以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態の例を説明する。
キャリアセンスを行う無線通信システムとして、IEEE Std. 802.11-1999 (revision 2003はISO/IEC 8802-11:1999(E) ANSI/IEEE Std 802.11,1999 edition,IEEE Std 802.11a-1999,IEEE Std 802.11b-1999,IEEE Std 802.11b-1999/Cor 1-2001とIEEE Std 802.11d-2001を含む)に基づく無線LANシステムがある。以下ではIEEE 802.11無線LANシステムの基本的なシステム構成に基づいて説明する。IEEE 802.11標準規格は物理(Physical: PHY)層と媒体アクセス制御(Medium Access Control: MAC)層に関する規格である。以下の処理は主にMAC層での処理に注目する。なお、ここで記述するIEEE 802.11標準規格はIEEE 802.11標準規格のamendmentやrecommended practiceなどとして位置付けられる標準規格も含む。
(第1の実施形態)
図1に本発明で用いるIEEE 802.11無線LANシステムで1つの無線基地局(AP)1に1つの無線端末(STA) 101が無線接続する通信形態をとる場合の例を示す。IEEE 802.11でこの1つの無線基地局と1つ以上の無線端末から成る構成単位をBSS (Basic Service Set)という。
以下では無線基地局1が無線端末101にデータを送信する場合を例として示すが、逆に無線端末101から無線基地局1にデータを送信する場合にも同様に適用できる。また図1のBSSで、もう一つの無線端末102も存在し、無線端末101から無線端末102にデータを送信するような場合にも同様に適用できる。また、図1の構成の代わりに図2のように無線基地局が存在せず、同等な通信能力を備えた2つの無線端末101、102が無線通信を行う構成をとることもできる。IEEE 802.11ではこの無線基地局が存在せず無線端末のみで構成される単位をIBSS (Independent Basic Service Set)という。図2のような構成をとった場合にも、一方の無線端末、例えば無線端末102から、もう一方の無線端末、ここでは無線端末103にデータを送信する状況を、以下に記述する無線基地局1から無線端末101にデータを送信する状況の代わりに置き換え、適用することができる。
図1では1つのBSSのみから構成される無線通信システムであるが、図3のように複数のBSSから構成されてもよい。このような無線通信システムの構成単位を、IEEE 802.11ではESS (Extended Service Set)という。無線基地局間はDS (Distributed System)といわれ、有線インフラで結ばれていてもよいし、また無線で接続されていてもよい。この無線通信システム中の複数のBSSのうち、1つあるいは限られた数のBSSでのみ、以下が実施される形態でもよい。
無線基地局1と無線端末101がやり取りするフレーム交換には、例えば802.11では上位論理リンク制御(Logical Link Control; LLC)層からMAC層に渡されたペイロード(例えばイーサフレームなど)から生成されるデータフレーム(data frame)の他、MAC層レベルでの端末間あるいはBSSの管理に用いられる管理フレーム(management frame)、データフレームあるいは管理フレームの交換をする際などに制御を行うための制御フレーム(control frame)がある。ここでは、データフレームと管理フレームを合わせてデータと呼び、制御フレームと大別することとする。
また、BSSで使用される送信方式は2種類に分類されるものとする。例えば、1つはBSS内で必ず送受に対応できなくてはならない基本の送信方式であり、もう1つは拡張機能として用意されている応用の送信方式である。送信方式とは、例えば変調方式のことを表す。802.11bと802.11gはともに2.4 GHz帯を対象とした規格である。802.11gで規定される変調方式は802.11bの無線端末(無線基地局を含む)では用いることができないが、802.11bで規定される変調方式は802.11gの無線端末では対応できる、というように802.11gが802.11bに対し後方互換の関係を持っている。この場合、802.11bで規定されている変調方式が基本の送信方式となり、802.11gで規定されている変調方式が応用の送信方式となる。また、同一規格で閉じた場合、つまり、例えばBSSに802.11gの無線端末しか収容されていない場合でも、BSSでは同期をとることなどを目的とした管理信号のBeaconやProbe Responseフレームに、該BSSで少なくとも受信を保証している変調方式のセット(これをoperational rate setという)が情報として入っている。そして、必ずしも規格で規定された変調方式を全てこれに入れる必要はないため、operational rate setとして通知される変調方式のセットを基本の送信方式、それに対して規格では規定されているが現operational rate setに含まれていない送信方式を応用の送信方式として、分類することもできる。
無線基地局1が無線端末101に対してデータフレームを送信する場合に、まず制御フレームであるRTS (Return to Send)フレームを送信する。この際、RTSは基本の変調方式で送信する。データの前にRTSを送信するのは、仮想的に帯域を予約するためである。
IEEE 802.11無線LANシステムでのMACフレームの構成を図4に示す。MACフレームは、フレームの受信処理に必要な情報を入れるMAC Header部、フレームの種類に応じた情報、例えば上位LLC層から渡されたデータなどが入るFrame Body部、そしてMAC Header部とFrame Body部が正しく受信できたかを判定するために用いる32ビットCRC (Cyclic Redundancy Code)で構成されるFCS (Frame Check Sequence)部から構成される。MAC Header部には、フレームの種別に応じてFrame Controlフィールド、仮想的なキャリアセンスを実行させる(その結果仮想的な帯域予約が実行される)ための送信を抑制させる期間(NAV: Network Allocation Vector)を示したり無線基地局に割り当てられた無線端末のID (AID: Association Identifier)を示すDuration/IDフィールド、直接の送信先や最終宛先、送信元のMACアドレスを記述するMACアドレスフィールド (複数存在)、送信するデータのSequence番号や、フラグメント化した場合のFragment番号を入れるSequence Controlフィールドなどが入る。Frame Controlフィールドにはフレームの種別を示すTypeフィールド、Subtypeフィールドや、DS宛て(すなわち無線基地局宛て)かを示すToDSビット、DSから(すなわち無線基地局から)送信されたものかを示すFromDSビットなどが入っている。
このDuration/IDフィールドによって仮想的な帯域予約を実行させるためには、該フィールドを有するフレーム自体を受信できなくてはならない。従って、RTSを基本の変調方式にて送信する。
IEEE 802.11では、RTSの送信先である無線端末101で該RTSを受信すると、無線端末101はそれに対する応答フレームである制御フレームのCTS (Clear to Send)フレームを無線基地局1に応答するようになっている。これによって、無線基地局1と無線端末101の周囲の無線端末に仮想的な帯域予約をすることができる。通常、同一BSS内に他の無線端末が存在する場合、無線基地局1からのRTSフレームにより、その後の無線基地局1のデータ送信を妨害することはしない。従って、CTSフレームを応用の送信方式で送信することができる。本実施形態ではこの応用の送信方式で送信されたCTSフレームに無線端末101でのRTSフレームの受信状況に関係する情報(I_rx)を付加する。そして、該受信状況に関係する情報を取得した無線基地局1は次の送信に該情報を活用することができる。この一連の様子を図5に示す。
ここで、CTSフレームを応用の送信方式で送信する際に、使用できる応用の送信方式のうち、最低の伝送レートを用いることとする。最低の伝送レートを用いるのは、より高い伝送レートを用いる際よりも伝搬上での誤りに対する耐性(ロバスト性)が高いためである。最低の伝送レートを用いることにより、仮に基本の送信方式でRTSフレームを送信した無線端末との間の無線リンクの状態が劣悪であっても、応用の送信方式で送信するCTSフレームの伝送レートに最低のものを選択することによって、RTSフレーム送信側への送達の信頼性を高めて送信することができる。
あるいは、最低の伝送レートの代わりに、応用の送信方式で使用する候補のうち、もっとも頑健な送信方法を選択するようにしてもよい。頑健な送信方法とは、例えば誤り訂正能力を有した符号化を施した送信方法で、その中でもっとも誤り訂正能力の高い方法を選択する。
CTSに受信状況に関係する情報を付加したことにより、新規フレームとしての扱いになり、前述のSubtypeを別に規定してもよい。そのため図では、CTS’と記述してある。
受信状況に関係する情報は、フレームのフォーマット構成に新規フィールドを追加する他、既存のフォーマットの一部のフィールドあるいはフィールド内のさらに一部のビットを使用して通知するのでもよい。また、これはMACフレーム中のフィールドであってもよいが、それに限ることはなく、例えばPHYヘッダーのフィールドを使用するのでもよい。IEEE 802.11のDSSS (Direct Sequence Spread Spectrum; スペクトル拡散直接拡散方式) PHYやIEEE 802.11a OFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交周波数多重)のPHYヘッダーには、例えばServiceフィールドというものがあり、その一部(OFDM PHY)もしくは全て(DSSS PHY)が将来利用のために予約(reserve)されており、規定されていない。このような部分を受信状況に関係する情報を通知するために用いてもよい。該情報の受信側無線端末のMAC層で該情報を利用する際には、該情報をPHY層からMAC層に通知する仕組み、もしくは、PHY層で抽出・保存された情報のうち、少なくとも該情報に関わる部分をMAC層が読み取れる仕組みがあればよい。以降、他のフレームにて、受信状況に関係する情報を入れる場合でも同様に適用できる。
