以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施の形態における半導体ウェハの斜視図、図2は本発明の一実施の形態における半導体チップの製造手順を示すフローチャート、図3(a),(b),(c),(d)及び図4(a),(b),(c)は本発明の一実施の形態における半導体チップの製造手順の工程説明図、図5(a)は本発明の一実施の形態における枠部材付き半導体ウェハの斜視図、図5(b)は本発明の一実施の形態における枠部材付き半導体ウェハの分解斜視図、図6は本発明の一実施の形態におけるレーザ加工装置の構成図、図7は本発明の一実施の形態におけるプラズマダイシング装置の正面断面図、図8は本発明の一実施の形態におけるプラズマダイシング装置の平面断面図、図9は本発明の一実施の形態におけるプラズマダイシング装置の側面断面図、図10は本発明の一実施の形態におけるプラズマダイシング装置の部分拡大側面断面図、図11(a),(b)は本発明の一実施の形態における吸着搬送ツールと枠部材付きの半導体ウェハの側面図、図12、図13及び図14は本発明の一実施の形態におけるプラズマダイシング装置の正面断面図、図15(a),(b)は本発明の一実施の形態における半導体チップの境界溝の拡大斜視図、図16(a),(b),(c),(d)及び図17(a),(b),(c),(d)は本発明の一実施の形態における半導体チップの製造手順の工程説明図である。
図1において、半導体ウェハ1の表面の回路形成面1aは格子状のストリート(ダイシングライン)2によって複数の領域に区画されており、区画された個々の領域には半導体素子(集積回路)3が形成されている。このため半導体ウェハ1はストリート2に沿って切り分ければ多数の半導体チップ4を一括して得ることができる。
この半導体ウェハ1から半導体チップ4を製造するには、先ず、保護シート貼付工程ST1を実行する(図2)。この保護シート貼付工程ST1では、半導体ウェハ1の回路形成面1aに粘着質のシート状の保護シート(例えばUVテープ)5を貼り付ける(図3(a))。この保護シート5は半導体ウェハ1の外形と同じ外形に整形されており、半導体ウェハ1の回路形成面1a全体を被覆する。この保護シート貼付工程ST1では、予め半導体ウェハ1と同じサイズに整形された保護シート5を半導体ウェハ1の回路形成面1aへ貼り付けるようにしてもよいし、半導体ウェハ1よりも大きいサイズの保護シート5を半導体ウェハ1の回路形成面1aへ貼り付けたうえで、その後に保護シート5を半導体ウェハ1の外形に沿って切断(整形)するようにしてもよい。
保護シート貼付工程ST1が終了したら、次いで薄化工程(裏面研削工程)ST2を実行する(図2)。薄化工程ST2では、先ず、保護シート5が貼り付けられた半導体ウェハ1を研削装置6の回転定盤7に設置する。ここでは半導体ウェハ1の保護シート5が貼り付けられた面が回転定盤7の上面に固定されるようにし、回路形成面1aとは反対側の面(以下、裏面1bと称する)が上方に向くようにする(図3(b))。
半導体ウェハ1を回転定盤7に設置したら、回転定盤7の上方に設けられた研削ツール8によって半導体ウェハ1の裏面1bの研削を行う(図3(c))。半導体ウェハ1の裏面1bの研削では、研削ツール8を半導体ウェハ1の裏面1bに押し付けるとともに(図3(c)中に示す矢印A)、回転定盤7と研削ツール8を上下軸まわりに回転させつつ(図3(c)中に示す矢印B,C)、研削ツール8を水平面内で揺動させる(図3(c)中に示す矢印D)。この薄化工程ST2により、半導体ウェハ1の厚さは100〜30μm程度まで薄化される(図3(d))。なお、研削ツール8によって半導体ウェハ1の裏面1bに生じたダメージ層を除去するストレスリリーフ処理を薄化工程ST2に含めてもよい。
薄化工程ST2が終了したら、マスキング工程ST3を実行する(図2)。マスキング工程ST3では、薄化工程ST2において研削された半導体ウェハ1の裏面1bにダイアタッチフィルム11を介して(間に挟むようにして)耐エッチング性を有するフィルム状のマスク部材(ここではUVテープとする)12を貼り付ける(図4(a))。ここで、ダイアタッチフィルム11は、半導体ウェハ1が最終的に個々の半導体チップ4に切り分けられたとき、各半導体チップ4のダイボンディング用の(各半導体チップ4を基板等にボンディングするための)接着フィルム層として機能するものである。
