JP4884269B2 - プレキャストコンクリート製の腰壁の取付け方法 - Google Patents

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本発明は、プレキャストコンクリート製の腰壁の取付け方法に関する。
従来、建築物において、1階部分の支柱間に外壁を構成するプレキャストコンクリート製の腰壁(以下、PCa腰壁という)を取付ける場合がある。
このようなPCa腰壁の取付け方法として、従来、図8に示すような取付構造を用いたものがある。
この従来の取付方法は、先ず、基礎101部に立設された鉄骨柱102、102間に、その鉄骨柱102の外側で、かつ、基礎101上にPCa腰壁103を仮置きする。この仮置き状態は、基礎101上に高さ調整部材104を置いてその上にPCa腰壁103を立てて仮置きし、また、PCa腰壁103の上部を、これに設けた取付用鉄板105を前記鉄骨柱102に溶接固着した取付用ピース106に仮溶接W1して仮保持する。
次に、PCa腰壁103の外側下端縁107にバール等の治具を係止してPCa腰壁103の前後方向及び左右方向の位置調整作業を行う。
その後、PCa腰壁103の下部に固着した取付用鉄板108を基礎101に立設した鉄筋109と溶接し、更に、前記取付用鉄板105を取付用ピース106に本溶接し、PCa腰壁103を所定位置に固設する。
前記従来のPCa腰壁の取付方法(構造)においては、現場での溶接作業であるため、その溶接作業が困難であるとともに品質確保も困難な問題がある。
更に、建方作業はPCa腰壁103の内外の両側から行わなければならず、外側からの作業時が必要になる。
更に、PCa腰壁103の下端縁107にバール等の治具を係止して位置調整作業を行うと、その下端縁107にクラックや欠損が生じる問題もある。
そこで、本発明は、前記の問題を解決するPCa腰壁の取付け方法を提供することを目的とするものである。
前記の課題を解決するために請求項1記載の発明は、複数の支柱間にプレキャストコンクリート製の腰壁(以下PCa腰壁という)を配置して取付ける取付け方法において、複数の支柱の配列方向に設けられた基礎の上面であって、支柱より外側の上面に、支柱の配列方向に沿った嵌合溝を形成し、PCa腰壁の下面には、前記嵌合溝に嵌合する嵌合突部を形成し、PCa腰壁の下部の内側面にはフックを突設し、PCa腰壁の上部と支柱には、これらを接合するボルト接合手段を有し、前記PCa腰壁を、その下端の嵌合突部を前記嵌合溝に嵌合して立設し、その後、PCa腰壁の上部を支柱に前記ボルト接合手段により仮止め保持し、その後、室内側からバールを前記フックに係止してそのバールを動かしてPCa腰壁の位置の調整を行い、その後、PCa腰壁の上部を前記ボルト接合手段により本接合してPCa腰壁を取付けるようにしたことを特徴とするプレキャストコンクリート製の腰壁の取付け方法である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ボルト接合を、L状の取付具を用い、その水平方向の一片をPCa腰壁の上面にボルト接合し、垂直方向の他片を支柱にボルト接合するように構成したことを特徴とするものである。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記L状の取付具を支柱に取付けるボルトとしてワンサイドボルトを用いたことを特徴とするものである。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記フックを環状又はコ字状に形成したことを特徴とするものである。
請求項1及び2記載の発明によれば、PCa腰壁の取付けに溶接を用いないため、従来の溶接作業に比べて作業が容易で、品質確保も容易になる。
更に、PCa腰壁の位置調整作業をバールにより室内側から行うことができ、更に、PCa腰壁の上部の取付作業も室内側で行え、作業の安全性を図ることができる。
更に、PCa腰壁にフックを突設し、該フックにバールを係止してPCa腰壁を移動調節するため、従来のようにPCa腰壁にクラックや欠損が生じることがない。
請求項3記載の発明によれば、更に、支柱が、その内側からナットを締めることができない角型鋼管のような場合においても、PCa腰壁の上部をボルト接合することができる。
請求項4記載の発明によれば、更に、バールによるPCa腰壁の前後、左右方向の位置調整が容易に行える。
本発明を実施するための最良の形態を図1乃至図6に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明のプレキャストコンクリート製の腰壁(PCa腰壁という)を支柱間に設置した側断面図である。