例えば、無線端末101は無線基地局1との間で管理フレームを用いて認証処理を行うことにより、応用の送信方式を受信できることや、応用の送信方式を送信できることや、受信状況に関係する情報を送信する機能を持っていることなど、無線端末101の通信能力を無線基地局1に対して通知することができれば、本実施形態を有効に活用することができる。例えば、IEEE 802.11無線LANシステムで、無線端末の通信能力はCapability Informationフィールドというフィールドにより通知することができるようになっており、該フィールドは例えば管理フレームであるAssociation Requestフレーム内に入れられることから、無線端末の通信能力を無線基地局に対して通知することができる。また該フィールドは管理フレームであるBeaconフレームやProbe Responseフレームにも入れられる。Beaconフレームは周期的に送信され、またProbe Responseフレームは無線端末から管理フレームであるProbe Requestフレームを受信すると応答として返すフレームである。これらのフレームを用いて、逆に無線基地局の通信能力も無線端末側で把握することができる。BeaconフレームやProbe RequestフレームはIBSSでも送信されるもので、それらを用いてIBSSでも他の無線端末の通信能力を把握することができる。このCapability Informationフィールドなどに、応用の送信方式を受信できることや、応用の送信方式を送信できることや、受信状況に関係する情報を送信する機能を持っていることなどを通知するビットを規定すればよい。
逆にRTSを応用の送信方式で送信し、受信状況に関係する情報を付加したCTSフレーム(CTS’)を基本の送信方式で送信しても、CTS’のDuration/IDフィールドにより、基本の送信方式にしか対応しない他の無線端末がNAVを設定することができ、同様の効果が得られる。
以上のように、RTSフレームとCTSフレームで応用と基本の送信方式の組み合わせを変えた場合において、応用の送信方式で送信する側が応用の送信方式のうちの最低の伝送レートを選択することにより、あるいは応用の送信方式のうちもっとも頑健な送信方法を選択することにより、同様に送信先無線端末(無線基地局を含む)への送達の信頼性を高めて送信することができる。
BSS内の全ての無線端末はまず無線基地局と認証処理を行ってからBSS内での通信を開始することができるため、無線基地局はBSS内の全ての無線端末と接続していると仮定することができる。従って、無線基地局が送信するフレームは該BSS内の全ての無線端末が受信することができるということができる。ここで、受信することができる、というのは、復号処理が可能ということまでは言っておらず、無線端末に復号能力があるなら復号可能なレベルの受信状態である、ということであり、必ずしも無線端末の復号能力を要求してはいない。そこで、無線端末101からRTSフレームを応用の送信方式で送信された際に、無線基地局1が受信状況に関係する情報を付加したCTSフレーム(CTS’)を基本の送信方式で送信する。このように、無線端末からの応用の送信方式で送信されたフレームに対する応答フレームに受信状況に関係する情報を付加して無線基地局が送信する際に、必ず基本の送信方式を用いるようにすれば該フレームによって少なくとも該BSS内の全ての無線端末が受信復号可能でNAVによって帯域予約を行うことができるので、無線端末は周囲の他の基本の送信方式しか受信処理できない無線端末に対してNAV設定させることを意識せずに、使用したい送信方式を用いてフレーム交換を開始することができる。
逆に、無線基地局1からRTSフレームを送信する際には必ず基本の送信方式を用いるようにすれば、CTSフレームを送信する無線端末101は周囲の他の基本の送信方式しか受信復号できない無線端末に対してNAV設定させることを意識せずに、使用したい送信方式を用いて応答することができる。
このように、無線基地局と無線端末間でフレーム交換を行う際には、無線基地局1が送信する際に基本の送信方式を用いることで、少なくともBSS内の他の無線端末に対し帯域予約をすることができ、安定した通信を確保することができる。
以上のように、送信する端末の役割・機能に応じて基本の送信方式と応用の送信方式の使い分けをする際に、前述のように、応用の送信方式で送信する側が応用の送信方式のうちの最低の伝送レートを選択するようにしてもよい。あるいは応用の送信方式のうちもっとも頑健な送信方法を選択するようにしてもよい。そのようにすることによって、同様に送信先無線端末(無線基地局を含む)への送達の信頼性を高めて送信することができる。
データの送信では、制御フレームであるACKフレームを応答としてもらいつつ、複数のデータを連続して送信する場合がある。例えば、ある1つのLLCからのデータや管理フレームを送信する際に、複数のフラグメントに分けて(フラグメント化)送信する場合である。またQoSを扱うIEEE 802.11e規格などでは異なるデータの連続送信も許されている。このような場合、最初のデータを基本の送信方式で送信して、その応答であるACKフレームを応用の送信方式で、受信状況に関係する情報を付加させて送信してもよい。
以上のように、データとそれに対する応答であるACKフレームの交換で、応用の送信方式で送信する側、例えばACKフレーム送信側が応用の送信方式を用いる際、応用の送信方式のうち最低の伝送レートを選択することにより、あるいは応用の送信方式のうちもっとも頑健な送信方法を選択することにより、同様に送信先無線端末(無線基地局を含む)への送達の信頼性を高めて送信することができる。
また、先のRTSとCTS’の交換後にデータとACKフレームの交換を応用の送信方式で継続しつつ、ACKフレームには受信状況に関係する情報を付加させて送信してもよい。この様子が図5に付加的に表現されている。
ACKに受信状況に関係する情報を付加したことにより、新規フレームとしての扱いになり、前述のSubtypeを別に規定してもよい。そのため図では、ACK’と記述してある。
RTSとCTSの交換をしない場合などで、データに対するACKに受信状況に関係する情報を付加して送信する場合に、逆にDataを応用の送信方式で送信し、受信状況に関係する情報を付加したACKフレーム(ACK’)を基本の送信方式で送信しても、ACK’のDuration/IDフィールドにより、基本の送信方式にしか対応しない他の無線端末がNAVを設定することができ、同様の効果が得られる。
前述のように、フレーム交換においてデータを送信するのが無線基地局なら最初のデータを基本の送信方式で、その応答であるACKフレームを無線端末が応用の送信方式で受信状況に関係する情報を付加して送信、データを送信するのが無線端末なら最初のデータを応用の送信方式で、その応答であるACKフレームを無線基地局が応用の送信方式で受信状況に関係する情報を付加して送信、というように端末の役割・機能によって、基本の送信方式と応用の送信方式の使い分けをしてもよい。
以上のように、データとそれに対する応答であるACKフレームの交換で送信する端末の役割・機能に応じて基本の送信方式と応用の送信方式の使い分けをする際に、前述のように、応用の送信方式で送信する側が応用の送信方式のうちの最低の伝送レートを選択するようにしてもよい。あるいは応用の送信方式のうちもっとも頑健な送信方法を選択するようにしてもよい。そのようにすることによって、同様に送信先無線端末(無線基地局を含む)への送達の信頼性を高めて送信することができる。
これまで、応用の送信方式のうち最低の伝送レートを選択、あるいはもっとも頑健な送信方法を選択することを記述してきたが、これらは、送信されたフレームの受信側無線端末で受信処理可能であることが前提である。
制御フレームあるいはデータとそれに対する応答の制御フレームの組み合わせとしては、上記例に限定することはなく、他のフレームタイプに適用してもよい。
以上のように、基本の送信方式と応用の送信方式の組み合わせの中で、一方の送信フレームに受信状況に関係する情報を付加することによって、キャリアセンスに基づき送信を行う無線通信システムにおいて無線端末の受信状況に関係する情報をデータ送信側無線端末に帯域予約の下でかつフレーム交換の信頼性を高めた上で、安定かつ効率的に通知し、またデータ送信側無線端末において続く次の送信に該情報を活用することができる。
また、無線基地局と無線端末間でフレーム交換を行う際には、送信する端末の役割・機能に応じて基本の送信方式と応用の送信方式とを使い分けることによって、無線端末側(非無線基地局)は周囲の他の基本の送信方式しか受信処理できない無線端末に対してNAV設定させることを意識せずに、使用したい送信方式を用いてフレーム交換を開始あるいはデータに対する応答をすることができる。
(第2の実施形態)
本実施形態は第1の実施形態と同様であるので、以下では本実施形態が第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。本実施形態で第1の実施形態と異なる点は、応答フレームを応用の送信方式で送信してもよいという許可情報を該応答フレームの元になるフレームに付加することである。無線通信システムの構成は図1と同様である。
