JP4893902B2 - 環状被塗装物の保持治具、セット治具及び抜き治具並びにそれらを用いた静電粉体塗装方法 - Google Patents

環状被塗装物の保持治具、セット治具及び抜き治具並びにそれらを用いた静電粉体塗装方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータのステータコア等の環状被塗装物の静電粉体塗装時に該環状被塗装物を保持する保持治具、上記環状被塗装物を上記保持治具にセットするためのセット治具及び塗装後に上記保持治具から環状被塗装物を抜き取るための抜き治具、並びにそれらの各治具を用いた静電粉体塗装方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12に示すように、従来、モータのステータコア1に静電粉体塗装を施す際に該ステータコア1を保持する保持治具として、第1及び第2保持治具2、3を組み合わせてなるものが知られている(特開2000−334336号公報参照)。すなわち、第1保持治具2には、筒状部2aの内周から外側へ突出するL字状に屈曲した複数の可撓性を有する保持爪2bが設けられ、各保持爪2bの先端は、自由状態では、ステータコア1の内周より径方向内側に位置している。
【0003】
一方、第2保持治具3には、2段式の連結ロッド3a、3bが設けられ、図14に示すように、連結ロッド3a、3bが各保持爪2bの内側を介して筒状部2aの内周に嵌合することにより、第1及び第2保持治具2、3が連結されるとともに、大径の連結ロッド3bが各保持爪2bを径方向外側へ押し拡げて保持爪2aの先端部をステータコア1の内周に係合させ、ステータコア1を保持するようになっている。
【0004】
2c、3cは、不図示の静電粉体塗装装置のコンベア上で移送するために各保持治具2、3に設けられた移送用ロッドであり、連結状態でステータコア1を保持した第1及び第2保持治具2、3を上記コンベア上に配置し、ステータコア1の表面に静電粉体塗装を施した後、第1及び第2保持治具2、3を分離し、塗装済みのステータコア1を取り出すようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の構成では、第1及び第2保持治具2、3を組み合わせてステータコア1を保持する仕組みであるから、同時に塗装処理を施すステータコア1の個数分だけ第1及び第2保持治具2、3が各々必要となり、全体として必要な保持治具の個数が増し、かつコスト高になるものであった。
【0006】
また、静電粉体塗装装置上で第1保持治具2と第2保持治具3との結合状態に弛みが生じると、保持爪2bに対してステータコア1が偏芯したりして、保持爪2bによりステータコア1を安定的に保持することが不可能となる結果、ステータコア1の塗装の品質が低下するという問題もあった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記の課題を解決するため、1種類の治具のみで環状被塗装物を保持できる保持治具、この保持治具に環状被塗装物をセットするためのセット治具及び塗装後に保持治具から環状被塗装物を抜き取るための抜き治具、並びにそれらの各治具を用いた静電粉体塗装方法を提供することを目的とする。
【0008】
そのため、本発明の請求項1の環状被塗装物の保持治具は、環状被塗装物を内周で保持する保持治具であって、上記環状被塗装物の内径より小さい外径を有するロッド状本体と、該ロッド状本体の略同一軸方向位置における外周に沿って配置され各基端部がロッド状本体に接続された複数の可撓性を有する保持爪とを備え、各保持爪の先端部は自由状態において、上記環状被塗装物の内周位置より径方向外側に位置することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の環状被塗装物の保持治具は、請求項1の構成において、上記保持爪と該保持爪の先端部側に対応するロッド状本体の端部との間におけるロッド状本体の外周に、ロッド状本体より大径の錘り部