図1において、支柱1は、建物の内側Aと外側Bとの境に立設された支柱で、該支柱1は、その横断面図形状が方形の角型鋼管からなる鉄骨柱で形成され、その下部がベースプレート2により基礎部に固定されている。また、該支柱1は、図1の紙面に対して表裏方向に所定の間隔を有して複数配列されている。なお、該支柱1は、その他、H型鋼等を用いても良い。
前記支柱1の下部付近には、前記複数の支柱1の配列方向(図1の紙面の表裏方向)にコンクリート製の基礎3が設けられている。すなわち、該基礎3は、建物の内側Aと外側Bとの境に位置して外回りの基礎を構成している。
更に、前記基礎3の上面は、前記支柱1の略中間部から支柱1の外側面より突出した位置まで形成され、その上面における支柱1から外側へ突出した面には、上面が開口した座堀からなる嵌合溝4が形成されている。該嵌合溝4は、支柱1の配列方向である前記基礎3の長手方向(紙面の表裏方向)に所定長、すなわち、後述するPCa腰壁5が配置される長さにわたって形成されている。
次に、PCa腰壁5について説明する。
PCa腰壁5は所定の左右長と高さと厚みを有する。該PCa腰壁5の下面には、図1及び図2に示すように、前記嵌合溝4に嵌合する形状で下方へ突出した嵌合突部6が、PCa腰壁5の側面に平行して全長にわって形成されている。
更に、PCa腰壁5の下部には、長ナット状のインサート7が埋設され、そのインサート7のねじ穴端がPCa腰壁5の内側面に開口している。そして、ボルト8aを有するフック8を、そのボルト8aを前記インサート7に螺着してインサート7に固定し、フック8がPCa腰壁5の内側面から突出するように固設されている。該フック8は、図3に示すように、金属からなる環状に形成されている。該フック8は、PCa腰壁5の左右方向(紙面の表裏方向)において複数、例えば、両端部近傍に位置して2個設けられている。また、フック8は、図に示すように、その中央穴が上下方向に貫通する状態に設けておく。
前記PCa腰壁5の上面部には、長ナット状のインサート9が埋設され、そのインサート9のねじ穴端がPCa腰壁5の上面に開口している。そして、図4に示すように、金属板をL状に折曲した取付具10の水平方向の一片10aが、これに形成した取付穴10bにボルト11を挿通してそのボルト11を前記インサート9に螺着することにより、PCa腰壁5の上面に固設できるようになっている。この取付穴10bの直径は、ボルト11のねじ部径より大径で、かつ、座金12の直径より小径に形成されており、PCa腰壁5に対する取付具10の取付位置の調整ができるようになっている。
前記取付具10の垂直方向の他片10cには取付穴10dが形成されている。そして、図1に示すように、支柱1に取付けられたボルト13に、他片10cの取付穴10dを挿通し、ボルト13にナット14を螺着することにより、取付具10を支柱1に固定できるようになっている。前記取付穴10dの直径は、ボルト13のねじ部径より大径で、かつ、座金14の直径より小さく設定されており、支柱1に対する他片10cの取付位置を調整できるようになっている。
前記ボルト13として、例えば、ワンサイドボルトを用いる。該ワンサイドボルトとしては、例えば、図5に示すように、ボルト13の先端に頭部13aを有し、ボルトのねじ部外周に金属筒からなり、一部にスリットを形成した係止筒13bを遊嵌し、これを支柱1に形成した取付穴1aに図示のように支柱1の外側から挿入し、ボルト13の外側端13cを専用ドライバーで外側方向に引くことにより、係止筒13bが、頭部13aと座金13d間で図5の鎖線のように屈曲して塑性変形し、ボルト13の抜け外れを阻止する構造のものを使用する。
前記インサート9、ボルト10、取付具11、ボルト13、ナット14によりボルト接合手段30を構成している。
図1において、15は、前記嵌合溝4と嵌合突部6間に介在したレベル調整部材、16は敷きモルタル、18は水切板、19は外壁仕上材を示す。また、20はPCa腰壁5の位置調整作業に使用するバールで、一般に仕込みバールと称されるものを使用する。
次に、PCa腰壁5の取付け方法について説明する。
先ず、基礎3の嵌合溝4の底面に、レベル調整部材15を嵌合溝4の長手方向に部分的に配置するとともに嵌合溝4内に敷きモルタル16を敷く。
次に、設置するPCa腰壁5をクレーンなどにより吊り下げて、支柱1の外側部に配置し、その下面に形成された嵌合突部6を基礎3の嵌合溝部4内に、レベル調整部材15に載置して嵌合する。
次に、取付具10の一片10aの取付穴10bをPCa腰壁5のインサート9に合致させ、ボルト11を取付穴10bを通じてインサート9に仮締めする。
次に、取付具10の他片10cを、取付穴10dを通じてワンサイドボルトのボルト13に挿通し、そのワンサイドボルトを支柱1に挿入し、専用ドライバーでボルト13を外側へ引き、係止筒13bを未完状態に屈曲させて、仮締めする。これにより、PCa腰壁5の上部が支柱1に仮保持される。