第1の実施形態は、RTSが基本の送信方式で送信された場合、応用の送信方式でCTSフレーム(CTS’)を送信するように仮定していたが、それでは無線端末101でのRTSの受信状況が悪いなどにより応用の送信方式でCTS’を送信することが好ましくない場合もある。そこで、RTSに、追加の情報として、応答であるCTSフレームに応用の送信方式の選択を許可する情報を入れるようにしてもよい。このようにすることによって、無線端末101で応答フレームを送信する際の送信方式の選択に自由度を与えることができる。このようなRTSに対し、無線端末101が応用の送信方式でCTS’を送信した場合を図6に示す。例えば、第1の実施形態で無線基地局と無線端末間でフレーム交換を行う際に、無線基地局からRTSフレームを送信するときは、基本の送信方式にし、無線端末側でのCTS応答は応用の送信方式にする、無線端末からRTSフレームを送信するときは、応用の送信方式にして無線基地局側でのCTS応答を基本の送信方式にする実施形態を記述している。前者の場合に、無線基地局が送信するRTSに追加の情報として応答であるCTSフレームに応用の送信方式の選択を許可する情報を入れるようにする。後者の場合は、無線端末が応用の送信方式で送信してくることに対し、無線基地局が基本の送信方式で応答するので、無線端末は基本の送信方式による応答を待ち受けるようにする。
RTSに応答であるCTSフレームに応用の送信方式の選択を許可する情報を付加したことにより、新規フレームとしての扱いになり、前述のSubtypeを別に規定してもよい。そのため図6では、RTS’と記述してある。
これにより、応答フレームを送信する際の送信方式の選択に自由度を与えることができる。
(第3の実施形態)
本実施形態は第1の実施形態と同様であるので、以下では本実施形態が第1の実施形態と相違する点を中心に説明する。本実施形態で第1の実施形態と異なる点は、送信フレームとそれに対する応答フレームで、応答フレームに受信状況に関係する情報を付加する、という組み合わせに限定しないことである。
送信フレームとそれに対する応答フレームという組み合わせではなくても、連続的にフレームの交換が発生する場合があり、それに適用することができる。図1の無線通信システムの構成を取った場合に、例えば、図7のように無線基地局1から無線端末101が送信権をPollフレーム (802.11ではCF-Pollや802.11eではQoS CF-Pollフレームなどといったもの)で与えられ、Dataフレームを送信する際に、受信状況に関係する情報(I_rx)を付加する。無線基地局1は該情報を無線端末101へ応答フレームとしてACKを送信する際、または無線端末101へDataフレームを送信する際に、該無線端末101での受信状況に関係する情報を送信制御に活用する。
Dataフレームに受信状況に関係する情報を付加したことにより、新規フレームとしての扱いになり、前述のSubtypeを別に規定してもよい。そのため図では、Data’と記述してある。
以上のように、送信フレームとそれに対する応答フレームで、応答フレームに受信状況に関係する情報を付加する、という組み合わせに限定しなくても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
本実施形態は基本的には、第1の実施形態あるいは第2の実施形態と同様であるので、以下では本実施形態が第1の実施形態および第2の実施形態と相違する点を中心に説明する。本実施形態で第1の実施形態あるいは第2の実施形態と異なる点は、同一の無線端末がまず帯域予約をしてから受信状況に関係する情報を付加したフレームを送信することである。
図8を用いて説明する。無線通信システムの構成は図1と同様である。無線基地局1はまず他の無線端末に帯域を予約させるために、自分宛てのダミーのフレームを基本の送信方式で送信する。図8では802.11eや802.11gで用いられるCTS self フレーム(自分宛てのCTSフレーム)を送信している。その後、そのNAV内に無線端末101に送信権を与えるPollフレームを送信するが、該Pollフレームは応用の送信方式で送信し、その際に以前に無線端末101から受信したフレームを元に受信状況に関係する情報を付加する。Pollによって送信権を与えられた無線端末101はDataフレームを無線基地局1に対し応用の送信方式で送信する際に、無線基地局1での受信状況に関係する情報を用いて送信制御を行うことができる。この場合は、Pollフレームを送信した先の無線端末101が無線基地局1に対して送信する場合にしか、つまりアップリンク伝送するときにしか無線基地局1での受信状況に関係する情報を活用できない、という制約はある。IEEE 802.11ではPollフレームとは、正確にはCF-Pollフレーム、QoS CF-Pollフレーム、PS-Pollフレームなどを指す。
また図8ではCTS selfフレームを用いているが、その代わりに802.11eで用いられるQoS CF-Pollフレーム(自分宛てのQoS CF-Pollフレーム)などを送信してもよい。
ここで、Pollフレームを応用の送信方式で送信する際に、使用できる応用の送信方式のうち、最低の伝送レートを用いることとなる。最低の伝送レートを用いるのは、より高い伝送レートを用いる際よりも伝搬上での誤りに対する耐性(ロバスト性)が高いためである。最低の伝送レートを用いることにより、仮にPollフレームを送信した先の無線端末との間の無線リンクの状態が劣悪であっても、応用の送信方式で送信するPollフレームの伝送レートに最低のものを選択することによって、Pollフレーム送信先の無線端末への送達の信頼性を高めて送信することができる。
あるいは、最低の伝送レートの代わりに、応用の送信方式で使用する候補のうち、もっとも頑健な送信方法を選択するようにしてもよい。頑健な送信方法とは、第1の実施形態で説明したものである。
以上のように、同一の無線端末がまず帯域予約をしてから受信状況に関係する情報を付加したフレームを送信する形態でも、受信状況に関係する情報が即時に通知されないということはあるが、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第5の実施形態)
本実施形態は基本的には第4の実施形態と同様であるので、以下では本実施形態が第4の実施形態に付加する点を中心に説明する。本実施形態が第4の実施形態に付加する点は、受信状況に関係する情報を、該無線端末がフレームに付加、送信する際に、該フレームの送信先の無線端末から過去に受信したフレームに基づき生成することである。
無線通信システムとしては、図1のような構成をとる。第4の実施形態に係る無線基地局1が無線端末101からの受信状況に関係する情報を無線端末101に送信するためには、過去に無線端末101からフレームを受信した際の受信状況に関係する情報を保持、取得しておかなくてはならない。図9では、1つ前のフレーム交換で、無線端末101からフレームを受信した際の情報を保持し、それを帯域予約のためのフレーム、ここではCTS selfフレームを送信してから、無線端末101に送信権を与えるCF-Pollフレーム(図中ではPollと表示)に該情報を付加して送信している。
Pollフレームに受信状況に関係する情報を付加したことにより、新規フレームとしての扱いになり、前述のSubtypeを別に規定してもよい。そのため図では、Poll’と記述してある。
図9では、受信状況に関係する情報を送信するフレーム交換の前のフレーム交換として、Dataフレームに対し、ACKを送信するようになっているが、無線基地局1がDataフレームを受信し、該受信状況から関係する情報を取得する部分が本質であって、ACKを送信することは必須ではない。例えば、無線端末101がブロードキャストフレームや複数の無線端末宛てに送信するマルチキャストフレームを送信した場合には、IEEE 802.11規格では受信した無線端末ではACKを送信しない。また、特にIEEE 802.11e規格などでは、受信局として単一の宛先を指定したユニキャストフレームでも、その応答の仕方をデータフレームのMACヘッダー部で指定し、その指定によってはACKフレームを返さなかったり、後でまとめて送達確認の情報を返す場合がある。ACKフレームなどの応答フレームがなくても、データフレームをある無線端末が送信し、そのデータフレームの送信先である1つないし複数の無線端末が受信するその間を、ここではフレーム交換と記述する。
また、受信状況に関係する情報を取得するための過去のフレーム交換での送信方式は、基本の送信方式でも、応用の送信方式でも構わない。
図8では、受信状況に関係する情報を取得するための過去のフレーム交換をDataに対するACKとして1交換だけに留めて表しているが、それに限ることはない。例えば、CSMA/CA (Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance; 衝突回避機能付きキャリア検出多重アクセス衝突)を行うIEEE 802.11無線LANシステムなどでは、キャリア検出を行わずに連続してフレーム交換を行う場合もある。つまり、Data-ACK-Data-ACK-…のように複数回フレーム交換を行ってもよい。ここで、DataとACKの間の"-"はIEEE 802.11ではSIFS (short interframe space)という期間である。Dataを受信した無線端末ではキャリアセンスを行わず、受信からSIFS待った後にACKを送信し、ACKを受信したData送信側の無線端末はそのACK受信からSIFS後に次のDataを送信する。連続したフレーム交換でのDataはIEEE 802.11規格では基本的に、LLCやMAC管理フレーム生成部から渡されたフレーム(狭義のデータフレームと、管理フレーム)を複数のフラグメントと言われる単位に分割したもの(それが個々にPHY層を経由してエア上に送信される)が当てはまるが、IEEE 802.11e規格などでは、特にそれをフラグメントに限定せずに、個々のデータフレーム(広義)に置き換えることもできる。また、さらに個々のデータフレーム(広義)を複数束ねて(MAC層レベルに限定せず、PHY層レベルで束ねるのでもよい)、1つのデータフレームとしてそれをさらに複数連続送信するフレーム交換の形態であってもよい。
