突エネルギーの吸収機能以外の任意の機能を与えることができる。例えば、図5に示す立体交差構造11は、天板13が無い状態で、籠状の構造体内に物体を保持することもできる。
(上部プレート)
図2に示すように、本実施の形態では、上部プレート12は、展開構造として、リング状のフランジ部26と、6本の連結梁30とを備えている。フランジ部26と連結梁30の厚さは、同じでもよいが、異なっていても良い。例えば、弾塑性変形を容易化するためには、連結梁30をフランジ部26より薄く形成することが好ましい。また、上述した通り、連結梁30をフランジ部26より弾塑性変形が容易な材料で構成することもできる。本実施の形態では、フランジ部26と連結梁30とは、同じ材料を用いて同じ厚さに一体形成されている。
例えば、展開構造体10の外径、即ち、上部プレート12の外径が約13cmとすると、フランジ部26の幅は約1cm程度であり、フランジ部26の厚さは1〜2mm程度である。また、連結梁30の幅は約0.8cm程度であり、連結梁30の厚さは1〜2mm程度である。なお、これらの値は一例であり、各部の長さ、幅、厚さ等は、使用する材料や目的とする衝撃吸収力など、種々の因子を考慮して適宜設計される。
6本の連結梁30はフランジ部26に対し等間隔で連結されている。連結梁30とフランジ部26との連結部が、繋ぎ部27である。6個の繋ぎ部27は、リング状のフランジ部26の中心点に対し、対称に配置されている。6本の連結梁30の各々は、一端が繋ぎ部27でフランジ部26に連結されると共に、他端がフランジ部26の円周の一部分に対応する弦に沿って、下部プレート14の回転方向A(右回り)と逆周りの方向に延びている。
本実施の形態では、6本の連結梁30の各々は、連結梁30がフランジ部26に連結される点とリング状のフランジ部26の中心点とを通る直線(以下、「対称軸」という。)に対し60°の角度を成すように、左回りの方向に延びている(以下、「延在方向」という。)。対称軸と延在方向とが成す角度は、360°を連結梁40の本数で割った角度である。対称軸と延在方向とが成す角度は、梁の本数に応じ、各梁が受け止める荷重が等しく分配されるように算出されている。本実施の形態では、下部プレート14は6本の連結梁40を備えているので、対称軸と延在方向とが成す角度は60°となる。なお、連結梁30がフランジ部26に連結される点とは、繋ぎ部27において連結梁30が連結されたフランジ部26の内周の円弧の中央に在る点である。
また、6本の連結梁30の各々は、他端が連結梁40に連結されている。連結梁40と連結される端部が連結部28であり、6本の連結梁30に対応して6個の連結部28が存在する。6個の連結部28は、繋ぎ部27と同様に、リング状のフランジ部26の中心点に対し、対称に配置されている。6本の連結梁30の各々は、他端がフランジ部26の内周の外側まで延在している。その結果、6個の連結部28の各々は、フランジ部26上に重ねられている。
上部プレート12においては、連結梁30の長さが最長となるように設計することが好ましい。連結梁30が長くなるほど、展開時のストローク(連結部28が展開方向に移動する距離)が大きくなる。他端がフランジ部26からはみ出さない範囲で、連結梁30の長さが最長となるように設計することがより好ましい。本実施の形態では、連結梁30の長さはフランジ部26の外周より内側に納まる範囲で最長となるように設計されている。連結梁30の他端はフランジ部26の内周の外側まで延在し、端部である連結部28はフランジ部26上に重ねられている。
(下部プレート)
図4に示すように、本実施の形態では、下部プレート14は、展開構造として、リング状の支持枠36と、6本の連結梁40と、3個の係止部42とを備えている。支持枠36、連結梁40及び係止部42の厚さは、同じでもよいが、異なっていても良い。例えば、弾塑性変形を容易化するためには、連結梁40を支持枠36や係止部42より薄く形成することが好ましい。また、上述した通り、連結梁40を支持枠36や係止部42より弾塑性変形が容易な材料で構成することもできる。
また、下部プレート14を回転プレート16にしっかり取り付けるためには、係止部42を、支持枠36と同じ厚さで形成することが好ましい。本実施の形態では、下部プレート14の裏側は面一に形成され、下部プレート14の表面側では、連結梁40の高さが、支持枠36及び係止部42より低くなるように形成されている。即ち、連結梁40が、支持枠36及び係止部42より薄く形成されている。また、支持枠36、連結梁40及び係止部42は、同じ材料を用いて一体形成されている。更に、連結梁40は、連結梁30と同じ幅で且つ同じ厚さとされている。
例えば、展開構造体10の外径、即ち、上部プレート12の外径が約13cmとすると、支持枠36の幅は約2cm程度であり、支持枠36及び係止部42の厚さは3〜5mm程度である。また、連結梁40の幅は約0.8cm程度であり、連結梁40の厚さは1〜2mm程度である。なお、これらの値は一例であり、各部の長さ、幅、厚さ等は、使用する材料や目的とする衝撃吸収力など、種々の因子を考慮して適宜設計される。
6本の連結梁40は支持枠36に対し等間隔で連結されている。連結梁40と支持枠36との連結部が、繋ぎ部43である。6個の繋ぎ部43は、リング状の支持枠36の中心点に対し、対称に配置されている。6本の連結梁40の各々は、一端が繋ぎ部43で支持枠36に連結されると共に、他端が支持枠36の円周の一部分に対応する弦に沿って、下部プレート14の回転方向A(右回り)に延びている。3個の係止部42は、連結梁40との干渉を生じないように、隣接する2つの繋ぎ部43の間に配置されている。
本実施の形態では、6本の連結梁40の各々は、連結梁40が支持枠36に連結される点とリング状の支持枠36の中心点とを通る直線(対称軸)に対し60°の角度を成すように、表側から見て右回りの方向に延びている(延在方向)。対称軸と延在方向とが成す角度は、上部プレート12の場合と同様に算出される。本実施の形態では、対称軸と延在方向とが成す角度は60°となる。また、連結点は、上部プレート12の場合と同様に定義される。即ち、繋ぎ部43において連結梁40が連結された支持枠36の内周の円弧の中央に在る点が連結点である。
また、6本の連結梁40の各々は、他端が連結梁30に連結されている。連結梁40と連結される連結梁30の端部が連結部28である。6本の連結梁40の各々は、他端が支持枠36の内周の外側まで延在しており、一部はフランジ部26の内周の外側まで到達している。その結果、6本の連結梁40の各々の他端の一部は、連結される連結部28と共に、フランジ部26上に重ねられている。また、上部プレート12と同様に、下部プレート14においても、連結梁40の長さが最長となるように設計することが好ましい。本実施の形態では、連結梁30の端部である連結部28と連結梁40の他端とが連結されるため、連結梁40の長さは最長となる。
(連結梁の交差状態)
図1及び図2に示すように、上部プレート12の6本の連結梁30の各々は、左回りの方向に延びている。この6本の連結梁30の各々は、上記左回りの方向に隣接する連結梁30上に重なるように配置されている。また、下部プレート14の6本の連結梁40の各々は、右回りの方向に延びている。この6本の連結梁40の各々は、上記右回りの方向に隣接する連結梁40上に重なるように配置されている。
更に、下部プレート14の6本の連結梁40の各々は、連結する連結梁30の上記左回りの方向に隣接する連結梁30上に重なるように配置されている。即ち、下部プレート14の6本の連結梁40の各々は、連結梁30上に重なるように交差する。例えば、図4に示すように、裏側から見ると、連結梁40は斜線を付した連結梁30上に重なるように交差していることが確認できる。
