JP4879808B2 - 打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、バーリング加工、伸びフランジ加工が施される、例えば、自動車などの高強度構造用部品に用いて好適な、更に鋼板の打ち抜き時の端面の損傷が発生しにくい、打ち抜き加工性に優れた熱延鋼板及びその製造方法に関するものである。
最近の自動車用部材は、省エネルギー化の視点から軽量化が重視され、これに加えて安全性や耐久性も重視される傾向があり、従来にも増して、高強度化が急速に進んでいる。このような傾向の一例として、自動車の外板パネルだけでなく、構造用部材にも高強度鋼板が適用されるようになっている。この構造用部材に適用される鋼板には、プレス成形性に加えて、穴拡げ性などの加工性も要求される。そのため、バーリング加工、伸びフランジ加工などの加工性の優れた高強度熱延鋼板の開発が進められてきた(例えば、特許文献1を参照)。
更に、これらの高強度熱延鋼板の適用拡大に伴い、特に引張強度が690MPa以上である伸びフランジ性優れた熱延鋼板が提案されている(例えば、特許文献2、3を参照)。しかしながら、熱延鋼板の高強度に伴い、鋼板を打ち抜き加工して形成された穴の端面に剥がれ(ハガレ)や捲れ(メクレ)状の欠陥が発生することが問題となっている。これらの欠陥は、製品端面の意匠性を著しく損なうばかりか、応力集中部となって疲労強度などにも影響を及ぼす危険性がある。
このような問題に対して、硬質第2相及びセメンタイトの面積率を制限し、打ち抜き端面の損傷を抑えた熱延鋼板が提案されている(例えば、特許文献4、5を参照)。しかしながら、硬質第2相及びセメンタイトの生成を抑制しても、打ち抜き加工のクリアランスを、端面の損傷性に対して最も厳しい条件とした場合には、穴の端面に欠陥が発生することがあった。
特開平10−36917号公報 特開2001−172745号公報 特開2006―152341号公報 特開2004−315857号公報 特開2005−298924号公報
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、優れた伸びフランジ性と延性を両立し、特に、引張強さが690MPa以上という高強度を有し、極めて厳しい条件で打ち抜き加工を行った場合でも、確実に端面の損傷を防止することができる、打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供するものである。
本発明者らは、打ち抜き加工のクリアランスを最も厳しい条件とし、打ち抜き端面の損傷の発生頻度と結晶粒界への偏析元素種及び偏析量との相関について検討した結果、鋼板の粒界角が15°以上となる大角結晶粒界に適正な量のCを偏析させることにより、打ち抜き端面の損傷が減少することを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは、以下に示す通りである。
(1) 質量%で、C:0.010〜0.200%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.25〜3.00%を含有し、P:0.05%以下に制限し、更に、Ti:0.03〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、V:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.20%のうちの何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、フェライトの大角結晶粒界のCの偏析量が4〜10atms/nmであることを特徴とする打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。
(2) 更に、質量%で、P:0.02%以下に制限し、フェライトの大角結晶粒界のPの偏析量が1atoms/nm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。
(3) 上記(1)又は(2)に記載の鋼板を製造する方法であって、上記(1)又は(2)に記載の成分を有する鋼材を1200℃以上に加熱し、Ar点以上の温度で圧延を完了し、50℃/s以上の冷却速度で600〜650℃の範囲内に冷却し、引き続き、10℃/s以下の冷却速度で10s以下の冷却を行った後、更に、50℃/s以上の冷却速度で350〜550℃の範囲内に冷却して巻き取ることを特徴とする打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