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の環状被塗装物のセット治具は、請求項1又は2の保持治具におけるロッド状本体の外径より大きくかつ環状被塗装物の外径より小さい内径を有する略垂直方向の第1挿入孔と、該第1挿入孔の上端部付近に略同芯に設けられた上記環状被塗装物の外径と略等しい内径を有する支持孔とを有し、上記第1挿入孔の深さが上記各保持爪の先端部と該保持爪の基端部側に対応するロッド状本体の端部と間の距離以上であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の環状被塗装物の抜き治具は、請求項1又は2の保持治具におけるロッド状本体の外径より大きくかつ環状被塗装物の内径より小さい内径を有する略垂直方向の第2挿入孔を有し、該第2挿入孔の深さが上記各保持爪と該保持爪の基端部側に対応するロッド状本体の端部と間の距離以上であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の環状被塗装物の静電粉体塗装方法は、請求項3のセット治具における支持孔内に環状被塗装物を配置した後、請求項1又は2の保持治具のロッド状本体を上記保持爪の基端部側に対応する端部から環状被塗装物の内周を介して上記第1挿入孔に挿入し、環状被塗装物の内周で上記各保持爪を径方向に押し縮めて各保持爪の先端部を環状被塗装物の内周に係合させることにより上記保持治具によって環状被塗装物を保持し、続いて上記保持治具を上記セット治具の第1挿入孔から離脱させて保持治具とともに環状被塗装物を静電粉体塗装装置上に配置することにより、環状被塗装物に静電粉体塗装を施した後、該塗装済みの環状被塗装物を保持した上記保持治具のロッド状本体を上記保持爪の基端部側に対応する端部から請求項4の抜き治具における第2挿入孔に挿入して該第2挿入孔で各保持爪を径方向内側に押し縮めることにより、上記塗装済みの環状被塗装物の内周から各保持爪の先端部を離脱させることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1(a)に示すように、保持治具10は、大略円柱状のロッド状本体11を備え、このロッド状本体11の軸方向中間部付近には、軸方向に沿って延びる3つの溝12がロッド状本体11の円周方向に略等間隔、つまり略120゜の間隔を隔てて形成されている。図1(a)のI-I線に沿う断面図である図1(b)に示すように、各溝12の一端部付近には、ねじ孔13が形成されている。
【0014】
各溝12内には、可撓性を有する保持爪14がロッド状本体11の軸方向に沿って配置され、保持爪14の基端部14aは、ねじ孔13に螺合するねじ15によりロッド状本体11に固定されている。なお、図1(b)では、保持爪14及びねじ15は図示省略している。図2(a)(b)にも示すように、保持爪14は、その中央部から先端部14bに至る領域が上方から見て先端部側が次第に細くなる略テーパに形成される一方、側方から見ると、斜め上向きに2段階的に屈曲した形状を有している。
【0015】
そして、保持爪14の先端部は、図1の自由状態において、後述のステータコア26の内周位置(仮想線A参照)より径方向外側に位置している。ロッド状本体11における保持爪14の先端部14bに対応する側の端部(図1の左端部)と保持爪14との間には、円筒状の錘り16(錘り部)が嵌合されて固定されている。錘り16の保持爪14側の端部付近は、次第に縮径するテーパ面を形成している。
【0016】
図3(a)(b)にセット治具17を示す。セット治具17は、大略円柱状の部材であり、径方向中央部における上端部から下端部付近に渡って断面円形の第1挿入孔18が形成されている。更に、この第1挿入孔18の下方には、次第に縮径するテーパ部20を介して、第1挿入孔18より小径の空気孔21がセット治具17の下端面まで延びるように形成されている。
【0017】