このような複数の連続したフレーム交換を無線端末101が無線基地局1に対して行う場合に、無線基地局1は受信状況に関係する情報を、最後に無線端末101から送信されたDataフレームを受信した際の状況から取得するようにしてもよい。連続したフレーム交換での、最後のDataフレームであるかは、フレーム内の1つないし複数のフィールドにまたがった情報から判断することもできる。例えばIEEE 802.11無線LANシステムでは、MACヘッダーのFrame Controlフィールドに、"MoreFrag"ビットが用意されており、そこに1が記述されている場合にはまだ続くフレーム交換があることを示しているので、逆に0と記述されている場合にそれと判断することができる。また、IEEE 802.11e規格などでは、Dataフレーム送信側無線端末がフレーム交換を終了することをDuration/IDフィールドの値で通知する機構を利用して受信側が判断することもできる。また、フレーム交換を終了する旨を通知する特別のフレームをDataフレーム送信側無線端末が送信することによって、受信側無線端末が連続したフレーム交換が終了することを認識し、送信側無線端末からの受信状況に関係する情報として該特別のフレームの受信状況に基づく情報を取得することもできる。その他、予め連続してフレーム交換する期間に制限を設けておき、それに基づいて判断することもできる。例えば、IEEE 802.11e規格などでは、最大連続送信できる時間が定められているため、該時間が経過したら、その経過前に受信したフレームが連続フレーム交換での最後のフレームであったと判断することができる。
上記では、最後に無線端末から送信されたDataフレームを受信した際の状況から受信状況に関係する情報を取得するようにしてもよい、としているが、必ずしもフレーム交換の最後の受信フレームに限定されることもない。1つ前の連続したフレーム交換での複数の受信フレームの受信状況を統計的に処理した(例えば平均をとるなど)情報でもよい。このようにすれば、過去の受信状況に関係する情報として統計的な情報を通知することができる。つまり時間軸上の局所的な情報ではなく、無線端末間のより長区間での時間変動のレベルでの情報を通知することができ、受信状況に関係する情報が同一連続フレーム交換内ではなく、ある一定期間をおいて通知される場合には、その方が通知された無線端末側で有効な情報となりうる。
また、自分宛てのフレームから受信状況に関係する情報を取得することに限定する必要はなく、また情報の元になるフレームをDataフレームに限定する必要もない。例えば、図10のように複数の(ここでは2つの)無線端末がBSSに収容されている場合を考える。例えばIEEE 802.11e規格では無線端末は無線基地局を介して同一BSSの無線端末にデータを送信するだけでなく、無線端末間での直接通信も許されている。無線基地局1は、無線端末101が無線端末102とフレーム交換を行っているのを観測(受信)し、無線端末101からのフレームの該無線基地局1での受信状況に関係する情報を保持しておいて、以後、無線端末101に該情報を通知するようにしてもよい。観測する無線端末101からのフレームとは、Dataフレーム(広義)であってもよいし、無線端末102が送信するDataフレームに対するACKフレームなど制御フレームであってもよい。
以上のように、受信状況に関係する情報を過去のフレーム交換から取得することができる。また、第4の実施形態で受信状況に関係する情報を通知される無線端末側にとって有効となるような、統計に基づく情報を取得することができる。
(第6の実施形態)
本実施形態は基本的には第1の実施形態から第5の実施形態に基づいており、以下では本実施形態がこれら実施形態と相違する点を中心に説明する。本実施形態が上記実施形態と相違する点は、基本の送信方式と応用の送信方式に対する受信方式である。
基本の送信方式は第1の実施形態では、BSS内で必ず送受に対応できなくてはならないものとしていたが、特に基本の受信方式及び応用の受信方式で受信復号可能なものとし、それに対して、応用の送信方式は、応用の受信方式では受信復号可能であるが、基本の受信方式では受信復号ができないもの、とする。このような制限下でも、第1の実施形態から第5の実施形態によれば、基本の受信方式にしか対応しない無線端末が存在する場合でも、該無線端末に帯域予約をさせることができる。
例えば、応用の送信方式とは、複数の送信アンテナより信号を送信する送信方式とすることができる。その例を図11(a)に表す。ここでは、送信側(Tx)で2本の送信アンテナAnt.t1とAnt.t2を用いているが、2本に限定する必要はなく、n本 (n: 2以上の整数)としてもよい。信号s1とs2を送信する際に、送信アンテナAnt.t1から信号s1を、送信アンテナAnt.t2から信号s2を送信するものとする。伝送路の応答をH1とする。例えば受信側(Rx)で、2本の受信アンテナAnt.r1とAnt.r2を用意した無線端末では、各アンテナから受信した信号r1およびr2に、推定した伝送路応答H1の逆行列を乗算することによって、送信信号s1とs2を推定することができる(推定信号は各々s^1とs^2となる)。このようにして、伝送速度を送信アンテナ数倍まで拡張(図11(a)の例では、伝送速度を2倍にまで拡張)することができる。このような、複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを用いた通信システムをMIMO (Multiple-Input Multiple-Output)と呼ぶ。
基本の送信方式を用いて送信する場合とは、例えば図11(b)のようになる。1本の送信アンテナAnt.t1から構成された送信装置からの送信方式が基本の送信方式となる。これに対して、受信側では1本の受信アンテナで受信することもできるし、図11(b)のように、複数の受信アンテナ(図11(b)の例では2本で、各々Ant.r1とAnt.r2)で受信することもできる。複数の送信アンテナから送信される信号を受信復号することのできない受信アンテナ1本から構成される受信方式が基本の受信方式、図11(b)のように複数の受信アンテナで受信する場合など、複数の送信アンテナから送信される信号を伝送路応答H2を推定し、その逆行列を受信信号に乗算することによるなどの方法により受信復号することのできる構成を取った受信方式が応用の受信方式となる。
上記のように、基本の送信方式は基本の受信方式及び応用の受信方式で受信復号可能なものとし、それに対して、応用の送信方式は、応用の受信方式では受信復号可能であるが、基本の受信方式では受信復号ができないものとした場合に、応用の受信方式に対応する無線端末と基本の受信方式にしか対応しない無線端末が混在するような無線通信システムを考える。
例えば、図10のような構成をとるBSSを考える。無線端末101は応用の受信方式に対応する無線端末であり、無線端末102は基本の受信方式にしか対応しない無線端末であるとする。図10では無線端末101と無線端末102が直接通信をしている図になっているが、それはここでは本質ではない。
第1の実施形態から第5の実施形態で説明したように無線基地局1と無線端末101とがフレーム交換を行った場合に、無線端末102では、図12から図15のように、無線基地局1から送信された基本の送信方式によるフレームで仮想的なキャリアを検出し、無線基地局1と無線端末101が応用の送信方式によりフレーム交換を行っている間、データフレームの送信をしない。IEEE 802.11無線LANシステムでは、無線基地局1から送信された基本の送信方式によるフレームを無線端末102は受信し、該フレームが自局宛てではないことから、該フレームのDuration/IDフィールドからNAVを張る、という動作になる。無線基地局1が該フレームのDuration/IDフィールドに、無線端末101とのフレーム交換が終了するまでの時間を書き込んでおくことにより、無線端末102に対して帯域予約をしたことになり、無線端末102はその後の応用の送信フレームを受信復号できなくても、仮想的なキャリアセンスを働かせ、無線基地局1と無線端末101とのフレーム交換を妨害しないことになる。
図12〜図15は第1の実施形態から第5の実施形態の図5〜図8に対応する。図中では無線基地局1と無線端末101に対し、基本及び応用の送受信方式に対応すると記述してあるが、本実施形態では受信方式は応用の受信方式のみに対応するのでよいことになる。
IEEE 802.11無線LANシステムでは、図12のようにRTSフレームを受信し、NAVを設定した無線端末では、該RTSフレームの受信終了時点(PHY-RXEND.indicationがPHY層からMAC層に通知された時点)から(2 ×SIFS) + (CTS_Time) + (2 × Slot)の間にPHY層で受信復号が可能なフレームを受信開始したという信号(PHY-RXSTART.indication)がMAC層に通知されることがないと、設定していたNAVを解除することが許されている。ここで、SIFS (short interframe space)は応答の制御フレームを送信するときなどに使用されるフレーム間でとる最短の時間単位である。CTS_Timeとは、CTSフレームのエア上で占有する時間であり、RTSを受信したときのレートとCTSフレームのフレーム長から推定される時間である。Slotとは、PHY層に応じて規定される時間単位であり、エアがビジーかアイドルかCCA (Carrier Channel Assessment)メカニズムを用いて物理的なキャリアセンスを行うことのできる最短の時間(CCATime)とPHY層が受信から送信に切り替えるまでの最長の要求時間(RxTxTurnaroundTime)と送信信号が送信端末から受信端末に到達するまでの予想所要時間(AirPropagationTime)とMAC層がフレームを処理して応答フレームをPHY層に渡すまでの名目時間(MACProcessingDelay)の和で与えられるものである。
従って、図12で例えば応用の送信方式としてMIMO変調を行う方式が使われ、無線端末102で受信方式としてMIMO復調を行う方式に対応できない場合にMIMO変調を用いたCTSフレーム (ここではCTSフレームに受信状況に関係する情報を付加したフレームとしてCTS’フレームとなっている)やDataフレームを受信すると、受信信号のPHYヘッダー部のプリアンブル構成によっては、PHY-RXEND.indicationを生成してMAC層に通知することができない。従って無線端末102でNAVを解除してしまう恐れがある。その後、無線基地局1と無線端末101がフレーム交換中に送信電力制御により送信電力を落とした場合、無線端末102は物理的なキャリアセンスで該フレーム交換を検出することができず、フレームを送信して無線基地局1と無線端末101の間の通信を妨害してしまうことが考えられる。このような無線端末102でのNAVの解除に伴う問題を回避するためには、MIMO変調された信号のPHYヘッダー部のプリアンブル構成がMIMO変調されない信号のPHYヘッダー部のプリアンブル構成と互換性を持つことが望ましい。