前記のボルト接合手段30によるPCa腰掛5の上部の仮保持作業は、支柱1、1間の空間を通じてPCa腰壁5の内側(室内側)から行うことができる。
次に、PCa腰壁5の内側(室内側)において、仕込みバール20の先部屈曲点Cを図1に示すように基礎3の上面に当て、その先部に折曲形成した引掛け部20aを、PCa腰壁5に突設した環状のフック8の穴部に通して引っ掛ける。この状態で、仕込みバール20の把持側を矢印のように上下に動かすと、基礎3との接触点Cを支点として引っ掛け部20aが前後方向に動き、フック8を介してPCa腰壁5の下部が室の内外方向に移動する。また、この仕込みバール20により、PCa腰壁5を、その左右方向(柱列方向)に移動することもできる。
したがって、作業者が室内側に位置して仕込みバール20でPCa腰壁5の前後方向及び左右方向の位置の微調整を行うことができる。また、仕込みバール20を使用することにより、テコの原理を利用して、容易に微調整できる。
前記の微調整時には、PCa腰壁5の上部に配置した取付具10の各取付穴10b、10dが、各ボルト11、13より大径に形成されているため、PCa腰壁5の微調整による移動が可能である。
そして、前後、左右の微調整後、支柱1、1間の空間を通じて室内側から前記ボルト11の本締め及び専用ドライバーによるワンサイドボルトのナット14の本締めをして本接合しPCa腰壁5を所定位置に固定する。
そして、前記のPCa腰壁5の設置作業が終了した後、前記フック8の穴に図6に示すようにアンカー筋22を挿通して備える。
そして、1階床のコンクリート23をF1まで打設する。このコンクリート23の硬化により、アンカー筋22が床コンクリート23内に埋設されて、PCa腰壁5が強固に保持される。
なお、前記ボルト13は、支柱1が角型鋼管であるため、ワンサイドボルトを用いたが、支柱1がH型鋼等、内外の両側からボルトとナットの締め付けができるものである場合には、ボルト13は、通常のボルトとナットを使用しても良い。
更に、前記取付具10における取付穴10bを前後方向の長穴とし、取付穴10dを上下方向の長穴に形成しても良い。
また、前記フック8を、図7に示すように、鉄筋をコ字状に折曲してフック部8bを形成するとともに、基部を外方へ折曲して係止部8cを形成したフック8Aとし、そのフック部8bをPCa腰壁5より突出し、基部8c側をPCa腰壁5内に埋設してもよい。
このフック8Aによれば、前記図3に示すフック8よりも安価に形成できる。
本発明の実施例を示す側断面図。 図1におけるPCa腰壁の嵌合突部を示す斜視図。 図1におけるフックを示す平面図。 図1における取付具を示す斜視図。 図1におけるボルト13の取付状態を示す拡大側断面図。 図1に示すフックにアンカー筋を挿通して備えた側面図。 フックの他の実施例を示す平面図。 従来のPCa腰壁の取付構造を示す側断面図。
符号の説明
1 支柱
3 基礎
4 嵌合溝
5 PCa腰壁
6 嵌合突部
8、8A フック
10 取付具
11、13 ボルト
30 ボルト接合手段

Claims (4)

  1. 複数の支柱間にプレキャストコンクリート製の腰壁(以下PCa腰壁という)を配置して取付ける取付け方法において、複数の支柱の配列方向に設けられた基礎の上面であって、支柱より外側の上面に、支柱の配列方向に沿った嵌合溝を形成し、PCa腰壁の下面には、前記嵌合溝に嵌合する嵌合突部を形成し、PCa腰壁の下部の内側面にはフックを突設し、PCa腰壁の上部と支柱には、これらを接合するボルト接合手段を有し、前記PCa腰壁を、その下端の嵌合突部を前記嵌合溝に嵌合して立設し、その後、PCa腰壁の上部を支柱に前記ボルト接合手段により仮止め保持し、その後、室内側からバールを前記フックに係止してそのバールを動かしてPCa腰壁の位置の調整を行い、その後、PCa腰壁の上部を前記ボルト接合手段により本接合してPCa腰壁を取付けるようにしたことを特徴とするプレキャストコンクリート製の腰壁の取付け方法。
  2. 前記ボルト接合を、L状の取付具を用い、その水平方向の一片をPCa腰壁の上面にボルト接合し、垂直方向の他片を支柱にボルト接合するように構成したことを特徴とする請求項1記載のプレキャストコンクリート製の腰壁の取付け方法。
  3. 前記L状の取付具を支柱に取付けるボルトとしてワンサイドボルトを用いたことを特徴とする請求項2記載のプレキャストコンクリート製の腰壁の取付け方法。
  4. 前記フックを環状又はコ字状に形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート製の腰壁の取付け方法。
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