ダイアタッチフィルム11は半導体ウェハ1の外径とほぼ同じ程度の(若干大きい)外径を有するものであるが、マスク部材12は半導体ウェハ1の外周からはみ出す程度の大きさの外径を有するものであり、その半導体ウェハ1の外周からはみ出したマスク部材12の外周部には、金属製(例えばステンレス製)のリング状の枠部材14が貼着されている(図5(a),(b))。すなわち、半導体ウェハ1の裏面1bに貼り付けられたマスク部材12はその外周部がリング状の枠部材14によって保持された状態となっている。以下、枠部材14によって外周部が保持されたマスク部材12が裏面1bに貼り付けられた状態の半導体ウェハ1を「枠部材付きの半導体ウェハ10」と称する。
マスキング工程ST3が終了したら、マスクパターン形成工程ST4を実行する(図2)。マスクパターン形成工程ST4では、先ず、枠部材付きの半導体ウェハ10を図6に示すレーザ加工装置20に設置する。
図6において、レーザ加工装置20は、枠部材付きの半導体ウェハ10を図示しない真空チャック機構等により水平姿勢に固定するウェハ固定部21、ウェハ固定部21の上方を三次元的に移動自在に設けられたレーザ照射装置22、撮像面を下方に向けてレーザ照射装置22と一体に移動する赤外線カメラ23、レーザ照射装置22の移動制御とレーザ照射装置22によるレーザ光24の照射制御及び赤外線カメラ23の撮像動作制御を行う制御部25を備える。赤外線カメラ23は、回路形成面1a側の半導体素子3やストリート2、認識マーク等を半導体ウェハ1の裏面1b側より撮像することができる。
枠部材付きの半導体ウェハ10は半導体ウェハ1の裏面1bに貼り付けられたマスク部材12が上を向くようにウェハ固定部21に固定される。ここで、マスクキング工程ST3が終了した半導体ウェハ1(枠部材付き半導体ウェハ10)をウェハ固定部21に固定する作業では、枠部材14の部分を把持して移動等すればよく、枠部材14に保持された
マスク部材12が半導体ウェハ1の搬送キャリヤとして機能する。
ウェハ固定部21に枠部材付きの半導体ウェハ10が固定されたら、レーザ加工装置20の制御部25は赤外線カメラ23から送られてくる半導体ウェハ1の撮像画像情報と図示しない記憶部に予め記憶したストリート2や認識マーク等の位置情報とに基づいてレーザ照射装置22の移動制御及びレーザ照射装置22によるレーザ光24の照射制御を行い、半導体ウェハ1のストリート2に沿ってレーザ光24を照射させる(図4(b))。これにより半導体ウェハ1のマスク部材12及びダイアタッチフィルム11のストリート2に対応する部分は除去され、マスク部材12の表面には格子状の複数の境界溝16から成るマスクパターンが形成され、その境界溝16からはストリート2に対応する半導体ウェハ1の裏面1bが露出される。(図4(c))。これによりマスク部材12及びダイアタッチフィルム11は、個々の半導体チップ4に対応する領域ごとに分割された状態となる。
マスクパターン形成工程ST4が終了したら、ウェハ搬入工程ST5を実行する(図2)。このウェハ搬入工程ST5では、レーザ加工装置20のウェハ固定部21から枠部材付きの半導体ウェハ1を取り外し、後述するプラズマダイシング装置30の真空チャンバ31内に搬入することによって行う。
ここで、図7、図8、図9及び図10を用いてプラズマダイシング装置30の構成を説明する。図8は図7における矢視VIII−VIII断面図、図9は図8における矢視IX−IX断面図である。
プラズマダイシング装置30は真空チャンバ31と、真空チャンバ31内に設けられたステージ32を有し、ステージ32には枠部材付きの半導体ウェハ10がマスク部材12を上に向けた状態で設置される。図7及び図8において、真空チャンバ31には枠部材付き半導体ウェハ10を真空チャンバ31に出し入れするための2つのウェハ出入口34が設けられており、これら2つのウェハ出入口34を開閉する位置にはゲート35が設けられている。これら2つのゲート35は制御装置36から作動制御がなされるゲート開閉駆動部37を介して真空チャンバ31に対して昇降し、ウェハ出入口34の開閉を行う。