第1挿入孔18は、保持治具10におけるロッド状本体11の外径より大きくかつステータコア26の外径より小さい内径を有するとともに、第1挿入孔18の深さD1は各保持爪14の先端部と該保持爪14の基端部側に対応するロッド状本体11の端部(図1の右端部)と間の距離L1以上とされている。
【0018】
また、セット治具17の上端面付近には、第1挿入孔18の上端部に隣接して、支持孔22が第1挿入孔18と同芯に設けられている。この支持孔22は、ステータコア26の外径より僅かに小さな内径を有している。
【0019】
図4(a)(b)に示すように、抜き治具23は、大略円柱状の部材であり、径方向中央部における上端部から下端部付近に渡って断面円形の第2挿入孔24が形成されている。更に、この第2挿入孔24の下方には、第2挿入孔24より小径の空気孔25が抜き治具23の下端面まで延びるように形成されている。
【0020】
第2挿入孔24は、保持治具10におけるロッド状本体11の外径より大きくかつステータコア26の内径より小さい内径を有するとともに、第2挿入孔24の深さD2は、各保持爪14の先端部側の径方向外側への屈曲開始位置14aと該保持爪14の基端部側に対応するロッド状本体11の端部と間の距離D2以上とされている。
【0021】
以下、上記の保持治具10、セット治具17及び抜き治具23を用いてステータコア26(環状被塗装物)に静電粉体塗装を行う手順を説明する。図3(a)に矢印で示したように、まず、セット治具17の支持孔22内に未塗装のステータコア26を配置し、続いて、図5中に仮想線で示すように、ステータコア26の内周を介して第1挿入孔18内に保持治具10を挿入する。この場合、保持治具10は、ロッド状本体11における保持爪14の基端部側に対応する端部側から第1挿入孔18に挿入する。
【0022】
図5に実線で示すように、ロッド状本体11を第1挿入孔18の下端部付近まで挿入すると、各保持爪14の先端部14bがステータコア26の内周により押し縮められて、上記内周に係合する。これにより、ステータコア26は、保持治具10により保持される。
【0023】
図6(a)(b)に示すように、ステータコア26を保持した保持治具10はセット治具17の第1挿入孔18から抜き出し、この保持治具10を後述の静電粉体塗装装置30における搬送装置(チェーンコンベア等)上に載置する。そして、後述する手順で保持治具10上のステータコア26に静電粉体塗装を施す。
【0024】
続いて、塗装済みのステータコア26bを保持した保持治具10を静電粉体塗装装置から搬出し、図7中に仮想線で示すように、保持治具10を抜き治具23の第2挿入孔24に挿入する。この場合も、保持治具10は、ロッド状本体11における保持爪14の基端部に対応する側の端部から第2挿入孔24内に挿入する。
【0025】
保持治具10を第2挿入孔24内の下端部付近まで挿入すると、図7に実線ですように、保持爪14の先端部付近が第2挿入孔24で径方向に押し縮められ、上記先端部がステータコア26bの内周より径方向内側に位置することになる結果、ステータコア26bは矢印Bで示すように、抜き治具23の上面上に落下する。その後、保持治具10を第2挿入孔24から抜き出した後、上記抜き治具23の上面上のステータコア26bを回収することができる。
【0026】
図6(b)に示したように、ステータコア26は環状本体部26aの外周に、不図示のコイルを巻き付けるためのティース部26bを円周方向に所定の間隔を隔てて複数個、例えば、12個設けたものである。図8(a)に示すように、ステータコア26は、互いに同一形状のコアプレート27を所定枚数積層一体化したものであり、上記保持治具10でステータコア26を保持しながらその表面に絶縁塗装膜28を形成する。
【0027】
図9に模式的に示すように、上記絶縁塗装膜28を形成するための静電粉体塗装装置30は、第1の静電粉体塗装領域30aと、粉体除去領域30bと、第2の静電粉体塗装領域30cとを備え、各領域30a乃至30cに対応して、各々、第1の静電粉体塗装手段31、粉体除去手段32及び第2の静電粉体塗装手段33が設けられるとともに、ステータコア26を保持した保持治具10を各領域30a乃至30cを通して移送する図示しない移送手段(チェーンコンベア等)が設けられている。