上述した通り、上部プレート12の6本の連結梁30と下部プレート14の6本の連結梁40とが、織物のように組み合わされている。これにより、上部プレート12と下部プレート14とが一体化されている。6本の連結梁40の各々は、連結梁30上に重なるように配置されることで、連結部28と連結される端部が上側(展開側)に持ち上がり、側方から見ると斜めに配置されているように見える。
上記の展開部材を展開した時に、連結梁30と連結梁40とが互いに干渉しないように(即ち、移動の邪魔にならないように)、連結梁30及び連結梁40が配置されている。これらの干渉が生じると、展開構造体10の展開が阻害される。上記3Dプリンタ等の三次元造形装置を用いて展開部材を作製する場合には、三次元CAD上で展開部材を設計する際に、展開動作のシミュレーションを行い、干渉が生じないように三次元形状モデルを設計することができる。また、三次元CADで得られた三次元形状モデルのデータから実際にモデリングを行って、試作モデル上で干渉が生じないことを確認することもできる。
(展開構造体の展開動作)
次に、上記の展開構造体10の展開動作について説明する。
図5は展開構造体が展開した状態を示す斜視図である。図5に示すように、衝突等が検知されると、モータ20の駆動により回転プレート16が、矢印A方向(右回り)に回転する。回転プレート16が回転すると、回転伝達ピン78(図3参照)により回転プレート16に取り付けられた下部プレート14の支持枠36が、回転プレート16と共に矢印A方向に回転する。
上部プレート12と下部プレート14とが一体化された状態では、上部プレート12の連結梁30が延びる方向(左回り)は、下部プレート14の連結梁40が延びる方向(右回り)とは、逆向きである。上部プレート12の連結梁30は、その端部にある連結部28により、下部プレート14の連結梁40の他端と連結されている。これにより、連結梁30の端部(即ち、連結部28)は、連結梁40と同じ方向にしか回転できないように規制されている。このため、下部プレート14の支持枠36が右回りに回転するに従い、連結梁30及び連結梁40の両方に圧縮荷重が作用して、回転が規制された連結部28がフランジ部26から離れるように移動し、上部プレート12及び下部プレート14で構成された展開部材が平面から立体に展開する。
ここで展開時の各部の変化を詳細に説明する。上部プレート12では、展開に伴って、弾塑性変形によって連結梁30の両端部が撓み始める。繋ぎ部27の近傍と連結部28の近傍とが、弾塑性変形により湾曲する。特に、展開が進むと、連結梁30の連結部28近傍が、折れ曲がるように顕著に湾曲する。同様に、下部プレート14では、展開に伴って、弾塑性変形によって連結梁40の両端部が撓み始める。繋ぎ部43の近傍と連結部28の近傍とが、弾塑性変形により湾曲する。特に、展開が進むと、連結梁40の連結部28近傍が、折れ曲がるように顕著に湾曲する。
また、展開原理を簡単に説明する。上部プレート12と下部プレート14とからなる展開部材が、回転プレート16から伝達された回転力を、連結梁30と連結梁40とを連結する連結部28を押し上げる上方向の力に変換し、連結部28によって連結梁30と連結梁40とが引っ張り上げられて、展開構造体10が展開する。回転方向は、変形初期において連結梁30と連結梁40とに圧縮荷重が加わるように決定される。即ち、連結部28に結合された連結梁30と連結梁40とは、圧縮荷重を緩和させる結果として、面外方向(構造物の展開方向)に変形する。天板13が設けられている場合には、6個の連結部28によって、天板13が押し上げられる。ここで、モータの「回転運動」が、連結部28(又は天板13)の展開方向への移動という「直線運動」に変換される。
電源を遮断する等してモータ20を停止すると、展開構造体10の展開が完了して、複数の梁が交差する立体交差構造11(展開構造)が形成される。本実施の形態では、6本の連結梁30と6本の連結梁40の合計12本の梁を有する立体交差構造11が形成される。例えば、図5に示すように、連結部28を限界位置まで移動させて、展開構造体10の展開を完了させる。又は、連結部28を途中まで移動させて、展開構造体10の展開を完了させることもできる。展開時のストロークが大きいほど衝撃吸収力は大きくなる。このように、連結部28の移動距離に応じて、立体交差構造11の衝撃吸収力を調節することができる。
モータ20の停止後も、モータ20の保持力により、立体交差構造11が保持される。例えば、モータ20として超音波モータを用いた場合には、電源を遮断しても摩擦力により立体交差構造11が保持される。しかしながら、連結部28は、連結梁30によりフランジ部26に連結されると共に、連結梁40により支持枠36に連結されている。従って、連結部28が各々のフランジ部26から離れるに従い、連結部28を引き戻す方向、即ち、回転プレート16を逆回転させる方向に力が働くことになる。
従って、モータ20の保持力だけでは、展開構造を保持することが困難な場合もある。このような場合には、回転プレート16の外周部とモータブラケット18との間に、ラチェット機構等、回転方向を一方向に制限する回転阻止手段を設けてもよい。回転プレート16が所定角度まで回転した位置で、ラチェットをロックして展開構造体10の展開を完了し、展開構造を固定することができる。また、ラチェット機構は、回転プレート16とモータ支持体68の上端部(又はフランジ部80)との間に、設けることもできる(図3参照)。
<第2の実施の形態>
(展開構造体の概略構成)
本発明の第2の実施の形態に係る展開構造体は、展開部材の構造が異なる以外は第1の実施の形態に係る展開構造体と同様の構成であるため、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。また、展開構造体の各部についても、対応する構成部分には符号にAを付して説明を省略し、相違点のみ説明する。
図6は第2の実施の形態に係る展開構造体の展開前の外観を示す斜視図である。図7は同じ展開構造体を表側(展開側)から見た平面図である。図8は下部プレートを裏側から見た平面図である。図9は展開構造体を展開させたときに形成される立体交差構造を示す斜視図である。なお、図6及び図7では天板を省略したが、図9では天板を備える形態を例示する。
図6〜図9に示すように、展開構造体10Aは、第1の実施の形態に係る展開構造体と同様に、第2展開部としての上部プレート12Aと、第1展開部としての下部プレート14Aとを備えており、上部プレート12Aと下部プレート14Aとで1つの展開部材が構成されている。一方、本実施の形態に係る展開構造体10Aは、上部プレート12Aの連結梁30Aの本数と、下部プレート14Aの連結梁40Aの本数とが異なる点で、第1の実施の形態に係る展開構造体10とは相違している。
上記の展開構造体10Aでは、下部プレート14Aは、モータ20の駆動により、回転プレート16と一緒に矢印A方向に回転する。下部プレート14Aの回転により、上部プレート12A及び下部プレート14Aが、平面から立体に展開して、複数の梁が交差する立体交差構造11Aを形成する。衝突等により、この立体交差構造11Aに表側から衝撃が加わると、複数の梁の各々が弾塑性変形して、衝突エネルギーを吸収する。また、展開構造体10Aに天板13Aを設けた場合には、天板13Aによって衝撃を均一に受け止めることができる。これにより、衝突エネルギーを更に効率よく吸収することができる。
上部プレート12Aは、円筒部22A、リング状のフランジ部24A、リング状のフランジ部26A、及び複数の連結梁30Aを備えている。複数の連結梁30Aの各々は、一端がフランジ部26Aと連結され、他端が下部プレート14Aの連結梁40Aと連結されている。連結梁40Aと連結される端部が、連結部28Aである。
