本発明は、複数個の感圧素子を所定の間隔で一方向に沿って配列したアレイ型接触圧センサに関するものである。
ロボットや義肢の先端に設けられる触感センサ、医療用の圧脈波センサ、咬合圧センサなどとして用いるために、複数個の感圧素子を一方向に沿って配列したアレイ型接触圧センサが提案されている。たとえば、特許文献1に記載されたものがそれであり、角形や丸型の複数個のダイヤフラム部すなわち薄肉部が半導体基板上に局所的に設けるとともに、そのダイヤフラム部の撓みを検出するためにそのダイヤフラム部にそれぞれ設けられた複数の撓み検出素子が備えられる。これによれば、ダイヤフラム部とそれに設けられた撓み検出素子とから圧力検出素子が構成され、半導体基板に配置された複数の圧力検出素子によって接触圧力などが検出される。しかしながら、このような従来のアレイ型接触圧センサでは、半導体基板において局所的に肉厚を薄くしたダイヤフラム部を短いピッチですなわち高い配置密度で設けることが困難であり、圧力検出部位が粗くなるという欠点があった。
これに対し、特許文献2に記載のように、半導体基板において局所的に肉厚を薄くしたダイヤフラム部をトレンチ状、すなわち長手状(長溝状)とし、そのダイヤフラム部に所定の間隔で撓み検出素子を配置したアレイ型接触圧センサが提案されている。これによれば、肉薄で同じ厚みが続くダイヤフラム部に撓み検出素子を配置できるので、相互の配置間隔(ピッチ)を小さくでき、圧力検出部位の密度を比較的高くできる利点がある。
特許第2989004号公報
特許第3039934号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載のように長手状のダイヤフラム部を用いると、隣接する撓み検出素子の相互間でクロストークが発生し、それら撓み検出素子の相互間の距離がたとえば幅寸法の140%に制限され、素子間隔を小さくするには限界があった。また、長手状のダイヤフラム部の撓み変形ではその幅方向の変形と長手方向の変形とが加えられるため、荷重分布によっては荷重に対して線形とならない場合があった。さらに、長手状のダイヤフラム部に設ける撓み検出素子は、ホトリソグラフイー技術を利用した半導体集積回路技術を用いて形成されることから、長手状溝内或いは長手状溝凹み内のダイヤフラムに素子を設けることが困難であるため、半導体基板の平坦な側すなわち被験物に接触する側において設けられるので、使用に際してはその被験物に接触する面に撓み検出素子を保護する保護コート層が必要となり、設計通りの感度やクロストーク性能が得られず、個々の検出感度がばらつく一因となっていた。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、クロストークが小さく且つ高密度で接触圧を検出でき、しかも撓み検出素子を半導体基板の被験物に接触する面とは反対側の面に設けることができるアレイ型接触圧センサを提供することにある。
上記目的を達成するための請求項1に係る発明のアレイ型接触圧センサの要旨とするところは、所定厚みの半導体基板に一方向に配列された複数個の感圧素子を有するアレイ型接触圧センサであって、その複数個の感圧素子は、(a) 前記半導体基板の一面に該半導体基板を貫通しないように所定パターンの溝が設けられることにより該溝の間に形成された互いに平行な複数個の梁部と、(b) その複数個の梁部にそれぞれ設けられ、該梁部の撓みに応じた電気信号をそれぞれ発生する複数個の撓み検出素子とを含み、(c) 前記半導体基板の他面に加えられた接触圧に応じた前記電気信号をそれぞれ出力することを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、前記請求項1に係る発明の梁部は、前記一方向に直交する方向の一対の直交溝と、該一対の直交溝の一端部を連通させる前記一方向に平行な連通溝とにより3方が囲まれた片持ち梁であることを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、前記請求項1に係る発明の梁部は、前記一方向に直交する方向の一対の直交溝に挟まれた両持ち梁であることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、前記請求項1乃至3のいずれかにかかる発明の撓み検出素子は、前記梁部の前記半導体基板の一面側に不純物の拡散或いはイオン注入により設けられて電橋を構成する4つのピエゾ抵抗体から構成されたものであることを特徴とする。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、前記請求項4にかかる発明の4つのピエゾ抵抗体のうち、2つのピエゾ抵抗体は前記梁部の長手方向に沿って配設され、他の2つのピエゾ抵抗体は前記梁部の長手方向に直交する方向に沿って配設されたものであることを特徴とする。