【0028】
第1及び第2の静電粉体塗装手段31、33は、例えば、第1及び第2の静電粉体塗装領域30a、30cに向けて帯電(例えば摩擦帯電)された塗装粒子を噴射する粉体塗布機から構成され、例えば、特願平8−292960号の明細書及び図面に開示されたものを用いることができる。
【0029】
また、粉体除去手段32は、例えば、ばね鋼から形成された除去プレート(図示せず)を備え、この除去プレートが保持治具10に保持されたステータコア26の回転が停止しない程度にその外周面に作用し、上記外周面に付着した粉体塗料を除去する。粉体除去手段32としては、上記したもの以外に所定方向に回転される除去ブラシ等を用いることもできる。なお、図9には示さないが、静電粉体塗装装置30は、後述する高周波加熱等を行う加熱領域やそれに対応する加熱手段等も備えている。
【0030】
以下、ステータコア26の表面に絶縁塗装膜28を形成する手順を図10のフローチャートを参照しながら説明する。まず、ステップS1において、ステータコア26の前処理が行われる。これは、ステータコアの表面のプレス油、防錆油等、塗装膜の安定性や密着性等を阻害する付着物を除去する工程であり、付着物質が分解或いは蒸発しかつコア素材が酸化しない温度でステータコア26を、熱風対流により又は赤外線雰囲気炉で一定時間加熱処理する。
【0031】
前処理工程を終えたステータコア26は、常温に冷却された後、第1の静電粉体塗装工程にて粉体塗装される(S2)。すなわち、上記保持治具10によって保持されたステータコア26は、これと一体的に回転しながら第1の静電塗装領域30aを通して移動されながら、静電粉体塗装が行われる。これにより、図8(b)のように、ステータコア26の表面の実質上全域に所定厚さ、例えば、略30乃至50μm程度の絶縁塗装膜28が形成される。
【0032】
第1回目の静電粉体塗装を施されたステータコア26は、回転しながら粉体除去領域30bを通して移送され、その間に粉体除去工程が行われる(S3)。具体的には、粉体除去手段32によってステータコア26のティース部26bの外周面26cに付着した粉体のみが除去される。これにより、図8(c)に示す通り、各ティース部26bの外周面26cに付着した絶縁塗装膜28のみが除去され、ステータコア26のその他の部分の表面に付着した絶縁塗装膜28は、付着したまま保持される。
【0033】
次に、第2の静電粉体塗装工程が行われる(S4)。2回目の静電粉体塗装でも、ステータコア26の表面の実質上全域に所定厚さ、例えば、略20乃至50μmの絶縁塗装膜28が形成される。このように粉体除去工程を挟んで、静電粉体塗装工程を2度行うと、図8(d)に示す通り、ステータコア26のティース部26bの外周面26cにおける絶縁塗装膜28の膜厚T2のみが、他の領域の膜厚T1より薄くなる。
【0034】
従って、膜厚T1の領域は充分な電気的絶縁特性と防錆が保たれ、モータに組付けるときに各ティース部26bにコイル(図示せず)を巻付けたとしても、コイルとステータコア26との間に充分な電気的絶縁が確保される。一方、ステータコア26のティース部8の外周面26cの膜厚T2は比較的薄くなり、外周面26cでは充分な電気的絶縁特性を有しないが、所定の防錆効果が達成される。このように、ティース部26bの外周面26cの膜厚を薄くすることによって、モータに組み付けた際のロータ側のマグネット(図示せず)との間隔を小さくすることができ、これによってモータの効率を高めることができ、またモータの小型化にも寄与する。
【0035】
第2の静電粉体塗装工程の後、ステータコア26は高周波一次加熱工程に移行する(S5)。この高周波一次加熱工程では、塗装されたステータコア26(保持治具10に保持されている)を回転しながら高周波加熱機のスキッドコイル(図示せず)の間に通し、常温から略150℃まで所定時間、例えば、略20乃至40秒間加熱する。
【0036】