複数の連結梁30Aの各々には、連結部28Aで分岐した分岐梁31Aが設けられている。複数の分岐梁31Aの各々は、一端が連結梁40Aの端部と連結されている。分岐梁31Aと連結される連結梁40Aの端部が、連結部41Aである。天板13Aが設けられる場合には、連結部28A及び連結部41Aは、天板13Aとも連結される。
下部プレート14Aは、支持枠36A、複数の連結梁40A、及び複数の係止部42Aを備えている。複数の連結梁40Aの半分は、一端が支持枠36Aと連結され、他端が連結梁30Aの連結部28と連結されている。複数の連結梁40Aの他の半分は、一端が支持枠36Aと連結され、他端が連結梁30Aから分岐した分岐梁31Aと連結されている。複数の係止部42Aは、支持枠36Aの内周側に、内側に突き出すように設けられる共に、一定の間隔で設けられている。係止部42Aの各々には、貫通孔44Aが設けられている。
本実施の形態では、上部プレート12Aの円筒部22A、フランジ部24A、フランジ部26A、連結部28A、連結梁30A、及び分岐梁31Aと、下部プレート14Aの支持枠36A、連結梁40A、連結部41A、及び係止部42Aとが一体に形成されて、1つの展開部材が構成されている。天板13Aが設けられる場合には、更に天板13Aも一体に形成されて、1つの展開部材が構成される。
(展開部材の詳細構成)
ここで、図6〜図9を参照して、上部プレート12A及び下部プレート14Aからなる展開部材の構造について更に詳しく説明する。なお、展開部材の各部は、金属や樹脂など弾塑性を有する材料(弾塑性体)で一体に形成されている点、三次元造形装置を用いて弾塑性体で一体に形成することが可能である点は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
(上部プレート)
図7に示すように、本実施の形態では、上部プレート12Aは、展開構造として、リング状のフランジ部26Aと、3本の連結梁30Aと、3本の連結梁30Aから分岐した3本の分岐梁31Aとを備えている。3本の連結梁30Aはフランジ部26Aに対し等間隔で連結されている。連結梁30Aとフランジ部26Aとの連結部が、繋ぎ部27Aである。3個の繋ぎ部27Aは、リング状のフランジ部26Aの中心点に対し、対称に配置されている。
3本の連結梁30Aの各々は、一端が繋ぎ部27Aでフランジ部26Aに連結されると共に、他端がフランジ部26Aの円周の一部分に対応する弦に沿って、下部プレート14Aの回転方向A(右回り)と逆周りの方向に延びている。本実施の形態では、3本の連結梁30Aの各々は、連結梁30Aがフランジ部26Aに連結される点とリング状のフランジ部26Aの中心点とを通る直線(対称軸)に対し60°の角度を成すように、左回りの方向に延びている(延在方向)。
3本の連結梁30Aの各々は、他端が連結梁40Aに連結されている。連結梁40Aと連結される端部が連結部28Aであり、3本の連結梁30Aに対応して3個の連結部28Aが存在する。3本の連結梁30Aの各々は、他端がフランジ部26Aの内周の外側まで延在している。その結果、3個の連結部28Aの各々は、フランジ部26A上に重ねられている。
また、3本の分岐梁31Aの各々は、連結部28Aと共にフランジ部26A上に重ねられている。3本の分岐梁31Aの各々は、フランジ部26Aの円周に沿って回転方向A(右回り)に延びて、その一端が連結梁40Aの端部である連結部41Aと連結されている。3本の分岐梁31Aに対応して3個の連結部41Aが存在する。3個の連結部28A及び3個の連結部41Aの6個の連結部は、繋ぎ部27Aと同様に、リング状のフランジ部26Aの中心点に対し、対称に配置されている。
(下部プレート)
図8に示すように、本実施の形態では、下部プレート14Aは、展開構造として、リング状の支持枠36Aと、6本の連結梁40Aと、3個の係止部42Aとを備えている。6本の連結梁40Aの内、半分の3本の連結梁40Aは、その端部に連結部41Aが設けられ、他の3本の連結梁40Aより長くなっている以外は、第1の実施の形態の下部プレート14Aと同じ構成である。
6本の連結梁40Aは支持枠36Aに対し等間隔で連結されている。連結梁40Aと支持枠36Aとの連結部が、繋ぎ部43Aである。分岐梁31Aに連結される連結梁40Aの端部が、連結部41Aである。3本の分岐梁31Aに対応して、3個の連結部41Aが存在する。3個の連結部41Aは、リング状の支持枠36Aの中心点に対し、対称に配置されている。
6本の連結梁40Aの各々は、他端が支持枠36Aの内周の外側まで延在している。また、3本の連結梁40Aの他端の一部は、フランジ部26Aの内周の外側まで到達し、フランジ部26A上に重ねられている。また、3個の連結部41A(即ち、連結梁40Aの端部)の各々は、フランジ部26Aの内周の外側まで到達し、フランジ部26A上に重ねられている。
(連結梁の交差状態)
図6〜図9に示すように、上部プレート12Aの3本の連結梁30Aの各々は、左回りの方向に延びている。この3本の連結梁30Aの各々は、隣接する連結梁30Aと重ならないように離間して配置されている。また、下部プレート14Aの6本の連結梁40Aの各々は、右回りの方向に延びている。この6本の連結梁40Aの各々は、上記右回りの方向に隣接する連結梁40A上に重なるように配置されている。
更に、端部に連結部41Aを備えた3本の連結梁40Aの各々は、連結部41Aで連結する当該連結梁30上に重なるように配置されている。即ち、下部プレート14Aの3本の連結梁40Aの各々は、連結梁30A上に重なるように交差する。例えば、図8に示すように、裏側から見ると、連結梁40Aは斜線を付した連結梁30A上に重なるように交差していることが確認できる。
上述した通り、上部プレート12Aの3本の連結梁30Aと下部プレート14Aの6本の連結梁40Aとが織物のように組み合わされて、上部プレート12Aと下部プレート14Aとが一体化されている。なお、上記の展開部材を展開した時に、連結梁30Aと連結梁40Aとが互いに干渉して展開を阻害しないように、連結梁30A及び連結梁40Aの配置が設計されている。
(展開構造体の展開動作)
次に、上記の展開構造体10Aの展開動作について説明する。
図9は展開構造体が展開した状態を示す斜視図である。図9に示すように、衝突等が検知されると、モータ20の駆動により回転プレート16が矢印A方向(右回り)に回転し、下部プレート14Aの支持枠36Aが回転プレート16と共に右回りに回転する。
上部プレート12Aと下部プレート14Aとが一体化された状態では、連結梁30Aが延びる方向(左回り)は、連結梁40Aが延びる方向(右回り)とは逆向きである。連結梁30Aの端部(即ち、連結部28A)は、連結梁40Aと連結されており、連結梁40Aの端部(即ち、連結部41A)は、分岐梁31Aを介して連結梁30Aと連結されている。これにより、連結部28A及び連結部41Aは、連結梁40Aと同じ方向にしか回転できないように規制されている。
下部プレート14Aの支持枠36Aが右回りに回転するに従い、連結梁30A及び連結梁40Aの両方に圧縮荷重が作用して、回転が規制された連結部28A及び連結部41Aがフランジ部26Aから離れるように移動し、上部プレート12Aと下部プレート14Aとで構成された展開部材が平面から立体に展開する。上部プレート12A及び下部プレート14Aでは、展開に伴って、弾塑性変形によって連結梁の両端部が撓み始める。繋ぎ部の近傍と連結部の近傍とが、弾塑性変形により湾曲する。特に、展開が進むと、連結部の近傍の連結梁は、折れ曲がるように顕著に湾曲する。