ステージ32は下部電極であるウェハ支持部38と、このウェハ支持部38の外周側に設けられた枠部材支持部39から成る。ウェハ支持部38の上面と枠部材支持部39の上面はともに平坦でほぼ同じ高さとなっている。ウェハ支持部38は枠部材付き半導体ウェハ10の半導体ウェハ1の外形よりも大きい外形を有しており、枠部材付きの半導体ウェハ10の中心(半導体ウェハ1の中心)とステージ32の中心(ウェハ支持部38の中心)が上下方向にほぼ一致するように枠部材付き半導体ウェハ10をステージ32上に載置した状態では、半導体ウェハ1はウェハ支持部38の上面の領域内に収まり、枠部材14は枠部材支持部39の領域内に収まるようになっている(図7)。
図10において、枠部材支持部39の上面には円環状の溝部41が設けられている。この溝部41は、枠部材付き半導体ウェハ10の中心(半導体ウェハ1の中心)とステージ32の中心(ウェハ支持部38の中心)が上下方向にほぼ一致するように枠部材付き半導体ウェハ10をステージ32上に載置したときに、枠部材付き半導体ウェハ10の枠部材14が上方から嵌入する位置及び大きさに設けられている。
ウェハ支持部38にはウェハ保持機構42が設けられている(図7)。ウェハ保持機構42は真空チャックや静電吸引機構等から成り、制御装置36により作動制御がなされて作動し、半導体ウェハ1の回路形成面1aに貼り付けられた保護シート5を介して半導体ウェハ1をウェハ支持部38上に保持する。ウェハ支持部38にはまた、高周波電源部4
3及び冷却ユニット44が接続されている(図7)。高周波電源部43は制御装置36により作動制御がなされて作動し、下部電極としてのウェハ支持部38に高周波電圧を印加する。また、冷却ユニット44は制御装置36により作動制御がなされて作動し、ウェハ支持部38内で冷媒を循環させる。
真空チャンバ31内のウェハ支持部38の上方位置には上部電極45が設けられている。上部電極45には真空チャンバ31内に、後述する境界溝表面平滑化工程ST6及びプラズマダイシング工程ST7において必要な酸素系ガスやフッ素系ガス等のプロセスガスを供給するプロセスガス供給部46が接続されている(図7)。このプロセスガス供給部46は制御装置36により作動制御がなされて作動し、プロセスガスを上部電極45経由で真空チャンバ31内に供給する。真空チャンバ31の下部には真空排気口47が設けられており(図9)、ここには真空排気部48が接続されている。真空排気部48は制御装置36により作動制御がなされて作動し、真空チャンバ31内の空気を吸引排気して密閉された真空チャンバ31内を真空状態にする。
上部電極45の下面には多孔質プレート49が設けられており、プロセスガス供給部46から上部電極45内に供給されたプロセスガスはこの多孔質プレート49を通過してステージ32上に保持された枠部材付きの半導体ウェハ10に均一に吹き付けられる。
図9において、真空チャンバ31には一対の昇降シリンダ51が2つのウェハ出入口34が対向する方向(X軸方向)と直交する水平方向(Y軸方向)に並んで設けられている。各昇降シリンダ51はそれぞれピストンロッド52の先端部を上方に向けており、各ピストンロッド52は真空チャンバ31内を上下方向に延びている。これら一対の昇降シリンダ51は制御装置36により作動制御がなされるカバー部材昇降駆動部53を介して作動し、互いに同期してピストンロッド52を上下方向に突没させる。
ステージ32(枠部材支持部39)の上方には誘電体(例えばセラミックス)製のカバー部材54が設けられている。このカバー部材54はその中央部に円形の開口部55が形成されたリング形状を有しており、枠部材付き半導体ウェハ10の上方に重ねられたときに開口部55の領域内に半導体ウェハ1を位置させた状態で、枠部材14の上面の全域を覆うことができる形状及び大きさに形成されている。
図8、図9及び図10において、カバー部材54の外周部のY軸方向に対向する位置には一対の鍔部56が設けられている。各鍔部56はその直下に配置されている昇降シリンダ51のピストンロッド52の先端(上端)部と連結されており、一対の昇降シリンダ51が同期してピストンロッド52を上下方向に突没させると、カバー部材54は水平姿勢を維持したままステージ32の枠部材支持部39の上方を昇降する。
