JP4881941B2 - 光学素子設計製造支援システム - Google Patents

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Description

本発明は、光学素子および光学素子成形用金型を高精度に製造する技術に関するものであり、光学素子設計製造を支援するシステムに関するものである。
従来から、撮像カメラをはじめレーザビームプリンタ、複写機、半導体露光装置など各種光学装置の性能向上に伴い、これらの光学装置に組み込まれるレンズ、ミラー、プリズムなどの光学素子の形状精度への要求が高度化してきている。具体的には、光学素子の形状は従来の平面、球面、あるいは軸対称非球面から自由曲面へと複雑化しており、形状が複雑化するほど要求される光学面形状精度も厳しくなっている。さらに、製品サイクル短縮や低コスト競争に伴うコストダウンを達成させるために、製品製造リードタイム短縮が光学素子製造においても要求されている。
近年、光学素子製造分野に限らず、一般的な部品製造分野においても高品質、低コスト、短納期の要求から、部品製造工程において様々な製造支援システムが運用されている。特に一般構造体成形用金型の製造分野においては、CAD/CAMの導入が急速に進んでいる。ここで、金型製造におけるCAD/CAMを中心とした製造システムの従来技術について、図8および図9を用いて説明する。
図8は金型製造工程を説明するためのフローチャートである。図8において、製造工程開始後、まずステップS201にて金型設計を行う。金型設計は3DCADソフトウェアを用いて行われ、設計図は3DCADデータとして保存される。ステップS201にて出力された金型設計図3DCADデータをもとに、ステップS202において金型の加工工程設計が行われる。
ステップS203では、ステップS202において設計された加工工程に基づき、加工装置制御に必要となるNCデータを生成する。具体的には、ステップS201にて出力された3DCADデータおよび前記加工工程を表す詳細な加工条件(装置制御パラメータ)を入力とし、CAMソフトウェアを用いてNCデータを生成する。
金型加工に使用する加工装置は、前記NCデータがあれば装置制御が可能となり、金型加工が実施できる状態となる。しかしながら、ステップS203で生成されたNCデータには、加工雇との工具干渉有無などは考慮されていない。そのため、金型加工における加工ミスを回避するためには、事前に工具干渉の有無などを確認しておく必要がある。これより、ステップS204では工具干渉の有無などを検証する加工シミュレーションを実施し、確実に加工が行えるようにNCデータを修正する。
加工ミスが発生することなく確実に加工可能なNCデータをステップS204にて生成後、ステップS205において金型加工が行われる。ここでは、加工作業者が熟練者ノウハウ、スキルを加工条件に反映し、加工シミュレーションでは反映できなかった詳細な加工条件を修正する場合がある。金型加工終了後、加工作業者が修正し実際の金型加工に使用したNCデータなどの加工情報を、加工実績データベースに登録し(ステップS206)、金型製造工程は終了となる。
金型製造工程を支援する製造システムとしては、図8のステップS202からS204までのデータ処理を自動化し、人手を介さずにNCデータを生成可能なCAD/CAMシステムが実用展開されている。ここで、前記データ処理の自動化について、図9を用いて具体的に説明する。
図9は、図8のステップS202に示す加工工程設計において使用する工程設計ツールを説明するための図である。加工工程の自動設計ソフトウェアである工程設計ツール213は、加工装置データベース211と加工実績データベース212に、コンピュータネットワークシステムを介して接続されている。加工装置データベース211は、金型加工に使用する加工装置の機能、性能、使用制約条件などをまとめた装置仕様情報が保存されているデータベースである。加工実績データベース212は、図8のステップS206で登録する加工実績情報が保存されているデータベースである。工程設計ツール213は、これらのデータベースから工程設計を行う上で必要となる装置情報、過去の加工実績情報を自動取得し、加工装置制約条件および加工実績に基づいた加工条件を自動決定する。
さらに図8において、ステップS202で図9に示すシステム構成により自動生成された加工工程情報に基づき、ステップS203にてNCデータ生成、ステップS204にて加工シミュレーションを順次自動処理する。このように、ステップS201においてCADデータ作成後、ステップS205の金型加工に至るまでのNCデータ生成に関するCAD/CAMデータ処理を自動化したシステムとしては、たとえば特開2006−98251(特許文献1)や非特許文献1に開示されているようなシステムが挙げられる。非特許文献1に開示されているシステムでは、Webサービスを活用したサーバ・クライアント型ネットワークアプリケーションとしてシステムが構築されていることを特徴とする。
特開2006−98251号公報 「Web分散処理を活用したCAM自動化統合加工システム」、2004年度精密工学会秋季大会学術講演会講演論文集、2004年、p.51
前記した従来の金型製造システムと同様な製造システムを光学素子製造工程に適用する場合、以下に記す課題があるため適用困難である。
(1)CADデータの計算精度不足
光学素子製造では一般的な部品製造とは異なり、光学面に関してはnmオーダーの形状精度が要求される。特に半導体露光装置などに搭載される光学素子は、1nm以下のより高精度な光学面形状が求められている。一方、一般的な市販3DCADソフトウェアが保証している計算精度は現状μmオーダー程度であり、光学面形状の要求精度に対しては計算精度が不足する。
光学素子製造においても、光学装置に対する光学素子取り付け基準面や光学面外周形状など、一般的な製造部品と同様な形状精度で取り扱い可能な部分を設計するために、3DCADデータが必要となる。同時に、nmオーダーの形状精度が必要となる光学面形状を設計する際には、数式を定義したデータと同データから形状計算を行う光学面形状計算ツール(ソフトウェア)が別途必要となる。これより光学素子製造においては、光学素子設計形状を表すデータとして、前記数式定義データと3DCADデータを組み合わせて用いることにより製造工程を実現している。
一方、前記したとおり光学素子製造においても、一般構造体を対象とした金型製造分野に導入されているような、CAD/CAMデータ処理を中心とした製造システムの導入が求められている。しかしながら、光学素子設計形状データを3DCADデータのみで管理することができないことから、金型製造分野で実用化されている従来の製造システムを適用することが困難であるという課題がある。
(2)nmオーダーの光学面形状精度を測定可能な形状測定装置に起因する設計制約
要求される形状測定精度がμmオーダーの一般的な製造部品を対象とした形状測定には、接触式タッチプローブを備えた三次元座標測定装置が通常用いられる。一方、光学素子製造における光学面形状計測工程では、nmオーダーの測定精度を有する高精度三次元形状測定装置が用いられる。しかしながら、μmオーダーの測定精度を有するタッチプローブ式三次元座標測定に比べ、nmオーダーの測定精度を有する高精度三次元形状測定装置は、測定対象となる製造部品の形状に制約が設けられる。具体的には、プローブ接触方向に対する被測定面の傾斜角度や、被測定面の局所的な曲率などが、形状制約条件として挙げられる。