展開原理も第1の実施の形態と同様である。上部プレート12A及び下部プレート14Aからなる展開部材が、回転プレート16から伝達された回転力を、連結梁30Aと連結梁40Aとを連結する連結部28A及び連結部41Aを押し上げる上方向の力に変換し、連結部28A及び連結部41Aによって連結梁30Aと連結梁40Aとが引っ張り上げられて、展開構造体10Aが展開する。天板13Aが設けられている場合には、3個の連結部28及び3個の連結部41Aによって、天板13Aが押し上げられる。ここで回転運動が、直線運動に変換される。
電源を遮断する等してモータ20を停止すると、展開構造体10Aの展開が完了して、複数の梁が交差する立体交差構造11A(展開構造)が形成される。本実施の形態では、3本の連結梁30Aと6本の連結梁40Aの合計9本の梁を有する立体交差構造11Aが形成される。
<第3の実施の形態>
(展開構造体の概略構成)
本発明の第3の実施の形態に係る展開構造体は、展開部材の構造が異なる以外は第1の実施の形態に係る展開構造体と同様の構成であるため、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。また、展開構造体の各部についても、対応する構成部分には符号にBを付して説明を省略し、相違点のみ説明する。
図10は第3の実施の形態に係る展開構造体の展開前の外観を示す斜視図である。図11は天板を省略して同じ展開構造体を表側(展開側)から見た平面図である。図12は同じ展開構造体を表側(展開側)から見た平面図である。図13は下部プレートを裏側から見た平面図である。図14は展開構造体を展開させたときに形成される立体交差構造を示す斜視図である。
図10〜図14に示すように、展開構造体10Bは、展開部材として、第2展開部としての上部プレート12Bと、第1展開部としての下部プレート14Bと、天板13Bとを備えている。上部プレート12Bと下部プレート14Bとは、互いの連結梁が織物のように交差すると共に、互いの連結梁の端部が天板13Bに繋がることで一体化されて、1つの展開部材が構成されている。このように本実施の形態に係る展開構造体10Bは、連結梁30Bと連結梁40Bとが天板13Bを介して間接的に連結されている点で、連結梁同士が直接的に連結される第1の実施の形態に係る展開構造体10及び第2の実施の形態に係る展開構造体10Aとは相違している。
上記の展開構造体10Bでは、下部プレート14Bは、モータ20の駆動により、回転プレート16と一緒に矢印B方向に回転する。下部プレート14Bの回転により、上部プレート12B、下部プレート14B、及び天板13Bが、平面から立体に展開して、複数の梁が交差する立体交差構造11Bを形成する。衝突等により、この立体交差構造11に表側(即ち、天板13の側)から衝撃が加わると、複数の梁の各々が弾塑性変形して、衝突エネルギーを吸収する。本実施の形態では、天板13Bを設けることで、天板13Bによって衝撃を均一に受け止めて、衝突エネルギーを効率よく吸収することができる。
上部プレート12Bは、円筒部22B、リング状のフランジ部24B、リング状のフランジ部26B、及び複数の連結梁30Bを備えている。複数の連結梁30Bの各々は、一端がフランジ部26Bと連結され、他端が天板13Bと連結されている。天板13Bと連結される端部が、連結部29Bである。
下部プレート14Bは、リング状の支持枠36B、複数の連結梁40B、及び複数の係止部45Bを備えている。複数の連結梁40Bの各々は、一端が支持枠36Bと連結され、他端が天板13Bと連結されている。天板13Bと連結される端部が、連結部38Bである。複数の係止部45Bの各々は、支持枠36Bの内周側に迫り出したアーチ状の突起部であり、支持枠36Bの内周に沿って一定の間隔で設けられている。係止部45Bの各々には、切り欠き47B及び貫通孔49Bが設けられている。
本実施の形態では、上部プレート12Bの円筒部22B、フランジ部24B、フランジ部26B、連結部29B、及び連結梁30Bと、下部プレート14Aの支持枠36B、連結梁40B、連結部38B、及び係止部45Bと、天板13Bとが一体に形成されて、1つの展開部材が構成されている。なお、連結梁30Bと連結梁40Bとの交差関係については後述する。
(展開部材の詳細構成)
ここで、図10〜図14を参照して、上部プレート12B、下部プレート14B、及び天板13Bからなる展開部材の構造について更に詳しく説明する。なお、展開部材の各部は、金属や樹脂など弾塑性を有する材料(弾塑性体)で一体に形成されている点、三次元造形装置を用いて弾塑性体で一体に形成することが可能である点は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
(上部プレート)
図11に示すように、本実施の形態では、上部プレート12Bは、展開構造として、リング状のフランジ部26Bと、3本の連結梁30Bとを備えている。3本の連結梁30Bはフランジ部26Bに対し等間隔で連結されている。連結梁30Bとフランジ部26Bとの連結部が、繋ぎ部27Bである。3個の繋ぎ部27Bは、リング状のフランジ部26Bの中心点に対し、対称に配置されている。また、天板13Bと連結される連結梁30Bの端部が、連結部29Bである。3本の連結梁30Bの各々に対応して、3個の連結部29Bが存在する。
3本の連結梁30Bの各々は、一端が繋ぎ部27Bでフランジ部26Bに連結されると共に、他端がフランジ部26Bの円周の一部分に対応する弦に沿って、下部プレート14Bの回転方向B(左回り)と逆周りの方向に延びている。本実施の形態では、3本の連結梁30Bの各々は、連結梁30Bがフランジ部26Bに連結される点とリング状のフランジ部26Bの中心点とを通る直線(対称軸)に対し30°の角度を成すように、右回りの方向に延びている(延在方向)。
対称軸と延在方向とが成す角度は、360°を連結梁30の本数で割った角度を180°から差し引き、得られた角度を更に二分した角度である。本実施の形態では、上部プレート12Bは3本の連結梁30Bを備えているので、対称軸と延在方向とが成す角度は30°となる。
上部プレート12Bにおいては、連結梁30Bの長さが最長となるように設計することが好ましい。連結梁30Bが長くなるほど、展開時のストロークが大きくなる。他端がフランジ部26Bからはみ出さない範囲で、連結梁30Bの長さが最長となるように設計することがより好ましい。本実施の形態では、連結梁30Bの長さはフランジ部26Bの外周より内側に納まる範囲で最長となるように設計されている。連結梁30Bはフランジ部26Bの内周の外側まで延在し、連結梁30Bの端部である連結部29Bはフランジ部26B上に重ねられている。
(下部プレート)
図13に示すように、本実施の形態では、下部プレート14Bは、展開構造として、リング状の支持枠36Bと、3本の連結梁40Bと、3個の係止部45Bとを備えている。3本の連結梁40Bは支持枠36Bに対し等間隔で連結されている。連結梁40Bと支持枠36Bとの連結部が、繋ぎ部43Bである。3個の繋ぎ部43Bは、リング状の支持枠36Bの中心点に対し、対称に配置されている。また、天板13Bと連結される連結梁40Bの端部が、連結部38Bである。3本の連結梁40Bの各々に対応して、3個の連結部38Bが存在する。
3本の連結梁40Bの各々は、一端が繋ぎ部43Bで支持枠36Bに連結されると共に、他端が支持枠36Bの円周の一部分に対応する弦に沿って、下部プレート14Bの回転方向B(左回り)と同じ方向に延びている。本実施の形態では、3本の連結梁40Bの各々は、連結梁40Bが支持枠36Bに連結される点とリング状の支持枠36Bの中心点とを通る直線(対称軸)に対し15°の角度を成すように、左回りの方向に延びている(延在方向)。