カバー部材54は両昇降シリンダ51のピストンロッド52を最大突出位置まで上動させた状態では上部電極45の直下の「上動位置」に位置する(図7及び図9中に一点鎖線で示すカバー部材54参照)。一方、カバー部材54は、両昇降シリンダ51のピストンロッド52を最大没入位置まで下動させた状態では枠部材付きの半導体ウェハ10の枠部材14に上方から当接した「枠部材当接位置」に位置する。
図10及び図8に示すように、昇降シリンダ51のピストンロッド52の先端部とカバー部材54の鍔部56とは、ピストンロッド52の先端部から上方に突出して延びた複数の連結突起57がカバー部材54の鍔部56を上下に貫通して設けられた複数の連結穴58に下方から挿通され、連結突起57の根元の当接面57a(図10)が鍔部56の下面に下方から当接することによって連結されている。このため、ピストンロッド52が最大突出位置から最大没入位置まで下動している途中でカバー部材54が枠部材付きの半導体
ウェハ10に上方から当接したときには、カバー部材54はその当接した位置(枠部材当接位置)に停止するが、ピストンロッド52の当接面57aは鍔部56の下面から下方に離間してカバー部材54とピストンロッド52との連結は外れ、ピストンロッド52はそのまま最大没入位置まで下動する。このときピストンロッド52の連結突起57は鍔部56の連結穴58内を下動する。
ここで、両昇降シリンダ51は、下降中のカバー部材54が枠部材付きの半導体ウェハ10の枠部材14と当接し、ピストンロッド52がそのまま最大没入位置まで下動したときであってもピストンロッド52の連結突起57が鍔部56の連結穴58から下方へ抜けない位置に設けられている。したがって両昇降シリンダ51のピストンロッド52が最大没入位置から上動すると、その途中でピストンロッド52の当接面57aは鍔部56の下面に下方から当接し、カバー部材54はピストンロッド52により持ち上げられて上動する。
枠部材付きの半導体ウェハ10の真空チャンバ31内への搬入及び搬出を行うための吸着搬送ツール60は、図11(a),(b)に示すように、作業者或いは別途設けたウェハ搬入搬出装置が把持する把持部61及び把持部61の先端部に設けられて下面に複数の吸着部62を備えた円盤状のウェハ保持部63を有して成る。ウェハ保持部63は枠部材付きの半導体ウェハ10の枠部材14を包含する程度の大きさを有しており、複数の吸着部62はそれぞれウェハ保持部63及び把持部61内を延びる真空管路を介して真空源(真空管路、真空源とも図示せず)に繋がっている。
枠部材付きの半導体ウェハ10を半導体ウェハ1の回路形成面1a(すなわち保護シート5)が下方を向く姿勢で平らな面の上に載置したうえで、その上方からウェハ保持部63と枠部材14が上下方向に重なるように吸着搬送ツール60を枠部材付きの半導体ウェハ10に近づけ(図11(a)中に示す矢印A)、複数の吸着部62が枠部材14の直上のマスク部材12に上面から接触したところで真空源により真空管路内の空気を真空吸引すれば、枠部材付きの半導体ウェハ10が吸着搬送ツール60の複数の吸着部62に吸着されるので(図11(b))、その状態を保持したまま吸着搬送ツール60を移動させることによって、枠部材付きの半導体ウェハ10を任意の箇所に移動させることができる。
ウェハ搬入工程ST5では、先ず、制御装置36からカバー部材昇降駆動部53の作動制御を行って2つの昇降シリンダ51のピストンロッド52を最大突出位置まで上動させ、カバー部材54を上動位置に位置させる。カバー部材54を上動位置に位置させたら、真空チャンバ31の外で吸着搬送ツール60により枠部材付きの半導体ウェハ10を吸着し、制御装置36からゲート開閉駆動部37の作動制御を行って一方のウェハ出入口34のゲート35を下降させる。これによりウェハ出入口34が開口したら、そのウェハ出入口34から枠部材付きの半導体ウェハ10を吸着させた吸着搬送ツール60を水平方向に差し入れ、枠部材付きの半導体ウェハ10をステージ32の上方に位置させる(図12)。そして、枠部材付きの半導体ウェハ10の枠部材14がステージ32の枠部材支持部39に設けられた溝部41に上方から接触するように吸着搬送ツール60を下降させて吸着搬送ツール60の真空吸引を解除すると、枠部材付きの半導体ウェハ10の枠部材14は枠部材支持部39の溝部41内に嵌入した状態となる(図13)。これにより半導体ウェハ1はウェハ支持部38上に載置された状態となる。