(4) 上記(1)又は(2)に記載の鋼板を製造する方法であって、請求項1又は2に記載の成分を有する鋼材を1200℃以上に加熱し、Ar点以上の温度で圧延を完了し、50℃/s以上の冷却速度で600〜650℃の範囲内に冷却した後、冷却を停止して10s以下の保持を行い、更に、50℃/s以上の冷却速度で350〜550℃の範囲内に冷却して巻き取ることを特徴とする打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
以上のように、本発明によれば、伸びフランジ性と延性とのバランスが良好であり、特に引張強さが690MPa以上という高強度を有し、なお且つ打ち抜き加工のクリアランスの条件に依らずに、打ち抜き時の端面の損傷発生を抑えることができる、打ち抜き加工性に優れた熱延高強度鋼板及びその製造方法を提供することができ、その産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明者らは、延性と穴拡げ性に優れた引張強さが690MPa以上の高強度熱延鋼板を用いて、種々のクリアランスにて打ち抜き加工を行い、その端面性状について定量的に調査した。具体的には、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996に記載の方法でクリアランスを変化させて10mm径の穴を打ち抜き、円形に打ち抜いた端面の全周のうち、目視により損傷が認められた範囲の角度を測定して合計し、その値を360°で除して、打ち抜き端面の全周における損傷発生比率(打ち抜き端面損傷発生比率という。)を求めた。
その打ち抜き時のクリアランスと打ち抜き端面損傷発生比率との相関を図1に示す。図1に示すように、クリアランスを増加させると、通常の穴拡げ試験で推奨されている12.5%前後のクリアランスで打ち抜いた場合には確認できない剥がれ(ハガレ)や捲れ(メクレ)状の損傷が発生するようになり、16%のクリアランスが最も厳しい条件であることがわかった。
そこで、この16%のクリアランスを採用し、以下の調査を行った。
すなわち、鋼板の打ち抜き加工性に及ぼす組織の影響、更に、打ち抜き端面の損傷の発生頻度、すなわち、打ち抜き端面損傷発生比率と大角結晶粒界に偏析した元素の種類及び偏析量との相関について検討を行った。
先ず、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.01〜1.5%、Mn:0.25〜3%を含有し、P:0.05%に制限し、更に、Ti:0.03〜0.2%、Nb:0.01〜0.2%、V:0.01〜0.2%、Mo:0.01〜0.2%のうちの何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼片を溶製し、熱延して、種々の熱処理条件で鋼板を製造した。
そして、これらの鋼板から、JIS Z 2201の5号試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張特性を評価した。また、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996に記載の試験方法に従って穴拡げ試験を行い、鋼板の伸びフランジ性を評価した。なお、打ち抜き加工後、穴拡げ試験前に、打ち抜き端面損傷発生比率を評価した。
次に、各鋼材中の5箇所以上のフェライトの大角粒界のC、Pの偏析量を測定し、その平均値を求めた。なお、大角結晶粒界とは、粒界角が15°以上となる結晶粒界である。角度が15°未満の小角粒界では、偏析元素のトラップサイト数等の違いから大角粒界と比べ偏析量が減少する傾向を示し、また、本発明の鋼板のフェライトの組織中では結晶粒界は大角粒界が大半を占めるため、大角粒界での偏析量を測定した。粒界角度は、試料の透過型電子顕微鏡観察から得られる菊池図形を解析することにより求めた。
偏析元素量の測定方法であるが、このような微小領域の偏析元素の分布を厳密に比較するには、三次元アトムプローブ法を用いて以下のようにExcess量を求めることが適している。すなわち、測定対象の試料の結晶粒界部分から、切断及び電解研磨法により針状の試料を作製する。なお、この際、電解研磨法とあわせて集束イオンビーム加工法を活用してもよい。そして、FIMにより比較的広い視野で結晶粒界を含む領域及び粒界角を観察し、三次元アトムプローブ測定を行う。