IEEE 802.11 MACでは、制御系の応答フレームの送信レートに制約がある。応答の元となるフレームと同一のPHYオプション(つまり、IEEE 802.11でのPHY規格のいずれかであり、例えば802.11a OFDMや802.11 DS-SSなど)で、BSS Basic Rate Setのうちそれ以下の最大の伝送レートを選択することになっている。BSS Basic Rate Setとは、BSSで必ず送受信をサポートしていなくてはならない伝送レートであり、前述のOperational Rate Setと同様、BeaconやProbe Responseフレームで通知されている。
MIMO伝送においては、空間多重により伝送速度をアンテナ数倍に拡張するSDM (Space Division Multiplexing)方式(図25(a))や、速度は変えずに送信ダイバーシチ効果を得るSTC (Space Time Coding)方式(図25(b))が挙げられる。例えば送信アンテナ数が1のOFDMのBSS Basic Rate Setが6、12、24、36Mbpsであるとした場合、SDM方式において送信アンテナ数が1から3まで規定されていれば、MIMO-OFDMの伝送レートとして、先の6、12、24、36 Mbpsを2倍もしくは3倍に拡張した伝送レートの中からBSS Basic Rate Setを決定することができる。この場合、例えばMIMO-OFDMでの伝送レートは6×M、12×M、24×M、36×M Mbps (M=送信アンテナ数)のようになり、この中からMIMO用のBSS Basic Rate Setは6×2、6×3、24×2、24×3 Mbpsのように規定できる。ここで、6×2Mbpsは12Mbpsに等しいが、送信アンテナ数を2として、6Mbpsのストリームを2多重することを明示的に表記したものである。一方STC方式の場合、例えば2アンテナ送信でも伝送速度は拡張されないため、6(STC)、12(STC)、24(STC)、36(STC) MbpsのようにMIMO-OFDMの伝送レートを規定することになる。
そこで、応用の送信方式としてMIMOを想定する本実施形態では、応用の送信方式のうち最低の伝送レートは、SDM方式では6×2 Mbps、STC方式では6 Mbpsとなる。
先のCTSの伝送レートとしての制約を、本実施形態では応答の元となるフレームに後方互換を持つPHYオプションでの最低の伝送レートに変えることになる。例えば802.11a OFDMとMIMOとを用いるシステムで、RTSを54 Mbps OFDMで送信、例えばBSS Basic Rate Setが6、12、24、36 Mbps OFDMと例えばMIMO-OFDMでSDM方式を用いた、6×2、6×3、24×2、24×3 Mbps MIMO-OFDMという場合、CTSは本来は36 Mbps OFDMで送信するが、ここでは6×2 Mbps MIMO-OFDMを使用することになる。
RTSのDuration/IDフィールドに基づき、CTSのDuration/IDを計算するときの誤差を小さくするために、RTSのDuration/IDフィールドは以降がMIMOで送信されることを加味した計算に基づき設定してもよい。
ここで、MIMO伝送においては、単一アンテナからの送信と同じく低レート(BPSK (Binary Phase Shift Keying)のように低次の変調方式で、かつ符号化率が低い)の方が誤り耐性に優れている。そのため、CTS送信の際に選択される伝送速度は、誤り耐性という点で、BSSの中でアンテナあたりの伝送速度が最も低いものを選択することになる。アンテナあたりの伝送速度が同じである場合、STC方式を用いる方が誤り耐性が高いため、STCを用いた伝送速度がCTS送信に選択される。
一方、CTSをMIMO化して伝送路状態を把握するためには、CTS送信の際の送信アンテナ数は、情報が誤らない程度にできる限り多くのアンテナから送信を行うことが望ましい。例えば3アンテナを備えた無線端末がCTSを2アンテナで送信した場合、2アンテナからの伝送路は劣悪であっても、あと1つのアンテナからの伝送路が良好である可能性がある。この場合、2アンテナからのみの情報を用いる場合に比べて、3アンテナで送信した方がCTS受信側の無線端末において以降に送るデータの空間多重度を上げる判断を行うことができる。従ってこのように誤り耐性を加味しつつ、かつ利用できる最大のアンテナ数を用いてCTSを送信してもよい。
また、伝送レートを単に応用の送信方式の最低の伝送レートにするのではなく、上記IEEE 802.11でのCTSの伝送レートの制約を加味したものにしてもよい。例えば、応答の元となるフレームと同一PHYオプションでBSS Basic Rate Set内で元のフレーム以下の最大の伝送レートTxbに対し、後方互換を持つ応用のPHYオプションでのBSS Basic Rate Set内でTxb以下の最大の伝送レートTxaを選択する。
上記RTSを54 Mbps OFDMで送信、BSS Basic Rate Setが6、12、24、36 Mbps OFDMとMIMO-OFDMでSDM方式を用いた、6×2、6×3、24×2、24×3 Mbps MIMO-OFDMという場合、Txbが36 Mbpsなので、MIMO-OFDMでBSS Basic Rate Setに含まれる6×3 MbpsがTxaとなり、6×3 Mbps MIMO-OFDMでCTSフレームが送信されることになる。
図25(a)および(b)に示されるように、MIMO伝送においては、大きく分けてSDM方式とSTC方式が挙げられる。前述のように、アンテナあたりの伝送速度が低い方がCTS送信のレートとして選択されるため、例えばOFDM-MIMO BSS Basic Rate Setの6×3 Mbpsと24×3 Mbpsであれば、前者が選択される。また、アンテナあたりの伝送速度が同じである場合、例えばOFDM-MIMO BSS Basic Rate Setの6×2Mbpsと、OFDM-MIMO BSS Basic Rate Setの6(STC) Mbpsでは、CTS送信の際には誤り耐性の高い後者が選択される。しかし、6×2 Mbpsと12(STC) Mbpsの場合は、アンテナあたりの伝送速度は前者の方が低いが、一概にどちらが誤り耐性が高いとは言えない(前者がBPSKの2多重、後者がQPSKのSTCとなるため)。この場合は運用ポリシーに依存するが、OFDM-MIMO BSSとして6(STC) Mbpsを入れるなどして明らかに誤り耐性の一番高いものを導入しておくことが通常である。
BSS Basic Rate Setが6、12、24、36 Mbps OFDMとMIMO-OFDMでSTC方式を用い、2アンテナの6(STC)、12(STC)、24(STC)、36(STC)、3アンテナの6(STC)、12(STC)、24(STC)、36(STC) Mbps MIMO-OFDMという場合に、RTSを54 Mbps OFDMで受信すると、IEEE 802.11 MACの制約からは36 Mbps OFDMで送信することになるが、ここで、3アンテナの36(STC) Mbps MIMO-OFDMとすることもできる。これによると、既存の802.11 MACの制約に準じつつ、もっとも頑健な送信方式を選択することができる。
以上のように、応用の送信方式に対しては応用の受信方式でしか受信復号できない制限下で、基本の受信方式にしか対応しない無線端末が存在する場合でも、該無線端末に帯域予約をさせ、安定した通信を確保することができる。
また、基本の受信方式にしか対応しない無線端末が同一BSSに属すると認識していない、あるいは通信エリアが(一部)重なっている別のBSSの無線端末が存在する場合でも、該無線端末に対し予防策を講じることになり、安定した通信を確保することができる。
特に、MIMO変調を応用の送信方式とした場合にも、上記効果が得られる。また、MIMO変調において、フレーム交換の信頼性を高めることもできる。さらに、データ送信側でのデータの空間多重度を上げる判断を加味しても上記効果が得られる。
(第7の実施形態)
本実施形態は基本的には第1の実施形態から第6の実施形態に基づくので、以下では本実施形態がこれらの実施形態と異なる点を中心に説明する。本実施形態が上記元になる実施形態と異なる点は、無線通信システム、例えばIEEE 802.11無線LANシステムにおけるBSSやESSなどの単位で、該システムを構成する無線端末(無線基地局を含む)が全て応用の送受信方式に対応する場合に、フレーム交換を行う相手無線端末以外の無線端末に帯域予約をさせるためのフレームを応用の送信方式で送信することである。
該システムを構成する無線端末(無線基地局を含む)において、応用の受信方式には全ての無線端末が対応するが、送信方式に関しては応用の送信方式を具備しない無線端末が存在するとしてもよい。
例えば、図10の構成をとる無線通信システムで、無線基地局1と無線端末101、102が応用の送受信方式に対応する場合を考える。図16のように、応用の送受信方式を具備する無線端末間、無線基地局1と無線端末101で、RTS-CTS’-…のフレーム交換を応用の送信方式で行う。無線端末102は応用の送信方式を受信復号できるので、応用の送信方式で送信されたRTSフレームを受信復号し、仮想的なキャリアセンスであるNAVを設定することになる。
無線基地局1と無線端末101が応用の送受信方式に対応し、無線端末102は応用の受信方式にのみ対応する場合でも、図16のように無線基地局1と無線端末101の間でのフレーム交換では同様の動作を無線端末102は行い、同様の効果がある。
また、第1の実施形態で記述したように、RTS-CTS’-のフレーム交換部分を省略し、フレーム交換の最初を応用の送信方式で送信するDataフレームにし、応用の送信方式で応答するACKフレームに受信状況に関係する情報を付加する(ACK’フレーム)ようにしてもよい。また、RTS-CTS’-Data-ACK’-…というようにフレーム交換して受信状況に関係するフレームの通知を頻繁にDataフレーム送信側に上げるようにしてもよい。
