したがって、細菌内で真核生物のグリコシルトランスフェラーゼを産生する改善された方法が必要である。本発明は、これを解決し、また、他の必要性を解決する。
(本発明の簡単な概要)
本発明は、マルトース結合タンパク質ドメイン(MBD)を含んでなる不溶性の組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼをリフォールディングする方法を提供する。不溶性の組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼを可溶化緩衝液中に可溶化し、次いで、酸化還元対を含んでなるリフォールディング用緩衝液に接触させ、リフォールディングされた真核生物グリコシルトランスフェラーゼが供与体基質から受容体基質への糖の移送を触媒するようにする。一実施形態において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、タンパク質のステム領域の全てまたは一部を除去するために切断される。他の実施形態において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼにおける不対合システインが、非システインアミノ酸による置換によって除去される。さらなる一実施形態において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼにおける不対合システインが、非システインアミノ酸による置換によって除去され、該真核生物グリコシルトランスフェラーゼはまた、タンパク質のステム領域の全部または一部を除去するために切断される。
一実施形態において、該真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、GnT1、GalT1、StIII Gal3、St3GalI、St6 GalNAcTI、コアGalTI、GalNAcT2よりなる群から選択される。
一実施形態において、該真核生物グリコシルトランスフェラーゼはさらに、精製ドメイン、例えば、澱粉結合ドメイン(SBD)、チオレドキシンドメイン、SUMOドメイン、ポリ−Hisドメイン、mycエピトープドメイン、およびグルタチオン−S−トランスフェラーゼドメインを含んでなる。
一実施形態において、該真核生物グリコシルトランスフェラーゼはさらに、自己開裂ドメインを含んでなる。
一実施形態において、該真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、不溶性封入体として、細菌宿主細胞内に発現する。
一実施形態において、第2の不溶性組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼが、第1の真核生物グリコシルトランスフェラーゼによってリフォールディングされる。さらなる一実施形態において、第3の不溶性組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼが、第1の真核生物グリコシルトランスフェラーゼおよび第2の真核生物グリコシルトランスフェラーゼによってリフォールディングされる。使用者の必要に依って、さらなる不溶性組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼが、一緒に加えられ、リフォールディングでき、例えば、4種、5種、6種、7種、8種、9種、または10種のグリコシルトランスフェラーゼを一緒にリフォールディングできる。
一実施形態において、該レドックス対は、還元グルタチオン/酸化グルタチオン(GSH/GSSG)およびシステイン/シスタミンよりなる群から選択される。
一実施形態において、該受容体基質は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、および糖ペプチドから選択される。
一実施形態において、該真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、シアリルトランスフェラーゼである。シアリルトランスフェラーゼとしては、例えば、StIII Gal3、St3GalI、St6 GalNAcTIを挙げることができる。さらなる一局面において、該供与体基質は、CMP−シアリル酸PEG分子であり、該受容体基質は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、および糖ペプチドから選択される。
また、本発明は、ステムアンカー領域および膜貫通領域が該タンパク質から欠失しており、該グリコシルトランスフェラーゼがマルトース結合タンパク質(MBP)ドメインにインフレームで融合している組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼを提供する。一実施形態において、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼとMBPドメインとの融合は、細菌、例えば、大腸菌における不溶性封入体として発現する。
一実施形態において、ステム領域の全部または一部が、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼから欠失される。他の実施形態において、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼ内の不対合システインが、非システインアミノ酸による置換によって除去される。
さらなる一実施形態において、該組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、以下のうちの1つである:GnT1タンパク質、GalT1タンパク質、StIII Gal3タンパク質、St3GalIタンパク質、St6 GalNAcTIタンパク質、コアGalTIタンパク質、またはGalNAcT2タンパク質。
一実施形態において、該組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、GnT1タンパク質である。一局面において、該GnT1タンパク質は、GnT1Δ35およびGnT1Δ103から選択される切断ヒトGnT1タンパク質である。他の局面において、該GnT1タンパク質は、CYS121ALA、CYS121ASP、およびARG120ALA、CYS121HISよりなる群から選択される不対合システイン置換を含んでなるヒトGnT1タンパク質である。さらなる一局面において、GnT1タンパク質は、切断されており、かつ置換変異により不対合システイン残基を除去されているものである。
一実施形態において、該組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、GalT1タンパク質である。一局面において、該GalT1タンパク質は、GalT1Δ70およびGalT1Δ129から選択される切断ウシGalT1タンパク質である。他の局面において、該GalT1タンパク質は、CYS342THRの不対合システイン置換を含んでなるウシGalT1タンパク質である。さらなる一局面において、該GalT1タンパク質は、切断されており、かつ置換変異により不対合システイン残基を除去されているものである。
一実施形態において、該組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、ST3GalIIIタンパク質である。一局面において、該ST3GalIIIタンパク質は、ST3GalIIIΔ28、ST3GalIIIΔ73、ST3GalIIIΔ85およびST3GalIIIΔ86から選択される切断ラットST3GalIIIタンパク質である。他の局面において、ST3GalIIIタンパク質は、不対合システイン残基に対するアミノ酸置換を含んでなる。さらなる一局面において、該ST3GalIIIタンパク質は、切断されており、かつ置換変異により不対合システイン残基を除去されているものである。
一実施形態において、該グリコシルトランスフェラーゼが、コア1 GalT1タンパク質である請求項15の組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼ。一局面において、コア1GalT1タンパク質は、切断ショウジョウバエタンパク質または切断ヒトタンパク質である。他の局面において、ショウジョウバエまたはヒトのコア1GalT1タンパク質は、不対合システイン残基に対するアミノ酸置換を含んでなる。さらなる一局面において、ショウジョウバエまたはヒトのコア1GalT1タンパク質は、切断されており、かつ置換変異により不対合システイン残基を除去されているものである。
一実施形態において、該組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、ST3Gal1タンパク質である。一局面において、該ST3GalIタンパク質は、ST3Gal1Δ29、ST3Gal1Δ45、およびST3Gal1Δ56から選択される切断ヒトタンパク質である。他の局面において、ST3Gal1タンパク質は、不対合システイン残基に対するアミノ酸置換を含んでなる。さらなる一局面において、該ST3Gal1タンパク質は、切断されており、かつ置換変異により不対合システイン残基を除去されているものである。
一実施形態において、該組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、ST6 GalNAc1タンパク質である。一局面において、該ST6 GalNAc1タンパク質は、切断マウスタンパク質、切断ニワトリタンパク質または切断ヒトタンパク質であり、例えば、表14に挙げられた切断体のうちの1つである。他の局面において、他の局面において、マウス、ニワトリ、またはヒトのST6 GalNAc1タンパク質は、不対合システイン残基に対するアミノ酸置換を含んでなる。さらなる一局面において、該マウス、ニワトリ、またはヒトのST6 GalNAc1タンパク質は、切断されており、かつ置換変異により不対合システイン残基を除去されているものである。
一実施形態において、該グリコシルトランスフェラーゼが、GalNAcT2タンパク質である請求項15の組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼ。一局面において、該GalNAcT2タンパク質は、GalNAcT2Δ40、GalNAcT2Δ51、GalNAcT2Δ74およびGalNAcT2Δ95から選択される切断ヒトタンパク質である。他の局面において、該ヒトGalNAcT2タンパク質は、不対合システイン残基に対するアミノ酸置換を含んでなる。さらなる一局面において、該ヒトGalNAcT2タンパク質は、切断されており、かつ置換変異により不対合システイン残基を除去されているものである。
また本発明は、タンパク質がリフォールディングされ、酵素活性を有した後に、上記に挙げた組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼを用いて、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、または糖ペプチドをリモデリングする方法を提供する。
本発明は、活性形態における不溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼをリフォールディングする改善した方法を提供し、また、リフォールディング特性を増強させたグリコシルトランスフェラーゼ、例えばN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTI)酵素を提供する。
一局面において、本発明は、変異して、不溶性沈殿物、例えば細菌封入体からの酵素のリフォールディングを増強するアミノ酸により、不対合システイン残基を置換した組換え真核生物N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTI)酵素を提供する。GnT1酵素は、GnT1酵素の少なくとも触媒ドメインを含む。GnT1酵素酵素は、生物学的に活性であり、すなわち、供与体基質から受容体基質への移送を触媒することができる。
一実施形態において、GnTI酵素はヒトタンパク質である。ヒトGnT1におけるCYS121残基の幾つかの変異はリフォールディングを増強する。このような変異体としては、例えば、CYS121SER変異、CYS121ALA変異、CYS121ASP変異、および二重変異体のARG120ALA、CYS121HISが挙げられる。GnT1変異体の代表的配列は図7〜11に示されている。他の真核生物において、例えば不対合システイン残基CYS123の同様な変異はGnT1酵素のリフォールディングを増強する。
他の実施形態において、GnTI酵素はまた、アミノ酸タグ、例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、ポリヒスチジンタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、澱粉結合タンパク質(SBP)、およびmycエピトープを含む。
他の局面において、本発明は、変異して、不溶性沈殿物、例えば細菌封入体からの酵素のリフォールディングを増強するアミノ酸によって不対合システイン残基を置換した組換え真核生物GnTI酵素をコードする核酸を提供する。上記の通り、コードされたGnT1酵素は、GnT1酵素の少なくとも触媒ドメインを含み、そして生物学的に活性である。すなわちそれは、供与体基質から受容体基質への移送を触媒することができる。
一実施形態において、該核酸はヒトGnTI酵素をコードする。ヒトGnT1におけるCYS121残基の幾つかの変異はリフォールディングを増強する。このような変異体としては、例えば、CYS121SER変異、CYS121ALA変異、CYS121ASP変異、および二重変異体のARG120ALA、CYS121HISが挙げられる。GnT1変異タンパク質および核酸の代表的核酸配列は、図7〜11に示されている。他の真核生物において、例えば不対合システイン残基CYS123の同様な変異はGnT1酵素のリフォールディングを増強する。
さらなる一実施形態において、コードされたGnTI酵素はまた、アミノ酸タグ、例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、ポリヒスチジンタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、澱粉結合タンパク質(SBP)、およびmycエピトープを含む。
また本発明は、変異GnT1核酸を含む発現ベクター、GnT1発現ベクターを含む宿主細胞、および宿主/発現ベクター系を用いて変異GnT1酵素を製造する方法を含む。
他の実施形態において、本発明は、末端マンノース残基を有する受容体分子を、活性化N−アセチルグルコサミン分子、および変異してリフォールディングを増強させた真核生物GnTI酵素に接触させることによって、該受容体分子にN−アセチルグルコサミン残基を付加する方法を提供する。該受容体分子としては、例えば、多糖、オリゴ糖、糖脂質、または糖タンパク質であり得る。
他の局面において、本発明は、グリコシルトランスフェラーゼを、レドックス対を含むリフォールディング用緩衝液に接触させることによって、単一容器内で少なくとも2種の不溶性組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質をリフォールディングする方法を提供する。リフォールディング後、リフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼの少なくとも2種は生物学的活性を有する。例えばそれらは、供与体基質から受容体基質への移送を触媒することができる。
該リフォールディング用緩衝液はまた、界面活性剤、カオトロピック剤、またはアルギニン、またはPEGを含み得る。いくつかの実施形態において、該リフォールディング用緩衝液のpHは、6.0と10.0との間である。一実施形態において、該リフォールディング用緩衝液のpHは、6.5と8.0との間である。他の実施形態において、該リフォールディング用緩衝液のpHは、8.0と9.0との間である。
他の実施形態において、該グリコシルトランスフェラーゼはアミノ酸タグ、例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、ポリヒスチジンタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、澱粉結合タンパク質(SBP)、およびmycエピトープを含む。
一実施形態において、N−結合グリカン生合成経路の1種超のグリコシルトランスフェラーゼが一緒にリフォールディングされる。
一実施形態において、本発明の方法を用いて、シアリルトランスフェラーゼが他のグリコシルトランスフェラーゼと共にリフォールディングされる。
一実施形態において、本発明の方法を用いて、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼが他のグリコシルトランスフェラーゼと共にリフォールディングされる。
一実施形態において、本発明の方法を用いて、ガラクトシルトランスフェラーゼを他のグリコシルトランスフェラーゼと共にリフォールディングされる。
別の一実施形態において、本発明の方法を用いて、シアリルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、およびガラクトシルトランスフェラーゼが、単一容器内で一緒にリフォールディングされる。
一実施形態において、O−結合グリカン生合成経路の1種超のグリコシルトランスフェラーゼが一緒にリフォールディングされる。さらなる一実施形態において、第1の酵素はN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼである。好ましい一実施形態において、第1の酵素はN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2(GalNAcT2)である。
また本発明は、変異して、不溶性沈殿物、例えば細菌封入体からの酵素のリフォールディングを増強するアミノ酸によって不対合システイン残基を置換した組換え真核生物GnTI酵素および同一容器内でリフォールディングされた少なくとも1種の他のグリコシルトランスフェラーゼを含む反応混合物を提供する。第2のグリコシルトランスフェラーゼは、例えば、シアリルトランスフェラーゼまたはガラクトシルトランスフェラーゼであり得る。一実施形態において、該反応混合物は、変異真核生物GnT1酵素、シアリルトランスフェラーゼ、およびガラクトシルトランスフェラーゼを含む。例えば、多糖、オリゴ糖、糖脂質、または糖タンパク質を製造するために、供与体の糖と受容体分子との反応混合物を使用できる。
他の局面において、本発明は、(a)シアリルトランスフェラーゼを可溶化し;次いで(b)該可溶化シアリルトランスフェラーゼを、レドックス対を含むリフォールディング用緩衝液に接触させることによって、不溶性組換え真核生物シアリルトランスフェラーゼをリフォールディングする方法を提供する。リフォールディングされたシアリルトランスフェラーゼは生物学的に活性であり、供与体基質から受容体基質へのシアリン酸の移送を触媒する。一実施形態において、リフォールディングされたシアリルトランスフェラーゼは透析されるかまたはダイアフィルトレートされる。
該リフォールディング用緩衝液はまた、界面活性剤、カオトロピック剤、またはアルギニンを含み得る。いくつかの実施形態において、該リフォールディング用緩衝液のpHは、6.0と10.0との間である。一実施形態において、該リフォールディング用緩衝液のpHは、6.5と8.0との間である。他の実施形態において、該リフォールディング用緩衝液のpHは、8.0と9.0との間である。他の実施形態において、該リフォールディング用緩衝液のpHは、7.5と8.5との間である。
一実施形態において、該リフォールディング用緩衝液中の該レドックス対は、還元グルタチオン/酸化グルタチオン(GSH/GSSG)である。さらなる一実施形態において、GSH/GSSGのモル比は100:1と1:10との間である。好ましい一実施形態において、GSH/GSSGのモル比は10:1である。さらなる一実施形態において、該リフォールディング用緩衝液は、約0.02〜10mMのGSH、0.005〜10mMのGSSG、0.005〜10mMのラウリルマルトシド、50〜250mMのNaCl、2〜10mMのKCl、0.01〜0.05%のPEG3350、および150〜550mMのL−アルギニンを含んでなる。
他の実施形態において、該シアリルトランスフェラーゼは、アミノ酸タグ、例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、ポリヒスチジンタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、澱粉結合タンパク質(SBP)、およびmycエピトープを含む。さらなる一実施形態において、該シアリルトランスフェラーゼは、該アミノ酸タグに結合するタグ結合分子を用いて精製される。例えば、該アミノ酸タグはMBPであり得、該タグ結合分子はアミロース、マルトース、またはシクロデキストリンであり得る。
他の実施形態において、リフォールディングされた該シアリルトランスフェラーゼは、CMP−シアリン酸から糖タンパク質へのシアリン酸の移送を触媒する。
さらなる一実施形態において、リフォールディングされた該シアリルトランスフェラーゼは、CMP−SA−PEG(10kDa)またはCMP−SA−PEG(20kDa)から糖タンパク質への10KPEGまたは20K PEGの移送を触媒する。
他の実施形態において、該シアリルトランスフェラーゼは、ラットの肝臓ST3GalIIIである。
他の局面において、本発明は、本明細書に開示された方法を用いてリフォールディングされた、哺乳動物のリフォールディングされたシアリルトランスフェラーゼと共にCMP−シアリン酸に、糖タンパク質を接触させることによって、シアリル部分を糖タンパク質に付加する方法を提供する。
他の局面において、本発明は、糖タンパク質にPEG部分を付加する方法を提供し、該方法は、CMP−SA−PEG(10kDa)またはCMP−SA−PEG(20kDa)、および本明細書に開示された方法を用いてリフォールディングされた、哺乳動物のリフォールディングされたシアリルトランスフェラーゼに、糖タンパク質を接触させることを含んでなる。
さらなる一局面において、本発明は、GalNAcT2を可溶化緩衝液に可溶化し;次いで、該GalNAcT2をリフォールディングするために、レドックス対を含むリフォールディング緩衝液に該可溶化GalNAcT2を接触させることによって、不溶性の組換え真核生物N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(GalNAcT2)をリフォールディングする方法を提供する。リフォールディング後、リフォールディングされたGalNAcT2は、供与体基質から受容体基質へのN−アセチルガラクトサミンの移送を触媒する。該方法は、任意に、リフォールディングされたGalNAcT2を透析またはダイアフィルトレートするステップまたはリフォールディングされたGalNAcT2のさらなる精製を含む。
幾つかの実施形態において、リフォールディング用緩衝液のレドックス対は還元グルタチオン/酸化グルタチオン(GSH/GSSG)またはシステイン/シスタミンである。該リフォールディング用緩衝液はまた以下のものを含み得る:界面活性剤、カオトロピック剤、またはアルギニン。幾つかの実施形態において、該リフォールディング用緩衝液のpHは、6.0と10.0との間である。好ましい一実施形態において、該リフォールディング用緩衝液のpHは、約8.0である。
好ましい実施形態において、該可溶化緩衝液のpHは、6.0と10.0との間である。より好ましい一実施形態において、該可溶化緩衝液のpHは、約8.0である。
組換え発現されたGalNAcT2は、アミノ酸タグを含み得る。該アミノ酸タグは、例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、ポリヒスチジンタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、澱粉結合タンパク質(SBP)、およびmycエピトープであり得る。リフォールディングされた該GalNAcT2を精製するために、タグ結合分子を使用できる。該アミノ酸タグがMBPの場合、該タグ結合分子は一般に、以下のうちの1つである:アミロース、マルトース、またはシクロデキストリン。
好ましい一実施形態において、リフォールディングされた該GalNAcT2は、供与体基質から、ペプチド、タンパク質、糖ペプチドまたは糖タンパク質へのN−アセチルガラクトサミンの移送を触媒する。
(定義)
本発明の組換えグリコシルトランスフェラーゼタンパク質は、供与体基質から受容体基質へのサッカライドの移送に有用である。この付加は一般に、オリゴ糖の非還元端または生体分子の炭水化物部分で生じる。本明細書に定義される生体分子としては、限定はしないが、炭水化物、タンパク質(例えば、糖タンパク質)、および脂質(例えば、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質およびガングリオシド)のような、生物学的に重要な分子が挙げられる。
以下の略号が本明細書に用いられる:
Ara=アラビノシル;
Fru=フルクトシル;
Fuc=フコシル;
Gal=ガラクトシル;
GalNAc=N−アセチルガラクトシルアミノ;
Glc=グルコシル;
GlcNAc=N−アセチルグルコシルアミノ;
Man=マンノシル;および
NeuAc=シアリル(N−アセチルノイラミニル)
FTまたはFucT=フコシルトランスフェラーゼ*
ST=シアリルトランスフェラーゼ*
GalT=ガラクトシルトランスフェラーゼ*。
本明細書では、特定のグリコシルトランスフェラーゼの同一性を示すために、当該分野で慣例的に用いられる命名法にしたがって、算用数字とローマ数字とは交換可能に用いられる(例えば、FTVIIとFT7とは同一のフコシルトランスフェラーゼを言う)。
オリゴ糖は、還元端の糖が実際に還元糖であるか否かを問わず、還元端および非還元端を有すると考えられる。認められた命名法に従い、オリゴ糖は本明細書において、左側に非還元端を、右側に還元端を有して描かれている。
本明細書に記載される全てのオリゴ糖は、非還元糖の名称または略号(例えば、Gal)、続いて、グリコシド結合の立体配置(αまたはβ)、環結合、該結合に関与する還元糖の環の位置、次いで還元糖の名称または略号を有して記載されている(例えば、GlcNAc)。2つの糖の間の結合は、例えば、2,3,2→3,または(2,3)として表現できる。糖の各々はピラノースまたはフラノースである。
用語の「シアリン酸」は、炭素9個のカルボキシル化糖のファミリーの任意のメンバーを言う。シアリン酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N−アセチルノイラミン酸(2−ケト−5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノース−1−オン酸(Neu5Ac、NeuAc、またはNANAと略号化されることが多い)である。該ファミリーの第2のメンバーは、N−グリコシル−ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)であり、ここでNeuAcのN−アセチル基はヒドロキシル化されている。第3のシアリン酸ファミリーメンバーは、2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(KDN)である(Nadanoら(1986)J.Biol.Chem.261:11550−11557頁;Kanamoriら、J.Biol.Chem.265:21811−21819頁(1990))。また、9−O−ラクチル−Neu5Acまたは9−O−アセチル−Neu5Acなどの9−O−C1−C6アシル−Neu5Acなどの9−置換シアリン酸、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acも含まれる。このシアリン酸ファミリーのレビューに関しては、例えば、Varki、Glycobiology2:25−40頁(1992);Sialic Acids:Chemistry、Metabolism and Function、R.Schauer編集(ニューヨーク、スプリンガー−フェアラグ(1992))を参照されたい。シアリル化法におけるシアリン酸化後の合成および使用法は、1992年10月1日公開の国際出願公開第92/16640号に開示されている。
グリコシルトランスフェラーゼに対する「受容体基質」は、特定のグリコシルトランスフェラーゼに対する受容体として働くオリゴ糖部分である。受容体基質を、対応するグリコシルトランスフェラーゼおよび糖供与体基質、ならびに他の必要な反応混合物成分に接触させ、該反応混合物を十分な時間インキュベートする場合、該グリコシルトランスフェラーゼは糖残基を、糖供与体基質から受容体基質へと移送させる。該受容体基質は特定のグリコシルトランスフェラーゼの種々のタイプによって変わることが多い。例えば、哺乳動物ガラクトシド2−L−フコシルトランスフェラーゼ(α1,2−フコシルトランスフェラーゼ)に対する受容体基質とは、オリゴ糖の非還元末端に、Galβ1,4−GlcNAc−Rを含み、このフコシルトランスフェラーゼは、α1,2結合を介してフコース残基をGalに結合させる。末端Galβ1,4−GlcNAc−RおよびGalβ1,3−GlcNAc−Rならびにそれらのシアリル化アナログは、それぞれ、α1,3およびα1,4−フコシルトランスフェラーゼに対する受容体基質である。しかし、これらの酵素はフコース残基を受容体基質のGlcNAc残基に付加させる。したがって、用語の「受容体基質」は、特定の適用に関する特定の対象グリコシルトランスフェラーゼに関連して考慮される。さらなるグリコシルトランスフェラーゼに対する受容体基質が本明細書に記載されている。受容体基質としてはまた、例えば、ペプチド、タンパク質、糖ペプチド、および糖タンパク質が挙げられる。
グリコシルトランスフェラーゼに対する「供与体基質」は、活性化ヌクレオチド糖である。このような活性化糖は、一般に、ヌクレオシド一リン酸またはヌクレオシド二リン酸が遊離基として働く、糖のウリジン、グアノシン、およびシチジンの一リン酸誘導体(それぞれ、UMP、GMPおよびCMP)または二リン酸誘導体(それぞれ、UDP、GDPおよびCDP)からなる。例えば、フコシルトランスフェラーゼに対する供与体基質は、GDP−フコースである。シアリルトランスフェラーゼに対する供与体基質は、例えば、所望のシアリン酸を含んでなる活性化糖ヌクレオチドである。例えば、NeuAcn場合、活性化糖はCMP−NeuAcである。他の供与体基質としては、例えば、GDPマンノース、UDP−ガラクトース、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−NeuAc−PEG(CMP−シアリン酸−PEGとも称される)、UDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−グルコース、UDP−グルコリオン酸、およびUDP−キシロースが挙げられる。糖としては、例えば、NeuAc、マンノース、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、グルコース、グルコリオン酸、およびキシロースが挙げられる。細菌系、植物系、および真菌系は、時には他の活性化ヌクレオチド糖を使用できる。
本明細書に用いられる「タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、または糖ペプチドをリモデリングする方法」は、グリコシルトランスフェラーゼを用いて、糖残基を、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、または糖ペプチドに付加することを言う。好ましい一実施形態において、糖残基はPEG分子と共有結合している。
本明細書に用いられる「真核生物グリコシルトランスフェラーゼ」は、真核生物に由来し、供与体基質(すなわち、活性化ヌクレオチド糖)から受容体基質(例えば、オリゴ糖、糖脂質、ペプチド、タンパク質、糖ペプチド、または糖タンパク質)への糖残基の移送を触媒する酵素を言う。好ましい一実施形態において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、糖を、供与体基質からペプチド、タンパク質、糖ペプチド、または糖タンパク質へ移送させる。他の好ましい実施形態において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、II型膜貫通グリコシルトランスフェラーゼである。真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、真核生物、例えば、多細胞真核生物、植物、ショウジョウバエまたは線虫などの無脊椎動物、脊椎動物、両性類または爬虫類、哺乳動物、齧歯類、霊長類、ヒト、ウサギ、ラット、マウス、ウシ、またはブタなどに由来するものであり得る。