三次元アトムプローブ測定では、積算されたデータを再構築して実空間での実際の原子の分布像として求めることができる。粒界位置は、原子面が不連続となることから、これを粒界面と認識することができ、また種々の元素が偏析している様子が視覚的に観察できる。
次に、各元素の偏析量を見積もるため、結晶粒界を含む原子分布像から結晶粒界に対して垂直に直方体を切り出し、ラダーチャートを得た。結晶粒界の観察例及びラダーチャート解析の一例を図2(a),(b)に示す。そして、このラダーチャート解析から、偏析している、すなわち固溶量からの上乗せ分の原子個数を単位粒界面積当たりで表すExcess量を用いて、各原子の偏析量を評価した(非特許文献1を参照)。
高橋ら、「塗装焼付硬化型鋼板の粒界偏析炭素量の定量観察」、新日鉄技報、第381号、2004年10月、p.26−30
図3は、Cの偏析量と打ち抜き端面損傷発生率との相関を示したものである。
図3に示すように、打ち抜き端面損傷発生比率が小さい鋼板のフェライトの大角結晶粒界にはCの偏析が認められた。本発明の鋼板では、結晶粒中に析出炭化物を部分的に分散析出させ、結晶粒内に固溶Cを残すことにより、粒界のCの偏析量を適正な範囲とすることができる。これにより、鋼板の打ち抜き時の端面の耐損傷性を良好に維持できる。鋼板の耐端面損傷性が向上する理由として、偏析Cにより結晶粒界が強化され、打ち抜き加工時に粒界における亀裂の進展が抑制されることが考えられる。
更に、図4は、Cの偏析量と打ち抜き端面損傷発生率との相関を示したものである。
図4に示すように、結晶粒界においてCの偏析量を一定以上とし、Pの偏析を抑制することにより、打ち抜き端面損傷発生比率が低くなることが見出された。
以上の結果から、熱延後の冷却中に炭化物が過剰に析出すると、固溶炭素が低減して粒界の偏析Cが少なくなり、打ち抜き端面の損傷が生じることがわかった。そこで、大角結晶粒界に通常の鋼材よりも多くのCを偏析させて打ち抜き加工性を向上させる方法について更なる検討を行った。その結果、結晶粒内への炭化物の析出を抑制すると、打ち抜き端面の損傷が抑制されることを見出した。一方、Pが、粒界に偏析すると粒界強化量を低下させる元素であることも見出した。
以下、本発明の打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法について詳細に説明する。
(偏析量)
最も厳しい条件であるクリアランスでの打ち抜き端面損傷発生率が0.3以内であれば実用鋼として許容できる範囲である。本発明の検討では、16%のクリアランスが最も厳しい条件であったが、これは、鋼板の材質、工具により変化するため、クリアランスを12.5〜25%の間で変化させて打ち抜き加工を行って、端面の性状を確認し、最も厳しいクリアランスの条件を確認する必要がある。最も厳しいクリアランスの条件で鋼板の打ち抜き加工を行った際の打ち抜き端面損傷発生率を0.3以内とするためには、以下のように結晶粒界の粒界偏析元素量を適正化することが必要である。
図3に示したように、結晶粒界のCの偏析量を4〜10atoms/nmとすれば、最も厳しいクリアランスの条件で鋼板の打ち抜き加工を行った際の打ち抜き端面損傷発生率を0.3以内にすることができる。偏析C量が4atoms/nm未満であると、粒界強化量が不足し、打ち抜き端面損傷の発生が顕著になる。一方、結晶粒界の偏析C量が10atoms/nmを超えると、結晶粒界にCが濃化しセメンタイトの析出が抑えられなくなり、打ち抜き加工時に粒界における亀裂の進展を助長し、打ち抜き端面の損傷の起点になる。結晶粒界のCの偏析量の更に好ましい範囲は、打ち抜き端面損傷がほとんど発生しなくなる6〜9atoms/nmである。
なお、Cの偏析量は、熱間圧延の仕上圧延後の冷却条件によって制御することができる。具体的には、仕上圧延後、50℃/s以上の冷却速度で冷却し、該冷却を600〜650℃の温度範囲内で停止して、10s以下の保持を行うか、更に10℃/s以下の冷却速度で冷却することが必要である。これにより、部分的にフェライト変態及び部分的に炭化物を微細析出させ、フェライトの大角結晶粒界のCの偏析量を4〜10atoms/nmとすることができる。