このようにウェハ搬入工程ST5では、マスクパターン形成工程ST4が終了した枠部材付き半導体ウェハ10の枠部材14の部分を吸着搬送ツール60によって把持して移動等すればよく、ここでも枠部材14に保持されたマスク部材12が半導体ウェハ1の搬送キャリヤとして機能する。
ここで、前述のように、ステージ32の枠部材支持部39に設けられた溝部41は、枠部材付きの半導体ウェハ10の中心とステージ32の中心とをほぼ一致させた状態で枠部材付きの半導体ウェハ10をステージ32上に載置したときに、枠部材付きの半導体ウェハ10の枠部材14が嵌入する位置及び大きさに設けられているので、上記のように枠部材付きの半導体ウェハ10の枠部材14をステージ32の枠部材支持部39に設けられた溝部41に嵌入させることにより、枠部材付きの半導体ウェハ10の中心(すなわち半導体ウェハ1の中心)とステージ32の中心(すなわちウェハ支持部38の中心)を上下方向にほぼ一致させた状態で枠部材付きの半導体ウェハ10をステージ32上に載置することができる。
枠部材付きの半導体ウェハ10をステージ32上に載置したら、吸着搬送ツール60を真空チャンバ31の外に出し(図14)、制御装置36からゲート開閉駆動部37の作動制御を行って現在開口しているウェハ出入口34のゲート35を上昇させ、そのウェハ出入口34を閉止させる。これにより真空チャンバ31内が密閉状態となる。
ウェハ出入口34を閉止させたら、制御装置36からカバー部材昇降駆動部53の作動制御を行ってカバー部材54を下降させる。カバー部材54は下降の途中でステージ32上に載置された枠部材付きの半導体ウェハ10の枠部材14に上方から当接し、その当接した位置(枠部材当接位置)に位置決めされる。また、カバー部材54が枠部材14に上方から当接して枠部材当接位置に位置決めされた後は、カバー部材54とピストンロッド52との連結は外れてカバー部材54は枠部材14の上に載った状態となるので、枠部材14はカバー部材54の自重によってステージ32上に押し付けられ、枠部材14はカバー部材54とステージ32との間に挟持されてステージ32上(枠部材支持部39上)に固定される(図7)。そして、このようにカバー部材54が枠部材当接位置に位置決めされた状態では、枠部材付きの半導体ウェハ10の枠部材14は誘電体製のカバー部材54によって上方から覆われた状態となる。これにより枠部材付き半導体ウェハ10のステージ32上への設置が完了し、ウェハ搬入工程ST5が終了する。
ウェハ搬入工程ST5が終了したら、境界溝表面平滑化工程ST6を実行する(図2)。
前述のマスクパターン形成工程ST4でレーザ加工されたマスク部材12の境界溝16の表面は、鋭角に尖ったギザギザな凹凸形状となっている。ここで「境界溝16の表面」とは、レーザ光24でマスク部材12(及びダイアタッチフィルム11)を切除することによって生じたマスク部材12の対向する2つの切除面12aと、これら2つの切除面12aの間から境界溝16に露出した半導体ウェハ1の裏面1bから成る面を指す(図15(a))。
境界溝16の表面がギザギザな凹凸形状となるのは、マスクパターン形成工程ST4において、脈動のあるレーザ光24によってマスク部材12を切除したためにマスク部材12の切除面12aに凹凸部12bができたり、マスク部材12の切除時に周囲に飛散したマスク部材12の残渣12cが境界溝16の表面に付着したりすること等による。
この状態から直ぐにプラズマダイシング装置30内でプラズマエッチングを行うと、切り分けられた半導体チップ4の側面もギザギザな形状になってしまい、そこに応力集中が発生し易くなる。このため半導体ウェハ1をプラズマダイシング装置30の真空チャンバ31内に搬入したら、プラズマエッチングを行う前に、マスクパターン形成工程ST4において凹凸形状となった境界溝16の表面の平滑化を行う。
境界溝表面平滑化工程ST6では、先ず、制御装置36から真空排気部48の作動制御
を行って真空チャンバ31内の空気を抜き、真空チャンバ31内を真空状態とする。そして、制御装置36からプロセスガス供給部46の制御を行って、上部電極45に酸素ガス(若しくは酸素ガスを主成分とする混合ガス)を供給させる。これにより上部電極45から多孔質プレート49を介して真空チャンバ31内に酸素ガスが供給される。この状態で制御装置36から高周波電源部43を制御して下部電極としてのウェハ支持部38に高周波電圧を印加すると、下部電極であるウェハ支持部38と上部電極45の間に酸素ガスのプラズマPoが発生する(図16(a))。この酸素ガスのプラズマPoは有機物であるマスク部材12(及びダイアタッチフィルム11)を灰化するので、境界溝16の表面は平滑化される(図16(b)、図15(b))。