たとえば、光学面形状測定に使用可能な高精度三次元形状測定装置の装置仕様として、測定可能な被測定面傾斜角度が60度だったとする。このとき、連続した面形状として測定する一光学面の形状は、面形状を保証する必要がある領域内において傾斜角度が±60度以内に収まる形状になっていないと、前記形状測定装置では測定不可能となる。光学素子製造において光学面形状の高精度形状測定工程は、形状創成および品質保証を行う上で必須である。したがって、光学素子製造を成立させるためには、前記した光学面の傾斜角度に関する制約を満足するような光学設計がなされていなければならない。
また、光学素子の光学面形状測定を行う場合、通常形状測定装置に対し被測定物である光学素子を取り付ける際に、測定治具や測定雇を介してセットされる。形状測定装置の装置制約である測定可能傾斜角度範囲は、装置に対する被測定面の取り付け姿勢について考慮しなければならない。したがって、光学設計において被測定面となる光学面の傾斜角度に関する制約を満足しているだけでなく、測定治具、雇を介して形状測定装置に取り付けた際にも傾斜角度制約を満たすように、測定治具および雇についても設計されていなければならない。
一方、従来の一般構造体を対象とした金型製造に導入されている金型製造システムでは、形状計測工程に起因する形状制約を金型設計に反映させるような機能を備えていない。光学素子製造においては、素子設計段階および測定治具、雇設計段階における形状制約条件の判定が必須であるため、金型製造分野で実用化されている従来の製造システムを適用することは困難であるという課題があった。
上記の(1)CADデータの計算精度不足、(2)nmオーダーの光学面形状精度を測定可能な形状測定装置に起因する設計制約という問題から、従来の金型製造システムと同様な製造システムを光学素子製造に適用することは困難である。(1)に関しては、光学素子設計形状に関するデータ処理を自動化できないため、人手を介し手動で処理する必要がある。このため、人為的なデータ入力ミスなどが原因で光学素子製造工程に戻りが発生する可能性が高く、その場合には製造納期が遅延してしまうという課題がある。また(2)については、設計段階において後工程である形状計測工程における装置制約条件を考慮できていない場合に、形状計測工程において計測不能となってしまう。また、形状測定装置故障を引き起こす可能性もある。その結果、光学素子製造において、失敗コストや製造納期遅延が発生してしまうという課題がある。
本発明は、上記従来技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、前記(1)および(2)の課題を解決するデータ管理方法と光学素子設計製造支援システムを提供する。これらのシステムを光学素子製造に適用することで、従来実現不可能であった光学素子製品の低コスト、短納期を実現可能とすることが本発明の目的である。
上記課題を解決するための、本発明の光学素子設計製造支援システムは
コンピュータネットワークシステムに接続されたネットワークアプリケーションとして構築されている光学素子設計製造支援システムにおいて、光学素子の設計形状データを記録する光学素子設計形状データベースと、測定治具および測定雇の設計形状データを記録する測定治具、測定雇データベースと、光学素子の形状を計測する形状計測装置の装置制約条件データベースと、前記各データベースに記録されているデータをもとに、光学素子並びに測定治具および測定雇の設計形状データが、前記光学素子並びに前記測定治具および前記測定雇が前記形状計測装置に取り付けられた際に前記形状計測装置が所定の精度で測定するために前記光学素子並びに前記測定治具および前記測定雇の形状に要求される設計制約条件を満たしているか否かを判定する演算手段と、該演算手段による演算した結果を出力する出力手段とを備えていることを特徴とする。
本発明は、光学素子設計形状情報を保持する数式定義データと3DCADデータを、データ管理システムにより関連付けて一括管理することにより、光学素子製造における形状計測工程のデータ処理を自動化する。その結果、従来発生していたデータ入力ミスに起因した測定ミス、再測定による戻りを解消し、光学素子の低コスト、短納期を実現できる点において効果的である。また、設計制約情報を参照可能な光学素子設計環境、光学素子測定治具および雇設計環境をネットワークアプリケーションとして提供することにより、設計段階で装置制約条件を確実に満足させることが可能となる。その結果、制約条件を満たすための再設計による工程の戻りを解消でき、光学素子の低コストおよび短納期を実現できる点において効果的である。
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第一の実施形態による光学素子設計製造支援システムのシステム構成を説明するためのブロック図である。本発明で提供する光学素子設計製造支援システムの詳細は、図1に示すとおり光学素子設計製造情報統合システム50、設計形状データ管理システム51、3DCADツール52、制約条件判定ツール53からなる。従来技術の金型製造システムなどと同様に、各サブシステム、ツールはコンピュータネットワークシステムを介して接続されており、いわゆるサーバ・クライアント型のネットワークアプリケーションとして構築されている。
光学素子設計製造情報統合システム50はユーザインタフェース機能を備えており、ユーザはこのシステムを介して光学素子設計製造に必要となる各種データの入出力を行う。また、光学素子設計製造情報統合システム50は、図1、に示すサブシステムおよびツールを連携させる機能を備えている。たとえば、3DCADツール52で光学素子設計形状3DCADデータに対しデータ処理を行う場合、3DCADツール52への3DCADデータ入出力は光学素子設計製造システム50を介して行われる。
また、設計形状データ管理システム51は光学素子設計製造情報統合システム50のサブシステムとして表している。設計形状データ管理システム51では、光学素子設計形状3DCADデータベース(光学素子設計形状データベース)10、光学素子設計形状数式定義データベース11、測定治具、雇設計形状3DCADデータベース測定治具、(測定治具、測定雇データベース)12を管理する。特に、光学素子の設計形状情報を保持する光学素子設計形状3DCADデータ、および光学有効面形状を定義する数式定義データを一元管理することが本発明の特徴である。前記3つのデータベースに保存された各種設計形状データは、後述する設計形状管理No.によりリレーションが取られる構成となっている。すなわち、設計形状管理No.に対し該当する光学素子の光学素子設計形状3DCADデータと、光学素子設計形状数式定義データが特定される。
制約条件判定ツール53は、形状測定装置制約条件データベース13とコンピュータネットワークシステムを介して直接つながっている。また、光学素子設計製造情報統合システム50、設計形状データ管理システム51を介して各種設計形状データを取得可能なシステム構成となっている。