この加熱により、ステータコア26の表面を被覆する塗料粒子は溶融され、次の冷却工程(S6)でステータコア26を粉体塗料の溶融点温度以下に冷却することにより、ステータコア26の表面に塗装層が固着される。この冷却の後、ステータコア26を保持する保持治具10及びその周辺に対し圧縮空気が噴射され、噴射された圧縮空気によってこれらに付着した余剰粉体塗料が除去される。
【0037】
更に、ステータコア26は高周波二次加熱工程(S7)に移行し、塗装されたステータコア26(保持治具10に保持されている)を回転しながら高周波加熱機のスキッドコイル(図示せず)の間に通し、前処理工程後の温度を基準に昇温時間略20乃至40秒間で略200乃至230℃に再加熱する。スキッドコイルの間を通過したステータコア26は、冷却工程(S8)で圧縮空気噴射又は送風機により常温まで強制冷却され、同時に保持工具及びステータコア26に付着した余剰粉体が除去される。
【0038】
上記実施の形態の保持治具10(図1)における錘り16は、静電粉体塗装装置30上での保持治具10の回転を促進して、保持治具10で保持されているステータコア26の各部に均一に塗装を施す役割を果たすものである。例えば、内径が15mm以下程度の比較的小型のステータコア26を保持する保持治具10については、ロッド状本体11の自重が比較的小さいため、係る錘り16を備えることが好ましい。
【0039】
これに対して、例えば、内径が15mmを超える比較的大型のステータコア26を保持するための保持治具10については、ロッド状本体11の外径を大きくすることにより、保持治具10の自重を比較的大きくできるため、錘り16は必ずしも設ける必要はない。その場合、保持治具10のロッド状本体11は、図12に示すように、軸方向両端部近傍の小径部11aと、軸方向中間部付近の大径部11bとで構成することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1の環状被塗装物の保持治具は、環状被塗装物を内周で保持する保持治具であって、上記環状被塗装物の内径より小さい外径を有するロッド状本体と、該ロッド状本体の略同一軸方向位置における外周に沿って配置され各基端部がロッド状本体に接続された複数の可撓性を有する保持爪とを備え、各保持爪の先端部は自由状態において、上記環状被塗装物の内周位置より径方向外側に位置するものであるから、各保持爪の先端部を径方向内側に押し縮めながら上記先端部を環状被塗装物の内周に係合させることにより、本保持治具で環状被塗装物を保持することができる。このように、本発明では、従来のように1対の保持治具間で環状被塗装物を保持する場合に比べて、単一の保持治具により、極めて簡単な操作で環状被塗装物を保持することができるので、静電粉体塗装処理を効率的に行うことができるとともに、個々の環状被塗装物を単一の保持治具で保持できるので、所定個数の環状被塗装物を保持するのに必要な保持治具の個数が従来に比べて半減する。
【0041】
また、本発明では、各環状被塗装物が単一の保持治具で保持されるので、従来の1対の保持治具間で環状被塗装物を保持する場合のように、保持治具間の結合状態に弛みが生じることにより、保持治具に対して環状被塗装物が偏芯したり、保持が不安定になることがなく、単一の保持治具で環状被塗装物を安定的に保持して塗装後の品質を高めることができる。
【0042】
請求項2の環状被塗装物の保持治具は、請求項1の構成において、上記保持爪と該保持爪の先端部側に対応するロッド状本体の端部との間におけるロッド状本体の外周に、ロッド状本体より大径の錘り部が設けられたものであり、このような錘り部を用いて保持治具の重量を増すことにより、環状被塗装物を保持した保持治具を静電粉体塗装装置上に配置した時に、保持治具が静電粉体塗装装置上で回転しやすくなり、これにより、保持治具で保持されている環状被塗装物の各部に対してむらなく塗装できるようになる。
【0043】