本実施形態における応用の送信方式は、例えば第6の実施形態で記述した複数の送信アンテナより信号を送信する送信方式である。応用の受信方式は複数の送信アンテナより送信された信号を受信復号できる受信方式である。このような複数のアンテナから信号を送信する通信方式として、MIMOがある。その場合、応用の送信方式がMIMO変調であり、応用の受信方式がMIMO復調となる。
ここで、バースト送信するフレーム交換内での最初の応用の送信方式で送信するフレームの伝送レートとして、最低の伝送レートもしくはもっとも頑健な送信方法を選択することにより、その後のバースト伝送を継続するための信頼性を高めることができる。
以上のように、基本の送信方式を送信する必要がないときに、応用の送信方式でフレーム交換を開始して、通信効率を上げ、かつバースト伝送を継続するための信頼性を高めることができる。
(第8の実施形態)
本実施形態は基本的には第6の実施形態に基づくので、以下では本実施形態が第6の実施形態と異なる点を中心に説明する。本実施形態が第6の実施形態と異なる点は、第6の実施形態では帯域予約を他無線端末に行わせるために送信されたフレームの実際の送信先である無線端末が、受信状況に関係する情報を該フレームの送信元無線端末に通知するのに対し、本実施形態では、受信状況に関係する情報を通知する無線端末をそれに限定しない点である。
図10のような無線通信システムの構成をとる場合を例にする。無線基地局1と無線端末101は基本及び応用の送受信方式に対応し、無線端末102は基本の送受信方式にのみ対応するものとする。あるいは、無線基地局1と無線端末101は基本及び応用の送信方式と応用の受信方式に対応し、無線端末102は基本の送受信方式にのみ対応し、応用の受信方式では、基本の送信方式により送信された信号を受信復号できるものとしてもよい。
例えば、図17のように、無線基地局1が無線端末101に送信権を与えるフレーム(IEEE 802.11規格におけるCF-PollフレームやIEEE 802.11e規格におけるQoSCF-Pollフレームなど。ここでは総じてPollフレームと記述)を基本の送信方式で送信し、それを受信した無線端末102ではPollフレームにより、指定された期間のNAVを設定する。無線端末101はPollフレームにより送信権を獲得すると、無線基地局1に対し、RTSフレームを応用の送信方式で送信し、無線基地局1は該RTSフレームの応答として受信状況に関係する情報(I_rx)を付加したCTSフレーム(CTS’フレーム)を応用の送信方式で送信する。無線端末101は該受信状況に関係する情報を無線基地局1から得ることにより、次のDataフレーム送信における送信方法を制御することができる。無線基地局1は無線端末101からのDataフレームに対する応用フレームであるACKフレームに受信状況に関係する情報を付加して送信(ACK’フレーム)してもよい。またPollフレーム受信後のRTS-CTS’-のフレーム交換を省略して、Data-ACK’-だけを行ってもよい。
図17では、無線端末101が無線基地局1に対し、RTSを送信しているが、例えば応用の送受信方式に対応する他の無線端末(ここでは例えば無線端末104とする)に送信してもよい。無線端末104は無線端末101から応用の送信方式で送信されたRTSフレームを受信すると、該RTSフレームの応答として受信状況に関係する情報を付加したCTS’フレームを応用の送信方式で送信するなど、Pollフレームを自局から送信するか否かを除いては上記無線基地局1での動作と同様になる。
また、図18のようにまず帯域予約のためのRTSフレームを送信し、CTS応答が返った後で、Pollフレームを送信する際に受信状況に関係する情報を通知することもできる。この場合は、CTSフレームの受信状況に関係する情報をPollフレームで送信することになり、Pollフレームを送信した先の無線端末101が無線基地局1に対して送信する場合にしか、つまりアップリンク伝送するときにしか該情報を活用できない、という制約はある。
またIEEE 802.11無線LANシステムなどでは予め帯域予約する期間(Contention Free Period; CFP)を設定できる機構がある。例えば、BeaconフレームやProbe Responseフレームの中にCF Parameter Set elementというフィールドを入れることができ、何周期でいつからどれだけの期間CFPが張られるかを通知できる。これによって、無線端末は予めCFP開始の時点を把握し、NAVを設定する。これは、IEEE 802.11無線LANシステムにおけるPoint Coordination Function (PCF)という機能を利用するような場合である。例えばIEEE 802.11e規格ではCFPはBeaconフレームやProbe Responseフレーム以外のフレームでも設定することができる。CFPでは、無線基地局からPollフレームを受信したときのみ、データフレーム(広義)を送信できる。この機構を利用することによって、基本の受信方式にしか対応しない無線端末が存在していても、該無線端末に帯域予約をさせた上では、送信権を持つ無線端末はフレーム交換の最初に帯域予約用のフレームを送信することなく、第7の実施形態のように応用の送信方式でフレーム交換を開始することができる。
ここで、バースト送信するフレーム交換内での最初の応用の送信方式で送信するフレームの伝送レートとして、最低の伝送レートもしくはもっとも頑健な送信方法を選択することにより、その後のバースト伝送を継続するための信頼性を高めることができる。
以上のように、帯域予約フレームの送信先無線端末でなくても、受信状況に関係する情報を他無線端末に通知することができ、かつその後のバースト伝送を継続するための信頼性を高めた通信を開始することができる。
(第9の実施形態)
本実施形態は基本的には第7の実施形態と同様であるので、以下では本実施形態が第7の実施形態と相違する点を中心に、説明する。本実施形態が第7の実施形態と異なる点は、第7の実施形態が帯域予約を行うフレームと受信状況に関係する情報を付加したフレームが別に存在するのに対し、受信状況に関係する情報を付加したフレームの送信で済ませることである。
第7の実施形態のように、無線通信システム、例えばIEEE 802.11無線LANシステムにおけるBSSやESSなどの単位で、該システムを構成する無線端末(無線基地局を含む)が全て応用の送受信方式に対応する場合や、該システムを構成する無線端末(無線基地局を含む)において、応用の受信方式には全ての無線端末が対応するが、送信方式に関しては応用の送信方式を具備しない無線端末が存在する場合を考える。
例えば図10の構成をとる無線通信システムで、無線基地局1と無線端末101が応用の送受信方式に対応し、少なくとも無線端末102が応用の受信方式に対応する場合を考える。図19のように、無線基地局1が無線端末101から過去に受信したフレームについての受信状況に関係する情報を付加したPollフレーム(Poll’フレーム)を応用の送信方式で無線端末101に送信する。無線端末102は無線基地局からのPoll’フレームを受信復号することができるので、NAVを設定し、その後の無線基地局1と無線端末101のフレーム交換を妨害しない。
この場合、Pollフレームを送信した先の無線端末101が無線基地局1に対して送信する場合にしか、つまりアップリンク伝送するときにしか無線端末101は該情報を活用できない、という制約はある。
ここで、受信状況に関係する情報を付加したPollフレーム(Poll’フレーム)を送信する際、応用の送信方式のうち最低の伝送レートを、あるいは応用の送信方法のうちもっとも頑健な送信方法を選択して送信する。
ここで、Poll’フレームで送信する、過去の無線端末101からのフレーム受信状況に関係する情報の取得・保持方法は第5の実施形態で説明した取得・保持方法を参照することができる。図9において、基本の送信方式で送信されるCTS selfフレームを省略することができる。
図19の代わりに、図20のようにPoll’フレーム受信後に無線端末101からさらにRTSフレームを無線基地局1に対して送信して、無線基地局1から該RTSを受信した際の受信状況に関係する情報をCTSフレームで通知してもらうようにしてもよい。このようにすれば、受信状況に関係する情報の精度を無線端末101が主体となって上げることができる。
また図21のように、無線基地局1が受信状況に関係する情報を付加したRTSフレームを無線端末101に通知した後、無線端末101からCTSフレームを受信することにより、受信状況に関係する情報の精度を上げ、その後Poll’フレームで該情報を再度通知するようにしてもよい。図21の場合は、受信状況に関係する情報の精度を無線基地局1が主体となって上げる例となる。
ここでRTSに受信状況に関係する情報を付加したことにより、新規フレームとしての扱いになり、前述のSubtypeを別に規定しても良い。そのため図では、RTS’’と記述してある。
この場合は、受信状況に関係する情報を付加したRTSフレーム(RTS’’フレーム)を送信する際、応用の送信方式のうち最低の伝送レートを、あるいは応用の送信方法のうちもっとも頑健な送信方法を選択して送信する。
また、無線基地局1から無線端末101宛てのダウンリンクのDataフレームを送信する際に、受信状況に関係する情報を付加して送信(Data’フレーム)してもよい。無線端末101はACKフレームを応答として返すときや、後に無線基地局1からPollフレームを受信してDataフレームを送信するときや、自主的にDataフレームを送信するときなどに、該情報を送信制御に用いることができる。逆に無線端末101から他の無線端末(無線基地局を含む)にData’フレームを送信して、受信先の無線端末で該情報を送信制御に用いることもできる。
この場合は、受信状況に関係する情報を付加したDataフレーム(Data’フレーム)を送信する際、応用の送信方式のうち最低の伝送レートを、あるいは応用の送信方法のうちもっとも頑健な送信方法を選択して送信する。