図1において光学素子計測システム54は、測定条件データベース14、光学素子測定実績データベース15、および測定治具三次元座標測定データベース16とコンピュータネットワークシステムを介して直接つながっている。測定治具三次元座標測定データベース16の設計形状3DCADデータは、前述の設計形状データ管理システム51で管理されている。
次に、図2に示した本発明の光学素子設計製造支援システムによる、光学素子設計製造工程の概要を説明する。
図2は、本発明の一実施形態による光学素子設計製造工程を説明するためのフローチャートである。本発明による光学素子設計製造工程においては、はじめにステップS1で光学設計を行う。ステップS1では、製造対象となる光学素子が所望の光学性能を発揮するための光学有効面形状を、光学CADツールを用いて設計する。
次にステップS2において、ステップS1で決定した光学有効面形状に対し、光学有効面形状に関する設計制約条件を満足しているかを、後述するチェックツールを用い確認する。ここでいう設計制約条件とは、具体的には後述するステップS10で実施する光学素子形状計測工程において使用する、形状測定装置の装置仕様に依存した装置制約条件である。
ステップS3において、ステップS1で設計した光学有効面形状が前記設計制約条件をクリアしている場合には、Yesで示すフローに従い次工程である光学素子設計(ステップS4)に工程を進める。制約条件を満たせなかった場合には、Noで示すフローをたどりステップS1の光学設計に戻る。この場合、前記設計制約条件を満たすべく光学設計を再度行い、光学有効面形状を再設計する。
ステップS4では、ステップS1で設計した光学有効面の周辺形状や、光学素子を光学装置に搭載する際に取り付け部分となる形状など、光学有効面以外の形状について3DCADツールを用いて設計する。3DCADツールに関する詳細については後述するが、市販の3DCADソフトウェアに対し、本発明で提供する機能が追加されていることを特徴とする光学素子設計ツールである。
ステップS5ではステップS2と同様、ステップS4で設計した光学素子形状に対し、光学素子形状に関する設計制約条件を満足しているかを、後述するチェックツールを用いて確認する。ここでの設計制約条件もステップS2同様、光学素子形状計測工程において使用する形状測定装置の装置制約条件である。
ステップS3の分岐と同様にステップS6においても、ステップS5で設計した光学素子形状が前記設計制約条件をクリアしている場合には、Yesで示すフローに従い工程を進める。すなわち、測定治具、雇設計(ステップS7)および光学素子製作(ステップS8)に工程は進められる。一方、制約条件をクリアできなかった場合には、Noで示すフローをたどりステップS4の光学素子設計に工程は戻る。この場合、前記設計制約条件をクリアするように、光学有効面形状以外の光学素子形状について再設計を行う。
ステップS8の光学素子製作では、前工程で決定された光学有効面形状および光学有効面以外の部分を含む光学素子形状の設計値をもとに、光学素子を製作する。具体的な製作方法としては、たとえば光学素子成形用金型を用いた成形加工による方法であってもよい。あるいは、硝材などを材質とする光学素子材料を直接加工し形状創成する方法であっても良い。本発明ではこれら光学素子製作方法を限定しない。
ステップS7では、前工程で決定された光学素子設計形状に従い、後述するステップS10で実施する光学素子形状計測工程において使用する測定治具、および測定雇を設計する。その際、ステップS4と同様に3DCADツールが用いられるが、ここでの3DCADツールもステップS4で使用するツール同様、市販の3DCADソフトウェアに対し後述する本発明の提供機能が追加されていることを特徴とする。
測定治具および測定雇の設計が完了すると、ステップS2およびステップS5と同様、ステップS7で設計した測定治具、雇形状に対し設計制約条件を満足しているかを、後述するチェックツールを用いて確認する(ステップS9)。なおここでの設計制約条件も、光学素子形状計測工程において使用する形状測定装置の装置制約条件である。
ステップS10の分岐において、ステップS7で設計した測定治具、雇形状が前記設計制約条件をクリアしている場合には、Yesで示すフローに従い工程を進める。すなわち、測定治具、雇製作(ステップS11)および測定入力データ作成(ステップS12)に工程は進められる。一方、制約条件を満たせなかった場合には、Noで示すフローをたどりステップS7の測定治具、雇設計工程に戻る。この場合、前記設計制約条件をクリアすべく、測定治具および測定雇を再設計する。
ステップS11では、前工程で決定された測定治具および測定雇の設計形状をもとに、測定治具、測定雇をそれぞれ製作する。ここで、測定治具および測定雇の設計形状は、前記3DCADツールを用いて設計した結果出力された3DCADデータとしてファイル保存されている。これらCADデータファイルを入力とし市販CAMツールを使用し、測定治具および測定雇を加工製作する。
ステップS11と並行してステップS12では、後工程であるステップS13の光学素子形状計測工程で必要となる測定入力データを作成する。ここでのデータ作成作業は、具体的には本発明が提供する光学素子計測システムの一機能である測定準備ツールを用いて行われる。光学素子計測システムならびに測定準備ツールの詳細については、後述する実施例の中で説明する。
ステップS8の光学素子製作、ステップS11の測定治具、雇製作、およびステップS12の測定入力データ作成が全て完了した後に、最後にステップS13において光学素子形状計測を行う。具体的には、光学有効面形状に対しnmオーダーの測定精度を有する高精度三次元形状測定装置が用い、高精度三次元面形状計測を行う。ここでの面形状計測は、光学素子製造工程においては不可欠である光学面形状評価、および面形状補正を行う場合の形状修正データを取得することを目的とするものである。
本発明に係る光学素子製造工程は、ステップS13の光学素子形状計測が完了をもって終了となる。
次に、図2に示した光学素子設計製造フローにおける各設計工程の詳細を説明する。
図2のステップS1で行う光学設計では、光学CADツールを用い光学有効面形状について設計を行う。一般的に光学有効面の設計形状は何らかの連続関数で定義される。すなわち、光学有効面の光軸方向をZ軸とし、Z軸に直行する二軸をX軸、Y軸とする直交三軸座標系(右手系)を設定した場合、光学有効面形状は連続関数z=f(x,y)の形式で定義される。ここで、光学有効面形状は必ずしも単純な一関数z=f(x,y)で表されるとは限らない。たとえば、ベース面形状を定義するz=b(x,y)と、ベース面形状の上に形状修飾される微細構造を定義するz=c(x,y)を加算した形状z=b(x,y)+c(x,y)で表される場合もある。さらに、光学有効面形状を定義する前記三軸座標系において、XY領域によって形状定義関数が異なる場合もある。すなわち、一光学有効面内のある領域についてはその形状がz=s(x,y)で定義され、隣接する別の領域ではz=t(x,y)で定義される場合もある。本発明ではこれらの形状定義方法を特に限定しない。光学有効面形状が、前記直交三軸座標系において横座標(x,y)の何らかの関数として数式定義されていればよい。