請求項3の環状被塗装物のセット治具は、請求項1又は2の保持治具におけるロッド状本体の外径より大きくかつ環状被塗装物の外径より小さい内径を有する略垂直方向の第1挿入孔と、該第1挿入孔の上端部付近に略同芯に設けられた上記環状被塗装物の外径と略等しい内径を有する支持孔とを有し、上記第1挿入孔の深さが上記各保持爪の先端部と該保持爪の基端部側に対応するロッド状本体の端部と間の距離以上としたものであり、係るセット治具を用いることにより、上記保持治具の保持爪で環状被塗装物を容易に保持させることができる。
【0044】
すなわち、まず、上記セット治具の支持孔内に環状被塗装物を挿入した後、上記保持治具のロッド状本体を上記保持爪の基端部側に対応する側の端部から環状被塗装物の内周を介して上記第1挿入孔に挿入すると、上記保持爪の先端部付近が環状被塗装物の内周によって径方向内側に押し縮められ、保持爪の先端部が環状被塗装物の内周に係合する。この状態で、保持治具をセット治具の第1挿入孔から引き抜き、静電粉体塗装装置上に配置して塗装を開始することができる。なお、第1挿入孔の深さは、各保持爪の先端部と該保持爪の基端部側に対応するロッド状本体の端部と間の距離以上であるから、ロッド状本体を最大限第1挿入孔に挿入するまでの間に各保持爪の先端部を支持孔内の環状被塗装物の内周に係合させることが可能である。
【0045】
請求項4の環状被塗装物の抜き治具は、請求項1又は2の保持治具におけるロッド状本体の外径より大きくかつ環状被塗装物の内径より小さい内径を有する略垂直方向の第2挿入孔を有し、該第2挿入孔の深さが上記各保持爪と該保持爪の基端部側に対応するロッド状本体の端部と間の距離以上としたものであり、係る抜き治具を用いることにより、塗装済みの環状被塗装物を上記保持治具から容易に抜き取ることができる。
【0046】
すなわち、塗装済みの環状被塗装物を保持した保持治具のロッド状本体を上記保持爪の基端部側に対応する側の端部から上記第2挿入孔に挿入すると、保持爪の先端部が第2挿入孔で径方向内側に押し縮められることにより、環状被塗装物の内周から保持爪の先端部が離脱し、これにより、環状被塗装物は抜き治具上に落下する。その後、保持治具を抜き治具の第2挿入孔から抜き出した後、塗装済みの環状被塗装物を抜き治具上から回収できる。
【0047】
請求項5の環状被塗装物の静電粉体塗装方法は、請求項3のセット治具における支持孔内に環状被塗装物を配置した後、請求項1又は2の保持治具のロッド状本体を上記保持爪の基端部側に対応する端部から環状被塗装物の内周を介して上記第1挿入孔に挿入し、環状被塗装物の内周で上記各保持爪を径方向に押し縮めて各保持爪の先端部を環状被塗装物の内周に係合させることにより上記保持治具によって環状被塗装物を保持し、続いて上記保持治具を上記セット治具の第1挿入孔から離脱させて保持治具とともに環状被塗装物を静電粉体塗装装置上に配置することにより、環状被塗装物に静電粉体塗装を施した後、該塗装済みの環状被塗装物を保持した上記保持治具のロッド状本体を上記保持爪の基端部側に対応する端部から請求項4の抜き治具における第2挿入孔に挿入して該第2挿入孔で各保持爪を径方向内側に押し縮めることにより、上記塗装済みの環状被塗装物の内周から各保持爪の先端部を離脱させるものであり、係る手順で環状被塗装物に対する塗装を行えば、塗装中は個々の環状被塗装物を単一の保持治具で保持できるので、所定個数の環状被塗装物を保持するのに必要な保持治具の個数が従来に比べて半減するとともに、単一の保持治具により環状被塗装物を安定的に保持して塗装後の品質を向上させることができる。
【0048】
また、保持治具に対する環状被塗装物のセット及び抜き取りは、各々上記セット治具及び抜き治具を用いて容易に行うことができるので、静電粉体塗装処理を効率的に行うことができるとともに、セット治具及び抜き治具については、各々必要最小限の個数を準備すればよいので、全体として、治具の個数を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る保持治具を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のI-I線に沿う拡大断面図。