対称軸と延在方向とが成す角度は、梁の本数に応じ、各梁が受け止める荷重が等しく分配されるように算出されている。本実施の形態では、下部プレート14Bは3本の連結梁40Bを備えているので、対称軸と延在方向とが成す角度は15°となる。3個の係止部45Bの各々は、連結梁40Bとの干渉を生じないように、隣接する2つの繋ぎ部43Bの間に配置されている。
下部プレート14Bの連結梁40Bは、上部プレート12Bの場合と同様に、長さが最長となるように設計することが好ましい。本実施の形態では、連結梁40Bの長さはフランジ部26Bの外周より内側に納まる範囲で最長となるように設計されている。連結梁40Bは、連結梁30Bと同じ長さである。連結梁40Bはフランジ部26Bの内周の外側まで延在し、連結梁40Bの端部である連結部38Bはフランジ部26B上に重ねられている。
(連結梁の交差状態)
図10〜図14に示すように、上部プレート12Bの3本の連結梁30Bの各々は、右回りの方向に延びている。この3本の連結梁30Bの各々は、端部に在る連結部29Bが上記右回りの方向に隣接する連結梁30Bの繋ぎ部27Bに重なるように配置されている。また、下部プレート14Bの3本の連結梁40Bの各々は、左回りの方向に延びている。この3本の連結梁40Bの各々は、上記左回りの方向に隣接する連結梁40B上に重なるように配置されている。
また、一組の連結梁30Bと連結梁40Bとが互いに平行になるように配置されている。更に、3本の連結梁40Bの各々は、1本の連結梁30Bの下を通った後に、当該連結梁30Bの上記左回りの方向に隣接する連結梁30B上に重なるように配置されている。即ち、3本の連結梁40Bの各々は、連結梁30B上に重なるように交差する。
上述した通り、上部プレート12Bの3本の連結梁30Bと下部プレート14Bの3本の連結梁40Bとが織物のように組み合わされている。このように編み合わされた状態で、図12に示すように、3本の連結梁30Bに対応する3個の連結部29Bと、3本の連結梁40Bに対応する3個の連結部38Bとが、ディスク状の天板13Bの裏面に連結されている。
3個の連結部29Bと3個の連結部38Bとは、天板13Bの裏面のフランジ部26Bと対向する周辺領域に連結されている。このように、連結部29B及び連結部38Bの各々が天板13Bの裏面に固定されることで、3本の連結梁30Bと3本の連結梁40Bとが天板13Bを介して間接的に繋がって、上部プレート12B、下部プレート14B、及び天板13Bが一体化されている。なお、上記の展開部材を展開した時に、連結梁30Bと連結梁40Bとが互いに干渉して展開を阻害しないように、連結梁30B及び連結梁40Bの配置が設計されている。
(展開構造体の展開動作)
次に、上記の展開構造体10Bの展開動作について説明する。
図14は展開構造体が展開した状態を示す斜視図である。図14に示すように、衝突等が検知されると、モータ20の駆動により、回転プレート16が矢印B方向(左回り)に回転し、下部プレート14Bの支持枠36Bが回転プレート16と共に左回りに回転する。
上部プレート12B、下部プレート14B、及び天板13Bが一体化された状態では、連結梁30Bが延びる方向(右回り)は、連結梁40Bが延びる方向(左回り)とは逆向きである。連結梁30Bの端部(即ち、連結部29B)と連結梁40Bの端部(即ち、連結部38B)とは、同じ天板13Bに固定されている。これにより、連結部29Bと連結部38Bとは、同じ方向にしか回転できないように規制されている。
下部プレート14Bの支持枠36Bが左回りに回転するに従い、連結梁30B及び連結梁40Bの両方に圧縮荷重が作用して、回転が規制された連結部29Bと連結部38Bが天板13Bと共にフランジ部26Bから離れるように移動し、上部プレート12B、下部プレート14B、及び天板13Bで構成された展開部材が平面から立体に展開する。上部プレート12B及び下部プレート14Bでは、展開に伴って、弾塑性変形によって連結梁の両端部が撓み始める。繋ぎ部の近傍と連結部の近傍とが、弾塑性変形により湾曲する。特に、展開が進むと、連結部の近傍の連結梁は、折れ曲がるように顕著に湾曲する。
展開原理も第1の実施の形態と同様である。上部プレート12B、下部プレート14B及び天板13Bからなる展開部材が、回転プレート16から伝達された回転力を、連結梁30Bと連結梁40Bとを連結する連結部29B及び連結部38B(即ち、これらに連結された天板13B)を押し上げる上方向の力に変換し、天板13Bによって連結梁30Bと連結梁40Bとが引っ張り上げられて、展開構造体10Bが展開する。ここで回転運動が、直線運動に変換される。
電源を遮断する等してモータ20を停止すると、展開構造体10Bの展開が完了して、複数の梁が交差する立体交差構造11B(展開構造)が形成される。本実施の形態では、3本の連結梁30Bと3本の連結梁40Bの合計6本の梁を有する立体交差構造11Bが形成される。
<第4の実施の形態>
(展開構造体の概略構成)
本発明の第4の実施の形態に係る展開構造体は、展開部材の構造が異なる以外は第1の実施の形態に係る展開構造体と同様の構成であるため、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。また、展開構造体の各部についても、対応する構成部分には符号にCを付して説明を省略し、相違点のみ説明する。
図15は第4の実施の形態に係る展開構造体の展開前の外観を示す斜視図である。図16は天板を省略して同じ展開構造体を表側(展開側)から見た平面図である。図17は同じ展開構造体を表側(展開側)から見た平面図である。図18は下部プレートを裏側から見た平面図である。図19は展開構造体を展開させたときに形成される立体交差構造を示す斜視図である。
図15〜図19に示すように、展開構造体10Cは、展開部材として、第2展開部としての上部プレート12Cと、第1展開部としての下部プレート14Cと、天板13Cとを備えている。上部プレート12Cと下部プレート14Cとは、互いの連結梁が織物のように交差すると共に、互いの連結梁の端部が天板13Cに繋がることで一体化されて、1つの展開部材が構成されている。このように本実施の形態に係る展開構造体10Cは、連結梁30Cと連結梁40Cとが天板13Cを介して間接的に連結されている点で、連結梁同士が直接的に連結される第1の実施の形態に係る展開構造体10及び第2の実施の形態に係る展開構造体10Aとは相違している。
また、本実施の形態に係る展開構造体10Cは、連結梁40Cが連結梁30Cより短い点で、連結梁40Cが連結梁30Cと同じ長さの第3の実施の形態に係る展開構造体10Bとは相違している。更に、連結梁30及び連結梁40Cについて、展開時に湾曲する連結部の近傍と繋ぎ部の近傍とに切り込みを備える点でも、これを備えていない第3の実施の形態に係る展開構造体10Bとは相違している。
上記の展開構造体10Cでは、下部プレート14Cは、モータ20の駆動により、回転プレート16と一緒に矢印B方向に回転する。下部プレート14Cの回転により、上部プレート12C、下部プレート14C、及び天板13Cが、平面から立体に展開して、複数の梁が交差する立体交差構造11Cを形成する。衝突等により、この立体交差構造11Cに表側から衝撃が加わると、複数の梁の各々が弾塑性変形して、衝突エネルギーを吸収する。本実施の形態では、天板13Cを設けることで、天板13Cによって衝突を均一に受け止めて、衝突エネルギーを効率よく吸収することができる。
上部プレート12Cは、円筒部22C、リング状のフランジ部24C、リング状のフランジ部26C、及び複数の連結梁30Cを備えている。複数の連結梁30Cの各々は、一端がフランジ部26Cと連結され、他端が天板13Cと連結されている。天板13Cと連結される端部が、連結部29Cである。