ステップS1において設計した光学有効面形状の設計情報は、上記の光学有効面形状の数式定義z=f(x,y)を表す情報をデータファイルとして出力する。光学CADツールが出力する光学有効面設計形状情報は、一般に数式を定義するための多項式係数に関する情報や、数式を定義する座標系の座標変換情報などで構成される。本発明では、光学面設計形状データとして、光学CADツールが出力するような数式定義情報および座標変換情報などから構成されるデータファイルを取り扱うことを特徴とする。具体的には図3に示すように、光学有効面設計形状を定義する数式内のある項の係数を表すタグ20に対し、その係数の値がパラメータ21として設定されるようなデータファイルである。この光学有効面設計形状数式定義データファイルの形式は、たとえばXMLを用いたタグ、パラメータ構造データファイルなどが好ましいが、本発明ではこのデータファイル形式を特に限定しない。本発明で提供する光学素子設計製造支援システムでは、特定の一形式で統一されたデータファイル形式により光学有効面設計形状数式情報をデータ管理することを特徴とする。
ステップS1で出力される前記光学面設計形状数式定義データファイルは、図1に示す光学素子設計製造情報統合システム50を介し、設計形状データ管理システム51を経由して光学素子設計形状数式定義データベース11にデータ出力される。システムユーザとなる光学設計者は、図2に示すとおり光学設計製造支援システム50に対し入力することで、光学素子設計形状数式定義データを、光学有効面設計形状を定義する数式の係数情報および座標変換情報を記録したデータ形式として出力(保存)することになる。
光学素子設計形状数式定義データベース11のデータ形式については、一般的なリレーショナルデータベースの内部データ管理による方法、あるいはファイル管理による方法であってもよく、本発明ではこれらのデータベース形式を限定しない。リレーショナルデータベースによる方法の場合、光学素子設計製造情報統合システム50から入力された光学有効面設計形状数式定義データファイルに対し、設計形状データ管理システム51に備えられたデータ管理機能により内部データ解析が行われる。データ解析結果に基づき、光学素子設計形状数式定義データベースの内部データにそれぞれデータ出力される。
一方、ファイル管理による方法を採用する場合、設計形状データ管理システム51では光学素子に対する光学有効面の関係などから決定するファイル管理ルールが定義されている。このファイル管理ルールに基づき、光学素子設計製造情報統合システム50から入力された光学有効面設計形状数式定義データファイルは、設計形状データ管理システム51を介して光学素子設計形状数式定義データベース11にファイルに出力される。
次にステップS2で行う光学有効面形状に関する設計制約条件チェックは、図1に示す光学素子設計形状数式定義データベース11に保存された光学有効面形状の設計情報と、形状装置制約条件データベース13に格納された情報をもとに行われる。
システムユーザである光学設計者は、光学素子設計製造情報統合システム50をユーザインタフェースとして制約条件判定ツール53を起動し、ステップS1で設計した光学有効面設計形状に対し制約条件の確認を行う。このとき制約条件判定ツール53は、判定に必要となる形状測定装置の装置制約条件に関する情報を、形状計測装置制約条件データベース13から抽出する。判定対象となる光学有効面設計形状情報については、設計形状データ管理システム51を介して光学素子設計形状数式定義データベース11より取得する。制約条件判定ツール53には、光学素子設計形状数式定義データベース11から入力される光学有効面設計形状情報に対し、光学有効面形状を計算する演算手段を備えている。光学有効面形状演算手段により算出された光学有効面設計形状において、たとえば光学有効面内の最大傾斜角度について、形状計測装置制約条件データベース13から抽出した装置制約条件のデータを参照し、測定可能な傾斜角度範囲内であるかを判定する。制約条件判定ツール53より出力される判定結果は、光学素子設計製造情報統合システム50を介してシステムアプリケーションの画面に出力される。同時に判定結果は光学素子設計製造情報統合システム50内で管理する内部データとしても出力され、判定結果NGの場合には、ステップS4の光学素子設計に処理を進められないようになっている。つまり、本発明で提供する光学素子設計製造情報統合システム50は、制約条件判定ツール53の判定結果出力に基づき、図2に示すワークフロー(工程)を制御する機能を備えていることを特徴とする。
ステップS3における設計制約条件判定は、判定結果をもとに光学素子設計製造情報統合システム50がワークフロー制御を行う。
次にステップS4で行う光学素子設計では、図1に示す3DCADツール52を用い、光学有効面以外の光学素子形状について設計を行う。光学素子設計情報として出力される3DCADデータファイルは、光学素子設計製造情報統合システム50を介し、設計形状データ管理システム51を経由して光学素子設計形状3DCADデータベース10に、3DCADデータ形式でデータ出力される。システムユーザとなる光学素子設計者は、光学素子設計製造情報統合システム50をユーザインタフェースとして3DCADツール52を起動し、設計および設計情報(3DCADデータ)を出力する形式であってもよい。あるいは、光学素子設計製造支援システムに接続された3DCADツールを直接起動し、3DCADツールに備えられた設計形状データ管理システムにリンクされているコマンドを直接操作して、設計情報(3DCADデータ)をデータ出力する形態であってもよい。本発明では、3DCADツールが出力する3DCADデータファイルが、光学素子設計製造情報統合システム50を介して設計情報データ管理システム51で管理された光学素子設計形状3DCADデータベース10にデータ保存されることを特徴とする。
次に、ステップS5で行う光学素子形状に関する設計制約条件チェックは、光学素子設計形状3DCADデータベース10に保存された光学素子形状の設計情報と、形状装置制約条件データベース13に格納された情報をもとに行われる。前記したステップS2およびステップS3で行う設計制約条件チェック同様、システムユーザである光学素子設計者は、光学素子設計製造情報統合システム50をユーザインタフェースとし、制約条件判定ツール53を用いて判定を行う。このとき、設計情報として光学素子設計形状3DCADデータベース10から取得した素子設計情報3DCADデータを用いる点が、前記ステップS2、ステップS3における工程と異なる。
ステップS7で実施する測定治具、雇設計についても、ステップS4と同様に設計情報である3DCADデータを作成し、図1測定治具、雇設計形状3DCADデータベース12にデータ出力する。ここで使用する3DCADツールの詳細は、前記した光学素子設計で用いる3DCADツールと、ツールに備えられた機能が一部異なるが、設計完了後にデータ出力する際の形態はステップS4と同じである。3DCADツールの機能詳細については、図5を用いて後述する。