【図2】上記保持治具における保持爪を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図3】本発明の実施の形態におけるセット治具を示す図であって、(a)は垂直断面図、(b)は平面図。
【図4】本発明の実施の形態における抜き治具を示す図であって、(a)は垂直断面図、(b)は平面図。
【図5】上記セット治具を用いて上記保持治具にステータコアをセットする様子を示す垂直断面図。
【図6】上記ステータコアをセットした保持治具を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のVII-VII線に沿う断面図。
【図7】上記抜き治具を用いて上記保持治具からステータコアを取り外す様子を示す垂直断面図。
【図8】上記ステータコアに静電粉体塗装を施す手順を示す断面図。
【図9】上記ステータコアに静電粉体塗装を施す静電粉体塗装装置を示す説明図。
【図10】上記ステータコアに静電粉体塗装を施す手順を示すフローチャート。
【図11】上記保持治具の変形例を示す正面図。
【図12】従来の保持治具を示す部分断面正面図。
【図13】上記従来の保持治具を用いてステータコアを保持した状態を示す断面図。
【符号の説明】
10 保持治具
11 ロッド状本体
14 保持爪
16 錘り(錘り部)
17 セット治具
18 第1挿入孔
22 支持孔
23 抜き治具
24 第2挿入孔
26 ステータコア(環状被塗装物)

Claims (5)

  1. 環状被塗装物を内周で保持する保持治具であって、
    上記環状被塗装物の内径より小さい外径を有するロッド状本体と、該ロッド状本体の略同一軸方向位置における外周に沿って配置され各基端部がロッド状本体に接続された複数の可撓性を有する保持爪とを備え、各保持爪の先端部は自由状態において、上記環状被塗装物の内周位置より径方向外側に位置することを特徴とする環状被塗装物の保持治具。
  2. 上記保持爪と該保持爪の先端部側に対応するロッド状本体の端部との間におけるロッド状本体の外周に、ロッド状本体より大径の錘り部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の環状被塗装物の保持治具。
  3. 請求項1又は2の保持治具におけるロッド状本体の外径より大きくかつ環状被塗装物の外径より小さい内径を有する略垂直方向の第1挿入孔と、該第1挿入孔の上端部付近に略同芯に設けられた上記環状被塗装物の外径と略等しい内径を有する支持孔とを有し、上記第1挿入孔の深さが上記各保持爪の先端部と該保持爪の基端部側に対応するロッド状本体の端部と間の距離以上であることを特徴とする環状被塗装物のセット治具。
  4. 請求項1又は2の保持治具におけるロッド状本体の外径より大きくかつ環状被塗装物の内径より小さい内径を有する略垂直方向の第2挿入孔を有し、該第2挿入孔の深さが上記各保持爪と該保持爪の基端部側に対応するロッド状本体の端部と間の距離以上であることを特徴とする環状被塗装物の抜き治具。
  5. 請求項3のセット治具における支持孔内に環状被塗装物を配置した後、請求項1又は2の保持治具のロッド状本体を上記保持爪の基端部側に対応する端部から環状被塗装物の内周を介して上記第1挿入孔に挿入し、環状被塗装物の内周で上記各保持爪を径方向に押し縮めて各保持爪の先端部を環状被塗装物の内周に係合させることにより上記保持治具によって環状被塗装物を保持し、続いて上記保持治具を上記セット治具の第1挿入孔から離脱させて保持治具とともに環状被塗装物を静電粉体塗装装置上に配置することにより、環状被塗装物に静電粉体塗装を施した後、該塗装済みの環状被塗装物を保持した上記保持治具のロッド状本体を上記保持爪の基端部側に対応する端部から請求項4の抜き治具における第2挿入孔に挿入して該第2挿入孔で各保持爪を径方向内側に押し縮めることにより、上記塗装済みの環状被塗装物の内周から各保持爪の先端部を離脱させることを特徴とする環状被塗装物の静電粉体塗装方法。
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