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、前記請求項1乃至5のいずれかにかかる発明の溝は、V字状の断面形状を備えたものであることを特徴とする。
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、前記請求項1乃至5のいずれかにかかる発明の溝は、矩形状或いは逆台形状の断面形状を備えたものであることを特徴とする。
前記請求項1に係る発明によれば、所定厚みの半導体基板に一方向に配列された複数個の感圧素子を有するアレイ型接触圧センサにおいて、その複数個の感圧素子は、(a) 前記半導体基板の一面に該半導体基板を貫通しないように所定パターンの溝が設けられることにより該溝の間に形成された互いに平行な複数個の梁部と、(b) その複数個の梁部にそれぞれ設けられ、該梁部の撓みに応じた電気信号をそれぞれ発生する複数個の撓み検出素子とを含み、(c) 前記半導体基板の他面に加えられた接触圧に応じた前記電気信号をそれぞれ出力することから、溝幅の制限や凹みの制限を受けないので、クロストークが小さく且つ高密度で接触圧を検出でき、しかも撓み検出素子を半導体基板の被験物に接触する面とは反対側の面に設けることができるアレイ型接触圧センサが得られる。
また、請求項2に係る発明によれば、前記請求項1に係る発明の梁部は、前記一方向に直交する方向の一対の直交溝と、その一対の直交溝の一端部を連通させる前記一方向に平行な連通溝とにより3方が囲まれた片持ち梁として作用できるので、梁部での接触圧力(入力)に対する変形或いは歪みが大きくなり、高い検出感度が得られる。
また、請求項3に係る発明によれば、前記請求項1に係る発明の梁部は、前記一方向に直交する方向の一対の直交溝に挟まれた両持ち梁として作用できるので、梁部毎における撓みのばらつきのない安定した接触圧検出作動が得られる。
また、請求項4に係る発明によれば、前記請求項1乃至3のいずれかにかかる発明の撓み検出素子は、前記梁部の前記半導体基板の一面側に不純物の拡散或いはイオン注入(イオンインプラント)により設けられて電橋すなわち直流或いは交流ブリッジを構成する4つのピエゾ抵抗体から構成されたものであるので、容易に接触圧検出が可能となる。
また、請求項5にかかる発明によれば、請求項4にかかる発明の4つのピエゾ抵抗体のうち、2つのピエゾ抵抗体は前記梁部の長手方向に沿って配設され、他の2つのピエゾ抵抗体は前記梁部の長手方向に直交する方向に沿って配設されたものであるので、前記半導体基板の他面から接触圧が加えられることにより梁部に発生する撓み或いは歪みが好適に検出され、その接触圧の大きさに対応する電気信号が得られる。
また、請求項6に係る発明によれば、前記請求項1乃至5のいずれかにかかる発明の溝は、V字状の断面形状を備えたものであるので、クロストークを小さくしつつ梁部の配設間隔を小さくでき、圧力検出素子の配置密度を高めることができる。
また、請求項7に係る発明によれば、前記請求項1乃至5のいずれかにかかる発明の溝は、矩形状或いは逆台形状の断面形状を備えたものであるので、クロストークを小さくしつつ梁部の配設間隔を小さくでき、圧力検出素子の配置密度を高めることができる。また、前記V字状の断面形状の溝に比較して、梁部の配設間隔が大きくなるが、高い検出感度が得られる。
ここで、好適には、前記半導体基板はたとえばシリコン(Si)の単結晶基板であり、前記不純物はたとえばボロン(B)である。
また、前記撓み検出素子は、歪みの大きさに応じて抵抗値を変化させるピエゾ抵抗体であってもよいが、歪みの大きさに応じてPN接合の通過電流値を変化させるダイオード、歪みの大きさに応じて電流増幅率を変化させるトランジスタが用いられてもよい。
また、前記溝は、前記梁部を構成するために半導体基板の一面において梁部の四辺のうちの2辺或いは3辺を形成するように設けられているが、さらに、半導体基板の他面からも同様のパターンの溝を設けてもよい。
また、前記溝は、V字状、逆台形形状のみならず、矩形の断面形状を備えたものであってもよい。