この境界溝16の表面の平滑化は、具体的には、酸素ガスのプラズマPoによって境界溝16の表面(マスク部材12の対向する2つの切除面12a)の凹凸部12bを除去し、境界溝16の表面に付着したマスク部材12の残渣12cを除去し、境界溝16の表面(マスク部材12の対向する2つの切除面12a)の凹凸部12bを均してその凹凸部12bの凹凸周期を大きくすることによって行う(図15(b)参照)。なお、酸素ガスのプラズマにより境界溝16の表面の平滑化を行っている間は、冷却ユニット44を駆動して冷媒をウェハ支持部38内に循環させ、プラズマの熱によって半導体ウェハ1が昇温するのを防止するようにする。
酸素ガスのプラズマPo中にマスク部材12が曝露される時間が長ければ長いほどマスク部材12の灰化は進行するが、この境界溝表面平滑化工程ST6においてマスク部材12を酸素ガスのプラズマPo中に曝露する時間は、マスク部材12の境界溝16の表面が平滑化されるのに必要な最小限度のものとする。目安として、曝露時間はマスク部材12の外面側が1〜3μm程度除去されるものであることが好ましい。
境界溝表面平滑化工程ST6が終了したら、プラズマダイシング工程ST7を実行する(図2)。プラズマダイシング工程ST7では、先ず、制御装置36からプロセスガス供給部46の制御を行って上部電極45にフッ素系ガスを供給させる。これにより上部電極45から多孔質プレート49を介して真空チャンバ31内にフッ素系ガスが供給される。この状態で制御装置36から高周波電源部43を制御して下部電極としてのウェハ支持部38に高周波電圧を印加すると、下部電極であるウェハ支持部38と上部電極45の間にフッ素系ガスのプラズマPfが発生する(図16(c))。
発生したフッ素系ガスのプラズマPfは、マスクパターン(境界溝16)が形成されたマスク部材12をマスクとしてシリコン製の半導体ウェハ1の裏面1bをプラズマエッチングするので、半導体ウェハ1は境界溝16に沿って一括して切断される(プラズマダイシング)。これにより半導体ウェハ1は個々の半導体チップ4に切り分けられる(図16(d))。なお、このフッ素系ガスのプラズマPfにより半導体ウェハ1の裏面1bのエッチングを行っている間は、制御装置36から冷却ユニット44の制御を行って冷媒をウェハ支持部38内に循環させ、プラズマの熱によって半導体ウェハ1が昇温するのを防止するようにする。
ここで、境界溝16の表面はその前の工程(境界溝表面平滑化工程ST6)において平滑化されているので、プラズマエッチングによって形成される半導体ウェハ1の切断面、すなわち半導体チップ4の側面は平坦なものとなる。また、プラズマエッチングは境界溝16を起点として進行するので、切り分けられた個々の半導体チップ4の大きさと、各半導体チップ1に貼り付けられているダイアタッチフィルム11の大きさとはほぼ同じ大きさとなる。
また、このプラズマダイシングが実行されている間、マスク部材12の外周部を保持す
る金属製等の枠部材14は誘電体製のカバー部材54によって上方から覆われているので、真空チャンバ31内に発生したプラズマが枠部材14に集中することが防止される。
プラズマダイシング工程ST7が終了したら、ウェハ搬出工程ST8を実行する(図2)。このウェハ搬出工程ST8では、先ず、制御装置36からプロセスガス供給部46の制御を行って真空チャンバ31内へのプロセスガスの供給を停止させ、真空排気部48の作動制御を行って真空チャンバ31内の真空を破壊する。そして、制御装置36からカバー部材昇降駆動部53の作動制御を行って2つの昇降シリンダ51のピストンロッド52を最大突出位置まで上動させ、カバー部材54を上動位置に位置させる。次いで、制御装置36から一方のウェハ出入口34のゲート35を開いて吸着搬送ツール60を真空チャンバ31内に挿入し、真空チャンバ31内への搬入時と同様の要領によって吸着搬送ツール60に枠部材付きの半導体ウェハ10を吸着させる。そして、その枠部材付きの半導体ウェハ10を吸着させた吸着搬送ツール60を開口させたウェハ出入口34から真空チャンバ31の外部に出し、制御装置36からゲート35を閉止する。これにより真空チャンバ31内から枠部材付きの半導体ウェハ10(切り分けられた半導体チップ4が保護シート5によって繋がった状態のもの)が搬出される。
