JP4885862B2 - クラミドモナスでのii型nad(p)h脱水素酵素の異種発現による水素の産生 - Google Patents

クラミドモナスでのii型nad(p)h脱水素酵素の異種発現による水素の産生 Download PDF

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Description

本発明は、クラミドモナス・ラインハーディ(Chlamydomonas reinhardtii)による水素産生の改良に関する。
水素は、化学産業の必須の原料であり、次の10年間に主要な役割を演じると考えられる燃料でもある。水素供給燃料電池は、空気中の酸素との水素の反応を介して、廃棄物として蒸気のみを産生しながら、汚染しない方法で電力を産生することを可能にする。燃料電池の分野での技術的進歩により、それらの大規模での使用が予見できるようになっている。
しかし、現在用いられている水素の大部分は、石油又は炭素のような化石エネルギー起源から、それ自体が汚染を生み出す技術、例えば天然ガスからの炭化水素の触媒による変換又は石油若しくは炭素の熱分解により生産されている。
よって、回復可能でクリーンな一次エネルギー原料(温室効果ガスを放出しない)から水素を産生する費用効果のよい方法が所望されているようである。
センデスムス(Scenedesmus)属、クロロコッカム(Chlorococcum)属、クロレラ(Chlorella)属(クロロコッカル(Chlorococcales)目)、ロボクラミス(Lobochlamys)属及びクラミドモナス属(ボルボカル(Volvocales)目)、例えばクラミドモナス・ラインハーディ種に属するいくつかの単細胞緑藻類は、水を電子供与体及びプロトン供与体として用いて、太陽エネルギーから水素を産生できる。
これらの藻類では、水素は、強い比活性を有する鉄ヒドロゲナーゼにより産生される。この酵素は、共通の電子輸送物質であるフェレドキシンを介して、PSI光合成電子伝達鎖に連結している。水素の産生に必要な電子は、PSII活性を介するか(経路A)、又はプラストキノンの光化学的還元を介する貯蔵炭素の使用を介するか(経路B)のいずれかによりPSIに供給できる。これらの2つの経路の概略を、図1に示す。
図1の凡例:実線で、PSII依存性の経路A;点線で、プラストキノン還元に基づく、PSII非依存性の経路B。
PSI:光化学系I;PSII:光化学系II;RuBP:リブロース1,5-ビスホスフェート;LHC:集光性複合体(light harvesting complex);FNR:フェレドキシンNADPレダクターゼ;Fd:フェレドキシン;Pc:プラストシアニン;cytb6:シトクロムb6;cytf:シトクロムf;NDH:NADH-脱水素酵素;PQ(H)2:プラストキノール;Qa:キノンa;P680及びP700:それぞれPSI及びPSIIについての反応中心。
天然の条件では、H2産生は、一過性のみの現象である。実際に、ヒドロゲナーゼは、O2に対して非常に感受性である。ここで、経路Aを介してH2の産生のための電子を供給する光化学系II内で起こる水の光分解は、ヒドロゲナーゼの迅速な阻害を誘発するO2をも産生する。
この問題を改善するために、種々の解決策が提案されている。第一の解決策は暗所での産生に基づき、その他のものは、経路Aとは異なって酸素の発生を導かない経路Bを一部分用いる光の下での産生に基づく。
例えば、米国特許第4,532,210号は、明段階(light phase)と暗段階とを交互に変える方法を記載している。明期間の間に、藻類はO2を産生し、光合成により産生された炭化水素
ベースの貯蔵を蓄積する。これらの貯蔵は、次いで、水素を産生するために、暗段階の間に嫌気条件下で用いられる。この方法は、嫌気生活を達成するために、窒素のパージを必要とする。また、この方法は、光の下での産生よりも1オーダーの大きさで低い暗所でのH2産生の効率にも制限される。
米国出願第2001/0053543号は、硫黄欠乏による光化学系IIの可逆的阻害に基づく方法を記載している。この方法は、光の下に通常の硫黄含量の培地中で、炭化水素ベースの貯蔵の蓄積を許容するように緑藻類を培養する工程と、光の下に硫黄欠乏培地中で、密閉容器内で培養する工程とを含む。光化学系IIの阻害は、光合成による酸素産生の抑制を導く。(硫黄欠乏により呼吸が阻害されていない)藻類が培地中に存在する全ての酸素を使ったときに、これらは嫌気性になり、光合成により産生した炭化水素ベースの貯蔵を用いてH2を産生する。硫黄の存在下及び非存在下での培養段階を交互に変えることにより、O2産生の明段階及びH2産生の明段階を時間的に分けることができる。
米国出願第2003/0162273号は、光化学系IIを阻害する硫黄欠乏を誘導するための代替の方法を提案している。これは、葉緑体サルフェート透過酵素の発現が抑えられた(underexpressing)遺伝子改変藻類の使用を含む。
上記の方法は、O2の産生とH2の産生とを分けることにより、鉄ヒドロゲナーゼの阻害を妨げることを可能にする。しかし、上記の3つの方法による水素の産生には、限界がある。最初の方法は、ほんのわずかの水素産生しかもたらさない比較的非効率的な現象である、暗所での藻類の発酵性の活性に基づく。第二及び第三の方法は、経路A及びBが並行して機能することに基づく。酸素の放出を伴う経路Aは、無酸素を維持するために、呼吸によるO2消費を下回るレベルを維持しなければならない。よって、経路Aは、藻類の呼吸能力に制限される。経路Bの寄与は重要であるが、制限される。
本発明の目的は、この第二経路(B)の収率を向上させることにある。この目的を持って、本発明者らは、葉緑体において、プラストキノン還元反応を刺激するためにII型NADH-脱水素酵素を用いるという考えを持っていた。
I型及びII型のNADH脱水素酵素は、電子伝達鎖のキノンを還元できる酵素である。これらは、ミトコンドリア及び細菌の呼吸鎖に連結している(KERSCHER, Biochim. Biophys. Acta 1459: 274〜283, 2000)。
I型NADH脱水素酵素(NDH-I)は、14〜約50のサブユニットを含む多量体膜貫通複合体である。この種の複合体は、NADHのみを酸化し、プロトン汲み出し活性を伴う。
II型NAD(P)H脱水素酵素(NDH-II)は、酸化還元酵素タイプの単量体酵素であり、30〜60 kDaの分子量を有し、細菌の呼吸鎖又は植物及び酵母のミトコンドリア鎖のキノンを、NADH又はNADPHを酸化することにより還元できる。植物及び藻類の光合成鎖とのそれらの関連は、提唱されているが、今日まで証明されていない。このタイプの酵素は、動物界においては証明されていない。
高等植物の葉緑体において、機能的NDH-I複合体の存在は証明されており(BURROWSら, EMBO J. 17: 868〜876, 1998; SAZANOVら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 1319〜1324, 1998; HORVATHら, Plant Physiol. 123: 1337〜1349, 2000)、NDH-IIタイプの活性の存在も提唱されている(CORNEILLEら, Biochim. Biophys. Acta 1363: 59〜69, 1998)。クラミドモナス・ラインハーディにおいて、葉緑体NDH-I複合体をコードする遺伝子は存在しない。しかし、NDH-II-タイプの活性は示唆されている(COURNACら, Int. J. Hydrog. Energy 27: 1229〜1237, 2002; PELTIER及びCOURNAC, Annu. Rev. Plant Biol. 53: 523〜550, 2002)。
よって、本発明の主題は、II型NAD(P)H脱水素酵素(NDH-II)、又は該タンパク質をコードするポリヌクレオチドの、緑藻類が水素を産生する能力を増大させるための使用である。
本発明の好ましい実施形態によると、上記の緑藻類は、単細胞の緑藻類であり、クロロコッカル、特にセンデスムス属、クロロコッカム属及びクロレラ属、並びにボルボカル、特にロボクラミス属及びクラミドモナス属から好ましくは選択される。
この実施形態の好ましい態様によると、上記の藻類は、クラミドモナス属に属する。有利には、上記の藻類は、クラミドモナス・ラインハーディ種に属する。
「NDH-II」の定義は:
a) 全てのNAD(P)H脱水素酵素に共通の特徴、すなわちi) FAD又はFMNをフラビンコファクターとして用いて、NADH又はNAD(P)Hの酸化を介して電子伝達鎖のキノンの還元を触媒する能力、及びii) その配列中にコンセンサスモチーフGxGxxG (式中、「G」はグリシンを表し、「x」は任意のアミノ酸を表し、フラビンコファクター及びNAD(P)Hのための結合部位に相当する)が存在する;
b) II型NAD(P)H脱水素酵素に特異的な特徴、すなわち30〜60 kDaのモノマー又はホモダイマーの形での活性、いずれの膜貫通プロトン輸送も行わないという事実、及びロテノン非感受性活性を有するという事実
を有する任意のフラボ酵素に与えられる。
NDH-IIに関する詳細な総説は、YAGI (J. Bioenergetics Biomembranes 23: 211〜224, 1991)、KERSCHER (Biochim. Biophys. Acta 1459: 274〜283, 2000)、及びMELOら(Microbiol Mol Biol Rev. 68: 603〜616, 2004)による総説を特に参照できる。
よって、本発明者らは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)からのNDH-II (NCBIアクセッションNo.: AI2824; SWISSPROTアクセッションNo.: Q8UDU6) (以下、Agtundh2とも言う)を用いた。この酵素をコードするヌクレオチド配列は、添付の配列表に配列番号1の番号で表し、推定ポリペプチド配列は、配列番号2の番号で表す。