下部プレート14Cは、リング状の支持枠36C、複数の連結梁40C、及び複数の係止部45Cを備えている。複数の連結梁40Cの各々は、一端が支持枠36Cと連結され、他端が天板13Cと連結されている。天板13Cと連結される端部が、連結部38Cである。複数の係止部45Cの各々は、支持枠36Cの内周側に迫り出したアーチ状の突起部であり、支持枠36Cの内周に沿って一定の間隔で設けられている。係止部45Cの各々には、切り欠き47C及び貫通孔49Cが設けられている。
本実施の形態では、上部プレート12Cの円筒部22C、フランジ部24C、フランジ部26C、連結部29C、及び連結梁30Cと、下部プレート14Cの支持枠36C、連結梁40C、連結部38C、及び係止部45Cと、天板13Cとが一体に形成されて、1つの展開部材が構成されている。なお、連結梁30Cと連結梁40Cとの交差関係については後述する。
(展開部材の詳細構成)
ここで、図15〜図19を参照して、上部プレート12C、下部プレート14C、及び天板13Cからなる展開部材の構造について更に詳しく説明する。なお、展開部材の各部は、金属や樹脂など弾塑性を有する材料(弾塑性体)で一体に形成されている点、三次元造形装置を用いて弾塑性体で一体に形成することが可能である点は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
(上部プレート)
図16に示すように、本実施の形態では、上部プレート12Cは、展開構造として、リング状のフランジ部26Cと、3本の連結梁30Cとを備えている。展開時に湾曲する連結部29Cの近傍と繋ぎ部27Cの近傍とに切り込み80を備える点以外は、第3の実施の形態の下部プレート14Bと同じ構成である。このため、対応する構成部分には符号にCを付して説明を省略し、相違点のみ説明する。
本実施の形態では、3本の連結梁30Cの各々は、展開時に弾塑性変形により湾曲する連結部29Cの近傍と繋ぎ部27Cの近傍とに、梁の長さ方向に沿った短めの切り込み80を有している。各箇所について、複数本の切り込み80が設けられている。本実施の形態では、幅約1mmで長さ約1cm程度の4本の切り込み80が並列に設けられている。これは一例であり、切り込みの幅、長さ、本数、及び形成位置は、連結梁の弾塑性に応じて適宜選択することができる。
このような切り込み80を設けることで、連結梁の弾塑性変形による湾曲(折れ曲げに近い湾曲を含む)が容易になる。また、梁の長さ方向に沿った切り込みに代えて、折れ曲げ点の近くにV字状の切り欠きを設けてもよい。V字状の切り欠きを設けることで、同様に、連結梁の弾塑性変形による湾曲が容易になる。
(下部プレート)
図16及び図18に示すように、本実施の形態では、下部プレート14Cは、展開構造として、リング状の支持枠36Cと、3本の連結梁40Cと、3個の係止部45Cとを備えている。連結梁40Cが連結梁30Cより短い点、展開時に湾曲する連結部38Cの近傍と繋ぎ部43Cの近傍とに切り込み80を備える点以外は、第3の実施の形態の下部プレート14Bと同じ構成である。このため、対応する構成部分には符号にCを付して説明を省略し、相違点のみ説明する。
本実施の形態では、連結梁40Cの長さが支持枠36Cの内周より内側に納まるように設計されている。連結梁40Cは連結梁30Cより短い。3本の連結梁40Cの各々に対応して、それらの端部である3個の連結部38Cが存在する。3個の連結部38Cの各々は、連結梁30C上に重ねられている。
また、本実施の形態では、3本の連結梁40Cの各々は、展開時に弾塑性変形により湾曲する連結部38Cの近傍と繋ぎ部43Cの近傍とに、梁の長さ方向に沿った短めの切り込み80を有している。連結梁30Cと同様に、各箇所について、複数本の切り込み80が設けられている。このような切り込み80を設けることで、連結梁の弾塑性変形による湾曲(折れ曲げに近い湾曲を含む)が容易になる。連結梁30Cと同様に、V字状の切り欠きを設けてもよい。
(連結梁の交差状態)
図15〜図19に示すように、上部プレート12Cの3本の連結梁30Cの各々は、右回りの方向に延びている。この3本の連結梁30Cの各々は、端部に在る連結部29Cが上記右回りの方向に隣接する連結梁30Cの繋ぎ部27Cに重なるように配置されている。また、下部プレート14Cの3本の連結梁40Cの各々は、左回りの方向に延びている。この3本の連結梁40Cの各々は、連結梁30Cよりも短く、上記左回りの方向に隣接する連結梁40Cの中央部分の上に重なるように配置されている。
また、一組の連結梁30Cと連結梁40Cとが互いに平行になるように配置されている。更に、3本の連結梁40Cの各々は、1本の連結梁30Cの下を通った後に、当該連結梁30Cの上記左回りの方向に隣接する連結梁30C上に重なるように配置されている。本実施の形態では、連結梁40Cの端部に在る連結部38Cが連結梁30Cの長さ方向の中央部分上に重なる。即ち、3本の連結梁40Cの各々は、連結梁30C上に重なるように交差する。
上述した通り、上部プレート12Cの3本の連結梁30Cと下部プレート14Cの3本の連結梁40Cとが織物のように組み合わされている。このように編み合わされた状態で、図17に示すように、3本の連結梁30Cに対応する3個の連結部29Cと、3本の連結梁40Cに対応する3個の連結部38Cとが、ディスク状の天板13Cの裏面に連結されている。
3個の連結部29Cは、天板13Cの裏面のフランジ部26Cと対向する周辺領域に連結されている。一方、3個の連結部38Cは、天板13Bの裏面の中心点に近い領域に連結されている。このように、連結部29C及び連結部38Cの各々が天板13Cの裏面に固定されることで、3本の連結梁30Cと3本の連結梁40Cとが天板13Cを介して間接的に繋がって、上部プレート12C、下部プレート14C、及び天板13Cが一体化されている。なお、上記の展開部材を展開した時に、連結梁30Cと連結梁40Cとが互いに干渉して展開を阻害しないように、連結梁30C及び連結梁40Cの配置が設計されている。
(展開構造体の展開動作)
次に、上記の展開構造体10Cの展開動作について説明する。
図19は展開構造体が展開した状態を示す斜視図である。図19に示すように、衝突等が検知されると、モータ20の駆動により、回転プレート16が矢印B方向(左回り)に回転し、下部プレート14Cの支持枠36Cが回転プレート16と共に左回りに回転する。
上部プレート12C、下部プレート14C、及び天板13Cが一体化された状態では、連結梁30Cが延びる方向(右回り)は、連結梁40Cが延びる方向(左回り)とは逆向きである。連結梁30Cの端部(即ち、連結部29C)と連結梁40Cの端部(即ち、連結部38C)とは、同じ天板13Cに固定されている。これにより、連結部29Cと連結部38Cとは、同じ方向にしか回転できないように規制されている。
下部プレート14Cの支持枠36Cが左回りに回転するに従い、連結梁30C及び連結梁40Cの両方に圧縮荷重が作用して、回転が規制された連結部29Cと連結部38Cが天板13Cと共にフランジ部26Cから離れるように移動し、上部プレート12C、下部プレート14C、及び天板13Cで構成された展開部材が平面から立体に展開する。
上部プレート12C及び下部プレート14Cでは、展開に伴って、弾塑性変形によって連結梁の両端部が撓み始める。繋ぎ部の近傍と連結部の近傍とが、弾塑性変形により湾曲する。特に、展開が進むと、連結部の近傍の連結梁は、折れ曲がるように顕著に湾曲する。連結部の近傍と繋ぎ部の近傍とに複数本の切り込み80が設けられた連結梁30C及び連結梁40Cは、弾塑性変形により容易に湾曲するので、途中で破損することなく限界まで展開することができる。
また、連結梁40Cを連結梁30Cより短くしたことで、構造物の展開時に、連結梁40Cが衝突荷重の入力方向に対して略平行な角度を維持し、この梁の軸力により荷重が受け止められるため、より大きな衝突荷重を受け止めることができる。