本明細書に用いられる「真核生物N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTIまたはGNTI)」は、真核生物から単離されたβ−1,2−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIを言う。該酵素は、UDP−GlcNAc供与体から、マンノース糖を含んでなる受容体分子へのN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の移送を触媒する。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様に、GnTIは膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。真核生物GnT1タンパク質としては、例えば、各々が参照として本明細書に組み込まれているヒト、登録番号NP−002397;チャイニーズハムスター、登録番号AAK61868;ウサギ、登録番号AAA31493;ラット、登録番号NP−110488;ゴールデンハムスター、登録番号AAD04130;マウス、登録番号P27808;ゼブラフィッシュ、登録番号AAH58297;アフリカツメガエル、登録番号CAC51119;ショウジョウバエ、登録番号NP−525117;ハマダラカ、登録番号XP−315359;線虫、登録番号NP−497719;Physcomitrella patens、登録番号CAD22107;ジャガイモ、登録番号CAC80697;タバコ、登録番号CAC80702;イネ、登録番号CAD30022;Nicotiana benthamiana,登録番号CAC82507;およびシロイヌナズナ、登録番号NP_195537が挙げられ、各々が参照として本明細書に組み込まれている。
本明細書に用いられている「真核生物N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(GalNAcT)」は、真核生物から単離されたN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼを言う。該酵素は、UDP−GalNAc供与体から受容体分子へのN−アセチルガラクトサミニン(GalNAc)の移送を触媒する。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様、GalNAcT酵素は、膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。多数のGalNAcT酵素、例えば、GalNAcT1、登録番号X85018;GalNAcT2、X85019(双方とも、Whiteら、J.Biol.Chem.270:24156−24165頁(1995)に記載されている);およびGalNAcT3、登録番号X92689(Bennetら、J.Biol.Chem.271:17006−17012頁(1996)に記載されている)が、単離され、特性化されており、これらの各々は、参照として、本明細書に組み込まれている。
本明細書に用いられている「真核生物β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT1)は、真核生物から単離されたβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを言う。該酵素は、UDP−Gal供与体から受容体分子へのガラクトースの移送を触媒する。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様、GalT1酵素は、膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。多数のGalT1酵素、例えば、完全長ウシ配列、D’Agostaroら、Eur.J.Biochem.183:211−217頁(1989)および登録番号CAA32695が、単離され、特性化されており、これらの各々は、参照として、本明細書に組み込まれている。
本明細書に用いられている「真核生物α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(ST3Gal3)」は、真核生物から単離されたα(2,3)シアリルトランスフェラーゼを言う。この酵素は、Galβ1,3GlcNAc、Galβ1,3GalNAcまたはGalβ1,4GlcNAcグリコシドのGalへのシアリン酸の移送を触媒する(例えば、Wenら(1992)J.Biol.Chem.267:21011頁;Van den Eijndenら(1991)J.Biol.Chem.256:3159頁を参照)。シアリン酸は、2つの糖の間のα結合の形成によりGalに結合する。糖間の結合は、NeuAcの2位とGalの3位との間のものである。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様、ST3GalIII酵素は、膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。この特定酵素は、ラットの肝臓(Weinsteinら(1982)J.Biol.Chem.257:13845頁);ヒトcDNA(Sasakiら(1993)J.Biol.Chem.268:22782−22787頁;Kitagawa & Paulson(1994)J.Biol.Chem.269:1394−1401頁)から単離でき、組換え発現により、この酵素の産生を促進するゲノム(Kitagawaら(1996)J.Biol.Chem.271:931−938頁)DNAが知られている。ラットST3GalIIIがクローン化されており、その配列が知られている。例えば、Wenら、J.Biol.Chem.267:21011−21019頁(1992)および登録番号M97754を参照されたい(これらの各々が、参照として、本明細書に組み込まれている)。
本明細書に用いられている「真核生物α−N−アセチルガラクトサミニドα−2,6−シアリルトランスフェラーゼI(ST6GalNAcT1)」は、真核生物から単離されたα(2,6)シアリルトランスフェラーゼを言う。該酵素は、CMP−シアリン酸供与体から受容体分子へのシアリン酸の移送を触媒する。この移送は、N−アセチルガラクトサミン−Thr/Serへのα2,6−結合である。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様、ST6GalNAcT1酵素は、膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。多数のST6GalNAcT1酵素、例えば、完全長マウス配列、Kurosawaら、J.Biochem.127:845−854頁(2000)および登録番号JC7248が単離され、特性化されており、これらの各々は、参照として、本明細書に組み込まれている。他の典型的なST6GalNAcT1アミノ酸配列は、図38に見られる。
本明細書に用いられている「真核生物galβ1,3GalNAcα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(ST3GalI)は、真核生物から単離されたgalβ1,3GalNAcα2,3−シアリルトランスフェラーゼを言う。該酵素は、CMP−シアリン酸供与体から受容体分子へのシアリン酸の移送を触媒する。この移送は、N−アセチルガラクトサミン−O−Thr/Serへのα2,3−結合である。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様、ST3GalI酵素は、膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。多数のST3GalI酵素、例えば、完全長ブタ配列、Gillespieら、J.Biol.Chem.267:21004−21010頁(1992)および登録番号A45073が単離され、特性化されており、これらの各々は、参照として、本明細書に組み込まれている。
本明細書に用いられている「真核生物コアIガラクトシルトランスフェラーゼ(コア1GalT1)は、コアIβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を言う。他の真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様、コア1GalT1酵素は、膜貫通ドメイン、ステム領域、および触媒ドメインを有する。多数のコアIGalT1酵素、例えば、図41および図42のショウジョウバエならびにヒトの配列が、単離され、特性化されている。該ヒトタンパク質は、Juら、Biol.Chem.277(1)、178−186頁(2002)において特性化されており、これは、全ての目的のために、参照として本明細書に組み込まれている。
本明細書に用いられている「不対合システイン残基」は、正しく折りたたまれたタンパク質(すなわち、生物学的活性を有するタンパク質)において、別のシステイン残基とジスルフィド結合を形成しないシステイン残基を言う。
「不溶性グリコシルトランスフェラーゼ」は、細菌封入体において発現するグリコシルトランスフェラーゼを言う。不溶性グリコシルトランスフェラーゼは、典型的には、例えば、界面活性剤またはカオトロピック剤またはいくつかの組み合わせを用いて、可溶化または変性させる。「リフォールディング」は、生物学的に活性なグリコシルトランスフェラーゼの構造を、可溶化または変性させたグリコシルトランスフェラーゼへと復元させる過程を言う。したがって、リフォールディング用緩衝液とは、グリコシルトランスフェラーゼのリフォールディングを増強または促進させる緩衝液を言う。
「レドックス対」は、還元チオール試薬と酸化チオール試薬との混合物を言い、還元グルタチオンおよび酸化グルタチオン(GSH/GSSG),システイン/シスチン、システアミン/シスタミン、DTT/GSSG、およびDTE/GSSGが含まれる(例えば、Clark、Cur.Op.Biotech.12:202−207頁(2001)を参照)。
用語の「接触させる」は、本明細書において、以下のものと交換可能に用いられる:と合わせる、に付加する、と混合する、の上を通過させる、とインキュベートする、の上を流す、など。
用語の「PEG」は、ポリ(エチレングリコール)を言う。PEGは、ペプチドに結合されてきた典型的なポリマーである。ペプチド治療薬を誘導体化するためにPEGを使用すると、該ペプチドの免疫原性を減少させ、循環からのクリアランス時間を延長させることが実証されている。例えば、米国特許出願第4,179,337号(Davisら)は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコーに結合させた酵素およびペプチドホルモンなどの非免疫原性ペプチドに関するものである。1モルのペプチド当たり、10モルと100モルとの間のポリマーが使用され、少なくとも15%の生理学的活性が維持される。
本明細書に用いられている「特異的活性」は、酵素、例えば、本発明の組換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質の触媒活性を言い、活性単位で表すことができる。本明細書に用いられている1活性単位は、所与の温度(例えば、37℃)およびpH値(例えば、pH7.5で)で1分当たり、1μモルの生成物形成を触媒する。したがって、10単位の酵素とは、例えば、37℃の温度、および例えば、7.5のpH値で1分間に、10μモルの基質が10μモルの生成物に変換される該酵素の触媒量である。
「N−結合」オリゴ糖とは、アスパラギン−N−アセチルグルコサミン結合により、アスパラギンを介してペプチド主鎖に結合しているオリゴ糖である。N−結合オリゴ糖は、「N−グリカン」とも呼ばれる。N−結合オリゴ糖は全てMan3GlcNAc2の共通の五糖コアを有する。それらは、N−アセチルグルコサミン、ガラクトース、N−アセチルガラクトサミン、フコースおよびシアリン酸などの周辺糖の分枝(アンテナとも呼ばれる)の存在ならびに数が異なっている。この構造はまた、任意に、コアのフコース分子および/またはキシロース分子を含有し得る。
「O−結合」オリゴ糖とは、トレオニン、セリン、ヒドロキシプロリン、チロシン、または他のヒドロキシ含有アミノ酸を介してペプチド骨格に結合しているオリゴ糖である。
糖タンパク質種について、「実質的に均一な糖形態」または「実質的に均一なグリコシル化パターン」とは、対象のグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、フコシルトランスフェラーゼ)によってグリコシル化されている受容体基質のパーセンテージについてのことである。出発物質がグリコシル化受容体基質を含有し得ることは当業者に理解されるであろう。したがって、グリコシル化の算出量は、本発明の方法によってグリコシル化されている受容体基質、ならびに出発物質においてすでにグリコシル化されていた受容体基質を含む。
用語の「生物学的活性」は、タンパク質の酵素活性を言う。例えば、シアリルトランスフェラーゼの生物学的活性は、供与体分子から受容体分子へシアリン酸部分を移送させる活性を言う。GalNAcT2の生物学的活性は、供与体分子から受容体分子へN−アセチルガラクトサミン部分を移送させる活性を言う。GalNAcT2タンパク質に関して、受容体分子は、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチドであり得る。GnT1タンパク質の生物学的活性は、供与体分子から受容体分子へN−アセチルグルコサミン部分を移送させる活性を言う。ガラクトシルトランスフェラーゼの生物学的活性は、供与体分子から受容体分子へガラクトース部分を移送させる活性を言う。
「商業的規模」とは、単一反応において、糖生成物のグラム規模の製造を言う。好ましい実施形態において、商業的規模とは、約50、75、80、90グラム、または100、125、150、175グラム、または200グラム超の製造を言う。
「実質的に均一」の上記定義における用語「実質的に」とは、特定のグリコシルトランスフェラーゼに関する受容体基質の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、またはより好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%がグリコシル化されていることを、一般に意味する。
用語の「アミノ酸」は、天然および合成アミノ酸、ならびに、ある意味で天然アミノ酸に類似した様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を言う。天然アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされたもの、ならびに後に修飾されたもの、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、およびO−ホスホセリンである。アミノ酸アナログとは、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素に結合したα炭素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを有する化合物を言う。このようなアナログは、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド主鎖を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸に類似した様式で機能する化学的化合物を言う。
「タンパク質」、「ポリペプチド」、または「ペプチド」とは、単量体がアミノ酸であり、アミド結合を介して一緒に結合しているポリマーを言うか、あるいは、ポリペプチドを言う。アミノ酸がα−アミノ酸の場合、L−光学異性体またはD−光学異性体が使用できる。また、非天然アミノ酸、例えば、β−アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニンもまた含まれる。遺伝子コードされていないアミノ酸もまた、本発明に使用できる。さらに、反応性基を含むように修飾されたアミノ酸もまた本発明に使用できる。本発明に使用されるアミノ酸は全てD−異性体またはL−異性体のいずれかであり得る。一般にL−異性体が好ましい。さらに、他のペプチド模倣物もまた本発明に有用である。一般的レビューに関しては、Spatola、A.F.、CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS、PEPTIDES AND PROTEINS、B.Weinstein編集、ニューヨーク、Marcel Dekker、267頁(1983)を参照されたい。
細胞に関して用いられる場合、用語の「組換え」は、該細胞が異種核酸を複製するか、または異種核酸によってコードされたペプチドまたはタンパク質を発現することを示す。組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内では見られない遺伝子を含有し得る。組換え細胞はまた、遺伝子が改変され、人工的手段によって該細胞に再導入された、該細胞の天然形態に見られる遺伝子を含有し得る。該用語はまた、細胞から核酸を除去することなく改変された該細胞に、内在的な核酸を含有する細胞を含める;このような改変としては、遺伝子置換、部位特異的変異、および関連技法によって得られたものが挙げられる。「組換えタンパク質」とは、組換え細胞によって産生されたものである。好ましい実施形態において、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、組換え細菌細胞によって産生される。
「融合タンパク質」とは、元のタンパク質または天然の完全長タンパク質またはその部分列をコードするアミノ酸配列に追加したアミノ酸配列、その替わりのアミノ酸配列、それ未満のアミノ酸配列、および/またはそれとは異なるアミノ酸配列を含んでなるタンパク質を言う。
融合タンパク質の構成要素として、「補助酵素」および/または「精製タグ」が挙げられる。本明細書に用いられる「補助酵素」とは、例えば、グリコシルトランスフェラーゼに対する基質を形成する反応を触媒することに関与する酵素である。補助酵素は、例えば、グリコシルトランスフェラーゼによって供与体部分として用いられるヌクレオチド糖の形成を触媒できる。また、補助酵素は、ヌクレオチド糖の形成に必要なヌクレオチド三リン酸の生成、またはヌクレオチド糖に組み込まれる糖の生成に用いられるものであり得る。本発明の組み換え融合タンパク質は、タンパク質の精製を助ける分子「精製タグ」を一端に有する融合タンパク質として構築および発現させることができる。このようなタグはまた、グリコシル化反応時、対象のタンパク質の固定化にも使用できる。好適なタグとしては、抗体によって特異的に認識されるタンパク質配列である「エピトープタグ」が挙げられる。エピトープタグは、一般に、該融合タンパク質を明確に検出または単離するために容易に利用できる抗体の使用を可能にするために融合タンパク質内に組み込まれる。「FLAGタグ」は、AspTyrLysAspAspAspAspLysの配列(配列番号66)またはその実質的に同一な変異体からなるモノクローナル抗−FLAG抗体によって特異的に認識される一般に用いられるエピトープタグである。他の好適なタグは当業者に公知であり、例えば、ニッケルイオンまたはコバルトイオンなどの金属イオンに結合するヘキサヒスチジンペプチド(配列番号67)などのアフィニティータグが挙げられる。精製タグを含んでなるタンパク質は、該精製タグに結合する結合相手、例えば、精製タグに対する抗体、ニッケルイオンまたはコバルトイオンまたはその樹脂、およびアミロース、マルトース、またはシクロデキストリンを用いて精製できる。精製タグはまた、澱粉結合ドメイン、大腸菌チオレドキシンドメイン(例えば、Santa Cruz Biotechnology社およびAlpha Diagnostic International社から商品として入手できるベクターおよび抗体)、およびSUMOタンパク質のカルボキシ末端側半分(例えば、Life Sensors社から商品として入手できるベクターおよび抗体)を含む。マルトース結合ドメインは、不溶性の真核生物グリコシルトランスフェラーゼのリフォールディングを増強するそれらの能力のために好ましく使用されるが、融合タンパク質の精製を助けるために使用することもできる。マルトース結合ドメインタンパク質の精製は、当業者に公知である。澱粉結合ドメインは、国際公開特許出願第99/15636号(参照として本明細書に組み込まれている)に記載されている。βシクロデキストリン(BCD)誘導体化樹脂を用いた澱粉結合ドメインを含んでなる融合タンパク質のアフィニティー精製は、2003年5月5日出願の米国特許出願第60/468,374号(参照としてその全体が本明細書に組み込まれている)に記載されている。
グリコシルトランスフェラーゼに関して、用語の「機能的ドメイン」とは、酵素の活性、例えば、受容体基質特異性、触媒活性、結合親和性、ゴルジ装置内局在化、細胞膜への固定、または他の生物学的または生化学的活性を与えるか、または調節するグリコシルトランスフェラーゼのドメインを言う。グリコシルトランスフェラーゼの機能的ドメインの例としては、限定はしないが、触媒ドメイン、ステムドメイン、およびシグナルアンカードメインが挙げられる。
タンパク質に関して、用語の「発現レベル」または「発現のレベル」とは、細胞によって産生されるタンパク質の量を言う。細胞によって産生されるタンパク質の量は、本明細書に記載されているか、または当業者に公知のアッセイおよび活性単位によって測定できる。当業者は、それぞれ種々のアッセイおよび単位を用いた、細胞によって産生されたタンパク質の量の測定法および記載法を知っているであろう。したがって、タンパク質、例えば、グリコシルトランスフェラーゼの発現レベルの定量化および定量的記述は、それぞれ、活性の測定に用いたアッセイにも、活性の記述に用いた単位にも限定されない。細胞によって産生されたタンパク質の量は、標準的な公知のアッセイ、例えば、Bradford(1976)によるタンパク質アッセイ、Pierce(イリノイ州、ロックフォード)の二シンコニン酸タンパク質アッセイキット、または米国特許出願第5,641,668号に記載されたものによって測定できる。
用語の「酵素活性」とは、酵素の活性を言い、本明細書に記載されたか、または当業者に公知のアッセイおよび単位によって測定できる。グリコシルトランスフェラーゼの活性の例としては、限定はしないが、該酵素の機能的ドメインに関連するもの、例えば、受容体基質特異性、触媒活性、結合親和性、ゴルジ装置内局在化、細胞膜への固定、または他の生物学的もしくは生化学的活性が挙げられる。
グリコシルトランスフェラーゼに関して、「ステム領域」とはタンパク質ドメインまたはその部分配列をいい、天然のグリコシルトランスフェラーゼにおいて、膜貫通ドメインに隣接して位置し、ゴルジ装置内にグリコシルトランスフェラーゼを維持するための保持シグナルとして、また、タンパク質分解性の開裂部位として機能すると報告されている。ステム領域は、一般に、最初、親水性アミノ酸から始まり、続いて疎水性膜貫通ドメイン、そして最後に触媒ドメインがあり、またはいくつかの場合、最初にシステイン残基、続いて膜貫通ドメインがある。典型的なステム領域としては、限定はしないが、フコシルトランスフェラーゼVIのステム領域、アミノ酸残基40〜54;哺乳動物GnT1のステム領域、約36から約103のアミノ酸残基(例えば、ヒト酵素を参照);哺乳動物GalT1のステム領域、約71から約129のアミノ酸残基(例えば、ウシ酵素を参照);哺乳動物ST3GalIIIのステム領域、約29から約84のアミノ酸残基(例えば、ラット酵素を参照);無脊椎動物コア1GalT1のステム領域、約36から約102のアミノ酸残基(例えば、ショウジョウバエ酵素を参照);哺乳動物コア1GalT1、約32から約90のアミノ酸残基(例えば、ヒト酵素を参照);哺乳動物ST3Gal1のステム領域、約28から約61のアミノ酸残基(例えば、ブタ酵素を参照)またはヒト酵素では、約18から約58のアミノ酸残基;哺乳動物ST6GalNAcIのステム領域、約30から約207のアミノ酸残基(例えば、マウス酵素を参照);ヒト酵素では、アミノ酸35〜278、またはニワトリ酵素では、アミノ酸37〜253;哺乳動物GalNAcT2のステム領域、約71から約129のアミノ酸残基(例えば、ラット酵素を参照)が挙げられる。
「触媒ドメイン」とは、酵素によって行われる酵素反応を触媒するタンパク質ドメイン、またはその部分配列を言う。例えば、シアリルトランスフェラーゼの触媒ドメインは、供与体から糖受容体へシアリン酸残基を移送させる上で十分なシアリルトランスフェラーゼの部分配列を含む。触媒ドメインは、酵素全体、その部分配列を含み得るか、または天然に見られるような、該酵素に結合していない追加のアミノ酸配列またはその部分配列を含み得る。典型的な触媒領域は、限定はしないが、フコシルトランスフェラーゼVIIの触媒ドメイン、アミノ酸残基39〜342;哺乳動物GnT1の触媒ドメイン、約104から約445のアミノ酸残基(例えば、ヒト酵素を参照);哺乳動物GalT1の触媒ドメイン、約130から約402のアミノ酸残基(例えば、ウシ酵素を参照);哺乳動物ST3GalIIIの触媒ドメイン、約85から約374のアミノ酸残基(例えば、ラット酵素を参照)である。GalNAcT2タンパク質の触媒ドメインおよび切断変異体は、2004年6月3日出願の米国特許出願第60/576,530号;および2004年8月3日出願の米国仮特許出願(整理番号040853−01−5149−P1)に記載されており、双方とも、全ての目的のため、参照として本明細書に組み込まれている。触媒ドメインはまた、公知のグリコシルトランスフェラーゼとのアラインメントによって同定することもできる。
「部分配列」とは、核酸またはアミノ酸(例えば、タンパク質)のより長い配列の一部を含んでなる核酸またはアミノ酸それぞれの配列を言う。
「グリコシルトランスフェラーゼ切断体」もしくは「切断グリコシルトランスフェラーゼ」または変形語は、天然グリコシルトランスフェラーゼより少ないアミノ酸残基を有しているが、酵素活性を保持しているグリコシルトランスフェラーゼを言う。切断グリコシルトランスフェラーゼとしては、例えば、切断GnT1酵素、切断GalT1酵素、切断ST3GalIII酵素、切断GalNAcT2酵素、切断コア1GalT1酵素、約32から約90のアミノ酸残基(例えば、ヒト酵素を参照);切断ST3Gal1酵素、切断ST6GalNAcI酵素、および切断GalNAcT2酵素が挙げられる。該酵素が活性を保持する限り、任意の数のアミノ酸残基を欠失させることができる。いくつかの実施形態において、ドメインまたはドメインの一部を欠失させることができ、例えば、シグナルアンカードメインを欠失させて、ステム領域および触媒ドメインを含んでなる切断体を残すことができ;シグナルアンカードメインおよびステム領域の一部を欠失させて、残りのステム領域および触媒ドメインを含んでなる切断体を残すことができ;またはシグナルアンカードメインおよびステム領域を欠失させて、触媒ドメインを含んでなる切断体を残すことができる。
用語の「核酸」とは、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態におけるデオキシリボヌクレオチドポリマーまたはリボヌクレオチドポリマーを言い、別に限定しない限り、天然ヌクレオチドに類似した様式で核酸にハイブリダイズする天然ヌクレオチドの公知のアナログを包含する。別に指示しない限り、特定の核酸配列はその相補配列を含む。
「組換え発現カセット」または単に「発現カセット」は、このような配列に適合性の宿主における構造遺伝子の発現に影響を与えることができる核酸エレメントにより、組換え的にまたは合成的に作出された核酸構築物である。発現カセットは、少なくともプロモーターおよび任意に、転写終結シグナルを含む。典型的には、組換え発現カセットは転写される核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)、およびプロモーターを含む。発現に影響を与える上で必要な、または有用な追加因子もまた、本明細書に記載されているように使用できる。例えば、発現カセットは、宿主細胞からの発現タンパク質の分泌を指令するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列を含むこともできる。転写終結シグナル、エンハンサー、および遺伝子発現に影響する他の核酸配列を発現カセットに含めることもできる。好ましい実施形態において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼを含んでなるアミノ酸配列をコードする組換え発現カセットを細菌宿主細胞において発現させる。
本明細書に用いられている「異種配列」または「異種核酸」は、特定の宿主細胞とは異なる供給源に由来するか、または同じ供給源であってもその元の形態から改変されているものである。したがって、真核生物宿主細胞における異種糖タンパク質遺伝子は、改変された特定の宿主細胞に内在性の糖タンパク質コード遺伝子を含む。異種配列の改変は、例えば、該DNAを制限酵素によって処理し、プロモーターに操作可能に結合されることのできるDNA断片を作成することによって生じ得る。異種配列の改変には、部位指向的変異などの技法もまた有用である。
用語の「単離された」は、酵素の活性を妨害する成分が実質的にまたは本質的に無い材料を言う。本発明の糖、タンパク質、または核酸に関して、用語の「単離された」は、その天然状態で見られる材料を、通常伴う成分が実質的にまたは本質的に無い材料を言う。典型的には、本発明の単離された糖、タンパク質、または核酸は、銀染色ゲル上のバンド強度または純度決定のための他の方法によって測定した時、少なくとも約80%純粋であり、通常は少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%純粋である。純度または均一性は、当該分野に周知の多数の手段によって示すことができる。例えば、サンプル中のタンパク質または核酸は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離でき、次いで、該タンパク質または核酸を染色により可視化できる。ある一定の目的には、該タンパク質または核酸の高度の分離が望ましいと考えられ、精製のためには、例えば、HPLCまたは類似の手段を利用できる。
用語の「操作可能に結合した」とは、核酸発現制御配列(プロモーター、シグナル配列、または転写因子結合部位のアレイなど)と第2の核酸配列との間の機能的結合を言い、該発現制御配列は、第2の配列に相当する核酸の転写および/または翻訳に影響を与える。
2種以上の核酸またはタンパク質配列に関して、用語の「同一」またはパーセント「同一性」とは、同じである2種以上の配列または部分配列をいうか、または以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いるか、または目視検査によって測定して、比較し、最大対応するように整列させた場合、同じアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定のパーセンテージを有している2種以上の配列または部分配列を言う。
2種の核酸またはタンパク質に関して、語句の「実質的に同一」とは、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、または目視検査によって測定して、比較し、最大対応するように整列させた場合、少なくとも約60%超の核酸またはアミノ酸配列の同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する、2種以上の配列または部分配列を言う。実質的な同一性は、好ましくは少なくとも約50残基の長さの配列領域にわたって存在し、より好ましくは少なくとも約100残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは該配列が少なくとも約150残基にわたって実質的に同一である。最も好ましい一実施形態において、該配列は、コード領域の全長にわたって実質的に同一である。
配列比較では、典型的には、1つの配列が参照配列として働き、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピューターに入力し、必要な場合は部分配列座標を指定し、配列演算プログラムパラメーターを指定する。次いで、指定されたプログラムパラメーターに基づき、配列比較アルゴリズムにより、参照配列に対する試験配列(1つまたは複数)に関する配列同一性パーセントが算出される。
比較に関する最適な配列アラインメントを、例えば、Smith&Waterman、Adv.Appl.Math.2:482頁(1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman&Wunsch、J.Mol.Biol.48:443頁(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson&Lipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444頁(1988)の類似性法に関する探索により、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実施(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575ScienceDr.、ウィスコンシン州、マジソンのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)により、または目視検査(一般的には、Current Protocols in Molecular Biology F.M.Ausubelら編集、Current Protocols、Geene Publishing Associates社とJohn Wiley&Sons社との合弁(1995 Supplement)(Ausubel)を参照)により実施できる。