本発明を行うために用いることができるその他のNDH-IIは、限定しない例として、Acidianus ambivalens (AJ489504)、Corynebacterium glutamicum (CAB41413.1)、Escherichia coli (NP_415627)、Synechocystis sp. (HOWITTら, J. Bacteriol. 181(13): 3994〜4003, 1999; ORF slr1743: BAA17783)、Zymomonas mobilis (AAD56918)、Bacillus subtilis (NP_389111)、Azotobacter vinelandi (AAK19737)、Trypanosoma brucei (AAM95239.1)、Solanum tuberosum (CAB52796.1, CAB52797.1)、Saccharomyces cerevisiae (YML120C (NP_013586)、YMR145c (NP_013865.1)、YDL085w (NP_010198.1))、Neurospora crassa (CAB41986, EAA27430)及びYarrowia lipolytica (XP_505856)からのNDH-IIである。
有利には、クラミドモナス・ラインハーディの内因性NDH-IIも用いることができる。推定のNDH-IIをコードする配列が、クラミドモナス・ラインハーディのゲノムの完全配列(バージョン2)中で、「http://genome.jgi-psf.org/chlre2/chlre2.home.html」サイトにてC_310108、C_1170009、C_5950001、C_1890016、C_1450028、C_1450029及びC_270109の識別名で同定されている。これらの配列に基づいて、本発明者らは、NDH-IIを効率的にコ
ードする配列を同定した。この配列(以下、N2Cr2という)は、添付の配列表において配列番号3の番号で表し、推定ポリペプチド配列(以下、N2Cr2という)は、配列番号4の番号で表す。
本発明者らは、配列番号3の配列のヌクレオチド199〜1857に相当するN2Cr2の断片(よって、配列番号4の配列のアミノ酸67〜619のポリペプチドをコードする)をクローニングして発現させ、この断片によりコードされるポリペプチドが、葉緑体に存在するNDH-IIに相当することを示している。
NDH-II N2Cr2、及びNAD(P)H脱水素酵素活性を示すこのタンパク質のいずれの断片、並びに該NDH-II又は該断片をコードするポリヌクレオチドも、本発明の主題の一部分である。
上記のNDH-IIのいくつかは、NADHに対して優先的な親和性を有する。ここで、葉緑体にはNADH及びNADPHが両方存在するが、主要な形を代表するのはNADPHである。葉緑体に関係し、NADHを優先的に使用するNDH-IIの効率を増大させる目的のために、本発明者らは、これらの酵素を、NADPHに対するそれらの効率を増大させるために、改変する考えを有していた。
本発明者らは、Agtundh2の部位特異的突然変異誘発を行い、NADHを優先的に用いる酵素におけるピリジン-ヌクレオチド-結合ベータ-アルファ-ベータモチーフ(「ロスマン(Rossman)モチーフ」ともよばれる)の第二のベータシートの末端に位置する酸残基 (Agtundh2の場合はグルタミン酸)を、中性で極性の残基、例えばNADPHを優先的に用いる酵素の同じ位置にある残基で置換することにより、NADPHに対するその親和性を増大できることを示している。
よって、本発明の主題は、NADHを優先的に用いるNDH-IIから、ピリジン-ヌクレオチド-結合ベータ-アルファ-ベータモチーフの第二のベータシートの末端に位置するグルタミン酸又はアスパラギン酸残基を、中性で極性の残基、好ましくはグルタミン又はアスパラギン残基で置換することにより得られる変異型NDH-IIでもある。
この残基は、例えば、Agtundh2の配列(配列番号2)の位置201、及びN2Cr2の配列(配列番号4)の位置285に相当する。
図2は、ピリジン-ヌクレオチド-結合部位のレベルでの種々のNDH-IIの配列のアラインメントを示す。ベータ-アルファ-ベータモチーフのコンセンサス配列は、配列アラインメントの下に示す。Φは、親水性残基を表す。Δは疎水性残基を表し、♯は第二のベータシートの末端に位置する残基を表す。これは、NADHを優先的に使用するNDH-IIにおける酸残基であり、NADPHを優先的に使用するNDH-IIにおける中性で極性の残基である(例えば、図2のアラインメントに示すように、ST-NDB1及びNC-NDE1のNDH-IIは、この位置にグルタミン残基を有する)。
本発明の主題は、上記で規定されるNDH-IIをコードするポリヌクレオチドで緑藻類を形質転換し、該緑藻類において該NDH-IIを発現させることを含むことを特徴とする、緑藻類が水素を産生する能力を増大させる方法である。
本発明を行うために、通常の遺伝子工学技術が用いられる。通常、発現させることが所望されるNDH-IIをコードするポリヌクレオチドを、適切な発現調節配列(特に、転写プロモーター及びターミネーター)の下に配置することにより、発現カセットが構築される。有利には、NDH-IIをコードする上記のポリヌクレオチドは、葉緑体標的配列(chloroplast-targeting sequence)に融合される。
発現カセットは、さらに、転写及び/又は翻訳調節要素を含むことができ、中でも特に転写エンハンサー又はサイレンサー、リーダー配列、ポリアデニル化配列などが挙げられる。
このようにして得られた発現カセットは、適切なベクターに挿入され、これを用いて、選択された宿主生物又は細胞を形質転換する。
緑藻類を形質転換するために用いることができる種々の手段及び方法がそれら自体で公知であり、本発明を行うために用いることができる(総説として、ROCHAIXら, The Molecular Biology of Chloroplasts and Mitochondria in Chlamydomonas, Kluwer Academic Publishers, The Netherlands, 1998を参照)。
本発明の関係において用いることができる発現調節配列(プロモーター、ターミネーターなど)及び葉緑体標的配列の限定しない例としては:
- 核での発現のために、種々に組み合わせることができる、RUBISCO (リブロースビスホスフェートカルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)スモールサブユニットをコードするRbcS2遺伝子(GOLDSCHMIDT-CLERMONT及びRAHIRE, J. Mol. Biol. 191: 421〜432, 1986)、葉緑体ATPシンセターゼのガンマサブユニットをコードするAtpC遺伝子(QUINN及びMERCHANT, Plant Cell 7: 623〜638, 1995; KINDLE及びLAWRENCE. Plant Physiol. 116: 1779〜1791, 1998)、及びプラストシアニンをコードするPetE遺伝子(QUINN及びMERCHANT, 1995, 上記; KINDLE, Plant Mol. Biol. 38: 365〜377, 1998)のプロモーター、ターミネーター並びに標的ペプチド;及び
- 葉緑体での発現のために、RUBISCOラージサブユニットをコードするRbcL遺伝子、ATPシンセターゼのベータサブユニットをコードするAtpB遺伝子、及び光化学系IIのD1サブユニットをコードするPsbA遺伝子(BATEMAN及びPURTON, Mol. Gen. Genet. 263: 404〜410, 2000)のプロモーター、ターミネーター並びに標的ペプチド
が挙げられる。
本発明の関係において用いることができる選択マーカーの限定しない例としては:
- 核での発現について、欠損しているのでアルギニンの栄養要求性である変異体を補完するクラミドモナスのアルギノコハク酸リアーゼをコードするArg7遺伝子(DEBUCHYら, EMBO J. 8: 2803〜2809, 1989)、欠損しているので硝酸塩を唯一の窒素源として増殖できない変異体を補完するクラミドモナスの硝酸レダクターゼをコードするNit 1遺伝子(KINDLEら, J. Cell Biol. 109: 2589〜2601, 1989)、欠損しているのでニコチンアミドの栄養要求性である変異体を補完するクラミドモナスからのニコチンアミド生合成に酸化する酵素をコードするNic7遺伝子(FERRIS, Genetics 141: 543〜549, 1995)、厳密な従属栄養変異体を補完するクラミドモナスの光化学系IIのサブユニットをコードするOee1遺伝子(MAYFIELD及びKINDLE, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 87: 2087〜2091, 1990)、クラミドモナスの任意の株にスペクチノマイシン及びストレプトマイシン耐性を与える大腸菌からのアミノグリコシドアデニントランスフェラーゼをコードするaadA遺伝子(CERUTTIら, Genetics. 145: 97〜110, 1997)、クラミドモナスの任意の株にフレオマイシン耐性を与えるストレプトアロテイカス・ヒンドゥスタヌス(Streptoalloteichus hindustanus)からのブレオマイシン結合タンパク質をコードするble遺伝子(STEVENSら, Mol. Gen. Genet. 251: 23〜30, 1996);抗生物質耐性をコードする遺伝子は、クラミドモナスからの調節配列、例えばRbcS2のものの制御下で発現させなければならない;