展開原理も第1の実施の形態と同様である。上部プレート12C、下部プレート14C及び天板13Cからなる展開部材が、回転プレート16から伝達された回転力を、連結梁30Cと連結梁40Cとを連結する連結部29C及び連結部38C(即ち、これらに連結された天板13C)を押し上げる上方向の力に変換し、天板13Cによって連結梁30Cと連結梁40Cとが引っ張り上げられて、展開構造体10Cが展開する。ここで回転運動が、直線運動に変換される。
電源を遮断する等してモータ20を停止すると、展開構造体10Cの展開が完了して、複数の梁が交差する立体交差構造11C(展開構造)が形成される。本実施の形態では、3本の連結梁30Cと3本の連結梁40Cの合計6本の梁を有する立体交差構造11Cが形成される。
<第5の実施の形態>
(衝撃吸収装置)
次に、本発明の第5の実施の形態に係る衝撃吸収装置の概略構成を説明する。衝撃吸収装置は、上記の展開構造体を含んで構成されている。本実施の形態では、第1の実施の形態に係る展開構造体10を用いて立体交差構造11を得る場合について説明するが、第2〜第4の実施の形態に係る展開構造体10A、10B、及び10Cも同様に用いることができる。
図20(A)〜(C)は衝撃吸収の原理を説明する概略図である。本実施の形態に係る衝撃吸収装置では、衝突を検知したとき(衝突が不可避と予測されたときを含む)に、上記の展開構造体10を展開させて、複数の梁を有する立体交差構造11を形成し、衝突エネルギーを吸収する。
図20(A)は衝突が検知される前(展開前)の展開構造体10の状態を示す。展開前の展開構造体10では、上部プレート12とモータブラケット18との間には、キャビティが形成されている。下部プレート14は、回転プレート16に取り付けられている。下部プレート14は、上部プレート12と組み合わされて、キャビティ内に回転可能に収納されている。上部プレート12と下部プレート14の各々には、共通の回転軸Rの周りを逆回りに回転するように、異なる梁構造が形成されている。
図20(B)は衝突が検知された直後(展開時)の展開構造体10の状態を示す。衝突が検知されると、モータ20(図示せず)により回転プレート16が回転軸Rの周りに回転する。下部プレート14の支持枠36が、回転プレート16の回転に伴い回転する。上部プレート12の支持枠(フランジ部26)は固定配置されている。下部プレート14の連結梁40は連結部28により連結梁30と連結され、同じ方向にしか回転できないように規制されている。従って、下部プレート14の支持枠36が回転することにより、連結部28が力FUPで押し上げられてフランジ部26から離れ、上部プレート12が下部プレート14と共に展開する。
上述した通り、展開構造体10の展開に従って、上部プレート12の連結梁30と下部プレート14の連結梁40とは、各々の両端部が弾塑性変形により湾曲し、連結梁30と連結梁40からなる複数の梁が交差する立体交差構造11が形成される。一旦、立体交差構造11が形成されると、モータ20(図示せず)の保持力等により、立体交差構造11が維持される。
図20(C)は衝突時の立体交差構造11の状態を示す。立体交差構造11の上に重石Gを載せて、立体交差構造11に荷重FDOWNをかける。これは立体交差構造11に衝突エネルギーを与えたのと同じ状態である。上部プレート12の連結梁30と下部プレート14の連結梁40とが、弾塑性変形して衝突エネルギーを吸収する。
図示はしていないが、衝突エネルギーを吸収する過程では、上部プレート12の連結梁30は、繋ぎ部27での湾曲が緩和され、中央部分が弾塑性変形により撓み始める。下部プレート14の連結梁40でも同様に、繋ぎ部43での湾曲が緩和され、中央部分が弾塑性変形により撓み始める。下部プレート14の連結梁40が、上部プレート12の連結梁30よりも短い場合には、下部プレート14は展開前の状態に戻ろうとする。このため、上部プレート12の連結梁30が、更に弾塑性変形して、連結梁30の中央部分又は繋ぎ部29で折れ曲がる。
(衝撃吸収装置における展開構造体の配置例)
図21は展開構造体10の配置例を示す平面図である。展開前の展開構造体10は、平面的な形状を有しているので、多数の展開構造体10を二次元状に配列して設置して、衝撃吸収構造70を形成することができる。上述した通り、展開構造体10においては、展開する上部プレート12側が表側であり、モータ20側が裏側である(図1参照)。展開構造体10は、モータ20が設けられた裏側を、設置面に向けて設置される。展開構造体10は、図面では手前側に向って展開する。
本実施の形態では、展開構造体10は平面視が略円形であるため、1個の円の周囲に6個の円が並ぶ最密充填配列で、設置部位に配置することができる。なお、ここでは、展開構造体10を平面的に配置する例を示したが、用途に応じて、展開構造体10を並列に配置することもできる。即ち、隣接する2個の展開構造体10の表側と裏側とが対向するように、複数の展開構造体10を配列することができる。
(車両の衝撃吸収装置の一例)
図22は展開構造体10を車両に設置する場合の設置部位を例示する斜視図である。衝突物との衝突に備えて、フードパネル90、フロントバンパ92、フロントサイドドア94、フロントフェンダーパネル96、フロントピラー98などに設置することができる。コンパクトで平面的な形状を有している展開構造体10は、フードパネル90を構成するアウタパネルとインナパネルとの隙間や、フロントバンパ92のバンパカバーとバンパフレームとの間、フードパネル90とフロントフェンダーパネル96との隙間など、通常はクラッシュボックスを設置できない狭く小さい部位にも設置することができる。また、バック時の衝突に備えて、ラッゲージドアやリアバンパに設置してもよい。
図23は本発明の実施の形態に係る衝撃吸収装置の構成を示すブロック図である。この衝撃吸収装置は、車両に搭載されて使用される。本実施の形態に係る衝撃吸収装置100には、複数の展開構造体10からなる衝撃吸収構造70と、衝突物の衝突位置を特定するための情報を取得する情報取得手段として設置されたセンサ群102と、センサ群102から取得した情報に基づいて、衝撃吸収構造70の展開駆動部72を制御する制御部104と、が設けられている。
複数の展開構造体10は、展開構造体10を展開させる展開駆動部72を各々備えている。制御部104は、複数の展開駆動部72を各々独立に制御する。なお、図面では、展開構造体10と展開駆動部72とを別々に図示しているが、本実施の形態では、展開構造体10を構成する回転プレート16及びモータ20が、展開駆動部72に相当する。
展開駆動部72を備えた展開構造体10が平面状又は並列に配列されて、上述した衝撃吸収構造70が構成されている。衝撃吸収構造70は、上述した通り、フードパネル90、フロントバンパ92、フロントサイドドア94、フロントフェンダーパネル96、フロントピラー98など、衝突が予想される車両の様々な部位に多数設置される。
センサ群102としては、自車両の前方、側方及び後方を撮影するビデオカメラ102A、自車両の前方、側方及び後方の熱画像を撮影する赤外線カメラ102B、自車両の前方、側方及び後方の障害物(衝突物)を検出するレーダ102C、自車両への前方、側方及び後方からの衝突を検知する感圧センサ102Dが設けられている。レーダ102Cは、レーザレーダでもよく、ミリ波レーダでもよい。ビデオカメラ102A、赤外線カメラ102B、レーダ102C、及び感圧センサ102Dの各々で得られたデータは、制御部104に逐次入力される。