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例の接触圧検出装置として機能するアレイ型接触圧センサ10を備えた小型マニュピレータ12を示している。この小型マニュピレータ12は、相互に接近離隔可能に設けられた互いに平行な一対のフィンガ14と、それら一対のフィンガ14を相互に接近し或いは離隔する方向に駆動するアクチュエータ16とを備えて図示しないロボットアームの先端に装着され、たとえば手術中の生体の血管20や、皮膚などの生体組織などを把持して所定位置に保持したり、適当な位置へ移動させる。このアクチュエータ16は、たとえば、電動モータの回転力を用いて上記一対のフィンガ14の少なくとも一方を接近離隔方向に駆動するねじ送り機構を備えたものである。
アレイ型接触圧センサ10は、一対のフィンガ14の内側、すなわち一対のフィンガ14の対向面のうちの少なくとも一方に設けられている。制御装置18は、上記アレイ型接触圧センサ10により検出されたフィンガ14の接触圧に基づいて一対のフィンガ14の把持力すなわち挟圧力を制御し、適切な把持力でたとえば手術中の生体の血管20や、皮膚などの生体組織などを把持できるようにする。制御装置18は、画像を表示可能な表示器22を備え、上記アレイ型接触圧センサ10により検出される血管20の接触圧やその血管20の接触圧分布を表示する。
上記フィンガ14に設けられたアレイ型接触圧センサ10は、一対のフィンガ14の対向面である挟圧面すなわち接触面26の一部(中央部)に位置するように半導体基板24を電気的に絶縁した状態で保持する枠状の基板保持部材28と、その半導体基板24の内側面(一面)32において一方向Aすなわちフィンガ14の長手方向に配列された複数個たとえば25乃至50個程度の感圧素子34を備えたアレイ型接触圧センサである。なお、上記半導体基板24は、たとえば0.1mm程度の厚みTを備えたシリコンの単結晶板から構成されている。また、上記接触面26には、たとえばシリコン樹脂製などの絶縁性保護膜30が設けられており、上記半導体基板24の接触面44も保護されている。しかし、この絶縁性保護膜30は必ずしも設けられていなくてもよい。
図2は、上記半導体基板24の要部を示している。図2に示すように、半導体基板24の接触面44とは反対側の内側面32には、一方向Aにおいて一定の間隔を隔てて位置し且つその一方向Aに直交する方向に互いに平行に形成された複数の直交溝36aと、上記一方向Aに平行に形成されてその直交溝36aの一端部を相互に連通させる連通溝36bとから成る櫛状パターンの溝36がその櫛状パターンの窓口が設けられたレジストを通したエッチングなどの手法によって形成されることにより、一対の直交溝36aと連通溝36bとにより3方が囲まれた片持ち梁状の複数個の梁部38が形成されている。
また、図3に詳しく示すように、上記梁部38の撓みに応じた電気信号を出力するために、歪みの大きさに応じて抵抗値を変化させる4つのピエゾ抵抗体40a〜40dから成る電橋で構成された撓み検出素子42が梁部38の半導体基板24の一面側に設けられている。前記各感圧素子34は、上記梁部38および撓み検出素子42からそれぞれ構成され、半導体基板24の他面側すなわち接触面44となる外面側に加えられた接触圧の大きさに対応する電気信号をそれぞれ出力する。
上記溝36、ピエゾ抵抗体40a〜40d、図示しない配線などは、集積回路製造技術に用いられるホトリソグラフイーを利用して設けられる。たとえば、溝36は、半導体基板24の一面に塗布されたレジストの一部が露光によって櫛状のパターンで除去され、その除去により抜かれたレジストを通した選択的エッチングにより形成される。また、ピエゾ抵抗体40a〜40dは、半導体基板24の一面に塗布されたレジストの一部が露光によって所定の抵抗体パターンで除去され、さらにそのパターンで基板表面のSiO2 が除去され、その除去により抜かれたレジストの窓口を通した選択的にボロン(B)等の不純物が熱拡散されることにより、所定の不純物表面濃度と抵抗値を有するピエゾ抵抗体40a〜40dが複数組形成される。或いは上記ピエゾ抵抗体40a〜40dは、不純物が抵抗体パターン領域内にイオン注入(イオンインプラント)されることによっても構成されることができる。そして、上記ピエゾ抵抗体40a〜40dは、前記撓み検出素子42を構成するための電橋を構成するように、導体パターンが抜かれたレジストを利用した導体膜たとえばアルミニウム蒸着膜で相互に配線される。