- 葉緑体での発現について、光合成鎖のタンパク質をコードする遺伝子における欠失又は挿入により得られる変異体の、挿入されるDNA断片が有する天然遺伝子、例えばPSIIのサブユニットをコードするpsbH遺伝子(BATEMAN及びPURTON, Mol. Gen. Genet. 263: 404〜410, 2000)、ストレプトマイシン及びスペクチノマイシン耐性を与える大腸菌(E.coli)からのアミノグリコシドアデニントランスフェラーゼをコードするaadA遺伝子、並びにカナマイシン及びアミカシン耐性を与えるアシネトバクター・バウマニイ(Acinetobacter baumanii)からのアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼをコードするaphA-6遺伝子による補完が挙げられる。
緑藻類の形質転換は、種々の方法、例えばガラスビーズの形質転換(KINDLE, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 87: 1228〜1232, 1990)、遺伝子銃(DEBUCHYら, EMBO J. 8: 2803〜2809, 1989)、及びエレクトロポレーション(SHIMOGAWARAら, Genetics. 148: 1821〜1828, 1998)による核ゲノムへのDNAの挿入により行うことができる。
葉緑体DNAの形質転換、及び葉緑体における発現のために、葉緑体ゲノムの配列に相同でありかつゲノムの中立的な領域に相当する(非コーディング及び非調節)配列のDNAの相同組換えによる挿入、並びに核のゲノムへの挿入について上述した形質転換技術、特に、最良の効率をもたらす遺伝子銃を有利に用いることができる。
本発明は、上記で規定するNDH-IIをコードするポリヌクレオチドで形質転換された緑藻類にも関する。
本発明による緑藻類は、形質転換されていない緑藻類と同様の条件下で水素の産生のために用いることができる。これらは、例えば、上記の米国特許第4,532,210号又は米国出願2001/0053543号に記載される方法のような方法の関係において用いることができる。
本発明は、アグロバクテリウムのNDH-IIがクラミドモナス・ラインハーディの光合成電子伝達鎖と相互作用する能力及びプラストキノンを低減させる能力を示し、クラミドモナス・ラインハーディの該NDH-IIをコードするポリヌクレオチドでの形質転換について説明する限定しない例に言及する以下の記載により、より詳細に理解される。
実施例1:アグロバクテリウム・ツメファシエンスのNDH-IIのクローニング及び大腸菌での発現
I - NDH-II遺伝子の単離
アグロバクテリウム・ツメファシエンスのNDH-IIをコードするAgtundh2遺伝子(NCBIアクセッションNo.: AI2824; SWISSPROTアクセッションNo.: Q8UDU6)を、アグロバクテリウム・ツメファシエンス (C58株)のゲノムDNAから、以下のプライマーを用いて増幅した。
mfeI及びPstI (斜体)の制限部位を、センス及びアンチセンスプライマーに、開始コドン及び停止コドン(太字)の上流及び下流にそれぞれ挿入した。6ヒスチジンコドン(下線)で構成されるタグを、停止コドンの上流に挿入した。増幅は、次の条件下で行った。
- 反応混合物:
1.5 mM MgCl2を含有する特異的反応バッファー
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
300 ngのDNA
1.5単位のExpand High Fidelity Taqポリメラーゼ(Roche)
- 増幅条件:
95℃で3分+80℃で1分:1サイクル
95℃で1分+70℃で1分(各サイクルで-0.5℃)+72℃で2分:20サイクル
95℃で1分+60℃で1分+72℃で2分:10サイクル
72℃で6分:1サイクル。
増幅産物は、NDH-IIをコードする配列と、その3'に、6ヒスチジンコドンで構成されるタグをコードする配列とを含む。
II - 大腸菌での発現及び精製
1 - クローニング
増幅産物は、mfeI及びPstI (New England Biolab、供給業者により推奨されるプロトコル)を用いて消化し、ライゲーション (New England Biolabからのリガーゼ、供給業者により推奨されるプロトコル) により、EcoRI及びPstIで消化した発現ベクターに導入した。
このベクターpSD80は、アンピシリン耐性カセット、強いTaqプロモーター及びLaq iQリプレッサー遺伝子を有する(PATEL及びDUNN, J. Bacteriol. 177: 3917〜3922, 1995; SMITHら, Biochem. 35: 8805〜8814, 1996)。
ライゲーション産物は、次いで、エレクトロポレーションにより大腸菌DH10βに導入した。
アンピシリン耐性形質転換体を、次いで、上記と同じプライマー及び同じ条件を用いるPCRにより、Agtundh2遺伝子の存在を確認するために、スクリーニングした。
次いで、pSD80ベクターに特異的なプライマー及びAgtundh2遺伝子の内部のプライマーを用いる配列決定により、構築物を確認した。
PSD80.F 5'-GAGCTGTTGACAATTAAT-3' (配列番号7)
PSD80.R 5'-AGGACGGGTCACACGCGC-3' (配列番号8)
N2Ag.307.F 5'-TGGCCACCGGCGCGCGT-3' (配列番号9)
N2Ag.650.f 5'-TGCGAAGGAAGCGCTTGA-3' (配列番号10)
N2Ag.901.R 5'-TTCCTGATTGACCGCGG-3' (配列番号11)
配列及び挿入断片が正しいことを確認した後に、このプラスミドをpSDN2Ag6Hと命名し、大腸菌の6つの最も希なtRNAを有するベクター(pRare, Novagen)とのエレクトロポレーションによる大腸菌DH10β株の同時形質転換に用いた。
アンピシリン及びクロラムフェニコールに耐性の1つの同時形質転換体を、NDH-II 6Hisタンパク質の発現及び精製のために選択した。
2 - 発現
アンピシリン及びクロラムフェニコールの存在下での、2.5Lのエルレンマイヤーフラスコ中の1Lの容量でのLB (Luria Bertani)培地の培養に、15時間の前培養から1/50を接種し、激しく振とうしながら37℃にて、光学密度が0.5になるまでインキュベートした。
NDH-II 6Hisの発現は、0.5 mMのイソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)を用いて2時間誘導した。
次いで、細胞を遠心分離により回収し、新しい培養培地でリンスして、−80℃にて保存した。
3 - 精製
精製プロトコルは、BJORKLOFら(FEBS Letts., 467: 105〜110, 2000)により出版されている。
細胞を融解し、2.5 mM EDTA、0.2 mM PMSF (フェニルメチルスルホニルフルオリド)、200 mM Tris-Cl、pH 8に、10 ml当たり約1 gの濃度で再懸濁した。300μg/mlのリゾチームを加え、混合物を氷上で1時間インキュベートした。
次いで、懸濁物を120000×gにて60分間遠心分離した。ペレットを、2 mM EDTA及び0.2 mM PMSFを含む10 mMリン酸カリウムバッファー、pH 8に再懸濁することによる浸透圧ショックに付し、Potterホモジナイザーでホモジナイズし、次いで再び遠心分離した(60分、120000×g)。
膜画分を上記のバッファーに採取し、Potterホモジナイザーでホモジナイズした。次いで、ドデシルマルトシド(DM)を最終濃度0.2% (重量/容量)及び0.1の界面活性剤/タンパク質の比で、並びにNaClを最終濃度500 mMで加えることにより、膜を可溶化した。懸濁物を攪拌し、氷中で30分間インキュベートし、次いで遠心分離した(60分、120000×g)。
酵素の精製は、クロマトグラフィーシステム(Akta FPLC, Amersham Biosciences, Uppsala)により、ニッケルカラム(HiTrapキレーティングカラム5 ml、Amersham Biosciences, Uppsala)で、4℃にて中圧アフィニティクロマトグラフィーにより行った。カラムは、まず、500 mMのNaCl、0.2%のDM及び20 mMのイミダゾールを含有する50 mMリン酸カリウムバッファー(pH 7.5)を用いて予め平衡化した。サンプルを載せた後に、全ての未結合のタンパク質を除くために、イミダゾールを含まない上記の溶液(溶液A)でカラムをリンスした。カラムは、最終的に、250 mMのイミダゾールを含有する溶液(溶液B)の漸増濃度を用いて溶出した。濃イミダゾール溶液の種々の割合(10%、15%、50%、100%)にて、5 mlのフラクションを回収した。
蛍光により検出されたタンパク質のピークは、125 mMのイミダゾールの濃度でクロマトグラムに現れた(図3A)。回収したフラクション(26〜29)のタンパク質含量を、変性条件下の13%アクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析した(図3B)。比較のために、最初の全フラクション(T)並びに可溶性画分(S)及び膜画分(M)も分析した。
次いで、タンパク質をニトロセルロースメンブレンに移し、ポリヒスチジン配列に指向されたモノクローナル一次抗体(Sigma)を1時間用い、次いで、マウスIgGに指向されたアルカリホスファターゼ結合二次抗体を1時間用いて、イムノブロッティングにより標識した。
図3B (29)において、タンパク質の予想サイズ(44 kDa)に相当する分子量が50 kDa未満の分子量の、抗体により標識された強いバンドの存在が観察される。このタンパク質は、膜画分(M)に見出されるが、可溶性画分(S)にはみられない。
フラクション29を、限外ろ過により900μlの容量まで濃縮した。220μlの容量の純粋なグリセロールを加え、酵素を−80℃にて保存した。酵素の濃度は、BSA (ウシ血清アルブミン)の一連の標準との比較により、SDS-PAGEゲル上で評価した。
III - 酵素の特性決定
1 - 補酵素の分析
補酵素の性質を、FANG及びBEATTIE (Biochem. 41: 3065〜3072, 2002)に記載されるようにして、蛍光定量法により測定した。精製酵素は、3〜4分間ボイルし、次いで遠心分離した。