一方、Pについては、偏析量が少ないほうが好ましい。この理由は、Pは粒界を脆化させる効果を持つからであると考えられる。また、Pの偏析量が増加すると、打ち抜き加工時の亀裂の進展が助長され、損傷の発生率が高められるためである。また、Pが偏析サイトを占めることでCの偏析量を低下させてしまう効果も懸念される。Pの偏析量は1atoms/nm以下とすることが好ましい。Pの偏析量を1atoms/nm以下とするには、Pの含有量を0.02%以下に制限すればよい。
(成分)
本発明において、鋼板組織として上記粒界偏析量を有し、鋼板の伸びを20%以上、穴拡げ率を80%以上、引張強度を690MPa以上とし、最も厳しいクリアランスの条件で鋼板の打ち抜き加工を行った際の打ち抜き端面損傷発生率を0.3以内とするためには、鋼板の成分組成を以下のように規定することが好ましい。なお、以下に示す「%」は特に説明がない限り、「質量%」を意味するものとする。
また、以下に説明する基本成分により本発明の目的とする効果は十分に発揮されるものであるが、本発明の目的とする上記鋼板特性を阻害しない範囲で、その他の成分を含有することは許容されるものである。例えば、0.2%未満のCr、0.15%未満のCuを含有しても良い。
(C:0.010〜0.200%)
Cは、強度の向上に寄与する元素であり、0.010%以上の添加が必要である。また、粒界へのCの偏析量を確保するためには、0.020%以上の添加がより好ましい。一方、Cの含有量が0.200%を超えると、セメンタイトの生成や、パーライトやマルテンサイトなどの変態組織の形成が促進され、伸びや穴拡げ性が低下する。したがって、Cの含有量は、0.010〜0.200%の範囲とする。
(Si:0.01〜1.5%)
Siは、固溶強化元素として強度上昇に有効であり、効果を得るには0.01%以上の添加が必要である。一方、Siの含有量が1.50%を超えると加工性が劣化する。したがって、Siの含有量は、0.01〜1.50%の範囲とする。
(Mn:0.25〜3%)
Mnは、脱酸、脱硫のために必要であり、また固溶強化元素としても有効である。この効果を得るには、Mnの含有量を0.25%以上とすることが必要である。一方、Mnの含有量が3.00%を超えると、偏析が生じやすくなり、伸びフランジ性を劣化させる。したがって、Mnの含有量は、0.25〜3.00%とする。
(P:0.05%以下)
Pは、不純物であり、Pの含有量は0.05%以下に制限する必要がある。また、Pの粒界への偏析を抑制して、粒界割れを防止するためには、Pの含有量を0.02%以下に制限することがより好ましい。
さらに、本発明では、Cの偏析量を制御するため、鋼板のフェライト結晶粒内の炭化物析出元素として、Ti、V、Nb、Moのうちの何れか1種又は2種以上を含有させることが必要である。また、Bの粒界偏析を促進するためには、窒化物析出元素であるTi、V、Nbのうちの何れか1種又は2種以上を含有させて、BNの析出を抑制することが好ましい。
(Ti:0.03〜0.2%)
(V :0.01〜0.2%)
(Nb:0.01〜0.2%)
Ti、V、Nbは、フェライト結晶粒内に炭化物及び窒化物を析出し、析出強化により鋼板の強度を上昇させる元素である。炭化物及び窒化物を十分に生成させるには、Tiの添加量を0.03%以上、V、Nbの添加量をそれぞれ0.01%以上にすることが好ましい。一方、Ti、V、Nbのそれぞれの添加量が0.20%超になると、炭化物及び窒化物が粗大化することがある。したがって、Tiの含有量を0.03〜0.20%とし、V、Nbの含有量をそれぞれ0.01〜0.20%とすることが好ましい。
(Mo:0.01〜0.2%)
Moは、炭化物形成元素であり、フェライト結晶粒内に炭化物を析出し、析出強化に寄与し、また、セメンタイト生成に寄与するCを固着する目的で含有することができる。炭化物を十分に生成させるには、Moを0.01%以上添加することが好ましい。一方、Moの添加量が0.20%を超えると粗大な炭化物が生成することがある。したがって、Moの含有量を0.01〜0.20%とすることが好ましい。
さらに、N、S、及びAlの含有量の上限を以下のように制限することが好ましい。
Nは、窒化物を形成し、鋼板の加工性を低下させるため、その含有量を0.009%以下に制限することが好ましい。
Sは、MnSなどの介在物として伸びフランジ性を劣化させ、更に熱間圧延時に割れを引き起こすので極力低下させるのが好ましい。特に、熱間圧延時に割れを防止し、加工性を良好にするためには、Sの含有量を0.005%以下に制限することが好ましい。