配列同一性パーセントおよび配列類似性の決定に好適なアルゴリズムの例は、BLASTアルゴリズムおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschulら(1990)J.Mol.Biol.215:403−410頁およびAltschulら(1977)Nucleic Acids Res.25:3389−3402頁に記載されている。BLAST解析実施のためのソフトウェアは、バイオテクノロジー情報国立センターを介して、公共利用できる(www.ncbi.nlm.nih.gov/)。このアルゴリズムは、データベース配列における同じ長さのワードと共に整列した際、いくつかの陽性値とされる閾値スコアTに合致するか満足させる問い合わせ配列における長さWの短いワードを同定することによって、先ず高スコアの配列対(HSP)を同定することを含む。Tは、近隣ワードスコア閾値(上記Altschulら)と称される。これらの最初の近隣ワードヒットが、探索開始のシードとして働き、それらを含有するより長いHSPを見つける。次いで、それらのワードヒットを、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って双方向に拡張させる。ヌクレオチド配列、パラメーターM(対合残基対に関するリワードスコア;常に>0)およびN(誤対合残基に関するペナルティースコア;常に<0)を用いて累積スコアを算出する。アミノ酸配列に関しては、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを算出する。各方向へのワードヒットの拡張は:累積アラインメントスコアがその最大達成値からX量減少する時;累積スコアが、1つ以上の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積によりゼロ以下になる時;またはどちらかの配列の端に達した時に停止される。BLASTアルゴリズムのパラメーター、W、T、およびXは感度およびアラインメントの速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列レベルに関する)は、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および双方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff&Henikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915頁(1989)を参照)を用いる。
配列同一性パーセントの算出に加えて、BLASTアルゴリズムにより、2種の配列間の類似性の統計的解析が実施される(例えば、Karlin&Altschul、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873−5787頁(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性基準の1つは、最小合計確率(P(N))であり、これは、2種のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間に偶然生じる対合の確率の指標を提供する。例えば、試験核酸対参照核酸の比較において、最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合、該核酸は参照核酸に類似していると考えられる。
2種の核酸配列またはタンパク質が実質的に同一であるさらなる指標は、第1の核酸にコードされたタンパク質が、下記の第2の核酸にコードされたタンパク質と免疫学的に交差反応性であることである。したがって、例えば2種のペプチドが保存的置換基だけで違っている場合、典型的に、タンパク質は実質的に第2のタンパク質と同一である。2種の核酸配列が実質的に同一であるもう1つの指標は、これら2種の分子が下記のストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
語句の「に対して特異的にハイブリダイズする」とは、配列が複雑に混合した(例えば、細胞全体の)DNAまたはRNA中に存在する場合、ストリンジェントな条件下で、ある分子がある特定のヌクレオチド配列にのみ結合、複合化、またはハイブリダイズすることを言う。
用語の「ストリンジェントな条件」とは、プローブがその標的配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を言う。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、異なる状況下では異なってくる。より長い配列はより高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、一定のイオン強度およびpHで、特異的配列に関する熱融点(Tm)より約15℃低く選択される。Tmは、標的配列に相補的なプローブの50%が標的配列に平衡状態でハイブリダイズする温度(一定のイオン強度、pH、および核酸濃度下で)である。(標的配列は一般に過剰に存在しているため、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0M未満のNaイオン、典型的には、pH7.0から8.3において、約0.01Mから1.0MのNaイオン濃度(または他の塩)ならびに短いプローブ(例えば、10から50ヌクレオチド)では、少なくとも約30℃および長いプローブ(例えば、50ヌクレオチド超)では、少なくとも約60℃のものが典型的である。また、ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても達成できる。選択的または特異的ハイブリダイゼーションのためには、陽性シグナルは、典型的に、バックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドの10倍のハイブリダイゼーションである。典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下のものであり得る:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDS,42℃でインキュベート、または、5×SSC、1%SDS,65℃でインキュベートし、65℃で、0.2×SSCおよび0.1%SDSで洗浄。PCRには、約36℃の温度が、低ストリンジェンシー増幅に典型的であるが、アニーリング温度は、プライマーの長さに依って約32℃〜48℃の間で変わり得る。高ストリンジェンシーPCR増幅では、約62℃の温度が典型的であるが、高ストリンジェンシーアニーリング温度はプライマーの長さおよび特異性に依って、約50℃から約65℃の範囲であり得る。高および低ストリンジェンシー増幅双方にとって典型的なサイクル条件としては、30〜120秒間、90〜95℃の変性段階、30〜120秒続くアニーリング段階、および1〜2分間、約72℃の伸長段階が挙げられる。低および高ストリンジェンシー増幅反応に関するプロトコルおよび指針は、例えば、Innisら(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications Academic Press、ニューヨーク、において入手できる。
抗体に関して、語句の「タンパク質に特異的に結合する」または「に特異的に免疫反応性である」は、タンパク質および他の生物学的物質の異種集団の存在下、該タンパク質存在を決定する結合反応を言う。したがって、指定された免疫アッセイ条件下、特定の抗体は特定のタンパク質に優先的に結合し、サンプル中に存在する他のタンパク質に、有意な量で結合することはない。このような条件下でのタンパク質に対する特異的結合のためには、特定のタンパク質に対するその特異性に関して選択される抗体が必要である。特定のタンパク質に特異的に免疫反応性である抗体を選択するために、種々の免疫アッセイフォーマットが使用できる。例えば、タンパク質に特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するために、固相ELISA免疫アッセイが慣用的に用いられる。特異的免疫反応性を判定するために使用できる免疫アッセイフォーマットおよび条件の説明に関しては、HarlowおよびLane(1988)Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Publication、ニューヨークを参照されたい。
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的変更改変」とは、ポリヌクレオチドが同一の、または本質的に同一のアミノ酸配列をコードするもの、またはポリヌクレオチドが本質的に同一の配列に対し、アミノ酸配列をコードしないものを言う。遺伝子コードの縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が所与のタンパク質をコードする。例えば、CGU、CGC、CGA、CGG、AGAおよびAGGのコドンは全てアミノ酸のアルギニンをコードする。したがって、あるコドンによってアルギニンが指定されるどの位置においても、そのコドンを、コードされるタンパク質の変更なしに、記載されるいずれの対応コドンにも変更させることができる。このような核酸改変体は、「保存的改変された改変体」の1種である「サイレント改変」である。本明細書に記載された、タンパク質をコードするいずれのポリヌクレオチド配列も別に特記しない限り、全ての可能なサイレント改変を表している。当業者は、標準的方法によって、核酸中の各々のコドン(通常、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常、トリプトファンの唯一のコドンであるUGGを除いて)を変更させて、機能的に同一の分子を得ることができる。したがって、あるタンパク質をコードする核酸の各々の「サイレント改変」が、記載された各配列に内包されている。
さらに、当業者は、コードされた配列における単一のアミノ酸または少パーセンテージ(典型的には5%未満、より典型的には1%未満)のアミノ酸を変更、付加または欠失させる個々の置換、欠失または付加は、該変更によって、1つのアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸による置換が生じる「保存的改変された改変体」である。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該分野に周知である。
タンパク質、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、およびタンパク質をコードする核酸の多くの保存的改変により、本質的に同一の生成物が得られることを当業者は理解されるであろう。例えば、遺伝子コードの縮重により、「サイレント置換」(すなわち、コードされたタンパク質の変更を生じさせない核酸配列の置換)は、アミノ酸をコードするあらゆる核酸配列に含まれた特徴である。本明細書に記載されるように、キメラグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、酵母、ヒトなど)を生成させるために用いられる特定の宿主細胞における発現に関して、配列を最適化することが好ましい。同様に、類似性の高い性質(上記の定義の節を参照)を有する異なったアミノ酸による、アミノ酸配列の1つまたは2、3個のアミノ酸における「保存的アミノ酸置換」は、特定のアミノ酸配列、またはアミノ酸をコードする特定の核酸配列との類似性が高いため、容易に同定される。任意の特定配列のこのような保存的置換改変体は、本発明の特徴である。Creighton(1984)Proteins、W.H.Freemanおよびグループもまた、参照されたい。さらに、コードされた配列における1つのアミノ酸または少パーセンテージのアミノ酸を改変、付加または欠失させる個々の置換、欠失または付加もまた、「保存的改変変異」である。
本発明の実施は、宿主細胞、好ましくは細菌宿主細胞における組換え核酸の構築および遺伝子の発現を含み得る。これらの結果を達成するための分子クローニング法は当該分野に公知である。発現ベクターなどの組換え核酸の構築に好適な広範なクローニング法およびインビトロ増幅法は当業者に周知である。多くのクローニングの実施により当業者を指示する上で十分なこれらの技法ならびに教示は、BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniqes、Methods in Enzymology152巻 Academic Press社、カリフォルニア州、サンディエゴ(Berger);およびCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら編集、Current Protocols、Greene Publishing Associates社とJohn Wiley & Sons社との合弁(1999補遺)(Ausubel)に見られる。組換えポリペプチドの発現に好適な宿主細胞は当業者に公知であり、例えば、大腸菌などの原核細胞、および昆虫細胞、哺乳動物細胞および真菌細胞(例えば、クロカビ)などの真核細胞が挙げられる。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、QB−レpリカーゼ増幅および他のRNAポリメラーゼ媒介法などのインビトロ増幅法により、当業者に指示する上で十分なプロトコルの例は、Berger、Sambrook、およびAusubel、ならびに、Mullisら(1987)米国特許第4,683,202号;PCR
Protocols A Guide to Methods and Applcations(Innisら編集)Academic Press社、カリフォルニア州、サンディエゴ(1900)(Innis);Arnheim & Levinson(1990年10月1日)C&EN 36−47頁;The Journal Of NIH
Research(1991)3:81−94頁;(Kwohら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173頁;Guatelliら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874頁;Lomellら(1989)J.Clin.Chem.35:1826頁;Landegrenら(1988)Science241:1077−1080頁;Van Brunt(1990)Biotechnology8:291−294頁;WuおよびWallace(1989)Gene4:560頁;およびBarringerら(1990)Gene89:117頁に見られる。インビトロ増幅核酸クローニングの改善法は、Wallaceら、米国特許第5,426,039号に記載されている。
(発明の詳細な説明)
(I.序文)
本発明は、細菌封入体において不溶性タンパク質として発現される真核生物グリコシルトランスフェラーゼをリフォールディングする条件を提供する。不溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼのリフォールディングを増強させるために、レドックス対を含んでなるリフォールディング緩衝液が用いられる。リフォールディングはまた、マルトース結合ドメインを不溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼに融合させることによって増強できる。いくつかの不溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼでは、不対合システインを除去するために、部位指向性変異によってリフォールディングを増強させることもできる。さらに、リフォールディングの増強は、真核生物グリコシルトランスフェラーゼを切断して、例えば、タンパク質のシグナルアンカードメイン、膜貫通ドメイン、および/またはステム領域の全部または一部を除去することによって提供できる。また本発明は、単一容器において1種超のグリコシルトランスフェラーゼをリフォールディングし、それによって、タンパク質のリフォールディングを増強し、タンパク質産生の効率を増加させる方法を提供する。リフォールディングされた真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、多糖、オリゴ糖、糖脂質、タンパク質、ペプチド、糖ペプチド、および糖タンパク質を産生またはリモデリングするために使用できる。リフォールディングされた真核生物グリコシルトランスフェラーゼはまた、国際出願PCT/US02/32263号(全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている)に記載されているタンパク質、ペプチド、糖ペプチド、または糖タンパク質の糖PEG化にも使用できる。
(II.不溶性グリコシルトランスフェラーゼのリフォールディング)
細菌に発現する多くの組換えタンパク質は、細菌の封入体における不溶性凝集体として発現する。封入体は、細菌の細胞質とペリプラズム空間の双方に見られるタンパク質蓄積物である。(例えば、Clark、Cur.Op.Biotech.12:202−207頁(2001)を参照)。真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、細菌の封入体において発現することが多い。いくつかの真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、細菌内で可溶性である。すなわち、該タンパク質の触媒ドメインのみが発現される場合は封入体内に産生されない。しかし、多くの真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、たとえ触媒ドメインのみが発現する場合でも不溶性のままであり、細菌の封入体内に発現し、これらのタンパク質をリフォールディングして活性グリコシルトランスフェラーゼを産生する方法が本明細書に提供されている。
(A.活性グリコシルトランスフェラーゼをリフォールディングする条件)
活性真核生物グリコシルトランスフェラーゼを細菌細胞から産生させるために、真核生物グリコシルトランスフェラーゼを細菌の封入体内に発現させ、該細菌を採集し、破壊し、封入体を単離し洗浄する。次いで、封入体内の該タンパク質を可溶化する。可溶化は、変性剤、例えば、塩化グアニジニウムまたは尿素;酸性またはアルカリ性条件などの極pH;または界面活性剤を用いて実施できる。
可溶化後、グリコシルトランスフェラーゼ混合物から変性剤を除去する。変性剤の除去は、リフォールディング用緩衝液への希釈または緩衝液交換法などの種々の方法によって実施できる。緩衝液交換法としては、透析、ダイアフィルトレーション、ゲルろ過、および固体支持体上へのタンパク質固定化(例えば、Clark、Cur.Op.Biotech.12:202−207頁(2001)を参照)が挙げられる。変性剤を除去するために任意の上記の方法を組み合わせることができる。
真核生物グリコシルトランスフェラーゼにおけるジスルフィド結合の形成は、レドックス対を含んでなるリフォールディング用緩衝液の添加によって促進される。レドックス対としては、還元および酸化グルタチオン(GSH/GSSG)、システイン/シスチン、システアミン/シスタミン、DTT/GSSG、およびDTE/GSSGが挙げられる(例えば、Clark、Cur.Op.Biotech.12:202−207頁(2001)(全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている)を参照)。いくつかの実施形態において、レドックス対は、還元成分対酸化成分のある特定の比率、例えば、1/20、20/1、1/4、4/1、1/10、10/1、1/2、2/1、1/5、5/1、または5/5で添加される。
リフォールディングは、例えば、6.0〜10.0の範囲のpHで、緩衝液中で実施できる。リフォールディング用緩衝液は、リフォールディングを増強させるために、他の添加物、例えば、L−アルギニン(0.4〜1M);PEG;尿素(1〜2M)および塩化グアニジニウム(0.5〜1.5M)などの低濃度の変性剤;および界面活性剤(例えば、Chaps、SDS、CTAB、ラウリルマルトシド、およびTritonX−100)を含み得る。
リフォールディングは、所与の時間、例えば、1〜48時間にわたって、または一晩、行うことができる。リフォールディングは、室温を含めて、約4℃から約40℃までで行うことができる。
触媒ドメインを含んでなる真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質は、細菌の封入体内で発現させ、次いで、上記の方法を用いてリフォールドされる。ステム領域の全部または一部および触媒ドメインを含んでなる真核生物グリコシルトランスフェラーゼもまた、MBPタンパク質に融合された触媒ドメインを含んでなる真核生物グリコシルトランスフェラーゼと同様、本明細書に記載された方法に使用できる。
当業者は、リフォールディングされたタンパク質が検出可能な生物学的活性を有する場合に該タンパク質が正しくリフォールディングされたことを認識されるであろう。グリコシルトランスフェラーゼでは、生物学的活性は、供与体基質から受容体基質への移送を触媒する能力であり、例えば、リフォールディングされたST3GalIIIは、シアリン酸を受容体基質へ移送させることができる。生物学的活性としては、少なくとも1、2、5、7、または10単位の活性の特異的活性が挙げられる。単位は以下の通り定義される:1活性単位は、所与の温度(例えば、37℃)およびpH(例えば、pH7.5)で1分当たり、1μモルの生成物の形成を触媒する。したがって、10単位の酵素は、10μモルの基質が、例えば、37℃の温度、および例えば、7.5のpHで、1分間に10μモルの生成物に変換される該酵素の触媒量である。
一実施形態において、真核生物のST3GalIIIが、細菌の封入体内に発現され、可溶化され、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングされる。
一実施形態において、真核生物のGnT1が、細菌の封入体内に発現され、可溶化され、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングされる。
一実施形態において、真核生物のGalT1が、細菌の封入体内に発現され、可溶化され、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングされる。
一実施形態において、真核生物のSt3GalIが、細菌の封入体内に発現され、可溶化され、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングされる。
一実施形態において、真核生物のSt6GalNAcTIが、細菌の封入体内に発現され、可溶化され、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングされる。
一実施形態において、真核生物のコアGalITIが、細菌の封入体内に発現され、可溶化され、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングされる。
一実施形態において、真核生物のGalNAcT2が、細菌の封入体内に発現され、可溶化され、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングされる。
(B.リフォールディング増強のためのマルトース結合タンパク質ドメインへの真核生物グリコシルトランスフェラーゼの融合)
細胞へのタンパク質溶解度を高めるために、典型的にマルトース結合タンパク質(MBP)ドメインをタンパク質に融合させる。例えば、KapustおよびWaugh Pro.Sci.8:1668−1674頁(1999)を参照されたい。しかし、切断真核生物グリコシルトランスフェラーゼを含めて、多くの真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、MBPドメインに融合された後でも、細菌内に発現させた際、不溶性のままである。しかし、本出願は、MBPドメインが、例えば、封入体からのタンパク質可溶化後の不溶性真核生物グリコシルトランスフェラーゼのリフォールディングを増強できることを開示している。種々の細菌源、例えば、Yersinia E.coli、Pyrococcus furiosus、Thermococcus litoralis、Thermatoga maritime、およびVibrio choleraeのMBPドメインを、本発明に使用できる。例えば、図43を参照されたい。好ましい一実施形態において、大腸菌のMBPタンパク質を真核生物グリコシルトランスフェラーゼに融合する。MBPドメインとグリコシルトランスフェラーゼとの間にアミノ酸リンカーを配置できる。他の好ましい実施形態において、MBPドメインをグリコシルトランスフェラーゼタンパク質のアミノ末端に融合させる。MBPグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質をリフォールディングするために上記の方法を使用できる。
一実施形態において、真核生物ST3GalIIIタンパク質をMBPドメインに融合させ、細菌の封入体内に発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングする。
一実施形態において、真核生物GnT1タンパク質をMBPドメインに融合させ、細菌の封入体内に発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングする。
一実施形態において、真核生物GalT1タンパク質をMBPドメインに融合させ、細菌の封入体内に発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングする。
一実施形態において、真核生物St3GalIタンパク質をMBPドメインに融合させ、細菌の封入体内に発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングする。
一実施形態において、真核生物St6GalNAcTIタンパク質をMBPドメインに融合させ、細菌の封入体内に発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングする。
一実施形態において、真核生物コアGalTIタンパク質をMBPドメインに融合させ、細菌の封入体内に発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングする。
一実施形態において、真核生物GalNAcT2タンパク質をMBPドメインに融合させ、細菌の封入体内に発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングする。
さらに、アミノ酸タグをMBP−グリコシルトランスフェラーゼ融合体に付加できる。例えば、リフォールディングされたタンパク質の精製を高めるために、精製タグを付加できる。精製タグとしては、例えば、ポリヒスチジンタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、澱粉結合タンパク質(SBP)、大腸菌チオレドキシンドメイン、SUMOタンパク質のカルボキシ末端側半分、FLAGエピトープ、およびmycエピトープが挙げられる。リフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼは、精製タグに結合する結合パートナーを用いて、さらに精製できる。好ましい一実施形態において、リフォールディングを増強するために、MBPタグを真核生物グリコシルトランスフェラーゼに融合させる。精製タグは、例えば、GnT1、GalT1、StIII Gal3、St3GalI、St6GalNAcTI、コアGalTIまたはGalNAcT2などのMBPグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質に融合させることができる。
他の実施形態において、タンパク質へのMBPドメインの付加により、該タンパク質の発現を増加させることができる。例えば、MBPドメインへのSiaAタンパク質の融合により、タンパク質の発現が増加した実施例12を参照されたい。MBPに融合して発現が増強した他のタンパク質としては、例えば、GnT1、GalT1、StIII Gal3、St3GalI、St6GalNAcTI、コアGalTIまたはGalNAcT2が挙げられる。
別の実施形態において、インテインなどの自己開裂タンパク質タグは、MPBドメインとグリコシルトランスフェラーゼとの間に含まれ、融合タンパク質がリフォールディングされた後でMBPドメインの除去を促進する。インテイン類およびそれらの使用のためのキット類は、例えば、New England Biolabsから市販されている。
(C.リフォールディングを増強させるためのグリコシルトランスフェラーゼの変異誘発)
グリコシルトランスフェラーゼのリフォールディングはまた、グリコシルトランスフェラーゼアミノ酸配列の変異誘発によって増強させることができる。一実施形態において、不対合システイン残基を同定し、グリコシルトランスフェラーゼのリフォールディングを増強させるために変異誘発する。他の実施形態において、膜貫通ドメインを除去するため、または膜貫通ドメインおよび該タンパク質のステム領域の全部または一部を除去するために、グリコシルトランスフェラーゼのアミノ末端を切断する。さらなる一実施形態において、少なくとも1つの不対合システイン残基を除去するため、および、例えば、膜貫通ドメインを除去する目的で、または膜貫通ドメインおよび該タンパク質のステム領域の全部または一部を除去する目的で、該タンパク質のアミノ末端を切断するために、グリコシルトランスフェラーゼの変異誘発をする。グリコシルトランスフェラーゼの核酸配列を単離したら、核酸配列、したがってコードされたアミノ酸配列を変化させるために、本明細書に記載された方法で標準的な分子生物学的方法を用いることができる。
(1.リフォールディングを増強させるためのグリコシルトランスフェラーゼにおける不対合システインの変異誘発)
リフォールディングが生じる際、変性タンパク質におけるシステイン残基は、活性タンパク質の構造再生を助けるジスルフィド結合を形成する。システイン残基の誤対合により、タンパク質のミスフォールディングに至り得る。不対合システイン残基を有するタンパク質はミスフォールディングし易い。なぜならば、通常の不対合システインは正しいシステイン対合を作る通常の対合システインと共にジスルフィド結合を形成でき、タンパク質のリフォールディングが不可能になるからである。したがって、ある特定のグリコシルトランスフェラーゼのリフォールディングを増強させるための一方法は、不対合システイン残基を同定し、それらを除去することである。
不対合システイン残基は、対象のグリコシルトランスフェラーゼの構造決定により同定できる。タンパク質の構造は、対象のグリコシルトランスフェラーゼの実際のデータ、例えば、円二色性、NMR、およびX線結晶構造解析に基づいて決定できる。タンパク質の構造は、コンピュータモデリングを用いて決定することもできる。コンピュータモデリングは、相同分子の公知の三次元構造に基づいて関連構造をモデル化するために使用できる方法である。標準的なソフトウェアは商品として入手できる(例えば、コンピュータモデリングを行うために利用できる多くのソフトウェアに関して、www.accelrys.comを参照)。不対合システイン残基が同定されたら、欠失により、または他のアミノ酸残基による置換により不対合システインを除去するために、標準的な分子生物学的方法を用いて、対象のグリコシルトランスフェラーゼをコードしているDNAを変異させることができる。置換用の適切なサイズ、形状、および電荷を有するアミノ酸を選択するために、再度、コンピュータモデリングを用いることができる。不対合システインは、ペプチドマッピングによって決定することもできる。対象のグリコシルトランスフェラーゼが変異したら、細菌封入体において該タンパク質を発現させ、リフォールディング能力を決定する。正しくリフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼは生物学的活性を有する。
好ましい実施形態において、リフォールディングを増強させるために、真核生物グリコシルトランスフェラーゼにおける不対合システイン残基を、以下のアミノ酸残基で置換する:Ala、Ser、Thr、Asp、Ile、またはVal。不対合システインが螺旋構造でない場合は、Glyも使用できる。