上清を、150×4.6 mmのSupelcosil LC-DPカラム(Supelco)を用いるHPLCにより分析した。移動相は、80%の0.1% TFA水溶液及び20%の0.1% TFAの40%アセトニトリル溶液で構成される。周囲温度でのカラム中の流速は、1 ml/分である。蛍光検出器の励起及び蛍光波長は、それぞれ450及び525 nmに調節した。FAD (Sigma)及びFMN (Sigma)の標準物質を並行して分析した。
図4において、酵素サンプル(N2Ag)の蛍光ピークがFAD標準物質のピークに全く相当することがわかる。
これらの結果は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス NDH-IIのコファクターがFADであることを示す。
2 - 細胞膜での酵素活性の測定
次に実験において、この酵素が大腸菌の呼吸鎖に電子を伝達する能力を測定した。
アグロバクテリウム・ツメファシエンスNDH-IIの活性は、NDH-I及びNDH-IIを欠損する大腸菌株(ndh::tet; nuoB::nptl)からの膜を用いて分析した。
大腸菌ANN0222株(親株AN398; WALLACE及びYOUNG, Biochim. Biophys. Acta. 461: 84〜100, 1977)を、50 mlのLB-テトラサイクリン中で、指数増殖期の終わりまで培養した(OD = 1)。次いで、細胞を遠心分離により回収し(15分、3200×g)、200 mM Tris-Cl、pH 8、2.5 mM EDTA及び0.2 mM PMSFを含有する溶液10 mlで2回洗浄した。次いで、これらを、16000 psiの圧力でフレンチプレスに2回通すことにより、細胞を破砕した。
膜画分を、遠心分離により回収し(30分、48500×g)、200μlの分析バッファー(50 mMのリン酸バッファー、pH 7.5及び150 mM NaCl)に再懸濁した。
大腸菌ANN0222の膜のO2消費は、クラーク電極により測定した(DW2/2, Hansatech, King's Lynn, England)。精製酵素を加えた後に、この方法により、その比活性を測定することが可能であった。
10μlの細菌膜及び1.5μlの精製酵素(1 mg/mlで保存)を含む反応混合物は、氷中で10分間プレインキュベートし、その後、990μlの分析バッファー(50 mMのリン酸バッファー、pH 7.5及び150 mM NaCl)で希釈し、電極の分析チャンバにピペットで導入した。反応は、電子供与体としてのNADH又はNADPHの漸増濃度の存在下で、25℃にて追跡した。
細菌膜の非存在下で反応を追跡することにより、酵素が、直接O2取り込み活性(direct O2 uptake activity)を示すことが観察された。SOD及びカタラーゼの存在下で大きく低減される該活性は、活性酸素種の形成に連結する(図5)。
膜結合呼吸オキシダーゼ活性のみを測定するために、カタラーゼ(1000 U/ml)及びスーパーオキシドジスムターゼ(SOD) (500 U/ml)を反応混合物に加えた。ジフェニレンヨードニウム(DPI)の阻害効果を、酵素-膜混合物の存在下での氷中の10分間のインキュベーションの後に定量した。阻害の動態は、200μMのNADH又は2 mMのNADPHの存在下で測定した。
アグロバクテリウムNDH-IIの最大活性(Vmax = 5μmol O2.min-1.mg-1タンパク質)は、文献に記載されたその他のNDH-IIの大きさのオーダーの範囲内である。生理的pHにおいて、この酵素は、NADHに対して強い親和性を有するが(Km = 10μM) (図6A)、NADPHに対してもわずかではない親和性を有し(Km = 50μM) (図6B)、このことは細菌酵素については希である。この特徴は、この酵素が葉緑体で機能するために有利である。なぜなら、この細胞区画は、NADPHを豊富に含んでいるからである。この酵素は、通常のNDH-II阻害剤、特にDPIにより、10μMのI50 (図6C)で明らかに影響を受ける。
実施例2:アグロバクテリウムNDH-IIによるクラミドモナス・ラインハーディのプラストキノンの還元の実証
アグロバクテリウムNDH-IIによるプラストキノン還元活性を、葉緑素蛍光を測定することにより分析した。弱い非光化学作用の照射の下では、葉緑素蛍光の測定は、プラストキノンの酸化還元状態の指標を提供する。
I - チラコイド膜の調製
200 mlのクラミドモナス・ラインハーディ(野生型137c)培養物を、指数増殖期(約5×106細胞.ml-1)にサンプリングし、次いで遠心分離した(5分、1000×g)。細胞を35 mM HEPES-NaOHバッファー(pH 7.2)中で洗浄し、10 mlの溶解バッファー(50 mM トリシン-NaOH、pH
8、10 mM NaCl、5 mM MgCl2、1% BSA、1 mMベンズアミジン及び1 mM PMSF)に再懸濁し、次の工程のために冷暗所に保存した。
懸濁物を、2000 psiでフレンチプレスに2回通した。溶解物を、まず、未溶解の細胞を除去するために遠心分離し(5分、4℃、500×g)、次いで、チラコイド膜を10分間、10000×gにてペレットにし、250〜500μlの分析バッファー(50 mM トリシン-NaOH、pH 7.2、10
mM NaCl及び5 mM MgCl2)に再懸濁した。
II - プラストキノン還元
光化学系IIの蛍光を、変調光蛍光計(PAM 101-103, Walz, Effeltrich, Germany)を用いて測定した。
非光化学作用の変調光(nonactinic modulated light) (650 nm、1.6 kHz)を用いて、葉緑素蛍光F0のレベルを測定した。葉緑素蛍光の最大レベルFmを、1秒間の飽和閃光(saturating flash) (約1000μmol光子.m-2.s-1)の下で測定した。プラストキノンの再酸化を防ぐために、実験は、反応混合物にグルコース(20 mM)、グルコースオキシダーゼ(2 mg.ml-1)及びカタラーゼ(1000単位.ml-1)を加えることにより、嫌気条件下で行った。
チラコイド膜は、NDH-II (最終濃度1.5μg.ml-1)と共に、又はNDH-IIなしで、10分間、氷中でインキュベートし、プラストキノンの還元速度を、200μMのNADHの添加の前後で比較した。結果は、図7に示す(NDH2Ag = アグロバクテリウムNDH-II存在下;コントロール = 天然酵素のみの存在下;DPI = DPIの阻害効果)。
図7は、クラミドモナスからのチラコイド膜で測定された葉緑素の蛍光が、NADHを加えた後に増加することを示す。この増加は、藻類の天然酵素によるPQの非光化学的還元に対応する。しかし、精製アグロバクテリウムNDH-IIの存在下では(NHD2Ag)、蛍光の増加はより迅速であり、より強い。よって、プラストキノンの還元は、天然酵素のみ(コントロール)により行われるものよりも大きい。このことは、アグロバクテリウムNDH-IIが光合成電子伝達鎖と相互作用する能力を証明する。
NAD(P)HからPSIの受容体への電子の流れに対するアグロバクテリウムNDH-IIのこの効果を定量するために、酸素消費量測定を、メチルビオロゲン(PSIの受容体)、DCMU (PSIIの阻害剤)及びNADH (200μM)又はNADPH (2 mM)の電子供与体の存在下で行った。
クラミドモナスのチラコイド(50μl、85μg.ml-1の葉緑素に相当)を、900μlの分析バッファー(50 mMトリシン-NaOH、pH 7.2、10 mM NaCl及び5 mM MgCl2、25μM DCMU、50μM メチルビオロゲン、SOD (500 U.ml-1)、カタラーゼ(1000 U.ml-1)、4μMミソチアゾール(myxothiazol)及び800μM SHAM (サリチルヒドロキサム酸)を含むクラーク電極に入れる。後の2つの化合物は、呼吸によるO2取り込みを阻害するために加える。
これらの条件下で、シトクロムb6fの阻害剤であるDNP-INT (2-ヨード-6-イソプロピル-3-メチル-2',4,4'-トリニトロジフェニルエーテル;10μM)に感受性の光誘導された酸素取り込みの画分は、NAD(P)Hと光合成鎖の間の電子伝達に比例する。
1.5μgの精製アグロバクテリウム・ツメファシエンスNDH-IIの添加は、この電子伝達を、NADPHを供与体として用いたときに20から45 nmol.min-1.mg-1葉緑素に、及びNADHを供与体として用いたときに21から67 nmol.min-1.mg-1葉緑素に刺激する。
よって、この実験により、NADPH (又はNADH)とチラコイドプラストキノンとの間の、アグロバクテリウム・ツメファシエンスNDH-IIの添加による電子伝達の刺激を定量することが可能になる。この刺激は、NADPHの場合に約2倍であり、NADHの場合に約3倍である。
これらのインビトロでの結果により、クラミドモナス・ラインハーディにおける(より一般的には、水素産生可能な任意の藻類における)NDH-IIの異種発現が、葉緑体又は葉緑体を標的する核のものであるか否かに関わらず、葉緑体内のプラストキノンレダクターゼ活性及び関連するH2の産生を増大できると仮定することができる。
実施例3:アグロバクテリウム・ツメファシエンスNDH-IIをコードする配列を用いたクラミドモナス・ラインハーディの形質転換
I - プラスミドpSADN2Agの構築
Agtundh2遺伝子を、エー・ツメファシエンス(C58株)のゲノムから、次のプライマー、並びに以下の条件を用いて、PCRにより増幅した。
ndhAgTu.F
5'-TCCCCCGGGATGCAAGAACATCATGTT-3' (配列番号12)
(Tm 66.5°C)
及び
ndhAgTu.R
5'-CCGCAATTGTCAGGCCTCGTCCTTCAG-3' (配列番号13)
(Tm 69.5°C)
条件
- 反応混合物:
1.5 mM MgCl2を含有する特異的反応バッファー
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
300 ngのDNA
1.5単位のExpand High Fidelity Taqポリメラーゼ(Roche)