本実施形態の応用の送信方式は、第7の実施形態でも記述したように、例えば第6の実施形態で記述した複数の送信アンテナより信号を送信する送信方式である。応用の受信方式は複数の送信アンテナより送信された信号を受信復号できる受信方式である。このような複数のアンテナから信号を送信する通信方式として、MIMOがある。その場合、応用の送信方式がMIMO変調であり、応用の受信方式がMIMO復調となる。
以上のように、周辺無線端末が全て応用の受信方式に対応するなど基本の送信方式を送信する必要がないときに、受信状況に関係する情報を付加したフレームを応用の送信方式でかつフレーム交換の開始フレームとして送信し、通信効率を上げ、かつバースト伝送を継続するための信頼性を高めることができる。
(第10の実施形態)
本実施形態は基本的には第8の実施形態と同様であるので、以下では本実施形態が第8の実施形態と相違する点を中心に、説明する。本実施形態で第8の実施形態と異なる点は、予め他の無線端末に対し帯域予約させた後に、第8の実施形態では応答フレームに受信状況に関係する情報を付加するのに対し、フレーム交換を開始するフレームに第9の実施形態のように受信状況に関係する情報を付加することである。
無線通信システムの構成としては図10を例に挙げる。例えば、図22のように基本の受信方式にしか対応しない無線端末102が存在する下で、BeaconフレームのCF Parameter Set elementを用いて予め無線端末102にNAVを設定させておく。無線端末101も同様にCFPのNAVを設定する。図22ではBeaconフレームの開始時点とCFPと認識してNAVを設定する時点が同一になっているが、Beaconフレームの開始時点はエアがビジーなどの状況により、遅れることがある。無線端末は前のBeaconフレームにより、次のCFP開始時点を把握する。このように予め無線端末に対し帯域予約させてから、応用の送信方式で受信状況に関係する情報を付加したRTSフレーム(RTS’’フレーム)を用いてフレーム交換を開始することができる。NAVが設定された無線端末101でも、自局宛RTSフレームの送信元端末が無線基地局であると認識することで、NAV下でもCTS応答を許可するようにできる。IEEE 802.11e規格などでは、送信権を獲得している無線端末からのRTSフレームにはNAV下でもCTS応答をするようになっている。
この場合、受信状況に関係する情報を付加したRTSフレーム(RTS’’フレーム)を送信する際、応用の送信方式のうち最低の伝送レートを、あるいは応用の送信方法のうちもっとも頑健な送信方法を選択して送信する。
以上のように、帯域予約された期間内で基本の送信方式を送信する必要がないときに、受信状況に関係する情報を付加したフレームを応用の送信方式でかつフレーム交換の開始フレームとして送信し、通信効率を上げ、かつバースト伝送を継続するための信頼性を高めることができる。
(第11の実施形態)
本実施形態は基本的に第1の実施形態から第10の実施形態と同様であるので、以下ではこれらの実施形態に付加する点を中心に、説明する。本実施形態が第1の実施形態から第10の実施形態に付加する点は、フレームの受信状況に関係する情報を例えば受信フレームの受信電界強度とすることである。
他の無線端末から受信電解強度を通知された無線端末はこれを用いて該他の無線端末との間の伝送路特性を推定し、該他の無線端末に対しフレームを送信するときに、フレームの送信制御に反映することができる。図10の無線通信システムの構成をとる場合を例に用いて説明する。図12のようにフレーム交換を行う場合、無線端末101は無線基地局1からのRTSフレームを受信した際の受信状況に関係する情報として、例えば受信電解強度をその送信元無線端末の識別子、IEEE 802.11無線LANシステムではMACアドレスや、AID (Association ID)などといったもの、とテーブルとして保持しておく。保持する際には、表1のようなものを用いてもよい。
無線端末にフレームを送信する際に、この表を参照し、送信先の無線端末に対応する情報、ここでは受信電界強度、を送信フレームの受信状況に関係する情報として割り当てられたフィールドに書き込み、送信する。
受信電界強度は、実際の受信電界強度の電力値として通知するのでもよいし、何らかの法則に基づいて定めたレベル値であってもよい。また第5の実施形態で記述した例のように統計的な受信電界強度を所望無線端末との間で求めるため、複数の受信フレームを観測して平均値をとるなどの処理を行ったものでもよい。
受信フレームの受信電界強度がある値以上のときに、伝送路特性が良好であると判断できるような受信電界強度の閾値を定めておき、該閾値を越えた受信電界強度か否かを情報として保持するのでもよい。例えばこのような受信電界強度が閾値を超えたか否かを先の表1の受信電界強度の項目の代わりに、1/0で表しておき、フレーム送信時には受信状況に関係する情報として割り当てられたフィールドに書き込むようにしてもよい。
受信電界強度の他、受信状況に関係する情報としては、SNR (Signal to Noise Ratio)やSIR (Signal to Interference Ratio)、SINR (Signal to Interference plus Noise Ratio)、受信EVM (Error Vector Magnitude)などといったものであってもよい。また、上記1つから導いた、あるいは複数の要素を組み合わせて推定した伝送路特性であってもよい。または上記1つから導いた、あるいは複数の要素を組み合わせて算出した、受信機性能での限界レベルまでのマージンであってもよい。
他の受信状況に関する情報としては、各アンテナ間の伝送路値から算出される空間相関といったものであってもよい。この空間相関値は、受信した信号がMIMO伝送されたものであった場合、MIMO伝送のために構築された伝送路推定用の既知信号により求められる。空間相関値により、受信機は利用できる空間多重数を判別することができ、その値を受信状況に関する情報としてもよい。前記の既知信号は、MIMO伝送されていれば、データ信号に先立って送信されているため、前記空間相関値は、MIMO伝送を行った時点で得られる情報であり、結果的に受信状況に関係する情報を通知することになる。
また、受信した際のレート情報も、受信電界強度やSNR、SIR、SNIR、受信EVMなどと組み合わせて保持、フレーム送信時に受信状況に関係する情報として割り当てられたフィールドにその組を書き込むようにしてもよい。
テーブルの情報は該情報を生成する元になったフレームの受信時点から経過した時間に応じて廃棄もしくは初期化するなどのエージング(aging)処理を施してもよい。
以上のように、第1の実施形態から第10の実施形態においてフレームの受信状況に関係する情報をより明確化することができる。これにより、受信状況に関係する情報として具体的な指標を通知された無線端末では該情報を、該情報を通知した無線端末との間の伝送路推定に用いることができ、フレームの送信制御の精度を向上させ、該無線端末との間の通信品質の向上を図ることができる。
(第12の実施形態)
本実施形態は基本的に第11の実施形態と同様であるので、以下では第11の実施形態と相違する点を中心に説明する。本実施形態が第11の実施形態と異なる点は、フレームの受信状況に関係する情報を例えば受信フレームの誤り率とすることである。
フレームの誤り率とは、例えばPHY層でのビットエラーレート、パケットエラーレート、フレームエラーレートでもよいし、MAC層でのCRCエラーでもよい。
ビットエラーレート、パケットエラーレート、あるいはフレームエラーレートでは、第5の実施形態で記述した例のように複数の受信フレームを観測して求められる。
また、誤り率に対する閾値を定めておき、この求めた誤り率と該閾値を比較し、該閾値を越えたか否かを情報として保持するのでもよい。保持するテーブルとしては、表1の受信電界強度の項目の代わりに、誤り率の値や、閾値を越えたか否かの1/0情報が書き込まれることになる。
CRCエラーを受信状況に関係する情報として用いる場合には、該当する無線端末からの最新の受信フレームについてのCRCエラーの有無を用いるようにしてもよいし、第5の実施形態で記述した例のように複数の受信フレームを観測してその発生の比率を用いるようにしてもよい。
また、受信した際のレート情報も、誤り率と組み合わせて保持、フレーム送信時に受信状況に関係する情報として割り当てられたフィールドにその組を書き込むようにしてもよい。
以上のように、第1の実施形態から第10の実施形態においてフレームの受信状況に関係する情報をより明確化することができる。これによって、受信状況に関係する情報として具体的な指標を通知された無線端末では該情報を、該情報を通知した無線端末との間の伝送路推定に用いることができ、フレームの送信制御の精度を向上させ、該無線端末との間の通信品質の向上を図ることができる。
(第13の実施形態)
本実施形態は基本的に第1の実施形態から第10の実施形態と同様であるので、以下ではこれらの実施形態に付加する点を中心に説明する。本実施形態で第1の実施形態から第10の実施形態に付加する点は、受信状況に関係する情報(I_rx)の利用用途を規定する
ことである。該情報はそれを受け取った無線端末での送信制御情報となる。
第1の実施形態から第10の実施形態では、受信状況に関係する情報(I_rx)について、該情報を通知された無線端末ではこれを次に送信するフレームの送信制御に用いると説明したが、本実施形態では例えば送信レートの調整に用いる。また、送信するフレームの送信電力の調整に用いてもよい。あるいは、第6の実施形態に記述したMIMOシステムにおける送信アンテナ数の調整に用いてもよい。受信状況に関係する情報(I_rx)としては、例えば第11の実施形態や第12の実施形態に記述されたような情報を用いる。
無線基地局1の内部における送受信部の構成を図23に示す。