ヒトN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTI、登録番号NP−002397)は、不対合システインの変異誘発後にリフォールディングの増強を示したグリコシルトランスフェラーゼの一例である。(例えば、下記の実施例2を参照。)ヒトGNTIは、多数の真核生物GNTIタンパク質、例えば、チャイニーズハムスター、登録番号AAK61868;ウサギ登録番号AAA31493;ラット、登録番号NP 110488;ゴールデンハムスター登録番号、AAD04130;マウス、登録番号P27808;ゼブラフィッシュ、登録番号AAH58297;アフリカツメガエル、登録番号CAC51119;ショウジョウバエ、登録番号NP 525117;ハマダラカ属、登録番号XP 315359;C.elegans、登録番号NP 497719;Physcomitrella patens、登録番号CAD22107;ジャガイモ、登録番号CAC80697;タバコ、登録番号CAC80702;イネ、登録番号CAD30022;タバコbenthamiana、登録番号CAC82507;およびシロイヌナズナ、登録番号NP 195537とのメンバーと密に関連している。
ウサギのN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTI)タンパク質の構造が決定されており、CYS123が不対合であることが示されている。(GNTIタンパク質が切断されていた場合でも、アミノ酸残基の数は完全長タンパク質配列を参照する。)ヒトGnTIタンパク質の構造を決定するために、ウサギのGnTIに基づいたコンピュータモデリングを用いた。アラインメントは図6に示されている。ヒトGnTIタンパク質において、CYS121が不対合であった。ヒトGnTIにおいて、CYS121の置換が行われた。CYS121SER変異体およびCYS121ALA変異体は活性であった。対照的に、CYS121THR変異体は検出可能な活性を有さず、CYS121ASPは低活性を有した。線虫GNTIタンパク質の予測された構造に基づいて、二重変異体、ARG120ALA、CYS121HISが構築され、これは活性を有した。
コンピュータモデリングに基づいたタンパク質の構造ならびにウサギのCYS123およびヒトのCYS121の保存された機能を判定するために、上記の真核生物GnTIタンパク質のアミノ酸配列を使用できる。その分析に基づくと、残基123は以下のタンパク質における不対合システインである:チャイニーズハムスターGnTI、ウサギGnTI、ラットGnTI、ゴールデンハムスターGnTI、およびマウスGnTI。したがって、GnTI酵素の各々において、CYS123は、セリン、アラニン、またはアルギニンに変異して、リフォールディング活性の増強した活性タンパク質を産生できる。上記タンパク質における以下の二重変異体、ARG122ALA CYS123HISもまたリフォールディング増強を示す。
一実施形態において、上記の真核生物GnT1タンパク質の任意のものを、不対合システイン残基を除去するために、例えば、CYS121SER、CYS121ALA、CYS121ASP、または二重変異体ARG120ALA、CYS121HISへと変異させ、細菌封入体において発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングさせる。
不対合システイン変異でリフォールディング増強を示す他のグリコシルトランスフェラーゼは、GalT1である。ウシGalT1において、システイン342をトレオニン残基へ変異させると、変異した酵素は可溶化後、リフォールディング増強を示した。例えば、Ramakrishnanら、J.Biol.Chem.276:37666−37671頁(2001)を参照されたい。対象となっているGnTI酵素におけるトレオニンへの不対合システインの変異では、活性が消えた。
一実施形態において、不対合システイン残基を除去するために、例えば、GalT1タンパク質をCYS342THRに変異させ、細菌封入体において発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングさせる。
不対合システインの変異でリフォールディング増強を示す他のグリコシルトランスフェラーゼは、GalNAcT2である。多くのアミノ酸残基が、GalNAcT2タンパク質とGalNAcT1タンパク質との間で共用である。2つのシステイン残基、CYS212およびCYS214の変異後、ヒトGalNAcT1タンパク質はCOS細胞内で発現させた際、依然として活性であった。例えば、Tennoら、Eur.J.Biochem.269:4308−4316頁(2002)を参照されたい。活性変異体としては、CYS212ALA、CYS214ALA、CYS212SER、CYS214SER、および二重変異体、CYS212SER CYS214SERが挙げられる。ヒトGalNAcT1に対応するシステイン残基、CYS212残基およびCYS214残基は、ヒトGalNAcT2タンパク質において保存され、すなわち、CYS227残基およびCYS229残基である。例えば、図44を参照されたい。したがって、以下の変異体の1つを含んでなるGalNAcT2タンパク質を用いて、不溶性タンパク質のリフォールディングを増強させることができる:CYS227ALA、CYS229ALA、CYS227SER、CYS229SER、および二重変異体、CYS227SER CYS229SER。残基のナンバリングは、ヒトGalNAcT2タンパク質に適応されるが、CYS227おびCYS229に相当する保存システイン残基は、他の真核生物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタのGalNAcT2タンパク質において同定でき、リフォールディングを増強させるために変異させることができる。
一実施形態において、GalNAcT2タンパク質を、不対合システイン残基を除去するために、例えば、CYS227ALA、CYS229ALA、CYS227SER、CYS229SER、または二重変異体、CYS227SER CYS229SERに変異させ、細菌封入体において発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングさせる。
不対合システインの変異でリフォールディング増強を示す他のグリコシルトランスフェラーゼは、コア1GalT1である。一実施形態において、ショウジョウバエのコア1GalT1を変異させる。他の実施形態において、ヒトのコア1GalT1を変異させる。ショウジョウバエのコア1GalT1タンパク質は、7つのシステイン残基を有する。各システイン残基を、個々に、セリンまたはアラニンのいずれかに変異させる。変異させたショウジョウバエコア1GalT1タンパク質を大腸菌封入体内で発現させ、可溶化し、リフォールディングする。リフォールディングした変異体のショウジョウバエコア1GalT1の酵素活性をアッセイし、リフォールディングした野生型ショウジョウバエコア1GalT1活性と比較する。野生型タンパク質と比較して、変異体のショウジョウバエコア1GalT1における酵素活性の増加によってリフォールディングの増強が示される。
一実施形態において、コア1GalT1タンパク質、例えば、ショウジョウバエタンパク質またはヒトタンパク質を、不対合システイン残基を除去するために変異させ、細菌封入体において発現させ、可溶化し、レドックス対、例えば、GSH/GSSGまたはシスタミン/システインを含んでなる緩衝液中でリフォールディングさせる。ショウジョウバエコア1GalT1における置換に好ましいシステイン残基は、C103、C127、C208、C246、C261、C315およびC316である。
(2.リフォールディング増強のためのグリコシルトランスフェラーゼ切断)
真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、一般に以下のドメインを含む:触媒ドメイン、ステム領域、膜貫通ドメイン、およびシグナルアンカードメイン。細菌内での発現の際、シグナルアンカードメイン、および膜貫通ドメインは、典型的に欠失する。本発明の方法に用いられる真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、ステム領域の全部または一部および触媒ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、真核生物グリコシルトランスフェラーゼは触媒ドメインのみを含んでなる。
グリコシルトランスフェラーゼのドメインは、欠失変異に関して同定できる。例えば、当業者は真核生物グリコシルトランスフェラーゼにおけるステム領域を同定し、ステム領域のアミノ酸を1つずつ欠失させて、リフォールディングした際に高活性を有する切断真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質を同定できる。
本出願における欠失変異体は、2つの方法で参照される。すなわち、ΔまたはDに続く、天然の完全長アミノ酸配列のアミノ末端から欠失される残基数、または天然の完全長アミノ酸配列から翻訳される最初のアミノ酸残基の記号および残基数。例えば、ST6GalNAcIΔ35またはST6GalNAcI D35およびST6GalNAcI K36の双方は、ヒトST6GalNAcIタンパク質の同じ切断を称す。
例えば、ラットのST3GalIIIタンパク質は、約29〜84のアミノ酸残基のステム領域を含む。このタンパク質の触媒ドメインは、残基約85〜374由来のアミノ酸を含む。したがって、ラットの切断ST3GalIIIタンパク質は、例えば、約29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70.71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、または85の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。
欠失変異はまた、GnT1タンパク質内で作製することができる。例えば、ヒトのGnT1タンパク質は、アミノ酸残基約31〜112由来のステム領域を含む。したがって、ヒトの切断GnT1タンパク質は、例えば、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、または111の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。
欠失変異はまた、GalT1タンパク質内で作製することができる。例えば、ウシのGalT1タンパク質は、アミノ酸残基約71〜129由来のステム領域を含む。したがって、ウシの切断GalT1タンパク質は、例えば、約70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、または128の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。
欠失変異はまた、コア1 GalT1タンパク質内で作製することができる。例えば、ショウジョウバエのコア1 GalT1タンパク質は、アミノ酸残基約36〜102由来のステム領域を含む。したがって、ショウジョウバエの切断コア1 GalT1タンパク質は、例えば、約35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、または102の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。別の実施形態において、ヒトのコア1 GalT1タンパク質は、アミノ酸残基約32〜90由来のステム領域を含む。したがって、ヒトの切断コア1 GalT1タンパク質は、例えば、約32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、または90の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。
欠失変異はまた、ST3Gal1タンパク質内で作製することができる。例えば、ヒトのST3Gal1タンパク質は、アミノ酸残基約18〜58由来のステム領域を含む。したがって、ヒトの切断ST3Gal1タンパク質は、例えば、約18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、または58の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。別の例として、ブタのST3Gal1タンパク質は、アミノ酸残基約28〜61由来のステム領域を含む。したがって、ブタの切断ST3Gal1タンパク質は、例えば、約28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、または61の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。
欠失変異はまた、GalNAcT2タンパク質内で作製することができる。例えば、ラットのGalNAcT2タンパク質は、アミノ酸残基約40〜95由来のステム領域を含む。したがって、ラットの切断GalNAcT2タンパク質は、例えば、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、または95の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。
欠失変異はまた、ST6GalNAcIタンパク質内で作製することができる。例えば、マウスのST6GalNAcIタンパク質は、アミノ酸残基約30〜207由来のステム領域を含む。したがって、マウスの切断ST6GalNAcIタンパク質は、例えば、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136,137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159,160、161、162、163、164、165、166、167、168、169,170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、または207の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。別の例として、ヒトのST6GalNAcIタンパク質は、アミノ酸残基約35〜278由来のステム領域を含む。したがって、ヒトの切断ST6GalNAcIタンパク質は、例えば、約34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136,137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159,160、161、162、163、164、165、166、167、168、169,170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219,220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259,260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、または278の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。さらに別の例として、ニワトリのST6GalNAcIタンパク質は、アミノ酸残基約37〜253由来のステム領域を含む。したがって、ニワトリの切断ST6GalNAcIタンパク質は、例えば、約36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136,137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159,160、161、162、163、164、165、166、167、168、169,170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219,220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、または253の残基のアミノ末端における欠失を有することができる。
(D.グリコシルトランスフェラーゼ類のワンポットリフォールディング)
本発明のこれらの実施形態は、細菌封入体に発現される複数の真核生物のグリコシルトランスフェラーゼ類が、単独容器内、すなわち、ワンポット法でリフォールディングできるという驚くべき観察に基づいている。この方法を用いて、少なくとも2種のグリコシルトランスフェラーゼを、一緒にリフォールディングできることから、時間と材料を節約できる結果となった。リフォールディング条件は上記に記載されている。リフォールディング条件は、グリコシルトランスフェラーゼの混合物に関して最適化され、したがって、条件は、該混合物中のいずれか特定の酵素に関して最適でないことがあり得る。しかし、グリコシルトランスフェラーゼの組み合わせに関して最適化されるため、最終生成物におけるリフォールディングされた各グリコシルトランスフェラーゼは検出可能な生物学的活性を有する。生物学的活性はリフォールディングされた酵素の酵素活性に当てはまり、特異的活性として表すことができる。生物学的活性としては、例えば、少なくとも0.1、0.5、1、2、5、7、または10単位の活性の特異的活性が挙げられる。単位は以下の通り定義される:1活性単位は、所与の温度(例えば、37℃)およびpH(例えば、pH7.5)で1分当たり、1μモルの生成物の形成を触媒する。したがって、10単位の酵素は、10μモルの基質が、例えば、37℃の温度、および例えば、7.5のpHで、1分間に10μモルの生成物に変換される該酵素の触媒量である。次いでリフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼを含んでなる反応混合物を、例えば、オリゴ糖を合成するために、糖脂質を合成するために、糖タンパク質をリモデリングするために、および糖タンパク質を糖PEG化するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、グリコシルトランスフェラーゼを、封入体から個々に可溶化してから、リフォールディングに適切な条件下で組み合わせることができる。他の実施形態において、グリコシルトランスフェラーゼを含有する封入体を組み合わせ、可溶化してから適切な条件下でリフォールディングする。
リフォールディング用緩衝液は典型的にレドックス対を含む。リフォールディングは、例えば、6.0〜10.0の範囲のpHで実施できる。リフォールディング用緩衝液は、リフォールディングを増強させるために、他の添加物、例えば、L−アルギニン(0.4〜1M);PEG;尿素(1〜2M)および塩化グアニジニウム(0.5〜1.5M)などの低濃度の変性剤;および界面活性剤(例えば、Chaps、SDS、CTAB、およびTritonX−100)を含み得る。
幾つかの実施形態において、リフォールディングは静止容器中で、すなわち、混合、攪拌、振蕩せずに、またはそれ以外に反応混合物を動かすことなく実施される。
リフォールディングされた酵素の組み合わせは、特定のオリゴ糖構造を構築するための酵素を含み得る。所望の最終生成物が同定されたら、当業者は、該混合物中に含めるための適切なグリコシルトランスフェラーゼを同定できよう。
リフォールディングされた酵素の反応混合物はリフォールディングを増強させるために変異させたグリコシルトランスフェラーゼ、例えば、上記のGnTI酵素を含み得る。
好ましい一実施形態において、N−結合グリコシル化ステップを実施する酵素は、単一容器内で一緒にリフォールディングされる。例えばN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTI)、β−1,4ガラクトシルトランスフェラーゼI(GalTI)、およびN−アセチルラクトサミニドα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(ST3GalIII)を、細菌封入体内で発現させ、可溶化し、単一容器内で一緒にリフォールディングできる。最終生成物は3種のタンパク質全ての活性を示し、それらが全て正しくリフォールディングされたことを示した。また、ST3GalIIIなしで、GnTIとGalTIとが一緒にリフォールディングされた場合にもリフォールディングが生じた。これらの実験は、実施例3で詳細に記載されている。
他の好ましい実施形態において、ペプチドまたはタンパク質のO−結合グリコシル化が、細菌で発現され、リフォールディングされた本開示のグリコシルトランスフェラーゼを用いて達成される。例えばポリペプチドにGalNAcを付加させるために、リフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)酵素を使用できる。例えば、実施例4は、GCSFタンパク質にGalNAcを付加するために、リフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)が使用できる証明を提供している。O−結合グリコシルトランスフェラーゼの組み合わせを、例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質または糖ペプチドをリモデリングするために使用できる。これらの組み合わせとしては、例えば、GalNAc−T2とST6GalNAc1;GalNAc−T2、コア1GalT1およびST3Gal1またはST3GalT2が挙げられる。
(III.グリコシルトランスフェラーゼ)
本発明の実施に用いられるグリコシルトランスフェラーゼは、真核生物のグリコシルトランスフェラーゼである。このようなグリコシルトランスフェラーゼの例としては、Staudacher,E.(1996)Trends in Glycoscience and Glycotechnology,8:391−408頁、afmb.cnrs−mrs.fr/〜pedro/CAZY/gtf.htmlおよびwww.vei.co.uk/TGN/gt_guide.htmに記載されているものが挙げられるが、それらに限定されない。
(真核生物グリコシルトランスフェラーゼ)
いくつかのグリコシルトランスフェラーゼは、それらのアミノ末端に、触媒活性には必要ない位相的ドメインを有する(米国特許出願第5,032,519号を参照)。現在までに特性化されたグリコシルトランスフェラーゼの中で、「細胞質ドメイン」は、最も一般的には長さが約1と約10との間のアミノ酸であり、最もアミノ末端側のドメインであり;「シグナルアンカードメイン」と称される隣接ドメインは、一般に長さが約10〜26の間のアミノ酸であり;シグナルアンカードメインに隣接する「ステム領域」は、一般に長さが約20〜約60の間のアミノ酸でありグリコシルトランスフェラーゼをゴルジ装置内に維持するための保持シグナルとして機能することが知られており;該ステム領域のカルボキシル側は触媒ドメインである。
多くの哺乳動物グリコシルトランスフェラーゼがクローン化され、発現され、該組換えタンパク質は供与体基質および受容体基質の特異性に関して特性化されており、それらはまた、供与体基質または受容体基質の特異性に関与する残基またはドメインを確定する意図で、部位指向的変異によって調べられている(Aokiら(1990)EMBO.J.9:3171−3178頁;Harduin−Lepersら(1995)Glycobiology5(8):741−758頁;NatsukaおよびLowe(1994)Current Opinion in Structural Biology4:683−691頁;Zuら(1995)Biochem.Biophys.Res.Comm.206(1):362−369;Setoら(1995)Eur.J.Biochem.234:323−328頁;Setoら(1997)J.Biol.Chem.272:14133−141388頁)。
一群の実施形態において、本発明の組換えグリコシルトランスフェラーゼタンパク質の機能的ドメインは、公知のシアリルトランスフェラーゼから得られる。本発明の使用に好適なシアリルトランスフェラーゼの例としては、限定はしないが、ST3GalIII、ST3GalIV、ST3GalI、ST6GalI、ST3GalV、ST6GalII、ST6GalNAcI、ST6GalNAcII、およびST6GalNAcIII(本明細書に用いられるシアリルトランスフェラーゼの命名法は、Tsujiら(1996)Glycobiology6:v−xivに記載されている通りである)が挙げられる。典型的なα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.6)は、シアリン酸をGalβ1の非還元末端Gal→4GlcNAcジサッカライドまたはグリコシドへ移送させる。Van den Eijndenら、J.Biol.Chem.、256:3159頁(1981)、Weinsteinら、J.Biol.Chem.257:13845頁(1982)およびWenら、J.Biol.Chem.、267:21011頁(1992)を参照されたい。他の典型的なα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.4)は、シアリン酸をGalβ1の非還元末端Gal→3GalNAcジサッカライドまたはグリコシドへ移送させる。Rearickら、J.Biol.Chem.、254:4444頁(1979)およびGillespieら、J.Biol.Chem.、267:21004頁(1992)を参照されたい。さらなる典型的酵素として、Gal−β−1,4−GlcNAcα−2,6シアリルトランスフェラーゼが挙げられる(Kurosawaら、Eur.J.Biochem.219:375−381(1994)を参照)。シアリルトランスフェラーゼの命名法は、Tsuji,Sら(1996)Glycobiology6:v−viiに記載されている。
特許請求された方法に有用なシアリルトランスフェラーゼの一例は、ST3GalIIIであり、これはα(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.6)とも称される。この酵素は、シアリン酸を、Galβ1,3GlcNAcグリコシドのGal、Galβ1,3GalNAcグリコシドのGal、またはGalβ1,4GlcNAcグリコシドのGalへ移送させるのを触媒する(例えば、Wenら(1992)J.Biol.Chem.267:21011頁;Van den Eijndenら(1991)J.Biol.Chem.、256:3159頁を参照)。シアリン酸は、2つの糖の間にα結合を形成することによってGalに結合する。糖間の結合は、NeuAcの2位とGalの3位との間のものである。この特定の酵素は、ラットの肝臓から(Weinsteinら[1982]J.Biol.Chem.257:13845頁);ヒトcDNAから(Sasakiら(1993)J.Biol.Chem.268:22782−22787頁;Kitagawa & Paulson(1994)J.Biol.Chem.269:1394−1401頁)単離でき、組換え発現によってこの酵素の産生を促進するゲノム(Kitagawaら(1996)J.Biol.Chem.271:931−938頁)DNA配列が知られている。好ましい一実施形態において、請求されたシアリル化法では、ラットのST3GalIIIが用いられる。ラットのST3GalIIIはクローン化されており、その配列は知られている。例えばWenら、J.Biol.Chem.267:21011−21019頁(1992)および登録番号M97754を参照されたい。
他の実施形態群において、本発明の組換えグリコシルトランスフェラーゼタンパク質の機能的ドメインは、フコシルトランスフェラーゼから得られる。多数のフコシルトランスフェラーゼが当業者に知られている。手短に言うと、フコシルトランスフェラーゼには、GDP−フコースから受容体である糖のヒドロキシ位にL−フコースを移送させる任意の酵素が含まれる。例えば、いくつかの実施形態において、受容体の糖は、オリゴ糖グリコシドにおけるGalβ(1→4)GlcNAc基内のGlcNAcである。この反応のための好適なフコシルトランスフェラーゼとしては、ヒト乳汁から得られる公知のGalβ(1→3,4)GlcNAcα(1→3,4)フコシルトランスフェラーゼ(FTIII、E.C.No.2.4.1.65)(Palcicら、Carbohydrate Res.190:1−11頁(1989);Prieelsら、J.Biol.Chem.256:10456−10463頁(1981);およびNunezら、Can.J.Chem.59:2086−2095(1981)を参照)およびGalβ(1→4)GlcNAcα(1→3)フコシルトランスフェラーゼ(FTIV、FTV、およびFTVI,E.C.No.2.4.1.65)ならびにヒト血清に見られるNeuAcα(2,3)βGal(1→4)βGlcNAcα(1→3)フコシルトランスフェラーゼ(FTVII)が挙げられる。また、Kanekoら(1999)FEBS Lett.452:237−242頁に記載されているα1,3フコシルトランスフェラーゼIX(ヒトおよびマウスFTIXのヌクレオチド配列)も利用できる。さらに、Galβ(1→3,4)GlcNAcα(1→3,4)フコシルトランスフェラーゼの組換え体も利用できる(Dumasら、Bioorg.Med.Letters1:425−428頁(1991)およびKukowska−Latalloら、Genes and Development4:1288−1303頁(1990)を参照)。他の典型的なフコシルトランスフェラーゼとしては、α1,2フコシルトランスフェラーゼ(E.C.No.2.4.1.69)が挙げられる。酵素的フコシル化は、Molliconeら、Eur.J.Biochem.191:169−176頁(1990)または米国特許出願第5,374,655号に記載された方法により実施できる。
他の実施形態群において、本発明の組換えグリコシルトランスフェラーゼタンパク質の機能的ドメインは、公知のガラクトシルトランスフェラーゼから得られる。典型的なガラクトシルトランスフェラーゼとしては、β−1,4ガラクトシルトランスフェラーゼI、α1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ[E.C.No.2.4.1.151、例えば、Dabkowskiら、Transplant Proc.25:2921頁(1993)およびYamamotoら、Nature345:229−233頁(1990)、ウシ(GenBank jo4989、Joziasseら[1989]J.Biol.Chem.264:14290−14297頁)、マウス(GenBank m26925;Larsenら[1989]Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:8227−8231頁)、ブタ(GenBank L36152;Strahanら[1995]Immunogenetics41:101−105)を参照)が挙げられる。他の好適なα1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、血液B群抗原の合成に関与するものである(EC2.4.1.37、Yamamotoら(1990)J.Biol.Chem.265:1146−1151頁(ヒト))。また、本発明の融合タンパク質における使用に好適なものは、α1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼであり、これには、例えば、EC2.4.1.90(LacNAcシンテターゼ)およびEC2.4.1.22(ラクトスシンセターゼ)(ウシ(D’Agostaroら(1989)Eur.J.Biochem.183:211−217頁)、ヒト(Masriら[1988]Biochem.Biophys.Res.Commun.157:657−663頁)、マウス(Nakazawaら(1988)L.Biochem.104:165−168頁)、ならびにE.C.2.4.1.38およびセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.45、Stahlら(1994)J.Neurosci.Res.38:234−242頁)が挙げられる。他の好適なガラクトシルトランスフェラーゼとしては、例えば、α1,2−ガラクトシルトランスフェラーゼ(例えば、Schizosaccharomyces pombeのもの、Chapellら(1994)Mol.Biol.Cell5:519−528頁)が挙げられる。