- 増幅条件:
95℃で3分+80℃で1分:1サイクル
95℃で1分+60℃で1分+72℃で2分:30サイクル
72℃で6分:1サイクル。
増幅産物は、SmaI/mfeIで消化した。
プラスミドpGEND2 (FISHER及びROCHAIX, Mol. Genet. Genomics 265: 888〜894, 2001)を、葉緑体標的ペプチド以外のPsaDタンパク質をコードする配列を切り出すために、NaeI/EcoRIで消化した。切り出された断片を、N2Ag遺伝子増幅産物から得られたSmaI/mfeI断片で置き換えた。
pSADN2Agと呼ばれる得られたプラスミドは、よって、psaD遺伝子のプロモーターの制御下にアグロバクテリウム・ツメファシエンスNDH-IIをコードする配列を、PsaDタンパク質の葉緑体標的ペプチドとの翻訳誘導体として有する。
II - クラミドモナス・ラインハーディの形質転換
アルギノコハク酸リアーゼを欠損しているのでアルギニンについて栄養要求性であるクラミドモナス・ラインハーディ変異体(CC-2852 arg7 cw15 mt+, Chlamydomonas Center, Duke University, Durham, USA)を用いた。この藻類は、100 mg/lのアルギニンを補った200 mlの容量のTAP培地(HARRIS, The Chlamydomonas sourcebook, Academic Press, San Diego, 1989)での、約35μmol 光子.m2.s-1の連続光を照射する25℃における振とう培養に付す。
指数増殖期の最後に(約107細胞/mlの濃度)、この藻類を遠心分離により濃縮し、TAPに採取して、3×108細胞/mlの懸濁物を得る。
プラスミドPSADN2Agを、Arg7遺伝子を含む7.1 kbのサイズのクラミドモナスの核DNA断片からなるプラスミドp389 (Chlamydomonas Center, Duke University, Durham, USA; http://www.chlamy.org/strains/plasmids.html)と共に用いて、ベクターpBR329のBamHIにクローニングして、藻類を同時形質転換する。
300 mgの0.5 mmのガラスビーズ(Sigma)、10μlのプラスミドPSADN2Ag (= 1μg)、2μlのプラスミドp389 (= 0.2μg)及び350μlの藻類懸濁物(= 約108細胞)を、チューブ内で混合する。チューブを、最大速度にて15秒間ボルテックスする。次いで、650μlのTAPを加え、ホモジネートした後に、懸濁物を、アルギニンフリーTAP培地を含む(アガー15 g/l)2枚のペトリ皿に接種する(各皿に450μl)。
連続光(35μmol.m2.s-1)の下で25℃にて10日間インキュベートした後に、藻類を同じ培地上に植え継ぐ。2回の継代の後に、アルギニンなしで増殖する形質転換体を回収する。
N2Ag遺伝子が組み込まれた形質転換体は、この遺伝子の存在をPCRにより検出することにより選択される。
コロニーは、以下のプロトコルに従って溶解する。
各コロニーを、100μlの滅菌水(milliQ (登録商標)ろ過)に採取する。5μlの10×PCRバッファー、1μlの0.01% SDS、1μlの200 mM DTT、3μlの細胞及び39μlのH2Oを、1.5 mlのチューブで混合する。
5回の凍結/融解サイクル(液体窒素及び55℃の水浴)を行う。
2μlの10μg/mlプロテイナーゼKを加え、混合物を55℃にて1時間インキュベートする。
プロテイナーゼKを、95℃にて5分間の処理により不活性化する。
PCRを、ndhAgTu.Fプライマー及びndhAgTu.Rプライマーを用いて、以下の条件で行う。
- 反応混合物:
最終容量25μlについて
2.5μlの10×バッファー
2μlのdNTPミックス
1.25μlの各プライマー
2.5μlの10×BSA
3μlの細胞溶解物
0.3μlのTaqポリメラーゼ(Qiagen)
12.2μlのH2O
- 増幅条件:
95℃で3分+80℃で1分:1サイクル
95℃で1分+60℃で1分+72℃で2分:30サイクル
72℃で6分:1サイクル。
ポジティブコントロールは、クラミドモナスのゲノムDNAを、形質転換に用いたプラスミドで置き換えることにより行った。
増幅産物は、1%アガロースゲルの泳動により分析し、ゲルをエチジウムブロミドで染色した後に視覚化した(図8)。分子量マーカーは、得られた増幅産物の大きさを判断するために、ゲル上に並行して載せた。
NDH-II遺伝子が組み込まれた形質転換体は、約1.2 kbのバンドを示し、これはポジティ
ブコントロールでも観察される。同時形質転換体(= 2つのプラスミドが組み込まれたもの)の割合は、約50%である。
III - NDH-IIの発現:
アグロバクテリウムNDH-II遺伝子の発現は、6つの同時形質転換体においてRT-PCRにより確かめた。トータルRNAを、25 mlの指数増殖期培養物から、RNeasy (登録商標)キットを供給業者の使用説明(Qiagen)に従って用いて抽出する。供給業者により推奨されるプロトコル(Qiagen)に従ってOmniscript (登録商標)キットを用い、種々のRNAの容量を各反応において2μgを得るように調節してcDNAを調製する。
PCRを、ndhAgTu.Fプライマー及びndhAgTu.Rプライマーを用いて、以下の条件で行う。
- 反応混合物:
1.5 mM MgCl2を含有する特異的反応バッファー
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
300 ngのDNA
1.5単位のExpand High Fidelity Taqポリメラーゼ(Roche)
- 増幅条件:
95℃で3分+80℃で1分:1サイクル
95℃で1分+60℃で1分+72℃で2分:30サイクル
72℃で6分:1サイクル。
観察されたアンプリコンが、RNA抽出プロトコルに含まれていた消化工程の後に残っている核DNAの増幅によるものではないことを確かにするために、ネガティブコントロールを行った。このコントロールのために、逆転写酵素工程の後に得られた300 ngのcDNAを、5μlのこの工程の前のRNA溶液で置き換える。
抽出プロトコルの効率及びNDH-IIの発現レベルを制御するために、構成的に大量に発現されるタンパク質であるアクチン1のcDNAを、並行して増幅した。
増幅産物は、1%アガロースゲル泳動により分析し、ゲルをエチジウムブロミドで染色することにより視覚化した(図9)。分子量マーカーは、得られた増幅産物の大きさを判断するために、ゲル上に並行して載せた。
NDH-II遺伝子を発現する同時形質転換体は、挿入断片の大きさに相当する約1.2 kbのバンドを示す。ネガティブコントロールはいずれのバンドも示さず、このことは、RNA調製物にゲノムDNAが混入していなかったことを意味するが、一方、アクチン増幅産物は明確に示す。試験した全ての同時形質転換体は、異なるレベルではあるが、アクチンのものと同じオーダーの大きさでNDH-II遺伝子を発現する。
実施例4:NDH-欠損大腸菌株の機能的補完
I - 補完-増殖試験
異種宿主でのインビボのAgtundh2タンパク質の機能を、NDH-1及びNDH-2を欠損する変異大腸菌ANN.0222株の増殖を回復させるその能力を測定することにより試験した。この株は、通常はLB培地上で増殖するが、単独炭素源としてマンニトールを補った最少培地M9では増殖できない。
大腸菌ANN.0222株を、プラスミドpSDN2Ag6Hで化学的に形質転換した(CaCl2)。形質転換体を、アンピシリン(100μg/ml)を含むLBアガー培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス及び0.5% NaCl、pH 7を補充)上で選択した。形質転換体及び元の株を、アンピシリン(100μg/
ml)を含む液体LB培地中で37℃にて、指数増殖期の中間まで培養した。細胞を、単独炭素源としてマンニトールを補った滅菌M9培地(1×M9塩、2×10-3 M MgSO4、10-4 M CaCl2、0.4%マンニトール)でリンスした。次いで、細胞をM9培地/マンニトールで希釈し、アンピシリン及び種々の濃度のIPTGを含む固形のM9/マンニトール/アガー培地に接種した。ペトリ皿を37℃にて2日間インキュベートした。コントロールとして、同じ細胞を、アンピシリン及び種々の濃度のIPTGを含むLBアガー培地を含むペトリ皿に並行して接種し、次いで37℃にて一晩インキュベートした。
結果を図10Aに示す。この図は、富培地(LB) 及びマンニトールを補った最少培地(M9+マンニトール)上でのANN0222株及びAgtundh2を発現する形質転換体(図ではAtuNdh2と示す)のコロニーの形成を示す。IPTGの濃度は、それぞれ対応するレーンの上に示す。
非形質転換変異株の増殖は、IPTG (0.1 mM)の存否に関わらず最少培地上で大きく制限される。一方、Agtundh2発現株の最少培地上での増殖は、0.1 mM IPTGでの誘導の後に回復した。変異体の部分的補完はIPTGの不在下でも観察され、このことは、タンパク質があるレベルでIPTG非依存性の発現をしていることを示唆する。
II - 膜NADH脱水素酵素活性
2バッチの大腸菌ANN.0222の膜画分を、コントロール株のLB培地での培養物、及びプラスミドpSDN2Ag6Hを組み込んだ株を0.1 mM IPTG存在下でLB培地で培養した培養物から調製した。培養は、600 nmでの光学密度が1になるまで行った。細胞を遠心分離(15分、3200×g)により回収し、2回リンスし、10 mlのバッファーA (200 mM Tris-Cl、pH 8、2.5 mM EDTA及び0.2 mM PMSF;(30))に再懸濁した。次いで、細胞を16000 psiでフレンチプレスに2回通すことにより、細胞を破砕した。遠心分離(30分、4℃、48500×g)により回収した膜画分を、200μlのバッファーB (50 mMリン酸バッファー、pH 7.5及び150 mM NaCl)に採取した。O2の取り込みを、1 mlのバッファーAで希釈したこれらの膜画分の2μlの一定量について、クラーク電極(DW2/2, Hansatech, King's Lynn, England)を用いて25℃にてNADHの存在下で測定した。