このようにウェハ搬出工程ST8では、枠部材14の部分を吸着搬送ツール60によって把持して移動等すればよく、ここでも枠部材14に保持されたマスク部材12が半導体ウェハ1の搬送キャリヤとして機能する。
このようにウェハ搬出工程ST8が終了したら、ダイボンディングシート貼付工程ST9を実行する(図2)。ダイボンディングシート貼付工程ST9では、枠部材付きの半導体ウェハ10を保護シート5が貼り付けられた側の面が上になるようにし、下面側のマスク部材12にダイボンディングシート17を貼り付ける(図17(a))。このダイボンディングシート17の貼り付けは、マスクパターン形成工程ST4で分断されたマスク部材12を跨ぐようにして行う。
このダイボンディングシート貼付工程ST9では、ダイボンディングシート17は枠部材14を含む大きさを有してその外周が枠部材14によって保持されるようにしてもよいが、必ずしも枠部材14に外周が保持されるようにしなくもてよい。但し、後者の場合であっても、少なくとも、マスクパターン形成工程ST4で分断されたマスク部材12の全てがこのダイボンディングシート17によって繋げられる程度の十分な大きさを有している必要がある。
このダイボンディングシート貼付工程ST9では、枠部材付き半導体ウェハ10の移動等は枠部材14の部分を把持して行うことができ、ここでも枠部材14に保持されたマスク部材12が半導体ウェハ1の搬送キャリヤとして機能する。
ダイボンディングシート貼付工程ST9が終了したら、次いで保護シート除去工程ST10を実行する(図2)。保護シート除去工程ST10では、ダイボンディングシート17が貼り付けられた状態の枠部材付き半導体ウェハ10(個々の半導体チップ4に切り分けられた半導体ウェハ1)から、保護シート5を引き剥がして除去する(図17(b))。これにより各半導体チップ4はその半導体チップ4とほぼ同じ大きさのダイアタッチフィルム11を下面(半導体ウェハ1の裏面1b)側に有し、そのダイアタッチフィルム11を介してダイアタッチフィルム11とマスク部材12の間の粘着力及びマスク部材12とダイボンディングシート17の間の粘着力によってダイボンディングシート17の上面に保持された状態となる。この保護シート除去工程ST10では枠部材付き半導体ウェハ10の移動等は枠部材14の部分を把持して行うことができ、ここでも枠部材14に保持されたマスク部材12が半導体ウェハ1の搬送キャリヤとして機能する。
保護シート除去工程ST10が終了したら、接着力低下処理工程ST11を実行する(図2)。接着力低下処理工程ST11では、UVテープから成るマスク部材12に紫外線を照射することによって、ダイアタッチフィルム11とマスク部材12の間の接着力を低下させる(図17(c))。この接着力低下処理工程ST11によってマスク部材12のダイアタッチフィルム11に対する接着力は弱められ、下面にダイアタッチフィルム11を有した各半導体チップ4をダイボンディングシート17から容易に剥離させることができるようになる。
ここで、前述のように、マスクパターン形成工程ST4の終了時には、マスク部材12及びダイアタッチフィルム11は、個々の半導体チップ4に対応する領域ごとに分割された状態となっている。このため、保護シート5が除去され、接着力低下処理工程ST11においてダイアタッチフィルム11とマスク部材12の間の接着力が低下されると、ダイアタッチフィルム11付きの半導体チップ4は、ダイボンディングシート17に貼り付けられているマスク部材12から容易に剥離させることができ、図示しないピックアップ機構によってダイボンディングシート17の下方から半導体チップ4を押し上げれば、ダイアタッチフィルム11付きの半導体チップ4はダイボンディングシート17から剥離する(図17(d)。剥離工程ST12)。このダイボンディングシート17から剥離した半導体チップ4は下面に接着フィルム層であるダイアタッチフィルム11が貼り付けられた状態となっているので、これをピックアップすれば、そのままこの半導体チップ4をリードフレームや基板等にボンディングすることができる。