本発明の組換え融合タンパク質に有用な他のグリコシルトランスフェラーゼは、シアリルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、およびフコシルトランスフェラーゼについて、詳述されている。特に、グリコシルトランスフェラーゼはまた、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、例えば、Alg8(Stagljovら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:5977頁(1994))またはAlg5(HeesenらEur.J.Biochem.224:71頁(1994))、例えば、β(1,3)−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、β(1,4)−N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(米国特許出願第5,691,180号、Nagataら、J.Biol.Chem.267:12082−12089頁(1992)、およびSmithら、J.Biol.Chem.269:15162頁(1994))およびタンパク質N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Homaら、J.Biol.Chem.268:12609頁(1993))などのN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼであり得る。好適なN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼとしては、GnTI(2.4.1.101、Hullら、BBRC176:608頁(1991))、GnTII、およびGnTIII(Iharaら、J.Biochem.113:692頁(1993))、GnTV(Shoreibanら、J.Biol.Chem.268:15381(1993))、O−結合N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(Bierhuizenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:9326(1992))、N−アセチルグルコサミニン−1−ホスフェートトランスフェラーゼ(Rajputら、Biochem J.285:985(1992)、およびヒアルロナンシンターゼが挙げられる。例えば、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼI(EC2.4.1.174)などのプロテオグリカン合成に関与する酵素、およびN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼII(EC2.4.1.175)などの硫酸コンドロイチン合成に関与する酵素もまた興味深い。好適なマンノシルトランスフェラーゼとしては、α(1,2)マンノシルトランスフェラーゼ、α(1,3)マンノシルトランスフェラーゼ、β(1,4)マンノシルトランスフェラーゼ、Dol−P−Manシンターゼ、OCh1、およびPmt1が挙げられる。キシロシルトランスフェラーゼとしては、例えば、タンパク質キシロシルトランスフェラーゼ(EC2.4.2.26)が挙げられる。
いくつかの実施形態において、真核生物N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼは、細菌内に発現され、本開示の方法を用いてリフォールディングされる。多数のGalNAcT酵素、例えば、GalNAcT1、登録番号X85018;GalNAcT2、登録番号X85019(双方ともWhiteら、J.Biol.Chem.270:24156−24165(1995)に記載されている);およびGalNAcT3、登録番号X92689(Bennettら、J.Biol.Chem.271:17006−17012(1996)に記載されている)が単離され、特性化されている。
(IV.核酸)
グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸、およびこのような核酸を得る方法は、当業者に公知である。好適な核酸(例えば、cDNA、ゲノム、または部分配列(プローブ))を、クローン化できるか、または、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写ベースの増幅システム(TAS)、または自立配列複製システム(SSR)などのインビトロ方法により増幅できる。多種多様のクローニングおよびインビトロ増幅方法論が当業者に周知である。多くのクローニングの実施による当業者に指示する上で十分なこれらの方法および教示の例は、BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniques、Methods in Enzymology 152 Academic Press社、カリフォルニア州、サンディエゴ(Berger);Sambrookら(1989)Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第2版)1−3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク、(Sambrookら);Current Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausbelら編集、Current Protocols、Greene Publishing Associates社とJohn Wiley & Sons社との合弁(1994増補)(Ausubel);Cashionら、米国特許出願第5,017,478号;および Carr、欧州特許第0,246,864号に見られる。
グリコシルトランスフェラーゼ、またはその部分配列をコードするDNAは、例えば、クローニングおよび制限酵素による適切な配列の制限などの上記の任意の好適な方法によって調製できる。好ましい一実施形態において、グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸は、慣用的クローニング法によって単離される。ゲノムDNAサンプル中のグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子、またはRNAサンプル全体中で、グリコシルトランスフェラーゼをコードするmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブを提供するために、例えば、GenBankまたは他の配列データベースに提供されているグリコシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列(上記を参照)を使用できる(例えば、サザンブロットまたはノーザンブロットにおいて)。グリコシルトランスフェラーゼをコードしている標的核酸が同定されたら、それを、当業者に公知の標準的方法によって単離できる。(例えば、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、1−3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、BergerおよびKimmel(1987)Methods in Enzymology 152巻:Guide to Molecular Cloning Techniques、サンディエゴ:Academic Press社;またはAusbelら(1987)Current Protocols in Molecular Biology、Greene PublishingおよびWiley−Interscience、ニューヨークを参照)。さらに、単離された核酸を制限酵素によって開裂して、完全長グリコシルトランスフェラーゼ、またはその部分配列をコードする、例えば、グリコシルトランスフェラーゼのステム領域または触媒ドメインの少なくとも1つの部分配列をコードする部分配列を含有する核酸を創製することができる。次いでグリコシルトランスフェラーゼ、またはその部分配列をコードするこれらの制限酵素断片を、例えば、組換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質をコードする核酸を作成させるために、結合させ得る。
グリコシルトランスフェラーゼ、またはその部分配列をコードする核酸を、発現生成物に関してアッセイすることによって特性化できる。発現タンパク質の物理的、化学的、または免疫学的性質の検出に基づいたアッセイを使用できる。例えば、グリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質などのクローン化グリコシルトランスフェラーゼを、該核酸によってコードされたタンパク質の、供与体基質から受容体基質への糖の移送を触媒する能力によって同定することができる。好ましい一方法において、反応生成物を検出するために、キャピラリー電気泳動が用いられる。この高感度アッセイには、Wakarchukら(1996)J.Biol.Chem.271(45):28271−276頁に記載されている蛍光で標識されたサッカライドアミノフェニル誘導体またはジサッカライドアミノフェニル誘導体のいずれかの使用が含まれる。例えば、ナイセリアlgtC酵素のアッセイには、FCHASE−AP−LacまたはFCHASE−AP−Galを使用でき、一方、ナイセリアlgtB酵素にとっての適切な試薬は、FCHASE−AP−GlcNAc(上記)である。
また、グリコシルトランスフェラーゼ、またはその部分配列をコードする核酸を、化学的に合成することもできる。好適な方法としては、Narangら(1979)Meth.Enzymol.68:90−99頁のホスホジエステル法;Brownら(1979)Meth.Enzymol.68:109−151頁のホスホジエステル法;Beaucageら(1981)Tetra.Lett.、22:1859−1862頁のジエチルホスホラミダイト法;および米国特許出願第4,458,066号の固体支持体法が挙げられる。化学的合成では一本鎖オリゴヌクレオチドが生成する。これを、相補的配列によるハイブリダイゼーションによって、または一本鎖をテンプレートとして用いた、DNAポリメラーゼによる重合によって、二本鎖DNAへと変換できる。DNAの化学的合成は、約100塩基の配列に制限されることが多いが、より長い配列がより短い配列の結合によって得ることができることは、当業者に認識されている。
グリコシルトランスフェラーゼ、またはその部分配列をコードする核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などのDNA増幅法を用いてクローン化できる。したがって、例えば、該核酸配列または部分配列は、1つの制限酵素部位(例えば、NdeI)を含有するセンスプライマーおよび他の制限酵素部位(例えば、HindIII)を含有するアンチセンスプライマーを用いてPCR増幅できる。これによって、所望のグリコシルトランスフェラーゼまたは部分配列をコードし、末端制限酵素部位を有する核酸が生成する。次いで、この核酸を、第2の分子をコードする核酸を含有し、対応する適切な制限酵素部位を有するベクターに、容易に結合できる。好適なPCRプライマーは、GenBankまたは他の供給源から提供される配列情報を用いて、当業者によって決定できる。また、部位指向性変異によって、適切な制限酵素部位を、グリコシルトランスフェラーゼタンパク質またはタンパク質部分配列をコードする核酸に付加できる。グリコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列または部分配列を含有するプラスミドを、適切な制限エンドヌクレアーゼによって開裂し、次いで標準的方法にしたがって、増幅および/または発現のための適切なベクター内へ結合させる。当業者に指示する上で十分なインビトロ増幅法による方法の例は、Berger、Sambrook、およびAusubel、ならびにMullisら(1987)米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications(Innisら編集)Academic Press社、カリフォルニア州、サンディエゴ(1990)(Innis);Arnheim & Levinson(1990年、10月1日)C&EN 36−47頁;The Journal Of NIH Research(1991)3:81〜94;(Kwohら、(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:1173;Guatelliら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87、1874頁;Lomellら(1989)J.Clin.Chem.、35:1826頁;Landegrenら、(1988)Science 241:1077−1080;Van Brunt(1990)Biotechnology8:291−294頁;WuおよびWallace(1989)Gene 4:560頁;およびBarringerら(1990)Gene 89:117頁に見られる。
特定の核酸から発現させたグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質などのクローン化グリコシルトランスフェラーゼの他の物理的性質を、公知のグリコシルトランスフェラーゼの性質と比較して、受容体基質特異性および/または触媒活性の決定因子である該グリコシルトランスフェラーゼの好適な配列またはドメインを同定する他の方法を提供できる。或いは、推定上のグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子または組換えグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を変異させて、グリコシルトランスフェラーゼとしてのその役割、リフォールディングされるその能力、または特定の配列またはドメインの役割を、非変異の、天然の、または対照のグリコシルトランスフェラーゼによって通常作成される炭水化物の構造における変化を検出することによって確認できる。
クローン化されたグリコシルトランスフェラーゼの機能性ドメインは、グリコシルトランスフェラーゼ類を改変または修飾するための標準的方法、および本明細書に記載されている、受容体基質活性および/または触媒活性などの活性に関して改変または変異したタンパク質を試験することにより同定できる。1種以上のグリコシルトランスフェラーゼ類の機能性ドメインを含んでなる組換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質をコードする核酸類を構築するために種々のグリコシルトランスフェラーゼの機能性ドメインを使用できる。次にこれらの融合タンパク質を、所望の受容体基質活性または触媒活性について試験できる。
組換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質をクローン化する典型的な方法において、クローン化グリコシルトランスフェラーゼの公知の核酸またはアミノ酸配列を整列させ、種々のグリコシルトランスフェラーゼ間の配列同一性量を判定するために比較する。この情報により、グリコシルトランスフェラーゼ活性、例えば、対象のグリコシルトランスフェラーゼ類間の配列同一性量に基づく受容体基質活性および/または触媒活性を与えるか、または調節する蛋白ドメインを同定し、選択するために使用できる。例えば、対象のグリコシルトランスフェラーゼ間に配列同一性を有し、公知の活性に関係するドメインは、そのドメインを含有し、そのドメインに関連する活性(例えば、受容体基質特異性および/または触媒活性)を有する、組換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質を構築するために使用できる。
(V.組換えグリコシルトランスフェラーゼ類の発現)
組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、大腸菌、他の細菌宿主、酵母、およびCOS、CHOおよびHeLa細胞系ならびに骨髄腫細胞系などの種々の高等真核生物細胞を含む種々の宿主細胞において発現できる。宿主細胞は、哺乳動物細胞、植物細胞、または例えば、酵母細胞、細菌細胞、もしくは真菌細胞などの微生物であり得る。好適な宿主細胞の例としては、多くのものの中で、例えば、アゾトバクター種(例えば、A.vinelandii)、シュードモナス種、リゾビウム種、エルウィニア種、エシェリキア種(例えば、大腸菌)、バチラス、シュードモナス、プロテウス、サルモネラ、セラチア、シゲラ、リゾビア、ビトレオシラ(Vitreoscilla)、パラコッカス属およびクレブシエラ種が挙げられる。該細胞は、サッカロミセス属(例えば、S.cerevisiae)、カンジダ属(例えば、C.utilis、C.parapsilosis、C.krusei、C.versatilis、C.lipolytica、C.zeylanoides、C.guilliermondii、C.albicansおよびC.humicola)、ピチア属(例えば、P.farinosaおよびP.ohmeri)、トルロプシス属(例えば、T.candida、T.sphaerica、T.xylinus、T.famata、およびT.versatilis)、デバリオミセス属(例えば、D.subglobosus、D.cantarellii、D.globosus、D.hansenii、およびD.japonicus)、ジゴサッカロミセス属(例えば、Z.rouxiiおよびZ.bailii)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)(例えば、K.marxianus)、ハンゼヌラ属(例えば、H.anomalaおよびH.jadinii)およびブレッタノミセス属(Brettanomyces)(例えば、B.lambicusおよびB.anomalus)などのうち、いずれかの属のものであり得る。有用な細菌の例としては、限定はしないが、エシェリキア、エンテロバクター、アゾトバクター、エルウィニア、クレブシエリアが挙げられる。
典型的に、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、所望の宿主細胞において機能的であるプロモーターの制御下に置かれる。極めて多種多種のプロモーター類が周知であり、特定の適用に依って本発明の発現ベクターに使用できる。通常、選択されたプロモーターは、プロモーターが活性となる細胞に依存する。リボソーム結合部位、転写末端部位などの他の発現制御配列もまた、任意に含まれる。1つ以上のこれらの制御配列を含む構造物は、「発現カセット」と呼ばれる。したがって、本発明は、融合タンパク質をコードする核酸類が所望の宿主細胞における高レベルの発現のために取り込まれる発現カセットを提供する。
特定の宿主細胞における使用に好適な発現制御配列は、その細胞に発現される遺伝子をクローン化することにより得られることが多い。リボソーム結合部位配列と共に任意にオペレーターによる転写開始のためのプロモーター類を含んで、本明細書に定義される通常使用される原核生物の制御配列としては、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)系およびラクトース(lac)プロモーター系(Changeら、Nature(1977)198:1056頁)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nucleic Acids Res.(1980)8:4057頁)、tacプロモーター(DeBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1983)80:21−25頁);およびラムダ由来PLプロモーターならびにN−遺伝子リボソーム結合部位(Shimatakeら、Nature(1981)292:128頁)などの一般に使用されているプロモーター類が挙げられる。特定のプロモーター系は、本発明にとって重要ではなく、原核生物において機能する任意の利用できるプロモーターが使用できる。
大腸菌以外の原核生物における組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼ類の発現のためには、特定の原核生物種において機能するプロモーターが必要である。このようなプロモーター類は、その種からクローン化された遺伝子から得ることができるか、または異種のプロモーター類が使用できる。例えば、ハイブリッドtrp−lacプロモーターは、大腸菌の他にバチルス属でも機能する。
リボソーム結合部位(RBS)は、本発明の発現カセットに都合よく含まれている。例えば、大腸菌におけるRBSは、開始コドンの3〜11のヌクレオチド上流に位置した長さ3〜9のヌクレオチドのヌクレオチド配列からなる(ShineおよびDalgarno、Nature(1975)254:34頁;Steitz、Biological regulation and development:Gene expression(R.F.Goldberger)、1巻、349頁、1979年、Plenum Publishing、ニューヨーク)。
酵母における組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼの発現のために、好適なプロモーター類としては、GAL1−10(JohnsonおよびDavies(1984)Mol.Cell.Biol.4:1440−1448頁)ADH2(Russellら(1983)J.Biol.Chem.258:2674−2682頁)、PHO5(EMBO J.(1982)6:675−680頁)、およびMFα(HerskowitzおよびOshima(1982)編、The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces(Strathern、Jones、およびBroach編集)Cold Spring Harbour Lab.、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク、181−209頁)が挙げられる。酵母における使用に好適な別のプロモーターは、Cousensら、Gene61:265−275頁(1987)に記載されているADH2/GAPDHハイブリッドプロモーターである。例えば、真菌アスペルギルス株(McKnightら、米国特許第4,935,349号)などの糸状菌に関して、有用なプロモーター類の例としては、ADH3プロモーター(McKnightら、EMBO J.4:2093−2099頁(1985))およびtpiAプロモーターなどの偽巣性コウジ菌の解糖遺伝子に由来するものが挙げられる。好適なターミネーターの例は、ADH3ターミネーターである(McKnightら)。
植物における使用に好適な構成的プロモーター類としては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写開始領域と領域VIプロモーター類、アグロバクテリウムチュメファシエンスのT−DNAに由来する1’−または2’−プロモーター、および当業者に公知の植物細胞において活性な他のプロモーター類が挙げられる。他の好適なプロモーター類としては、フィグウォート(Figwort)モザイクウィルス、アクチンプロモーター類、ヒストンプロモーター類、チューブリンプロモーター類、またはマンノピン合成プロモーター(MAS)からの完全長転写プロモーターが挙げられる。他の構成的植物プロモーター類としては、とりわけアラビドプシス(SunおよびCallis、Plant J.、11(5):1017−1027頁(1997))に由来する種々のユビキチンまたはポリユビキチン、マス、マックまたはダブルマックプロモーター類(米国特許第5,106,739号およびComaiらによるPlant Mol.Biol.15:373−381頁(1990)に記載されている)および当業者に公知の種々の植物遺伝子の他の転写開始領域が挙げられる。また、植物に有用なプロモーター類としては、プロモーター類が、植物において機能的であることが見出されている植物細胞、植物ウィルスまたは他の宿主のTi−プラスミドまたはRi−プラスミドから得られたものが挙げられる。植物において機能的で、したがって本発明の方法における使用に好適である細菌プロモーターとしては、オクトピンシンテターゼプロモーター、ノパリン合成プロモーター、およびマノピン合成プロモーターが挙げられる。好適な内因性植物プロモーターとしては、リブロース−1,6−ビホスフェート(RUBP)、カルボキシラーゼ小サブユニット(ssu)プロモーター、(α−コングリシニンプロモーター、ファゼオリンプロモーター、ADHプロモーター、およびヒートショックプロモーター類が挙げられる。
構成的または制御されたプロモーター類を、本発明に使用できる。融合タンパク質の発現が誘導される前に宿主細胞を高密度に増殖できることから、制御されたプロモーター類が有利となり得る。異種のタンパク質の高レベル発現により、幾つかの状況で細胞増殖が遅くなる。誘導性のプロモーターは、遺伝子の発現レベルが、例えば、温度、pH、嫌気的または好気的条件、光、転写因子および試薬などの環境因子または発生因子により変化する遺伝子発現を方向付けるプロモーターである。このようなプロモーターは、本明細書で「誘導性」プロモーターと称され、ヌクレオチド糖合成に関与するグリコシルトランスフェラーゼまたは酵素の発現タイミングを制御できる。大腸菌および他の細菌宿主細胞に関して、誘導性プロモーター類は当業者に公知である。これらには、例えば、lacプロモーター、バクテリオファージラムダPLプロモーター、ハイブリッドtrp−lacプロモーター(Amannら、(1983)Gene25:167頁;de Boerら(1983)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA80:21頁)、バクテリオファージT7プロモーター(Studierら(1986)J.Mol.Biol.;Taborら、(1985)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA82:1074−8頁)が含まれる。これらのプロモーターと使用法は、前述のSambrookらにより考察されている。原核生物における発現のために特に好ましい誘導性プロモーターは、ガラクトース代謝に関与する酵素をコードする遺伝子(1つまたは複数)から得られたプロモーター成分に結合したtacプロモーター成分を含むデュアルプロモーター(例えば、UDPガラクトース4−エピメラーゼ遺伝子(galE)からのプロモーター)である。PCT特許出願公開第WO98/20111号に記載されているデュアルtac−galプロモーターは、いずれかのプロモーター単独により提供されたものよりも大きな発現レベルを提供する。
植物における使用のための誘導性プロモーター類は、当業者に公知であり(例えば、Kuhlemeirら(1987)Ann.Rev.Plant Physiol.38:221頁に記載の参考文献を参照)、光誘導性で光合成組織においてのみ活性であるシロイヌナズナの1,5−リブロースビスホスフェートカルボキシラーゼ小サブユニット遺伝子のもの(「ssu」プロモーター)を含む。
他の生物に関する誘導性プロモーター類もまた、当業者に周知である。これらには、例えば、アラビノースプロモーター、lacZプロモーター、メタロチオネインプロモーター、およびヒートショックプロモーターならびに他の多くのものが含まれる。
遺伝子発現制御シグナルに操作可能に結合される対象のポリヌクレオチドを含む構造は、適切な宿主細胞に入れられた場合、ポリヌクレオチドの発現を駆動し、「発現カセット」と呼ばれる。本発明の融合タンパク質をコードする発現カセットは、宿主細胞内への導入のために発現ベクターに入れられることが多い。ベクタ類は典型的に、発現カセットに加えて、ベクターが1種以上の選択宿主細胞において独立して複製できる核酸配列を含む。一般に、この配列は、ベクターが宿主の染色体DNAから独立して複製できるものであり、複製起点または自律的複製配列を含む。このような配列は、種々の細菌に関して周知である。例えば、プラスミドpBR322由来の複製起点は、大部分のグラム陰性細菌に適切である。あるいは、該ベクターは、宿主細胞のゲノム補体に組み込まれることにより、また細胞がDNA複製を受けて複製されることによって複製できる。細菌細胞における酵素発現にとって好ましい発現ベクターは、デュアルtac−galプロモーターを含み、PCT特許出願公開第WO98/20111号に記載されているpTGKである。
また、宿主細胞の増殖に比してポリペプチドの発現調節を可能にする調節配列を加えることが、望ましいと考えられる。調節系の例は、調節化合物の存在を含む、化学または物理的刺激に応答して、作動または遮断される遺伝子発現を生じるものである。原核生物系における調節系としては、lacオペレーター系、tacオペレーター系、およびtrpオペレーター系が挙げられる。酵母において、ADH2系またはGAL1系を使用できる。糸状菌において、TAKAα−アミラーゼプロモーター、クロカビのグルコアミラーゼプロモーター、コウジカビのグルコアミラーゼプロモーターを、調節配列として使用できる。
ポリヌクレオチド構造物の構成は、一般に細菌内で複製できるベクターの使用を必要とする。多くのキットは、細菌のプラスミドの精製用に商品として入手できる(例えば、EasyPrepJ、FlexiPrepJの双方ともPharmacia Biotechから;StratageneからのStrataCleanJ;QiagenのQIAexpress Expression Systemを参照)。次いで単離および精製プラスミドを、他のプラスミドを産生するためにさらに操作でき、細胞に形質移入させるために使用できる。ストレプトミセスまたはバチルスにおけるクローン化もまた可能である。
選択マーカーが、本発明のポリヌクレオチド類を発現するために用いられる発現ベクターに取り込まれることが多い。これらの遺伝子は、選択的培養培地中で増殖される形質移入宿主細胞の生存または増殖に必要なタンパク質などの遺伝子産物をコードする。選択遺伝子を含有するベクターにより形質移入されなかった宿主細胞は、培養培地中で生存しない。典型的な選択遺伝子は、アンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリンなどの抗生物質または毒素に耐性を与えるタンパク質をコードする。あるいは、選択マーカーは、栄養要求性の欠失を補足するか、または複合培地から利用できない重要な栄養物を供給するタンパク質をコードできる(例えば、桿菌用にD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子)。該ベクターは、宿主細胞に導入される前に該ベクターが複製される大腸菌または他の細胞において機能的である1つの選択マーカーを有することが多い。多数の選択マーカーが、当業者に公知であり、例えば、前述のSambrookらに記載されている。細菌細胞の使用に好ましい選択マーカーは、カナマイシン耐性マーカーである(VieiraおよびMessing、Gene19:259頁(1982))。カナマイシンの選択使用は、例えば、アンピシリン選択よりも有利である。というのは、アンピシリンは、培養培地中のβ−ラクタマーゼにより速やかに分解され、したがって選択圧が除かれ、その培養物にはベクターを含有しない細胞が過剰増殖するからである。
上記に掲げた1種以上の成分を含有する好適なベクターの構築物には、上記に引用した参考文献に記載された標準的な連結法が使用される。単離されたプラスミドまたはDNA断片を開裂し、編成し、所望の形態に再結合させて必要なプラスミドを生成する。構築されたプラスミドにおける正しい配列を確認するために、公知の方法に従って制限エンドヌクレアーゼ消化および/または塩基配列決定法など、標準的方法による分析によってこのプラスミドを分析できる。これらの目標を達成する分子クローン化技法は、当該分野に公知である。組換え核酸の構築に好適な多種多様のクローン化法およびインビトロ増幅法は、当業者に周知である。当業者を指導する上で十分な多くのクローン化実施によるこれらの技法および教示の例は、BergerおよびKimmelのGuide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology、152巻、Academic Press社、カリフォルニア州サンディエゴ(Berger);およびCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら編集、Current Protocols、Greene Publishing Associates社とJohn Wiley & Sons社との共同事業、(1998年に補遺)(Ausubel)に見られる。
本発明の発現ベクターを構築するための出発原料としての使用に好適な種々の共通のベクターが、当該分野に周知である。細菌におけるクローン化に関して、共通のベクターとしては、pBLUESCRIPT(商標)などのpBR322由来のベクター、およびλ−ファージ由来のベクターが挙げられる。酵母におけるベクターとしては、酵母組込みプラスミド(例えば、YIp5)および酵母複製プラスミド(YRpシリーズプラスミド類)およびpGPD−2が挙げられる。哺乳動物細胞における発現は、pSV2、pBC12BIおよびp91023、ならびに溶解性ウィルスベクター(例えば、ワクシニアウィルス、アデノウィルスおよびバキュロウィルス)、エピソームウィルスベクター(例えば、ウシパピローマウィルス)、レトロベクター(例えば、マウスレトロウィルス類)などの種々の一般に利用できるプラスミドを用いて達成できる。
発現ベクターを選択された宿主細胞に導入する方法は、特に重要ではなく、このような方法は当業者に公知である。例えば、発現ベクターを、塩化カルシウム形質転換により、大腸菌などの原核生物細胞に導入でき、またリン酸カルシウム処理または電気穿孔により真核生物細胞に導入できる。他の形質転換法もまた好適である。