結果を図10Bに示す。この図は、参照株(コントロール)から及びAgtundh2発現株から調製した大腸菌ANN0222の膜のNADH存在下でのO2取り込みを示す。
NADHの添加に応答してコントロール株からの膜においてO2の取り込み活性は検出されなかったが、一方、pSDN2Ag6Hで形質転換した株の膜において同じ条件下ではかなりのO2取り込みが検出された(図10B)。大腸菌の膜で発現される場合、Agtundh2は、同じオーダーの最大速度でNADH及びNADPHを酸化できるが、NADHについての親和性のほうがより大きい。
III - タンパク質の発現
形質転換されたANN.0222株でのAgtundh2タンパク質の発現を、免疫検出により確かめた。
ウサギ血清を、精製Agtundh2タンパク質(Agro-Bio, Villeny, France)に対して作製した。可溶性画分及び膜タンパク質画分を、上記のようにして抽出した。これらのタンパク質画分、及び精製Agtundh2タンパク質の一定量を、10% SDS-PAGEゲルに載せ、電気泳動に付し、次いでニトロセルロースメンブレンにブロットした。次いで、ニトロセルロースメンブレンを、ミルク中(0.1% TBSTを加えた3%粉スキムミルク水溶液)で30分間インキュベートし、次いで0.1% TBSTでリンスし、1/10000に希釈した抗Agtundh2抗体と1時間30再びインキュベートした。次いで、メンブレンを0.1% TBSTで10分間、3回リンスし、次いで、1/10000に希釈したアルカリホスファターゼ結合抗ウサギ二次抗体と1時間インキュベートした。反応は、供給業者(Sigma)により推奨されるプロトコルに従って検出した。
結果を、図11に示す。左のパネル:「空の」pSD80ベクター又はAgtundh2を有する構築
物のいずれかで形質転換し、0、0.1又は0.5 mMのIPTGに曝露した大腸菌ANN0222株の可溶性(S)及び膜(Mb)タンパク質の画分の免疫検出。ゲルへのローディングは、最終的には、OD600 = 1で回収した50 mlの培養物の可溶性画分及び膜画分の1/400希釈に相当する(すなわち、膜画分に相当するレーンには2.5μgのタンパク質、及び可溶性画分に相当するレーンには30μgのタンパク質)。右のパネル:左から右へ0.1、0.2及び0.3μg/レーンでの精製Agtundh2の免疫検出。
大部分のタンパク質は膜画分で見出され、少量の割合が可溶性タンパク質で検出された。Agtundh2のかなりの発現がIPTGの不在下でも検出され、このことは、これらの条件下で観察された部分的補完に一致する(図10Aを参照)。
大腸菌で発現されたAgtundh2の触媒効率を測定するために、比活性を、ウェスタンブロッティングにより測定された量から判断した。
精製Agtundh2タンパク質及び膜画分について得られたシグナルの相対的強度に基づいて、図10Bに示す実験におけるAgtundh2タンパク質の量は、0.6μgのタンパク質と判断した。これらの条件下での最大O2取り込みは、よって、13.2/0.6 = 22 nmol O2 min-1.μg-1タンパク質、すなわち44 nmol NADH min-1.μg-1タンパク質と判断される。
実施例5: NADH及びNADPHに対するAGTUNDH2の相対的特異性の改変
I - Agtundh2遺伝子の増幅
Agtundh2遺伝子は、プラスミドpSDN2Ag6Hから、次のプライマーを用いて増幅した。
NcoI (斜体)制限部位は、遺伝子の開始コドン(太字)と重複するように、配列の4番目の塩基を改変することにより(CをGにする)、プライマーに挿入した。
XbaI (斜体)制限部位は、アンチセンスプライマーに、遺伝子の停止コドン(太字)の下流に挿入した。
増幅は、次の条件下で行った。
- 反応混合物:
1×特異的反応バッファー
1.5μM MgSO4 最終濃度
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
200 ngのDNA
1単位のPfxプラチナ(Invitrogen)
- 増幅条件:
94℃で2分:1サイクル
94℃で30秒+55℃で1分+68℃で3分:25サイクル
68℃で10分:1サイクル
II - Agtundh2遺伝子の配列へのE201Q変異の導入:
Agtundh2遺伝子のE201Q変異は、「PCR融合」部位特異的突然変異誘発法により、遺伝子の配列に導入した。第1の増幅工程に対応する断片は、鋳型としてプラスミドpSDN2Ag6Hを用いて得た。用いたプライマー対は、次のとおりである。
N2Ag.E201Q.Rプライマーにより、E201Q変異(太字)を導入することができる。
これらの2つのプライマーにより、E201Q変異を含む5'断片を得ることができる。
N2Ag.E201Q.Fプライマーにより、E201Q変異(太字)を導入することができる。
これらの2つのプライマーにより、E201Q変異を含む3'断片を得ることができる。
- 反応混合物:
1×特異的反応バッファー
1.5μM MgSO4 最終濃度
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
200 ngのDNA
1単位のプラチナPfx (Invitrogen)
- 増幅条件:
94℃で2分:1サイクル
94℃で30秒+55℃で1分+68℃で3分:25サイクル
68℃で10分:1サイクル
2つの増幅断片は、N2Ag.E201Q.F及びN2Ag.E201Q.Rプライマーにより対象の変異が導入されている。
第2の増幅工程は、前の工程で得られた2つの増幅断片を混合することにより行う。これらの2つの断片は、それらの共通配列
によりハイブリダイズし、よって鋳型を構成する。増幅は、2つのプライマーN2Ag.NcoI及びN2Ag.XbaIを用いて、次の条件下で行う。
- 反応混合物:
1×特異的反応バッファー
1.5μM MgSO4 最終濃度
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
200 ngのN2Ag.NcoI/N2Ag.E201Q.R断片
200 ngのN2Ag.XbaI/N2Ag.E201Q.F断片
1単位のプラチナPfx (Invitrogen)
- 増幅条件:
94℃で2分:1サイクル
94℃で30秒+55℃で1分+68℃で6分:30サイクル
68℃で10分:1サイクル
III - 構築物のクローニング
増幅産物を、NcoI及びXbaI (New England Biolabs、供給業者により推奨されるプロトコル)で消化し、ライゲーション(New England BiolabsからのT4 DNAリガーゼ、供給業者により推奨されるプロトコル)により、NcoI及びXbaIで消化したベクターpBAD24に導入した。このベクターは、アンピシリン耐性カセット及びアラビノース誘発性pBAD型プロモーターを有する。次いで、増幅産物を、エレクトロポレーションにより大腸菌dH10βに導入した。アンピシリン耐性形質転換体を選択し、挿入断片の存在を、プラスミドDNAの抽出とNcoI及びHindIIIでの消化により確認した。
次いで、2つの構築物を、Agtundh2遺伝子の内部のプライマー(N2Ag.E201Q.F;N2Ag.NcoI;N2Ag.E201Q.R;N2Ag.XbaI)を用いる配列決定により確認した。
配列決定により、所望の変異(E201Q)が実際に導入されたことが示された。プラスミドは、E201Qc1と称する。
IV - 改変タンパク質の活性
改変タンパク質のNADH及びNADPHに対する親和性を測定した。
結果を、図12に示す。野生型タンパク質(A)は、200μM NADPHを用いて記録されたものに比べて明らかにより大きい200μM NADHとの活性を示すが、改変タンパク質(B)は、これら2つの基質に対して同程度の活性を示す。
実施例6:クラミドモナス・ラインハーディからの葉緑体に存在するNDH2の同定
I - 遺伝子の増幅
トータルRNAを、TAP培地でのシー・ラインハーディの培養物(1×106〜1×107細胞/mlの間で採取)から、QIAGEN RNeasy (登録商標) Plant Mini Kitを供給業者の使用説明に従って用いて単離した。cDNA合成は、Omniscript (商標) Reverse Transcriptaseシステム(QIAGEN)をoligo-dTプライマーと共に用いて行った。反応産物は、OmniGene Hybridサーモサイクラーでturbo pfuポリメラーゼ(Stratagene)を用いて、PCRにより増幅した。
- cDNA増幅条件
94℃での変性:5分
94℃で30秒、72℃で40秒及び72℃で2分:5サイクル
94℃で30秒、68℃で40秒及び72℃で2分:5サイクル
94℃で30秒、65℃で40秒及び72℃で2分:5サイクル
94℃で30秒、62℃で40秒及び72℃で2分:15サイクル
72℃での伸長:5分。
N2Cr2の増幅に用いたプライマーは、次のとおりである。
5'-ATGCATAGCCTTGATGGCCAAAAC-3' (配列番号18)及び
5'-TCACACTCGCGAGATGTCGCG-3' (配列番号19)。
これらの2つのプライマーにより、cDNA (1662 bp)をRT-PCRにより増幅できた。このようにして同定された新しい配列は、N2Cr2と命名した。N2Cr2に対応するcDNAは、533アミノ酸で、推定質量60.5 kDaのポリペプチドをコードする。
このcDNAの配列を、シー・ラインハーディの入手可能なゲノム配列と比較すると、これが、実際に、そのN-末端で65アミノ酸が短くなったタンパク質に相当することがわかった。
N2Cr2の完全cDNA配列は、添付の配列表に配列番号3の番号で示し、推定ポリペプチド配列は、配列番号4の番号で示す。クローニングされたcDNAは、配列番号3の配列のヌクレオチド196〜1857に相当し、配列番号4の配列のアミノ酸67〜619に相当するポリペプチドをコードする。