上記撓み検出素子42において、前記押圧面44に加えられた接触圧力に応じて各梁部38に発生する撓みすなわち歪みを効率的に電気信号に変換するために、矩形すなわち四角形の四辺の位置に配置され且つ電橋状に接続されたピエゾ抵抗体40a〜40dのうちの2つのピエゾ抵抗体40aおよび40cは梁部38の長手方向に沿って配設され、他の2つのピエゾ抵抗体40bおよび40dは梁部38の長手方向に直交する方向に沿って配設されている。なお、図3では、撓み検出素子42を構成するピエゾ抵抗体40a〜40dが一つの梁部38に設けられた状態が示され、他の梁部38では省略されている。
図3のIV-IV 視断面図である図4、およびは図3のV−V視断面図である図5に示すように、前記溝36は、逆台形の断面形状を有し、たとえば0.08mm程度の深さ寸法Dと、0.2mm程度の溝底幅寸法gw とを備えている。したがって、半導体基板24の上記溝36が形成されている部分の厚みは、たとえば0.02mm程度とされ、感圧素子34すなわち梁部38の配列ピッチは、0.4mm程度とされている。
図6は、アレイ型接触圧センサ10および制御装置18の電気的構成を説明する図である。半導体基板24において一方向に配列されている各梁部38にそれぞれ設けられた各撓み検出素子42には交流若しくは直流の一定のブリッジ電圧が定電圧電源50から供給され、各撓み検出素子42から出力された電気信号は、前置増幅器54、増幅器58をそれぞれ介してA/D変換器60へ入力される。CPU62、RAM64、ROM66、インターフェース68などから成るコンピュータ(電子制御装置)70は、RAM64の一時記憶機能を利用しつつ予めROM66に記憶された入力信号すなわち各撓み検出素子42から出力された電気信号を処理し、それぞれの撓み検出素子42からの電気信号に基づいて血管20の接触圧や面圧分布を算出し、駆動回路72を制御して小型マニュピレータ12のフィンガ14の挟圧力が適切な大きさとなるように、たとえば血管20に損傷を与えないように把持できるようにする。また、コンピュータ70は、上記撓み検出素子42からの信号に基づいて接触圧或いはその分布を表示器22に表示させる。
以上のように構成された本実施例のアレイ型接触圧センサ10によれば、一定厚みの半導体基板24の内側面(一面)32に一方向Aに配列された複数個の感圧素子34は、(a) 半導体基板24の内側面32に所定パターンの溝36が設けられることによりその溝36の間に形成された互いに平行な複数個の梁部38と、(b) その複数個の梁部38にそれぞれ設けられ、その梁部38の撓みに応じた電気信号をそれぞれ発生する複数個の撓み検出素子42とを含み、(c) 前記半導体基板24の押圧面(他面、外側面)44に加えられた接触圧力に応じた前記電気信号をそれぞれ出力するので、クロストークが小さく且つ高密度で接触圧(分布)を検出でき、しかも撓み検出素子42を半導体基板24の被験物に接触する押圧面44とは反対側の内側面32に設けることができるアレイ型接触圧センサ10が得られる。
因みに、接触圧力検出のために歪みを発生させ検出する領域全体となる板状ダイヤフラムの撓みを検出するためにその板状ダイヤフラムに所定間隔で撓み検出素子を配列した従来のアレイ型接触圧センサでは、撓み検出素子の間隔を小さくして高密度で接触圧力検出をしようとすると、クロストークを防止するためにダイヤフラムの幅寸法を小さくしなければならないことから、感度を維持するためにそのダイヤフラムの厚みを薄くしなければならないので、(a) その薄肉化にともなって周波数特性が劣化(共振周波数の低下)や振動モードの複雑化、(b) 温度特性の劣化(熱歪み、温度ドリフト)、(c) 構造強度の劣化、(d) 厚さ分布管理の製造上の歩留り低下、(e) 撓み検出素子間の感度のばらつき拡大、(f) 板状ダイヤフラムの外側面に撓み検出素子が設けられて配線され、その配線を保護するための絶縁性保護膜が必要となることにより、設計通りの感度やクロストーク性能が得られず個々の検出感度がばらつく一因となっていた等の問題があった。しかしながら、上記本実施例のアレイ型接触圧センサ10によれば、ダイヤフラム幅寸法や肉厚を変えないで、溝36により形成された梁部38とそれに設けられた撓み検出素子42の配置間隔(ピッチ)が小さくされることから、その梁部38の肉厚が確保されて構造強度が高められるので、共振周波数(固有振動数)が高く、複雑な振動モードが抑制され、熱歪みが抑制されることによりピエゾ抵抗体40a〜40dの不純物濃度が確保されて温度ドリフトが改善され、肉厚誤差に対する割合軽減によって撓み検出素子42間の感度のばらつきが抑制され、ピエゾ抵抗体40a〜40dにより構成される撓み検出素子42を半導体基板の内側面から設けることができて絶縁性保護膜が不要となり工数の低減、撓み検出素子42のクロストークや感度が設計通り得られてそれらのばらつきが抑制されるという格別の効果が得られる。