無線基地局1は少なくともアンテナ10と受信部11と受信制御部12と情報処理部13と送信制御部14と送信部15とから構成されている。情報処理部13は、例えば、ユーザの操作により送信データを作成したり、送信データの送信が指示されると(送信要求が生ずると)、これを受けて送信データを送信制御部14へ渡す。この送信データは例えば、IPパケットであってもよい。送信制御部14は、他の無線基地局へあるいは無線端末へbroadcast、multicast、unicastで送信するフレームの生成等の、例えばIEEE 802.11標準規格(及びそのamendmentやrecommended practiceなどとして位置付けられる標準規格も含む)に準拠した所定の送信処理などを行う。ここで生成された、例えばIEEE 802.11で規定するMACフレームのデジタルデータは、送信部15を通じて所定周波数の無線信号に変換された後、アンテナ10から送信信号として他の無線基地局あるいは無線端末へ送信される。情報処理部13は、有線ネットワーク16と接続していてもよく、有線ネットワークからデータが入力されると、該データが他の無線基地局あるいは無線端末宛ての場合、同様にデータを処理して送信信号として出力される。
アンテナ10から入力された受信データは受信部11で復調及び復号を含む処理によって受信信号を生成し、それが受信制御部12に入力されると、例えばIEEE 802.11規格に準拠した所定の受信処理などが行われる。受信制御部12で受信信号はデジタルデータとしてのMACフレームに変換され、このMACフレーム中のデータフィールドから受信データを抽出して情報処理部13へ渡す。この場合、情報処理部13は、受信データをディスプレイに表示する等の処理を行う。なお、情報処理部13は、上記以外にも各種情報処理を行うようになっていてもよい。また、情報処理部13が有線ネットワーク16に接続していて、該受信データが有線ネットワーク16上に接続する他の無線基地局など他端末宛ての場合、情報処理部13から有線ネットワーク16宛てにデータを出力される。
無線基地局1は受信制御部12で例えば無線端末101からの受信情報に関係する情報(I_rx)を取得して、送信制御部14に通知し、送信制御部14では無線端末101宛てのフレームを送信する際に、該フレームの送信制御に用いる。例えば、送信制御部14では、各無線端末からの受信状況に関係する情報(I_rx)をテーブルとして保持しておく。その例を表2に示す。これは、第11の実施形態で示した、無線端末側の受信機の性能の限界レベルとのマージンの有無を1/0で取った例である。
受信フレームから取得した受信状況に関係する情報をそのままテーブルに保持するのではなく、受信側無線端末で情報を加工・処理してからテーブルに保持するのでもよい。このようにすると、送信制御を行う側の無線端末にとって活用しやすい情報が保持できるようになる。例えば、受信状況に関係する情報がアナログ的に表現されてきたとき(実際の受信電界強度の電力値など)、それをレベル値に変換したり、閾値を定めてそれを上回るか否かなどの情報に変換してもよい。
例えばその送信制御は送信レートの調整である。また、送信するフレームの送信電力を調整するのでもよい。あるいは、第6の実施形態に記述したMIMOシステムにおける送信アンテナ数の調整に用いてもよい。そうした送信制御により決定した送信時に用いるパラメータのみを無線端末の識別子とともにテーブルに記述しておくのでもよい。
テーブルの情報は該情報を取得したフレームの受信時点から経過した時間に応じて廃棄もしくは初期化するなどのエージング(aging)処理を施してもよい。
無線端末101の内部における送受信部の構成を図24に示す。無線端末101は少なくともアンテナ100と受信部101と受信制御部102と情報処理部103と送信制御部104と送信部105とから構成されている。
情報処理部103は、例えば、ユーザの操作により送信データを作成したり、送信データの送信が指示されると(送信要求が生ずると)、これを受けて送信データを送信制御部104へ渡す。この送信データは例えば、IPパケットであってもよい。送信制御部104は、無線基地局へあるいは他の無線端末へbroadcast、multicast、unicastで送信するフレームの生成等の、例えばIEEE 802.11に準拠した所定の送信処理などを行う。ここで生成された、例えばIEEE 802.11で規定するMACフレームのデジタルデータは、送信部105を通じて所定周波数の無線信号に変換された後、アンテナ100から送信信号として無線基地局あるいは無線端末へ送信される。
アンテナ100から入力された受信データは受信部101で復調及び復号を含む処理によって受信信号を生成し、それが受信制御部102に入力されると、例えばIEEE 802.11に準拠した所定の受信処理などが行われる。受信制御部102で受信信号はデジタルデータとしてのMACフレームに変換され、このMACフレーム中のデータフィールドから受信データを抽出して情報処理部103へ渡す。この場合、情報処理部103は、受信データをディスプレイに表示する等の処理を行う。なお、情報処理部103は、上記以外にも各種情報処理を行うようになっていてもよい。
無線端末101の受信制御部102と送信制御部104での受信情報に関係する情報(I_rx)の処理は無線基地局1の受信制御部12と送信制御部14での処理と同様である。
以上のように、受信状況に関係する情報を通知された無線端末では該情報を、該情報を通知した無線端末との間の伝送路推定に用いることができ、フレームの送信制御の精度を向上させ、該無線端末との間の通信品質の向上を図ることができる。
(第14の実施形態)
本実施形態は基本的には第1の実施形態、第2の実施形態、第6の実施形態、第7の実施形態、第8の実施形態に基づくので、以下では本実施形態がこれら実施形態に付加する点を中心に説明する。本実施形態が第1の実施形態、第2の実施形態、第6の実施形態、第7の実施形態、第8の実施形態に付加する点は、以前にある無線端末から受信状況に関係する情報(I_rx)を受信した時点から経過した時間がある閾値を越えた場合に、受信状況に関係する情報(I_rx)を付加したフレームの送信を誘導するようなフレームを送信することである。
例えば、図5を例にとると、無線端末101からの受信状況に関係する情報(I_rx)を以前受信した時点からある閾値を越えた時間経過した場合に、RTSフレームを生成し、送信する、というような動作になる。図6のRTS’フレームや、図7のPollフレーム、図12のRTSフレーム、図13のRTS’フレーム、図14のPollフレーム、図16のRTSフレーム、図17のRTSフレームなどにも同様に適用することができる。
以前にある無線端末から受信状況に関係する情報(I_rx)を受信した時点から経過した時間がある閾値を越えたかの判断とそれに伴う受信状況に関係する情報(I_rx)を付加したフレームの送信を誘導するようなフレームの生成は、無線基地では図23の送信制御部14が保持するテーブル内に受信制御部12から受信フレームの受信終了時刻の通知を記録しておき、単独で判断するか、受信制御部12が各端末ごとの受信フレームから起動するタイマーを用意するなどしてそれが切れた(閾値時間を越えた)時点で送信制御部14に通知し、送信制御部14が誘導フレームを生成するような連携した処理を行い、実現する。無線端末でも無線基地局の場合と同様、図24の送信制御部104が単独で、もしくは受信制御部102と連携して誘導フレームの生成を行う。
以上のように、以前にある無線端末から受信状況に関係する情報(I_rx)を受信した時点から経過した時間がある閾値を越えた場合に、受信状況に関係する情報(I_rx)を付加したフレームの送信を誘導するようなフレームを送信することにより、受信状況に関係する情報(I_rx)を効率的に受け取ることができる。
(第15の実施形態)
本実施形態は基本的には第4の実施形態、第5の実施形態、第6の実施形態、第9の実施形態、第10の実施形態に基づくので、以下では本実施形態がこれら実施形態に付加する点を中心に説明する。本実施形態が第4の実施形態、第5の実施形態、第6の実施形態、第9の実施形態、第10の実施形態に付加する点は、以前にある無線端末から受信したフレームに基づき受信状況に関係する情報を生成した時点から経過した時間がある閾値以内なら、該受信状況に関係する情報を該無線端末に対して送信するフレームに付加することである。
例えば、図8を例にとると、無線端末101から受信したフレームに基づき受信状況に関係する情報を生成した時点からある閾値以上に経過してしまうと、該情報を無線端末101にPoll’フレームで送信しても無線端末101側でフレームの送信制御に有益な情報にならない。従って、定めたある閾値時間以内であればPoll’フレームとして受信状況に関係する情報を付加して無線端末101に送信する、というような動作である。図9のPoll’フレーム、図15のPoll’フレーム、図19のPoll’フレーム、図20のPoll’フレーム、図21のRTS’’フレーム、図22のRTS’’フレームなどにも同様に適用することができる。
以前にある無線端末から受信したフレームに基づき受信状況に関係する情報を生成した時点から経過した時間がある閾値以内かの判断と、それに伴い該受信状況に関係する情報を該無線端末に対して送信するフレームに付加する処理は、無線基地では図23の送信制御部14が保持するテーブル内に受信制御部12から受信フレームの受信終了時刻の通知を記録しておくか、該情報を生成した時刻を記録しておいて閾値時間が経過したかを単独で判断し、経過した場合にテーブルから該情報を削除するか、受信制御部12が各端末ごとの受信フレームから起動するタイマーを用意するなどしてそれが切れた(閾値時間を越えた)時点で送信制御部14に通知し、送信制御部14がテーブルから該情報を削除するような連携した処理を行い、実現する。
今までに引用したフレーム交換の図の例では、無線端末101から受信状況に関係する情報を送信フレームに付加するものは出てこなかったが、第9の実施形態に記述したようにそのような場合もある。そのような場合、無線端末でも無線基地局の場合と同様、図24の送信制御部104が単独で、もしくは受信制御部102と連携して該当する受信状況に関係する情報をテーブルから削除する処理を行う。
以上のように、以前にある無線端末から受信したフレームに基づき受信状況に関係する情報を生成した時点から経過した時間がある閾値以内なら、該受信状況に関係する情報を該無線端末に対して送信するフレームに付加することにより、受信側無線端末にとって有益な受信状況に関係する情報(I_rx)を送信することができ、効率化を図ることができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。