クローニングされた1662 bpのcDNA配列によりコードされるタンパク質は、そのN-末端で短くなっているが、NADH脱水素酵素活性を効率的に示すタンパク質をコードし、これは、以下に記載するように、クラミドモナスにおいてN2Cr2タンパク質を認識する抗体を作製することを可能にした。
II - pSD80中での遺伝子のクローニング
1662 bp cDNA配列のN2Cr2コーディング領域を、該配列のN-末端及びC-末端に対応し、E
coRI及びSmaIの制限部位を与える追加の塩基及び6ヒスチジンコーディング配列が伸長されたプライマーを用いるPCRにより増幅した。EcoRI及びSmaI部位(下線)を、フォワード(F)及びリバース(R)のプライマーに、開始コドンの上流及び停止コドンの下流にそれぞれ挿入した。6ヒスチジンコーディング領域(斜体)は、Fプライマーに、N2Cr2コーディング領域の開始コドンの下流に挿入した。よって、オリゴヌクレオチドの配列は、次のとおりである。
増幅されたcDNAをEcoRI及びSmaIで消化し、EcoRI及びSmaIで予め消化したカルベニシリン耐性を有するpSD80発現ベクター(Patel及びDunn, 1995)に挿入した。pSD80-N2Cr2とよばれる得られたプラスミドは、配列決定により確認し、次いで、大腸菌DH10β株をエレクトロポレーションにより形質転換するために用いた。pSD80-N2Cr2を有する細胞は、DH10β(pSD80-N2Cr2)と称する。6-Hisタグ付加N2Cr2の発現は、10 mlのDH10β(pSD80-N2Cr2)のオーバーナイト培養物を接種し、次いで37℃にてカルベニシリン(50μg.ml-1)の存在下においた(140 rpm) 2リットルのLB培地で行った。接種後約4時間で、細胞は0.5のOD600 nmに達し、6-Hisタグ付加N2Cr2の発現は、100μMのイソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)の添加により開始した。5時間の誘導の後に細胞を回収し、25 mlのLB培地でリンスし(4355 gで1分、4℃の遠心分離)、-80℃にて保存した。
III - タグ付加タンパク質のカラム精製
N2Cr2-6Hisの単離及びニッケルアフィニティ精製は、BJORKLOFら(2000, 上記)のプロトコルに従って行った。DH10β(pSD80-N2Cr2)細胞を氷上で融解し、2.5 mM EDTA、0.2 mM PMSF及び200 mM Tris-Cl、pH 8.0を含むバッファーに、10 ml当たり約1 gで採取した。リゾチームを加え、混合物を氷上で1時間攪拌した。この後に、細胞をフレンチプレス(16000 psi)に2回通すことにより、細胞を破砕した。溶解物を12000 gで1時間遠心分離し、上清を回収して、Histrap HP樹脂(Amersham Bioscience)を用いるニッケルアフィニティクロマトグラフィーによるN2Cr2-6Hisの精製に用いた。カラムは、20 mMトリエタノールアミン、500 mM NaCl及び25 mMイミダゾール、pH = 7.5を含むバッファー(バッファーA)で予め平衡化した。サンプルを載せた後に、2カラム容量のバッファーAでカラムを2回リンスし、次いで、同様の容量の50 mM Tris-Cl、0.2% (w/v)ドデシルマルトシド、pH = 7.5 (バッファーB)でリンスし、最後に、1カラム容量の50 mM Tris-Cl、0.2% (w/v)ドデシルマルトシド、10 mM CaCl2、pH = 7.5 (バッファーC)でリンスした。この「カルシウム洗浄」の後に、カラムを3容量のバッファーB及び2容量のバッファーAで再びリンスした。N2Cr2-6Hisを、次いで、20 mMトリエタノールアミン、500 mM NaCl、300 mMイミダゾール、pH = 7.5から調製したイミダゾールの勾配を用いて溶出した。N2Cr2-6Hisは、約180 mMのイミダゾールでカラムから溶離した。対応するフラクションを、「Amicon Ultra 30 kDa」システム(Millipore)を用いる限外ろ過により濃縮した。グリセロールを最終濃度50% (v/v)に加え、酵素を-80℃にて保存した。
IV - 組換えタンパク質に対する抗体の産生:
2 mgのタンパク質を、上記の精製プロトコルを用いて得た。タンパク質の純度は、クーマシーブルー染色したゲルで確かめ、その物質を、ウサギの免疫化によるN2Cr2に指向された血清を作製するために用いた。
V - 細胞分画:
全画分、ミトコンドリア画分及び可溶性画分の取得
クラミドモナス・ラインハーディ細胞内でのタンパク質の細胞内局在化を調べるために、破片画分、ミトコンドリア画分及び可溶性タンパク質画分を分けることを可能にする細胞分画を行った。このために、Yedaプレス溶解による「穏やかな」細胞分画を得ることを可能にする細胞壁減少株(cell-wall-less strain) (CW15)を用いた。
クラミドモナス・ラインハーディの指数増殖期の400 mlのCW15培養物を、500 gで4℃にて5分間遠心分離する。次いで、ペレットを50 mlの35 mM HEPES、pH 7.2に採取し、500 gで4℃にて5分間、再び遠心分離する。12.5 mlの溶解バッファー(50 mMトリシン-NaOH、10
mM NaCl、5 mM MgCl2、pH = 8)に採取したペレットを、分画を行うためにYedaプレスに導入する。細胞を、プレス内でN2の下で6分間、8 barにてインキュベートし、次いで滴状で回収した。
次いで、サンプルを500 gで4℃にて5分間遠心分離する。ペレットを回収し、2 mlの1% SDSに採取する。上清を3220 gで4℃にて8分間遠心分離する。ペレットはチラコイドを含み、これらはミトコンドリア膜が混入しているので回収しない。上清を、100000 gで4℃にて1時間遠心分離する。ペレットはミトコンドリアを含み、1 mlの1% SDSに採取する。上清は、可溶性画分を構成する。3つの画分は、アセトンを用いて沈殿させる(全タンパク質及び膜タンパク質については80%、及び可溶性画分については60%)。各画分のサンプルは、ビシンコニン酸法(BC Assayキット、Uptima UP40840A, INTERCHIM)を用いてアッセイする。
チラコイド抽出
ミトコンドリア膜が混入していない葉緑体画分を得るために、パーコール勾配精製(COURNACら, J. Biol. Chem., 275, 23, 17256〜17262, 2000)を行った。
このために、指数増殖期の中間のCw15培養物600 mlを、500 gで4℃にて5分間遠心分離する。ペレットを50 mlの35 mM HEPES、pH = 7.2中で1回洗浄し、500 gで4℃にて5分間、再び遠心分離する。ペレットを12.5 mlのバッファーA (0.3 Mソルビトール、50 mM HEPES-KOH、pH 8.2、2 mM EDTA、5 mM MgCl2)に採取し、Yedaプレスに4.5 barで3分間導入する。物質をパーコール勾配(40〜60%)に載せ、4000 gで20分間遠心分離する。無傷の葉緑体に相当するリングを回収し、その容量の10倍のバッファーAで希釈する。サンプルを3220 gにて15分間遠心分離し、ペレットを3.5 mlの0.2% SDSに採取し、次いで80%アセトンで沈殿させる。
サンプルを、ビシンコニン酸法によりアッセイする。
VI - ウェスタンブロッティング:
100μgの各画分を、適切な容量を10000 rpmにて10分間遠心分離し、得られたペレットを1×ローディングバッファーに再懸濁することにより調製する。5μl (すなわち5μg)の各画分を10% SDS-PAGEゲルに載せる。コントロールとして、約0.1μgの精製タンパク質もゲルに載せる。泳動の後に、タンパク質をニトロセルロースメンブレン(Life sciences, BioTrace NT)にブロットする(セミドライブロッティング)。
次いで、タンパク質を、組換えタンパク質に対して得られた抗体(AGRO-BIO)を一次抗体として用いるイムノブロッティングにより標識する。インキュベーションは、周囲温度にて1時間継続する。蛍光色素が結合した二次抗体(ウサギからの抗IgG)を1時間加える。検出は、LICOR社からのOdyssey赤外線スキャナを用いて行う。
結果は、図13に示す。
最も強く反応するバンドは、チラコイド画分に存在する。これは、産生された組換えN2Cr2よりもわずかに大きいサイズである。このサイズの違いは、組換えタンパク質が、クラミドモナスでの成熟タンパク質の推定配列に比べてN-末端で短くなっていることによるのであろう。
実施例7:クラミドモナス・ラインハーディでの形質転換のためのプラスミドPXX6へのAGT
UNDH2のクローニング
I - クローニングされる断片の構築:
クラミドモナス・ラインハーディでAgtundh2タンパク質の発現を可能にするためにクラミドモナス・ラインハーディからのrbcS2遺伝子と、アグロバクテリウム・ツメファシエンスからのAgtundh2遺伝子との融合による産物を作製した。このために、融合PCR法を用いて、輸送ペプチドrbcS2の配列をAgtundh2の開始コドンの上流に配置し、rbcS2の3' UTR領域の配列をAgtundh2の停止コドンの下流に配置した。
輸送ペプチドrbcS2の増幅
まず、輸送ペプチドrbcS2を、クラミドモナス・ラインハーディゲノムDNAから、次のプライマー対を用いて増幅した。
XhoI酵素の制限部位(斜体)を、rbcS2遺伝子の開始コドン(太字)の上流に導入した。
rbcS2輸送ペプチドの配列に相当する領域は斜体で表し、Agtundh2伸長に対応する領域は通常の文字で示す。
- 反応混合物:
1×特異的反応バッファー
1.5μM MgSO4 最終濃度
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
200 ngのDNA
1単位のプラチナPfx (Invitrogen)
- 増幅条件:
94℃で2分:1サイクル