Alは、窒化物などの析出物を形成して鋼板の加工性を損なうため、0.5%以下に制限することが好ましい。なお、溶鋼脱酸のためには、0.002%以上を添加することが好ましい。
また、本発明において、上記基本成分の他に、鋼板の強度の向上する目的で固溶強化元素として、Wを添加してもよい。
(製造条件)
本発明の製造方法では、鋼を常法によって溶製、鋳造し、得られた鋼片を熱間圧延する。鋼片は、生産性の観点から、連続鋳造設備で製造することが好ましい。熱間圧延の加熱温度は、炭化物形成元素と炭素を十分に鋼材中に分解溶解させるため、1200℃以上とする。鋳造後、鋼片を冷却して、1200℃以上の温度で圧延を開始してもよい。1200℃以下に冷却された鋼片を加熱する場合は、1時間以上の保持を行うことが好ましい。
熱間圧延の終了温度は、鋼板の特性ばらつきを抑えるために、Ar変態点以上とし、オーステナイト域で熱延を終了することが必要である。
熱間圧延終了後は、フェライト変態、パーライト変態及び粗大な炭化物の形成を極力抑制するために、冷却速度を50℃/s以上とし、冷却の停止温度を650℃以下にすることが必要である。また、冷却の停止温度は、Cの偏析量を確保するため、600℃以上にすることが必要である。
50℃/s以上の冷却速度で600〜650℃の範囲内に冷却した後は、10℃/s以下の冷却速度で10s以下の冷却を行う。これにより、部分的にフェライト変態及び部分的に炭化物を微細析出させ、Cの偏析量を確保することができる。一方、冷却速度が10℃/sよりも速いと、炭化物の析出が不十分になり、Cの偏析量が増加する。また、600〜650℃の範囲内に冷却した後の冷却速度の下限は、0℃/sの場合を含む。すなわち、本発明では、50℃/s以上の冷却速度で600〜650℃の範囲内に冷却した後、冷却を停止して10s以下の保持を行ってもよい。冷却速度が10℃/s以下での冷却時間は、10sを超えると、炭化物の析出が進み、偏析させるべきCが不足してしまい、本発明のCの粒界偏析量を得ることが困難となる。
さらに、巻き取り温度まで冷却する際の冷却速度は、析出炭化物の粗大化を抑制するために、50℃/s以上とすることが必要である。巻き取り温度は、Cの粒界偏析を達成するために、350〜550℃とすることが必要である。巻き取り温度が350℃未満では、Cの偏析量が不足し、硬質なマルテンサイトが生成して伸びフランジ性を劣化させる可能性がある。一方、550℃超になると、結晶粒内で炭化物の析出が進み、粒界への偏析C量が減少し、打ち抜き時に端面損傷が発生し、伸びフランジ性に有害なパーライトセメンタイトが生成する可能性がある。
以下、実施例により本発明の効果を更に具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
本実施例では、先ず、表1に示す種々の成分組成を有する材料を溶解した。なお、表1中に示す成分値は、化学分析値であり、その単位は質量%である。また、表1中の「0」は、意図的に添加していないことを意味する。
Figure 0004879808
次に、表2に示す種々の製造条件で熱間圧延を行い、熱延鋼板を製造した。なお、表2中の熱延終了温度は、全てAr以上である。また、表2中の1次冷却速度は、熱延終了直後の冷却速度であり、2次冷却速度は、巻き取り前の冷却速度である。さらに、1次冷却と2次冷却の間は、10℃/s以下での冷却であり、その間の保持温度は、1次冷却の終了温度であり、その間の保持時間は、10℃/s以下での冷却時間である。
Figure 0004879808
そして、得られた表2中の各鋼板について、引張特性、伸びフランジ性、打ち抜き端面損傷発生比率、並びにC及びPの粒界偏析量の評価を行った。その評価結果を図3に示す。
このうち、引張特性については、表2中の各鋼板から、JIS Z 2201に記載の5号試験片を作製し、JIS Z 2241に記載の試験方法に従って、その引張強さ及び伸びを測定した。なお、本発明例は、引張強度が690MPa以上の鋼板を対象とする。
伸びフランジ性については、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996記載の試験方法に従って、穴拡げ試験を行い、その穴拡げ率を求めた。
打ち抜き端面損傷発生比率については、穴拡げ試験と同様に10mm径の穴を打ち抜き、その端面形状を目視で観察し、円形に打ち抜いた端面のうち損傷が認められる範囲の角度を測定することにより比率を求めた。