翻訳カップリングが、発現を増強させるために使用できる。この方法では、翻訳系に特有の高発現遺伝子由来の短い上流オープンリーディングフレームを使用し、これをプロモーターの下流に配置し、続いて終止コドンによる2、3のアミノ酸コドン後、リボソーム結合部位が位置する。終止コドンの直前に、第2のリボソーム結合部位があり、終止コドン後に翻訳開始のための開始コドンがある。この系は、RNAにおける二次的構造を分解して翻訳の効率的開始を可能にする。Squiresら(1988)、J.Biol.chem.263:16297−16302頁を参照されたい。
本発明の組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼはまた、他の細菌タンパク質にさらに結合できる。通常の原核生物の制御配列が、転写および翻訳を指令することから、このアプローチは、高収率をもたらすことが多い。大腸菌において、lacZ融合が、異種タンパク質を発現するために使用されることが多い。pUR、pEX、およびpMR100シリーズ(例えば、前述のSambrookらを参照)などの好適なベクター類を容易に利用できる。ある一定の適用に関しては、精製後の融合タンパク質から非グリコシルトランスフェラーゼおよび/または補助的酵素のアミノ酸を開裂することが望ましいと考えられる。これは、臭化シアン、プロテアーゼ、または因子Xaによるなど、当該分野に公知の任意の方法(例えば、前述のSambrookら;Itakuraら、Science(1977)198:1056頁;Goeddelら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1979)76:106頁;Nagaiら、Nature(1984)309:810頁;Sungら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986)83:561頁を参照)により達成できる。開裂部位を、所望の開裂部位で融合タンパク質に関して遺伝子内に操作できる。
1つ以上の組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼを、複数の翻訳カセットを単独発現ベクターに入れることによって、またはクローン化法に使用される発現ベクターの各々に対して異なる選択マーカー類を利用することによって単独の宿主細胞に発現することができる。
N−末端の完全性を維持する大腸菌から組換えタンパク質を得る好適な方法は、Millerら、Biotechnology7:698−704頁(1989)に記載されている。この系における対象の遺伝子は、ペプチダーゼ開裂部位を含有する酵母ユビキチン遺伝子の最初の76の残基とのC−末端融合として産生される。2つの部分の結合部における開裂により、無傷の標準的N−末端残基を有するタンパク質の産生がもたらされる。
本発明の発現ベクターを、大腸菌については塩化カルシウム形質転換、哺乳動物細胞についてはリン酸カルシウム処理または電気穿孔などの周知の方法により、選択された宿主細胞に移入することができる。プラスミド類によって形質転換された細胞は、amp遺伝子、gpt遺伝子、neo遺伝子およびhyg遺伝子などのプラスミド上に含まれた遺伝子によって与えられる、抗生物質耐性により選択できる。
(VI.タンパク質およびタンパク質の精製)
組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質は、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などの当該分野の標準的な手法(一般に、R.Scopes、Protein Purification、Springer−Verlag、ニューヨーク州(1982)、Deutscer、Methods in Enzymology182巻:Guide to Protein
Purification、Academic Press社、ニューヨーク州(1990)を参照)に従って精製できる。好ましい実施形態において、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質の精製は、タンパク質のリフォールディング後に生じる。少なくとも約70%〜90%均一性の実質的に純粋な組成物が好ましく;より好ましくは、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、または97%であり;98%〜99%以上の均一性が最も好ましい。精製タンパク質はまた、例えば、抗体産生の免疫原として使用できる。
本発明の組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質の精製を促進するために、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質をコードする核酸類は、アフィニティー結合試薬が利用できるエピトープまたは「タグ」、すなわち精製用タグに関するコード化配列を含み得る。好適なエピトープ類の例としては、myc遺伝子およびV−5レポーター遺伝子が挙げられ;これらのエピトープ類を有する融合タンパク質の組換え産生に有用な発現ベクター類は、市販されている(例えば、Invitrogen(Carlsbad、カリフォルニア州)ベクターpcDNA3.1/Myc−HisおよびpcDNA3.1/V5−Hisは哺乳動物細胞における発現に好適である)。本発明の融合タンパク質に対するタグの結合に好適なさらなる発現ベクター、および対応する検出システムは、当業者に公知であり、幾つかは市販されている(例えば、「FLAG」(Kodak、ニューヨーク州ロチェスター))。好適なタグの他の例は、金属キレートアフィニティーリガンドに結合可能なポリヒスチジン配列である。典型的には、6つの隣接ヒスチジン(配列番号67)が用いられるが、6つ前後を使用することもできる。ポリヒスチジンタグへの結合部分として役立ち得る好適な金属キレートアフィニティーリガンドとしては、ニトリロ−トリ−酢酸(NTA)(Hochuli,E(1990)「Purification of recombinant proteins with metal chelating adsorbents」Genetic Engineering:Principles and Methods、J.K.Setlow編集、Plenum Press、NY;Qiagen(サンタクラリタ、カリフォルニア州)から市販)が挙げられる。
精製用タグはまた、マルトース結合ドメインおよび澱粉結合ドメインを含む。マルトース結合ドメインタンパク質の精製は、当業者に公知である。澱粉結合ドメインは、WO99/15636号(参照として本明細書に組み込まれている)に記載されている。βシクロデキストリン(BCD)−誘導化樹脂を用いた澱粉結合ドメインを含んでなる融合タンパク質のアフィニティー精製は、2003年5月5日に出願された米国特許出願第60/468,374号(参照としてその全体が本明細書に組み込まれている)に記載されている。
タグとしての使用に好適な他のハプテン類は、当該分野に公知であり、例えば、Fluorescent Probes and Research Chemicals(第6版、Molecular Probes社、Eugeneオレゴン州)のハンドブックに記載されている。例えば、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン、バルビツレート類(例えば、米国特許第5,414,085号を参照)、および幾つかのタイプの蛍光体は、これらの化合物の誘導体であるハプテン類として有用である。ハプテン類および他の部分と、タンパク質および他の分子とを結合するためのキット類は、市販されている。例えば、ハプテンがチオールを含む場合、タグを捕捉剤上に存在するリジン残基に結合させるために、SMCCなどのヘテロ二官能性リンカーを用いることができる。
当業者は、生物活性を消失することなく、グリコシルトランスフェラーゼ触媒ドメインまたは機能性ドメインおよび/または補助的酵素触媒ドメインに改変を施すことができることを認識されるであろう。クローン化、発現、または融合タンパク質への触媒ドメインの取り込みを促進するために、幾つかの改変を施すことができる。このような改変は、当業者に周知であり、例えば、開始部位を提供するアミノ末端に付加されたメチオニンを提供するために、またはいずれかの末端に位置する追加のアミノ酸(例えば、ポリHis)を提供して、便利に配置された制限酵素部位あるいは末端コドンまたは精製配列を創製するために、触媒ドメインをコードするポリヌクレオチドのいずれかの末端におけるコドンの付加が挙げられる。
(VII.リフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼ類の利用)
本発明は、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質、および糖タンパク質、糖脂質およびオリゴ糖部分を酵素的に合成し、ならびに糖タンパク質を糖PEG化するために、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質を用いる方法を提供する。本発明のグリコシルトランスフェラーゼ反応は、少なくとも1種のグリコシルトランスフェラーゼ、受容体基質と供与体基質、および典型的に溶解性二価金属カチオンを含んでなる反応媒体中で行われる。幾つかの実施形態において、補助的酵素が、グリコシルトランスフェラーゼに関する供与体基質を合成できるように、補助的酵素および補助的酵素触媒部分用の基質もまた存在する。本発明の組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質および方法は、受容体基質への糖類の付加を触媒する組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質の使用に依存する。
所望のオリゴ糖部分を有する糖タンパク質および糖脂質を合成するためにグリコシルトランスフェラーゼを用いる多くの方法は公知である。代表的な方法は、例えば、WO96/32491、Itoら(1993)Pure Appl.Chem.65:753頁、および米国特許第5,352,670号、米国特許第5,374,541号および米国特許第5,545,553号に記載されている。
本明細書に記載されたとおり調製された組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質は、活性のためにリフォールディングが必要であってもなくてもよいさらなるグリコシルトランスフェラーゼと組み合わせて使用できる。例えば、リフォールディングされた真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質と、宿主細胞から単離後リフォールディングされていても、またはリフォールディングされていなくてもよい細菌のグリコシルトランスフェラーゼとの組み合わせを使用できる。同様に、組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼは、融合タンパク質の一部であっても、なくてもよい組換え補助的酵素と共に使用できる。
上記の方法によって生成された生成物は、精製することなく使用できる。幾つかの実施形態において、オリゴ糖が生成される。標準的な周知の技法、例えば、薄層または厚層クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、または膜ろ過を、グリコシル化糖類の回収のために使用できる。また、例えば、共通譲渡された豪州国特許第735695号に記載されているナノろ過または逆浸透膜を利用する膜ろ過を使用できる。さらなる例として、膜が約1000から約10,000の分子量のカットオフを有する膜ろ過を、タンパク質を除去するために使用できる。別の例として、次にナノろ過または逆浸透法は、塩類を除去するために使用できる。ナノフィルタ膜は、使用される膜に依って、一価の塩類を通すが、多価の塩類および約200ダルトン以上から約1000ダルトンまでの非電荷溶質を保持する逆浸透膜のクラスである。したがって、例えば、本発明の組成物および方法によって生成されたオリゴ糖は、膜に保持することができ、不純物の塩類は通過する。
(VIII.供与体基質/受容体基質)
本発明の組換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質および方法により用いられた好適な供与体基質としては、限定はしないが、UDP−Glc、UDP−GlcNAc、UDP−Gal、UDP−GalNAc、GDP−Man、GDP−Fuc、UDP−GlcUA、およびCMP−シアル酸が挙げられる。Guoら、Applied Biochem.and Biotech.68:1−20頁(1997)。
本発明の組換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質および方法により用いられた好適な受容体基質としては、限定はしないが、多糖類、オリゴ糖類、タンパク質類、脂質類、ガングリオシド類および本発明の方法により改変できる他の生物学的構造(例えば、細胞全体)が挙げられる。本発明の方法により改変できる典型的な構造としては、表1に記載される当業者に公知の細胞上の任意の多数の糖脂質類、糖タンパク質および炭水化物構造が挙げられる。
フコシルトランスフェラーゼ触媒反応に使用される好適な受容体基質の例およびシアリルトランスフェラーゼ触媒反応使用される好適な受容体基質の例は、Guoら、Applied Biochem.and Biotech.68:1−20頁(1997)に記載されているが、それらに限定されない。
(IX.グリコシルトランスフェラーゼ反応)
組換え真核生物グリコシルトランスフェラーゼタンパク質、受容体基質、供与体基質および他の反応混合物成分を、水性反応媒体中の混合により組み合わされる。一般に媒体は、約5〜約8.5のpH値を有する。媒体の選択は、所望のレベルでpH値を維持する媒体の能力に基づく。したがって、幾つかの実施形態において、媒体は、約7.5のpH値に緩衝化される。緩衝液を使用しない場合、媒体のpHは、使用される特定のグリコシルトランスフェラーゼに依って約5〜8.5に維持されるべきである。フコシルトランスフェラーゼに関しては、pH範囲が、約6.0〜8.0に維持されることが好ましい。シアリルトランスフェラーゼに関しては、その範囲が、約5.5〜7.5に維持されることが好ましい。
酵素量または酵素濃度は、触媒の初発率の目安である活性単位で表される。1活性単位は、所与の温度(典型的には37℃)およびpH値(典型的には7.5)で1分当り1μmolの生成物形成を触媒する。したがって、10単位の酵素は、10μmolの基質が37℃の温度および7.5のpH値で1分につき10μmolの生成物に変換される該酵素の触媒量である。
反応混合物は、二価の金属カチオン(Mg2+、Mn2+)を含んでもよい。また反応媒体は、可溶化界面活性剤(例えば、TritonまたはSDS)および必要ならば、メタノールまたはエタノールなどの有機溶媒を含んでもよい。酵素は、溶液中で遊離して利用できるか、またはポリマーなどの支持体に結合できる。したがって反応混合物は、初期に実質的に均一性であるが、反応時に沈殿物が幾らか形成する可能性がある。
上記方法を実施する温度は、凍結温度のすぐ上から最も感受性の酵素が変性する温度までの範囲であり得る。その温度範囲は、約0℃〜約45℃までが好ましく、約20℃〜約37℃までがより好ましい。
そのように形成された反応混合物は、グリコシリ化される糖タンパク質に結合されたオリゴ糖基に存在する高収率の所望のオリゴ糖決定因子を得るのに十分な時間維持される。大スケールの調製に関して、この反応は、約0.5時間〜240時間の間、より典型的には約1時間〜18時間の間しばしば進行させることが多い。
1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ反応を、グリコシルトランスフェラーゼサイクルの一部として実施できる。グリコシルトランスフェラーゼサイクルの好ましい条件と説明は既に記載されている。多数のグリコシルトランスフェラーゼサイクル(例えば、シアリルトランスフェラーゼサイクル、ガラクトシルトランスフェラーゼサイクルおよびフコシルトランスフェラーゼサイクル)は、米国特許第5,374,541号および国際公開第9425615号に記載されている。他のグリコシルトランスフェラーゼサイクルは、Ichikawaら、J.Am.Chem.Soc.114:9283頁(1992)、Wongら、J.Org.Chem.57:4343頁(1992)、DeLucaら、J.Am.Chem.Soc.117:5869−5870頁(1995)、およびIchikawaら、Caubohydrates and Carbohydrate Polymers.Yaltami編集(ATL Press、1993年)に記載されている。
他のグリコシルトランスフェラーゼを、フコシルトランスフェラーゼおよびシアリルトランスフェラーゼに関して詳細に記載されているのと同様のトランスフェラーゼサイクルに置換できる。特に、グリコシルトランスフェラーゼはまた、例えば、グルコシルトランスフェラーゼ、例えば、Alg8(Stagljovら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:5977頁(1994))またはAlg5(Heesenら、Eur.J.Biochem.224:71頁(1994))、例えばα(1,3)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、β(1,4)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Nagataら、J.Biol.Chem.267:12082〜12089(1992)およびSmithら、J.Biol.Chem.269:15162頁(1994))およびポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Homaら、J.Biol Chem.268:12609頁(1993))などのN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼであり得る。好適なN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼとしては、GnTI(2.4.1.101、Hullら、BBRC 176:608頁(1991))、GnTII、およびGnTIII(Iharaら、J.Biochem.113:692頁(1993))、GnTV(Shoreibanら、J.Biol.Chem.268:15381頁(1993))、O−結合N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(Bierhuizenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:9326頁(1992))、N−アセチルグルコサミン−1−ホスフェートトランスフェラーゼ(Rajputら、Biochem J.285:985頁(1992))、およびヒアルロナンシンターゼが挙げられる。好適なマンノシルトランスフェラーゼとしては、α(1,2)マンノシルトランスフェラーゼ、α(1,3)マンノシルトランスフェラーゼ、β(1,4)マンノシルトランスフェラーゼ、Dol−P−Manシンターゼ、OCh1、およびPmt1が挙げられる。
上記のグリコシルトランスフェラーゼサイクルに関して、この方法に用いられる種々の反応物の濃度または量は、温度およびpH値などの反応条件、グリコシル化される受容体糖類の選択および量など、多くの因子に依存する。グリコシル化法が、触媒量の酵素の存在下で、活性化ヌクレオチド、活性化供与体糖類の再生および生成されたPPiの除去を可能にすることから、この方法は、先に考察された化学量論的基質の濃度または量により限定される。本発明の方法によって使用できる反応物の濃度についての上限は、このような反応物の溶解度により決定される。
受容体が消費されるまでグリコシル化が進行するように、活性化ヌクレオチド、ホスフェート供与体、供与体糖および酵素の濃度が選択されることが好ましい。下記に検討された考察は、シアリルトランスフェラーゼに関して、他のグリコシルトランスフェラーゼサイクルに一般に適用できる。
各々の酵素は、触媒量で存在する。特定の酵素の触媒量は、その酵素の基質濃度ならびに温度、時間およびpH値のような反応条件によって変わる。予め選択された基質濃度および反応条件下で所与の酵素に関する触媒量を決定する手段は、当業者に周知である。
(X.多酵素オリゴ糖合成)
上記に考察されたように、幾つかの実施形態において、2種以上の酵素を、糖タンパク質または糖脂質に対する所望のオリゴ糖決定因子を形成するために使用できる。例えば、所望の活性を示すために、特定のオリゴ糖決定因子は、ガラクトース、シアリン酸およびフコースの付加を必要とする。したがって、本発明は、2種以上の酵素、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、トランス−シアリダーゼ、またはスルホトランスフェラーゼが、所望のオリゴ糖決定因子の高収率合成を得るために使用される方法を提供する。
特に好ましい実施形態において、使用される酵素の1つは、糖またはペプチドをスルホン化するスルホトランスフェラーゼである。セレクチンのためのリガンドを調製するためのスルホトランスフェラーゼの使用がさらにより好ましい(Kimuraら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA96(8):4530−5頁(1999))。
幾つかの場合において、糖タンパク質結合オリゴ糖または糖脂質結合オリゴ糖としては、糖タンパク質または糖脂質のインビボ生合成の際の特定の対象グリコシルトランスフェラーゼに対する受容体基質が挙げられる。このような糖タンパク質または糖脂質は、それぞれ糖タンパク質または糖脂質のグリコシル化パターンの前改変をしないで本発明の組換えグリコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質および方法を用いてグリコシル化できる。しかしながら、他の場合において、対象の糖タンパク質または糖脂質は、好適な受容体基質を欠く。このような場合、本発明の方法を、糖タンパク質または糖脂質のグリコシル化パターンを変化させるために使用でき、その結果、糖タンパク質結合オリゴ糖または糖脂質結合オリゴ糖は、次いで所望のオリゴ糖部分を形成するために対象の予め選択された糖単位のグリコシルトランスフェラーゼ触媒結合用の受容体基質を含むことになる。
好適な受容体基質を得るために、必要に応じて糖タンパク質結合オリゴ糖または糖脂質結合オリゴ糖を最初に、全体または部分的に「トリミング」して、グリコシルトランスフェラーゼに対する受容体基質、または1つ以上の適切な残基が付加できる部分に曝露させることができる。グリコシルトランスフェラーゼおよびエンドグリコシダーゼなどの酵素は、結合反応およびトリミング反応に有用である。例えば、「高マンノース」タイプのオリゴ糖を表す糖タンパク質は、1つ以上の予め選択された糖単位の結合時に、所望のオリゴ糖決定因子を形成する受容体基質を得るために、マンノシダーゼによるトリミングに供することができる。
この方法はまた、天然形体では非グリコシル化のタンパク質または脂質上の所望のオリゴ糖部分の合成に有用である。対応するグリコシルトランスフェラーゼに好適な受容体基質は、本発明の方法を用いてグリコシル化前にこのようなタンパク質または脂質に結合できる。例えば、グリコシル化のために好適な受容体を有するポリペプチド類を得る方法に関して米国特許第5,272,066号を参照されたい。
したがって、幾つかの実施形態において、本発明は、好適な受容体を創製する糖結合体を最初に修飾することを含む糖結合体に存在する糖基のインビトロシアリル化法を提供する。
(XI.改変された糖のペプチド類への結合)
改変された糖類を、結合を媒介する適切な酵素を用いてグリコシル化または非グリコシル化ペプチドまたはタンパク質に結合させる。受容体が消費されるまでグリコシル化が続くように、改変供与体糖(類)、酵素(類)および受容体ペプチド(類)またはタンパク質(類)の濃度が選択されることが好ましい。、下記に考察されているこれらの検討は、シアリルトランスフェラーゼに関して述べられているが、他のグリコシルトランスフェラーゼ反応に一般に適用可能である。
所望のオリゴ糖構造を合成するためにグリコシルトランスフェラーゼ用いる多数の方法は公知であり、一般に当該発明に適用可能である。代表的な方法は、例えば、国際公開第96/32491号、Itoら、Pure Appl.Chem.65:753頁(1993)、および米国特許第5,352,670号、米国特許第5,374,541号および米国特許第5,545,553号に記載されている。
幾つかの実施形態において、エンドグリコシダーゼは、グリコシルトランスフェラーゼと組み合わせる反応に用いられる。これらの酵素は、修飾糖のペプチドへの付加前または付加後の任意の時点でペプチドの糖構造を変えるために用いられる。
別の実施形態において、この方法は、1種以上のエキソグリコシダーゼまたはエンドグリコシダーゼを使用する。このグリコシダーゼは典型的に、グリコシル結合の断裂よりもむしろグリコシル結合を形成するために操作される変異体である。変異体グリカナーゼとしては、典型的に活性部位の酸性アミノ酸残基に対するアミノ酸残基の置換が挙げられる。例えば、エンドグリカナーゼが、エンド−Hである場合、置換活性部位残基は、典型的に130位のAsp、132位のGluまたはそれらの組み合わせである。アミノ酸類は、一般にセリン、アラニン、アスパラギン、またはグルタミンにより置換される。
変異体酵素は、通常、エンドグリカナーゼの加水分解ステップの逆反応に類似している合成ステップにより反応を触媒する。これらの実施形態において、グリコシル供与体分子(例えば、所望のオリゴ糖構造または単糖構造)は、遊離基を含有し、該反応は、タンパク質上のGlcNAc残基への供与体分子の付加により進行する。例えば、該遊離残基は、フルオリドなどのハロゲンであり得る。他の実施形態において、遊離基は、Asn、またはAsn−ペプチド部分である。そのうえさらなる実施形態において、グリコシル供与体分子のGlcNAc残基を改変する。例えば、GlcNAc残基は、1,2−オキサゾリン部を含むことができる。
好ましい実施形態において、本発明の結合体を生成するために利用された各々の酵素は、触媒量で存在する。特定の酵素の触媒量は、その酵素の基質濃度ならびに温度、時間およびpH値などの反応条件によって変わる。予め選択された基質濃度および反応条件下で所与の酵素に関する触媒量を決める手段は、当業者に周知である。
上記方法を実施する温度は、凍結温度のすぐ上から最も感受性のある酵素が変性する温度までの範囲であり得る。好ましい温度範囲は、約0℃〜約55℃までであり、約20℃〜約30℃までがより好ましい。別の典型的な実施形態において、当該方法の1つ以上の構成要素は、好熱性酵素を用いて高温で実施される。
反応混合物を、グリコシル化される受容体に対して十分な時間維持することにより、所望の結合体を形成する。結合体の幾つかは、2、3時間後に検出できることが多く、回収できる量は、通常、24時間以内で得られる。反応速度が、多くの可変因子(例えば、酵素濃度、供与体濃度、受容体濃度、温度、溶媒量)に依存し、選択された系について最適化されることを、当業者により理解される。
本発明はまた、改変ペプチドの産業スケールの製造を提供する。本明細書に使用されるように、産業スケールは、少なくとも1gの最終精製結合体を一般に製造する。
以下の考察において、本発明は、改変シアリン酸部分のグリコシル化ペプチドへの結合により例示される。代表的な改変シアリン酸は、PEGにより標識される。PEG改変シアリン酸およびグリコシル化ペプチドの使用に対する以下の考察の焦点を絞っていることは、説明を明解にするためで、本発明が、これら2つのパートナーの結合に限定されていることを意味する意図はない。当業者は、この考察が、一般にシアリン酸以外の改変グリコシル部分の付加に適用できることを認識している。さらに、この考察は、他の水溶性ポリマー類、治療用部分および生体分子など、PEG以外の試薬によるグリコシル単位の改変に等しく適用可能である。
酵素的アプローチを、ペプチドまたは糖ペプチド上のPEG化炭水化物またはPPG化炭水化物の選択的導入に使用できる。該方法では、PEG、PPG、またはマスクされた反応性官能基を含有する修飾された糖類が利用され、適切なグリコシルトランスフェラーゼまたはグリコシンターゼと組み合わされる。所望の炭水化物結合を作製するグリコシルトランスフェラーゼを選択することにより、また供与体基質として改変糖を利用することにより、PEGまたはPPGを、ペプチド主鎖上、既存の糖ペプチドの糖残基上、またはペプチドに付加された糖残基上に直接導入することができる。
シアリルトランスフェラーゼに関する受容体は、天然構造として、または組換え的、酵素的または化学的にそこに配置されたものとして、本発明の方法により修飾されるペプチド上に存在する。好適な受容体としては、例えば、Galβ1,4GlcNAc、Galβ1,4GalNAc、Galβ1,3GalNAc、ラクト−N−テトラオース、Galβ1,3GlcNAc、Galβ1,3Ara、Galβ1,6GlcNAc、Galβ1,4Glc(ラクトース)などのガラクトシル受容体、および当業者に公知の他の受容体(例えば、Paulsonら、J.Biol.Chem.253:5617−5624頁(1978)を参照)が挙げられる。
一実施形態において、シアリルトランスフェラーゼに関する受容体は、糖ペプチドのインビボ合成の際に改変される糖ペプチド上に存在する。このような糖ペプチドを、糖ペプチドのグリコシル化パターンの前改変をしないで特許請求される方法を用いてシアリル化できる。あるいは、本発明の方法は、好適な受容体を含まないペプチドをシアリル化するのに使用でき;当業者に公知の方法により受容体を含むペプチドを最初に修飾する。代表的な実施形態において、GalNAc残基は、GalNAcトランスフェラーゼの作用により付加される。
代表的な実施形態において、ガラクトシル受容体は、ガラクトース残基を、ペプチド、例えばGlcNAcに結合した適切な受容体に結合させることにより組み立てられる。この方法は、ガラクトシルトランスフェラーゼ(例えば、galβ1,3またはgalβ1,4)、および好適なガラクトシル供与体(例えば、UDP−ガラクトース)の好適な量を含有する反応混合物と共に改変するペプチドをインキュベートすることを含む。該反応は、実質的に完了するまで進行させるか、あるいは、予め選択された量のガラクトース残基が加えられたらこの反応を終了させる。選択された糖受容体を組み立てる他の方法は、当業者にとって明らかである。
さらに別の実施形態において、好適な受容体基質を得るために、糖ペプチド結合オリゴ糖を最初に、全体または部分的に「トリミング」して、シアリルトランスフェラーゼに対する受容体基質、または1つ以上の適切な残基が付加できる部分に曝露させる。グリコシルトランスフェラーゼ類およびエンドグリコシダーゼ類などの酵素(例えば、米国特許第5,716,812号を参照)は、結合反応およびトリミング反応に有用である。
改変された糖類のペプチド類またはタンパク質類への結合方法は、例えば、2001年10月10日に出願された米国特許出願第60/328,523号;2002年6月7日に出願された米国特許出願第60/387,292号;2002年6月25日に出願された米国特許出願第60/391,777号;2002年8月16日に出願された米国特許出願第60/404,249号;および国際公開PCT/US02/32263号に見られ、それらの各々は、全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている。
(実施例1:細菌に発現されるラット肝ST3GalIIIのリフォールディング)
(ラット肝GST−ST3GalIII融合タンパク質のリフォールディング)
ラット肝N−アセチルラクトサミンα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(ST3GalIII)を、pGEX−KT−Extベクターにクローン化し、大腸菌BL21細胞内のGST−ST3−Gal III封入体として発現させた。封入体を、GSH/GSSGレドックス系を用いてリフォールディングした。リフォールディングされた酵素、GST−ST3−Gal IIIを活性であり、シアリン酸をLNnT糖基質およびアシアリル化糖タンパク質、例えばトランスフェリンおよび因子IXに移送させた。
(ST3−GalIIIのpGEX−XT−KTベクターへのクローン化)
ラット肝ST3−GalIII遺伝子を、以下のプライマー:
を用いてPCR増幅後、pGEX−KT−ExtベクターのBamH1およびEcoR1部位にクローン化した。
(大腸菌BL21細胞中のGST−ST3GalIIIの発現)
ST3GalIII GST融合を含んでなる発現ベクターであるpGEX−ST3GalIIIを、化学的にコンピテントな大腸菌BL21細胞に形質転換した。単一のコロニーを取り出し、100μg/mlのカルベニシリンを有する5ml LB培地でインキュベートし、振とうしながら37℃で一晩増殖させた。翌日、1mlの一晩培養液を、1リットルの100μg/mlのカルベニシリンを有するLB培地に移した。細菌を、0.7のOD620になるまで増殖させ、次いで150μM IPTG(最終)を培地に加えた。細菌を、37℃で1時間から2時間以上増殖させてから、室温に移し、振とうしながら一晩増殖させた。細胞を遠心分離により採取し;細胞ペレットを、PBS緩衝液に再懸濁してフレンチプレスを用いて溶解した。4℃のSorvall、SS34ローター内で10,000RPMで30分間遠心分離により、溶解性フラクションと不溶性フラクションとを分離した。