制御部104には、衝突物が衝突する部位を推定する衝突部位推定手段106と、推定された衝突部位において衝突物が衝突する範囲を推定する衝突範囲推定手段108と、が設けられている。センサ群102から入力されたデータに基づいて、衝突が検知された場合又は衝突が不可避であると予測された場合に、推定された衝突部位の推定された衝突範囲に設置された衝撃吸収構造70の展開駆動部72を作動して、衝突位置にある展開構造体10を展開させる。展開により複数の梁を有する立体交差構造11が形成され、立体交差構造11によって衝突エネルギーを吸収する。
図24は制御部104が行う作動ルーチンの一例を示すフローチャートである。まず、ステップS10で、センサ群102から入力されたデータに基づいて、衝突の危険性を検知する。例えば、レーダ102Cで得られたデータなどから、衝突物の接近の有無や衝突物の接近方向を検知することができる。衝突物の接近方向が分かれば、前面衝突か側面衝突かも判断することができ、衝突物が衝突する部位を推定することができる。次のステップS12で、センサ群102から入力されたデータに基づいて、衝突物の形状・重量・速度を予測する。衝突物の形状・重量・速度が分かれば、衝突物が衝突する部位だけでなく、衝突部位における具体的な衝突の範囲を推定することができる。
次に、ステップS14で、予測された衝突物の形状・重量・速度から、衝突を回避できるか否かを判断する。衝突は回避できると判断(肯定判断)した場合には、そこでルーチンを終了する。一方、衝突は回避できないと判断(否定判断)した場合には、衝撃吸収構造70の展開構造体10を展開させるために、展開駆動部72に駆動信号を出力して、ルーチンを終了する。このように、必要な部位の展開構造体10を展開させるなど、衝突物の特性に応じて制御動作を行うことができる。
以上説明したように、第1から第4の実施の形態に係る展開構造体は、小型モータで一部の部材を回転駆動するという簡単な動作で、平面から立体に展開し、複数の梁を備えた立体交差構造を形成することができる。
また、第1から第4の実施の形態に係る展開構造体は、展開前はコンパクトで平面的な形状を有しているので、クラッシュボックス等を設置できない狭く小さい部位にも設置することができる。また、第1から第4の実施の形態に係る展開構造体は、平面視が略円形であるため、細密配列することができる。
また、第1から第4の実施の形態に係る展開構造体は、展開後は複数の梁を備えた立体交差構造を形成するので、表面側から衝突による衝撃が加わると、複数の梁の各々が弾塑性変形して、衝突エネルギーを吸収することができる。特に、立体交差構造であるため、真正面からの衝突だけではなく、斜め方向からの衝突においても、有効に衝突エネルギーを吸収することができる。更に、用途に応じて立体交差構造中の梁の配置や本数を変えることで、衝突エネルギー吸収量を調整することができる。即ち、任意の剛性を持たせることが可能である。
また、第5の実施の形態に係る衝撃吸収装置は、展開構造体を含む衝撃吸収構造が、車両などの被衝突物に多数配置され、個別に駆動制御されているので、衝突位置に配置された展開構造体を展開させて、衝突による衝撃を吸収することができる。即ち、必要な部位の展開構造体を展開させるなど、衝突物の特性に応じて制御動作を行うことができる。
また、センサ群から入力されたデータに基づいて、衝突物の有無を判断し、衝突物の形状・重量・速度などを計測して、衝突物が衝突する部位だけでなく、衝突部位における具体的な衝突の範囲を推定することで、衝突が回避できない場合には、推定された衝突位置に配置された展開構造体を展開させて、衝突による衝撃を吸収することができる。
<変形例>
以下、上記の実施の形態の変形例について説明する。
(産業上の利用分野)
上記の第5の実施の形態では、フロントバンパ等、車両のボディに展開構造体を設置して衝撃吸収装置として使用する例について説明したが、コンパクトで平面的な形状を有している展開構造体は、狭く小さい部位にも設置することができる。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとしての利用も可能である。即ち、微細空間における衝突緩衝構造やアクチュエータとしての役割も果たすことができる。また、航空機やヘリコプター等の軽量化が要請される飛行機の底面部に展開構造体を設置して、不時着時の衝撃吸収装置として使用することも可能である。更に、展開構造を工夫することで、宇宙空間で使用する展開構造体(アンテナや太陽電池パネル等)への応用も考えられる。
(展開構造体の変形例)
上記第1から第4の実施の形態では、平面視が略円形の展開構造体(展開構造体10等)を用い、立体交差構造(立体交差構造11等)では3本又は6本の連結梁が交差する構造例について説明したが、展開構造体の構造は、上記実施の形態の構造に限定される訳ではない。用途に応じて好適な形状を選択することができる。立体交差構造中の連結梁の配置や本数を変えることで、衝突エネルギー吸収量を調整することができる。また、展開部材を構成する第1展開部と第2展開部との間で、交差関係、連結梁の形状・配置・本数が異なっていてもよい。
例えば、1つのプレートについて3本の連結梁を用いる構造は、遊びになる梁がないので、安定感があり最も好ましいが、連結梁の本数は3本には限られない。2本でもよく、4本以上でもよい。連結梁の本数が増加すると、弾塑性変形による衝突エネルギー吸収量が増加する。連結梁を長くすると、弾塑性変形による衝突エネルギー吸収量が増加する。連結梁の幅を広くすると、弾塑性変形による衝突エネルギー吸収量が増加する。また、連結梁の幅は一定である必要はなく、1本の連結梁の長手方向において、梁幅が変化していてもよい。更に、連結梁の断面形状は矩形状である必要はなく、断面の長手方向において厚さが変化していてもよい。
また、連結梁の幅は一定である必要はなく、1本の連結梁の長手方向において、梁幅が変化していてもよい。更に、連結梁の断面形状は矩形状である必要はなく、断面の長手方向において厚さが変化していてもよい。
なお、上記の説明では、第4の実施の形態に係る展開構造体の連結梁の繋ぎ部の近傍と連結部の近傍とに「複数の切り込み」や「切り欠き」を設ける例について説明したが、上記第1から第3の実施の形態においても、各々の連結梁に切り込みや切り欠き(以下、切り込み等という。)を設けることができる。切り込み等は、展開構造体の一部の連結梁にだけ設けることができる。また、切り込み等は、繋ぎ部の近傍と連結部の近傍の少なくとも一方に設けることができる。更に、第4の実施の形態で説明した通り、切り込みの幅、長さ、本数、及び形成位置は、連結梁の弾塑性に応じて適宜選択することができる。切り欠きの形状等についても同様である。
(展開方法の変形例)
上記の第5の実施の形態では、衝突を検知したときに展開構造体を展開させて、複数の梁を有する立体交差構造を形成する例について説明したが、他の展開方法で立体交差構造を形成することもできる。図25(A)〜(C)は他の展開方法を説明する概略図である。まず、図25(A)に示すように、展開構造体10を展開させて立体交差構造11を形成する。次に、図25(B)に示すように、上部プレート12及び下部プレート14を展開方向とは逆方向に圧縮して、下部プレート14を、上部プレート12とモータブラケット18との間のキャビティ内に再び収納する。
キャビティ内に上部プレート12及び下部プレート14が保持されるように、係止ピン15等の係止手段で上部プレート12及び下部プレート14をモータブラケット18に係止する。上部プレート12及び下部プレート14は、連結梁30及び連結梁40の弾塑性変形によりキャビティ内に収納される。これにより立体交差構造11は展開前の展開構造体10と同じ厚さになる。次に、図25(C)に示すように、係止ピン15を外す等して係止を解除すると、連結梁30及び連結梁40のバネのような復元力により、上部プレート12及び下部プレート14が再び展開して、立体交差構造11を形成する。