94℃で30秒+60℃で1分+68℃で3分:30サイクル
68℃で10分:1サイクル
Agtundh2遺伝子の増幅
Agtundh2遺伝子は、プラスミドpSDN2Ag6Hから、次のプライマー対を用いて増幅した。
rbcS2輸送ペプチドの配列の末端に対応する伸長(斜体)を、Agtundh2の開始コドン(太字)の上流に導入した。
rbcS2の3' UTR領域の配列の始めに対応する伸長(斜体)を、Agtundh2の停止コドン(太字)の下流に導入した。
- 反応混合物:
1×特異的反応バッファー
1.5μM MgSO4 最終濃度
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
200 ngのDNA
1単位のプラチナPfx (Invitrogen)
- 増幅条件:
94℃で2分:1サイクル
94℃で30秒+55℃で1分+68℃で3分:30サイクル
68℃で10分:1サイクル。
rbcS2の3' UTR領域の増幅:
rbcS2の3' UTR領域を、クラミドモナス・ラインハーディのゲノムDNAから、次のプライマーを用いて増幅した。
rbcS2.3'.Fプライマーについて、Agtundh2のC-末端領域に対応する伸長(斜体)を、rbcS2の3' UTR配列の始め(通常の文字)の上流に導入した。
N2Ag.KpnIプライマーについて、KpnI酵素の制限部位(斜体)を、rbcS2の3' UTR配列の終わり(通常の文字)の下流に導入した。
- 反応混合物:
1×特異的反応バッファー
1.5μM MgSO4 最終濃度
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
200 ngのDNA
1単位のプラチナPfx (Invitrogen)
- 増幅条件:
94℃で2分:1サイクル
94℃で30秒+60℃で1分+68℃で3分:30サイクル
68℃で10分:1サイクル
rbcs2輸送ペプチドとAgtundh2遺伝子の融合断片の増幅
rbcS2輸送ペプチド及びAgtundh2遺伝子に相当する増幅断片を混合し、次のプライマー対を用いる融合断片の増幅のための鋳型として用いる(上記を参照)。
N2Ag.XhoI
rbcS2.3'.R
- 反応混合物:
1×特異的反応バッファー
1.5μM MgSO4 最終濃度
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
200 ngのrbcs 2輸送ペプチド断片
200 ngのAgtundh2遺伝子断片
1単位のプラチナPfx (Invitrogen)
- 増幅条件:
94℃で2分:1サイクル
94℃で30秒+55℃で1分+68℃で6分:30サイクル
68℃で10分:1サイクル
rbcS2輸送ペプチド、Agtundh2遺伝子及びrbcS2の3' UTR領域の融合断片の増幅:
上記のようにして得られた融合断片(rbcS2輸送ペプチド+Agtundh2遺伝子)を、rbcS2の3' UTR領域に相当する断片と混合して、次のプライマー対:N2Ag.XhoI;N2Ag.KpnIを用いる最終増幅工程での鋳型として作用するようにする。
- 反応混合物:
1×特異的反応バッファー
1.5μM MgSO4 最終濃度
0.5μMの最終濃度のプライマー
200μMの最終濃度のdNTPミックス
200 ngの「輸送ペプチド+Agtundh2遺伝子」断片
200 ngのrbcS2 3' UTR断片
1単位のプラチナPfx (Invitrogen)
- 増幅条件:
94℃で2分:1サイクル
94℃で30秒+55℃で1分+68℃で6分:30サイクル
68℃で10分:1サイクル。
II - プラスミドpXX6への融合断片のクローニング:
融合産物を、XhoI及びKpnIで消化し(New England Biolabs、供給業者により推奨されるプロトコル)、ライゲーション(T4 DNAリガーゼ、New England Biolabs、供給業者により推奨されるプロトコル)により、XhoI及びKpnIで予め消化したプラスミドpXX6に導入した。
プラスミドpXX6は、FUHRMANN Mら(Plant Mol. Biol., 55, 6, 869〜881, 2004)により記載されている。これは、アンピシリン耐性カセット、その下流に配置される遺伝子の転写を最適化するクラミドモナス・ラインハーディの強いHspプロモーター領域、クラミドモナス・ラインハーディからのrbcS2遺伝子の構成性プロモーター、及びクラミドモナス・ラインハーディからのrbcS2遺伝子の第一イントロンを有する。
ライゲーション産物は、次いで、エレクトロポレーションにより、大腸菌DH10βに導入した。
アンピシリン耐性形質転換体を選択し、挿入断片の存在を、プラスミドDNAの抽出とXhoI及びKpnI酵素での消化により確認した。
構築物を、次のプライマーを用いる配列決定により確認した:N2Ag.XhoI;N2Ag.KpnI;TP.ndh.R;TP.ndh.F;rbcS2.3'.F。
配列及び挿入断片が正しいことを確認した後に、pXX6N2Agとよばれるこのプラスミドを用いて、ガラスビーズ法により、パロモマイシン耐性を有するaphVIIIプラスミドでクラミドモナスのCW15株を、及びアルギノコハク酸リアーゼをコードするArg7遺伝子を有するpArgプラスミドでクラミドモナスの388株(アルギニンについて栄養要求性)を、同時形質転換する。

Claims (6)

  1. 緑藻類を、II型NAD(P)H脱水素酵素(NDH-II)をコードするポリヌクレオチドで形質転換させることを含み、NDH-IIが
    a)その配列中にコンセンサスモチーフGxGxxG (式中、「G」はグリシンを表し、「x」は任意のアミノ酸を表す)の少なくとも1つのコピーを有し、
    b)フラビンコファクターを用いて、NADH又はNADPHの酸化を介して電子伝達鎖のキノンの還元を触媒する能力を有し、かつ
    c)30〜60kDaのモノマーとして又はホモダイマーとして作用し、
    形質転換が緑藻類におけるNDH-IIの発現をもたらす
    緑藻類素産生能力を増大させる方法
  2. 前記NDH-IIが、NADHを優先的に使用するNDH-IIから、ピリジン-ヌクレオチド-結合ベータ-アルファ-ベータモチーフの第二ベータ-シートの末端に位置するグルタミン酸又はアスパラギン酸残基を、グルタミン又はアルギニンで置換することにより得られた変異型NDH-IIであることを特徴とする請求項1に記載の方法
  3. 前記NDH-IIが:
    - 配列番号2の配列により規定されるアグロバクテリウム・ツメファシエンスからのNDH-II Agtundh2、又は配列番号2の配列の位置201のグルタミン酸残基をグルタミン残基で置換することによりAgtundh2から得られる変異型NDH-II;
    - 配列番号4の配列若しくは配列番号4の配列のアミノ酸67〜619を含むその断片により規定されるクラミドモナス・ラインハーディからのNDH-II N2Cr2、又は配列番号4の配列の位置285のグルタミン酸残基をグルタミン残基で置換することによりN2Cr2から得られる変異型NDH-II
    から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法
  4. NDH-IIが、アシディアヌス・アムビバレンス(Acidianus ambivalens)のNDH-II (AJ489504)、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)のNDH-II (CAB41413.1)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)のNDH-II (NP#415627)、シネコシスティス属(Synechocystis sp.)のNDH-II (HOWITTら, J. Bacteriol. 181(13): 3994-4003, 1999; ORF slr1743: BAA17783)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)のNDH-II (AAD56918)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)のNDH-II (NP#389111)、アゾトバクター・ビネランディイ(Azotobacter vinelandi)のNDH-II (AAK19737)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)のNDH-II (AAM95239.1)、ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum)のNDH-II (CAB52796.1, CAB52797.1)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(YML120C、YMR145c、YDL085w)のNDH-II (NP#013586、NP#013865.1、NP#010198.1)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)のNDH-II (CAB41986, EAA27430)及びヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)のNDH-II (XP#505856)から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項で規定されるNDH-IIをコードするポリヌクレオチドで形質転換された緑藻類。
  6. 請求項5に記載の緑藻類の、水素を産生するための使用。
JP2007535202A 2004-10-11 2005-10-11 クラミドモナスでのii型nad(p)h脱水素酵素の異種発現による水素の産生 Expired - Fee Related JP4885862B2 (ja)

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