(封入体の精製)
50mlのNovagenの洗浄用緩衝液(20mMトリス、pH7.5、10mM EDTA、1%TritonX−100)を不溶性フラクション、すなわち、封入体(IB)に加えた。不溶性フラクションをボルテックスしてペレットを再懸濁した。懸濁させたIBを、遠心分離し、上記の洗浄用緩衝液に再懸濁することにより少なくとも2回洗浄した。清浄な沈殿物(IB)を回収し、使用するまで−20℃で保存した。
(封入体のリフォールディング)
IBを秤量し(144mg)、Genotech IBS緩衝液(1.44ml)に溶解した。懸濁させたIBを、Eppendorfの遠心管内で4℃で1時間インキュベートした。不溶性物質を、Eppendorf遠心分離機の最大スピードでの遠心分離により除去した。可溶化されたIBを、4mlの最終容量に希釈した。GST−ST3GalIIIのリフォールディングを、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ND SB−201、またはGSH/GSSGレドックス系を含有するリフォールディング用緩衝液中で試験した。1mlの可溶化IBを、リフォールディング溶液にピペッティングすることにより素早く希釈し、30〜40秒間激しく攪拌してから、4℃で2時間緩やかに攪拌した。リフォールディングされたGST−ST3GalIII溶液の3mlアリコートを、Pierce Slide−A−lyzers(MWCO:3.5kDa)を用いて冷PBS緩衝液または50mMトリスHCL、pH7.0;100mM NaCL;および1%グリセロールを含有する緩衝液に対して透析した。透析後、GST−ST3GalIII溶液を、4℃の4,000rpmでJouan遠心分離機内のVivaspin 5K(VivaScience)の濃縮機を用いて3倍、6倍および12倍に濃縮した。
リフォールディングおよび透析後、リフォールディングされたGST−ST3GalIIIタンパク質を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。約63〜64kDaの分子量を有するGST−ST3GalIII融合は、全てのリフォールディング条件下で存在した(データは示していない)。
(リフォールディングされたGST−ST3GalIIIを用いるオリゴ糖のシアリル化)
オリゴ糖基質を用いる酵素アッセイは、CE−LIF(キャピラリ電気泳動−レーザ誘導蛍光)を用いて実施された。リフォールディングされたST3GalIII酵素は、LSTd−APTS(ラクトシアリン−テトラサッカリド−d−APTS)を形成するための、CMP−NAN(シチジン5−モノホスフェート−β−D−シアリン酸)からLNnT−APTS(ラクト−N−ネオテトラオース−9−アミノピレン1,4,6−トリスルホン酸)へのシアリン酸の移動能力についてアッセイした。反応は、20mM MOPS、pH6.5;0.8mM CMP−NAN;22.1mM LNnT;25μM LNnT−APTS;2.5mM MnCl2を含有する100μlの緩衝液液中96ウェルのマイクロタイタープレート内で実施した。反応は、20μlのリフォールディングされたST3Gal IIIの30℃で30分間の添加により開始された。反応液を、1〜25倍の水希釈によりクエンチした。希釈反応液を、製造元のガイドに従ってN−CHOでコーティングされたキャピラリを用いてCE−LIFにより分析した。活性は、LNnT−APTS対LSTd−APTSの正規化ピーク面積比として算出された。種々のリフォールディング条件を比較した結果を、表2に示している。GSH/GSSG系を用いる2つの追加実験は、表3に示している。
(リフォールディングされたGST−ST3 Gal IIIを用いる糖タンパク質のシアリル化)
20μLのアシアリル化トランスフェリン(2μg/μL)またはアシアリル化因子IX(2μg/μL)を、50mMトリス、pH8.0および150mM NaClを含有する50μLの緩衝液と、10μLの100mM MnCl
2;10μLの200mM CMP−NAN;および0.05%のアジ化ナトリウムに加えた。この反応混合物を、30μLのリフォールディングされたGST−ST3GalIIIと共に、250rpmで振とうしながら30℃で一晩以上インキュベートした。反応停止後、製造元のガイドラインに従って、シアリル化タンパク質をpH7〜3のIEF(等電点電気泳動ゲル、Invitrogen)上で分離し、Comassie Blueで染色した。トランスフェリンおよび因子IXの双方は、GST−ST3GalIIIによりシアリル化された(データは示していない)。
(MBPタグに融合されたラット肝ST3GalIIIのリフォールディング)
ラット肝ST3GalIIIを、pMAL−c2xベクターにクローン化し、大腸菌TB1細胞の封入体において、マルトース結合タンパク質(MBP)融合であるMBP−ST3GalIIIとして発現させた。このリフォールディングされたMBP−ST3GalIIIは活性であり、LNnT糖基質およびアシアリル化糖タンパク質、例えばアシアロ−トランスフェリンにシアリン酸を移送させた。
(ST3−GalIIIのpMAL−c2xベクターへのクローン化)
ラット肝ST3−GalIII核酸を、以下のプライマー:
を用いてPCR増幅後、pMAL−c2xベクターのBamH1およびXbaI部位にクローン化した。
アミノ酸28〜374をコードする核酸、例えば、ST3GalIIIのステム領域および触媒ドメインを、MBPアミノ酸タグに融合させた。
ST3GalIIIの3つの他の切断を構築し、MBPに融合させた。3つのST3Gal III(Δ73、Δ85、Δ86)挿入体は、それぞれ以下
を対で用いるPCRにより、単離された。各PCR産物を、BamH1およびXho1により消化し、BamHI−XhoI消化のpCWin2−MBP Kanrベクターにサブクローン化し、TB1細胞に変換し、正しい構築物をスクリーンした。
PCR反応は、以下の条件下で実施された。95℃で1分間の1サイクル。1μlのベントポリメラーゼを加えた。以下のサイクルを10回実施した:94℃で1分間;65℃で1分間;および72℃で1分間。最終の72℃で10分後、反応液を4℃に冷却した。
ST3GalIII切断体の全ては、リフォールディング後、活性を有した。下記の実験は、MBPΔ73ST3GalIII切断体を用いて実施された。
(大腸菌TB1細胞中のMBP−ST3GalIIIの発現)
pMAL−ST3GalIIIを、化学的にコンピテントな大腸菌TB1細胞に形質転換した。TB1/pMAL−ST3GalIII構築物を含有する3つの単離コロニーをLB寒天プレートから取り出した。このコロニーを、60μg/mlのカルベニシリンで補充した5ml LB培地中、液体培養物が0.7のOD620に達するまで振とうしながら37℃で増殖させた。2つの1mlアリコートを、各培養液から取り出し、500μM IPTG(最終)の有り無しの新鮮な培地にインキュベートするために用いた。この培養物を、37℃で2時間増殖させた。細菌細胞を遠心分離により採取した。全細胞溶解液は、SDSおよびDTTの存在下、細胞ペレットを加熱して調製した。IPTGは、MBP−ST3GalIIIの発現を誘導した(データは示していない)。
(MBP−ST3GalIIIの発現および封入体の精製)
TB1/pMAL−ST3GalIIIの一晩培養物の1mlアリコートを、50μg/mlのカルベニシリンを有する0.5リットルのLB培地中に接種し、0.7のOD620まで増殖させた。MBP−ST3GalIIIの発現は、0.5mMのIPTGの添加、次いで室温で一晩インキュベートすることにより誘導された。翌日細菌細胞を、遠心分離により採取した。細胞ペレットを、75mMトリスHCl、pH7.4;100mMのNaCl;および1%グリセロールを含有する緩衝液に再懸濁した。細菌細胞を、フレンチプレスを用いて溶解した。4℃のSorvall、SS34ローター内で10,000RPMで30分間の遠心分離により、溶解性フラクションと不溶性フラクションとを分離した。溶解性フラクションと不溶性フラクションとは、4℃のSorvall、SS34ローター内で10,000RPMで30分間の遠心分離により分離した。
(封入体の精製およびGSH/GSSGを用いるMBP−ST3GalIIIのリフォールディング)
MBP−ST3GalIII封入体、上記のGST−ST3GalIII融合タンパク質に用いられた同じ方法および緩衝液を用いてを精製し、懸濁した。MBP−ST3GalIIIは、上記のGSH/GSSGを用いてリフォールディングされた。リフォールディングされたMBP−ST3GalIII酵素は、Pierce SnakeSkin透析用バッグ(MWCO:7kDa)を用いて冷65mMトリスHCL、pH7.5、100mM NaCl、1%グリセロールに対して透析した。リフォールディングされ、透析されたMBP−ST3GalIIIを、4℃、4,000rpmでJouan遠心分離機内でのVivaspin 5K(VivaScience)濃縮機を用いて3倍〜14倍に濃縮した。リフォールディングされたMBP−ST3GalIIIタンパク質を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。81kDaのMBP−ST3GalIIIを検出した(データは示していない)。
(MBP−ST3 Gal III酵素活性のアッセイ)
リフォールディングされたMBP−ST3GalIII酵素を、上記のとおり、シアリン酸をCMP−NANからLNnT−APTSに移送させてLSTd−APTSを形成する能力について分析した。リフォールディングされたMBP−ST3 Gal III酵素は活性であり、シアリン酸をLNnT−APTSに移送させてLSTd−APTSを形成した(データは示していない)。
リフォールディングされたMBP−ST3GalIII酵素を、シアリン酸をCMP−NANから糖タンパク質に移送させる能力について分析した。シアリン酸のアシアロ−トランスフェリンへの移送を、上記のとおり、GST−ST3−Gal III酵素についてアッセイした。リフォールディングされたMBP−ST3 Gal III酵素は活性であり、シアリン酸をアシアロ−トランスフェリンに移送させた(データは示していない)。リフォールディングされたGST−ST3 Gal III酵素およびMBP−ST3 Gal III酵素は、シアリン酸の可溶性オリゴ糖受容体分子への移送に関して同様の活性を有したが、リフォールディングされたMBP−ST3 Gal III酵素は、シアリン酸の糖タンパク質受容体分子への移送についてはより活性であった。
(MBP−ST3GalIIIをリフォールディングする条件のさらなるアッセイ)
MBP−ST3GalIIIを、図1に示された条件を用いてリフォールディングした。緩衝液、レドックス対および界面活性剤(使用の場合)を、可溶化IBの添加前に混合してリフォールディング反応を開始した。IBを1/20に希釈した。MBP−ST3GalIIIのリフォールディングは、別のレドックス対、例えば、1/4、4/1、1/10,または5/5のモル比でシスタミン2 HCl/システインを用いても成功した(データは示していない)。
(ST3GalIII酵素活性のアッセイ)
リフォールディングされたMBP−ST3GalIII酵素を、上記のとおり、シアリン酸をCMP−NANからLNnT−APTSに移送させてLSTd−APTSを形成する能力についてアッセイした。結果を図1に示す。リフォールディングされたMBP−S
T3 Gal IIIの最も高い活性は、条件8、11、13および16を用いた場合に見られた。リフォールディングを、5mlにスケールアップすると、条件8および16を用いてリフォールディングされたMBP−ST3 Gal IIIタンパク質が最高の活性を有した(例えば、表を参照)。
(アミロースカラムによるMBP−ST3GalIIIの精製)
5mlのリフォールディング調製液からリフォールディングされたMBP−ST3GalIIIタンパク質を合わせ、100mMトリスHCL、pH7.4、100mM NaCl、1%グリセロールに対して透析した。リフォールディングされたMBP−ST3GalIIIタンパク質を、アミロースカラムに適用した。リフォールディングされたMBP−ST3GalIIIタンパク質の大部分を、アミロースカラムに結合させ、10mMマルトースで溶出した。溶出プロフィールを図2に示す。MBP−ST3GalIIIフラクションの酵素活性は、LnNTアッセイを用いて判定され、図3に示している。
(リフォールディングされたMBP−ST3GalIIIによるアシアロトランスフェリンの糖PEG化)
アシアロ−トランスフェリン(2mg/ml)を、230μlの反応液中、CMP−SA−PEG(10kDa、1.6mM)またはCMP−SA−PEG(20kDa、1.06mM)の存在下、リフォールディングされた100μlのMBP−ST3GalIIIの精製されたフラクションとインキュベートした。糖PEg化反応を、30℃で一晩または3日間実施した。反応液からアリコートを取り出し、4〜20%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で分析した。結果を図4に示す。精製され、リフォールディングされたMBP−ST3GalIIIは、10Kまたは20KのPEG化シアリン酸をアシアロ−トランスフェリンに移送させる。
(大スケールのMBP−ST3GalIIIのリフォールディング)
以下の方法は、大スケールのリフォールディングされたMBP−ST3GalIIIを作製するために使用された。
ウェットIB(470mg)を、15mlの培養管内のIB可溶化緩衝液(13ml)に溶解した。IB可溶化緩衝液は、以下のものを含んでいる:4MグアニジンHCl;100mMトリスHCl、pH9;および100mMのNaCl。IBを、IB可溶化緩衝液中、4℃で約1時間緩やかに振とうさせながらインキュベートした。不溶性物を、1.5mLのEppendorf管内で、4℃、最大スピードで30分間の遠心分離により除去した。可溶化IBを清浄な管に移し、280nmの吸光度を用いてタンパク質濃度を測定した。
以下のリフォールディング溶液を調製し、4℃に維持した:55mMのMES緩衝液、pH6.5;264mMのNaCl;11mMのKCl;0.055%のPEG550;550mMのアルギニン。緩衝液は、可溶化IBの添加直前に、0.3mMのラウリルマルトシド(LM);0.1mMの酸化グルタチオン;1mMの還元グルタチオンにより補足された。2mlの可溶化IBを、50ml滅菌培養管内の43mlのリフォールディング緩衝液中に加えた。この管をロッカー−シェーカ上に置き、4℃で24時間緩やかに振とうさせた。リフォールディングされたタンパク質を、透析管(MWCO:7kD)中、透析用緩衝液(100mMトリスHCl、pH7.5;100mM NaCl;5%グリセロール中)に対して2回(10〜20容量過剰の緩衝液)透析した。
大スケール透析のリフォールディングされたMBP−ST3GalIIIをST3GalIII活性について分析し、約53.6U/g IBを示した。
(実施例2:リフォールディングを増強させるためのヒトGnTIの部位特異的変異誘発)
切断ヒトN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(103のアミノ末端アミノ酸が欠失された)は、マルトース結合融合タンパク質(GnTI/MBP)として大腸菌に発現した。この融合タンパク質は、不溶性であり、封入体に発現された。可溶化およびリフォールディング後、GnTI/MBP融合タンパク質は、活性が低かった。ウサギGnTI(105のアミノ末端アミノ酸が欠失された)の切断型の結晶構造は、活性部位近辺に不対システイン残基を示す(例えば、Unligilら、EMBO J.19:5269−5280(2000)を参照)。ヒトGnTI中の対応する不対システインは、CYS121として同定され、サイズおよび化学的特性が類似する一連のアミノ酸により置換された。使用されたアミノ酸としては、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アラニン(Ala)およびアスパラギン酸(Asp)が挙げられる。さらに、二重変異体、ARG120ALA、CYS121HISもまた作製された。変異体GnTI/MBP融合タンパク質は、大腸菌で発現され、リフォールディングされ、糖タンパク質に対するGnTI活性についてアッセイされた。
変異誘発は、StratageneのQuick Change Site−Directed Mutagenesisキットを用いて行われた。さらなる制限部位は、幾つかのGnTI変異により導入された。例えば、ApaI部位
は、GnT1 ARG120ALA、CYS121HIS変異体、すなわち、
(太字が変化)に導入された。以下の変異誘発性オリゴ糖は、二重変異体:
(太字が変化を示す)を作製するために用いられた。AscI部位
は、GnT1 CYS121ALA変異体、すなわち、
(太字が変化)に導入された。以下の変異誘発性オリゴ糖ヌクレオチドは、GnT1 CYS121ALA変異体を作製するために用いられた:
大腸菌に発現された変異体タンパク質の活性を、バキュロウィルスに発現された野生型GnT1の活性と比較した。CYS121SER GNTI変異体は、TLCベースアッセイにおいて活性であった。対照的に、CYS121THR変異体は、検出可能な活性が無く、CYS121ASP変異体は、活性が低かった。CYS121ALA変異体は、非常に活性であり、二重変異体、C.elegans GnT1タンパク質(Gly14)のアミノ酸配列に基づくARG120ALA、CYS121HISもまた、GlcNAcの糖タンパク質への移送などの活性を示した。アミノ酸およびGnT1変異体の核酸配列のコード化は、図7〜11に示している。
第2のGnT1切断が成され、MBPに融合された:MBP−GnT1(D35)。図35は、MBP−GnT1融合タンパク質の図式を示しており、切断体、例えば、Δ103またはΔ35、およびCys121Ser変異(上部)を描いている。この図の下側は、完全長ヒトGnT1タンパク質を示している。Cys121の変異体もまた、MBP−GnT1(D35)タンパク質において作製された。
双方の融合タンパク質は、大腸菌に発現され、双方ともRNAse B糖タンパク質のリモデリング活性を有した。図36の右のパネルには、リフォールディングされたMBP−GnT1融合タンパク質:MBP−GnT1(D35)C121A、MBP−GnT1(D103)R120A+C121H、およびMBP−GnT1(D103)C121Aを示すSDS−PAGEを提供している。左のパネルは、異なる時点でリフォールディングされたMBP−GnT1(D35)C121Aの2つの異なるバッチ(A1とA2)のRNAseB糖タンパク質のリモデリング活性を示す。MBP−GnT1(D103)C121Aはまた、RNAseB糖タンパク質をリモデリングした。データは示していない。
(実施例3:GalT1にMBPの融合)
切断されたウシGalT1とMBPとの間の以下の融合が構築された:MBP−GalT1(D129)wt、(D70)wtまたは(D129C342T)(完全長ウシ配列に関して、例えば、D’Agostaroら、Eur.J.Biochem.183:211−217(1989)および登録番号CAA32695を参照)。構築物の各々は、リフォールディング後に活性があった。完全長ウシGalT1タンパク質のアミノ酸配列は、図30に提供される。この変異体は、対照タンパク質GalT1(40)(S96A+C342T)と共に図31に図式的に描く。例えば、Ramakrishmanら、J.Biol.Chem.276:37666−37671頁(2001)を参照されたい。
MBP−GalT1(D70)は、大腸菌株JM109に発現された。IPTGと一晩誘導後、細胞がフレンチプレスを用いて溶解した後、封入体は、不溶性ペレットから単離された。IBを2回洗浄してから、4MのGndHCl、100mMのNaCl、0.1MのトリスHCl pH9.0に溶解された。リフォールディングは、pH6.5でGSSH/GSH(10/1)と共にリフォールディング用緩衝液への希釈(1/20、0.1〜0.2mg/mlタンパク質)に次いで、振とうすることなく4℃で一晩インキュベートすることにより行われた。リフォールディングされたタンパク質は、50mMのトリスHCl pH8.0に対して2回(MWCO:7kD)透析された。透析されたMBP−GalT1(D70)タンパク質は、アミロースカラムに乗せて;洗浄し;10mMのマルトースにより溶出した。
GalT1活性は、受容体としてオリゴ糖を用いてアッセイされた。酵素的アッセイは、HPLC/PAD(パルス電流測定検出を有する高性能液体クロマトグラフィ)を用いて実施された。GalTI酵素によるUDP−Gal(ウリジン5’−ジホスホガラクトース)を用いて、LNT2(ラクト−N−トリオース−2)のLNnT(ラクト−N−ネオテトラオース)への変換は、以下のとおり実施した。この反応は、6mMのUDP−Gal、5mMのLNT−2、5mMのMnCl2を含有する100μlの50mMのHepes、pH7緩衝液と、100μlのリフォールディングされた酵素との中で37℃で60分間実施された。この反応を水によりクエンチし(1倍〜10倍希釈)、10,000MWCOスピンフィルタを通して遠心分離した。次にろ液を1倍〜10倍希釈した。この希釈反応液を、Dionex DX−500システムおよびCarboPac PA1カラムを用いて水酸化ナトリウム緩衝液によるHPLCによって分析した。サンプル生成物のピーク面積を、LNnTの検量線と比較し、この活性は、反応液中の酵素の1μlにつき1分当り生成されたLNnT量を基準にして算出された。
精製されたMBP−GalT1(D70)タンパク質は、受容体分子として溶解性オリゴ糖および糖タンパク質(例えば、RNAseB)双方を用いて活性を有した。結果を図32および図33に示す。RNAseBリモデルリングアッセイにおいて、MBP−GalT1(D70)は、大腸菌にも発現され、リフォールディングされたウシGalT1タンパク質の非融合切断体である、対照タンパク質GalT1(40)(S96A+C342T)と比較した。MBP−GalT1(D70)タンパク質は、RNAseB糖タンパク質に対してGalT1(40)(S96A+C342T)よりも活性があった。MBP−GalT1(D129)切断体もまた、RNAseB糖タンパク質に対してGalT1(40)(S96A+C342T)タンパク質よりも活性があった(データは示していない)。
RNAseBのグリコシル化に関して、リフォールディングされ、精製されたMBP−GalT1(D70)の反応速度論を測定し、哺乳動物の細胞系で発現されたウシGalT1タンパク質の溶解性形態であるNSO GalT1と比較した。図34に示されるように、リフォールディングされ、精製されたMBP−GalT1(D70)は、NSO GalT1タンパク質と比較して反応速度論が改善された。
(実施例4:複数グリコシルトランスフェラーゼをリフォールディングするワンポット法)
真核生物のST3GalIII酵素、GalT1酵素、およびGnT1酵素は、糖タンパク質上にN−グリカン鎖を構築する。さらなる改変について、例えば、糖PEG化は、供与体基質としてCMP−NAN−PEGを用いて実施できる。真核生物のST3GalIII酵素、GalT1酵素、およびGnT1酵素は、典型的に真核生物発現系、例えば、真菌細胞または哺乳動物細胞で発現する。
マルトース結合タンパク質(MBP)ドメインに融合された真核生物のST3GalIII酵素、GalT1酵素、およびGnT1酵素の各々は、単独容器中、可溶化され、合わされ、一緒にリフォールディングされる。融合MBP酵素およびリフォールディングされたMBP酵素は、活性であり、N−グリカン類を糖タンパク質または糖PEG化糖タンパク質に付加させるために使用された。このリフォールディング用緩衝液は、レドックス対、例えば、酸化/還元グルタチオン(GSH/GSSG)を含んだ。リフォールディングは、アルギニンおよびポリエチレングリコール3350(PEG)の添加により増強された。IBを、個々に可溶化でき、種々の割合でリフォールディング用緩衝液に加えるか、またはIBから一緒に可溶化でき、リフォールディング用緩衝液に直接加えることができる。これらの酵素のワンステップ精製または固定化もまた、MBP融合タグを用いて行うことができる。
(リフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼ混合物(SuperGlycoMix)の調製)
(グリコシルトランスフェラーゼIBの調製)
真核生物のST3GalIII酵素、GalT1酵素、およびGnT1酵素を産生するために使用される細菌株を、表5に示す。この表はまた、MBP融合タンパク質の推定分子量を示す(アミノ酸組成物に基づくMW、Vector NTIソフトウェア)。真核生物の酵素をコードする全ての核酸は、IPTG誘導性発現ベクターから発現された。
大腸菌培養液のIPTG誘導後、GnT1酵素、GalT1酵素およびST3GalIII酵素は、フレンチプレスを用いる細胞溶解または界面活性剤の溶解(NovagenのBugbuster試薬)により単離された。前述のとおり、遠心分離後、ペレットを回収し、処理してIBを得た。IBは、NovagenのIB洗浄用緩衝液を用いて少なくとも2回洗浄した。洗浄されたIBは、リフォールディング実験での使用準備段階まで−20℃で保存した。
ST3GalIII、GalT1、およびGnT1を含有するIBは別々に、6MのグアニジンHCl、50mMのトリスHCl pH8.0、5mMのEDTA、10mMのDTTを含有する緩衝液に4℃で1時間溶解した。透明な上澄液は、遠心分離(Eppendorfのミクロ遠心分離における最大スピード)後得られた。可溶化IBのタンパク質含量は、280nmでの吸光度を測定することにより定量された。表6のタンパク質含量は、各MBP−グリコシルトランスフェラーゼの吸光係数に基づいて定量された。この吸光係数は、Vector NTiソフトウェアを用いて算出された(表5を参照)。
(グリコシルトランスフェラーゼ類のワンポットリフォールディング)
可溶化IBを、表7に示されたように等量で混合した。
全可溶化IB混合物のタンパク質濃度は、4.5mg/mlであった。この混合物を、リフォールディング用緩衝液中、約1/20に希釈して、全タンパク質混合物の最終濃度を0.22mg/mLにさせた。リフォールディング用緩衝液は、55mMのMES、pH6.5;550mMのアルギニン;0.055%のPEG3350;264mMのNaCl;11mMのKCl;1mMのGSH;および0.1mMのGSSGを含有した。リフォールディングはまた、トリスHCl、pH8.2の緩衝液中で実施でき、システイン/シスタミンレドックス対は、GSH/GSSGに代えることができる。IB混合物を、リフォールディング用緩衝液中に希釈し、4℃で一晩(16〜18時間)インキュベートした。リフォールディング反応におけるグリコトランスフェラーゼ類の推定濃度は:
MBP−ST3GalIII 0.081mg/mL
MBP−GalT1(Δ129)C342T 0.081mg/mL
MBP−GnT1(Δ103)C121A 0.062mg/mL
である。
一晩リフォールディング後、リフォールディングされたグリコトランスフェラーゼ混合物は、カオトロピック剤(すなわち、グアニジンHCl)を除くために透析した。透析は、透析用バッグ(SnakeSkin、MWCO:7kD、Pierce)中、50mMのトリスHCl、pH8.0に対して4℃で2回(1回の透析につき20倍)実施した。この透析済のリフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼ混合物(Superglycomix、SGM)を、6mLのVivaSpin(MWCO:10kD)遠心濃縮器を用いて6倍に濃縮した。濃縮後、3種の糖タンパク質の全ては、SDS−PAGE分析により測定すると、混合物中に存在した(データは示さず)。SGMを濃縮後、GnT1、GalT1およびST3GalIIIの酵素活性が判定された。
(SuperGlycoMixの酵素活性)
Superglycomix(SGM)、ワンポットでリフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼ混合物は、3種のグリコシルトランスフェラーゼ:ST3GalIII、GalT1、およびGnT1を含有する。これらの酵素は、個々に酵素活性についてアッセイし、下記の方法を用いて分析した。酵素活性は、表8に掲げている。
(ST3GalIII酵素活性のアッセイ)
ST3GalIIIのアッセイは、HPLC/UV(紫外検出器付き高性能液体クロマトグラフィ)を用いて実施された。ST3GalIII酵素によるCMP−NAN(シチジン5’−モノホスフェート−β−D−シアリン酸)を用いたLNnT(ラクト−N−ネオテトラオース)のLSTd(ラクトシアリン−テトラサッカリド−d)への変換を、以下のとおり実施した。この反応は、2mMのCMP−NAN、30mMのLNnT、10mMのMnCl2を含有する100μlの20mMのMOPS、pH6.5緩衝液および20μlのリフォールディングされた酵素中、96ウェルマイクロタイタープレート内で37℃で20分間実施された。該反応は、98℃に1分間加熱することによりクエンチした。このマイクロタイタープレートは、沈殿物をいずれもペレットにするため3600rpmで10分間遠心分離した。75μlの上澄液を、75μlの水で1:1に希釈した。希釈反応液を、YMC−パックポリアミンIIカラムを用いてリン酸ナトリウム緩衝液/アセトニトリル勾配および200nmでの検出によるLC/UVによって分析した。サンプル生成物のピーク面積を、LSTd検量線と比較し、この活性を、反応液中の酵素1μlにつき1分当りに産生されたLSTd量を基準にして算出した。
(GalT1酵素活性アッセイ)
酵素アッセイは、HPLC/PAD(パルス電流測定検出付高性能液体クロマトグラフィ)を用いて実施された。GalTI酵素によるUDP−Gal(ウリジン5’−ジホスホガラクトース)を用いるLNT2(ラクト−N−トリオース−2)のLNnT(ラクト−N−ネオテトラオース)への変換を、以下のとおり実施した。該反応は、6mMのUDP−Gal、5mMのLNT−2、5mMのMnCl2を含有する100μlの50mMのHepes、pH7緩衝液および100μlのリフォールディングされた酵素中、37℃で60分間実施された。該反応は、水(1倍〜10倍希釈)でクエンチし、10,000MWCOスピンフィルタにより遠心分離した。次いでろ液を、1倍〜10倍希釈した。この希釈反応液は、Dionex DX−500システムおよびCarboPac PA1カラムを用いて水酸化ナトリウム緩衝液によるHPLCによって分析した。サンプル生成物のピーク面積を、LNnTの検量線と比較し、この活性は、反応液中の酵素の1μlにつき1分当り生成されたLNnT量を基準にして算出された。
(GnTI酵素活性アッセイ)
GnTIの活性は、UDP−3H−GlcNAc(ウリジンジホスフェートN−アセチル−D−グルコサミン[6−3H(N)])から、オクチル尾部をもつトリマンノシルコアである、n−オクチル3,6−ジ−O−(α−マンノピラノシル)β−D−マンノピラノシド(OM3)へのトリチウム化糖の移送を測定するこよにより判定される。該反応は、3mMのUDP−GlcNAc、0.1mMのUDP−3H−GlcNAc、0.5mMのOM3、20mMのMnCl2を含有する20μlの100mMのMES、pH6.0緩衝液および10μlのリフォールディングされた酵素中、37℃で60分間実施した。該反応は水(1倍から6倍希釈)でクエンチし、製造元の推奨に従って先に調節された96ウェルフォーマット中のポリマー逆相樹脂に適用した。この樹脂を200μlの水で2回洗浄し、生成物を、50μlの100%MeOHにより捕捉プレートに溶出した。シンチレーション液(200μL)を各ウェルに加え、プレートを混合し、PerkinElmer TopCount NXTマイクロプレートシンチレーションカウンターを用いてカウントした。この活性は、反応液中の酵素の1μlにつき1分当り生成物に取り込まれた3H−GlcNAc量を基準にして算出された。
上記表に報告された活性は、これらの酵素が別々にリフォールディングされた場合、接近しているかまたはその範囲である。GnT1活性およびGalT1活性は、哺乳動物発現系またはバキュロウィルス発現系を用いて得られたものに近い。ST3GalIII活性は、真菌発現系後に得られたST3GalIII調製物よりも幾らか低かった。本明細書に用いられたST3GalIIIアッセイは、該手法から変更され、値は、CE−LIF(キャピラリ電気泳動−レーザ誘導蛍光)に基づく方法で得られたものよりも約1/4〜1/5倍と報告された。
(Superglycomixを用いるRNAseB−Man5のリモデリング)
小型糖タンパク質である、1つのN結合Man5糖をもつRNAseBを、UDP−糖(UDP−GlcNAcおよびUDP−Gal)の存在下、SGMによりリモデリングした。このリモデリング反応を、UDP−GlcNAcまたはUDP−GlcNAcおよびUDP−Galの双方を用いて実施し、GnT1およびGalT1双方の活性を試験した。8μlのSGMを、25μlのアッセイ中、5mMのUDP−GlcNAc、および/または5mMのUDP−Gal、9μgのRNAseBMan5、5mMのMeCl2を含有する10mMのMES緩衝液pH6.5に加えて、33℃で一晩から48時間インキュベートした。この反応の終末に、10μlのアリコートを、H2Oに対して透析し、1.5μlのサンプルを、MALDI−TOFプレート上にスポットした。TFAおよびシンナピン酸で処理後、サンプルをMALDI−TOF上で分析した。