この工程で行う具体的な設計制約条件判定とは、たとえば光学素子形状計測で使用する形状測定装置の測定プローブ干渉チェックが挙げられる。制約条件判定ツール53には、光学素子設計情報の3DCADデータと、形状計測装置制約条件データベース13より提供されるプローブ形状3DCADデータを入力とするプローブ干渉チェック演算手段が備えられている。ここでは、被測定面となる光学有効面に隣接する光学有効面とのプローブ干渉、あるいは被測定面となる光学有効面に隣接する光学有効面周辺形状とのプローブ干渉チェックが行われる。なお、本発明では光学有効面形状計測に用いる高精度三次元形状測定装置において、同装置が備えるプローブ形式について接触式、非接触式を特に限定しない。接触式プローブを備える形状測定装置を用いる場合、プローブ形状3DCADデータにはプローブ形状そのものが登録されている。また非接触式プローブを備える形状測定装置を用いる場合は、プローブ形状とあわせて非接触プローブから照射される光波の行路領域を示す形状が登録されている。
また、ステップS5で行う光学素子形状に関する設計制約条件チェックでは、設計された光学素子形状の大きさに対する設計制約条件チェックなども行われる。この場合、形状装置制約条件データベース13より取得する形状測定装置搭載可能ワークサイズに対し、測定可能な光学素子サイズに収まっているかをチェックする演算手段を制約条件判定ツール53は備えている。
ステップS6における設計制約条件判定は、ステップS3と同様に、判定結果をもとに光学素子設計製造情報統合システム50がワークフロー制御を行う。
次に、ステップS9で行う測定治具、雇に関する設計制約条件チェックに関しても、これまで説明した前工程(ステップS2、ステップS5)とほぼ同様である。制約条件判定ツール53が入力データとする設計情報が、光学素子設計形状3DCADデータベース10、光学素子設計形状数式定義データベース11に加え、測定治具、雇設計形状3DCADデータベース12からデータ取得する点が異なる。ここでは、測定治具および測定雇形状を反映させた上で、前記した前工程で実施する被測定面傾斜角度チェックや、形状測定装置搭載可能ワークサイズに対する測定治具、雇を含めたサイズチェックを行う。判定結果をもとに光学素子設計製造情報統合システム50がワークフロー制御を行う点は、前記した前工程の制約条件判定工程と同様である。
次に、ステップS12に示す測定入力データ作成では、2においてシステムユーザは光学素子設計製造情報統合システム50をユーザインタフェースとし、光学素子計測システム54を利用して光学有効面形状計測に際し必要となる測定条件を入力する。具体的には、光学素子計測システム54の中の一機能である図示しない測定入力データ作成ツール(メニュー)から、測定領域、測定点数、プローブ走査速度などの測定条件を設定する。入力した測定条件データは、光学素子計測システム54を経由して測定条件データベース14に出力される。なお、基準マークを備えた測定治具を用いた光学面形状測定を実施する場合、測定に際し座標変換データを算出するために、測定治具の三次元座標測定結果が必要となる。この測定治具三次元座標測定結果は、測定治具三次元座標測定装置測定結果データベース16に予め登録しておく。光学素子計測システム54には、以下に示す各データベースから各種設計情報を抽出し、さらに測定治具三位次元座標測定結果を取得して、測定に必要となる座標変換情報を算出しデータ出力する演算手段が備えられている。
すなわち、以下の4つのデータを使って演算は実行される。なお、演算手段を用いた測定入力データ作成に関しては、後述する実施例において図7を用いて詳細を説明する。
・光学素子設計形状3DCADデータベース10からの光学素子設計形状3DCADデータ
・光学素子設計形状数式定義データベース11からの光学有効面設計形状数式定義データ
・測定治具、雇設計形状3DCADデータベース12からの測定治具設計形状3DCADデータ
・測定治具三次元座標測定装置測定結果データベース16からの測定治具三次元座標測定データ
次に、ステップS13に示す光学素子形状計測工程では、システムユーザは光学素子計測システム54を利用し、測定に必要となる各種測定入力データファイルを図示しない高精度三次元形状測定装置制御コンピュータにダウンロードする。ダウンロードされる情報は、主に
・光学素子設計形状数式定義データベース11に保存された光学有効面設計形状数式定義データファイル
・測定条件データベース14に保存された測定条件データファイル
であるが、本発明ではこれら情報を特に限定しない。
すなわち、図1に示す各種データベースに保存されている情報の内、ステップS13における光学素子形状計測工程で必要となる情報は全てダウンロードされることを特徴とする。なお、このデータダウンロード処理は、光学素子計測システム54に備えられたファイルダウンロード機能による形態であってもよい。あるいは、図示しない高精度三次元形状測定装置制御コンピュータにインストールされている測定プログラムによって、被測定面形状測定シーケンスに移行する前の処理として必要データをダウンロードする形態であってもよい。この場合には、前記測定プログラムは内部処理で光学素子計測システム54に備えられた前記ファイルダウンロード機能を呼び出して処理するものとする。すなわち、本発明で提供する光学素子計測システム54は、前記ファイルダウンロード機能を備えていることを特徴とする。
ステップS13において光学有効面形状測定が終了すると、測定結果は図示しない高精度三次元形状測定装置制御コンピュータにデータ保存される。図1に示す光学素子計測システム54は、前記形状測定装置制御コンピュータに保存された測定データをアップロードし、光学素子測定実績データベース15にデータ保存する機能を有することを特徴とする。なお、この測定結果アップロード処理は前記したファイルダウンロード機能と同様、光学素子計測システム54に備えられたファイルアップロード機能を直接利用する形態であってもよい。あるいは、前記測定プログラムの内部処理として前記ファイルアップロード機能を呼び出して処理する形態であってもよい。また、図示しない高精度三次元形状測定装置用コンピュータにインストールされている測定形状解析プログラムを測定終了後に起動し、同プログラムの内部処理として前記ファイルアップロード機能を呼び出して処理する形態であってもよい。
本発明の実施例1は、図1に示す光学素子設計製造支援システムおよびそのサブシステムが、Webサービスを利用したネットワークアプリケーションシステムであることを特徴とする。以下、図4乃至図7を用いて実施例1について詳細を説明する。
図4は、図2のステップS2、ステップS3で行う光学有効面設計形状を対象とした設計制約条件チェックの際に使用するWebアプリケーションを説明するための図である。図4に示す光学面設計形状制約条件チェックツールWebアプリケーションは、Webブラウザ上で利用可能な形態となっており、図1における制約条件判定ツール53の一アプリケーションとして提供される。本実施例では、図1における光学素子設計製造情報統合システム50もWebアプリケーションとして提供されており、システムユーザとなる光学素子設計者は、Webブラウザ上で光学素子設計製造情報統合システム50から図4に示すアプリケーションを起動する。