以上説明したように、本実施の形態における半導体チップ4の製造方法では、 半導体ウェハ1は、少なくともマスキング工程ST3後からダイボンディングシート貼付工程ST9まで、枠部材14に保持されたマスク部材12が貼り付けられた状態となっており、この枠部材14に保持されたマスク部材12が半導体ウェハ1及びプラズマダイシング工程ST7において切り分けられた半導体チップ4の搬送キャリヤとして使用されるので、工程間における半導体ウェハ1の取り扱いが大変容易である。ここで、半導体ウェハ1の裏面1bへのマスク部材12の取り付けは半導体ウェハ1に薄化工程ST2を施した後に行われるので、従来のように薄化工程で枠部材14と研削ツール8とが干渉することがなく、薄化工程ST2では既存の設備を使用することができる。
また、プラズマダイシング工程ST7の後、マスクパターン形成工程ST4で分断されたマスク部材12を跨ぐように半導体ウェハ1の裏面1b側にダイボンディングシート17が貼り付けられ、その後に個々の半導体チップ4に分断された半導体ウェハ1から保護シート5が除去されるようになっているので、保護シート5が除去された時点で、半導体チップ4は、回路形成面1aとは反対側の裏面1bにダイボンディングシート17が貼り付けられた状態となっており、剥離工程ST12でも既存の設備を使用することができる。更に、この剥離工程ST12で、マスク部材12はダイボンディングシート17に貼り付いた状態で残るので、プラズマダイシング工程ST7の後、半導体チップ4の回路形成面1aからマスク部材12を除去する工程を必要としない。
ここで、ダイボンディングシート貼付工程ST9で、ダイボンディングシート17が枠部材14を含む大きさを有してその外周部が枠部材14によって保持されるように半導体ウェハ1に貼り付けられた場合には、保護シート除去工程ST10において保護シート5が半導体ウェハ1の回路形成面1aから除去されると(図17(b))、その時点でマスク部材12は半導体チップ4の搬送キャリヤとしては機能しなくなり、代わりにダイボンディングシート17が新たな半導体チップ4の搬送キャリヤとしての役割を果たすことになる。しかし、ダイボンディングシート貼付工程ST9で、ダイボンディングシート17が枠部材14を含む大きさを有しておらず、その外周が枠部材14によって保持されてい
ない場合には、枠部材14に保持されたマスク部材12と、これに貼り付けられたダイボンディングシート17とが、新たな半導体チップ4の搬送キャリヤとしての役割を果たすことになる。この場合には、マスク部材12は、ダイボンディングシート貼付工程ST9以後の工程においても切り分けられた半導体チップ4の搬送キャリヤとして使用されることになる。
また、本実施の形態におけるプラズマダイシング装置30では、半導体ウェハ1の回路形成面1aとは反対側の裏面1bに貼り付けられた耐エッチング性を有するフィルム状のマスク部材12の外周部がリング状の枠部材14によって保持されており、真空チャンバ31内には半導体ウェハ1を支持するウェハ支持部38の外周側に枠部材14を支持する枠部材支持部39が設けられているので、半導体ウェハ1は真空チャンバ31内におけるプラズマダイシング工程ST7の前後において枠部材14により保持されたマスク部材12と一体となった状態で取り扱うことができる。このため半導体ウェハ1の真空チャンバ31内への搬入搬出時には枠部材14により保持されたマスク部材12を半導体ウェハ1の搬送キャリヤとして機能させることができ、真空チャンバ31内への半導体ウェハ1の搬入搬出作業を容易にして作業性を向上させることができる。
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態では、ダイアタッチフィルム11の外面に貼り付けられる耐エッチング性を有するフィルム状のマスク部材12としてUVテープを用いるとしていたが、UVテープのほかに、例えばポリオレフィン系の樹脂やポリイミド系の樹脂等のような高温環境化でフッ素系ガスのプラズマに耐え得る材料から成る基材と、UVテープに対する紫外線照射のような簡易な方法によって接着力が低下する接着剤との組み合わせから成るもの等を用いることができる。