RNAseBMan5のリモデリングは、RNAseBのMan5上にGlcNAcおよびGalを移送させることによって行われた。33℃で48時間のインキュベート後、リモデリングされたRNAseB−Man5のMALDI−TOFスペクトルが示すように、大部分のGlcNAcおよびGalのRNAseB上への移送を達成した。結果は表9に要約されている。
(SGMを用いる糖PEG化EPOのリモデリング)
糖PEG化(20K)は、以下の成分:10mMのMES、pH6.5、5mMのMgCL
2、5mMのUDP−GlcNAc、5mMのUDP−GalNAc、0.5mMのCMP−SA−PEG(20kDa)、24μgのEPO、8μLの濃縮SGM、からなるワンポット反応において実施された。対照反応において、SGMは、哺乳動物細胞または昆虫細胞またはアスペルギルス属においてリフォールディングされたか、または発現された個々の酵素によって取替えられた。一晩インキュベート後、該反応液をSDS−ポリアクリルアミドゲル上で分析された。結果は図5に示す。SGMは、20KPEGをEPOに加えた。
(複数グリコシルトランスフェラーゼに対するワンポットリフォールディング条件の評価)
複数グリコシルトランスフェラーゼをリフォールディングする条件は、pHおよび一度に2種または3種の酵素をリフォールディングすることを含めて評価された。
(グリコシルトランスフェラーゼ封入体の調製)
グリコシルトランスフェラーゼ発現プラスミドにより形質転換された大腸菌株は、一例を除いて先に記載された。MBP−ST3GalIIIは、pCWori−ST3GalIIIプラスミドからJM109細胞において発現された。前述のとおり、この封入体を単離し、可溶化させた。タンパク質含量は、上述のとおり評価し、表10に示す。
(グリコシルトランスフェラーゼIB混合物のワンポットリフォールディング)
タンパク質含量の測定後、可溶化IBを、リフォールディング用緩衝液に希釈される前に示された量で混合した(表11)。GTのリフォールディング実験は、緩衝液AまたはB(下記)、ならびに0.1mMのGSSGおよび1mMのGSHを用いて静置して4℃、44mlの容量中で実施された。緩衝液A:1mMのGSH、0.1mMのGSSGを補充した、55mMのMES、pH6.5、550mMのアルギニン、0.055%のPEG3350、264mMのNaCl、11mMのKCl。
緩衝液B:1mMのGSH、0.1mMのGSSGを補充した、55mMのトリスHCl、pH8、550mMのアルギニン、0.055%のPEG3350、264mMのNaCl、11mMのKCl。
二重リフォールディング(2×、2種のグリコシルトランスフェラーゼ)に関して、2ml中10mgの全タンパク質を、41mLのリフォールディング用緩衝液(上記)、0.45mLの100mMのGSH、0.45mLの10mMのGSSGに加え、希釈後、全タンパク質が0.44mg/mlになった。三重リフォールディング(3×、3種のグリコシルトランスフェラーゼ)に関して、2ml中18.7mgの全タンパク質を、41mLのリフォールディング用緩衝液(上記)、0.45mLの100mMのGSH、0.45mLの10mMのGSSGに加え、希釈後、全タンパク質が0.83mg/mlになった。タンパク質濃度は、以前の三重リフォールディング実験(SGM中0.22mg/mL)よりも高かった。リフォールディング反応におけるグリシルコトランスフェラーゼ類の推定濃度は:
MBP−ST3GalIII 0.39mg/mL
MBP−GalT1(Δ129)C342T 0.23mg/mL
MBP−GnT1(Δ103)C121S 0.23mg/mL
である。
一晩リフォールディング後、リフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼ混合物を透析した。透析は、透析用バッグ(SnakeSkin、MWCO:7kD、Pierce)中、50mMのトリスHCl、pH8.0に対して4℃で2回実施した。透析後、グリコシルトランスフェラーゼ混合物を、6mLのVIVA−Spin(MWCO:10K)遠心濃縮器を用いて9〜12倍に濃縮した。
タンパク質は、リフォールディング、透析、および濃縮後に存在したことをSDS−PAGE分析により立証した。
(リフォールディングされたグリコシルトランスフェラーゼ混合物の酵素アッセイ)
酵素アッセイを上記のとおり実施した。結果を表12に示す。
最高の活性は、MBP融合GnT1およびGalT1を等量で混合して緩衝液B中でリフォールディングされた際に見られた。MBP融合ST3GalIIIの非等量の添加は、タンパク質の全量が高いためリフォールディング効率に影響を及ぼした。それにもかかわらず、2種のGTまたは3種のGTのいずれかを用いた2つの異なるリフォールディング用緩衝液は、活性な溶解性タンパク質を得るために使用できる。
(実施例5:真核生物のGalNAcT2のリフォールディング)
切断されたヒトGalNAcT2酵素を、大腸菌で発現し、上記の方法を用いる可溶化およびリフォールディングのための最適条件を決めるために使用した。完全長ヒトGalNAcT2核酸およびアミノ酸配列は、図13Aおよび13Bに提供されている。変異体タンパク質GalNAcT2(D51)の配列は、図14Aおよび14Bに示している。この変異体を、MBP融合タンパク質MBP−GalNAcT2(D51)として大腸菌で発現した。他のGalNAcT2変異体を作製し、大腸菌で発現し、リフォールディングすることが可能であった:MBP−GalNAcT2(D40)、MBP−GalNAcT2(D73)、およびMBP−GalNAcT2(D94)。データは示していない。さらなる欠失変異体の構築の詳細は、2004年6月3日に出願された米国特許出願第60/576,530号、および2004年8月3日に出願された米国特許出願第60/598,584号に見られ、それら双方は、全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている。
MBP−GalNAcT2(D51)を発現する細菌培養物を増殖し、上記のとおり収穫した。封入体を、上記のとおり細菌から精製した。封入体の可溶化を、pH6.5またはpH8.0で実施した。可溶化後、MBP−GalNAcT2(D51)タンパク質を、緩衝液AおよびBを用いてpH6.5またはpH8.0のいずれかでリフォールディングした。すなわち、緩衝液A:1mMのGSH、0.1mMのGSSGで補充した、55mMのMES、pH6.5、550mMのアルギニン、0.055%のPEG3350、264mMのNaCl、11mMのKCl;および緩衝液B:1mMのGSH、0.1mMのGSSGを補充した、55mMのトリスHCl、pH8、550mMのアルギニン、0.055%のPEG3350、264mMのNaCl、11mMのKCl、リフォールディング後、MBP−GalNAcT2(D51)タンパク質を透析してから濃縮した。図15は、pH6.5またはpH8.0で可溶化およびpH6.5またはpH8.0でリフォールディング後のリフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)のタンパク質濃縮の実施を提供している。
放射標識[3H]−UDP−GalNAcアッセイは、放射標識GalNAcのペプチド受容体への付加をモニタリングすることにより、大腸菌発現のリフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)の活性を測定するために実施された。この受容体は、配列MVTPTPTPTC(配列番号80)を有するMuC−2様ペプチドであった。該ペプチドは、1Mのトリス−HCl、pH=8.0に溶解した。例えば、2004年6月3日に出願された米国特許出願第60/576,530号;および2004年8月3日に出願された、米国仮特許出願の代理人事件整理番号040853−01−5149−P1に見られ、それら双方は、全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている。図16は、pH6.5またはpH8.0で可溶化およびpH6.5またはpH8.0でリフォールディング後のリフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)の酵素活性の実施を提供している。図17は、pH6.5またはpH8.0で可溶化およびpH6.5またはpH8.0でリフォールディング後のリフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)の比活性の実施を提供している。最高活性レベルは、pH8.0で可溶化およびpH8.0でリフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)に見られた。最高比活性レベルもまた、pH8.0で可溶化およびpH8.0でリフォールディングに見られた。
可溶化およびリフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)を、GalNAcをG−CSFタンパク質に付加させる能力についてアッセイした。このアッセイは、酵素のアリコートおよび反応緩衝液(27mMのMES、pH=7、200mMのNaCl、20mMのMgCl2、20mMのMnCl2、および0.1%のTween80)、G−CSFタンパク質(H2O中2mg/ml)、ならびに100mMのUGP−GalNAcから構成された。各リフォールディングされたサンプルに関して、4.4μLのサンプルを、15μLの反応溶液に加えた。陽性対照に関して、1μLの標準的GalNAcT2バキュロウィルスを、1つの管に3.4μLのH2Oと一緒に加えた。反応液を32℃でロータリーシェーカ上で数日間インキュベートし、その期間、一晩の時点および5日目の時点でMALDIによりアッセイした。例えば、2004年6月3日に出願された米国特許出願第60/576,530号;および2004年8月3日に出願された、米国仮特許出願の代理人事件整理番号040853−01−5149−P1に見られ、それら双方は、全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている。
図18Aおよび18Bは、pH6.5またはpH8.0で可溶化およびpH6.5またはpH8.0でリフォールディング後のリフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)を用いて組換え果粒球コロニー刺激因子(GCSF)のリモデリング結果を提供している。陽性対照、すなわち、バキュロウィルスで発現された精製MBP−GalNAcT2(D51)、および陰性対照、すなわち、基質を欠いた反応混合物を含んだ。GCSFリモデリング活性の最高レベルは、pH8.0で可溶化およびpH8.0でリフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)を用いた際に見られた。
(実施例6:真核生物GalNAcT2のリフォールディングおよび精製)
組換えMBP−GalNAcT2(D51)を発現する4リットルの細菌を増殖させ、収穫した。封入体を単離し、洗浄し、2グラムの乾燥重量の封入体を、200mLの可溶化緩衝液(7Mの尿素/50mMのトリス/10mMのDTT/5mMのEDTA、pH8.0)中、4℃で可溶化した。可溶化後、次にこの混合物を、4Lのリフォールディング用緩衝液(50mMのトリス/550mMのL−アルギニン/250mMのNaCl/10mMのKCl/0.5%のPEG3350/4mMのL−システイン/二塩酸シスタミン、pH8.0)に希釈した。リフォールディングは、攪拌しながら4〜10℃で約20時間実施した。次にこの混合物を、10SP CUNOフィルターを用いてろ過し、4ft2膜上で5倍に濃縮し、pH8.0で10mMのトリス/5mMのNaClにより4回ダイアフィルトレーションした。最終的なリフォールディングされたMBP−GalNAcT2(D51)溶液の導電率は、1.4mS/cmであった。リフォールディングされたタンパク質を、4℃で数日間保存した。
リフォールディングされたタンパク質を、QセファロースXLカラム(Amersham Biosciences、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に適用した。溶出プロフィールは、図19に示され、具体的なカラムフラクションの酵素活性は、図20に示される。活性なフラクション合わせ、ヒドロキシアパタイトタイプI(80μm)(Biorad、カリフォルニア州ヘルクレス)カラムに適用した。溶出プロフィールは、図21に示され、HAタイプIに溶出されたフラクションの活性は、図22に示される。QXLとHAタイプIクロマトグラフィの組み合わせにより、活性な高精製MBP−GalNAcT2(D51)を生じた。
(実施例7:真核生物MBP−SBD ST3Gal3の精製)
Δ73 ST3GalIII切断を、マルトース結合タンパク質および澱粉結合ドメインにインフレームで融合させて二重タグ化タンパク質:MBP−SBD−ST3Gal3(Δ73)を形成した。MBPは、アミノ末端にあり、次いでSBD、次に切断ST3GalIIIタンパク質があった。MBP−SBD−ST3Gal3(Δ73)のリフォールディングおよび精製を、単独のタグタンパク質:MBP−ST3GalIII(Δ73)と比較した。両タンパク質は、不溶性封入体として大腸菌で発現され、本明細書に記載されたとおり可溶化、リフォールディングされた。次にこのタンパク質を透析し、MBPおよびSBD双方のタグに結合するシクロデキストリンカラムを用いてアフィニティー精製に供された。結果を表23に示す。MBP−SBD−ST3Gal3(Δ73)タンパク質は、透析後、より高い比活性があり、カラムからシクロデキストリンによる溶出後、さらに比活性を保持した。
(実施例8:MBP−ST3Gal1およびMBPSBD−ST3Gal1タンパク質のリフォールディング)
真核生物のST3Gal1を、MPBまたはMBPおよびSBDに融合させた。ブタST3Gal1遺伝子のDNA配列は、本明細書に記載されたpcWINMBP−pST3Gal1構築物およびpcWINMBP/SBD−pST3Gal1構築物のデザイン用テンプレートして用いられた。完全長ブタST3Gal1配列は、図37に提供される。大腸菌における発現に関して、pST3Gal1の最適化コドンおよび切断変種、すなわち、pST3Gal1Δ45を用いた。コード化アミノ酸配列は、図24に提供されている。次にST3Gal1遺伝子コード化配列を消化し、BamHIおよびXhoIクローニング部位を用いてpcWIN2−MBPおよびpcWINMBP/SBDベクターに移した。これらの構築物は、制限および配列分析により正しいことが確かめられ、次いで50μg/mlのカナマイシン選択を用いて大腸菌株JM109を変換するために用いられた。各々からの個々のコロニーは、Maritone−10μg/mlカナマイシンの2ml培養液を接種するために用いられ、これを37℃で16時間インキュベートした。各培養液を、別々に50%グリセロールと1:1で混合し、−80℃で凍結し、ストックバイアルと称した。各ストックバイアルの少量を、Maritone−Kanプレートをストリークさせるために用いた。37℃で16時間インキュベート後、各々からの単一コロニーを、Maritone−10μg/mlカナマイシンの25mlの培養液を接種するために用いられ、これを37℃で16時間インキュベートした。次に25mlの培養液を、Maritone−10μg/mlカナマイシンの1Lの培養液を接種するために用いられ、これを37℃でインキュベートし、OD600についてモニターした。OD600が0.8に達したら、IPTGを1mMまで加え、細胞をさらに16時間インキュベートした。次いで細胞を、7000×Gで15分間の遠心分離により収穫した。
次に封入体を単離し、ST3Gal1融合タンパク質を可溶化し、リフォールディングした。細菌細胞ペレットを、20mMのトリスpH8、5mMのEDTAの10mLにつき1gのウェット細胞ペレットの比率で再懸濁し、マイクロ流動化装置を2回通過させて機械的破壊により溶解した。不溶性物質、すなわち、封入体すなわちIBを、Sorvall RC3内で4℃、7000xgで30分間の遠心分離によりペレット化し、上澄液を廃棄した。典型的な洗浄サイクルは、ペレットを洗浄用緩衝液に完全再懸濁することおよび15分間の遠心分離の反復から構成された。このペレットを、高塩緩衝液(洗浄I:10mMのトリスpH7.4、1MのNaCl、5mMのEDTA)の過剰容量(元の細胞ペレット1g当り少なくとも10mL(20mLまで))で1回、界面活性剤緩衝液(洗浄II:25mMのトリスpH8、100mMのNaCl、1%TritonX100,1%Na−デオキシコレート、5mMのEDTA)で1回、(IBの洗浄に加えて微量の界面活性剤を除くために)洗浄用緩衝液(洗浄III:10mMのトリスpH8、5mMのEDTA)で3回洗浄した。
洗浄されたIBを、可溶化緩衝液(8Mの尿素、50mMのビストリスpH6.5、5mMのEDTA、10mMのDTT)に再懸濁して、2mg/mlのタンパク質濃度に調整した。リフォールディングは、リフォールディング用緩衝液(55mMのトリスpH8.2、10.56mMのNaCl、0.44mMのKCl、2.2mMのMgCl2、2.2mMのCaCl2、0.055%のPeg3350、550mMのL−アルギニン、1mMのGSH、100mMのGSSG)に素早く20倍希釈として実施し、4℃で16時間攪拌した。次にこの緩衝液を、G50セファデックスを用いて脱塩して、50mMのビストリスpH6.5、75mMのNaCl、0.05%のTween80に交換した。
リフォールディングされた酵素が活性であるかどうかを判定するために、シアリルトランスフェラーゼアッセイを実施した。シアリン酸の供与体(アシアロ−ウシ顎下ムチン)への移送を、放射標識CMP−NANを用いてモニターした。バキュロウィルス系で発現されたニワトリST6GalNac1を、陽性対照として用いた。
短時間で40μLの反応混合物を、10μLの酵素サンプルに加え、37℃で1時間インキュベートした。100μLのホスホタングステン酸/15%TCAを反応液に攪拌しながら加えることによって糖タンパク質が沈殿した。遠心分離後、上澄液を吸引して廃棄した。500μLの5%TCAを加えて、ペレットから取り込まれていないCMP−14C−シアリン酸を洗浄した。反応液を再度遠心分離し、上澄液を吸引して廃棄した。ペレットは、100μLの10NのNaOHを用いて再懸濁した。1Mのトリス緩衝液、pH7.5の1mLを、再懸濁されたペレットに加えてから、この混合物をシンチレーションバイアルに移した。5mLのシンチレーション液(Ecolume、ICN Biomedicals)を加え、十分に混合した。反応液に添加された全カウントは、40μLの反応混合物をシンチレーションバイアルに加え、100μLの10NのNaOH、1mLの水、および5mLのシンチレーション液を加えて、十分に攪拌して測定された。バイアルを1分間カウントした。反応条件を表13に提供している。
結果を図25に示す。リフォールディングされた融合タンパク質、MBP−pST3Gal1およびMBP−SBD−pST3Gal1の双方は、検出可能なシアリルトランスフェラーゼ活性を有した。
(実施例9:MBP−ST6GalNAc1タンパク質のリフォールディング)
真核生物のST6GalNAcIはMPBに融合させた。短時間で、5種のマウスST6GalNAcI構築物が生成した:D32、E52、S127、S186、およびS201。各構築物は、ベクターpcWin2−MBPからのMBPタグの後ろで発現し、構築物に含まれる「ステム」領域の範囲が異なる。D32は、予測されたアミノ末端膜貫通ドメインの下流から直ちに出発する最長の形態である。S201は、保存触媒ドメインの予測されたスタート直前から始まる最短の形態である。
マウス構築物に加えて、ヒトST6GalNAcI K36もまた、MBPによる融合として発現される。ヒト構築物は、膜貫通ドメイン直後かた始まる。K36からそのc−末端にヒトST6GalNAc1をコードするDNAは、テンプレートとして既存のバキュロウィルス発現ベクターを用いてPCRにより単離され、pcWin2−MBP内のBamHI−XhoI位置にクローン化される。
参照のために、MBP−mST6GalNAcI S127の配列およびMBP−hST6GalNAcI K36の配列は、図26に含まれる。さらに、図38は、ヒトST6GalNAcIおよびニワトリST6GalNAcIに関して完全長アミノ酸配列、および天然のマウスタンパク質の残基32に始まるマウスST6GalNAcIタンパク質の配列を提供している。
上記のものに加えて欠失変異体が作製され、本発明の使用に好ましいST6GalNAcIの完全なリストは、表14に見られる。図39は、多数の好ましいヒトST6GalNAcI切断変異体の図式を提供している。図40は、ヒトST6GalNAcI切断変異体を含むMBP融合タンパク質の図式を示す。
図45は、ヒトST6GalNAcIタンパク質における対合および不対合システイン残基の位置を示す。単独および二重システイン置換もまた、例えば、C280S、C362S、C362T、(C280S+C362S)、および(C280S+C362T)で示される。
初期の発現研究において、ST6GalNAcI融合タンパク質は、不溶性タンパク質として発現されることを示した。活性な組換え酵素を回収するために、記載されるように、不活性な不溶性タンパク質を単離し、リフォールディングした。
pcWin2−MBP−mST6GalNAcI D32、E52、S127、S186、またはpcWin2−MBP−hST6GalNAcI K36のいずれかを有するJM109の0.5L培養の対数的増殖は、1mMのIPTGにより37℃で一晩誘導された。細胞を遠心分離により採取し、100mLの20mMのトリスpH8、5mMのEDTA中、マイクロ流動化装置で機械的破壊により溶解した。不溶性物質を、7000×gで20分間の遠心分離により採取した。上澄液を廃棄し、ペレットを、高塩緩衝液(20mMのトリスpH7.4、1MのNaCl、5mMのEDTA)、界面活性剤緩衝液(25mMのトリスpH8、1%Na−デオキシコレート、1%TritonX100、100mMのNaCl、5mMのEDTA)、およびTE(10mMのトリスpH8、1mMのEDTA)で洗浄した。各洗浄液は100mLであり、ペレットは、上記のとおり遠心分離により採取した。洗浄後、封入体ペレットをアリコートで分けて−80℃に保存した。
適切なリフォールディング、したがってST6GalNAcI活性の回復を可能にする条件についてスクリーニングするために、マウスおよびヒトST6GalNAcI融合タンパク質の封入体のアリコートを、6Mのグアニジン、10mMのDTT、1xTBSに可溶化した。タンパク質濃度をBradfordアッセイにより正規化し、可溶化タンパク質を一連の市販のタンパク質リフォールディング用緩衝液に移した。リフォールディングは、96ウェルプレート内で0.2mg/mlで0.25mL中、4℃で一晩攪拌しながら実施した。リフォールディング体を、96ウェル透析用プレート(25000NWCO)に移し、1xTBS、0.05%のTween−80に対して4℃で4時間透析し、次いで10mMのビストリスpH7.1、100mMのNaCl、0.05%のツウィーン−80に対して4℃で一晩透析した。
リフォールディングされた組換えST6GalNAcI融合タンパク質を、384ウェルの固相活性アッセイにおいて活性を試験した。簡潔に述べると、活性アッセイは、384ウェルプレート内で、ビオチン化CMP−NANからアシアロ−ウシ顎下ムチン−コーティングウェルの表面に、ビオチン化シアリン酸のST6GalNAcI媒介性移送を検出する。各反応(13.5μLリフォールディング+1.5μLの10×反応緩衝液)は、四重反復試験が実施された。10×反応緩衝液は、0.2Mのビストリスph6.7、25mMのMgCl2、25mMのMnCl2、0.5%のTween−80、および1mMの供与体であった。37℃で一晩インキュベート後、プレートを過剰の1×TBS、0.05%のツウィーン−20で洗浄し、ビオチンは、製造元の使用説明書(Perkin Elmer)に従ってユーロピウム標識ストレプトアビジンにより検出した。ST6GalNAcI活性を示すプレートに保持されたユーロピウム蛍光レベルは、Perkin Elmer Victor3Vプレートリーダーにより記録され、発現および活性結果は、表15に要約している。3種のリフォールディングされたST6GalNAcI融合タンパク質は、検出可能な活性を有した。
(実施例10:コア1GalT1タンパク質のリフォールディング)
真核生物のコア1GalT1を、MPBまたは二重タグ、MBPSPDに融合させる。ショウジョウバエおよびヒトコア1GalT1タンパク質を使用する。図41は、ヒトコア1GalT1タンパク質の完全長配列を提供している。図42は、2種のショウジョウバエコア1GalT1タンパク質の配列を提供している。各酵素の切断体は、最少の切断体が、コア1GalT1触媒ドメインのみを含んでなるように、ステム領域全体にわたって、すなわち完全長ステム領域から出発して一度に1つのアミノ酸を欠失させて作製する。タンパク質の触媒ドメインにわたるシステイン残基もまた、セリンまたはアラニン残基に一度に変異されたものである。MBP融合は、切断タンパク質であるシステイン変異体または2つの組み合わせを用いて成される。タンパク質は、本明細書に記載された方法を用いて、封入体として大腸菌で発現され、可溶化され、次いでリフォールディングされる。リフォールディングは、酵素活性を測定することによって判定される。活性酵素は、正しくリフォールディングされている。コア1GalT1の酵素活性は、Juら、J.Biol.Chem.277:178−186頁(2002)(全ての目的のために参照として本明細書に組み込まれている)に開示されているように測定する。
(実施例11:O−結合グリコシルトランスフェラーゼ類のワンポットリフォールディング)
O−結合グリコシルトランスフェラーゼ類GalNAcT2、コア1およびST3Gal1は、治療用タンパク質など選択されたタンパク質のセリン残基またはトレオニン残基上の末端シアリン酸またはシアリン酸−PEGを含むコア1構造を付加させるために集合的に使用できる。大腸菌におけるこれら酵素の発現およびリフォールディング封入体から活性酵素の回収は、コスト的に有効でスケールアップ可能な方法を開発するために有用である。我々は、大腸菌の封入体からこれら酵素(MBP−GalNAcT2およびMBP−ST3Gal1)の2種の同時リフォールディングを本明細書に記載する。同時リフォールディングの利点としては、試薬の使用を減じ、リフォールディング効率を増加させることが挙げられる。
JM109の2種の株をカナマイシン耐性に関して選択し、IPTGによる誘導の際に、MBP−GalNAcT2およびMBP−ST3Gal1の封入体を蓄積する適切な発現プラスミドを担持していることを判定した。
1mMのIPTGにより別個に一晩誘導後、細菌細胞のペレットを、20mMのトリスpH8、5mMのEDTAの10mL当たり、1gの湿潤細胞ペレットの割合で再懸濁し、マイクロフリューダイザーを2回通して、機械的破壊により溶解させた。不溶性物質、すなわち封入体すなわちIBを、30分間、Sorvall RC3において、4℃、7000×Gでの遠心分離によりペレット化し、上澄み液は廃棄した。典型的な洗浄サイクルは、洗浄緩衝液中でペレットを完全に再懸濁し、遠心分離を15分間繰り返すことからなった。該ペレットを、過剰容量(高塩緩衝液(洗浄液I:10mMのトリスpH7.4、1MのNaCl、5mMのEDTA)の元の細胞ペレット1g当たり、少なくとも10mL(20まで))で1回、界面活性緩衝液(洗浄液II:25mMのトリスpH8、100mMのNaCl、1%のTritonX100、1%のNa−デオキシコール酸、5mMのEDTA)中で1回、および(IBの洗浄に加えて、微量の界面活性剤の混入を除去するために)洗浄緩衝液(洗浄液III:10mMのトリスpH8、5mMのEDTA)中で3回洗浄した。
洗浄したIBを、可溶化緩衝液(8Mの尿素、50mMのビストリスpH6.5、5mMのEDTA、10mMのDTT)中に再懸濁し、4mg/mlのタンパク質濃度に調整した。該尿素タンパク質溶液を、14000×Gで5分間の遠心分離によって清澄化した。リフォールディング緩衝液(55mMのトリスpH8.2、10.56mMのNaCl、0.44mMのKCl、2.2mMのMgCl2、2.2mMのCaCl2、0.055%のPeg3350、550mMのL−アルギニン、1mMのGSH、100mcMのGSSG)中、0.1mg/mlへ急速希釈して実施し、4℃で16時間、攪拌した。
実験系を以下の通り設定した:MBP−GalNAcT2およびMBP−ST3Gal1のいずれかを個別にリフォールディング、または同じ容器内で同時にリフォールディングする間、リフォールディング条件を一定に保持した。リフォールディング後、該混合物を、50mMのビストリスpH6.5、75mMのNaCl、0.05%のTween80中で平衡化したG50Sephadexを用いて、低速遠心分離により脱塩した。微量遠心管における最高速度での遠心分離後、可溶性物質を回収した。
リフォールディング後、可溶性酵素の収量を測定するため、各反応液をSDS−PAGE分析に供し、続いて、クーマシーブルーにより染色して、ポリペプチドを可視化した(図27A)。結果は、同時リフォールディングにより可溶性酵素の収量が増加することを示している(同時リフォールディング対個別のレーン)。
第2の実験において、6μgの治療用タンパク質、IFα−2bを、1ポット3酵素peg化反応に供した。以下の反応用緩衝液(50mMのMES pH6.2、150mMのNaCl、10mMのMnCl2)を用い、0時間または16時間、20μlの反応液中、この反応に用いた酵素の濃度は、1.4μgのMBP−GalNAcT2、0.5muのBVコア1、および1.4μgのMBP−ST3Gal1、用いられた糖は、1.2μgのUDP−GalNAcおよび1.2μgのUDP−Galならびに125μgの20K−Peg−CMP−NANである。反応液の半分におけるIFα−2bのpeg化の程度を、SDS−PAGE後のクーマシーブルー染色によって可視化した(図27B)。該実験は、個々にリフォールディングされた酵素のいずれかの組み合わせを用いる1ポットpeg化を、同時リフォールディング酵素と直接比較し、他の全ての成分および濃度を一定に保つようにデザインされた。結果は、該酵素が同時リフォールディングされた反応におけるpeg化生成物が、個別にリフォールディングされたものと比較して増加したことを証明している(5レーン対7レーン)。
(実施例12:MBP−SiaA融合タンパク質の発現増強)
非定型インフルエンザ菌のSiaA遺伝子末端を大腸菌内の発現に関してコドン最適化した。該遺伝子をNdeIおよびEcoRIにより消化し、アガロースゲル精製し、NdeI/EcoRI消化したpcWin2に結合してから、大腸菌株JM109またはW3110内へ形質転換した。プラスミドDNAを組換え体から単離し、NdeIおよびEcoRIによりスクリーニングした。正しい構築物を各々含有するJM109の1つのコロニーおよびW3110の1つのコロニーを、10μg/mlの硫酸カナマイシンを含有する2mlの無動物LBに播種し、250RPMの攪拌で37℃、6時間増殖させた。100μlのアリコートを取り、10,000×gで2分間、遠心分離し、上澄み液を廃棄した。−20℃で凍結させたこのペレットは非誘導細胞を表す。残りの培養物に、1mMの最終濃度でIPTGを加え、37℃で2時間、250RPMの攪拌でインキュベートした。100μlのアリコートを取り、記載された通り処理した(誘導細胞を表す)。
PCRを用いて、SiaA遺伝子の制限部位を5’BamHIに変化させ,3’端はEcoRI維持した。該PCR生成物を、BamHIおよびEcoRIにより消化し、アガロースゲル電気泳動により精製し、BamHI/EcoRI消化したpcWin2MBPに結合した。この結合反応によって形質転換したJM109細胞を培養し、プラスミドDNAを単離した。BamHIおよびEcoRIを用いてプラスミドDNAをスクリーンした。正しい構造を含有する3つのコロニーを、10μg/mlの硫酸カナマイシンを含有する2mlの無動物LBに播種し、250RPMの攪拌で37℃、6時間増殖させた。100μlのアリコートを取り、10,000×gで2分間、遠心分離し、上澄み液を廃棄した。−20℃で凍結させたこのペレットは非誘導細胞を表す。残りの培養物に、1mM
IPTGの最終濃度でIPTGを加え、37℃で2時間、250RPMの攪拌でインキュベートした。100μlのアリコートを取り、記載された通り処理した(誘導細胞を表す)。
各100μlのアリコートを、50mMのDTTを含有する100μlのSDS−PAGEサンプル緩衝液中で5分間沸騰させた。該サンプルを、4〜20%のアクリルアミド、トリス−グリシンゲル上に装填し(インビトロゲン)、約2時間電気泳動し、Invitrogen Simply Blue Safestainによって染色し、水で脱染し走査した。図Xは、誘導時、天然SiaAの検出不可能なレベルの発現を示し、一方、図Yは、IPTG誘導時、MBPに融合したSiaAの高レベルの発現を示す。この結果は、pcWin2MBPベクターから供給されたMBPが高レベルのタンパク質発現を駆動することを証明している。
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