図4の光学面設計形状制約条件チェックツールWebアプリケーションを起動後、ユーザはまず設計形状データ管理No.102を入力する。この設計形状データ管理No.102により、図1に示す設計形状データ管理システム51に接続された各データベースのデータリンクが特定される構成となっている。図1のステップS2、ステップS3の段階では、光学素子設計(ステップS4)や測定治具、雇設計(ステップS7)が未実施であるため、ここではステップS1で光学素子設計形状数式定義データベース11に出力した光学有効面数式定義データのみが特定される。なお、図4では設計形状データ管理No.102を直接入力する形態を示しているが、予め設計形状データ管理システム51に保存された管理No.ファイルをファイルオープンして設定する形態であってもよい。あるいは、設計形状データ管理システム51に登録された設計形状データ管理No.がプルダウンメニューとして表示され、そこから選択するような形態であってもよい。
図4に示す形状測定装置選択103では、図2のステップS13光学素子形状計測で使用する形状測定装置を選定する。ここでは、図1の形状計測装置制約条件データベースに予め登録されている使用可能な形状測定装置の一覧が、プルダウンメニューとして表示される。ユーザはプルダウンメニューから形状測定装置を選択する。なお、図4に示す以外の形態として、たとえば形状計測装置制約条件データベース13に登録されている各形状測定装置別の制約条件データファイルをファイルオープンすることで、測定に使用する形状測定装置を選定する形態であってもよい。
設計形状データ管理No.102および形状測定装置選択103を設定後、ユーザは制約条件チェック101ボタンを押す。通常、マウスによるクリック操作でボタンは押されるが、キーボードからボタンを選択、アクティブにし実行する形態も可能となっている。この制約条件チェック101ボタンが押されると、本発明の一実施形態として説明した光学有効面形状に関する設計制約条件チェック(ステップS2、ステップS3)に従い、設計制約条件をクリアするかどうかが判定される。具体的には、設計形状データ管理No.102で特定した光学有効面設計形状に対し、形状測定装置選択103で選定した形状測定装置の装置制約条件をもとに、図1に示す制約条件判定ツール53に備えられた演算手段により判定処理演算が行われる。制約条件判定結果は、図4に示すとおりWebアプリケーション上の画面に制約条件をクリアした場合にはOK、クリアしなかった場合にはNGと表示される。NGとなった場合には、図4に示すように具体的にどのような設計形状制約について満たすことができなかったが表示される。システムユーザである光学設計者は、このNG表示内容に従い、図2において光学設計ステップS2に戻り光学有効面形状について再設計を行うことになる。このように本発明によれば、光学有効面形状設計段階で後工程で使用する形状測定装置に関する装置制約条件チェックが行えるため、光学素子製作後に測定できず十分な形状測定評価ができない、あるいは再設計が必要となるといったミスや戻りを事前に解消できる。さらに本実施例では、光学面設計形状制約条件チェックツールがWebアプリとして提供されるため、ユーザはコンピュータ環境を特に限定することなく、Webブラウザが利用可能な環境であれば使用できるようになっている。
図5は、図2のステップS4乃至ステップS6で行う光学素子設計および光学素子設計制約条件チェックに使用する3DCADツールを説明するための図である。図5に示す3DCADツールは、市販3DCADソフトウェアに対し図示する下記機能が追加されていることを特徴とする。
・設計形状データ管理No.102入力ボックス
・制約条件チェック101ボタン
・光学素子3DCADデータ登録104ボタン
システムユーザとなる光学素子設計者は、図5に示す3DCADツールを利用して光学素子形状を設計する。3DCADツールを用いた設計および設計制約条件チェックの具体的なオペレーションは、つぎのとおりである。
設計形状データ管理No.102については、図4を用いて説明したとおりである。設計形状データ管理No.102を設定すると、該当する光学有効面設計形状数式定義データをもとに光学有効面形状を計算し、3DCADデータのサーフェス31を自動生成する機能を備えていることを特徴とする。光学有効面設計形状数式定義データには、図5に示す光学有効面の相対位置関係を規定する座標系C2、光学有効面形状を定義する座標系C3の座標変換情報が記録されている。この座標変換情報に基づき、3DCADデータとして図5に示すとおり座標系定義が自動設定される機能も備えている。さらに、3DCADツール上で座標系C2の位置を再定義した場合には、後述する光学素子3DCADデータ登録104ボタンを押した際に、前記した光学有効面設計形状数式定義データに記録された同座標変換情報が自動更新される機能を備えている。座標系C1は、光学素子の測定治具に対する取付基準を定義する座標系であり、素子設計後に定義した座標系C1に関する情報は、座標系C2、C3と同様に光学素子3DCADデータとして保存される。ここで保存された座標系C1と座標系C2の関係、すなわち座標変換情報は、後述する図7を用いた測定入力データ作成で使用される。
ユーザである光学素子設計者は、光学有効面サーフェス31が自動生成された後、一般的な3DCADオペレーションにより光学素子形状30を3DCADツール上で設計する。図1のステップS4における光学素子設計が完了すると、ユーザは図5に示す制約条件チェック101ボタンを押す。制約条件チェック101ボタンが押されると、図4に示すWebアプリケーションを利用して既に選定済みの光学有効面形状測定に使用する形状測定装置に関する装置制約条件に対しチェックが行われる。図4の制約条件チェック101ボタン同様、ボタンが押されると本発明の一実施形態として説明した光学素子形状に関する設計制約条件チェック(ステップS5)に従い、設計制約条件をクリアしているかどうかが判定される。ここでの判定処理演算は、図2に示す制約条件判定ツール53に備えられた演算手段が3DCADツール52より呼び出されて行われる。図示しない制約条件判定結果は、図5に示す3DCADツール画面上に表示される。あるいは、3DCADツール53より呼び出される制約条件判定ツール53内の判定演算手段が図示しないWebアプリケーションの形態となっており、同Webアプリケーション出力画面として表示される形態であってもよい。
制約条件判定結果がNGとなった場合には、具体的にどのような設計形状制約について満たすことができなかったが表示される。システムユーザである光学設計者は、このNG表示内容に従い、図2において光学素子設計ステップS4に戻り光学素子形状について再設計を行うことになる。このように本発明によれば、光学素子形状設計段階で後工程で使用する形状測定装置に関する装置制約条件チェックが行えるため、光学素子製作後に測定できず十分な形状測定評価ができない、あるいは再設計が必要となるといったミスや戻りを事前に解消できる。