また、本実施例のアレイ型接触圧センサ10によれば、梁部38が、前記一方向Aに直交する方向の一対の直交溝36aと、その一対の直交溝36aの一端部を連通させる一方向Aに平行な連通溝36bとにより3方が囲まれた片持ち梁として作用できるので、梁部38での接触圧(入力)に対する変形或いは歪みが大きくなり、高い検出感度が得られる。
また、本実施例のアレイ型接触圧センサ10によれば、半導体基板24の梁部38に設けられた撓み検出素子42は、その梁部38の半導体基板24の一面32側に不純物の拡散或いはイオン注入(イオンインプラント)により設けられて電橋すなわち直流或いは交流ブリッジを構成する4つのピエゾ抵抗体40a〜40dから構成されたものであるので、容易に接触圧検出が可能となる。
また、本実施例のアレイ型接触圧センサ10によれば、撓み検出素子42を構成する4つのピエゾ抵抗体40a〜40dのうち、2つのピエゾ抵抗体40aおよび40cは梁部38の長手方向に沿って配設され、他の2つのピエゾ抵抗体40bおよび40dはその梁部38の長手方向に直交する方向に沿って配設されたものであるので、半導体基板24の他面44から接触圧が加えられることにより梁部38に発生する撓み或いは歪みが好適に検出され、その接触圧の大きさに対応する電気信号が得られる。
また、本実施例のアレイ型接触圧センサ10によれば、溝36は、矩形状或いは逆台形状の断面形状を備えたものであるので、クロストークを小さくしつつ梁部38の配設間隔を小さくでき、撓み検出素子42の配置密度を高めることができる。また、前記V字状の断面形状の溝に比較して、梁部38の配設間隔が大きくなるが、高い検出感度が得られる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図7は、本発明の他の実施例の半導体基板24の要部を示している。本実施例の半導体基板24では、前記一方向Aに沿って一定の間隔でその一方向Aに直交する方向の複数個の直交溝36aが形成されており、一対の直交溝36aに挟まれた部分が両持ち梁として作用できる複数個の梁部80が形成される。この梁部80には、前述の実施例と同様に、その梁部80の撓みすなわち歪みの大きさに応じた電気信号を出力する撓み検出素子42がそれぞれ設けられている。本実施例では、前述の実施例と同様の効果が得られるとともに、両持ち梁として作用できる梁部80毎における撓みのばらつきのない安定した接触圧検出作動が得られる。
図8は、本発明の他の実施例の半導体基板24の断面であって、図5に相当する図である。図8の実施例では、直交溝36aはV字状断面形状を備えている。この実施例の半導体基板24では、直交溝36aがV字状断面形状を備えているので、クロストークを小さくしつつ梁部38の配設間隔を小さくでき、感圧素子34の配置密度を高めることができる。
図9は、本発明の他の実施例の半導体基板24の断面であって、図5に相当する図である。図9の実施例では、直交溝36aは逆台形の形状を備えているが、半導体基板24を貫通して形成されている。この実施例の半導体基板24では、直交溝36aが半導体基板24を貫通するように形成されたものであるので、前記V字状の断面形状の溝に比較して、高い検出感度が得られるとともに、クロストークをほとんど解消できる。
以下、本発明者等が行った数値実験例を説明する。図10、図11および図12は、テストピース90、92および94を示している。テストピース90、92および94は、前述の半導体基板24と同様の材料および厚みで所定幅Wの長手状に構成され、周囲は固定されて数値実験を行っている。テストピース90は溝を備えないが、テストピース92は長手方向において所定の間隔gw を隔て且つ幅方向に貫通する一対のV字状断面の溝96を備えている。この溝96は、図8の実施例の直交溝36aと同様のものである。また、テストピース94も、長手方向において所定の間隔gw を隔て且つ幅方向に貫通する一対の矩形断面の溝98を備えている。