C及びPの粒界偏析量については、表2中の各鋼板から、0.3mm×0.3mm×10mmの柱状試料を切り出し、その目的粒界部分を電解研磨又は集束イオンビーム加工法により先鋭な針状形状とし、三次元アトムプローブ測定を行った。また、粒界における各元素の偏析量を見積もるため、結晶粒界を含む原子分布像から結晶粒界に対して垂直に直方体を切り出し、ラダーチャートを得た。そして、このラダーチャート解析から、各原子の偏析量を、Excess量を用いて評価した。なお、各試料において、5つ以上の粒界について各元素の偏析量を調べ、その平均値を各試料の各元素偏析量とした。
Figure 0004879808
表3に示すように、試験No.1〜13のうち、No.2,3,5,6,8,9,12の鋼板は、鋼板の成分及び製造条件を本発明の範囲内とした本発明例である。これらの鋼板は、何れも高強度であり、しかも穴広げ性が良好で、打ち抜き端面損傷比率も小さい。
一方、No.1の鋼板は、保持温度が高過ぎるため、Cの粒界偏析量が不足してしまい、打ち抜き端面損傷比率が高い値を示した比較例である。
また、No.4の鋼板は、保持時間が本発明の範囲よりも長過ぎるため、Cの粒界偏析量が不足してしまい、打ち抜き端面損傷比率が高い値を示した比較例である。
また、No.7の鋼板は、1次冷却の冷却速度が遅過ぎるため、Cの粒界偏析量が不足してしまい、打ち抜き端面損傷比率が高い値を示した比較例である。
また、No.10の鋼板は、巻き取り温度が低過ぎるため、Cの粒界偏析量が過剰となり、打ち抜き端面損傷比率が高い値を示した比較例である。
また、No.11の鋼板は、保持温度が低過ぎるため、Cの粒界偏析量が不足してしまい、打ち抜き端面損傷比率が高い値を示した比較例である。
また、No.13の鋼板は、Pの含有量が多過ぎるため、伸び及び穴拡げ率が低下してしまい、打ち抜き端面損傷比率が高い値を示した比較例である。
図1は、打ち抜き加工のクリアランスと打ち抜き端面損傷発生率の相関を示す図である。 図2は、結晶粒界位置の三次元原子分布像とラダーチャート解析の一例を示す図である。 図3は、C偏析量と打ち抜き端面損傷発生率の相関を示す図である。 図4は、P偏析量と打ち抜き端面損傷発生率の相関を示す図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.010〜0.200%、
    Si:0.01〜1.5%、
    Mn:0.25〜3%
    を含有し、
    P :0.05%以下
    に制限し、更に、
    Ti:0.03〜0.2%、
    Nb:0.01〜0.2%、
    V :0.01〜0.2%、
    Mo:0.01〜0.2%
    のうちの何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、フェライトの大角結晶粒界のCの偏析量が4〜10atms/nmであることを特徴とする打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。
  2. 更に、質量%で、
    P :0.02%
    以下に制限し、フェライトの大角結晶粒界のPの偏析量が1atoms/nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載の鋼板を製造する方法であって、請求項1又は2に記載の成分を有する鋼材を1200℃以上に加熱し、Ar点以上の温度で圧延を完了し、50℃/s以上の冷却速度で600〜650℃の範囲内に冷却し、引き続き、10℃/s以下の冷却速度で10s以下の冷却を行った後、更に、50℃/s以上の冷却速度で350〜550℃の範囲内に冷却して巻き取ることを特徴とする打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  4. 請求項1又は2に記載の鋼板を製造する方法であって、請求項1又は2に記載の成分を有する鋼材を1200℃以上に加熱し、Ar点以上の温度で圧延を完了し、50℃/s以上の冷却速度で600〜650℃の範囲内に冷却した後、冷却を停止して10s以下の保持を行い、更に、50℃/s以上の冷却速度で350〜550℃の範囲内に冷却して巻き取ることを特徴とする打ち抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
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