制約条件判定結果がOKとなった場合には、ユーザである光学素子設計者は図5に示す光学素子3DCADデータ登録104ボタンを押す。このボタンも制約条件チェック101ボタン同様、マウスからもキーボードからも入力可能な形態となっている。光学素子3DCADデータ登録104ボタンが押されると、設計形状データ管理No.102に指定した番号と関連付けられて、図1における設計形状データ管理システム51を介して光学素子設計形状3DCADデータベース10にデータ保存される。このとき、座標系C2を光学素子設計前の定義から再定義した場合には、光学素子設計形状数式定義データベース11に保存されている光学有効面設計形状数式定義データに記録された同座標変換情報を自動更新することを特徴とする。
図6は、図2のステップS7、ステップS9およびステップS10で行う測定治具、雇設計、および測定治具、雇設計制約条件チェックに使用する3DCADツールを説明するための図である。図6に示す3DCADツールは、市販3DCADソフトウェアに対し図示する下記機能が追加されていることを特徴とする。
・設計形状データ管理No.102入力ボックス
・制約条件チェック101ボタン
・測定治具、雇3DCADデータ登録105ボタン
システムユーザとなる測定治具、雇設計者は、図6に示す3DCADツールを利用して測定治具形状および測定雇形状を設計する。3DCADツールを用いた設計および設計制約条件チェックの具体的なオペレーションは、次のとおりである。
設計形状データ管理No.102については、図4、図5を用いて説明したとおりである。設計形状データ管理No.102を設定すると、該当する光学有効面設計形状数式定義データと光学素子設計形状3DCADデータが、図2に示す設計形状データ管理システム51を介して特定される。特に光学素子設計形状3DCADデータについては、図2において設計形状データ管理システム51を介して光学素子設計形状3DCADデータベース10から該当データファイルが図6に示す3DCADツールにダウンロードされる。ダウンロードされた既に設計済みの光学素子形状30は、図6に示すとおり3DCADツール画面上に表示される。
画面表示された光学素子形状30をもとに、測定治具、雇設計者は一般的な3DCADオペレーションにより測定治具32、および測定雇33を3DCADツール上で設計する。過去に設計済みの測定治具および測定雇を流用設計する場合は、図示しない市販3DCADソフトウェアの機能として提供されるファイルオープン機能を用い、流用する測定治具、雇の設計形状3DCADデータを読み込むことができる。
図2のステップS7における測定治具および測定雇設計の際には、図6に示すように形状測定装置座標系Cmを定義する。さらに、基準マークを備えた測定治具を用いた光学面形状測定を実施する場合には、図6に示すとおり基準マークで規定される測定治具座標系C0を同様に定義する。なお、基準マークを備えた測定治具を用いた光学面形状測定では、測定治具座標系C0と光学素子取付基準座標系C1との座標変換情報は、厳密には前記した測定治具の三次元座標測定結果から算出される。したがって、図6の3DCADツールを用いた座標系C0の定義は、その他の座標系との関係を視覚的に捉えやすくするための情報として設定しているにすぎない。
図2のステップS7における測定治具、雇設計が完了すると、ユーザは図6に示す制約条件チェック101ボタンを押す。制約条件チェック101ボタンが押されると、図5に示す3DCADツールと同様に、既に選定済みの光学有効面形状測定に使用する形状測定装置に関する装置制約条件に対しチェックが行われる。図4、図5の制約条件チェック101ボタン同様、ボタンが押されると本発明の一実施形態として説明した測定治具、雇形状に関する設計制約条件チェック(ステップS9、ステップS10)に従い、設計制約条件をクリアしているかどうかが判定される。ここでの判定処理演算も図5に示す3DCADツール同様、図1に示す制約条件判定ツール53に備えられた演算手段が3DCADツール52より呼び出されて行われる。
図6中の被測定面31を対象とした被測定面傾斜角度チェックの演算処理においては、測定装置座標系Cmに対する測定治具32に取り付けられた光学素子30の傾斜角度θについて、被測定面31の光学有効面設計形状数式定義データに自動反映させる。すなわち、図6に示す3DCADツールは、測定装置座標系Cmと光学素子取付基準座標系C1の関係を、前記光学有効面設計形状数式定義データ内の座標変換情報として自動更新する機能を備えていることを特徴とする。これより、図1に示す制約条件判定ツール53に備えられた設計制約条件判定処理演算手段は、更新された座標変換情報を反映させて被測定面31の光学有効面形状を装置座標系Cmで現される座標として算出し、被測定面傾斜角度チェックを行う。
その他の設計制約条件判定処理は、図5に示す3DCADツールで行われる処理と同様である。図6に示す3DCADツールにおいても、図示しない測定プローブ干渉チェックや、測定治具サイズについて形状測定装置に搭載可能なサイズになってるかなどが同時に判定演算処理される。
図示しない制約条件判定結果は、図6に示す3DCADツール画面上に表示される。あるいは、3DCADツール53より呼び出される制約条件判定ツール53内の判定演算手段が図示しないWebアプリケーションの形態となっており、同Webアプリケーション出力画面として表示される形態であってもよい。
制約条件判定結果がNGとなった場合には、具体的にどのような設計形状制約について満たすことができなかったが表示される。システムユーザである光学設計者は、このNG表示内容に従い、図2において測定治具、雇設計ステップS7に戻り、測定治具および測定雇形状について再設計を行うことになる。このように本発明によれば、測定治具、雇設計段階で、後工程で使用する形状測定装置に関する装置制約条件チェックが行える。したがって、測定治具や測定雇を製作後に測定できず十分な形状測定評価ができない、あるいは再設計が必要となるといったミスや戻りを事前に解消できる。
制約条件判定結果がOKとなった場合には、ユーザである測定治具、雇設計者は図6に示す測定治具、雇3DCADデータ登録105ボタンを押す。このボタンも制約条件チェック101ボタン同様、マウスからもキーボードからも入力可能な形態となっている。測定治具、雇3DCADデータ登録104ボタンが押されると、設計形状データ管理No.102に指定した番号と関連付けられて、図1における設計形状データ管理システム51を介して測定治具、雇設計形状3DCADデータベース12にデータ保存される。
図7は、図1のステップS12で行う測定入力データ作成の際に使用するWebアプリケーションを説明するための図である。図7に示す光学素子計測システム測定準備メニューWebアプリケーションは、Webブラウザ上で利用可能な形態となっており、光学素子計測システム54のアプリケーションとして提供される。システムユーザは、Webブラウザ上で光学素子設計製造情報統合システム50を経由して光学素子計測システム54を呼び出し、その中の一メニューとして提供される図7に示すアプリケーションを起動する。
図7の測定準備メニューWebアプリケーションを起動すると、計測工程管理No.106が自動設定される。この管理No.は102に示す光学素子計測システム54により管理される番号であり、以下に示すデータを関連付けることを特徴とする。
・光学素子形状計測の対象となる被測定物および測定治具、雇の設計形状情報を一元管理する前記設計形状データ管理No.