上記テストピース90の裏面の中心点に押圧力Fを上向きに加えた場合、図10の等高線状の破線に示すように歪みが発生し、その歪みは、テストピース90の幅方向の中心線C上において、図10のテストピース90の下側に表す分布を示す。このテストピース90の歪みは、従来のアレイ型接触圧センサにおいて所定の間隔で撓み検出素子が配置された長手状のダイヤフラム部のそれに相当するものである。この図10に示すように、長手方向における歪みの影響範囲Bはテストピース90の幅寸法Wの1.4倍に相当し、クロストークを避けるためには、撓み検出素子の配置ピッチをその幅寸法Wの1.4倍と同等以上に設定する必要があり、圧力検出密度を高くすることが困難であった。また、図13に示すように、押圧力Fの作用点が長手方向の中央位置L0 から所定距離だけずれた位置L1 となった場合、その中央位置L0 を中心とする実線に示す分布から上記ずれた位置L1 を中心とする1点鎖線に示す分布となり、その中央位置L0 に撓み検出素子が設けられているとすると、検出される歪みの大きさがQ0 点からQ1 点となり、検出圧力が大きく低下する。このため、接触圧の作用点のずれが発生したとき、検出精度が十分に得られなかった。
これに対し、図11に示す一対のV字状断面の溝96を備えたテストピース92では、その裏面の中心点に押圧力Fを上向きに加えた場合、図11の等高線状の破線に示すように歪みが発生し、その歪みは、テストピース92の幅方向の中心線C上において、図11のテストピース92の下側に表す分布を示す。図11の破線に示すように、長手方向における歪みの影響範囲はテストピース92の幅寸法Wよりも小さく設定された間隔gw で配置された一対のV字状断面の溝96の間の領域内で留まり、クロストークの影響もその範囲を超えることがない。このため、一対のV字状断面の溝96の間の部分を梁部38として用いる前述の実施例の場合では、撓み検出素子の配置ピッチを幅寸法Wよりも小さく設定でき、圧力検出密度を高くすることが可能となった。このような効果は、上記V字状断面の溝96に替えて、逆台形断面の溝36や矩形断面の溝98が用いられても同様に得られる。
また、図12に示す一対の矩形断面の溝98を備えたテストピース94では、図14に示すように、一対の矩形断面の溝98の間の領域における圧力分布が比較的平坦となり、上向きの押圧力Fの作用点が中央位置L0 から所定距離だけずれた位置L1 となった場合でも、その中央位置L0 を中心とする実線に示す分布から上記ずれた位置L1 を中心とする1点鎖線に示す分布との差が小さい。このため、中央位置L0 に設けられている撓み検出素子により検出される歪みの大きさQ0 点とQ1 点とに殆ど差が出ないので、接触圧の作用点のずれが発生しても、検出精度が十分に得られる。したがって、一対のV字状断面の溝96の間の部分を梁部38として用いる前述の実施例の場合において、接触圧の作用点のずれが発生したとしても、検出精度が十分に得られる。このような効果は、上記矩形断面の溝98に替えて、逆台形断面の溝36やV字状断面の溝96が用いられても同様に得られる。
クロストークを検討するために、本発明者等は、厚みが0.1mmである、溝が設けられていない平板状の図10のテストピース90とV字状断面の溝96が設けられた図11のテストピース92とについて、100mmHgの荷重を加えたときの歪みをそれぞれ解析・計算し、荷重範囲(=荷重が加えられている長手方向寸法/基板幅寸法W)と正規化最大歪(=最大歪み値を1とする相対値)との関係を求めた。図15は、その関係を示している。図15に示されるように、溝が設けられていないテストピース90では、幅寸法Wの1.4倍程度の荷重範囲で正規化最大歪が飽和するので、クロストークのないように前記撓み検出素子42を配置しようとすると、その配置間隔は幅寸法Wの1.4倍程度以上としなければならず、圧力検出密度を高くすることが困難であることが判る。これに対し、V字状断面の溝96が設けられたテストピース92では、幅寸法Wの1倍以下の荷重範囲で正規化最大歪が飽和するので、幅寸法Wの1倍以下の間隔でもクロストークのないように前記撓み検出素子42を配置でき、高い圧力検出密度が得られる。なお、図15の破線は10%クロストークラインを示し、後述の10%クロストーク幅とは、正規化最大歪みがその10%クロストークラインに到達したときの荷重範囲の値である。
前記半導体基板24の板厚を検討するために、本発明者等は、4種類の厚み(0.05mm、0.1mm、0.15mm、0.2mm)の、溝が設けられていない平板状の図10のテストピース90を用いて、100mmHgの荷重を1mmの荷重幅(=荷重を付与する長手方向寸法)に加えたときの厚みと最大歪との関係を求めた。図16はその関係を示している。また、本発明者等は、上記厚みの異なる4種類のテストピース90を用いて、100mmHgの荷重を加えたときの歪みをそれぞれ解析・計算し、荷重範囲と正規化最大歪との関係を求めた。図17は、その関係を示している。その図17の曲線から明らかなように、荷重範囲と正規化最大歪との関係では、厚みの変化に対しては殆ど変化しないが、上記図16から明らかなように、厚みが小さくなるほど、最大歪みが大きくなり検出感度が増加することが判る。この検出感度に関しては、0.2mm以下さらに好適には0.1mm以下の厚みが望ましいが、0.05mmを下まわるようになると、剛性の低下に伴う周波数特性が劣化(低下)し、振動モードの複雑化、強度の低下、温度特性の劣化、厚さ分布の管理の困難といった不都合が発生する。
溝底幅寸法gW と検出感度との関係を検討するために、本発明者等は、5種類の溝幅(溝底幅寸法gW が0mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm)の、図2乃至図5に示す片持ち梁状の梁部38を備えたテストピースと、図7に示す両持ち梁状の梁部80を備えたテストピースとを用いて、100mmHgの荷重をそれら梁部に加えたときの最大歪みを解析・計算し、溝底幅寸法gW と最大歪みとの関係を、片持ち梁状の梁部38と両持ち梁状の梁部80とについて求めた。図18はその関係を示している。図18に示すように、溝底幅寸法gW が増加するほど最大歪みすなわち感度が大きくなり、また、片持ち梁状の梁部38が両持ち梁状の梁部80よりも最大歪みすなわち感度が大きい。なお、溝底幅寸法gW が0mmの溝とは、V字状断面の溝を示している。
溝幅寸法とクロストークとの関係を検討するために、本発明者等は、5種類の溝幅(溝底幅寸法gW が0mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm)の、図2乃至図5に示す片持ち梁状の梁部38を備えたテストピースと、図7に示す両持ち梁状の梁部80を備えたテストピースとをそれぞれ用いて、100mmHgの荷重をそれら梁部に加えたときの最大歪みを解析・計算し、荷重範囲と正規化最大歪みとの関係と、溝底幅寸法gW と10%クロストーク幅(mm)との関係とを、片持ち梁状の梁部38と両持ち梁状の梁部80とについてそれぞれ求めた。両持ち梁状の梁部80を備えたテストピースにおける荷重範囲と正規化最大歪みとの関係は図19に示され、溝底幅寸法gW と10%クロストーク幅(mm)との関係は図20に示されている。また、片持ち梁状の梁部38における荷重範囲と正規化最大歪みとの関係は図21に示され、溝底幅寸法gW と10%クロストーク幅(mm)との関係は図22に示されている。
上記図19および図21の曲線に示すように、荷重範囲と正規化最大歪みとの関係では、片持ち梁状の梁部38と両持ち梁状の梁部80とのそれぞれにおいて、溝底幅寸法gW の変化に対してはそれほど殆ど変化しない。しかし、溝底幅寸法gW と10%クロストーク幅(mm)との関係では、両持ち梁状の梁部80において、図20の曲線から明らかなように、溝底幅寸法gW が0.3mm以下好適には或いは0〜0.25mmmさらに好適には0.1mm〜0.2mmの範囲で10%クロストーク幅が極小とされる。また、片持ち梁状の梁部38において、図22の曲線から明らかなように、0.3mm以下好適には0mm〜0.2mmの範囲さらに好適には0mm〜0.1mmの範囲で10%クロストーク幅が極小とされる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用され得る。
たとえば、前述の実施例の梁部30、80の厚み、長さ、幅は、検出圧力範囲、半導体基板24の厚みや材質等の変更により必要に応じて適宜変更され得る。
また、前述の実施例の梁部30、80は、必ずしも半導体基板24と同じ厚みでなくてもよい。
また、前述の実施例において、アレイ型接触圧センサ10が内側に設けられたフィンガ14を相互に接近する方向に駆動するためのアクチュエータ16は、空圧或いは液圧などを駆動エネルギとして使用するシリンダ等、他のアクチュエータを用いるものであってもよい。
また、前述の実施例のアレイ型接触圧センサ10は、手術中の血管20を一対のフィンガ14が把持した場合の接触圧を検出するために用いられていたが、皮膚上から皮下の足背動脈、上腕動脈などから発生する圧脈波を検出するために用いられてもよい。