・測定条件データベース14に保存される測定条件データ
・光学素子測定実績データベース15に保存される測定実績データ
設計形状データ管理No.102については、図4乃至図6を用いて説明したとおりである。設計形状データ管理No.102を設定すると、該当する光学有効面設計形状数式定義データと光学素子設計形状3DCADデータ、および測定治具、雇設計形状3DCADデータが、図1に示す設計形状データ管理システム51を介して特定される。
図7の測定準備メニューWebアプリケーションに対し、ユーザは測定条件設定108ボタンを押し、図示しない測定条件設定画面上で各種測定条件を入力設定する。また、解析条件設定109ボタンを押し、図示しない解析条件設定画面上で各種測定形状解析条件を入力設定する。さらに、特開平11−14906に開示されているような基準マークを備えた測定治具を用いた光学面形状測定を実施する場合には、測定治具三次元座標測定結果ファイルオープン107ボタンを押し、測定治具三次元座標測定結果ファイルを読み込む。測定治具三次元座標測定結果ファイルオープン107ボタンは、図1に示す光学素子計測システム54を介して測定治具三次元座標測定装置即手結果データベース16にアクセス可能な構成となっている。
測定条件設定108、解析条件設定109などに条件入力設定後、ユーザは測定準備(測定装置入力ファイルアップロード)110ボタンを押す。ボタンが押されると、本発明の一実施形態として説明した図1のステップS12における測定入力データ作成に従い、設定した測定条件、解析条件などの情報を図示しない高精度三次元形状測定装置制御コンピュータにファイル出力する。
ここで、特基準マークを備えた測定治具を用いた光学面形状測定を実施する場合には、図6におけるC0座標系からC2座標系への座標変換行列を自動算出する。詳細には、前記測定治具三次元座標測定結果ファイルに記録されたデータを用い、図6におけるC0座標系からC1座標系への座標変換行列を算出する。C1座標系からC2座標系への座標変換情報は、図5に示す3DCADツールを用いて既に設定済みである。したがって、これら二つの座標変換情報をもとにC0座標系からC2座標系への座標変換行列は算出可能である。算出した座標変換情報に基づき、設計形状データ管理No.102で関連付けされた光学有効面設計形状数式定義データ内の座標変換情報は更新された後に、図示しない高精度三次元形状測定装置制御コンピュータにファイル出力される。このように、図7の測定準備メニューWebアプリケーションには、測定の際に必要となる座標変換情報を測定治具三次元座標測定結果を取得した上で自動算出し、データ出力する演算手段が備えられていることを特徴とする。
本発明の実施例2は、図1に示す光学素子設計製造支援システムおよびそのサブシステムが、Webサービスを利用しないネットワークアプリケーションシステムであることを特徴とする。本実施例では、図4および図6に示すGUIアプリケーションはWebブラウザを介して利用可能なWebアプリケーションの形態ではなく、同アプリケーションがインストールされているコンピュータ環境に依存したアプリケーションである。この場合、本発明の一番目の実施例と比較して、Webサービスを利用していないため、図1に示す各システムを動作させるためのWebサーバを必要としないことが特徴として挙げられる。その他の実施形態およびその実施形態から得られる効果については同様である。
(その他の実施例)
本発明のその他の実施例として、光学素子成形用金型に適用した実施形態を説明する。これまで本発明の実施例として、図2に示す工程に従い光学素子設計製造を対象とした例を説明してきたが、本発明は設計製造対象を光学素子成形用金型とした場合にも実施可能である。図2のステップS8における光学素子製作において、光学素子成形用金型を用いた成形加工による素子製造を行う場合、光学素子成形用金型についても光学素子と同様に高精度三次元形状測定装置による光学有効面形状測定が必須となる。この場合、図2に示す各工程(ステップ)における処理対象を光学素子成形用金型に置き換えるだけで、図1に示す各種システム、ツール、データベースが適用可能である。
本発明で提供する光学素子設計製造支援システムおよび光学素子計測システムは、設計製造対象を光学素子成形用金型とした場合についても運用可能な構成であることを特徴とする。
第1の実施の形態における光学素子設計製造支援システムを示すブロック図 第1の実施の形態における光学素子設計製造工程を説明するフローチャート 第1の実施の形態における光学有効面設計形状数式定義データファイルの模式図 第1の実施例における光学面設計形状制約条件チェックツールWebアプリケーションの模式図 第1の実施例における光学素子設計用3DCADツールの模式図 第1の実施例における測定治具、雇設計用3DCADツールの模式図 第1の実施例における測定入力データ作成Webアプリケーションの模式図 従来技術における金型製造方法を説明するためのフローチャート 従来技術における金型製造支援システム構成の説明図
符号の説明
10 光学素子設計形状3DCADデータベース
11 光学素子設計形状数式定義データベース
12 測定治具、雇設計形状3DCADデータベース
13 形状測定装置制約条件データベース
14 測定条件データベース
15 光学素子測定実績データベース
16 測定治具三次元座標測定装置測定結果データベース
20 タグ
21 パラメータ
30 光学素子形状
31 被測定面
32 測定治具
33 測定雇
50 光学素子設計製造情報統合システム
51 設計形状データ管理システム
52 3DCADツール
53 制約条件判定ツール
54 光学素子計測システム
101 制約条件チェックボタン
102 設計形状データ管理No.設定ボックス
103 形状測定装置選択プルダウンメニュー
104 光学素子3DCADデータ登録ボタン
105 測定治具、雇3DCADデータ登録ボタン
106 計測工程管理No.設定ボックス
107 測定治具三次元座標測定結果ファイルオープンボタン
108 測定条件設定ボタン
109 解析条件設定ボタン
110 測定準備(測定装置入力ファイルアップロード)ボタン
211 加工装置データベース
212 加工実績データベース
213 工程設計ツール

Claims (7)

  1. コンピュータネットワークシステムに接続されたネットワークアプリケーションとして構築されている光学素子設計製造支援システムにおいて、光学素子の設計形状データを記録する光学素子設計形状データベースと、測定治具および測定雇の設計形状データを記録する測定治具、測定雇データベースと、光学素子の形状を計測する形状計測装置の装置制約条件データベースと、前記各データベースに記録されているデータをもとに、光学素子並びに測定治具および測定雇の設計形状データが、前記光学素子並びに前記測定治具および前記測定雇が前記形状計測装置に取り付けられた際に前記形状計測装置が所定の精度で測定するために前記光学素子並びに前記測定治具および前記測定雇の形状に要求される設計制約条件を満たしているか否かを判定する演算手段と、該演算手段による演算した結果を出力する出力手段とを備えていることを特徴とする光学素子設計製造支援システム。
  2. 前記演算手段により演算した結果に基づき、光学素子設計製造工程のワークフローを制御する機能を備えていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子設計製造支援システム。
  3. 前記光学素子設計形状データベースのデータ形式は、光学有効面設計形状を定義する数式の係数情報および座標変換情報を記録したデータ形式と、光学素子の形状を記録した3DCADデータ形式であり、
    異なる前記2つのデータ形式からなる光学素子設計形状データと、3DCADデータとして記録される前記測定治具および測定雇の設計形状データは、設計形状データ管理システムにより一元管理されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子設計製造支援システム。
  4. 前記請求項3に記載の光学素子設計製造支援システムは、測定条件を記録する測定条件データベースと、光学素子の測定データを記録する光学素子測定実績データベースが接続された光学素子計測システムを有しており、
    前記設計形状データ管理システムと前記光学素子計測システムからのデータに基づいて、光学素子の設計を行う光学素子設計製造支援システム。
  5. 前記光学素子計測システムには、更に、測定治具の三次元座標測定データを記録する測定治具三次元座標測定データベースが接続されており、
    前記光学素子設計形状データと、前記測定治具三次元座標測定データベースとを用い、測定治具の座標系と、光学素子の光学有効面を定義するための座標系との座標変換行列を演算する演算手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載の光学素子計測システム。
  6. 前記光学素子設計製造支援システムが、Webアプリケーションとして構築されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子設計製造支援システム。
  7. 前記光学素子の設計形状データに換えて、設計製造対象が光学素子成形用金型の設計形状データであることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の光学素子設計製造支援システム。
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