また、前述の実施例では、一対のフィンガ14で血管20を把持したとき、そのアレイ型接触圧センサ10により検出される接触圧圧力分布から、たとえばUSP4,269,193に記載された技術を利用して血管20の内圧を測定することができる。この場合、直接法のように動脈内ニカテーテルを挿入する必要がないので、血液凝固などの問題が回避されて安全である。また、上記一対のフィンガ14で腫瘍などを把持することができる。この場合、組織に加える力とその組織の変形度合いの分布との関係を測定することにより、診断を行うことも可能となる。このとき、両方のフィンガ14にアレイ型接触圧センサ10をそれぞれ設けることにより、2箇所の接触圧の比較をすることができるので、片側のみに設けた場合よりも正確な診断が可能となる。
また、前述の実施例のアレイ型接触圧センサ10は、接触圧分布を高分解能で検出するために、咬合圧センサ、ロボットや義肢に設けられる触感センサとして用いられてもよい。
なお、上述したのは、あくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例のアレイ型接触圧センサを備えた接触圧検出装置の構成および生体への装着状態を概略説明する図である。
図1の実施例のアレイ型脈波センサに設けられた半導体基板の要部を説明するためにその半導体基板の内側面の一部を拡大した平面図である。
図2の半導体基板の平面図のうちの梁部および溝を説明するために更に拡大して示す図である。
図3のIV−IV視断面図である。
図3のV−V視断面図である。
図1の接触圧検出装置の電気的構成を説明する回路図である。
本発明の他の実施例の半導体基板に設けられた両持ち梁状の梁部を示す図であって、図2に相当する図である。
本発明の他の実施例の半導体基板に設けられたV字状断面を備えた溝を示す断面図であって、図5に相当する図である。
本発明の他の実施例の半導体基板に設けられた逆台形断面を備え且つ半導体基板を貫通するように形成された溝を示す断面図であって、図5に相当する図である。
本発明者等が実験に用いた半導体基板の溝なしテストピースを示す斜視図であって、幅方向の中心線C上であって長手方向の中央位置L0 に上向きの押圧力Fが付与されたときに発生する歪みの大きさおよび範囲を等高線状の破線および分布曲線により示している。
本発明者等が実験に用いた半導体基板のV字状断面溝付きテストピースを示す斜視図であって、幅方向の中心線C上であって長手方向の中央位置L0 に上向きの押圧力Fが付与されたときに発生する歪みの大きさおよび範囲を等高線状の破線および分布曲線により示している。
本発明者等が実験に用いた半導体基板の矩形状断面溝付きテストピースを示す斜視図である。
図10の溝なしテストピースに対する押圧力Fの作用点が長手方向位置L0 からL1 へずれたときに、長手方向位置L0 に設けられた撓み検出素子により検出される歪みの大きさがQ0 からQ1 へ大きく変化する状態を説明する図である。
図12の矩形状断面溝付きテストピースに対する押圧力Fの作用点が長手方向位置L0 からL1 へずれたときに、長手方向位置L0 に設けられた撓み検出素子により検出される歪みの大きさがQ0 からQ1 へ殆ど変化しない状態を説明する図である。
図10のテストピースと図11のV字状断面溝付きテストピースとについて解析・計算された荷重範囲と正規化最大歪みとの関係をそれぞれ示す図である。
図10のテストピースを用いて100mmHgの荷重を荷重幅1mmに付与して解析・計算した、板厚と最大歪みとの関係を示す図である。
厚みの異なる図10のテストピースを用いて解析・計算した、荷重範囲と正規化した最大歪みとの関係を示す図である。
図2に示す片持ち梁状の梁部と図7に示す両持ち梁状の梁部とについて、溝幅の異なるテストピースを用いて解析・計算した、溝幅と最大歪みとの関係を示す図である。
図7に示す両持ち梁状の梁部を有する5種類の溝幅の異なるテストピースを用いて解析・計算した、荷重範囲と正規化最大歪みとの関係を示す図である。
図7に示す両持ち梁状の梁部を有する5種類の溝幅の異なるテストピースを用いて解析・計算した、溝幅と10%クロストーク幅との関係を示す図である。
図2に示す両持ち梁状の梁部を有する5種類の溝幅の異なるテストピースを用いて解析・計算した、荷重範囲と正規化最大歪みとの関係を示す図である。
図2に示す両持ち梁状の梁部を有する5種類の溝幅の異なるテストピースを用いて解析・計算した、溝幅と10%クロストーク幅との関係を示す図である。
符号の説明
10:アレイ型接触圧センサ
24:半導体基板
34:感圧素子
36:溝
38:梁部
42:撓み検出素子